以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本発明の第一実施形態に係る水洗大便器装置について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は水洗大便器装置FTの断面図であって、水洗大便器装置FTをその左右方向に垂直な面で切断した場合の断面を示している。図2は水洗大便器装置FTの上面図である。図2では、後に説明するタンク20の内部構造を示すため、タンク20の上蓋201を取り外した状態を描いている。
図1及び図2に示したように、水洗大便器装置FTは、大便器本体10と、大便器本体10の後方側(図1では右側、図2では上側)において大便器本体10の上面101に設置されたタンク20とを備えている。水洗大便器装置FTは、大便器本体10によって汚物を受け止めて、当該汚物を、タンク20から供給される水(洗浄水)によって排水管SWに排出する装置である。
尚、以下の説明においては、特に断らない限り、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て右側(図2では左側)のことを「右側」と称し、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て左側のことを「左側」(図2では右側)と称することとする。また、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て前方側(図1では左側、図2では下側)のことを「前側」又は「前方側」と称し、大便器本体10に着座した状態の使用者から見て後方側(図1では右側、図2では上側)のことを「後側」又は「後方側」と称することとする。
大便器本体10は、ボウル部110と、リム部120と、導水路130と、排水トラップ管路140とを有している。ボウル部110は、上方から落下する汚物を一時的に受け止める部分である。リム部120は、ボウル部110の上縁部に形成されており、図1に示したように、ボウル部110の内側面の一部を外周側に向けて後退させたような形状となっている。後に説明するように、リム部120は、ボウル部110に向けて供給された水が旋回して流れる流路となっている。リム部120は、ボウル部110の上縁に沿って一周するような略円形(上面視)の流路として形成されている。
導水路130は、タンク20から供給された水をボウル部110に導くために、大便器本体10の内部に形成された流路である。導水路130は、その一端が大便器本体10の上面101に開口しており、タンク20から供給される水の入口131となっている。入口131が形成されている位置は、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分であり、且つ左右方向における中央の部分である。
導水路130は、その下流側において二つの流路(第一導水路132、第二導水路134)に分岐している。一方の流路である第一導水路132は、その下流側の端部がリム部120のうち右側の部分において開口しており、当該開口が水の出口(吐水部133)となっている。タンク20から入口131に水が供給されると、その一部は第一導水路132の内部を通り、吐水部133から噴出してリム部120に供給される。
他方の流路である第二導水路134は、その下流側の端部がリム部120のうち左側且つ後方寄りの部分において開口しており、当該開口が水の出口(吐水部135)となっている。タンク20から入口131に水が供給されると、その一部は第二導水路134の内部を通り、吐水部135から噴出してリム部120に供給される。
吐水部133から水が噴出する方向は、略円形の流路として形成されたリム部120の円周に沿う方向であり、且つ上面視において反時計回りの方向となっている。吐水部135から水が噴出する方向も、略円形の流路として形成されたリム部120の円周に沿う方向であり、且つ上面視において反時計回りの方向となっている。図2において矢印で示したように、吐水部133及び吐水部135からリム部120に噴出した水は、いずれもリム部120に沿って反時計回りに旋回して流れながら、リム部120の全体からボウル部110に向けて流下する。
