JP6440062B2 - マグネシウム系合金 - Google Patents

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Description

本発明は、マグネシウム系合金に関する。
電気製品、自動車や航空機などの輸送機器、精密機器、製造機械など、様々なアプリケーションにおいて筐体などを構成するために種々の金属素材が用いられる。このような様々なアプリケーションの筐体などは、鉄やアルミなどの単一金属素材で形成されるだけでなく、様々な合金素材が用いられることが多くなってきている。
例えば、電気製品や輸送機器などにおいては、軽量化を目的として合金素材が用いられることがある。精密機器や製造機械などにおいては、耐久性や強度の向上を目的として合金素材が用いられることがある。このように、従来の単一金属素材が使用されていたアプリケーションやそのアプリケーションの構成部分においても、種々の合金素材が用いられるようになってきている。特に、電気製品の分野では使い勝手の良さが求められることから、輸送機器の分野では低燃費が求められることから、軽量でありながら耐久性や強度に優れた合金素材が、これらのアプリケーションの構成部分に使用されることが多くなってきている。
特に、低燃費や低公害を目的として、輸送機器の軽量化が求められている。輸送機器は、多くの金属製の部品を備えており、これら多くの各種部品のそれぞれが、軽量の金属や合金で製造されることが、輸送機器の軽量化の基本となる。
このような状況で、構造材料として実用可能な金属においては、最も低密度のマグネシウムが注目されている。マグネシウムの室温における密度は、1.7g/cm3であり、この密度は鉄の密度の約1/4であり、アルミニウムの密度の約2/3である。また、マグネシウムは、比強度、比剛性、切削性、耐くぼみ性、振動吸収等の性質が優れていることも知られている。
これらの特性により、マグネシウムは、これまでノートパソコンや携帯端末の筐体などの小型の電子機器に用いられてきた。更なる展開として、上述のように、大型製品である輸送機器の各種部品に使用されることが望まれている。
しかしながら、マグネシウムは低温で発火しやすく、高温環境下での強度特性が低い(難燃性が低い)という問題を有している。電子機器においても機器が高温となることもあり、難燃性が低いことは、マグネシウム金属を電子機器の部材や筐体に利用しにくい問題を生じさせる。更には、輸送機器のように熱を発生させやすい機器にマグネシウム金属を適用する場合には、この難燃性が低いことの問題がより顕著に表れる。
例えば、多くの輸送機器は、エンジン機構によって駆動されることが多い。輸送機器に用いられる各種部品は、このエンジン機構からの熱や駆動による熱を受けやすく、高温環境となりやすい。小型の電子機器と異なり、輸送機器の各種部品には、この耐熱性の問題で、マグネシウム金属が適用されにくい状態であった。
このようなマグネシウム金属の難燃性に対応するために、マグネシウムにカルシウムを添加したマグネシウム合金が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−109963号公報
特許文献1は、カルシウム0.1〜15重量%を含む難燃性マグネシウム合金を塑性加工処理するか、又はカルシウム0.1〜15重量%を含む難燃性マグネシウム合金の既存含有量に加えて、融解時にアルミニウム又は亜鉛をさらに添加し、冷却後塑性加工処理することにより高強度難燃性マグネシウム合金を製造するマグネシウム合金を開示する。
マグネシウム合金の難燃性を向上させるために、特許文献1は、マグネシウムにカルシウムを含有させることを目的としている。特許文献1によれば、マグネシウムにカルシウムを含有させるマグネシウム合金は、発火温度が上昇して難燃性が高まる。
しかしながら、マグネシウムにカルシウムを添加したカルシウム含有のマグネシウム合金は、鋳造時の成形性(湯流れ性)や塑性加工性が悪くなることが分かっている。特にマグネシウム合金部素材(マグネシウム合金で製造する部材、およびインゴット、ビレット等の素材の総称)の製造工程において鋳造が用いられることが多い。鋳造とは、例えば、所定の形状を有する型に溶融金属が流し込まれて冷却されて、当該所定形状の型に合わせた合金部素材が製造される製造方法である。
鋳造においては、この所定形状の型を変化させることで、棒状部材が得られたり、板状部材が得られたり、箱型部材が得られたりする。これらの形状の合金部素材が更に塑性加工や機械加工されることで、目的とする部品や部材がマグネシウム合金で製造される。
ここで、鋳造においては、マグネシウムやカルシウムなどの合金製造に必要となる素材が溶融炉などに投入される。溶融炉において加熱されて各種素材が溶融する。溶融後に攪拌などされて溶融金属が得られる。この溶融金属が型に流し込まれる。型が冷却されることで(例えば、外部から冷却を受ける)溶融金属が次第に冷却される。冷却が進むことで、溶融金属が固化して、マグネシウム合金素材が得られる。
鋳造では、このような工程を経て、マグネシウム合金部素材が製造される。
ここで、鋳造で製造される合金部素材では、「引け巣」と呼ばれる鋳造欠陥が生じることがある。この引け巣には鋳造部素材の表面に生じる「外引け巣」と内部に生じる「内引け巣」があり、これらの引け巣が生じると、合金における強度分布にばらつきが生じてしまうことになる。
特許文献1では、マグネシウムにカルシウムを添加することで難燃性と強度特性を向上させることを目的としている。特許文献1では、難燃性を向上させることを主目的としてカルシウムを添加する量を提案している。しかしながら、特許文献1のように難燃性を向上させることを主目的としてカルシウムを添加することは、上記の引け巣などの欠陥の発生による機械的特性を損なう問題を解決することが出来ないことが分かっている。
