以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明を適用した乳幼児用便器(おまる)1の外観の斜視図であり、図2は、図1の乳幼児用便器1の主要部品の取り付けを示す図であり、図3は、図1の乳幼児用便器1の底面図である。
乳幼児用便器1は、便器本体10と、中桶20と、便器本体10に載置される便座(補助便座)30と、便器本体10に被せられる蓋部材40と、便器本体10の下方に収納される補助ステップ部材50とを有している。蓋部材40は、便器本体10に対して枢動可能、すなわち開閉可能に取り付けられている。なお、本明細書中では、乳幼児用便器1への着座時の背面側、すなわち開いた蓋部材40側を「後」側と規定し、それとは反対側を「前」側と規定する。
各部材の詳細を説明する前に、本発明を適用した乳幼児用便器1の使用方法について説明する。
図4は、図1の乳幼児用便器1の補助ステップ部材50の取り付けを示す図であり、図5は、図1の乳幼児用便器1の2段ステップ状態を示す図であり、図6は、図1の乳幼児用便器1の1段ステップ状態を示す図である。
乳幼児用便器1は、おむつ離れのトイレトレーニングの第1段階として、図1に示されるように、通常のおまるとして使用することができる。その後、幼児が成長するにつれて、おまるではなく一般用(大人用)の便器の使用のトレーニングが行われる。幼児にとって一般用の便座の開口は大きく、そのまま着座すると便器内に落下してしまう可能性がある。落下を防止するために、一般用の便座の上に、補助便座として便座30が載置される。このとき、幼児が、一般用の便器の便座に着座するまでのステップ、すなわち昇降台として、または、正面を向いて着座した状態で用を足す際に力を入れやすいように踏ん張るためのステップ、すなわち足場として、蓋部材40及び補助ステップ部材50が使用される。
補助ステップ部材50は、収納されている便器本体10の下方から取り外され、図4に示されるように、便器本体10の上部に対して閉鎖状態の蓋部材40の上方から取り付けられる。図5に示されるように、補助ステップ部材50が取り付けられた乳幼児用便器1は、閉鎖状態の蓋部材40を第1段目のステップとし、その上に取り付けられた補助ステップ部材50を第2段目のステップとする、2段ステップを有する踏み台として機能する。この状態を、2段ステップ状態と称する。2段ステップ状態の乳幼児用便器1を、補助便座30が取り付けられた一般用の便器2の正面に配置することで、乳幼児用便器1を昇降台及び足場として、使用することができる。
さらに幼児が成長すると、補助ステップ部材50が不要となる。その場合、補助ステップ部材50は、便器本体10の上部から取り外され、再び便器本体10の下方に収納される。図6に示されるように、補助ステップ部材50が取り外された乳幼児用便器1は、閉鎖状態の蓋部材40を第1段目のステップとする、1段ステップを有する踏み台として機能する。この状態を、1段ステップ状態と称する。1段ステップ状態の乳幼児用便器1を、補助便座30が取り付けられた一般用の便器2の正面に配置することで、乳幼児用便器1を2段ステップ状態よりも低いステップを有する昇降台及び足場として、使用することができる。なお、1段ステップ状態は、用を足す際の足場以外に、洗面所において手洗いや歯磨きをする際の足場としても使用可能である。
以上のように、1段ステップ状態及び2段ステップ状態を、乳幼児の成長に応じて、選択することで、昇降台及び足場の高さを最適に調整することが可能となる。
続いて、乳幼児用便器1を構成する各部材について説明する。
まず、便器本体10内に収納され、排泄物を貯留する中桶20から説明する。図7は、図1の乳幼児用便器1の中桶20の斜視図であり、図8は、図7の中桶20の側面図である。中桶20は、図7において手前側、図8において左側が、乳幼児用便器1の前側に配置されるように、便器本体10内に収納される。中桶20は、排泄物を貯留する空間を画成する側壁21及び底壁22を有する。側壁21の上端は全周に亘って外側に湾曲して、外縁部23を形成する。中桶20の前端部分の外縁部23は、他の部分よりも上方に延び、且つ、切欠部23aを有している。切欠部23aを有する外縁部23の部分は、便器本体10から中桶20を取り外す際に把持される。