排水トラップ管路140は、ボウル部110の下端と排水管SWとを接続する流路である。排水トラップ管路140は、ボウル部110の下端から下流に向かう方向に沿って上り勾配となるように形成されている上昇流路141と、上昇流路141の上端から下流に向かう方向に沿って下り勾配となるように形成されている下降流路142とを有している。このような構成により、ボウル部110の下部から上昇流路141の下部に亘る部分には水を貯留することが可能となっており、貯留した水によって封水WTが形成されている。下降流路142の下端には排水管SWが接続されている。排水管SWは建物の内部に配置された配管であって、その下流側の端部が不図示の下水管に接続されている。
タンク20からボウル部110に向けて水が供給されると、上記のように、当該水はリム部120を旋回して流れながら、リム部120の全体からボウル部110に向けて流下する。水はボウル部110に対して上方から追加され、ボウル部110の下端部から上昇流路141及び下降流路142を通って排出される。その結果、ボウル部110に貯留されている水(封水WT)には下向きの流れが生じることとなる。
ボウル部110において一時的に受け止められていた汚物は、上方のリム部120から供給される水によって下方に向けて押し込まれ、ボウル部110の下端に向かって移動する。その後、汚物は水流によって上昇流路141を通り下降流路142に到達して、水と共に排水管SWに向けて落下する。
タンク20は内部に水が貯留された容器であって、当該水を導水路130の入口131に供給するためのものである。タンク20は、第一タンク部210と、第一タンク部210の底壁211の一部を下方に伸ばすように形成された第二タンク部220とを有している。第一タンク部210と第二タンク部220はいずれも略直方体の容器であって、両者の内部空間が互いに連通している。第二タンク部220は、第一タンク部210の底壁211のうち後方側の部分に接続されている。
第一タンク部210の底壁211(第二タンク部220よりも前方側の部分)は、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分に対して上方から近接した状態となっている。具体的には、大便器本体10の上面101のうち後方側の部分には入口131が形成されているが、第一タンク部210の底壁211は、入口131の周囲を上方から覆うように、大便器本体10の上面101に対して上方から近接した状態となっている。また、底壁211には入口131と略同一形状の開口212が形成されており、開口212と入口131とが上面視で重なっている。このため、タンク20の内部に貯留されている水は、開口212及び入口131を通って導水路130の内部に流入し、ボウル部110に向かって流れることが可能となっている。
第一タンク部210を上記のように配置した結果、第二タンク部220は大便器本体10よりも後方に位置している。すなわち、大便器本体10の後方側端部よりも更に後方側に位置した状態となっている。また、第二タンク部220の底壁221は、大便器本体10の上面101よりも低い位置に配置されている。
上記のようにタンク20が配置されることにより、タンク20の前端部が、大便器本体10の後端部よりも前方側に位置している。また、タンク20の下端部が、大便器本体10の上面101よりも下方側に位置している。その結果、水洗大便器装置FT全体の前後方向における寸法と、上下方向における寸法とが、いずれも小さくなっており、水洗大便器装置FTのデザイン性が向上している。
次に、タンク20の内部の構成について説明する。図3は、水洗大便器装置FTを後方側から見た場合における、タンク20の内部を示す斜視図である。図3に示したように、タンク20の内部には、給水管231と、主弁233と、パイロット弁234と、ジェットポンプユニット300とが配置されている。
給水管231は、主弁233に向けて水を供給するための管であって、第二タンク部220の底壁221から鉛直上方に向かって伸びるように配置されている。給水管231の下端は、タンク20の外部において不図示の水道管に接続されている。また、給水管231の上端は、タンク20の内部において主弁233に下方から接続されている。給水管231は、タンク20の内部のうち左右方向における中央よりも左側となる位置に配置されている。
給水管231の途中(水道管と主弁233との間)には、図3では図示しない定流量弁232が配置されている。主弁233が開いた状態において主弁233に流入する水の流量は定流量弁232によって一定となり、水道管内の水圧によって変動することがない。
