JP6432114B2 - 免疫応答を誘導するための薬剤 - Google Patents

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本発明は、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール(以下、「ロドデノール」と略すことがある)を有効成分とする、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答を誘導するための薬剤、及び当該免疫応答の誘導によりメラノーマを治療するための薬剤に関する。
また、本発明は、この免疫応答の分子機構を応用した、種々の抗腫瘍免疫療法剤の候補化合物のスクリーニング方法、及び当該スクリーニングにより得られた化合物の抗腫瘍免疫療法剤としての利用に関する。
ロドデノールは、そのメラニン生成抑制作用から、美白剤において利用されてきた(例えば、特許文献1)。ところが、近年、皮膚の白斑症を誘発することが判明し、社会的問題になっている。
皮膚の白斑症の発症に関しては、これまでにロドデノールを基質としてチロシナーゼがこれを分解し、その分解産物の活性によりメラノサイトにアポトーシスが誘導されるという分子機構が提唱されている(非特許文献1)。しかしながら、このアポトーシス誘導に必要なロドデノールの濃度は、実際の皮膚局所で生じうる濃度の100倍以上と推測されており、この分子機構のみで白斑症発症を説明することは困難である。さらに、この分子機構では、白斑症の治療に免疫抑制剤が有効であることや、ロドデノールを含有する美白剤使用者の2%しか白斑症の発症に至らないことの理由は説明できない。
このようにロドデノールによる皮膚の白斑症の発症の機構については、ほとんど解明されていないのが現状である。
特開平10-265325号公報
Sasaki, M., et. Al. Pigment Cell Melanoma Res. 27:754-763, 2014
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロドデノールによる皮膚の白斑症発症の分子機構を解明し、当該分子機構を利用した薬剤を提供することにある。
何らかの環境要因により、体内に存在する自己タンパク質から生理的には存在しない自己ペプチド断片(すなわち免疫学的非自己抗原)が出現し、それを非自己として認識したT細胞によって自己免疫反応が誘発される現象が起こることがある。このような現象を引き起こす自己ペプチド断片を「隠蔽自己抗原(cryptic-self antigen)」と呼ぶ。
隠蔽自己抗原の概念が分子レベルで初めて証明されたのは、本発明者によるインスリン自己免疫症候群の病態解明である(Matsushita, S., et. al. J. Exp. Med. 180:873-883, 1994)。インスリン自己免疫症候群においては、メチマゾールなどの還元剤によって生理的には存在しない自己ペプチド断片(インスリンα鎖)が出現し、それを非自己として認識したT細胞によって自己免疫反応が誘発される(図1)。インスリン自己免疫症候群では、この自己ペプチド断片に高い親和性を有するHLA-DRB1*04:06が疾患感受性を支配する遺伝要因になっており、このHLA型の相対危険率は281にも至る。
ところで、結合する基質の構造によっては酵素のコンフォーメーションが変化する「アロステリック効果」と呼ばれる現象が知られている。コンフォメーションの変化により酵素に対するプロテアーゼのアクセシビリティが変化し、ひいてはプロテアーゼによる酵素の分解様式にも変化が生じ得る。
本発明者は、メラノサイトに存在するチロシナーゼのコンフォメーションが、ロドデノールの結合により変化し、プロテアーゼの作用を介して、生理的には存在しないはずの隠蔽自己抗原ペプチド(cryptic-self peptides)が産生され、これを非自己と認識したT細胞によって、メラノサイトが傷害されるという作業仮説を立てた(図2)。この作業仮説によれば、白斑症はロドデノールという環境要因によって誘発される自己免疫疾患に位置づけられる。
この作業仮説を検証すべく、本発明者は、ロドデノール誘発性白斑症患者からT細胞株を樹立し、HLA-DRB1の遺伝子型を分析するとともに、チロシナーゼの合成部分ペプチドに対する反応性を評価した。その結果、大部分の患者がHLA-DR4陽性であり、半数の患者のT細胞において特定の合成部分ペプチドに対する反応性が認められた。これらの結果から、ロドデノール誘発性白斑症には、HLAが遺伝要因として関与しており、患者において自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答が誘導されていることが判明した。この分子機構によれば、白斑症に対して免疫抑制剤が有効であることや、ロドデノール含有美白剤使用者の2%しか白斑症の発症に至らないことへの説明が可能となる。
