JP6439115B2 - 組織片の機能を発現・維持する方法 - Google Patents
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Description
器官培養法としては主に、気層液層境界部培養法(Gas−liquid interphase法)と旋回培養法の2つが知られている。これらの方法は、1950〜1960年代に開発され、応用されてきた。
しかし、従来の器官培養法は、生体から切り出した組織片の形態や機能を維持できる期間が短く、数日からせいぜい2〜3週間である。また、組織片の機能の発現も充分とはいえない。例えば前記のような新生仔マウス精巣組織片の培養を気層液層境界部培養法で行った場合、精子形成の進行はやはりパキテン期までであった。
非特許文献2や特許文献1では、マイクロメーターオーダーの微細な流路を作製し、該流路上に細胞を培養する空間を設け、該流路と該空間との間に細胞の足場となる多孔質膜を配置したデバイスが提案されている。該流路に2種以上の培養液を多層流として流通させると、各培養液が多孔質膜を介して流路上の空間内に供給され、該空間内の物質分布を時間的にも空間的にも制御し、細胞の分化等を制御できるとされている。しかし、組織片の培養については検討されていない。
器官培養法と細胞培養法と比べた場合、器官培養法は、臨床応用に際して幾つかの強みがある。例えば、精巣生検で得られる検体をそのまま器官培養に供することができる。すなわち、生検検体から精子や精子幹細胞を取り分ける操作が省略できる。臨床現場においてはこの簡便さが強みになると考えられる。しかし、器官培養法は、前記のとおり、短時間しか組織片の機能を維持できないという弱点がある。
[1]器官の機能を発現し得る組織片の前記機能を発現させ維持する方法であって、
前記組織片を培養室に収容し、前記培養室と隔離材を介して接する流路に培養液を流通させる工程を有し、
前記隔離材が、多孔質膜、または相互に間隔をあけて配置された複数の壁材から構成されるスリット部であり、
前記培養室が、前記隔離材から400μm以下の領域内に設けられていることを特徴とする方法。
[2][1]に記載の方法に用いられる組織片培養デバイスであって、
器官の機能を発現し得る組織片を収容する培養室と、
培養液を流通させる流路と、
隔離材と、
を備え、
前記隔離材が、多孔質膜、または相互に間隔をあけて配置された複数の壁材から構成されるスリット部であり、
前記培養室と前記流路とが、前記隔離材を介して接しており、
前記培養室が、前記隔離材から400μm以下の領域内に設けられている組織片培養デバイス。
[3]透明基板と、培養室形成用の切欠き部が設けられた第一の層と、前記多孔質膜と、流路形成用の溝が設けられた第二の層とがこの順で積層したデバイス本体を備え、
前記多孔質膜は、前記切欠き部と前記溝とを区画するように配置され、
前記透明基板と前記切欠き部と前記多孔質膜とで囲まれた空間が前記培養室とされ、前記多孔質膜または前記第二の層と前記溝とによって囲まれた空間が前記流路とされている、[2]に記載の組織片培養デバイス。
[4]前記デバイス本体は、前記透明基板側を下側にして配置され、
前記第二の層に、前記流路に培養液を供給する培養液導入路と、前記流路から培養液を排出する培養液排出路とが形成され、
前記培養液導入路および前記培養液排出路がそれぞれ前記デバイス本体の上面に開口し、
前記培養液導入路の開口に、培養液を収容するタンクが取り付けられ、前記培養液排出路の開口に吸引ポンプが接続されている、[3]に記載の組織片培養デバイス。
前記組織片を培養室に収容し、前記培養室と多孔質膜を介して接する流路に培養液を流通させる工程を有し、
前記培養室が、前記多孔質膜から400μm以下の領域内に設けられていることを特徴とする。
「器官の機能」とは、器官が本来備えている働きを意味する。例えば器官が精巣である場合、器官の機能には、精子を形成する働きが含まれる。
器官の機能を発現し得る組織片を収容する培養室と、
培養液を流通させる流路と、
多孔質膜と、
を備え、
前記培養室と前記流路とが、前記多孔質膜を介して接しており、
前記培養室が、前記多孔質膜から400μm以下の領域内に設けられているデバイス。
<第一実施形態のデバイス>
図1〜4を用いて、本発明の第一実施形態のデバイス100を説明する。
図1は、デバイス100の上面図である。図2は、デバイス100使用時における、図1のII−II断面図である。図3は、図2中の点線丸印で囲んだ部分の拡大図である。図4は、図1のIV−IV断面の一部を示す部分断面図である。
デバイス本体1は、透明基板11と、第一の層13と、多孔質膜7と、第二の層15とがこの順に積層したものである。
第二の層15は、第一の層13側に、溝5を有している。溝5は、W2の幅でII−II方向に延在している。
溝5の中間部と切欠き部3の一端側は平面視で重なる位置とされている。
