以下、本発明に係る外力分布測定システムの校正用器具について、その校正方法との関係で好適な実施形態をあげ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
外力分布測定システム10は、運動機能の回復を図るリハビリテーション等において、患者C(測定対象)の身体部のバランスを認識し、また身体部のバランス(平衡感覚)を訓練するために使用される。図1に示すように、外力分布測定システム10は、測定装置12及び端末装置14を備え、さらに図2に示す校正用器具16を用いて、システムの使用前、或いは期間を開けた任意のタイミングで校正を実施する。
外力分布測定システム10は、圧力分布の測定時に、測定装置12に患者Cが乗って身体部(例えば、両足)からかかる圧力を測定装置12により検出する。測定装置12が検出した圧力値は、端末装置14に送信されて処理されることで画像情報に生成され、理学療法士等のスタッフPや患者C(以下、ユーザUともいう)に提供される。
ここで、本実施形態中の「圧力」とは、測定対象である患者や校正用器具16が測定装置12の後記の測定面26に直接接触して物理的にかける力を指すものである。また、外力分布測定システムは、後記のセンサ28が検出した圧力値を処理してユーザUが認識可能な「圧力」又は「圧力分布」、「荷重(すなわち測定対象の重さ)」又は「荷重分布」として表示する。以下の説明では、まとめて「圧力」と称するものとする。なお、外力分布測定システムが測定する「外力」は、接触による「圧力」以外にも自然法則によって付与される種々の力を当てはめ得る。
また、外力分布測定システム10は、リハビリテーションに限らず、例えば、運動機能診断、健康チェック、運動トレーニング、ゲーム等のように種々の形態で利用することができ、測定対象の測定部位も装置の仕様等に応じて自由に設定し得る。さらに、外力分布測定システム10は、1つの装置(測定装置12と端末装置14の両機能を有する装置)に構成されてもよい。
測定装置12は、大きな外力がかかっても破損しない強度の筐体18を備える。この筐体18は、略平板状に形成された測定部20と、測定部20の一端側に連なる機器操作部22とを有する。測定部20は、測定時に患者Cが乗る部分であり、機器操作部22は、電子回路やバッテリ等を収容して測定装置12の動作を制御する部分である。
なお、以下では、測定装置12及び校正用器具16の方向を述べる場合には、図1及び図2中に示す矢印方向に基づき説明を行う。つまり、図1中の測定装置12の中心部を基点に、機器操作部22の設置側を前方向、その反対側を後方向といい、後述の測定面26側を上方向、その反対側を下方向といい、前後及び上下方向に直交する方向を左右方向という。校正用器具16の方向指示は、測定装置12に位置決めした際の方向に準じる(図3Bも参照)。
測定部20の内部には、測定対象の圧力分布の検出を行う圧力検出部24が設けられる。圧力検出部24は、測定面26の面方向(面状)に沿って複数のセンサ28をマトリックス状に並設することで構成される(図3Aも参照)。
例えば、センサ28は、静電容量型の圧力センサを適用することができる。この場合、センサ28は、フィルムやゴム等により誘電層30を形成し、誘電層30の上面に並列配置した複数の第1電極32と、誘電層30の下面に並列配置した複数の第2電極34とを平面視で相互に直交させ、第1及び第2電極32、34で挟まれ部分により静電容量を保持する(図4Bも参照)。このセンサ28は、測定部20上から下方向(面方向と直交する方向)に圧力がかかることで、誘電層30の厚みが変わり保持する静電容量が変化する。このため測定装置12は、各センサ28の静電容量を検出することで、各センサ28にかかる圧力をそれぞれ検出し圧力データ(圧力値)を得ることができる。また端末装置14は、マトリックス状の各センサ28の各圧力データから、平面的な圧力分布である圧力分布データ(圧力分布情報)を構築することができる。