主弁233は開閉弁であって、給水管231からジェットポンプユニット300に向かう水の流路の開閉を行うものである。主弁233とジェットポンプユニット300との間にはバキュームブレーカー235が備えられており、バキュームブレーカー235の上流側が負圧となって水が逆流してしまうことが防止されている。尚、上記のように給水管231が上方に向かって伸びており、主弁233とバキュームブレーカー235とはタンク20内の高い位置に配置されている。このため、タンク20の水位が満水位となった状態においても、バキュームブレーカー235が水没してしまうことはない。
主弁233にはパイロット弁234が備えられており、パイロット弁234の動作によって主弁233の開閉が切り替えられる構成となっている。パイロット弁234には、タンク20の外側に配置された手動レバー236が、タンク20の内部に配置された伝達機構237を介して接続されている。また、パイロット弁234には、タンク20の内部に配置されたフロート238が更に接続されている。
水洗大便器装置FTの使用者によって手動レバー236が操作されると、当該操作が伝達機構237を介してパイロット弁234に伝達され、パイロット弁234が開かれる。これにより主弁233が開かれた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300に向かって水が流れる。後に説明するように、ジェットポンプユニット300に向かって流れた水は、タンク20の内部に貯留されていた水と共に洗浄水として導水路130に供給される。このため、タンク20の内部における水位は次第に低下していく。
ボウル部110の洗浄が終了した後も、主弁233は閉じられず、給水管231からジェットポンプユニット300に向かって引き続き水が流れる。ジェットポンプユニット300に向かって流れた水はタンク20の内部に供給されて、次回の洗浄のために貯留される。タンク20の内部に向けた水の供給(タンク20への注水)が行われると、タンク20の内部における水位は次第に上昇して行く。タンク20の内部においてパイロット弁234に接続されているフロート238は、水位の上昇に伴って上昇し、これによりパイロット弁234が閉じられる。
このように、タンク20の内部における水位が上昇すると、フロート238が受ける浮力の変化によってパイロット弁234が閉じられる。パイロット弁234が閉じられると、主弁233が閉じられた状態となり、給水管231からジェットポンプユニット300への水の供給が停止される。この時点においてタンク20の内部に貯留されている水の量が、次回の洗浄のために必要な量となるように(所定の満水位となるように)、フロート238の配置が調整されている。
ジェットポンプユニット300は、給水管231から供給された水によりジェットポンプ作用を誘発させ、これにより導水路130に向けた水の供給を行うためのものである。ジェットポンプユニット300は、ノズル310と、スロート管320とを有している。
ノズル310は、一端が接続管239を介してバキュームブレーカー235に接続されており、他端には噴射口311が形成されている管である。ノズル310は、第二タンク部220の底壁221の近傍に配置されている。主弁233が開かれると、給水管231から供給された水は接続管239を流れてノズル310に到達し、噴射口311から高速の水流として噴射される。ノズル310は、第二タンク部220のうち後方側且つ右側の隅(上面視における隅)に配置されている。図3に示したように、ノズル310はU字形状となっており、その下流側が上記隅から折り返されている。噴射口311は、その噴射方向がスロート管320の内部に向けられている。
スロート管320は断面が円形の管であって、底壁211に形成された開口212を一部が貫通した状態で、タンク20の内部に配置されている。スロート管320の一端は導水路130の入口131に接続されており、他端には開口である吸引口321が形成されている。スロート管320は、導水路130の入口131側の部分が鉛直方向に沿っており、吸引口321側の部分が水平面に対して傾斜している。このため、その全体が逆U字形状となっている。図2に示したように、スロート管320は、上面視において前後方向に対して傾斜した状態で、タンク20の内部に配置されている。
