以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、同一の機能を有する構成要素については同じ符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。また、簡単のため、図面中において光束は直線で示すこととする。
まず初めに、TIRプリズムで反射する光が楕円偏光になってしまうメカニズムについて説明する。
図2は、DMD300B、TIRプリズム400B、およびXDP500の配置を説明するための図である。
DMD300Bは、XDP500の入射面に対して平行に設置されている。つまり、DMD300Bの矩形状の画像形成領域と、XDP500の入射面とは、ともにyz平面に対して平行である。TIRプリズム400Bは、DMD300BとXDP500の間に設置されている。そして、DMD300Bの矩形状の画像形成領域に設けられたマイクロミラー301の回転軸302と略垂直な方向から、入射光がDMD300Bに入射するようにTIRプリズム400Bが設置されている。つまり、入射光がTIRプリズム400Bの全反射面である第1の面402Bで全反射し、その後、TIRプリズム400Bから出射してDMD300Bに入射する。第1の面402Bが、DMD300Bの矩形状の画像形成領域と徐々に近づくように、TIRプリズム400Bを配置している。より詳細には、DMD300Bの矩形状の画像形成領域に対して、第1の面402Bは斜面となっており、マイクロミラー301の回転軸302と略垂直な方向に沿った斜面となっている。
図3は、図2に示した配置における、TIRプリズム400Bの第1の面402Bへの入射光の偏光方向との関係を説明するための図である。XDP500の入射面に対して45°の角度からTIRプリズム400Bに光が入射される場合、光がTIRプリズム400Bに入射する際の入射面は、XDP500の入射面に対して45°の角度をなす面となる。このため、TIRプリズム400Bの入射面に対して平行または垂直な方向は、XDP500の入射面に対して平行または垂直な方向と一致せず、XDP500の第2の面506に対してs偏光またはp偏光となる光は、TIRプリズム400Bの第1の面402Bに対してs偏光またはp偏光とはならない。TIRプリズム400Bへの入射光は、XDP500の第2の面506に対してs偏光またはp偏光となる偏光方向を有するため、TIRプリズム400Bの第1の面402Bに入射する際には、s偏光成分およびp偏光成分を含む光となる。
s偏光成分およびp偏光成分を含む光が全反射すると、その光の偏光状態に乱れが生じる。具体的には、光が全反射すると、全反射面に入射した光のエネルギーの一部が全反射面を形成する媒体にわずかにしみ出してエバネッセント光が発生する。エバネッセント光のエネルギーは、全反射面に平行な方向に伝搬するため、光の位相が変化するグースヘンシェンシフトと呼ばれる現象が発生する。グースヘンシェンシフトによる位相変化の量は、s偏光成分とp偏光成分とで異なるため、s偏光成分およびp偏光成分を含む直線偏光が全反射すると、直線偏光から楕円偏光に変化してしまう。
なお、ここではDMD300B、TIRプリズム400B、およびXDP500の配置と、青色光がTIRプリズム400B,DMD300Bを介してXDP500に入射する際の偏光方向について説明したが、赤色光および緑色光についても同様である。
(第1の実施形態)
図4は、本発明の第1の実施形態にかかる表示装置1の構成を説明するための図である。表示装置1は、光源10と、照明光学系20と、光分離光学系30と、TIRプリズム40R,40G,40Bと、DMD50R,50G,50Bと、XDP60と、補正光学素子70R,70G,70Bと、投写光学系80とを有する。投写光学系80は、XDP60にて合成された光を投写する投写部である。投写光学系80は、入射された光を拡大して図示しないスクリーンに投写する。
光源10は、光源ランプ11とリフレクタ12とを有している。光源ランプ11は、例えばメタルハライドランプや、高圧水銀ランプなどであり、その種類は特に限定されない。リフレクタ12は、光源ランプ11が出射した光を略平行光に変換して出射する。光源10が出射した略平行光は、照明光学系20に入射する。
照明光学系20は、第1のレンズアレイ21と、第2のレンズアレイ22と、偏光変換素子23と、重畳レンズ24とを有する。照明光学系20は、光源10から出射された略平行光から直線偏光を生成する。