図1及び図3Aに示すように、測定部20の上面(圧力検出部24の上方)の測定面26には、患者Cの乗る箇所を案内するガイド線36が印字されている。ガイド線36は、四角形状の枠線36aと、枠線36aの幅方向中央部で前後に延びる中心線36bとで構成される。測定時には、測定部20と機器操作部22が並ぶ前後方向に対し患者Cが90°直交する方向に向き、中心線36bを挟んで母趾球と踵を左右方向に配置する。また、測定部20は、上面と下面の厚みが一定の測定面26に対し、左右両端側が断面円弧を描いて徐々に薄くなる滑らかなスロープ38を有する。
そして、筐体18は、測定部20の前後方向中間部にヒンジ部40を備える。このヒンジ部40を基点に、測定部20は、前部ケース42と後部ケース44に分かれ、測定面26も前部ケース42上の第1測定面46と、後部ケース44上の第2測定面48とに分かれる。ヒンジ部40は、前部ケース42と後部ケース44を相対回転自在に連結する。つまり、測定装置12は、第1測定面46と第2測定面48が面一の開放状態と、前部ケース42に対し後部ケース44が180°回転することで折り畳んだ折畳状態とに移行自在となっている(図3Cも参照)。
一方、機器操作部22は、前部ケース42と後部ケース44を重ねた状態の厚みと一致する厚みで、前後幅が短く左右幅が長い(測定部20の左右幅に一致する)直方形状に形成されている。機器操作部22内には、収容されている電子回路により、圧力検出部24を駆動制御して圧力値を検出する測定側制御部50(図9参照)、及び検出した圧力データを外部に送信する通信モジュール52(図9参照)が設けられる。また、機器操作部22の前端には、測定装置12を持ち運ぶ際に把持するための取手22aが取り付けられるとともに、機器操作部22の外面には、測定装置12を操作するための操作ボタン54が設けられる。
以上の測定装置12は、既述したように測定面26の各センサ28の状態(検出値の確認、劣化、不具合等)を把握するため、適宜のタイミングで校正が実施される。そして、校正の実施時には、図2に示す校正用器具16が使用される。この校正用器具16は、測定装置12の折畳状態を利用して校正を行うものであり、例えば、外力分布測定システム10の付属品として提供されるとよい。
詳細には、校正用器具16は、第1測定面46よりも大きな平面形状(長方形状)に形成されたシート部60と、シート部60の左右両側に設けられる一対の支持突条部62(支持部)とを含む。さらに、シート部60は、該シート部60の面方向と直交する方向に突出する複数の突部64と、複数の突部64同士の間を連結保持する連結シート66とを有する。
複数の突部64は、シート部60の面方向に沿ってマトリックス状に並設される。各突部64は、連結シート66の上面66a(シート部60の第1面)から上方に突出する第1突部64aと、下面66b(シート部60の第2面)から下方に突出する第2突部64bとにより略球形状(平面視で円形状)に形成される。各突部64は、比較的硬質な樹脂材料により構成され、折畳状態で、変形を抑えて測定装置12の測定面26を適度に押圧する。なお、第1突部64aと第2突部64bは、相互に面方向に位相がずれて設けられてもよい。
図2に示すように、複数の突部64は、行方向(左右方向)に沿って同形状に形成される一方で、列方向(前後方向)に沿ってその突出高さが変化するように形成される。すなわち、各突部64の突出高さは、機器操作部22側に配置される辺部(第2辺61b)からヒンジ部40側に配置される辺部(第1辺61a)に向かって徐々に低くなっている。また、各突部64は、平面視における円形状の面積自体は変化せず、側面視で楕円形状を呈することで、上下面66a、66bからの突出高さだけが変化している。なお、突部64の突出高さの変化は、第1突部64a又は第2突部64b(上面66a側又は下面66b側)の一方のみでもよい。
また、複数の突部64は、測定面26の下側に設けられたセンサ28に対応するように配置されることが好ましい。例えば、突部64は、図3Bに示す平面視で、四角形状のセンサ28よりも若干小径な円形状に形成され、隣り合う突部64の頂部同士の間隔が、隣り合うセンサ28の中心部間の間隔と一致している。これにより、校正の実施時には、各センサ28に対し突部64が個別に配置され、それぞれのセンサ28を押圧する。