多孔質膜7は、切欠き部3と溝5とを区画するように配置されている。
多孔質膜7は、第一の層13上の、デバイス100を積層方向から観察した時に溝5と重なる部分とその周辺を覆うように配置されており、第一の層13の一部は、第二の層15と直接接している。
デバイス本体1においては、透明基板11と切欠き部3と多孔質膜7とで囲まれた空間のうち、溝5の下側の部分(デバイス100を積層方向から観察した時に溝5と重なる部分)が培養室S1とされ、残りの部分が、培養室S1に組織片を導入するための組織片導入路S2とされている。また、多孔質膜7または第二の層15と溝5とによって囲まれた空間が、培養液を流通させる流路S3とされている。
図3には、培養室S1に組織片31が導入された状態を示している。
貫通孔21の開口には、培養液を収容するタンク9が取り付けられ、貫通孔23の開口には、チューブ25を介して、図示しない吸引ポンプが接続されている。これにより、吸引ポンプを作動させたときに、タンク9内に収容された培養液を貫通孔21から流路S3に導入し、流路S3を流通させ、貫通孔23から排出できるようになっている。
管35は必須ではないが、管35を設けることにより、管35、貫通孔33および組織片導入路S2を介して、または必要に応じて管35、貫通孔33および組織片導入路S2内に挿入されるチューブ等の器具を介して、培養室S1に組織片を導入(または培養室S1から組織片を回収)することが容易になっている。
管35の上端は、キャップ等により封止できるようになっている。通常、管35の上端を封止した状態で培養が行われる。培養中、必要に応じて、管35の上端を開放し、組織片を追加することもできる。
管35は、培養時に組織片の足場または固定材として、コラーゲンゲル、マトリゲル、アガロースゲル等を培養室S1内に供給するためにも利用できる。
管35は、組織片の導入前、組織片の導入と同時、組織片の導入後等において、培養室S1内に、各種細胞や、成長因子などの液性因子の徐放剤を投入するためにも利用できる。
培養室S1は、多孔質膜7から400μm以下の領域内に設けられる。すなわち、培養室S1の高さD1は、400μm以下である。培養室S1が設けられるのは、多孔質膜7から400μm以下の領域内が好ましく、300μm以下の領域内がより好ましく、200μm以下の領域内がさらに好ましい。
培養室S1を前記の領域内に設けることにより、培養室S1内で培養する組織片の機能を長期間維持することができる。一方、前記の領域外にある組織片の機能を長期間維持することは難しく、後述する試験例1に示すように、短期間で壊死に陥る懸念がある。
培養室S1の高さD1の下限値は、培養する組織片の最小構造単位に依存するので一概には言えないが、精巣組織片の場合は、精細管の直径が最小でも100μmであるため、培養室S1の高さD1は、100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましい。
幅W1、幅W2はそれぞれ、培養室S1に収容する組織片が収容可能な大きさであればよく、組織片の大きさに応じて適宜設定できる。
培養室S1の体積は、培養室S1に収容される組織片の体積に対し、100〜200体積%が好ましく、100〜150体積%がより好ましい。培養室の体積が前記範囲の下限値以上であると、組織片への空間的圧迫がなく物理的な条件が良好で、前記範囲の上限値以下であると、自己分泌した増殖因子の拡散を抑制することができることから化学的な条件が良好である。
流路S3の高さD2、つまり溝5の深さは、特に限定されないが、50〜1000μmが好ましく、100〜500μmがより好ましい。流路S3の高さD2が前記範囲の下限値以上であると必要十分な栄養素の供給や代謝物の除去が良好で、前記範囲の上限値以下であると余剰な培養液の削減ができる。
流路S3の幅は、溝5の幅、すなわちW2である。
「多孔質膜」とは、当該膜を貫通する細孔を多数有する固体の膜である。
多孔質膜7の孔径(細孔の孔径)は、0.4〜50μmが好ましく、1〜30μmがより好ましく、5〜20μmがさらに好ましく、10〜20μmが特に好ましい。多孔質膜7の孔径が前記範囲の下限値以上であると、多孔質膜7を介した物質交換が良好に行われる。多孔質膜7の孔径が前記範囲の上限値以下であると、多孔質膜7を通過した培養液の流れによる組織片のダメージが生じにくく、組織片の機能を維持しやすい。
多孔質膜7の孔径は、電子顕微鏡(SEM)、レーザー顕微鏡等により測定できる。
多孔質膜7としては、Whatman社等から販売されている市販品を利用できる。
透明基板11を構成する材料は、透明材料であれば特に限定されない。
透明材料は可視光を透過する材料である。透明材料としては、例えばポリジメチルシロキサン(以下、PDMSという)等のシリコーンゴム、ポリスチレン、アクリル樹脂等の透明樹脂材料、ガラス、ゲル(コラーゲンやゼラチンなど)等が挙げられる。