さらに、本発明者は、もし、このような免疫応答がロドデノールで誘導されるのであれば、ロドデノールを利用することによりメラノーマに対する抗腫瘍免疫応答をも誘導しうるのではないかと考えた。そこで、次に、抗腫瘍免疫応答のモデルマウスを用いてロドデノールによるメラノーマの増殖抑制効果の検証を行った。その結果、ロドデノール非処理群と比較して、ロドデノール処理群においてメラノーマの増殖の顕著な遅延が認められた。
以上の事実は、メラノーマの腫瘍抗原であるチロシナーゼへのロドデノールの結合が、チロシナーゼ由来の隠蔽自己抗原を生じさせ、当該隠蔽自己抗原がメラノーマに対する抗腫瘍免疫応答を誘導するという分子機構を裏付けるものである。さらに、この分子機構に基づけば、種々の腫瘍抗原において、当該腫瘍抗原への結合などを指標に、隠蔽ペプチドを生じさせて抗腫瘍免疫応答を誘導する化合物を同定し、抗腫瘍免疫療法剤として利用することが可能であることを示すものである。
本発明は、本発明者が見出した上記分子機構に基づくものであり、より詳しくは、以下を提供するものである。
(1)4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノールを有効成分とする、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答を誘導するための薬剤。
(2)4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノールを有効成分とする、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答の誘導によりメラノーマを治療するための薬剤。
(3)自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答の誘導によるメラノーマの治療において使用するための4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノール。
(4)4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノールの治療的有効量を患者に投与することを含む、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答の誘導によりメラノーマを治療する方法。
(5)特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により当該腫瘍抗原を発現している腫瘍を治療するための薬剤の候補化合物をスクリーニングする方法であって、被検化合物と当該腫瘍抗原とを接触させ、当該被検化合物と当該腫瘍抗原との結合を検出し、当該腫瘍抗原との結合が検出された化合物を選択する工程を含む方法。
(6)特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により当該腫瘍抗原を発現している腫瘍を治療するための薬剤を製造する方法であって、被検化合物と当該腫瘍抗原とを接触させ、当該被検化合物と当該腫瘍抗原との結合を検出し、当該腫瘍抗原との結合が検出された化合物を選択し、選択した化合物を薬理学上許容される担体と混合する工程を含む方法。
(7)(5)に記載の方法により選択された化合物を有効成分とする、特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により当該腫瘍抗原を発現している腫瘍を治療するための薬剤。
(8)特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導による当該腫瘍抗原を発現している腫瘍の治療において使用するための、(5)に記載の方法により選択された化合物。
(9)(5)に記載の方法により選択された化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により当該腫瘍抗原を発現している腫瘍を治療する方法。
本発明において、隠蔽自己抗原を介したロドデノール誘発性白斑症発症の分子機構が見出され、この知見に基づき、ロドデノールを有効成分とする、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答を誘導するための薬剤、及び当該免疫応答の誘導によるメラノーマを治療するための薬剤が提供された。さらに、この分子機構に基づき、他の腫瘍抗原に作用して、ロドデノールと同様の抗腫瘍免疫応答を誘導する薬剤をスクリーニングする方法が提供された。ロドデノールや当該スクリーニングにより得られた化合物を利用すれば、ペプチドワクチン療法に代わる画期的ながん免疫療法を実現することが可能となる。