或いは、突部64は、所定範囲内に存在する複数のセンサ28(センサ群)に対してまとめて接触する構成でもよい。例えば、校正用器具16は、前後及び左右方向に2個ずつ並ぶ合計4つのセンサ28のセンサ群に対し、突部64を1つずつ接触させるシート部60に構成し得る。
或いは、突部64は、センサ28に対して、複数の突部64が接触する構成でもよい。例えば、校正用器具16は、1つのセンサ28に対し、突部64を4つずつ接触させるシート部60に構成し得る。
また、外力分布測定システム10(測定装置12又は校正用器具16)は、測定面26に校正用器具16をセットする際に、各センサ28と各突部64を適切に対向させる位置決め手段を有することが好ましい。例えば、図示例では、校正用器具16の前後幅を前部ケース42の上面と同じ前後幅に形成するとともに、一対の支持突条部62を一対のスロープ38上に配置している。これにより、校正用器具16は、測定部20からの位置ずれが抑制された状態で、各突部64が各センサ28に対向する位置に配置される。またシート部60は、第1及び第2測定面46、48の全面を覆う大きさに形成されていることで、校正回数を少なくすることができる。なお、シート部60は、第1及び第2測定面46、48よりも小さく形成されて、複数回にわたって校正を行ってもよい。
一方、複数の突部64を連結保持する連結シート66は、薄肉板状に形成され、適宜の固着方法(接着や融着等)により上記の各突部64の側面に固着される。この連結シート66は、突部64よりも柔軟且つ可撓性を有する樹脂材料により構成され、校正用器具16の不使用時に、シート部60の巻回又は折り畳み可能としている。なお、突部64と連結シート66は、同じ樹脂材料により一体成形されてもよい。また、連結シート66の後辺側は、ヒンジ部40付近の圧力が大きくかからないように薄肉に形成されるとよい。
また、一対の支持突条部62は、連結シート66の左右両側辺を前後方向に延設されている。この一対の支持突条部62は、測定装置12が前部ケース42と後部ケース44を折り畳んだ際に両ケースに接触して、第1測定面46と第2測定面48の間の隙間S(図4A参照)を一定に維持する機能を有する。一対の支持突条部62は、第1及び第2測定面46、48の左右幅よりも長いシート部60の両端に設けられることで、第1及び第2測定面46、48に非接触で測定部20上に配置される。
一対の支持突条部62は、連結シート66を上下方向中心に配置している。また、支持突条部62は、前端側が高く突出する一方で後端側が低く突出する(又は突出しない)ことにより、その上辺62a及び下辺62bが後方向に向かって連結シート66側に傾く傾斜部68に形成されている。また連結シート66に対する上辺62aと下辺62bの傾斜は、同角度(つまり、連結シート66からの上辺62aと下辺62bの突出高さが同一)に設定されている。
また、一対の支持突条部62の内側には、上辺62a及び下辺62bの突出高さを変更可能な支持高さ調整部70(調整機構部)が設けられている。この支持高さ調整部70は、ユーザUが回転操作可能な調整ツマミ72と、調整ツマミ72の操作に基づき厚みを変化させる機構部74とを備える。機構部74は、例えば、調整ツマミ72の回転を上下の寸法変化に変える歯車機構を適用し得る。支持高さ調整部70は、機構部74により一対の支持突条部62の上辺62aと下辺62bを同時に近接又は離間する(突出高さを変更する)ことで、折畳状態における第1測定面46と第2測定面48の間の隙間Sを調整する。
これにより、シート部60の突部64が、測定面26を押し込む押込量を変えることができる。そのため校正時に1つの校正用器具16により、各突部64がセンサ28にかける押込量を変えて校正を行うことができる。