引け巣は、溶融金属が凝固により固体へ変化する際の凝固収縮に起因する欠陥の総称である。引け巣は大きく分類すると、鋳造部素材の表面に欠陥や変形が生じる外引け巣と、内部に欠陥が生じる内引け巣に分けられる。
内引け巣の一種にマイクロシュリンケージ(結晶粒界に発生する引け巣)がある。一般的な合金金属の凝固(溶融段階から冷却によって固化すること)においては、液相線温度(凝固開始温度)近傍の初期段階において母相金属が晶出し、固相線温度(凝固終了温度)に至る最終段階において結晶粒界に金属間化合物が晶出する。結晶粒界に晶出する金属間化合物の流動性は温度降下に伴って低下するため、マイクロシュリンケージは、凝固温度範囲(液相線温度から固相線温度までの温度範囲)が広く、金属間化合物量が多いマッシ―型(粥状)凝固となる合金に生じ易い。以上のことから、外引け巣、内引け巣双方共に製品部に生じさせないことが重要である。カルシウムが添加される特許文献1を含む一般のマグネシウム合金は、凝固温度範囲が広くマッシ―型凝固となるものが多くマイクロシュリンケージが生じてしまう。すなわち引け巣が生じることに繋がってしまう問題を有している。
一般のマグネシウム合金の鋳造温度は700℃〜650℃程度であり、液相線温度(凝固開始温度)は630℃〜600℃程度であることが多い。マグネシウム合金の比熱や熱容量が小さいため、鋳造温度と液相線温度の差が小さい場合、流動性が悪くなり成形性が低下する。流動性を確保するために鋳造温度を高くすることが考えられるが、燃焼や酸化物の発生、鋳型(金型)への焼き付きが起こるため、この方法を取ることには問題が多い。
このように、特許文献1などに開示される従来技術のマグネシウム合金は、引け巣が生じ易く、また、鋳造温度と液相線温度の差が小さいため成形性(湯流れ性)を向上させることができない問題を有していた。
本発明は、引け巣の発生を低減させ、鋳造時の成形性(湯流れ性)を向上させることのできるマグネシウム合金を提供することを目的とする。
上記課題に鑑み、本発明のマグネシウム合金は、全体に対して、12.15質量%〜16.5質量%のアルミニウムと、
全体に対して、8質量%〜11質量%のカルシウムと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなるマグネシウム合金であって、
マグネシウム合金の鋳造時における液相線温度と固相線温度との範囲である凝固温度範囲は、30℃以下であり、
液相線温度は、545℃以上555℃以下である。
本発明のマグネシウム合金は、一般的なマグネシウム合金と比較し凝固温度範囲が狭いため、マッシ―型凝固ではなくスキンフォーメーション(表皮形成)型の凝固形態となるため、マイクロシュリンケージが生じにくい。そのためマイクロシュリンケージを中心とした内引け巣が生じにくくなり、その結果引け巣が生じにくい結果を生み出す。
また、液相線温度は一般的なマグネシウム合金より比較的低いため、同じ鋳造条件において成形性(湯流れ性)が高く、鋳造温度を低くすることも可能である。さらに、カルシウムが添加されているため、発火温度が上昇し難燃性であるため扱い易い。
また、本発明のマグネシウム合金は一般的なマグネシウム合金より高い硬度を有しており、鋳造部材として高い強度を持つ。
このように、本発明のマグネシウム合金は、鋳造欠陥であるマイクロシュリンケージに代表される引け巣が生じにくく、また液相線温度が比較的低いため成形性(湯流れ性)が良く、加えて難燃性であること、鋳造部材の強度も高くなることから軽量化が求められる様々な分野に適用可能となる。
本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の鋳造工程を示す模式図である。 本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の組成比率を示す説明図である。 図2の根拠となるマグネシウム、アルミニウム、カルシウムの組成比率を変化させた場合の、凝固温度範囲を測定した結果表である。 参考としての従来技術のマグネシウム合金の凝固温度範囲の比較例を示す表である。 本発明の実施の形態における湯流れ性の実験結果を示す表である。 本発明の実施の形態における湯流れ実験の結果を示す説明図である。 本発明の実施の形態における難燃性向上確認実験結果を示すグラフである。 本発明の実施の形態におけるビッカース硬度の測定結果を示す表である。 本発明の実施の形態における引張強度を、組成比率との対応で表した図面である。 本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の、それぞれの組成比率での顕微鏡写真である。 本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の、それぞれの組成比率での顕微鏡写真である。
本発明の第1の発明に係るマグネシウム合金は、全体に対して、12.15質量%〜16.5質量%のアルミニウムと、
全体に対して、8質量%〜11質量%のカルシウムと、
残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなる。
この構成により、マグネシウム合金は、マイクロシュリンケージが生じにくく、成形性、硬度などに優れる。
本発明の第2の発明に係るマグネシウム合金では、第1の発明に加えて、アルミニウムが、全体に対して13.5質量%であり、カルシウムが、全体に対して10質量%である。
この構成により、マグネシウム合金は、特に成形性や硬度などに優れる。
本発明の第3の発明に係るマグネシウム合金では、第1または第2の発明に加えて、マグネシウム合金の鋳造時における液相線温度と固相線温度との範囲である凝固温度範囲は、30℃以下である。