スロート管320の具体的な形状について更に詳しく説明する。スロート管320は、吸引口321から斜め上方に向けて伸びる上昇部322と、上昇部322の下流側(上側)に配置された屈曲部323と、屈曲部323の下流側(下側)に配置され、屈曲部323から下方に向かって伸びる下降部324とを有している。
上昇部322は、その管径が全体において均一な円筒形状の管であって、水平面に対して傾斜した状態で配置されている。吸引口321は上昇部322の下端に形成されている。吸引口321は、その縁の全体が水平面に沿うように(水平面と平行になるように)形成されている。
下降部324は、その管径が全体において均一な円筒形状の管であって、鉛直方向に沿って配置されている。下降部324の管径は、上昇部322の管径よりも大きい。屈曲部323のうち上昇部322側の管径は、上昇部322の管径に等しい。また、屈曲部323のうち下降部324側の管径は、下降部324の管径に等しい。このため、管径が互いに異なる上昇部322と下降部324とが、屈曲部323によって滑らかに繋がれているということができる。
図4を参照しながら、ジェットポンプユニット300の構成及び動作について更に説明する。図4(A)は、タンク20内の水位が吸引口321よりも高い(例えば満水位)ときにおいてノズル310から水が噴射され、これによりジェットポンプ作用が誘発されている状態を模式的に示したものである。
主弁233が開かれて、ノズル310の噴射口311から水が噴射されると、噴射された高速の水が上昇部322の内部に向かって流れる。上昇部322のうち下側の部分及びノズル310は、タンク20内に貯留されている水の内部に水没している。このため、タンク20内に貯留されている水は、噴射口311から噴射された高速の水流によって上昇部322の内部に引き込まれて、導水路130に向かって流れる。このようなジェットポンプ作用が誘発される結果、スロート管320の内部では、ノズル310の噴射口311から噴射された水だけでなく、吸引口321の周囲から引き込まれた水も流れる。これらが導水路130を流れて、洗浄水として吐水部133、135からリム部120に供給される。
このように、水洗大便器装置FTにおいては、ノズル310の噴射口311から噴射される水の流量よりも、リム部120に供給される水の流量の方が大きくなっている。換言すれば、ノズル310の噴射口311から噴射される水の流量が小さくても、洗浄水として十分な流量の水がリム部120に供給される。このため、水道管の水圧が小さい低い環境に水洗大便器装置FTが設置された場合であっても、十分な洗浄性能を発揮することができる。
また、洗浄水としてリム部120(及びボウル部110)に供給される水の総量は、タンク20の内部に予め貯留されていた水の量に、ノズル310の噴射口311から噴射された水の量を加えたものとなる。全ての洗浄水をタンク20の内部に貯留しておく必要がないため、タンク20は小型化されており、そのデザイン性が向上している。
ところで、タンク20に貯留されている水のうち、吸引口321よりも下の部分に存在する水は、吸引口321からスロート管320の内部に供給されない。その結果、タンク20の内部に残水として残ってしまう。しかし、図3等に示したように、ノズル310及び吸引口321はいずれも(狭い)第二タンク部220の内部に配置されている。このため、吸引口321よりも下の部分で残ってしまう残水の量は、比較的少なくなっている。
このような構成により、水洗大便器装置FTでは、リム部120に対する水の供給が終了した時点における残水の量を少なくしている。その結果、タンク20の内部空間のうち殆どの部分を、リム部120対して供給される水(残水とならない水)を貯留するための空間として利用することが可能となっており、タンク20の大型化が抑制されている。
上昇部322の下端近傍、すなわち吸引口321の近傍には、流路切替部材350が取り付けられている。流路切替部材350は棒状の部材であって、その長手方向に沿った一端にはフロート351を有しており、他端には切替板352を有している。尚、流路切替部材350は、先に参照した図3等においては図示を省略していたものである。
流路切替部材350は、フロート351と切替板352との間の部分が、上昇部322の下端近傍に対して回転自在な状態で取り付けられている。図4(A)に示したように、タンク20内の水位が吸引口321よりも高いときにおいては、フロート351に加わる浮力によって流路切替部材350が回転する。具体的には、フロート351が上方に移動し、切替板352が下方に移動して、それぞれ図4(A)に示した位置で停止する。