なお、校正用器具16に設けられる支持高さ調整部70は、上記の構成に限定されず、例えば、電動等で上辺62a及び下辺62bの突出高さを調整する機能を有していてもよい。また、測定装置12の折畳状態における第1測定面46と第2測定面48の隙間Sの間隔を設定する支持部も、上記一対の支持突条部62に限定されるものではなく、例えば校正用器具16が支持突条部62を備えなくてもよい。また例えば、支持部として、測定部20の測定面26よりも前端側につっかえ棒部を別に設けて、前部ケース42と後部ケース44がつっかえ棒部を挟み込む構成であってもよい。或いは、支持部は、測定装置12が備えていてもよい。
測定装置12は、図3Cに示すように、校正の実施時に、前部ケース42(又は後部ケース44)の上面に校正用器具16を位置決めした後に、校正用器具16が載置されていない側のケース部を相対回転して校正用器具16を挟み込むことで、挟込状態を構築する。
図4Aに示すように、校正用器具16は、挟込状態で、一対の支持突条部62が前部ケース42と後部ケース44を接触支持することで、第1測定面46と第2測定面48間の隙間Sを規定する。この際、一対の支持突条部62は、傾斜部68によりヒンジ部40に近い方の間隔が短く、ヒンジ部40から遠い方の間隔が長くなるように二等辺三角形状の隙間Sを構築することができる。
これに対し、シート部60の列方向に並ぶ突部64は、支持突条部62の傾斜部68の傾斜に沿って突出高さが徐々に変わるため、第1及び第2測定面46、48に均等的に接触する。そして、列方向に並ぶ複数の突部64は、図4Bに示すように、第1及び第2測定面46、48のセンサシート面31を下方向(前部ケース42の内側)及び上方向(後部ケース44の内側)に押圧する。これにより、センサシート面31側に配置されている第1電極32及び誘電層30が変形し、反対側の第2電極34に対し第1電極32が近接する。
この際、列方向に並ぶ突部64は、第1測定面46と第2測定面48の傾斜する隙間Sに合うように突出高さが変化しており、列方向に沿ってちょうど同じ押込量で測定面26を押し込む。そのため校正用器具16の挟込状態において、第1及び第2測定面46、48の各センサ28は、各突部64から均等的な圧力を平面的に受けることになり、各センサ28の校正を容易に行うことができる。
なお、校正用器具16のシート部60は、上記構成に限定されるものではなく、種々の変形例をとり得る。以下、シート部60のいくつかの変形例について説明する。なお、以降の説明において、上記の実施形態と同一の参照符号は同一の構成又は同一の機能を有するものとし、以下、その詳細な説明を省略する。
図5Aに示す第1変形例に係るシート部60Aは、前後方向(列方向)に隣り合う突部64同士を、左右方向(行方向)に位相をずらしている点で、本実施形態に係るシート部60と異なる。より具体的には、複数の突部64は、連結シート66に千鳥状に配列されて保持されている。このように突部64を千鳥状に配置しても、第1及び第2測定面46、48のセンサ群(複数のセンサ28)に対し突部64を各々接触させることが可能であり、測定装置12の校正を良好に行うことができる。また、各突部64の突出高さが後方向に向かって徐々に低くなることで、第1及び第2測定面46、48のセンサ28を同じ押込量で押し込むこともできる。
図5Bに示す第2変形例に係るシート部60Bは、シート部60Bの左右方向に延在する延在突部76を前後方向に複数配置した点で、本実施形態に係るシート部60と異なる。すなわち延在突部76は、円柱状に形成され、左右方向の複数のセンサ28に対してまとめて接触する。さらに、延在突部76の突出高さが、後方向に向かって徐々に低くなることで、第1及び第2測定面46、48のセンサ28を同じ押込量で押し込むこともできる。
図5Cに示す第3変形例に係るシート部60Cは、シート部60Cに設けられる突部64の大きさが同一に設定されている点で、本実施形態に係るシート部60と異なる。このように突部64の大きさが同一の場合は、ヒンジ部40から近い突部64の測定面26の押込量が増える一方で、ヒンジ部40から遠い突部64の測定面26の押込量が減る。そのため、外力分布測定システム10は、校正用器具16からの押込量が列方向に変化することを予め想定した校正プログラムを用意しておくことで、検出した圧力データに基づき校正を適宜行うことができる。特に、第1及び第2測定面46、48の押込量は、前後方向に沿って線形に変化するので校正を容易に行うことができる。