透明基板11は、デバイス100の使用時に組織片と接触することから、組織片の機能発現および維持に影響しない材料を用いることが好ましい。
培養室S1内の観察のしやすさ、デバイスの強度、汚れにくさ等の観点では、透明基板11を構成する材料としては、ガラスが好ましい。
デバイス100外の大気中の酸素を培養室S1内に供給する観点では、透明基板11を構成する材料としては、酸素透過性を有する材料が好ましい。酸素透過性を有する材料については後で詳しく説明する。
透明基板11の厚さは特に限定されず、強度、透明性等のバランスを考慮して適宜設定できる。透明基板11がガラス板の場合、その厚さは0.1〜2.0mm程度が好ましく、高倍率かつNAの高い対物レンズを利用する共焦点顕微鏡などを用いて詳細な組織片画像を取得するためには0.15〜0.20mm程度がより好ましい。
第一の層13を構成する材料としては、前述の形状に加工可能な材料であれば特に限定されず、例えばマイクロ流路構造の形成等に用いられている公知の材料のなかから適宜選択できる。
第一の層13を構成する材料は、透明材料でもよく、それ以外の材料でもよい。培養室S1内を観察しやすい点で、透明材料が好ましい。透明材料としては前記と同様のものが挙げられる。透明材料以外の材料としては金属、Si等が挙げられる。
第一の層13を構成する材料は、透明基板11と同様に、組織片の機能発現および維持に影響しない材料が好ましい。また、デバイス100外の大気中の酸素を培養室S1内に供給する観点では、酸素透過性を有する材料が好ましい。
酸素透過性を有する材料としては、既知の任意の酸素透過性材料が使用可能であり、例えば、酸素透過性コンタクトレンズなどに用いられている生体適合性の酸素透過性材料等が挙げられる。生体適合性の酸素透過性材料として具体的には、シリコーンゴムが挙げられる。特に、生体適合性を有するとともに、透明性および酸素透過性を有し、さらに安価な材料であることから、PDMSが好ましい。
第一の層13の厚さは、培養室S1の高さD1と同じである。
第二の層15を構成する材料としては、第一の層13を構成する材料と同様のものが挙げられる。好ましい態様も同様である。
デバイス100は、透明基板11と第一の層13と多孔質膜7と第二の層15とをこの順に積層してデバイス本体1を作製し、得られたデバイス本体1の貫通孔21にタンク9を取り付け、貫通孔23にチューブ25を介して吸引ポンプを接続し、必要に応じて貫通孔33に管35を取り付けることにより製造できる。
第一の層13、第二の層15はそれぞれ、従来、マイクロリアクター等の流路構造を有するマイクロデバイスの製造に用いられている方法など、公知の微細加工法を利用して製造できる。該微細加工法としては、例えばリソグラフィー法、エッチング法、切削、射出成型、3Dプリンティング等が挙げられる。
(1)まず、基板上に、スピンコーティングによりフォトレジストを塗布してフォトレジスト層を形成する。
(2)フォトレジスト層に対し、切欠き部3(培養室S1および組織片導入路S2)に対応するパターンのマスクを介して露光し、現像することにより、フォトレジスト層をパターニングする。
(3)パターニングされたフォトレジスト層(鋳型)上に、UV硬化型または熱硬化型ポリマーのプレポリマーを塗布してプレポリマー層を形成する。
(4)プレポリマー層にUVを照射または加熱して硬化させてポリマー層とする。
(5)ポリマー層を剥離する。
工程(2)では、パターニングにより、フォトレジスト層の一部が除去され、基板上に、切欠き部3に対応する形状のフォトレジスト層が残る。そのため、次の工程(3)で形成するプレポリマー層の厚さを、フォトレジスト層の厚さと同じかそれよりも薄くした場合、工程(5)で得られるポリマー層は、切欠き部3を有しており、そのまま第一の層13として使用できる。
なお、培養室S1および組織片導入路S2に対応する凹部が片面に形成されたポリマー層を第二の層15と同様にして作製し、透明基板11および第一の層13を一体成形してもよい。
また、第二の層15は、溝5に対応する切欠き部および貫通孔33に対応する貫通孔を有する層と、貫通孔21、23、33それぞれに対応する貫通孔を有する層とを貼り合わせて作製してもよい。この場合、溝5に対応する切欠き部および貫通孔33に対応する貫通孔を有する層は、第一の層13と同様にして、溝5に対応する切欠き部を有する層を作製し、貫通孔をあけることにより作製できる。
本発明の第一実施形態の方法は、前記のデバイス100を使用して行われる。
本発明の第一実施形態の方法は、例えば以下の工程(Ia)〜(Ib)を含む。
(Ia)デバイス100のタンク9内および流路S3内に培養液を満たし、培養室S1内に組織片を導入する工程、
(Ib)貫通孔23にチューブ25を介して接続した図示しない吸引ポンプを作動させることによりタンク9内の培養液を流路S3に流通させ、培養室S1内の組織片を培養する工程。