底壁22には、左右方向に延びる凸状の分離凸部22aが形成されている。分離凸部22aは、中桶20の長手方向における中央部分か、またはそれよりも前方寄りに形成されている。中桶20が、分離凸部22aを有することによって、乳幼児が排泄した際に、分離凸部22aよりも前方側には小便が貯留し、分離凸部22aよりも後方側には大便が貯留する。すなわち、中桶20内において、小便と大便との混合が防止される。従って、小便と大便とが混合して中桶20の清掃が大変になるということはない。小便と大便との混合を防止する手段として、凸状の分離凸部ではなく、底壁22から左右方向に延びる突出した分離壁部であってもよい。なお、中桶20は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成される。
図9は、図1の乳幼児用便器1の補助便座30の斜視図であり、図10は、図9の補助便座30の裏面の斜視図である。なお、説明の簡略化のため、便座30を補助便座として使用していない場合でも、補助便座30と称する。
補助便座30は、図9において奥側、図10において手前側が、乳幼児用便器1の前側に配置されるように、便器本体10上に載置される。補助便座30は、一般用の便器にも載置可能な便座として構成され、環状の座部(補助便座本体)31と、小水を受けるための小水受け32と、翼部33とを有している。座部31と小水受け32と翼部33とは、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成される。なお、小水受け32を座部31から着脱可能な別体の部材としてもよい。
座部31は、乳幼児が着座する座面34と、座面34内周側から下方に延びて開口部35を画成する内壁36と、座面34外周側から下方に延びる外縁部37とを有する。座面34の前端側には、球状に隆起する隆起部34aが形成される。内壁36の前端側には、隆起部34aに隣接して、前方に向かう凹部36aが形成される。内壁36の凹部36aは、隆起部34aの形状に合わせて隆起部34aの内面まで上方へ延び、隆起部34aの内面と共に小水受け32を形成する。小水受け32の前面32a、すなわち内壁36の凹部36aの裏面と、前面32aの左右から突出する一対のリブ部材32bは、一般用の便座への固定の際に使用される。
翼部33は、座部31の左右後方において、座部31から左右方向に突出して形成されている。補助便座30が一対の翼部33を有することによって、乳幼児用の小さい座部31を、一般用の便座の上に安定して載置可能になる。また、翼部33の裏面に一対、及び、座部31の前端部分の裏面に1つ、合計3つのゴム足部材60が取り付けられている。ゴム足部材60は、補助便座30が載置される一般用の便座との滑り止めの目的で使用される。ゴム足部材60は、例えば熱可塑性エラストマーから形成され、ねじによって固定される。なお、図10において、翼部33の一方のゴム足部材60は省略されている。
補助便座30の裏面の左右後方には、後述する便座固定部材70が取り付けられる一対の筒状の保持部材38が形成されている。なお、一方の保持部材38には、便座固定部材70がすでに取り付けられている。保持部材38は、中心軸線周りに90度間隔で、中心軸線から径方向に等しい距離だけ突出し且つ長手方向に延びる4つの保持突起39を有している。
補助便座30は、図11に示されるように、床面に対して垂直、すなわち縦に自立して置くことができる。補助便座30の自立した縦置きは、補助便座30の後端が少なくとも3つの支持点を有することから実現される。すなわち、各翼部33の後端に、支持点33aが形成され、座部31の後端に支持点31aが形成されている。補助便座30を縦置きしようとすると、左右の支持点33aと、この2点間を結んだ直線の中央を通る垂線上に配置される支持点31aとによって、床面上に二等辺三角形を形成する3つの支持点が確立する。縦置きした状態で、補助便座30の重心は、3つの支持点31a、33aによる二等辺三角形内の上方に配置されるように設定される。その結果、補助便座30は、安定して且つ自立した縦置きが可能となることから、補助便座30単体での収納及び保管に適している。
また、支持点31a及び支持点33aの近傍は、それぞれ平坦ではなく、曲面から形成される。従って、補助便座30を縦置きしていない状態でその後端を見ても、無機質な直線や平面の要素は一切無く、柔和な美感を感じさせる。なお、支持点は4つ以上であってもよい。また、すべての支持点が、座部31の後端のみ又は翼部33の後端のみに配置されるようにしてもよい。
図12は、図10に示された便座固定部材70の斜視図であり、図13は、図10の便座固定部材70の側面図である。便座固定部材70は、筒状に形成された筒状壁部71と、筒状壁部71内部を塞ぐ支持壁72とを有する。筒状壁部71の上部には、略半円に相当する部分を切り欠いた切欠部71aが形成されている。支持壁72には、筒状の筒状壁部71の中心軸線Cを中心とする円形の取付穴72aが形成されている。