第1のレンズアレイ21および第2のレンズアレイ22は、マトリクス状に配列された多数のレンズにより構成されている。第1のレンズアレイ21は、入射した光を、構成するレンズと同じ数の光束に分割するとともに、分割した各光束を第2のレンズアレイ22の近傍に結像するように構成されている。
第2のレンズアレイ22から出射した光は、偏光変換素子23に入射し、偏光変換素子23で所定の偏光方向を有する直線偏光に変換される。
偏光変換素子23から出射した直線偏光は、重畳レンズ24に入射する。第1レンズアレイ21によって分割された各光束は、重畳レンズ24により、DMD50R,50G,50B上に重畳する。
光分離光学系30は、照明光学系20からの光を色がそれぞれ異なる複数の光に分離する。例えば、光分離光学系30は、青色の光を反射させて青色光よりも波長の長い光を透過させる第1のダイクロイックミラー31と、緑色の光を反射させて緑色よりも波長が長い光を透過させる第2のダイクロイックミラー32とを有する。また、光分離光学系30は、さらに光路を変化させる反射ミラーを有してもよい。
照明光学系20から出射した光は、第1のダイクロイックミラー31により青色の光が反射し、それよりも波長が長い光は透過して第2のダイクロイックミラー32に入射する。第2のダイクロイックミラー32に入射した光のうち、緑色の光は、第2のダイクロイックミラー32で反射し、それよりも波長が長い光(例えば赤色光)は、第2のダイクロイックミラー32を透過する。
第1のダイクロイックミラー31で反射した青色の光は、TIRプリズム40Bに入射する。また、第2のダイクロイックミラー32で反射した緑色の光は、反射ミラー36で反射したのちにTIRプリズム40Gに入射する。第2のダイクロイックミラー32を透過した赤色の光は、反射ミラー33、34、および35で反射したのちにTIRプリズム40Rに入射する。
光源10、照明光学系20、および光分離光学系30は、合わせて照明部25とも呼ばれる。照明部25は、所定の偏光方向を有する複数の色光を出射する。
TIRプリズム40R,40G,40Bは、入射した光の光路を変化させる光路調整部である。具体的には、TIRプリズム40R,40G,40Bは、照明部25からの色光のそれぞれを全反射させてDMD50R,50G,50Bに向けて出射する。DMD50R,50G,50Bの各マイクロミラーで変調された各色光は、TIRプリズム40R,40G,40Bをそれぞれ透過し、XDP60に入射する。
図5は、TIRプリズム40Bの構成を説明するための図である。図5には、TIRプリズム40BおよびDMD50Bを示しているが、TIRプリズム40R,40GおよびDMD50R,50Gについても同様である。
図5に示すTIRプリズム40Bは、プリズム41Bおよびプリズム42Bを含み、プリズム41Bとプリズム42Bとの間には、空気ギャップにより第1の面43Bが形成されている。第1の面43Bは、空気ギャップにより屈折率の異なる界面が形成されているため、第1の面43Bに対して臨界角以上の角度で光が入射すると、その光は全反射する。TIRプリズム40Bは、第1の面43Bに対して照明部25からの光が入射する角度が臨界角以上となり、全反射した光がDMD50Bに入射して、DMD50Bの各マイクロミラーで変調され、該各マイクロミラーで反射された光が、第1の面43Bに対して臨界角未満の角度で入射するように配置される。つまり、TIRプリズム40Bは、照明部25からの光を全反射してDMD50Bに向けて出射するとともに、DMD50Bからの光を透過してXDP60に向けて出射することになる。
図6は、プリズム41Bの詳細な構成について説明するための図である。なお、図6ではプリズム41Bを示しているが、TIRプリズム40R,40Gに含まれるプリズム41R,41Gについても同様である。プリズム41Bの底面の三角形の内角は、それぞれ33°、50°、97°であり、ガラスの屈折率は1.517、光が第1の面43Bへ入射する角度は48.5°である。このとき、光がプリズム41Bから出射して、DMD50Bに入射する角度は24°である。
図4の説明に戻る。
DMD50R,50G,50Bは、TIRプリズム40R,40G,40Bのそれぞれと対応して設けられ、対応したTIRプリズム40R,40G,40Bの第1の面43R,43G,43Bで全反射した光をそれぞれ変調して出射する光変調素子であり、光変調部とも呼ばれる。