インスリン自己免疫症候群の発症に至る分子機構を示す図である。 ロドデノール誘発性白斑症の発症に至る分子機構を示す図である。 抗腫瘍免疫応答モデルマウスにおけるロドデノールの効果を示すグラフである。 ロドデノール処理メラノーマ細胞で免疫した抗腫瘍免疫応答モデルマウスの写真である。
本発明は、ロドデノールを有効成分とする、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答を誘導するための薬剤を提供する。
本発明において「自己チロシナーゼペプチド」とは、自己の(すなわち、内因性の)チロシナーゼに由来するペプチドを意味する。「チロシナーゼ」とは、メラニンの生成に関与するチロシン酸化酵素を意味する。
本発明において「免疫応答」とは、主として自己チロシナーゼペプチドに特異的なT細胞の誘導とその免疫作用を意味する。本実施例において、ロドデノールの作用により、チロシナーゼから自己チロシナーゼペプチドが生成され、当該ペプチドに対するHLAクラスI及びII拘束性の特異的なT細胞応答が認められた。従って、本発明における免疫応答の主体となる「T細胞」には、HLAクラスI分子に結合した抗原ペプチドを認識するキラーT細胞及びHLAクラスII分子に結合した抗原ペプチドを認識するヘルパーT細胞の双方が含まれる。これらT細胞の免疫作用としては、例えば、1)キラーT細胞による標的の傷害、2)ヘルパーT細胞(主にTh1)によるキラーT細胞の誘導補助、3)ヘルパーT細胞(主にTh2やTFH)による標的に対する抗体産生の補助、4)産生された抗体とナチュラルキラー(NK)細胞によるADCCを介したメラノサイトの傷害などが挙げられる。
本発明における「免疫応答を誘導するための薬剤」は、研究目的で免疫応答を誘導するための試薬として、また、医療目的で免疫応答を誘導するための医薬として利用することが可能である。
また、本実施例において、このような自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答の誘導により、メラノーマの増殖が抑制されることが見出された。従って、本発明は、ロドデノールを有効成分とする、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答の誘導によりメラノーマを治療するための薬剤を提供する。さらに、本発明は、ロドデノールの治療的有効量を患者に投与することを含む、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答の誘導によりメラノーマを治療する方法を提供する。本発明における「メラノーマ」は、メラノサイト由来の悪性腫瘍であって、悪性黒色腫とも呼ばれる。本発明において「治療」とは、腫瘍の増殖を抑制すること、及び/又は腫瘍の死を誘導することを意味する。
メラノーマの腫瘍抗原であるチロシナーゼへのロドデノールの結合が、チロシナーゼ由来の隠蔽自己抗原(自己チロシナーゼペプチド)を生じさせ、引いてはメラノーマに対する抗腫瘍免疫応答を誘導させるという、本発明者により見出された分子機構を応用すれば、腫瘍抗原への結合などを指標に、種々の腫瘍に対して抗腫瘍免疫応答を誘導する化合物を同定することが可能である。従って、本発明は、特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により当該腫瘍抗原を発現している腫瘍を治療するための薬剤の候補化合物をスクリーニングする方法であって、被検化合物と当該腫瘍抗原とを接触させ、当該被検化合物と当該腫瘍抗原との結合を検出し、当該腫瘍抗原との結合が検出された化合物を選択する工程を含む方法を提供する。
本発明において「腫瘍」とは、悪性腫瘍に限られずあらゆる種類の腫瘍を含み、例えば、カルシノーマ、肉腫、良性腫瘍などを含む。特に、悪性腫瘍については「がん」と表現する場合もある。また、「腫瘍抗原」とは、腫瘍細胞に発現する抗原であり、(i)腫瘍細胞に発現し,正常細胞には発現しない腫瘍特異抗原、及び(ii)腫瘍細胞だけでなくある種の正常細胞にも発現する(多くの場合,腫瘍細胞においてより高レベルに発現する)腫瘍関連抗原の双方を含む意である。
腫瘍抗原としては、例えば、メラノーマの腫瘍抗原であるチロシナーゼやMAGE、大腸がんの腫瘍抗原であるガラクチンやp53、前立腺がんの腫瘍抗原であるPSA、乳がんの腫瘍抗原であるHer2、食道がんの腫瘍抗原であるSART-1、肺がんの腫瘍抗原であるEGF受容体、白血病の腫瘍抗原であるWT-1、神経膠腫の腫瘍抗原であるSOX2、Hodgkin病の腫瘍抗原であるRestin、肝がんの腫瘍抗原であるCEAやAFP、卵巣がんの腫瘍抗原であるMUC-1などが挙げられるが、これらに制限されない。