筒状壁部71の周面には、中心軸線C周りに90度間隔で、中心軸線Cから径方向に突出する2つの固定突起73a、73bが長手方向に形成されている。固定突起73aの突出量は、固定突起73bの突出量よりも大きい。また、筒状壁部71の下端であって各固定突起73a、73bに対応する位置を含む、中心軸線C周りに90度間隔で、下端面より所定深さ切り込まれた4つの差込部74が形成されている。
便座固定部材70の補助便座30裏面への取り付けは、便座固定部材70の姿勢を確認しながら、差込部74が形成された側の筒状壁部71内に補助便座30の保持部材38を挿入する。すなわち、便座固定部材70の差込部74内に、保持部材38から突出する4つの保持突起39が差し込まれるように、中心軸線C周りの回転位置を合わせる。この状態で、便座固定部材70は、取付穴72aにねじを挿入して締結することで、補助便座30の裏面に固定される(図10)。なお、便座固定部材70は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成される。
図14は、図9の補助便座30の一般用の便座3への載置を示す図である。補助便座30を一般用の便座3に載置する際に、一般用の便座3の開口部4内に、小水受け32及び左右一対の便座固定部材70が挿入される。補助便座30は、開口部4内に挿入された小水受け32及び便座固定部材70が、開口部4を画成する側縁部4aと強く当接することによって、一般用の便座3に固定される。具体的には、小水受け32については、前面32a又はリブ部材32bが、便座3の開口部4の前方の側縁部4aと当接する。また、便座固定部材70については、それぞれ左右方向の外側の部分が便座3の開口部4の左右の側縁部4aと当接する。
ここで、一般用の便座3の開口部4の大きさや形状は、便器のメーカーによって様々であるため、補助便座30が確実に固定されるように調整する必要がある。図15は、図10の便座固定部材70の取り付けの調整を示す図である。図15に示されているのは、図14において右側の便座固定部材70である。図15において、一般用の便座3は省略されており、便座3の開口部4の側縁部4aのみが示されている。
例えば、便座3の開口部4が比較的に大きい場合には、開口部4の側縁部4aは、便座固定部材70に対してより右側に配置される。従って、図15(a)に示されるように、中心軸線Cから径方向に最も突出した固定突起73aが、側縁部4aに対向して配置されるように便座固定部材70の回転位置を調整する。便座固定部材70の回転位置の調整は、取付穴72aに挿入されたねじを一旦緩めた後で、便座固定部材70を回転軸線周りに回転させ、ねじを再び締めることで行われる。回転軸線は、補助便座30の載置状態において下方へ延びる軸線であり、ここでは筒状壁部71の中心軸線Cと同一である。
また、便座3の開口部4がより小さい場合には、図15(b)に示されるように、より突出量の小さい固定突起73bが、側縁部4aに対向して配置されるように便座固定部材70の回転位置を調整する。便座3の開口部4がさらに小さい場合には、図15(c)に示されるように、固定突起73a、73bではなく、筒状壁部71が、側縁部4aに対向して配置されるように便座固定部材70の回転位置を調整する。便座3の開口部4がさらに小さい場合には、図15(d)に示されるように、切欠部71aが、側縁部4aに対向して配置されるように便座固定部材70の回転位置を調整する。
以上より、便座固定部材70は、挿入される便座3の開口部4の側縁部4aとの距離に応じて、便座固定部材70を回転させて側縁部4aに当接させるように形成された複数の当接部を有していると言える。ここで、複数の当接部とは、すなわち固定突起73a、73bと、筒状壁部71と、切欠部71aとの4つの当接部である。
図15では、図14において右側の便座固定部材70の取り付けの4つの調整パターンを説明した。左側の便座固定部材70についても同様に4つの調整パターンがあることから、左右の便座固定部材70を独立に調整することによって、合計10パターンの調整が可能となる。
上述した補助便座30の調整機構によれば、便座固定部材70を中心軸線(回転軸線)周りの回転位置を変更することによって、便座3の開口部4の大きさや形状の違いにも拘わらず、補助便座30を一般用の便座3の上に載置することが可能となる。また、この調整機構は、例えば特許文献1に記載の調整機構と比較して部品点数も少なく、各部品形状も単純であることから、低コストで製造可能である。