図7は、DMD50Bの構成について説明するための図である。なお、図7ではDMD50Bを示しているが、DMD50R,50Gについても同様である。DMD50Bは、マトリクス状に配置された複数のマイクロミラー51を有し、各マイクロミラー51は、投写画像の1画素に対応する。各マイクロミラー51は、回転軸52周りに回転することで、入射される光に対する角度が変化する。DMD50Bのマイクロミラー51は、回転軸52が正方形のマイクロミラー51の対角線方向を向いており、この回転軸52に対して、入射する光と反射する光とを含む面が直交するように配置されている。
図8は、マイクロミラー51の動作について説明するための図である。図示しない制御部が、映像信号に応じて各マイクロミラー51を駆動し、光が入射する方向に傾いたON状態、または光が入射する方向と逆方向に傾いたOFF状態に切り替える。複数のマイクロミラー51の反射面が1つの平面を形成するときの回転角度を0°とすると、各マイクロミラー51は、この回転軸52を中心として、±12°傾く。この場合、入射角24°の光は、ON状態のマイクロミラー51で反射すると、回転角度0°のときのマイクロミラー51の法線方向に進む。また入射角24°の光は、OFF状態のマイクロミラー51で反射すると、回転角度0°のときのマイクロミラー51の法線と48°の角度を形成する方向に進む。
DMD50R,50G,50Bで反射されたON光は、TIRプリズム40R,40G,40Bの第1の面43R,43G,43Bを透過してXDP60にて合成され、投写レンズによりスクリーン(不図示)などに投写される。また、OFF光は、DMD50R,50G,50BからXDP60の間に設置された光吸収体によって吸収され、スクリーンに到達しない。各マイクロミラー51がON状態である時間とOFF状態である時間との比率を変えることによって、各マイクロミラー51が対応する画素の輝度を変えている。
図4において、XDP60は、DMD50R,50G,50Bが出射した各光を第2の面61および62で反射または透過させて同じ方向に出射することで、光を合成する合成部である。
具体的には、第2の面61および62では、p偏光である緑色光を透過し、第2の面61では、s偏光である赤色光を反射し、第2の面62では、s偏光である青色光を反射する。しかしながら、照明部25が第2の面61および62に対してs偏光またはp偏光となる直線偏光を出射したとしても、TIRプリズム40の第1の面で反射するときにその偏光状態が乱れて楕円偏光になってしまう。
図9および図10は、TIRプリズム40B、DMD50B、およびXDP60の相対的な配置を説明するための図である。DMD50Bの画像形成領域に設けられている各マイクロミラー51の対角線方向に設けられた回転軸52と、入射する光および反射する光を含む面とが直交するように、DMD50BとTIRプリズム40Bとを配置する。さらに、DMD50Bの画像形成領域の長辺と、XDP60の上面の辺とが平行になるようにDMD50BをXDP60に対して配置する。
TIRプリズム40Bには、XDP60の入射面に対して45°の角度から光を入射させる。これにより、TIRプリズム40Bの第1の面43Bで全反射した光は、XDP60の入射面に対して45°の角度からDMD50に入射する。
図11は、TIRプリズム40Bへの入射光の偏光方向と、TIRプリズム40Bの第1の面43Bに対してs偏光またはp偏光となる偏光方向との関係を説明するための図である。図11の例では、TIRプリズム40Bへの入射光は、XDP60の第2の面61および62に対してp偏光となる偏光方向を有している。しかし、第1の面43Bの斜面の方向と該入射光の偏光方向とが一致も直交もしていないので、TIRプリズム40Bへの入射光は、第1の面43Bに対して、s偏光成分およびp偏光成分を含む光となってしまう。
図12は、TIRプリズム40Bへの入射光およびDMD50Bが出射する画像光の偏光状態を示す図である。TIRプリズム40Bへの入射光は、XDP60の入射面に対して平行または垂直な方向に偏光した直線偏光であり、第1の面43Bに対して、s偏光成分およびp偏光成分を含む光となっている。この場合、第1の面43Bで光が全反射する際にグースヘンシェンシフトと呼ばれる光の位相変化が生じる。この位相変化の量は、s偏光成分とp偏光成分とで異なる。例えば、図5および図6で説明した構成を有するTIRプリズム40Bの場合、TIRプリズム40Bの第1の面43Bで生じる位相変化は、s偏光で56.4°であり、p偏光で102.0°である。このため、光が全反射した後、s偏光とp偏光との間に生じる相対位相差は、45.6°となる。この相対位相差は、およそ8分の1波長分に相当する。