組織片は、動物、植物等の多細胞生物の器官の機能を発現し得るものであれば特に限定されない。再生医療や薬物応答・毒性試験への応用を考慮した場合には、動物の器官の機能を発現し得る組織片が好ましく、哺乳動物の器官の機能を発現し得る組織片が好ましい。哺乳動物としては、ヒト、マウス、ウシ、ブタ等が挙げられる。
器官としては、精巣、卵巣、副腎、下垂体、皮膚、乳腺、唾液腺、甲状腺、副甲状腺、胸腺、脳、神経組織、リンパ節、心臓、肺、骨、肝臓、脾臓、膵臓、小腸、大腸、腎臓、前立腺、膀胱、精嚢、子宮、膣、卵管、胎盤等が挙げられる。これらの中では、配偶子産生というその機能が明確である点で、精巣、卵巣等が好ましい。
組織片は、生体から器官の一部または全部を採取して得られたものであってもよく、iPS細胞(人工多能性幹細胞)等から再構成されたものであってもよい。
組織片の体積は、器官の機能を発現し得る限り特に限定されないが、組織片の大きさが大きいほど、機能を長期間維持しやすい傾向がある。例えば精巣組織片の場合、その大きさは、少なくとも100μm×500μm×500μmであることが好ましい。
組織片は、管35、貫通孔33および組織片導入路S2に直接導入してもよく、管35、貫通孔33および組織片導入路S2内にチューブやシリンジ等の器具を挿入し、該器具を用いて導入してもよい。
組織片の導入後は、通常、管35の上端をキャップ等により封止し、その状態で培養が行われる。培養途中に組織片を追加することも可能である。
組織片の導入前、組織片の導入と同時、組織片の導入後等において、組織片の足場または固定材として、コラーゲンゲル、マトリゲル、アガロースゲル等を培養室S1内に供給してもよい。
組織片の導入前、組織片の導入と同時、組織片の導入後等において、培養室S1内に、各種細胞や、成長因子などの液性因子の徐放剤を投入してもよい。
組織片が精巣組織片である場合、培養液としては、αMEM(alpha Modified Eagle Minimum Essential Medium)等の標準的な培養液にKnockOut(登録商標) Serum Replacement(KSR)、もしくはアルブミン製剤であるAlbuMAX(登録商標)を添加したものが好ましい。KSRやAlbuMAXを添加した培養液を用いることで、in vitroでの完全な精子形成が可能となる。
デバイス本体1の貫通孔23に接続した吸引ポンプを作動させると、タンク9内の培養液が貫通孔21から流路S3に供給され、流路S3を流通し、貫通孔23から排出される。
培養液の流通時、培養室S1内は培養液(組織片の収容時に組織片とともに供給された培養液や多孔質膜7を通過して流入した培養液)で満たされており、拡散によって、流路S3内の培養液中の成分(栄養素、酸素等)が培養室S1内に供給され、また、培養室S1内の培養液中の成分(組織片からの老廃物等)が流路S3側に排出される。
そのため、流路S3に培養液を流通させることで、組織片を培養できる。また、このように組織片の培養を行うことで、組織片の機能を長期間維持できる。
培養温度、流路S3内での培養液の流速等の培養条件は、培養する組織片の種類、大きさ等に応じて適宜設定できる。
以上説明した本発明の第一実施形態の方法においては、前記のように組織片の培養を行うことにより、組織片の機能を、従来よりも長期間維持できる。
例えば精巣組織片の場合、一般的な気層液層境界部培養法では、気層と培養液との境界部に組織片を置くことで栄養素と酸素の供給を図っているが、数日から2〜3週間で精子形成能が失われる。その改良法である非特許文献1の方法でも1〜2か月しか機能を維持できない。対して本発明の第一実施形態の方法によれば、それよりも長く、例えば4か月以上、さらには6か月以上にわたり、精子形成能を維持できる。
これは、多孔質膜から所定の領域内では、生体内の血流に対応するような培養液の送液効果が得られ、生体内での毛細血管と間質液との間での物質交換(栄養素や酸素の供給、老廃物の排出)に類似した物質交換が行われること、培養室S1と流路S3とが多孔質膜7によって区画されているため、組織片が、培養液の流れによるせん断応力などの機械的な刺激を受けにくいこと、等が影響していると考えられる。
実際、本発明者らは、精巣組織片を流路内に配置した状態(培養液の流れにさらされる状態)で培養を行うと、機能が短時間で低下することを確認している(後述の比較例2)。
しかし、このようなデバイスの組織片培養(器官培養)への応用については想定されていなかった。これは、従来、組織片培養の場合、細胞培養とは異なり、形態や機能を維持できる期間が大幅に短いことが知られていること、組織片の形態や機能の維持には生体内の様々なメカニズムが関与しておりin vitroでの再現は難しいと考えられていること、組織片培養で培養される組織片の大きさがミリ単位以上になること、等によるためであった。
したがって、組織片を、培養液の流路と多孔質膜で分けた空間に置くだけで、組織片の機能を前述のように長期間維持できるとの効果は、予想外の驚くべき効果といえる。