上述の調整機構は、各便座固定部材において開口部の側縁部と当接する4つの当接部を有することから、4つの固定可能な回転位置を有していた。しかしながら、調整機構が、5つ以上又は3つ以下の当接部を有し、対応する固定可能な回転位置を有するようにしてもよい。また、固定突起の突出量や形状等も任意に設定可能である。さらに、複数の当接部は、便座固定部材と開口部の側縁部との距離に応じて当接させる部位を有すればいいので、例えば、上述の固定突起の当接部を連結するような連続的な曲面を有するような形状であってもよい。さらに、調整機構が、上述の調整機構のような保持突起及び差込部を有さず、単に便座固定部材の筒状壁部内に補助便座の保持部材を挿入し、ねじで固定するようにしてもよい。この場合、回転位置は、上述のような段階的ではなく、無段階的に調整することが可能となる。そのため、例えば同じ固定突起73aを見ても、回転位置を無段階的に微調整することで、最適な位置及び角度等で、側縁部4aに当接させることが可能となる。
図16は、図1の乳幼児用便器1の蓋部材40の斜視図であり、図17は、図16の蓋部材40の側面図である。蓋部材40は、第1段目のステップとなる平坦な天板41と、蓋部材40の閉鎖状態において天板の縁から下方に延びる縁壁42と、蓋部材40の左右後端に配置されて前後方向に鉛直に延びる支持板43と、左右の支持板43間に延びて支持板43を補強する補強板44とを有している。
天板41は、図示しないが、図25を参照しながら後述する補助ステップ部材50の天板51と同様に、蓋部材40の閉鎖状態において縁壁42の上縁部から微小な段差を有する段部を介して低い位置に配置される。蓋部材40を第1段目のステップとして使用する場合に、この段部は、足が引っ掛かることによる滑り止めの効果を奏する。また、天板41の表面には、滑り止めとデザイン的な目的で、シボ加工がなされている。
縁壁42の後方部分は、長手方向の長さの半分程度において切り欠かれた切欠部42aが形成されている。切欠部42aが形成されていることによって、蓋部材40を閉鎖する際に、乳幼児が、便器本体10との間に着衣等を挟んでしまう可能性が低減される。
支持板43の各々は、その外側面に外方に延びる中空のボス部45と、ボス部45と同心に環状に形成され、外方に向かって凹凸の歯面を有する歯部46とを有している。ボス部45の長手方向の支持板43側の外周面には、複数の突起47が中心軸線周りに等間隔に形成されている。
図18は、図16の蓋部材40の開閉機構を示す図である。蓋部材40の開閉機構は、軸受インナー部材80と、ばね部材(弾性部材)90と、軸受部材100と、ピン部材110とを有している。
図19は、図18に示された軸受インナー部材80の斜視図であり、図20は、図19の軸受インナー部材80の正面図であり、図21は、図20の軸受インナー部材80の線A−Aにおける断面図である。軸受インナー部材80は、正方形の正面及び背面を有する直方体の部材である。軸受インナー部材80の正面には、蓋部材40の歯部46と噛合するように相補的な凹凸が形成された歯部81が環状に形成されている。また、環状の歯部81の内側には、小径の円形断面を有する円形開口部82が形成されている。他方、軸受インナー部材80の背面には、正方形断面を有する矩形開口部83が形成されている。すなわち、矩形開口部83は、矩形の周壁84によって画成されている。円形開口部82及び矩形開口部83は、分離壁85によって分離されているが、分離壁85に形成された円形の開口部86によって連通している。
蓋部材40の開閉機構の組み立て時に、円形開口部82には、ボス部45の外周面に形成された複数の突起47の部分が収容され、開口部86には、突起47よりも先端のボス部45の部分が挿通される。蓋部材40の開閉によるボス部45の回転は、複数の突起47を介した円形開口部82の内周面と、開口部86の内周面とによって支持される。軸受インナー部材80は、硬質のプラスチック、例えばポリアセタールを一体成型することにより形成される。
図22は、図18に示された軸受部材100の斜視図であり、図23は、図22の軸受部材100の正面図であり、図24は、図23の軸受部材100の線B−Bにおける断面図である。軸受部材100は、図23において右側が、乳幼児用便器1の前側に配置されるように、便器本体10の後部に取り付けられる。軸受部材100は、四角柱状の軸部101と、軸部101の上部に配置された円柱状のインナー保持部102とを有する。軸部101の下端面には、下方に突出し、便器本体10に挿入される挿入部101aが形成されている。また、軸部101の前端面は、後述する便器本体10の後端面18cと当接する平坦な当接面101bを形成する。当接面101bの上部には、前方に突出する支持枝部103が形成されている。支持枝部103は、下方に突出し、便器本体10に挿入される挿入部103aを有する。