このように、全反射面の傾きの方向と直線偏光の偏光方向とが一致も直交もしていない場合には、その全反射面で反射された直線偏光は、楕円偏光となる。このため、TIRプリズム40BからDMD50Bに入射する光は、楕円偏光となる。また、DMD50Bで光が反射するときには光の偏光状態は変化しないため、DMD50Bで変調された光は、楕円偏光となる。
なお、図9−図12では、青色光が通過するTIRプリズム40B,DMD50B,およびXDP60の配置および青色光の偏光状態について説明したが、赤色光および緑色光についても同様である。
図4に示した補正光学素子70R,70G,70Bは、照明部25とXDP60との間の光路上に設けられ、入射した光の偏光状態を変えて、XDP60に入射する光をs偏光またはp偏光にする補正部である。各補正光学素子70R,70G,70Bは、TIRプリズム40R,40G,40BのそれぞれとXDP60との間の光路上に配置されている。そして、各補正光学素子70R,70G,70Bは、DMD50R,50G,50Bで変調されてTIRプリズム40R,40G,40Bのそれぞれを透過した光を補正して直線偏光にする。XDP60は、DMD50R,50G,50Bが出射する画像光に対して、それぞれ特定の方向の偏光成分の光を同一光軸上に合成するように設計されている。そこで補正光学素子70R,70G,70Bは、XDP60に入射する光がこの特定方向に偏光した光となるように補正する。より詳細には、補正光学素子70R,70G,70Bは、照明部25が出射した色光ごとに設けられており、緑色の光に対応して設けられた緑色用の補正光学素子70Gは、入射された楕円偏光をp偏光に変換し、赤色用の補正光学素子70Rおよび青色用の補正光学素子70Bは、入射された楕円偏光をs偏光に変換する。
補正光学素子70R,70G,70Bに入射する光は、TIRプリズム40R,40G,40Bの第1の面43R,43G,43Bで全反射して直線偏光から楕円偏光へと変化している。補正光学素子70R,70G,70Bは、例えば、TIRプリズム40R,40G,40Bにて光が全反射した際に生じる、光のs偏光成分およびp偏光成分の相対位相差が打ち消されるように、入射した光のs偏光成分およびp偏光成分の位相を変化させる。図4ないし図12で説明した構成では、補正光学素子70R,70G,70Bは、少なくとも1つの8分の1波長板(1/8λ板)を有し、例えば補正光学素子70R,70G,70Bは、8分の1波長板または8分の5波長板(5/8λ板)である。XDP60の第2の面61および62を透過する光に対応する緑色用の補正光学素子70Gは、8分の5波長板である。また、XDP60の第2の面61および62で反射する光に対応する赤色用の補正光学素子70Rおよび青色用の補正光学素子70Bは、8分の1波長板である。これにより、赤色の画像光は、楕円偏光からXDP60の入射面に対して垂直方向に偏光した光に補正され、緑色の画像光は、楕円偏光からXDP60の入射面に対して平行な方向に偏光した光に補正され、青色の画像光は、楕円偏光からXDP60の入射面に対して垂直な方向に偏光した光に補正される。したがって、XDP60の第2の面61または62に入射するとき、赤色および青色の画像光はs偏光となり、緑色の画像光はp偏光となる。
ここで、緑色用の補正光学素子70Gとして、8分の5波長板の代わりに、2分の1波長板(1/2λ板)と8分の1波長板(1/8λ板)とを光の進行方向に沿って並べて使用してもよい。補正光学素子70R,70G,70Bは、XDP60の第2の面61および62を透過する光がp偏光となり、第2の面61で反射する光および第2の面62で反射する光がs偏光となる構成であればよい。
(変形例)
上記の実施形態では、補正光学素子70R,70G,70Bが、TIRプリズム40R,40G,40Bにて光が全反射した際に生じる、光のs偏光成分およびp偏光成分の相対位相差が打ち消されるように、入射した光のs偏光成分およびp偏光成分の位相を変化させることとした。しかしながら、本発明はかかる例に限定されない。例えば、補正光学素子70R,70G,70Bは、XDP60に入射させる特定の方向以外の偏光成分の光を除去するように、入射した光の偏光状態を変換させてもよい。