図4(A)の状態においては、ノズル310から噴射された水は、切替板352には直接当たることなく上昇部の内部に流入する。その結果、既に説明したようなジェットポンプ作用が誘発され、洗浄水としての水がリム部120に供給される。
その後、タンク20内の水がリム部120に供給されることにより、タンク20内の水位は次第に低下していく。
図4(B)は、タンク20内の水位が吸引口321の近傍まで低下し、リム部120への水の供給が停止した状態を模式的に示したものである。タンク20内の水位が吸引口321の近傍まで低下すると、フロート351に加わる浮力は小さくなる。このため、図4(B)に示したように、フロート351が下方に移動するように流路切替部材350が回転する。切替板352は上方に移動して、ノズル310から噴射された水が切替板352に直接当たるようになる。
切替板352のうち噴射口311に対向する面は、凹状に湾曲した形状となっている。ノズル310から噴射された水が当該面に当たると、水は当該面に沿って流れて、その進行方向を略90度変化させる。その結果、ノズル310から噴射された水は上昇部322の内部には流入せず、次回の洗浄のための水としてタンク20に貯留される。このように、流路切替部材350は、ノズル310から噴射された水の供給先を、リム部120(大便器本体10)からタンク20へと切り替えるためのものである。
図5は、タンク20の内部における構成を模式的に示している。既に説明したように、タンク20の内部には、給水管231と、主弁233と、ジェットポンプユニット300とが配置されている。
ボウル部110の洗浄が行われていない状態(待機状態)においては、タンク20の水位は満水位となっている。水洗大便器装置FTの使用者によって手動レバー236が操作されると、既に説明したように主弁233が開かれた状態となり、ノズル310の噴射口311から水が噴射される(図5の矢印AR1)。タンク20の内部に貯留されていた水は、スロート管320の内部に引き込まれて(図5の矢印AR2)、洗浄水としてリム部120に供給される(図5の矢印AR3)。
リム部120への水の供給が終了すると、ノズル310からの水の供給先が流路切替部材350によって切り替えられて、タンク20への注水が開始される(図5の矢印AR4)。タンク20内の水位は次第に上昇して行き、満水位となった時点でフロート238によりパイロット弁234が閉じられる。これと同時に主弁233が閉じられることによりタンク20への注水が終了し、待機状態に戻る。
タンク20の内部におけるその他の構成について、再び図3を参照しながら説明する。図3に示したように、タンク20の内部にはスロート管320の下降部324を囲むような隔壁240が配置されている。隔壁240は、底壁211から上方に向かって伸びるように形成されている。隔壁240、タンク20の前側壁面213、左側壁面214、及び第一タンク部210の底壁211によって、タンク20の内部空間の一部が区画され、小タンク260が構成されている。小タンク260は、その上部がタンク20の内部に開放された容器であって、第一タンク部210のうち前方側且つ左側の隅に配置されている。スロート管320は、下降部324の下端部分が小タンク260の内側に配置されている。また、吸引口321が小タンク260の外側に配置されている。
隔壁240のうち下端部近傍には開閉窓241が設けられている。開閉窓241は通常は開かれた状態となっており、開閉窓241を通じて小タンク260の内部と外部(隔壁240よりも後方側の空間)とが連通している。このため、ボウル部110の洗浄が行われていない状態(待機状態)においては、タンク20内に貯留された水の水位と、小タンク260内に貯留された水の水位は等しくなっている。
手動レバー236は二つの方向(大方向、小方向)に操作することが可能となっている。手動レバー236が大方向に操作された場合には、開閉窓241が開かれた状態のまま、パイロット弁234及び主弁233が開かれる。小タンク260に貯留されていた水は、開閉窓241を通過して第二タンク部220に流出し、吸引口321に到達する。このため、タンク20の内部に貯留されていた水は、小タンク260に貯留されていた分を含む殆どが、スロート管320の内部に引き込まれてリム部120に供給される。