この構成により、凝固温度範囲が小さいことで、マイクロシュリンケージが生じにくくなり、成形性や硬度の向上が実現できる。
本発明の第4の発明に係るマグネシウム合金では、第3の発明に加えて、液相線温度は、545℃以上555℃以下である。
この構成により、凝固温度範囲が小さいことに液相線温度が低いことも加わって、凝固の際の結晶成長が適切に行われて、マイクロシュリンケージが生じにくくなり、成形性や硬度の向上が実現できる。
本発明の第5の発明に係るマグネシウム合金では、第4の発明に加えて、固相線温度は、518℃以上530℃以下である。
この構成により、凝固温度範囲の小ささを、液相線温度と固相線温度の低さが実現できる。結果として、凝固中での結晶成長が最適化されて、マイクロシュリンケージが生じにくくなり、成形性や硬度の向上が実現できる。
本発明の第6の発明に係るマグネシウム合金では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、マグネシウム合金の鋳造時において製造される溶融合金の湯流れ長さは、溶融合金が650℃の場合に、1200mm以上である。
この構成により、湯流れ長さの結果からも、成形性の高さが確認される。
本発明の第7の発明に係るマグネシウム合金では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、マグネシウム合金の鋳造時において製造される溶融合金の湯流れ長さは、溶融合金が700℃の場合に、1500mm以上である。
この構成により、湯流れ長さの結果からも、成形性の高さが確認される。
本発明の第8の発明に係るマグネシウム合金では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、マグネシウム合金での、外部からの加熱による発火温度は、1000℃以上である。
この構成により、本発明のマグネシウム合金の難燃性が高い。
本発明の第9の発明に係るマグネシウム合金では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、マグネシウム合金のビッカーズ硬度は、90Hv以上である。
本発明の第10の発明に係るマグネシウム合金では、第9の発明に加えて、マグネシウム合金のビッカーズ硬度は、115Hv以下である
これらの構成により、マグネシウム合金の硬度が十分な高さと範囲を有している。
本発明の第11の発明に係るマグネシウム合金では、第1から第10のいずれかの発明に加えて、マグネシウム合金の引張強度は、140MPa以上である。
この構成により、マグネシウム合金は、十分な引張強度を有しており、さまざまな用途への活用が実現できる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
(参考技術の説明)
従来技術において説明したように、特許文献1などで示される従来技術でのマグネシウム合金は、カルシウムを添加することで、発火温度を上昇させて難燃性を向上させる。難燃性の高いマグネシウム合金は、当然ながら従来別の主原料による合金と比較して軽量性が求められる機器への応用が図られやすくなる。
しかしながら、従来技術において説明したように、従来技術のカルシウムを添加したマグネシウム合金は、その凝固温度範囲の広さから凝固の際にマイクロシュリンケージが生じやすい問題を有している。マイクロシュリンケージが生じることは、その欠陥により強度にばらつきが生じ機械的特性を損なう問題を有している。
発明者は、さまざまな研究の結果、カルシウムを添加するマグネシウム合金のマイクロシュリンケージを生じさせにくくするには、鋳造時の凝固温度範囲を狭くすることが必要であるとの知見に至った。ここで、凝固温度範囲とは、液相線温度(凝固開始温度)から固相線温度(凝固終了温度)までの温度範囲をいう。
すなわち、発明者は、カルシウムを添加することで難燃性を上げるマグネシウム合金であって、凝固温度範囲を狭くすることで、従来技術のマグネシウム合金の諸問題を解決することの発明をなしたものである。
(全体概要)
実施の形態におけるマグネシウム合金は、全体に対して、12.15質量%〜16.5質量%のアルミニウムと、全体に対して、8質量%〜11質量%のカルシウムと、残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなる。すなわち、実施の形態におけるマグネシウム合金は、マグネシウム、アルミニウムおよびカルシウムの3元系合金であり、マグネシウムを基礎としつつアルミニウムおよびカルシウムを原料とする。
また、不可避混合物は、マグネシウム合金を製造する過程で、原料のいずれかに混合している不可避な混合物であったり、製造工程で混入する不可避な混合物であったりする。
図1は、本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の鋳造工程を示す模式図である。溶融容器100にマグネシウム、アルミニウム、カルシウムのそれぞれの必要な原料が投入される。このとき、上述の通り、全体に対して12.15質量%〜16.5質量%のアルミニウム、全体に対して8質量%〜11質量%のカルシウムと残部の量となるマグネシウムを秤量したうえで、それぞれの原料が溶融容器100に投入される。
溶融容器100は、それ自体もしくは外部からの加熱が可能であり、温度条件(最高温度、上昇速度、その他)を設定しながら投入された原料を溶融する。投入された原料であるマグネシウム、アルミニウム、カルシウムのそれぞれは、加熱されることで溶融する。溶融されると、撹拌が行われる。撹拌によって、3種類の原料のそれぞれは均一に混合しながら、溶融金属が形成されていく。
十分な溶融と撹拌が行われると、溶融容器100が冷却される、あるいは溶融容器100から別の容器に溶融金属が移されて冷却される。この冷却の過程で、溶融金属は液体状態から固体状態へ変化して、固体である目的とするマグネシウム合金が得られる。