要するに、校正用器具16は、複数の突部64が測定面26に対して均等的な圧力(押込量)をかけるだけでなく、測定面26に対し不均等に圧力をかけてもよい。例えば、校正用器具16は、患者Cの足裏の母趾球や踵の部分に対して強い圧力を与えるように突部64の突出高さが設定され、これ以外の箇所の突出高さを抑えた構成でもよい。また例えば、校正用器具16は、突部64自体を備えずに、第1及び第2測定面46、48に面接触するシート部であってもよい。
また、図5Dに示す第4変形例に係るシート部60Dは、連結シート66Aの肉厚を突部64の突出高さの変化に応じて変化させている点で、本実施形態に係るシート部60と異なる。つまり、連結シート66Aは、シート部60Dの後方向に向かって薄肉に変化することで、連結シート66Dの上面66a及び下面66bから露出している突部64の突出高さを一定とする。このように構成すると、各突部64を一層確実に固着保持することができる。
さらに、シート部60に設けられる突部64の形状は、略球形状(側面断面視で円形状又は楕円形状)に限定されず、種々の形状をとり得る。例えば、図6A〜図6Nの側面断面視で示すように、種々の断面形状(第1〜第14構成例)の突部64A〜64Nを採用しても、本実施形態に係る突部64と同様の効果を得ることができる。なお、図6A〜図6Nの図示例は、連結シート66の上面66aから上方に突出する第1突部64aを示したものであり、当然に下面66bにも反転した形状の第2突部64bを設け得る。なお、これらの突部64A〜64Nもシート部60の列方向に沿って突出高さを徐々に変化させることが可能である。
さらに、図7Aに示す第5変形例に係るシート部80は、前後方向に沿って波状に形成されている点で、本実施形態に係るシート部60と異なる。シート部80は、波の上下の頂部付近が測定装置12の測定面26に接触する接触突部82となる。複数の接触突部82は、その間で傾斜する波間部84により連結支持される。すなわち、シート部80は、中間の波間部84に対し上面が上方に突出することで接触突部82a(第1突部)を形成し、波間部84に対し下面が下方に突出することで接触突部82b(第2突部)を形成している。波間部84は、図7Bに示すように、前後方向に隣り合う波間部84の長さが異なることで、第1測定面46のセンサ28と、これに対向する第2測定面48のセンサ28に対し、上下の接触突部82を接触させる。
また、シート部80は、前後方向に隣り合う接触突部82同士の間隔(すなわち波の波長)を一定としつつ、前端から後端方向に向かって上下の接触突部82の突出高さ(すなわち波の振幅)が徐々に小さくなるように設定することができる。これにより、接触突部82は、本実施形態に係る突部64と同様に、平面的に同じ押込量で第1及び第2測定面46、48を押し込むことが可能となる。なお、波状のシート部80は、接触突部82の突出高さが第3変形例に係る突部64と同様に一定であってもよく、また前後方向に隣り合う接触突部82同士の間隔(波長)が変化する構成であってよい。
また、図7Bに示すように、シート部80は、第1柔軟層86、硬質層87及び第2柔軟層88の順に積層した多層構造を採用するとよい。硬質層87は、測定装置12のセンサシート面31よりも硬質且つ弾性を有する樹脂材料や金属材料により構成され、前部ケース42と後部ケース44による挟込状態でもシート部80の形状を維持する。その一方で、第1及び第2柔軟層86、88は、硬質層87よりも柔らかく且つ弾性率が低いゴム等の樹脂材料により構成され、硬質層87の両面を覆っている。この第1及び第2柔軟層86、88は、測定面26に対する緩衝要素となり測定面26への傷付けを抑制することができる。