具体的には、補正光学素子70R,70G,70Bは、少なくとも1つの偏光板を含む。例えば、XDP60の第2の面61または62で反射する光に対応する赤色用の補正光学素子70Rおよび青色用の補正光学素子70Bは偏光板とすることができる。このとき、XDP60の第2の面61および62を透過する光に対応する緑色用の補正光学素子70Gは、偏光板と2分の1波長板とを光の進行方向に沿ってこの順番で並べて使用してもよい。偏光板は、特定の偏光方向の光のみを透過して他方の偏光方向の光を吸収または反射する。補正光学素子70R,70G,70Bに用いられる偏光板は、いずれもXDP60の入射面に対して垂直な方向の偏光を透過させる特性を有する。これにより、偏光板を透過した光はs偏光となり、さらに2分の1波長板を透過することによって、緑色の光は、p偏光となる。
以上説明したように、本発明の第1の実施形態によれば、照明部25から出射された所定の偏光方向を有する複数の色光は、複数のTIRプリズム40R,40G,40Bのそれぞれに入射して、全反射される。全反射した光は、それぞれTIRプリズム40R,40G,40Bに対応して設けられたDMD50R,50G,50Bのそれぞれで変調される。各DMD50R,50G,50Bから出射されたそれぞれの光は、XDP60で合成されて出射される。照明部25とXDP60との間の光路上には、XDP60に入射する光がs偏光またはp偏光となるように偏光状態を変える補正光学素子70R,70G,70Bが設けられる。これにより、光がXDP60に入射するまでの間に楕円偏光となった場合であっても、XDP60に入射する光をs偏光またはp偏光とすることができるため、XDP60内部で迷光が生じるのを抑制することができ、投写画像のコントラストが低下することを抑制することが可能になる。
また、本実施形態によれば、補正光学素子70R,70G,70Bは、TIRプリズム40R,40G,40Bで光が全反射した際に生じる、当該光のs偏光成分およびp偏光成分の位相差が打ち消されるように、光の偏光状態を変える。これにより、TIRプリズム40R,40G,40Bにて光が全反射した際に、s偏光成分およびp偏光成分で位相差が発生した場合であっても、この位相差が打ち消されて、より確実に、投写画像のコントラストが低下することを抑制することが可能になる。また、位相差を打ち消すことにより、迷光となってしまっていた光も投写光として利用することができるので、投写画像の輝度を向上させることも可能になる。
また、本実施形態によれば、補正光学素子70R,70G,70Bは、少なくとも1つの8分の1波長板を有する。より具体的には、XDP60は各色変調光を反射または透過させて同じ方向に出射する。このとき補正光学素子70R,70G,70Bは、XDP60に入射する光ごとに対応して設けられ、XDP60で反射する光に対応する補正光学素子70Rおよび70Bは、8分の1波長板であり、XDP60で透過する光に対応する補正光学素子70Gは、少なくとも1つの2分の1波長板を有する。これにより、TIRプリズム40R,40G,40Bの反射面43R,43G,43Bで8分の1波長分の位相差が発生する場合に、より確実に、投写画像のコントラストが低下することを抑制して、投写画像の輝度を向上させることが可能になる。
また、本実施形態によれば、補正光学素子70R,70G,70Bは、各TIRプリズム40R,40G,40BとXDP60との間の光路上にそれぞれ設けられる。これにより、XDP60に入射する直前で光の偏光状態が変換された直線偏光となるため、より確実に、XDP60に入射する光を直線偏光にすることができ、投写画像のコントラストが低下することを抑制することが可能になる。
また、本実施形態の変形例によれば、補正光学素子70R,70G,70Bは、少なくとも1つの偏光板を含む。より具体的には、XDP60は各色変調光を反射または透過させて同じ方向に出射する。このとき補正光学素子70R,70G,70Bは、XDP60に入射する光ごとに対応して設けられ、XDP60で反射する光に対応する補正光学素子70Rおよび70Bは、偏光板であり、XDP60で透過する光に対応する補正光学素子70Gは、偏光板および2分の1波長板を有する。これにより、XDP60に入射された光のうち、XDP60の入射面に対して垂直または平行な方向に偏光したs偏光またはp偏光以外の成分は、反射または吸収されることになる。したがって、より確実に、XDP60内で迷光となる光を低減して、投写画像のコントラストが低下することを抑制することが可能になる。
(第2の実施形態)
図13は、本発明の第2の実施形態にかかる表示装置2の構成を説明するための図である。