第二の層15および多孔質膜7が透明である場合、デバイス本体1の上側から培養室S1内を観察することが可能であり、この場合は、培養室S1の下側が透明でなくてもよい。しかし、デバイス本体1の上側から観察する場合、間に多孔質膜7が介在すること、デバイス本体1の上面にタンク9が配置されていること等から、倒立顕微鏡から培養室S1までの距離が長く、鮮明な像が得られにくい。そのため、デバイス本体1の培養室S1の下側が透明であることが好ましい。
従来、マイクロ流路デバイスを用いた潅流培養では一般的に、培養液を収容したタンクから、ペリスタティックポンプ等の送液ポンプを使用して、マイクロ流路デバイス内に培養液を供給している。この場合、送液時に培養液に気泡が混入しやすい。マイクロ流路デバイスの上流側にバブルトラップを設ける等の対策はとられているが、気泡を完全には防止できない。培養液に気泡が混入すると、流れが阻害されたり、組織と気泡が直接接触した部位での培養液の供給が滞り、組織片へのダメージ等の問題が生じやすい。
デバイス100のように流路S3の下流側に配置された吸引ポンプを使用して培養液を流通させると、前記のような問題が生じにくい。また、タンクに培養液を補充する際に気泡が混入しても容易に脱気できる。そのため、長期間の組織培養を良好に行うことができる。
<第二実施形態のデバイス>
図5〜7を用いて、本発明の第二実施形態のデバイス200を説明する。なお、以下に示す実施形態において、第一実施形態に対応する構成要素には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
図5は、デバイス200の側面図である。図6は、デバイス200を構成する第一の層53の上面図である。図7は、図6のVII−VII断面の一部を示す部分断面図である。図8は、デバイス200のスリット部61を溝5側から見た部分断面図である。
デバイス200は、流路S3の横に培養室S1を設け、それらの間をスリット部で区画したものである。
デバイス本体2は、透明基板11と、層53とが積層したものである。
デバイス本体2においては、透明基板11と溝5とスリット部61とで囲まれた空間が、培養液を流通させる流路S3とされている。また、透明基板11と溝63とスリット部61とで囲まれた空間のうち、スリット部61からの距離が400μm以内の領域が培養室S1とされ、残りの領域が、培養室S1に組織片を導入するための組織片導入路S2とされている。
貫通孔21の開口には、培養液を収容するタンク9が取り付けられ、貫通孔23の開口には、チューブ25を介して、図示しない吸引ポンプが接続されている。
層53の、溝63のスリット部61側とは反対側の末端の位置には、デバイス本体2の上面に開口する貫通孔33が設けられている。貫通孔33の開口には、円筒状の管35が取り付けられている。
溝63の深さD3は、培養室S1の高さとなる。前記のとおり、培養室S1の高さの下限値は、培養する組織片の最小構造単位に依存するので一概には言えないが、精巣組織片の場合は、精細管の直径が最小でも100μmであるため、溝63の深さD3は、100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましい。
溝63の深さD3の上限は、組織片の機能の発現および維持の観点では特に限定されず、培養する組織片の大きさに応じて適宜設定できる。ただし、溝63を深くして培養室S1を大きくしようとすると、スリット部61を介して培養室S1に接する流路S3の高さ、つまり溝5の深さも深くなる。溝5が深くなると、培養液の使用量が多くなる。そのため、培養液量節約の観点では、溝63の深さD3は、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
溝63の、溝5との合流部分の幅W3は、培養室S1に収容する組織片が収容可能な大きさであればよく、組織片の大きさに応じて適宜設定できる。
溝5の深さは、溝63の深さD3と同じである。
なお、溝63の深さD3と溝5の深さとが異なっていてもよい。例えば後述の製造例1の手順を応用すれば、溝63と溝5をそれぞれ異なる深さで形成することができる。この場合、物質交換の観点から、溝63の深さD3が、溝5の深さよりも浅いことが好ましい。溝63の深さD3が溝5の深さよりも浅い場合、培養液量節約の観点から、溝63の深さD3と、溝5の深さとの差が少ないほど好ましい。
層53を構成する材料としては、第一の層13を構成する材料と同様のものが挙げられる。好ましい態様も同様である。
図8に、デバイス200のスリット部61を溝5側から見た部分断面図を示す。
図8に示すように、層53の溝5が溝63に合流する位置では、層53の透明基板11側に、溝5と溝63とを連通させる複数の溝67が等間隔で形成されている。これら複数の溝67に挟まれた部分が、相互に間隔をあけて配置された複数の壁材61aとなっている。