さらに、第5変形例に係る波状のシート部80も、例えば、図8A〜図8Dの側面断面視で示すように、種々の断面形状(第15〜第18構成例)のシート部80A〜80Dを採用することができ、上記のシート部80と同様の効果を得ることができる。特に、図8Dのシート部80Dは、変形時に、波間部84の折り返し部84aが変形して、上下の接触突部82が測定面26の面方向にずれることを抑制することができる。
図1に戻り、外力分布測定システム10の端末装置14は、上述したように圧力データ及び圧力分布データを処理及び表示する機能を有するとともに、測定装置12の校正処理を制御する機能を有する。この端末装置14は、図9に示すように、端末側制御部90、通信モジュール92、表示部94及び操作部96を有する。端末側制御部90は、例えば、演算処理部、記憶部、入出力部を有する周知のコンピュータを適用することができ、ユーザUによる操作部96の操作下に、記憶部に記憶している校正プログラム91を実行して、測定装置12の校正を実施する。表示部94及び操作部96は、端末装置14に設けられるタッチパネルとして一体化している。
校正の実施時には、例えば、端末側制御部90が通信モジュール92を介して測定側制御部50に指示することで、校正用器具16が第1及び第2測定面46、48の各センサ28にかける圧力データを取得する。そして、端末側制御部90は、取得した圧力データに基づき第1及び第2測定面46、48の各センサ28の状態を認識するとともに、センサ28毎の校正を行う。なお、校正プログラム91は、測定装置12に設けられていてもよい。
本実施形態に係る外力分布測定システム10及び校正用器具16は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下その動作及びその効果について、図10に示すフローチャートに沿って説明する。
外力分布測定システム10は、ユーザUによる電源のオン操作に基づき駆動を開始する。そして校正を行う場合は、先ず校正モードに設定されているか否かを判別する(ステップS1)。例えば、端末側制御部90は、表示部94に校正を実施するか否かの選択画面を表示し、ユーザUの指示下に校正モードの実施を判別するとよい。なお、校正モードは、外力分布測定システム10の使用毎に行ってもよく、内部のタイマにより時間計測して定期的(例えば1ヶ月毎)に行ってもよく、使用回数毎(例えば10回毎)に行ってもよい。
校正モードを実施すると、端末装置14は、校正用器具16を測定装置12の第1測定面46に載置するようにユーザUにガイドする(ステップS2)。この場合、端末装置14は、校正用器具16の載置を促す表示画面を表示部94に表示する、又は図示しないスピーカから校正用器具16の載置を促す音声を出力するとよい。ユーザUは、この処理に基づき校正用器具16を第1測定面46に載置及び位置決めする。
次に、端末側制御部90は、校正用器具16の位置決め状態で、測定装置12の前部ケース42と後部ケース44を折り畳むようにガイドする(ステップS3)。このステップS3の処理も、表示部94やスピーカを使用するとよい。ユーザUは、この処理に基づき測定装置12の前部ケース42に対し後部ケース44を相対的に回転させて校正用器具16を挟み込む。これにより、校正用器具16の突部64が第1及び第2測定面46、48の各センサ28に接触及び押し込むように作用する。
次に、外力分布測定システム10は、校正用器具16の挟込状態が正常か否かを判別する(ステップS4)。例えば、外力分布測定システム10は、ヒンジ部40内に折畳状態の角度を検出する図示しない角度センサを備え、角度センサが検出した角度が角度閾値範囲内にある場合に校正用器具16を正常に挟み込んだと判別し、角度閾値範囲外にある場合に異常を判別する。或いは、外力分布測定システム10は、前部ケース42と後部ケース44の内部に、前部ケース42と後部ケース44の隙間の間隔を検出する図示しない距離センサを備え、距離センサが検出した距離が距離閾値範囲内にある場合に校正用器具16を正常に挟み込んだと判別し、距離閾値範囲外にある場合に異常と判別する。そして異常を判別した場合には、ステップS5に進み、ステップS5において、校正用器具16の設置エラー(校正用器具16の設置のやり直し)を報知してステップS2に戻る。なお、処理フローにおいてステップS4及びS5は実施しなくてもよい。