インナー保持部102は、軸受インナー部材80を受容して保持する保持凹部104を有する。保持凹部104は、軸受インナー部材80と相補的な矩形に形成されている。従って、軸受インナー部材80の軸受部材100に対する回転が規制される。保持凹部104の底面104aには、円形の端面を有するように隆起し、ばね部材90の一端を当接して支持するばね支持面105が形成されている。
ばね支持面105には、軸受インナー部材80のボス部45の端面と対向する環状の凸部106が形成されている。環状の凸部106によって囲まれた部分のばね支持面105には、ピン部材110が挿入される開口部107が形成されている。インナー保持部102の保持凹部104とは反対側の面には、開口部107を介して保持凹部104と連通する凹部108が形成されている。軸受部材100は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成される。
図18を参照しながら、蓋部材40の開閉機構の組み立てについて説明する。蓋部材40の支持板43に対し、外側から軸受インナー部材80を取り付ける。このとき、ボス部45が、軸受インナー部材80の円形開口部82、開口部86及び矩形開口部83を貫通する。そして、蓋部材40の支持板43の歯部46と、軸受インナー部材80の歯部81とが噛合するように取り付けられる。この状態で、さらにばね部材90が、ボス部45の外側に被せられる。ばね部材90の一端は、軸受インナー部材80の分離壁85に当接する。
さらに、軸受部材100が、ばね部材90を圧縮しながら外側から取り付けられる。このとき軸受インナー部材80は、軸受部材100の保持凹部104内に受容される。ばね部材90の他端は、環状の凸部106の外側に被せられ、ばね支持面105に当接する。すなわち、ばね部材90は、軸受インナー部材80を蓋部材40の支持板43の方向に付勢し、蓋部材40の支持板43の歯部46と軸受インナー部材80の歯部81との噛合を、より確実にしている。最後に、蓋部材40の支持板43の内側からピン部材110が挿入される。ピン部材110は、ボス部45内部を貫通し、その先端は、軸受部材100の凹部108に達する。ピン部材110の先端は、凹部108内において、ねじ止めやかしめられることによって、抜けないように固定される。
蓋部材40を軸受部材100に対して回転させると、蓋部材40の支持板43の歯部46の斜面と、軸受インナー部材80の歯部81の斜面とが互いに滑り、軸受インナー部材80が、ばね部材90の付勢力に抗して支持板43から離間する方向に保持凹部104内を摺動する。蓋部材40の歯部46の頂点が軸受インナー部材80の歯部81の頂点を越えると、軸受インナー部材80が、ばね部材90の付勢力によって支持板43の方向に保持凹部104内を摺動し、歯部46及び歯部81が再び噛合する。すなわち、歯部46及び歯部81は、ばね部材90によって噛合する方向に付勢されている。従って、保持凹部104は、少なくとも、歯部46及び歯部81の噛合及びその解除に必要な移動距離だけ軸受インナー部材80の摺動が可能な深さを有している。蓋部材40の支持板43の歯部46の斜面と軸受インナー部材80の歯部81の斜面とが互いに滑る際の摩擦力や、ばね部材90の付勢力が、蓋部材40の回転に対する抵抗力となる。
ここで、ばね部材90は、蓋部材40の自重によって歯部46を介して軸受インナー部材80の歯部81に伝達される回転モーメントに対し、蓋部材40の歯部46と軸受インナー部材80の歯部81との噛合が解除されないような付勢力を有するように選択される。従って、蓋部材40は、軸受部材100に対して任意の回転位置で静止可能であり、使用者が力を加えて蓋部材40を開閉させているときのみ回転可能である。よって、蓋部材40の閉鎖動作が制限され、乳幼児が蓋部材40によって着衣等を挟んでしまう可能性が低減される。
図25は、図1の乳幼児用便器の補助ステップ部材50の斜視図であり、図26は、図25の補助ステップ部材50の底面図であり、図27は、図26の補助ステップ部材50の線C−Cにおける断面図である。補助ステップ部材50は、図25において手前側、図26において上側が、乳幼児用便器1の2段ステップ状態(図5)において前側に配置される。
補助ステップ部材50は、第2段目のステップとなる平坦な天板51と、天板51の縁から下方に延びる側壁(脚部)52とを有している。天板51は、側壁52の上縁部から微小な段差を有する段部53を介して低い位置に配置される。補助ステップ部材50を第2段目のステップとして使用する場合に、段部53は、足が引っ掛かることによる滑り止めの効果を奏する。また、天板51の表面にも、滑り止めとデザイン的な目的で、シボ加工がなされている。天板51の裏面中央には、裏面から突出し、前後方向延びる一対の爪板54が形成されている。爪板54の各々は、外側面に爪部54aを有している。