また、溝67の深さD4は、壁材61aの幅W6より大きくされている。そのため、溝67は、培養液の流通方向(溝5の延在方向)と直交する状態で交差するスリットとなっている。
幅W6と幅W7との比(W6:W7)は、良好な物質交換と組織片へのダメージの抑制の観点から、100:1〜1:1の範囲内であることが好ましく、20:1〜2:1の範囲内がより好ましい。
デバイス200は、透明基板11と層53とを積層してデバイス本体2を作製し、得られたデバイス本体1の貫通孔21にタンク9を取り付け、貫通孔23にチューブ25を介して吸引ポンプを接続し、必要に応じて貫通孔33に管35を取り付けることにより製造できる。
層53は、従来、マイクロリアクター等の流路構造を有するマイクロデバイスの製造に用いられている方法など、公知の微細加工法を利用して製造できる。該微細加工法としては、例えばリソグラフィー法、エッチング法、切削、射出成型、3Dプリンティング等が挙げられる。例えば、前記の工程(2)にて溝5、溝63および溝67に対応するパターンのマスクを使用する以外は第二の層15の作製と同様の操作で層53を作製できる。
なお、上記に列記した方法を用いれば、必要に応じて、溝5、溝63および溝67をそれぞれ独立して所望の深さで形成することができる。
透明基板11と層53との積層は、プラズマボンディング法、溶着、圧着、治具を利用した保定法等により行うことができる。
本発明の第二実施形態の方法は、前記のデバイス200を使用して行われる。
本発明の第二実施形態の方法は、例えば以下の工程(IIa)〜(IIb)を含む。
(IIa)デバイス200のタンク9内および流路S3内に培養液を満たし、培養室S1内に組織片を導入する工程、
(IIb)貫通孔23にチューブ25を介して接続した図示しない吸引ポンプを作動させることによりタンク9内の培養液を流路S3に流通させ、培養室S1内の組織片を培養する工程。
多孔質膜7として四角形状のものを示したが、多孔質膜7は少なくとも切欠き部3と溝5とが重なる部分の全体を覆うものであれば、その形状や大きさは特に限定されない。
透明基板11および第一の層13を別々に作製する例を示したが、透明基板11および第一の層13を一体成形してもよい。
培養室S1の上側に多孔質膜7および流路S3が配置された例を示したが、培養室S1の下側に多孔質膜および流路が配置されてもよい。また、培養室S1の上側および下側の両方にそれぞれ多孔質膜および流路が配置されてもよい。
デバイス110は、第三の層17と多孔質膜7Aと第一の層13と多孔質膜7と第二の層15とがこの順に積層したものである。
第三の層17は、第一の層13側の表面に、流路形成用の溝5Aを有する。
多孔質膜7Aは、多孔質膜7と同様である。
流路の左右に、隔離材を介して培養室を配置してもよい。
培養室の上側および下側のいずれか一方または両方に、隔離材を介して流路を配置してもよい。
例えば複数の隔離材の一部を多孔質膜とし、残りをスリット部としてもよい。
また、デバイス110のように、多孔質膜を介して培養室に接する流路を複数備える場合、各流路と培養室とを区画する多孔質膜はそれぞれ同じでも異なってもよい。例えば孔径等が異なっていてもよい。
また、スリット部を介して培養室に接する流路を複数備える場合、各流路と培養室とを区画するスリット部はそれぞれ同じでも異なってもよい。例えば壁材の幅や間隔が異なっていてもよい。
隔離材を介して培養室に接する流路を複数備える場合、各流路に流通させる培養液の組成や流速は同じでも異なってもよい。
図1〜4に示す構成のデバイス100を以下の手順で製造した。
まず、シリコン基板を用意し、該シリコン基板上に、スピンコーティングによりフォトレジスト(商品名「SU−8 2100」;マイクロケム社製)を塗布し、ベークしてフォトレジスト層を形成した。次いで、切欠き部3(培養室S1および組織片導入路S2)のパターンのマスクを介して露光、現像を行い、フォトレジスト層にマスクのパターンを転写した。該フォトレジスト層(鋳型)上に、未硬化のPDMSを塗布してポリマー層を形成し、UV照射により硬化させた。硬化後、ポリマー層を剥離して、切欠き部3を有する第一の層13(外径:長径×短径×厚さ=76mm×32mm×160μm、培養室S1:幅W1×幅W2×高さ=2mm×4mm×160μm、組織片導入路S2:幅×長さ×高さ=4mm×8mm×160μm)を得た。
透明基板11として、ガラス板(厚さ1.2mmスライドガラス)を用意した。
第一の層13、第二の層15、多孔質膜7および透明基板11それぞれの表面をO2プラズマ処理した。その後、透明基板11と第一の層13と多孔質膜7と第二の層15とをこの順に配置し、プラズマボンディング法による共有結合で接着してデバイス本体1を得た。
得られたデバイス本体1の貫通孔21にタンクを取り付け、貫通孔23にチューブ25を介して吸引ポンプを接続し、貫通孔33に管35を取り付けてデバイス100を作製した。