ここで、上述の通りアルミニウムが全体に対して12.15質量%〜16.5質量%であり、カルシウムが全体に対して8質量%〜11質量%であり、残部がマグネシウムであることで、凝固温度範囲は、30℃以下となる。後述するが、従来技術のマグネシウム合金(カルシウムが添加されるものやされないものを含む)では、鋳造時における凝固温度範囲は、80℃程度であったり、130℃程度であったりする。
このような従来技術のマグネシウム合金での凝固温度範囲が80℃〜130℃程度であったりすると、凝固中にマイクロシュリンケージが発生しやすくなってしまう。
しかしながら、凝固温度範囲が30℃以下と狭い場合には、凝固中での合金の結晶成長における物理変化の変動が小さくて済む。このため、マイクロシュリンケージが発生しにくくなる。このため、凝固温度範囲が30℃以下となる実施の形態におけるマグネシウム合金は、マイクロシュリンケージが発生することでの諸問題を発生させにくい。すなわち、成形性(湯流れ性)、硬度強度が向上し、カルシウムの添加による難燃性も確保できる。
このような、凝固温度範囲が30℃以下である実施の形態におけるマグネシウム合金は、上述の3つの原料による3元系であることとそれぞれの組成比率によって得られる。以上のように、実施の形態におけるマグネシウム合金は、原料を、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムの3元系とするとともに、それぞれの組成比率を上述の範囲とすることで、凝固温度範囲を30℃以下とできる。
凝固温度範囲が30℃以下であること、および低い液相線温度を持ち、高硬度であることで、従来技術の種々の問題を解決でき、成形性が高く、硬度や強度に優れた難燃性のマグネシウム合金が実現できる。
マグネシウム、アルミニウム、カルシウムのそれぞれの組成比率が上述のように特定されることで、凝固温度範囲が従来技術に比較して十分に狭くできる。また、液相線温度が低く、高い硬度を有しており、成形性、硬度、強度などの点で優れたマグネシウム合金が得られる。ここで、凝固温度範囲が30℃以下であることが好ましいことについては、後述の実験結果などに基づいて説明する。
すなわち、発明者は、組成比率をさまざまに変化させつつ凝固温度範囲を確認し、それぞれの凝固温度範囲における、成形性、硬度、強度、難燃性などの優位性を確認した。これらの確認を通じて、実施の形態におけるマグネシウム合金は、全体に対して、12.15質量%〜16.5質量%のアルミニウムと、全体に対して、8質量%〜11質量%のカルシウムと、残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなることが適切であることを見出した。
なお、本明細書においては、各組成比率でのマグネシウム合金の作製および凝固温度等の測定は次の条件と器材にて行った。
測定装置:示差走査熱量計(DSC7020:日立ハイテクサイエンス製)
測定範囲:400℃〜650℃
昇温速度:10℃/分
ガス流量:17ml/分(アルゴンガス)
(組成比について)
組成比率について説明する。図2は、本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の組成比率を示す説明図である。発明者は、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムの組成比率をそれぞれ変化させながら、凝固温度範囲がどの程度となるかを測定した。
図3は、図2の根拠となるマグネシウム、アルミニウム、カルシウムの組成比率を変化させた場合の、凝固温度範囲を測定した結果表である。図2の説明図は、図3の表に基づいて作成されたものである。
図2においては、楕円で囲んだ部分が、凝固温度範囲が30℃以下となる範囲である。これは、図3の表において、表の列において色掛けがしてある場合と対応する。すなわち、図3の表において、色掛けしている列の組成比率を、図2の説明図にマッピングすると、図2の楕円で囲まれた範囲となる。
図3の表において、カルシウムを10質量%に固定して、アルミニウムの組成比率を徐々に高めていった結果が、第1列から第11列までの結果である。この際には、マグネシウムは全体に対しての残部であるので、アルミニウムの組成比率が高くなるにつれて、マグネシウムの組成比率は下がっていく。
次いで、アルミニウムを全体に対して13.5質量%に固定して、カルシウムの組成比率を徐々に高めていった結果が、第12列から第22列までの結果である。この場合も、マグネシウムの組成比率は、カルシウムの組成比率の増加に伴い減少する。
次いで、アルミニウムとカルシウムとのそれぞれを増加していった結果が、第23列から第35列までの結果である。
第1列〜第11列の結果を第1グループ(カルシウムを10質量%に固定してアルミニウムを増加)、第12列〜第22列の結果を第2グループ(アルミニウムを13.5質量%に固定してカルシウムを増加)、第23列〜第35列の結果を第3グループ(アルミニウムとカルシウムを共に増加)とする。
第1グループ、第2グループ、第3グループのそれぞれにおいて、全体に対してアルミニウムが13.5質量%であり、全体に対してカルシウムが10質量%であり、残部がマグネシウムである場合は、凝固温度範囲が20℃程度(実験結果誤差によるが、図3においては、20℃〜21.3℃)であり、非常に小さい。
凝固温度範囲が小さいほど、マイクロシュリンケージの発生を防止しやすくなる。このため、全体に対してアルミニウムが13.5質量%であり、全体に対してカルシウムが10質量%であり、残部がマグネシウムであるマグネシウム合金は、凝固温度範囲が最小に近いほど非常に小さくなる。これは、図3の表の他の列の結果との比較から明らかである。