表示装置1は、TIRプリズム40R,40G,40Bにて偏光状態が乱れたあとに、光を直線偏光にする補正光学素子70R,70G,70Bを有し、補正光学素子70R,70G,70Bは、各TIRプリズム40R,40G,40BとXDP60との間に設けられる。これに対して、表示装置2は、TIRプリズム40R,40G,40Bで全反射した光が直線偏光となるように、TIRプリズム40R,40G,40Bに入射する前に、光を楕円偏光にする補正光学素子90R,90G,90Bを補正光学素子70R,70G,70Bの代わりに有する。
以下、表示装置1との相違点について主に説明する。
表示装置2は、照明部25とTIRプリズム40R,40G,40Bとの間の光路上、例えば光分離光学系30と各TIRプリズム40R,40G,40Bとの間の光路上に設けられた補正光学素子90を有する。より具体的には、表示装置2は、反射ミラー35と赤色用のTIRプリズム40Rとの間に配置された赤色用の補正光学素子90Rと、第2のダイクロイックミラー32と緑色用のTIRプリズム40Gとの間に配置された緑色用の補正光学素子90Gとを有する。また、表示装置2は、第1のダイクロイックミラー31と青色用のTIRプリズム40Bとの間に配置された青色用の補正光学素子90Bを有する。
各補正光学素子90R,90G,90Bは、XDP60に入射する光が所定の偏光方向を有する直線偏光となるように、入射した光の偏光状態を変える。具体的には、補正光学素子90R,9G,90Bは、全反射面でp偏光とs偏光とに生じる相対位相差が打ち消されるように、TIRプリズム40R,40G,40Bに入射する前の光の偏光状態を予め補正しておく。
第1の実施形態で説明したように、図5ないし図12にて説明した構成においては、p偏光とs偏光にはおよそ8分の1波長分の相対位相差が発生する。補正光学素子90R,90G,90Bは、この相対位相差と符号が逆であって大きさが等しい位相差を、TIRプリズム40R,40G,40Bに入射する前の直線偏光の照明光に与えて、直線偏光を楕円偏光に変換する。例えば、赤色用の補正光学素子90Rおよび青色用の補正光学素子90Bは8分の1波長板であり、緑色用の補正光学素子90Gは8分の5波長板である。
図14は、表示装置2のTIRプリズム40Bに入射する色光と、TIRプリズム40Bの全反射面における色光との偏光状態について説明するための図である。表示装置2の補正光学素子90Bを透過してTIRプリズム40Bに入射する色光は、楕円偏光に変換されている。この楕円偏光がTIRプリズム40Bの全反射面で全反射すると、グースヘンシェンシフトが発生し、それに伴って位相変化が生じる。この位相の変化量は、s偏光とp偏光とで異なるが、補正光学素子90を透過することによる位相の変化量と、グースヘンシェンシフトによる位相の変化量とを合わせることで、s偏光の変化量とp偏光の変化量とは概ね等しくなり、相対位相差が低減される。
これにより、DMD50Bに入射する光はXDP60の入射面に対して平行な方向に偏光した直線偏光となり、DMD50Bで反射される際には偏光状態は変化しないため、DMD50Bが出射する画像光もXDP60の入射面に対して平行な方向に偏光した直線偏光となる。
なお、図14では、青色光がTIRプリズム40BおよびDMD50Bを介してXDP60に入射するまでの偏光状態の変化について説明したが、赤色光および緑色光についても同様である。
(変形例)
上記第2の実施形態では、補正光学素子90R,90G,90Bは、光分離光学系30と各TIRプリズム40R,40G,40Bとの間に配置され、各TIRプリズム40R,40G,40Bに入射する直前の照明光の偏光状態を補正したが、本発明はかかる例に限定されない。表示装置2が有する補正光学素子90R,90G,90Bの配置および数は、投写光学系80に入射する光が増大する構成であればよい。
例えば、補正光学素子90R,90G,90Bの代わりに、1つの補正光学素子が、照明光学系20と光分離光学系30との間に1つ配置されてもよい。この場合、各反射面では、偏光の回転方向が変化するため、反射面の数に留意する必要がある。また、補正光学素子90R,90G,90Bの代わりに、2つの補正光学素子が、第1のダイクロイックミラー31と青色用のTIRプリズム40Bとの間、および、第1のダイクロイックミラー31と第2のダイクロイックミラー32との間にそれぞれ配置されてもよい。
また、緑色用の補正光学素子70Gとして、8分の5波長板の代わりに、2分の1波長板と8分の1波長板を光の進行方向に沿って並べて使用してもよい。