一方、手動レバー236が小方向に操作された場合には、開閉窓241が閉じられると同時にパイロット弁234及び主弁233が開かれる。このため、タンク20の内部に貯留されていた水のうち小タンク260に貯留されていた水は、開閉窓241を通過することができずに小タンク260の内部に残留したままとなる。その結果、洗浄水としてリム部120に供給される水の量は少量となる。
尚、以下の説明において「タンク20に貯留されている水の水位」又は「タンク20内の水位」等というときには、小タンク260の外部における水位を示すものとする。すなわち、隔壁240によって二つに分けられた空間のうち、吸引口321が配置されている方の空間に貯留されている水の水位を示すものとする。小タンク260に貯留されている水の水位については、以下の説明では考慮しない。
続いて、リム部120へ洗浄水として供給される水の流量(吐水部133、135に供給される水の流量といってもよい)について、図6及び7を参照しながら説明する。図6は、水洗大便器装置FTの、洗浄時における動作の流れを説明するためのフローチャートである。図7(A)及び(B)は、リム部120に供給される水の流量が変化することを説明するための図であって、ジェットポンプユニット300の流路状態が切り替わる様子を模式的に示している。図7(C)及び(D)は、リム部120に供給される水の流量の変化を示すグラフである。
図7(A)に示したように、スロート管320の下降部324には流路状態切替手段390として、可動部材393が取り付けられている。可動部材393は、開閉板391と、フロート392とを有している。開閉板391は、下降部324に対して回転自在に取り付けられた板である。開閉板391は、その下端が下降部324の外側面に取り付けられており、当該下端を中心として回転することが可能となっている。
フロート392は、タンク20内に貯留された水から浮力を受けて、当該浮力により可動部材393を動作させるものである。フロート392は開閉板391の上端部近傍に固定されており、開閉板391と共に回転する。
スロート管320の下降部324のうち、開閉板391と対向する位置には、開口部325が形成されている。開口部325は、タンク20内の水位が満水位の時においては全体が水没する位置に形成されている。また、開口部325の下端の高さは、吸引口321よりも高くなっている。
まず、水洗大便器装置FTの使用者によって手動レバー236が操作されると(ステップS01)、ノズル310から水が噴射され、既に説明したようにジェットポンプ作用によってリム部120に水が供給される(ステップS02)。
図7(A)に示したように、このとき、タンク20内の水位は高いため、フロート392が受ける浮力によって可動部材393は、開閉板391が下降部324の外側面と平行な状態となっている。その結果、開閉板391が開口部325を塞いでおり、水が開口部325を通ることはできない状態となっている。そのため、タンク20内に貯留されていた水は、ジェットポンプ作用によって吸引口321からスロート管320の内部に流入した後、その全てがリム部120に供給される。
ノズル310からの水の噴射が開始されてから、タンク内の水位が低下してフロート392の下端の位置(このときの水位を、以下では「第一水位」とも称する)となるまでの期間においては、上記のように大流量の水がリム部120に供給される。当該期間においてジェットポンプユニット300から大流量の水が供給される工程を、以下では「第一工程」とも称する(ステップS03)。第一工程は、静止した状態でボウル部110内に貯留されていた水に運動量を与えて水流を形成する工程であるため、水流形成工程とも称する。
タンク20内の水位は次第に低下して行き、第一水位に達すると、これに伴ってフロート392の位置も次第に低下して行く。換言すれば、開閉板391の上端部が下降部324から離れて行く方向に、可動部材393が回転して行き、上記の第一工程は終了する(ステップS04)。
図7(B)は、タンク20f内の水位が低下してフロート392が下方に移動し、開口部325が開いた状態(開閉板391により塞がれていない状態)を示している。尚、タンク20内の水位はこの時点でも吸引口321より高く、リム部120には引き続き水が供給されている。