このため、全体に対してアルミニウムが13.5質量%であり、全体に対してカルシウムが10質量%であり、残部がマグネシウムであるマグネシウム合金は、凝固温度範囲を最小化できて、マイクロシュリンケージの発生を抑えて硬度や強度を上げることができる。
このアルミニウムが13.5質量%、カルシウムが10質量%であるマグネシウム合金は、図2の説明図において、Aで示される点に対応する。
ここで、参考のために、従来技術でのマグネシウム合金での凝固温度範囲の一例を図4に示す。図4は、参考としての従来技術のマグネシウム合金の凝固温度範囲の比較例を示す表である。図4の比較例は、次のとおりである。
(比較例1:AZ91)
全体に対してアルミニウムが9質量%、亜鉛が1質量%、残部がマグネシウムであるマグネシウム合金。
比較例1では、凝固温度範囲は130℃である。参考例1の凝固温度範囲が130℃であることで、後述するように、硬度などの面で不十分さがある比較例の一つである。なお、液相線温度は、598℃であり固相線温度は468℃である。
(比較例2:AZX912)
全体に対して、アルミニウムが9質量%、亜鉛が1質量%、カルシウムが2質量%、残部がマグネシウムであるマグネシウム合金。
比較例2では、凝固温度範囲は80℃である。比較例1よりは小さいが、まだ凝固温度範囲は大きい。この凝固温度範囲が大きいことで、比較例1と同様に、後述するような硬度などの面で不十分さがある。なお、液相線温度は587℃であり、固相線温度は507℃である。
(比較例3:AMX602)
全体に対してアルミニウムが6質量%、マンガンが0.4質量%、カルシウムが2質量%、残部がマグネシウムであるマグネシウム合金。
比較例3では、凝固温度範囲は81℃である。やはり比較例2と同様に凝固温度範囲がまだ大きい。凝固温度範囲が大きいことで、比較例1、2と同様に後述するような硬度などの面での不十分さがある。なお、液相線温度は、612℃であり、固相線温度は、531℃である。
これら比較例1〜3と比較して、点Aで示されるアルミニウムが13.5質量%、カルシウムが10質量%、残部がマグネシウムであるマグネシウム合金は、凝固温度範囲が20℃程度(30℃以下)と非常に小さい。このマグネシウム合金を、実施例1とする。
実施例1のマグネシウム合金は、後述するように、硬度などの面で、比較例1〜3に対して非常に優れた結果を有する。
(第1グループにおける組成比率の検討)
第1グループにおいては、第5列から第9列目までのマグネシウム合金の凝固温度範囲は30以下である。第1グループは、カルシウムを10質量%に固定した状態でアルミニウムを増加させていったものであるが、この第5列〜第9列以外の組成比率においては、図3の表から明らかなとおり、凝固温度範囲が30℃以上であり、最大のものでは48.9℃である。このような凝固温度範囲が大きいものは従来技術のマグネシウム合金の凝固温度範囲に比較して十分に小さいとは言えない。このため、これらの組成比率では、目標とする成形性、硬度、強度、難燃性のすべてを実現できるマグネシウム合金は得られない。
比較例1〜3よりも十分に小さい凝固温度範囲は30℃以下であるマグネシウム合金は、第1グループにおいては、上述の通り、第5列〜第9列のものである。このことから、実施の形態におけるマグネシウム合金の組成比率は、アルミニウムが12.5質量%以上16.5質量%以下であることが必要であることがわかる。
ここで、図3の表の第5列〜第9列の結果は、図2の説明図において、カルシウムが10質量%で固定されている横方向の線上にポイントされている点である。
(第2グループにおける組成比率の検討)
第2グループにおいても、アルミニウムが13.5質量%であり、カルシウムが10質量%であり、残部がマグネシウムであるマグネシウム合金である、第17列の結果が実施例1である。これは、図2の点Aに対応している。
第2グループでは、第15列〜第18列のそれぞれが、凝固温度範囲が30℃以下である。すなわち、第15列〜第18列のそれぞれのマグネシウム合金が、凝固温度範囲が30℃以下であって、実施の形態に対応するマグネシウム合金である。上述のように、比較例1〜3は、凝固温度範囲が80℃以上であって、これに比較して十分小さい。
一方で、第2グループにおいて第15列〜第18列以外のマグネシウム合金は、凝固温度範囲が50℃〜60℃などと大きく、比較例1〜3との差分が小さい。すなわち、第15列〜第18列以外のマグネシウム合金は、凝固温度範囲を小さくする点で不十分な組成比率に基づくものである。
この第2グループの結果から鑑みると、カルシウムの組成比率は、全体に対して8質量%〜11質量%であることが適当である。これ以下であってもこれ以上であっても、凝固温度範囲が30℃よりも大きくなってしまうからである。凝固温度範囲が30℃よりも大きいことでのデメリットは上述および後述のとおりである。
(第3グループでの組成比率検討)
第3グループでは、図3の表の第30列の結果のマグネシウム合金が、実施例1である。第29列〜第31列のマグネシウム合金は、凝固温度範囲が30℃以下である。比較例1〜3に比較して、凝固温度範囲は十分に小さい。この第29列〜第31列のマグネシウム合金が、実施の形態におけるマグネシウム合金として適切である。
これらの結果から、実施の形態として適切である凝固温度範囲が30℃以下となる組成比率は、全体に対してアルミニウムが12.15質量%〜16.5質量%であり、カルシウムが8質量%〜11質量%であり、残部がマグネシウムである。
一方、第29列〜第31列以外のマグネシウム合金では、凝固温度範囲が、40℃や110℃程度であるなど、比較例1〜3と大差なく非常に大きい。このため、これらの組成比率のマグネシウム合金は、実施の形態のマグネシウム合金として適切ではない。