一方、校正用器具16の挟込状態が正常の場合は、校正モードによる測定を開始する(ステップS6)。測定を開始すると、端末側制御部90は、測定装置12に対し圧力測定の指示を行い、測定装置12が検出した校正用器具16が各センサ28にかけた圧力データを取得する(ステップS7)。
その後、端末側制御部90は、取得した圧力データに基づき測定装置12の各センサ28の出力状態を確認し、正常に作動しているか否かを判別する(ステップS8)。例えば、端末側制御部90は、挟込状態の校正用器具16の押込量に対応するセンサ28の正常時の圧力範囲(規定圧データ)を予め保有し、圧力データ(圧力値)が圧力範囲にあるか否かを判別するとよい。これにより、センサ28が規定圧データから大きくずれる場合に、端末側制御部90は、センサ28の異常を特定することができるとともに、規定圧データに対するセンサ28の圧力データのずれ量を算出して、校正値として利用することができる。
そして、測定装置12の全てのセンサ28に関して判別が終了すると、端末側制御部90は、校正モードの判別結果を表示部94に表示する(ステップS9)。この表示においては、例えば、実際の測定時の圧力分布データの表示と同様に、校正用器具16が測定面26にかけた圧力の分布状態を2次元的に表示することが好ましい。この場合、正常なセンサ28に関しては所定の同一色で表示し、正常に作動していないセンサ28に関してはその反対色で表示するとよい。ユーザUは、この校正モードの判別結果に基づき、測定装置12の使用の可否を判断することができる。
さらにステップS9の後、外力分布測定システム10は、判別結果(ずれ量の校正値を含む)を端末装置14の記憶部に保存する(ステップS10)。なお、端末側制御部90は、判別結果の取得後、前回校正を行った判別結果と比較を行って、センサ28の検出値の変化傾向を表示する、又は測定装置12の故障を判定する等の処理を行ってもよい。また、判別結果のデータをメーカに送信する構成であってもよい。
その後、端末側制御部90は、測定装置12に挟み込まれている校正用器具16の取り出しをガイドし(ステップS11)、さらに校正用器具16が取り出されたことを確認すると(ステップS12)、処理フローを終了する。校正用器具16の取り出しは、例えば、ヒンジ部40の角度検出に基づき前部ケース42と後部ケース44が180°開いた状態となること等で判別するとよい。
以上の処理フローによって、外力分布測定システム10は、測定装置12の各センサ28の状態を把握することができる。そして、端末装置14は、実際に患者Cの体圧を測定する際に、ステップS8において取得した圧力データからのずれ量を使用して、各センサ28が取得した圧力データを補正して表示データを生成し表示部94に表示する。すなわち、外力分布測定システム10は、校正モードの結果を用いることで、圧力分布の測定を精度よく行うことができる。
なお、外力分布測定システム10は、校正モードによる検出を複数回繰り返すことで、その後の測定を一層高精度に行うことができる。複数回行う場合は、ステップS12の終了後にステップS2に戻り以降の処理フローを繰り返す。そして、ユーザUは、校正用器具16の支持高さ調整部70を操作して一対の支持突条部62の突出高さ(すなわち、第1測定面46と第2測定面48の隙間Sの間隔)を変えて、突部64がセンサ28にかける押込量を変える。これにより、端末側制御部90は、測定装置12から複数の異なる圧力データを得ることができ、センサ28の状態をより正確に把握することができる。
また複数回繰り返す場合に、測定部20に載置する校正用器具16を別のものに変えて検出を行ってもよい。この場合、外力分布測定システム10は、ステップS6の測定を開始時に、どのような校正用器具16を使用しているかを判別して、ステップS8で用いる圧力範囲を設定するとよい。校正用器具16の種類は、ユーザUが手動で選択してもよく、ヒンジ部40の角度検出により自動的に特定してもよい。