本試験は、多孔質膜からの距離が組織片に与える影響を評価する目的で実施した。
デバイス:
図5〜8に示す構成のデバイス200を以下の手順で製造した。
まず、製造例1における第二の層15の作製条件のうち、マスクを変更した以外は同じ操作を行い、片面に溝5、溝63および溝67を形成したポリマー層を得た。該ポリマー層の所定の位置に3つの貫通孔21、23、33を設けて層53を得た。
この例では、溝5の幅W4×深さは500μm×140μmとし、溝63の幅×深さD3は3〜7mm×140μmとし、溝67の深さD4×幅W7×厚さW5は140μm×25μm×100μmとし、溝6間の間隔(壁材61aの幅)W6は50μmとした。溝5と溝63との合流部分の幅W3は5mmとした。
次に、透明基板11として、ガラス板(厚さ1.2mmスライドガラス)を用意した。
層53および透明基板11それぞれの表面をO2プラズマ処理した。その後、透明基板11と層53とをこの順に配置し、プラズマボンディング法による共有結合で接着してデバイス本体2を得た。
得られたデバイス本体2の貫通孔21にタンクを取り付け、貫通孔23にチューブを介して吸引ポンプを接続し、貫通孔33に管35を取り付けてデバイス200を作製した。
次に、デバイス200のデバイス本体2をタンク9ごと34℃のインキュベーター内に入れた。吸引ポンプはインキュベーターの外部に配置した。続いて吸引ポンプを作動させ、流路S3に培養液を緩徐に流通させながら組織片の培養を行った。
培養液としてはαMEM+4%AlbuMAXを使用した。
流路S3内での培養液の流速は0.05μL/分とした。
培養期間中、数日ごとにデバイスをインキュベーターから取り出し、倒立顕微鏡によりデバイス本体2の下側からデバイス本体2内の組織片を観察した。
培養開始から28日間経過した時点それぞれにおけるデバイス本体2内の組織片の顕微鏡像を図10に示す。図10中の矢印は、培養液用の流路に流通させた培養液の流れを示し、双方向矢印は、スリットから400μmの距離を示す。
図10に示すとおり、組織片のうち、スリットの位置から400μm以内にある部分は、精巣組織の構造が維持されていたが、スリットからの距離が400μmを超えている部分は壊死に陥っていた。
新生仔期(0.5日齢)のAcr−GFPトランスジェニックマウスの生体から精巣および精巣上体を一塊のまま摘出した。白膜をはがして精巣上体をはずし、精巣のみとした。この日齢のマウスの精巣は十分に小さいため分割せずにそのまま培養に供した。
Acr−GFPトランスジェニックマウスは、精子形成の途中の生殖細胞においてGFP遺伝子が発現し、そのGFPタンパク質が精子の先体部分に集簇して発色するマウスであり、筑波理研・バイオリソースセンターより入手した。
組織片(精巣)の培養は、製造例1で製造したデバイス100を用いて、以下の手順で行った。
次に、デバイス100のデバイス本体1をタンク9ごと34℃のインキュベーター内に入れた。吸引ポンプはインキュベーターの外部に配置した。続いて吸引ポンプを作動させ、流路S3に培養液を緩徐に流通させながら組織片の培養を行った。
培養液としてはαMEM+4%AlbuMAXを使用した。
流路S3内での培養液の流速は0.05μL/分とした。
新生仔期(0.5日週齢)のAcr−GFPトランスジェニックマウスの生体から精巣および精巣上体を一塊のまま摘出した。白膜をはがして精巣上体をはずし、精巣のみとした。精巣が小さいため分割せずにそのまま培養液に半分程度浸漬したアガロースゲルの台の上にのせて培養した。培養液としては、実施例1で用いたのと同じものを使用した。
培養期間中、数日ごとにデバイスをインキュベーターから取り出し、倒立顕微鏡により組織片(精巣)を観察した。また、精子形成の進行具合の指標であるGFP Gradeを前記と同様にして測定した。
G1:精子形成が生じている部分の比率が10%以下。
G2:精子形成が生じている部分の比率が10%超30%以下。
G3:精子形成が生じている部分の比率が30%超50%以下。
G4:精子形成が生じている部分の比率が50%超70%以下。
G5:精子形成が生じている部分の比率が70%超90%以下。
G6:精子形成が生じている部分の比率が90%超。
ただし、比較例1のように組織片をアガロースゲル上に乗せて培養する際には、組織の中央部には酸素・栄養素の供給および老廃物の排除が不十分なために精子形成は期待できない。そのため比較例1では、組織片の辺縁から400μm以内の部分に限定して評価を行った。
図11に、比較例1にてアガロースゲル上で培養した精巣組織片のGFP GradeのG1〜G6それぞれの段階の蛍光顕微鏡像を示す。
図12に示すとおり、比較例1では、培養期間が2か月を超えた頃からGFP Gradeの値が低下し、86日経過時点でほぼゼロになった。