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、補正光学素子90R,90G,90Bは、照明部25と各TIRプリズム40R,40G,40Bとの間の光路上に設けられる。この場合でも、投写画像のコントラストが低下することを抑制することが可能になる。また、TIRプリズム40R,40G,40Bから出射した光の偏光状態を補正する場合と比較して、補正光学素子の数および配置の自由度を高めることが可能になり、表示装置2の設計条件に合わせて柔軟に補正光学素子の数および配置を設計することが可能になる。
(第3の実施形態)
図15は、本発明の第3の実施形態にかかる表示装置3の構成を説明するための図である。
表示装置1および表示装置2の照明部25は、白色光を複数の色光に分離させてDMD50を照明する照明光として用いるのに対して、表示装置3の照明部26は、複数の光源のそれぞれが出射した色光を、照明光として用いる。
照明部26は、それぞれ赤色、緑色、青色の色光を出射する光源10R,10G,10Bと、それぞれ赤色、緑色、青色の色光を所定の偏光方向を有する色照明光に変換する変換光学系を含む照明光学系20R,20G,20Bとを有する。
各光源10は、各色の色光を出射する発光素子13と、発光素子13が出射した色光を略平行光に変換するレンズ14とを有する。例えば、光源10Rは、赤色の色光を出射する発光素子13Rと、発光素子13Rが出射した色光を略平行光に変換するレンズ14Rとを有する。発光素子13は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。
各照明光学系20R,20G,20Bは、入射した各色の色光を、DMD50R,50G,50Bを均一に照明する直線偏光に変換する。照明光学系20Rおよび照明光学系20Bは、入射した色光を、XDP60の入射面に対して垂直方向に偏光した直線偏光に変換し、照明光学系20Gは、入射した色光を、XDP60の入射面に対して平行方向に偏光した直線偏光に変換する。各照明光学系20が出射した各光は、TIRプリズム40R,40G,40Bのそれぞれに入射する。
以上説明したように、本発明の第3の実施形態によれば、照明部26は、色光を出射する複数の光源13R,13G,13Bを有している。これにより、複数の光源を用いるため、投写画像の輝度を向上させることが可能になるとともに、白色光を複数の色光に分離させる分離光学系が必要ないため、装置サイズを縮小することが可能になる。このように、輝度を向上させ、装置サイズを縮小した構成においても、投写画像のコントラストが低下することを抑制することが可能になる。
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
例えば、上記第1および第2の実施形態では、光源10は、光源ランプ11と、光源ランプ11が出射した光を略平行光とするリフレクタ12とを有することとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、レンズを用いて、光源ランプ11が出射した光を略平行光としてもよい。この場合、光源ランプ11としては、LEDや、励起エネルギーを吸収することで蛍光を放射する蛍光体を用いることができる。
また、上記実施形態では、照明光学系20は、第1レンズアレイ21、第2レンズアレイ22、偏光変換素子23、および重畳レンズ24を用いた構成としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、照明光学系20は、ロッドインテグレータを用いた構成であってもよい。
また、上記実施形態では、重畳レンズ24は、単一の光学部品であることとしたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、重畳レンズ24は、照明光学系20の性能を向上させるため、または、装置サイズを調整するために、複数のレンズであってもよく、また、折り返しミラーを追加した構成であってもよい。
また、上記実施形態では、第3の実施形態にかかる表示装置3の補正光学素子の配置は、第1の実施形態にかかる表示装置1と同様としたが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、表示装置3の補正光学素子の配置を、第2の実施形態と同様に変更することも可能である。