スクリーニングに用いる被検化合物としては、例えば、合成低分子化合物ライブラリー、遺伝子ライブラリーの発現産物、ペプチドライブラリー、抗体、細菌放出物質、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)の抽出液及び培養上清、精製又は部分精製ポリペプチド、海洋生物、植物又は動物由来の抽出物、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリーが挙げられるが、これらに制限されない。被検化合物は、腫瘍抗原の立体構造を基にin silicoでデザインし、このデザインに基づき合成したものであってもよい。
被検化合物と腫瘍抗原との結合の検出は、公知の方法で行うことができる。例えば、被検化合物が、合成低分子化合物である場合には、コンビナトリアルケミストリー技術によるハイスループットを用いたスクリーニング方法(Wrighton NC at al., Science 273:458〜464 1996、Verdine GL.Nature 384:11〜13 1996、Hogan JC Jr. Nature 384:17〜19 1996年)を利用することができる。腫瘍抗原が酵素である場合、当該酵素を結合させたドナービーズとその基質を結合させたアクセプタービースを接近させてレーザー照射することによって発光させることができる(例えば、Alpha化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイなど)。ケミカルライブラリーを共存させた条件下で、このアッセイを行い、発光を抑制する化合物を選択することにより、当該酵素に結合する化合物を同定することが可能である。実際、ケミカルライブラリーをサブライブラリー化し、個々のアッセイに供することが行われている。また、腫瘍抗原を固相化してケミカルライブラリーと反応させたのちに溶出し、溶出物につき質量分析を行うことによっても、腫瘍抗原に結合する化合物を同定することが可能である。本発明においては、その他、公知の多くの方法を利用することができる。
本発明においては、腫瘍抗原との結合を指標とした上記のスクリーニングに加えて若しくは代えて、他の指標を利用したさらなるスクリーニングを行うことができる。他の指標としては、例えば、腫瘍抗原のコンフォメーションの変化、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)及び/又は腫瘍細胞における腫瘍抗原の分解、腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導、及び腫瘍モデル動物における腫瘍の増殖の抑制や腫瘍の死の誘導が挙げられる。
ロドデノールや上記のスクリーニングにより得られた化合物を医薬として用いる場合には、例えば、他の抗腫瘍剤、ペプチドワクチン療法などの他の免疫療法、あるいは放射線療法などの他の治療法と併用してもよい。
上記のスクリーニングにより同定される化合物は、腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により腫瘍を治療するための薬剤となる。従って、本発明は、特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により当該腫瘍抗原を発現している腫瘍を治療するための薬剤を製造する方法であって、被検化合物と当該腫瘍抗原とを接触させ、当該被検化合物と当該腫瘍抗原との結合を検出し、当該腫瘍抗原との結合が検出された化合物を選択し、選択した化合物を薬理学上許容される担体と混合する工程を含む方法を提供する。また、本発明は、当該スクリーニングにより選択された化合物を有効成分とする、特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により当該腫瘍抗原を発現している腫瘍を治療するための薬剤を提供する。さらに、本発明は、当該スクリーニングにより選択された化合物の治療的有効量を患者に投与することを含む、特定の腫瘍抗原に由来するペプチドに特異的な免疫応答の誘導により当該腫瘍抗原を発現している腫瘍を治療する方法を提供する。
有効成分たる化合物を医薬として調製する場合、混合される薬理上許容される担体としては、例えば、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤などが挙げられるが、これらに制限されない。有効成分たる化合物は、治療目的などに応じて、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、外用剤などの各種形態とすることができる。また、患者から摘出した腫瘍細胞を有効成分たる化合物で処理して放射線照射したものを患者に投与することもできる。