対して実施例1では、培養期間が1か月を超えた頃からGFP Gradeの値が比較例1を上回り、6か月経過時点でもGFP Gradeが高い値を示しており、精巣臓器の機能を発現・維持する能力が極めて高いことが確認できた。
まず、製造例1における第二の層15の作製条件のうち、マスクを変更した以外は同じ操作を行い、片面に溝を有し、3つの貫通孔を有するポリマー層を得た。
図13に、該ポリマー層の溝の周辺の部分上面図を示す。該ポリマー層においては、直線状の溝71(幅×高さ(深さ)=1mm×500μm)の中間部の2ヶ所にそれぞれスリット部75が形成されている。スリット部75は、高さが150μm、培養液の流通方向に対して直交する方向における幅が200μm、培養液の流通方向における幅が1000μmの壁材が、200μmの間隔をあけて配列した構造とした。2ヶ所のスリット部75の間に円形の貫通孔73(直径2mm×2mm)が設けられている。また、溝71の上流側末端および下流側末端のそれぞれに図示しない貫通孔が設けられている。
得られたデバイス本体の、溝71の上流側末端の貫通孔にタンクを取り付け、下流側末端の貫通孔にチューブを介して吸引ポンプを接続してデバイスを作製した。
該デバイスにおいては、ガラス板と溝71または貫通孔73とで囲まれた空間が流路とされ、流路の一部(ガラス板と貫通孔73とで囲まれた部分)が培養部を兼ねている。
作製したデバイスのタンクに培養液を入れ、流路を培養液で満たした。また、貫通孔73から組織片を流路内に導入し、貫通孔73の開口を、ガラス板で塞いだ。
次に、デバイスのデバイス本体をタンクごと34℃のインキュベーター内に入れた。吸引ポンプはインキュベーターの外部に配置した。続いて吸引ポンプを作動させ、流路に培養液を緩徐に流通させながら組織片の培養を行った。
培養液としてはαMEM+4%AlbuMAXを使用した。
流路のうち、ガラス板と溝71とで囲まれた部分での培養液の流速は0.05μL/分とした。
その結果、GFPの発現は限局して弱く(GFP Grade1〜2)、培養期間が50日間を超えた頃にはGFP Gradeがほぼゼロになった。
・精巣生検から得た精巣組織片を用いた、精子形成不全の患者の病態診断や治療(精子産生)。
・卵巣生検から得た卵巣組織片を用いた、体外での成熟卵の産生。
・組織片を用いた、新薬開発の際の毒性試験。
・がん細胞を含む組織片を用いた、抗がん剤の効果判定。
また、本発明のデバイスは、精巣組織片等の様々な組織片の培養に利用でき、実験器具として汎用性がある。
2 デバイス本体
3 切欠き部
5 溝
7 多孔質膜
9 タンク
11 透明基板
13 第一の層
15 第二の層
17 第三の層
21 貫通孔
23 貫通孔
25 チューブ
31 組織片
33 貫通孔
35 管
53 層
61 スリット部
61a 壁材
63 溝
67 溝
100 デバイス
110 デバイス
200 デバイス
S1 培養室
S2 組織片導入路
S3 流路
Claims (4)
- 複数種の構造体を含む、器官の機能を発現し得る組織片の前記機能を発現させ維持する方法であって、
前記組織片が精巣組織片であり、
前記組織片を培養室に収容し、前記培養室と隔離材を介して接する流路に培養液を流通させる工程を有し、
前記隔離材が、多孔質膜、または相互に間隔をあけて配置された複数の壁材から構成されるスリット部であり、
前記培養室が、前記隔離材から400μm以下の領域内に設けられていることを特徴とする方法。 - 下記組織片培養デバイスを用いる、請求項1に記載の方法。
器官の機能を発現し得る組織片を収容する培養室と、
培養液を流通させる流路と、
隔離材と、
を備え、
前記隔離材が、多孔質膜、または相互に間隔をあけて配置された複数の壁材から構成されるスリット部であり、
前記培養室と前記流路とが、前記隔離材を介して接しており、
前記培養室が、前記隔離材から400μm以下の領域内に設けられている組織片培養デバイス。 - 前記組織片培養デバイスが、透明基板と、培養室形成用の切欠き部が設けられた第一の層と、前記多孔質膜と、流路形成用の溝が設けられた第二の層とがこの順で積層したデバイス本体を備え、
前記多孔質膜は、前記切欠き部と前記溝とを区画するように配置され、
前記透明基板と前記切欠き部と前記多孔質膜とで囲まれた空間が前記培養室とされ、前記多孔質膜または前記第二の層と前記溝とによって囲まれた空間が前記流路とされている、請求項2に記載の方法。 - 前記デバイス本体は、前記透明基板側を下側にして配置され、
前記第二の層に、前記流路に培養液を供給する培養液導入路と、前記流路から培養液を排出する培養液排出路とが形成され、
前記培養液導入路および前記培養液排出路がそれぞれ前記デバイス本体の上面に開口し、
前記培養液導入路の開口に、培養液を収容するタンクが取り付けられ、前記培養液排出路の開口に吸引ポンプが接続されている、請求項3に記載の方法。
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