側壁52は、平坦な後面52aと、後方に湾曲した前面52bと、外方へ湾曲した左右の側面52cとから構成される。前面52bが、後方に湾曲していることによって、2段ステップ状態において、第1段目のステップである蓋部材40の天板41上に足を置く面積を広く確保することが可能となる。
後面52aの下方部分は、幅広く切り欠かれた切欠部52dが形成されている。同様に、前面52bの下方部分は、幅広く切り欠かれた切欠部52eが形成されている。後面52a及び前面52bに、それぞれ切欠部52d及び切欠部52eが形成されていることによって、2段ステップ状態において、補助ステップ部材50が蓋部材40に干渉することがない。言い換えると、切欠部52d及び切欠部52eは、便器本体10への取り付け時に、補助ステップ部材50が蓋部材40、特に天板41と干渉せずに離間するように形成される。それによって、補助ステップ部材50によって蓋部材40の天板41等が損傷することが防止される。左右の側面52cの下端には、便器本体10と係合する係合突起52fが形成されている。補助ステップ部材50は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成される。
図28は、図1の乳幼児用便器1の便器本体10の斜視図であり、図29は、図28の便器本体10の平面図である。便器本体10は、上段部11と、下段部12とを備えている。下段部12は、主としてデザイン的な目的で、上段部11とは別体に形成されているが、上段部11と一体で成型してもよい。上段部11及び下段部12はそれぞれ、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンから成型される。
便器本体10の上面には、中桶20を収納可能に中桶用凹部13が形成されている。中桶用凹部13の底面には、中桶20の分離凸部22aに対応する凸部13aが形成されている。また、凸部13aの後方の中桶用凹部13の底面には、矩形の取付開口部13bが形成されている。補助ステップ部材50を便器本体10の下方に収納する際に、ステップ部材50は、天板51側を下、すなわち上下が逆にして収納される(図3)。このとき、補助ステップ部材50の爪板54は、便器本体10の取付開口部13bより上方に突出し、左右の爪板54の爪部54aによって取付開口部13bの左右の側縁13cにスナップ式に係合する。従って、便器本体10の下方に収納されている補助ステップ部材50は、便器本体10から中桶20を取り外した状態で、取付開口部13bの上方より爪板54の係合を解除することによって便器本体10から取り外すことができる。
中桶用凹部13の周囲近傍には、環状で且つ平坦に形成された環状平坦面14が形成されている。環状平坦面14の左右後方の幅広の部分には、補助便座30の裏面に取り付けられた便座固定部材70を受容する受容孔14aが形成されている。環状平坦面14は、中桶20を中桶用凹部13に収納した際に、中桶20の外縁部23を支持する。
環状平坦面14の周囲には、環状で且つ平坦に形成され、環状平坦面14より低い位置に配置される便座載置面15が形成されている。便座載置面15は、補助便座30を便器本体10に取り付けた際に、3つのゴム足部材60が配置される載置面である。すなわち、便座載置面15は、補助便座30の各ゴム足部材60が対応する位置にある便座載置面15上に配置されることで、補助便座30を支持する。
便座載置面15の周囲には、乳幼児用便器1の正面から見てU字型で且つ平坦に形成され、環状平坦面14及び便座載置面15よりも高い位置に配置されるU字型平坦面16が形成されている。U字型平坦面16によって囲まれ、環状平坦面14及び便座載置面15を底面とする凹部16aは、補助便座30を受容するような形状に形成されている。
U字型平坦面16の左右後方の外側部分には、規制壁17が形成されている。U字型平坦面16において規制壁17より前方の部分は、蓋部材40の縁壁42の下端面を支持する蓋支持面16bである。また、U字型平坦面16の規制壁17近傍の部分は、2段ステップ状態において、補助ステップ部材50の側壁52の下端面を支持するステップ支持面16cである。そのため、ステップ支持面16cは、蓋部材40の閉鎖状態においても覆われていない。なお、補助ステップ部材50の側壁52の下端面を配置する場所は、ステップ支持面16cに限定されない。例えば、便器本体10の他の場所、又は、蓋部材40に配置場所を設けてその上に配置するようにしてもよい。