患者への投与は、薬剤の形態などに応じて、経口的な投与あるいは非経口的な投与で行うことができる。非経口的な投与としては、例えば、静脈投与、動脈投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、胸腔内投与、腹腔内投与、標的部位(すなわち、腫瘍)への直接投与などが挙げられる。
投与量は、目的の腫瘍を治療するのに有効な量であれば特に制限はなく、患者の年齢、体重、症状、健康状態、腫瘍抗原や腫瘍の種類、疾患の進行状況などに応じて、適宜選択すればよい。投与頻度としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1日あたりの投与量を、1日に1回で投与してもよいし、複数回に分けて投与してもよい。本発明の薬剤をヒトに投与する場合、有効成分の投与量の範囲は、1日当たり、通常、約0.01mg/kg体重〜約500mg/kg体重、好ましくは、約0.1mg/kg体重〜約100mg/kg体重である。ヒトに投与する場合、好ましくは、1日あたり1回、あるいは2〜4回に分けて投与され、適当な間隔で繰り返すことが好ましい。
なお、本発明の自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答を誘導するための薬剤を試薬として調製する場合、必要に応じて、滅菌水や生理食塩水、緩衝剤、保存剤など、試薬として許容される他の成分を含むことができる。当該試薬は、目的に応じた対象(例えば、実験動物など)に、目的に応じた投与量で投与して、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答の誘導を行うことができる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1] ロドデノール誘発性白斑症患者のHLA型とチロシナーゼ由来ペプチドに対するT細胞の反応性の解析
(1)材料と方法
(a)対象患者と採血
埼玉医科大学病院皮膚科外来を受診したロドデノール誘発性白斑症患者8名より、末梢静脈血20mlをヘパリン加採血した。採血は大学病院IRBの承認を得た説明文書を用いた説明の後、書面による同意を得た上で行った。
(b)ペプチド抗原
メラノーマの腫瘍抗原としてのヒトチロシナーゼに存在するT細胞エピトープには様々な報告がある(Topalian, SL, et. al. J. Exp. Med. 183:1965, 1996、Michaeli, Y., et. al. Eur. J. Immunol. 42:842, 2012)。本実施例では、表1に示すペプチド(配列番号:1〜11)を合成し、精製して実験に用いた。
なお、表1における、特定のHLA対立遺伝子産物に対する拘束性の記載は、抗原ペプチドが当該HLA対立遺伝子産物で提示され得ることを示す。しかしながら、当該HLA対立遺伝子産物のみに限定されることを意味しない。
(c)末梢血単核球(PBMC)の分離と培養
ヘパリン加静脈血を遠心し、血球成分と血漿成分に分離した。血漿成分を取り除き、血球成分の約4倍量のRPMI1640培養液で血球成分を希釈し、Ficoll-Paque液の上に重層した。それを遠心して得られたFicoll-Paque液相直上の細胞群を回収して末梢血単核球(PBMC)とした。また、Ficoll-Paque液相直下に存在する顆粒球を回収してDNAを調整し、HLAタイピングに用いた。PBMCはRPMI1640培養液に2mM L-グルタミン、100U/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、10%ヒト血清を添加した培養液を用い、96穴平底プレートを用いて5% CO2、湿度100%で培養した。プレートの1穴(ウェル)あたり1.5x105個の細胞数になるように調整し、合計9x106個を60ウェルに撒いた。残ったPBMCは3-5x106ずつ分注して10% DMSO存在下に凍結保存した。
(d)T細胞株の樹立
PBMCの培養開始後8-10日目に、凍結保存しておいたPBMCを解凍して培養液に浮遊させ、表1に示した各ペプチドをそれぞれ0.25μMになるように添加し、24穴プレートを用いて培養した。6時間後、この24穴プレートに30GyのX線を照射した。氷冷した培養液でプレートから細胞を回収した。さらに培養液で洗浄して可溶ペプチドを除去し、ペプチドパルス抗原提示細胞とした(この細胞上にはMHC-ペプチド複合体が形成されている)。この細胞の1x105個を上記の96穴プレートの60ウェルに添加した。さらにその7日後、顕微鏡下で細胞の増殖の観られるウェルに、同様に調整したペプチドパルス抗原提示細胞を添加した。さらにその7日後、増殖の観られるウェルの細胞を回収してひとまとめにし、T細胞株とした。