このとき、タンク20内に貯留されていた水は、引き続きジェットポンプ作用によって吸引口321からスロート管320の内部に流入するが、その一部が開口部325を通じてスロート管320から流出する。その結果、リム部120に供給される水の流量は小さくなる。すなわち、リム部120に供給される水の流量が、第一工程における流量よりも低下している。このように、第一工程が終了した後、低下した流量の水が洗浄水としてリム部120に供給される工程を、以下では「第二工程」とも称する(ステップS05)。第二工程は、引き続き吐水部133、135に水を供給することにより、第一工程において形成されたボウル部110内の水流を維持するための工程であるため、水流維持工程とも称する。タンク20内の水位が更に低下して、流路切替部材350が図4(B)に示した状態となるまで継続される(ステップS06、S07)。
尚、流路切替部材350のフロート351に加わる浮力が小さくなり、流路切替部材350が回転して図4(B)も示した状態となる際におけるタンク20内の水位を、以下では「第二水位」とも称する。すなわち、第二水位とは、リム部120に対する洗浄水の供給が停止される際における、タンク20内の水位である。
第二工程が終了すると、既に説明したようにノズル310からは水が継続して噴射され、タンク20内への水の貯留が行われる(ステップS08)。タンク20内の水位が上昇して、満水位となると、ノズル310からの水の噴射が停止され、タンク20内への水の貯留が停止される(ステップS09、S10)。
尚、ボウル部110の洗浄が行われた後において、封水WTを形成するための水(リフィル水)をジェットポンプユニット300からリム部120に追加供給する構成としてもよい。このようなリフィル水の供給は、第二工程が終了した時点(ステップS07の直後)、又はタンク20内への水の貯留が停止した時点(ステップS10の直後)のいずれかのタイミングにおいて、開始することが望ましい。第二工程が終了した時点でリフィル水の供給を開始する場合には、タンク20内への水の貯留と、リム部120へのリフィル水の追加とが同時に行われることとなる。
図7(C)は、第一工程の開始時点(時刻t0)から第二工程の終了時点(t200)までの期間における、リム部120に供給される水の流量の変化を示している。すなわち、ボウル部110の洗浄が行われている期間において、リム部120に供給される洗浄水の流量の変化を示している。同図においては、第一工程から第二工程に切り替わる時刻、すなわち、タンク20内の水位が第一水位となる時刻を時刻t100としている。また、第一工程において吐水部133へ供給される水の流量をQ1と表記し、第二工程において吐水部133へ供給される水の流量をQ2と表記し、さらに第一工程及び第二工程においてノズル310から噴射される水の流量をQjと表記している。
既に説明したように、時刻t0から時刻t100までの第一工程においては、ジェットポンプ作用による大流量の水がリム部120に供給される。
時刻t100から時刻t200までの第二工程においては、第一工程と同様に、ジェットポンプ作用によって増幅された流量の水がリム部120に到達する。しかし、第二工程においては、開口部325が開いた状態となっているため、スロート管320の内部に流入した水の一部が開口部325を通じてスロート管320から流出する。つまり、ノズル310から噴射される水の流量及びジェットポンプ作用によって吸引口321に引き込まれる水の流量は、第二工程に切り替わった後も変わらず一定のままであるが、その一部が開口部325から流出してしまう。その結果、ジェットポンプユニット300からリム部120に供給される水の流量Q2は、時刻t100を境に急激に小さくなっている(流量Q1から流量Q2へと変化している)。
本実施形態においては、時刻t120よりも早い時刻t100で、リム部120に供給される水の流量を急激に減少させることにより、ボウル部に供給される洗浄水の総量を低減させている。具体的には、可動部材393を回転させることによって、開閉板391に塞がれていた開口部325を開放し、スロート管320の水の一部を流出させ、吐水部133から流出する水の流量を減少させる構成となっている。
時刻t0から時刻t100までの第一工程においては、タンク20内でフロート392が水没している。このため、流路状態の切り替えは行われず、リム部120(吐水部133、135)には大流量且つ略一定の水がジェットポンプユニット300から供給される。ボウル部110に付着した汚物は短時間のうちに除去されるため、吐水部133、135から水を吐出する時間を短縮し、節水化を図ることが可能となっている。