規制壁17は、2段ステップ状態において、補助ステップ部材50の側面52cが左右方向に拡がらないように規制している。すなわち、乳幼児が、2段ステップ状態において、補助ステップ部材50の天板51上に乗ると、重みで側面52cが左右方向に撓もうとする。この撓みを防止するため、規制壁17が設けられている。従って、規制壁17の内面は、補助ステップ部材50の側面52cに相補的に形成されている。U字型平坦面16の後部には、軸受部材100の支持枝部103の挿入部103aを受容する凹部16dが左右に形成されている。
便器本体10の後端面には、軸受部材100を配置するための軸受凹部18が形成されている。軸受凹部18の底面18aの左右には、軸受部材100の挿入部101aを挿入する取付孔18bが形成されている。さらに、取付孔18bの前方の垂直面は、軸受部材100の当接面101bと当接する後端面18cである。左右後方のU字型平坦面16及び規制壁17に亘って、取付凹部19が形成されている。取付凹部19には、別体のステップ固定部材120が取り付けられる。
図30は、図28の便器本体10の部分拡大図である。また、図31は、図30に示されたステップ固定部材120の斜視図である。ステップ固定部材120は、U字型平坦面16及び規制壁17の形状に適合するL字型のL字部材121と円柱状の軸部122とを有している。L字部材121は、便器本体10への取り付け状態において横方向内側へ突出する係合突起121aと下方に延びる一対の係合爪121bとを有する。ステップ固定部材120は、硬質のプラスチック、例えばポリプロピレンを一体成型することにより形成される。
ステップ固定部材120は、便器本体10の取付凹部19に対して上方から押し込まれ、一対の係合爪121bが便器本体10の内部で係合することによって、便器本体10に対して取り付けられる。ステップ固定部材120のL字部材121は、便器本体10の内部で軸部122が支持されていることから、左右方向に可撓性を有する。
補助ステップ部材50を便器本体10の上に取り付ける際には、便器本体10のステップ固定部材120の係合突起121aと、補助ステップ部材50の側壁52の係合突起52fとが、スナップ式に係合する。その際、ステップ固定部材120が左右方向に可撓性を有することから、補助ステップ部材50のスムーズな取り付けが可能となる。補助ステップ部材50を便器本体10から取り外す際には、両方のステップ固定部材120の上端部を外方に押圧することで、便器本体10のステップ固定部材120の係合突起121aと、補助ステップ部材50の側壁52の係合突起52fとの係合が解除される。なお、別体のステップ固定部材120を便器本体10に取り付けるのではなく、規制壁17と一体に係合突起を形成することもできる。この場合には、補助ステップ部材50を取り外す際に、補助ステップ部材50自体を撓ませて取り外すようにすればよい。また、係合突起を規制壁17と一体に形成することにより、部品点数が減少し、ひいてはコストの低減を図ることができる。以上より、補助ステップ部材50は、便器本体10の上に着脱可能に固定され、且つ、便器本体10の下方に着脱可能に収納される。
以下、乳幼児の着衣等を挟まないようにするための蓋部材の開閉機構の変形例を、上述の開閉機構との相違点を中心にいくつか簡単に説明する。
図32は、蓋部材140の便器本体への取り付けの変形例を示す図である。蓋部材140は、支持板143と、支持板143から外方に延びるボス部145とを有する。本変形例では、トーションスプリング(弾性部材)190が用いられる。トーションスプリング190は、ボス部145の外側に被せられる。トーションスプリング190の一端は支持板143に固定され、他端は図示しない軸受部材等の便器本体側に固定される。トーションスプリング190は、蓋部材140を開放する方向に付勢されている。トーションスプリング190は、蓋部材140の自重によって、蓋部材140が完全に閉鎖されないような付勢力を有するように選択される。よって、蓋部材140の閉鎖動作が制限され、乳幼児が蓋部材140によって着衣等を挟んでしまう可能性が低い。
図33は、図32の変形例における蓋部材140の開動作を示す図である。本変形例によれば、蓋部材140は、トーションスプリング190によって完全に閉鎖されないように開放する方向に付勢されていることから、閉鎖状態を維持する機構が必要である。そこで、蓋部材140の先端部下面に係止爪147を形成し、例えば、便器本体のU字型平坦面116の前端部に係止孔116aを形成する。トーションスプリング190の付勢力に抗して、蓋部材140を閉鎖すると、係止爪147が係止孔116aの縁部116bと係止する(図33(a))。この状態で、例えば、便器本体の係止孔116a近傍の前面に配置されたボタン部150を後方に押圧する。それによって、便器本体の係止孔116a近傍の部材が撓み(図33(b))、係止状態が解除され、自動的に蓋部材140が開く。