(e)ペプチド反応性の決定
凍結保存しておいたPBMCを解凍して培養液に浮遊させ、30GyのX線を照射した。この抗原提示細胞1x105個と上記T細胞株1x104個を96穴プレートの1ウェル中で共培養した。これを24ウェル作製した。このウェルに各ペプチド(デュプリケート)を2μMとなるように添加した。3日間の培養後3H-チミジンを添加し、その6時間後に細胞をハーベスターで回収した。シンチレーションカウンターを用いて細胞のDNAが発するβ線を定量することにより細胞の増殖反応を定量化した。ペプチド添加なしの細胞のβ線量(cpm)に対して、ペプチド添加ありの細胞のそれが2倍を越える場合、当該ペプチドに対して「反応性あり」と判定した。
(f)HLAタイピング
HLA-DRB1対立遺伝子のDNAタイピングは、公益財団法人HLA研究所(京都市)に委託した。
(2)結果
表2に患者のHLA-DRB1の遺伝子型と観察されたペプチド反応性を示した。
8例中7例がHLA-DR4陽性であった。ホモ接合の患者も3名存在する。本症と同様の病態を示す原田病や尋常性白斑症もHLA-DR4と相関するため、自己反応性T細胞に認識される抗原が似ていると想定される。
また、8名中4名にヒトチロシナーゼペプチドに対する特異的反応性を認めた。ペプチド2,4(クラスI拘束性)及びペプチド8,9(クラスII拘束性)に特異的である。健常人のPBMCを用いた実験ではこのような自己反応性は認められなかった。
[実施例2] モデルマウスを用いたロドデノールによる抗腫瘍免疫応答の誘導の解析
実施例1で認められた免疫応答がロドデノールで誘発されるのであれば、ロドデノールはメラノーマに対する抗腫瘍免疫応答を誘導できるはずである。そこで、次に、モデルマウスを用いてロドデノールによる抗腫瘍免疫応答の誘導の検証を行った。
(1)材料と方法
(a)マウスメラノーマ細胞のロドデノール処理
C57/BL6マウス由来のメラノーマ細胞株B16をロドデノール(Santa cruz Biotechnology, Inc.)で処理してマウスに免疫する細胞を調製した。具体的には、B16細胞を10%FCS/DMEMに浮遊させて、DMSOに溶解したロドデノール20μg/mlと18時間共培養した。その細胞を回収して洗浄し、ロドデノール処理B16細胞とした。
(b)担がんマウスを用いたロドデノールの効果の検証
C57/BL6マウスを用いた実験は埼玉医科大学動物実験委員会の承認を得て行われた。ロドデノール処理B16細胞に60GyのX線を照射した。6-8週齢のC57/BL雌マウスの皮下にPBSに浮遊させた2x106のX線照射ロドデノール処理B16細胞を注射した。この細胞は免疫原となるが、X線照射によるアポトーシスで死滅する。対照として、DMSO処理B16細胞を用いた。この作業を10日ごとに3回行った。さらにその10日後に2x106のX線照射していないB16細胞を皮下注した。その後、継時的に皮下腫瘍の長径を測定した。
(2)結果
ロドデノール処理群においては有意に腫瘍増殖の遅延が認められ、ロドデノールによって抗腫瘍免疫の誘導が増強されていると推測された(図3)。また、ロドデノール処理B16細胞で免疫したC57/BL6マウスには、白斑症を想起させる体毛の脱色反応が認められた(図4)。
本発明は、隠蔽自己抗原ペプチドの産生による抗腫瘍免疫応答の誘導を利用したがん免疫療法を提供するものであり、現在開発が進められているがんのペプチドワクチン療法に代わる画期的ながん治療法としての利用が可能である。
配列番号1〜11
<223> 人工的に合成されたペプチドの配列

Claims (2)

  1. 4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノールを有効成分とする、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答を誘導するための薬剤。
  2. 4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノールを有効成分とする、自己チロシナーゼペプチドに特異的な免疫応答の誘導によりメラノーマを治療するための薬剤。
JP2014261988A 2014-12-25 2014-12-25 免疫応答を誘導するための薬剤 Expired - Fee Related JP6432114B2 (ja)

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