以上のように、第1グループ〜第3グループのそれぞれの結果を考慮すると、全体に対してアルミニウムが12.15質量%〜16.5質量%であり、カルシウムが8質量%〜11質量%であり、残部がマグネシウムであるマグネシウム合金が、凝固温度範囲が30℃以下となって、従来技術では解決されなかった、成形性、硬度、強度、難燃性を実現できる。
これらは、図2の楕円で囲まれた範囲の結果からも明らかである。
次に、比較例との比較を前提として、実施の形態のマグネシウム合金の目的とする性能向上の確認結果を説明する。
(その1:成形性の確認)
実施の形態におけるマグネシウム合金の成形性を、湯流れ性に基づいて実験した結果を説明する。ここで、実施の形態におけるマグネシウム合金とは、全体に対して12.15質量%〜16.5質量%のアルミニウムと、8質量%〜11質量%のカルシウムと、残部のマグネシウムと不可避混合物とからなるマグネシウム合金である。また、実施例1は、全体に対して13.5質量%のアルミニウムと、全体に対して10質量%のカルシウムと残部のマグネシウムおよび不可避混合物からなるマグネシウム合金である。
また、湯流れ性とは、溶融金属を、所定の温度とした場合に、溶融容器100から所定形状(鋳型)となるように吐出させてどの程度までの長さでの充填が可能かを測るものである。例えば、蚊取り線香のような渦巻き状の鋳型に、溶融容器100から溶融金属を吐出させつつ、どの程度の長さまで伸ばすことができるかが、この湯流れ性の良さの判断基準の一例である。
溶融容器100から溶融金属が吐出される際に、溶融金属は鋳型により冷却され凝固へと至る。この冷却による溶融金属の温度の低下は、溶融金属が吐出されて所定形状を形成する際の成形性を阻害する力が働く。特に、溶融金属が冷却されて固化する際(すなわち、鋳造部素材が形成される際)に、出湯時の溶融金属の温度と、流動性が失われる温度の差が少ない場合、その所定形状の長さが短くなってしまうことになる。
すなわち、湯流れ性の良さは、吐出させながら形成される所定形状の長さによって、測ることができる。このため、湯流れ性を、湯流れ長さを基準として実験し、実施の形態におけるマグネシウム合金の湯流れ性の良さを、比較例との比較の観点から実験した。
図5は、本発明の実施の形態における湯流れ性の実験結果を示す表である。図5の表においては、上から実施例1、比較例4、実施例2、比較例5、比較例1、比較例2、比較例3の順序で、湯流れ性の実験結果が示されている。
実施例1は、上述の説明での実施例1である。比較例1、比較例2、比較例3は、それぞれ上述したものであり、AZ91、AZX912、AMX602である。
実施例2は、実施例1と異なる組成比率であるが、実施の形態のマグネシウム合金の組成比率に含まれる組成比率であるマグネシウム合金の実施例の一つである。実施例2は、12.15質量%のアルミニウムと、9質量%のカルシウムと、残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなるマグネシウム合金である。
比較例4は、湯流れ性の実験のために製作した比較例であり、全体に対して6.75質量%のアルミニウムと、全体に対して5質量%のカルシウムと、残部のマグネシウム合金とからなるマグネシウム合金である。比較例4は、実施の形態での組成比率の範囲から外れた同じアルミニウム、カルシウム、マグネシウムの3元系のマグネシウム合金の一つである。
比較例5は、比較例4と同様に製作された比較例であり、全体に対して17.55質量%のアルミニウム、13質量%のカルシウムおよび残部のマグネシウムとからなるマグネシウム合金である。比較例5は、比較例4と同じく、実施の形態の組成比率の範囲から外れた同じアルミニウム、カルシウム、マグネシウムの3元系のマグネシウム合金の一つである。
これら、実施例1、実施例2、比較例1〜5の実験結果の中から、実施例1および比較例4〜5のそれぞれでの湯流れ実験の様子や結果の写真を含めて、図6の説明図は示している。
図5の表から明らかなとおり、湯流れ長さは、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4、比較例5のいずれにおいても、溶融金属の温度が650℃の場合と700℃の場合との2つで実験を行った。図5の表のそれぞれの結果および図6の写真から、実施例1,2の湯流れ性が優れており(成形性が高い)、比較例1〜5の湯流れ性が劣っていることがわかる。ただし、後述するが、比較例5は、湯流れ長さについては別の理由で異なっている。
実施例1、2が比較例1〜5に対して湯流れ長さが長いことで、流動性が高く、成形性が高いことが実証された。
(実施例1の実験結果)
実施例1においては、溶融金属が650℃の場合には、湯流れ長さは1430mmである。少なくとも1400mm以上である。
比較例1が695mmであったり、比較例4が1115mmであったりすることを考慮しても、実施例1の湯流れ長さは、非常に長いことがわかる。もちろん、他の比較例よりも長い。
このことから、実施例1での湯流れ長さを基準とする成形性は、非常に高いことがわかる。
同様に、実施例1においては、溶融金属の温度が700℃の場合には、湯流れ長さは、1770mm以上である。少なくとも1700mm以上である。これも、比較例1が939mmであったり、比較例4が1119mmであったりすることを考慮して、実施例1の湯流れ長さは、700℃の場合でも非常に長い。
加えて、溶融金属の温度が上がることによって、650℃で1430mmであった湯流れ長さが、700℃では、1770mm以上となっている。すなわち、溶融金属の温度上昇に伴って、実施例1のマグネシウム合金の成形性が高まっていることがわかる。
比較例1〜5でも、温度が上がれば湯流れ長さが伸びているが、実施例1ほどの差分にはなっていない。この点からも、実施例1の成形性が高いことがわかる。
(実施例2の実験結果)