或いは、校正用器具16を引っ繰り返して、先に検出を行ったシート部60の面と反対側の面により検出を行ってもよい。或いは、一対の支持突条部62を備えない校正用器具16は、測定面26に載置する向きや位置を変えて検出を行ってもよい。
以上のように、本実施形態に係る外力分布測定システム10の校正用器具16及びその校正方法によれば、校正の実施時に、第1測定面46と第2測定面48の折り畳みに伴い、校正用器具16が第1及び第2測定面46、48により挟込状態となる。よって校正用器具16のセット位置が固定され、器具の位置ずれ等による校正の手間が低減されるとともに、ユーザによる校正作業のバラツキを減らすことができる。また校正用器具16は、挟込状態で、シート部60が第1及び第2測定面46、48の各センサ28を規定の押込量で押し込む。これにより、外力分布測定システム10は、校正用器具16からかかる圧力(規定圧)を、第1及び第2測定面46、48の各センサ28により検出して、各センサ28の状態を認識することができ、センサシートの劣化を容易に確認することが可能となる。また、外力分布測定システム10は、規定圧に対するずれ量を校正用のデータとして利用して、後の体圧測定の測定精度を向上することができる。
そして、校正用器具16のシート部60が、上下面66a、66bから突出する複数の突部64を備えることで、各突部64が第1及び第2測定面46、48の各センサ28を適度に押し込むことができる。従って、校正用器具16からかかる圧力をより容易に検出することができる。また校正用器具16は、突部64及び連結シート66という簡単な構成によって、軽量化を図ることができ、測定装置12及び端末装置14とともに容易に持ち運ぶことができる。さらに、軽量に構成された校正用器具16であれば、誤って校正用器具16を測定装置12に落としたとしても、測定装置12の損傷を抑制することができる。
この場合、校正用器具16は、突部64の突出高さがシート部60の前辺から後辺に向かって徐々に低くなることで、折畳状態における第1測定面46と第2測定面48の間の隙間Sの形状に合わせることができる。これにより、複数の突部64は、第1及び第2測定面46、48の各センサ28を均等的に押し込み、各センサ28の状態をより簡単に認識させることができる。
また、連結シート66が可撓性を有することで、校正用器具16の不使用時にはシート部60を畳む、巻回する等の形状に変形させることができ、校正用器具16の持ち運びや保管が容易となる。その一方で、突部64が連結シート66より硬質であることで、各センサ28を確実に押し込むことができ、外力分布測定システム10の校正を一層精度よく実施することができる。
さらに、校正用器具16は、第1測定面46と第2測定面48の間の間隔を設定する支持突条部62を備えることで、第1及び第2測定面46、48の各センサ28を押し込む押込量を、校正毎に等しくすることができる。またさらに、校正用器具16は、支持高さ調整部70を有することで、突部64が第1及び第2測定面46、48の各センサ28を押し込む押込量を変更することができる。従って1つの校正用器具16により、第1及び第2測定面46、48の各センサ28に異なる圧力をかけることが可能となり、外力分布測定システム10は、複数の圧力値に基づき高精度な校正を簡単に行うことができる。
なお、上述の説明は、本発明の一実施形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲の記載内容に基づき、種々の変更を加えることができる。本発明の一実施形態において、センサ28は静電容量型の圧力センサを適用したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、例えば、圧力に応じて抵抗値が変化する構造を有する面圧センサで構成することも可能である。またセンサ構造により、外力に対するセンサ面の変形量が極めて小さくなる構成も可能であるが、その場合、突部64の突出量およびその変化は、それら特徴に合わせて調整される。