図34は、蓋部材240の便器本体への取り付けの別の変形例を示す図である。蓋部材240は、支持板243と、支持板243から外方に延びる中空のボス部245とを有する。本変形例では、可撓性でU字板状の挟持部材290が用いられる。ボス部245の周面は、歯車のように歯車部245aが形成されている。挟持部材290の湾曲した内周面には、歯車部245aの歯車形状と相補的な歯部290aが形成されている。挟持部材290は、ボス部245を挟持するように配置されている。このとき、ボス部245の歯車部245aと挟持部材290の歯部290aとが、噛合している。また、U字型の直線部分には、内側から外側に向かって斜めに下方に延びる長穴290bが左右に形成されている。
図35は、図34の変形例における蓋部材240の動作を示す図である。挟持部材290の各長穴290bには、図示しない軸受部材から支持板243に向かって延びる支持棒200が挿通されている。また、挟持部材290の上方には、図示しない軸受部材から支持板243に向かって延びるボス部245の直径と同等の挟持板201が配置される。支持棒200によって、U字型の挟持部材290の両端部が離間する方向の変形が抑制され、挟持板201によって、U字型の挟持部材290の両端部が接近する方向の変形が抑制される。
蓋部材240を開閉させると、ボス部245の歯車部245aの斜面と、挟持部材290の歯部290aとが互いに滑り、U字型の挟持部材290は、両端部が離間する方向に変形する(図35(b))。さらに開閉動作を継続し、ボス部245の歯車部245aの頂点が挟持部材290の歯部290aの頂点を越えると、可撓性の挟持部材290の復元力によって、歯車部245a及び歯部290aが再び噛合する。すなわち、歯車部245a及び歯部290aは、挟持部材290によって噛合する方向に付勢されている。
ここで、ボス部245の歯車部245aの斜面と挟持部材290の歯部290aとが互いに滑る際の摩擦力や、挟持部材290の復元力による付勢力が、蓋部材240の回転に対する抵抗力となる。そのため、挟持部材290は、蓋部材240の自重によって蓋部材240が回転せず、任意の回転位置で静止可能となるような、すなわち、使用者が力を加えて蓋部材240を開閉させているときのみ回転可能となるような復元力を有するように形成される。よって、蓋部材240の閉鎖動作が制限され、乳幼児が蓋部材240によって着衣等を挟んでしまう可能性が低減される。
図36は、蓋部材340の便器本体への取り付けのさらに別の変形例を示す図であり、図37は、図36の変形例の内部構造を示す断面斜視図である。蓋部材340は、支持板343と、支持板343から外方に延びる中空のボス部345とを有する。本変形例では、環状のワッシャ部材300と、円筒状の弾性部材301とが用いられる。ボス部345は、その周面の一部に平坦面345aを有する。ボス部345に嵌め込まれるワッシャ部材300は、ボス部345の平坦面345aに相補的な直線縁部300aを有することから、蓋部材340の回転と共にワッシャ部材300も併せて回転する。図36に示された状態から、弾性部材301がボス部345の外側に嵌められ、さらにこの状態で、弾性部材301は、軸受部材302に形成された保持凹部303内に圧入される(図37)。
蓋部材340を開閉させると、ワッシャ部材300の端面と弾性部材301の端面との間、及び、ボス部345の外周面と弾性部材301の内周面との間で、大きな摩擦が生じる。これら摩擦に摩擦抵抗が、蓋部材340の回転に対する抵抗力となる。そこで、これら摩擦抵抗を、蓋部材340の自重によって蓋部材240が回転せず、任意の回転位置で静止可能となるような、すなわち、使用者が力を加えて蓋部材340を開閉させているときのみ回転可能となるように調整する。その結果、蓋部材340の閉鎖動作が制限され、乳幼児が蓋部材340によって着衣等を挟んでしまう可能性が低減される。
蓋部材の閉鎖動作を制限して乳幼児の着衣等を挟まないようにするための蓋部材の開閉機構のその他の変形例として、例えば蓋部材の急な開閉動作を緩和するダンパー機能を有する部材を用いてもよい。また、最終的に蓋部材と便器本体等との間に着衣等を挟まないようにすればいいことから、蓋部材が、完全に閉鎖する直前の位置、例えば便器本体から5〜15mm程度の間隙を残した位置で停止するような機械的機構を有してもよい。