実施例2においては、溶融金属が650℃の場合には、湯流れ長さは1242mmである。少なくとも1200mm以上である。
比較例1が695mmであったり、比較例4が1115mmであったりすることを考慮しても、実施例2の湯流れ長さは、非常に長いことがわかる。もちろん、他の比較例よりも長い。
このことから、実施例2での湯流れ長さを基準とする成形性は、非常に高いことがわかる。
同様に、実施例2においては、溶融金属の温度が700℃の場合には、湯流れ長さは、1550mmである。少なくとも1500mm以上である。これも、比較例1が939mmであったり、比較例4が1119mmであったりすることを考慮して、実施例2の湯流れ長さは、700℃の場合でも非常に長い。
加えて、溶融金属の温度が上がることによって、650℃で1242mmであった湯流れ長さが、700℃では、1550mm以上となっている。すなわち、溶融金属の温度上昇に伴って、実施例2のマグネシウム合金の成形性が高まっていることがわかる。
比較例1〜5でも、温度が上がれば湯流れ長さが伸びているが、実施例2ほどの差分にはなっていない。この点からも、実施例2の成形性が高いことがわかる。
以上のように、実施例1、2から実施の形態におけるマグネシウム合金は、湯流れ性実験での湯流れ長さは、溶融金属が650℃である場合には1200mm以上であり、溶融金属が700℃である場合には、1500mm以上である。
このような実施例1の湯流れ長さが優れていることは、図6の写真からも明らかである。渦巻き状の形状に成形された実施例1および比較例4〜5のそれぞれのマグネシウム合金は、図6の写真の通りに形成されている。
比較例4〜5は、図5の表の通り、実施例1に比較すると、その湯流れ長さは短い。比較例4〜5は、原料もしくは組成比率が異なるマグネシウム合金であり、実施の形態のマグネシウム合金とは相違する。このため、成形性が悪いことがわかる。
ただし、比較例5は、実施の形態の組成比率から外れたマグネシウム合金であり、液相線温度が607℃と高温であるが、過共晶側の組成となっているため、初晶の晶出が高い温度域で起こるものの、その晶出量が少ない(固相率が比較的増加しない)ため湯流れ性が液相線温度の影響を受けにくくなって、湯流れ長さが長くなっている。しかし、凝固温度範囲は大きく、後述する硬度などの他の条件での結果が悪い。
(その2:難燃性向上の確認)
次に、難燃性向上の確認結果を説明する。図7は、本発明の実施の形態における難燃性向上確認実験結果を示す表である。図7の実験結果をもとに図2で説明された本発明の実施の形態の原料および組成比率を示すものに発火温度を図示したものが図8である。
開発マグネシウム合金は、実施の形態で説明された原料および組成比率を有するマグネシウム合金である。汎用マグネシウム合金は、市販されている汎用のマグネシウム合金である。従来の難燃性マグネシウム合金は、カルシウムを添加することだけに着目した特許文献1のような従来技術における難燃性マグネシウム合金である。
図8の赤線枠で囲まれた範囲の組成比率を有するマグネシウム合金が、開発マグネシウム合金である。
図に赤色で色掛けしている部分は、発火温度が1000℃以上である。汎用マグネシウム合金の発火温度が700℃未満である。従来の難燃性マグネシウム合金の発火温度は900℃前後であって1000℃未満である。
図7、図8からも明らかなとおり、実施例1、2を含む実施の形態におけるマグネシウム合金は、難燃性においても向上している。なお、図7、8では、実施例1を含む実施の形態の組成範囲のマグネシウム合金の外側の組成のマグネシウム合金でも、1000℃以上の難燃性を示している。しかし、実施の形態における組成範囲の外側のマグネシウム合金は、難燃性以外の成形性や硬度などにおいては、やはり実施の形態の組成範囲のマグネシウム合金に劣る。すなわち、総合的な意味合いで、実施の形態におけるマグネシウム合金は、難燃性に優れているといえる。
(その3:硬度向上の確認)
次に、硬度向上の確認実験結果について説明する。
ここでは、硬度としてビッカース硬度を例として実験を行った。
測定装置:ビッカース硬度計(FV−300:フォーチュアテック製)
測定荷重:500g
保持時間:15秒
図9は、本発明の実施の形態におけるビッカース硬度の測定結果を示す表である。図9に示す表は、図3に示される表のそれぞれの組成比率と同じ並びの列で示している。すなわち、10質量%のカルシウムに固定した上でアルミニウムを増加していく第1グループの第1列〜第11列、13.5質量%のアルミニウムに固定した上でカルシウムを増加していく第2グループの第12列〜第22列、アルミニウムとカルシウムをそれぞれ増加させていく第3グループの第23列〜第35列のそれぞれでの組成比率のマグネシウム合金を示している。
凝固温度範囲が30℃以下となる組成比率が実施の形態におけるマグネシウム合金で説明した通り、第1グループにおける第5列〜第9列、第2グループにおける第15列〜第18列、第3グループにおける第29列〜第31列のそれぞれが、実施の形態における組成比率に含まれるマグネシウム合金である。
図9の表から明らかなとおり、実施の形態に含まれないマグネシウム合金であっても、ビッカース硬度が高いものもあるが、上述の列に対応する実施の形態に含まれるマグネシウム合金は、ビッカース硬度が相対的に高い。このため、実施の形態におけるマグネシウム合金の硬度は、従来技術のマグネシウム合金や組成比率の異なるマグネシウム合金に比較して、高い硬度を実現できる。
また、ビッカース硬度と合わせて、実施例とそれ以外の一部については、作製されたマグネシウム合金を用いて引張強度を測定した。ここで、実施例1である、13.5質量%のアルミニウムと10質量%のカルシウムとマグネシウムからなるマグネシウム合金、実施例2である12.15質量%のアルミニウムと9質量%のカルシウムとマグネシウムからなるマグネシウム合金を、実施の形態に含まれるマグネシウム合金として選択して引張強度を測定した。
一方、実施例1、2の比較のために、比較例4として6.75質量%のアルミニウム、5質量%のカルシウムおよび残部のマグネシウムからなるマグネシウム合金、比較例5として、17.55質量%のアルミニウム、13質量%のカルシウムおよび残部のマグネシウムからなるマグネシウム合金を選択して、引張強度を測定した。
図9の表のそれぞれに対応する列に、実施例1、2、比較例4、5の引張強度が記載されている。すなわち、実施例1の引張強度は、144MPaであり、実施例2の引張強度は、151MPaである。これに対して比較例4の引張強度は、134MPaであり、比較例5の引張強度は、135MPaである。
この実施例1、2での引張強度は、比較例4,5の引張強度よりも高い。すなわち、実施の形態の組成比率に含まれるマグネシウム合金は、それ以外のマグネシウム合金より相対的に高い強度を有している。
図10は、本発明の実施の形態における引張強度を、組成比率との対応で表した図面である。実施例1,2、比較例4,5のそれぞれに対応する組成比率の点に、引張強度の値が示されている。
以上の実験から、実施の形態におけるマグネシウム合金は、凝固温度範囲が30℃以下となる3元系でありつつ対応する組成比率を有することで、硬度および強度も向上していることがわかる。難燃性のみならず、成形性と硬度(強度)が両立することで、実施の形態におけるマグネシウム合金は、マイクロシュリンケージの発生がしにくくなっていることがわかる。
これらの実験結果より、実施の形態におけるマグネシウム合金は、マグネシウム合金が適用しにくかったさまざまな分野への適用が実現できる。
(合金の組織写真)
発明者は、実験に合わせて、作製したマグネシウム合金の組織を観察した。
図11は、本発明の実施の形態におけるマグネシウム合金の、それぞれの組成比率での顕微鏡写真である。図面中の点は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウムの組成比率に対応する点のそれぞれである。
この組成比率の点に対応するマグネシウム合金の写真がそれぞれ図11で示されている。点と写真とを結ぶ線により、写真がどの組成比率に対応するものであるのかがわかるようになっている。図11から明らかなとおり、写真のうち、一部は実施の形態の組成比率から外れるものであり、残りが実施の形態の組成比率に含まれるものである。実施の形態の組成比率は、図11の組成比率図面の楕円形の内部である。
また、組成比率図面から明らかなとおり、組成比率図面の左下(マグネシウムの含有量が多く、アルミニウムやカルシウムの含有が少ないかないか)は、従来技術の難燃性マグネシウム合金の範囲を示している。
図11の写真のそれぞれから分かるとおり、実施の形態に含まれるマグネシウム合金の写真は、共晶組織の晶出が大きく、成形性や硬度に好影響を与えていることが分かる。
これに対して、実施の形態から外れる組成比率のマグネシウム合金の写真では、3元系の共晶組織の晶出が不十分であることが分かる。これが、成形性や硬度に悪影響を与えている。
以上のように、図11での解析写真からも、実施の形態におけるマグネシウム合金の目的の達成が実現されていることが分かる。
以上、各種実験結果および写真解析を踏まえて、実施の形態におけるマグネシウム合金は、選択された原料およびその組成比率によって、マイクロシュリンケージの発生を抑えていることが分かる。この結果、難燃性を有しつつも、成形性、硬度、強度を向上させた従来技術にはなかった特性を有するマグネシウム合金が実現できる。このため、実施の形態におけるマグネシウム合金は、従来は適用が難しかったさまざまな分野への適用が実現できる。
なお、実施の形態で説明されたマグネシウム合金は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
100 溶融容器

Claims (9)

  1. 全体に対して、12.15質量%〜16.5質量%のアルミニウムと、
    全体に対して、8質量%〜11質量%のカルシウムと、
    残部のマグネシウムおよび不可避混合物とからなるマグネシウム合金であって、
    前記マグネシウム合金の鋳造時における液相線温度と固相線温度との範囲である凝固温度範囲は、30℃以下であり、
    前記液相線温度は、545℃以上555℃以下である、マグネシウム合金。
  2. 前記アルミニウムが、全体に対して13.5質量%であり、
    前記カルシウムが、全体に対して10質量%である、請求項1記載のマグネシウム合金。
  3. 前記固相線温度は、518℃以上530℃以下である、請求項1または2記載のマグネシウム合金。
  4. 前記マグネシウム合金の鋳造時において製造される溶融合金の湯流れ長さは、前記溶融合金が650℃の場合に、1200mm以上である、請求項1から3のいずれか記載のマグネシウム合金。
  5. 前記マグネシウム合金の鋳造時において製造される溶融合金の湯流れ長さは、前記溶融合金が700℃の場合に、1500mm以上である、請求項1から3のいずれか記載のマグネシウム合金。
  6. 前記マグネシウム合金での、外部からの加熱による発火温度は、1000℃以上である、請求項1から5のいずれか記載のマグネシウム合金。
  7. 前記マグネシウム合金のビッカーズ硬度は、90Hv以上である、請求項1から6のいずれか記載のマグネシウム合金。
  8. 前記マグネシウム合金のビッカーズ硬度は、115Hv以下である、請求項記載のマグネシウム合金。
  9. 前記マグネシウム合金の引張強度は、140MPa以上である、請求項1から8のいずれか記載のマグネシウム合金。
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