また、時刻t100から時刻t200までの第二工程においては、タンク20内の水位はフロート392よりも低い位置にある。このため、フロート392が水面に浮くように可動部材393が回転することで、開口部325が開いた状態になっている。このため、開口部325からスロート管320の水の一部が流出し、リム部120に供給される水の流量が減少する(流量Q1から流量Q2に変化する)。このように、フロート392は、リム部120に供給される水の流量を抑制するようにジェットポンプユニット300の流路状態を切り替える「流路状態切替手段390」として機能する。
尚、フロート392の位置(高さ)は、第一工程から第二工程へと移行するタイミングを考慮して決定される。開口部325が第一工程においては閉じられているようにフロート392位置が決定されるのが一般的であるが、第一工程において、スロート管320の水の一部が開口部325からもれ出ていてもよい。ただし、第一工程における開口部325からの水の流出量は、第二工程の流出量よりも小さくする必要がある。
また、第二工程における、流路状態切替手段390によってスロート管320内の水の一部の流出先は、タンク20以外の箇所とする構成とすることも可能である。しかし、この場合、流出させた水が無駄水となってしまい、タンク20内に余分な水を貯留しておく必要がでてしまう。第二工程においてスロート管320内の水の一部をタンク20内に流出させることで、タンク20内に貯留しておく水の量を少なくすることができ、タンク20の小型化を図ることが可能となる。
また、流路切替部材350によって、ノズル310から噴射された水の供給先が、リム部120(大便器本体10)からタンク20へと切り替えられるためには、第二工程においても、タンク20内の水位が降下する必要がある。図7(D)は、図7(C)のQ1とQ2との差分の流量Q2#outを示すグラフである。流量Q2#outは、開口部325からタンク20に流出される流量を示している。そのため、図7(D)のグラフにおいて、流量Q2#outが、ジェットポンプ作用によって吸引されるタンク20内の水の流量Q2−Qjよりも小さくなるように開口部325の大きさが調整されている。これによって、第二工程においてもタンク20内の水位を低下させることができるため、タンク20内の水位が最低水位となったタイミングでジェットポンプユニット300による便器側への水の供給を停止させるなどの制御が可能となる。
上述したように、本実施形態に係る水洗大便器装置FTでは、第一工程に続く第二工程においては、リム部120に供給される水の流量が減少する。つまり、第二工程においては、ボウル部110に供給される水の流量が減少する。
既に説明したように、ジェットポンプユニット300が大便器本体10に搭載された場合には、常に一定流量の洗浄水がボウル部110に供給されることとなる。
しかしながら、ウォッシュダウン式の大便器本体10において汚物が排出されるために最低限必要となる洗浄水の流量は、洗浄の開始から終了まで常に一定ではなく、時間の経過とともに変化する。
具体的には、洗浄の開始では、静止した状態でボウル部110内に貯留されていた水に運動量を与えて水流を形成する必要があるため、大流量(第一流量)の洗浄水を供給する必要がある。ところが、洗浄の開始に続く洗浄の途中期では、ボウル部110内には既に水流が形成されており、その水には慣性力が働いているのであるから、ボウル部110内の水流を維持するために必要な水の流量は、第一流量よりも小さくなる。
このため、洗浄の開始から終了まで常に一定流量の水が供給されると、必要以上の洗浄水が供給されることになり、一部の洗浄水が無駄になってしまう。
そこで本実施形態に係る水洗大便器装置FTのように水流形成工程と水流維持工程とが順に実行されるような構成とし、吐水部133、135に供給される水の流量を減少させれば(第一流量から第二流量に変化させれば)、洗浄性能を犠牲にすることなく、節水性を高めることができる。
また水の流量を減少させることで、大流量(第一流量)の供給時には排出されにくいボウル部110内に浮遊している軽い汚物が排出されやすくなるという利点があり、このような軽い汚物の排出性能を確保するためにも水の流量を減少させることが好ましいものである。
以上のように、本実施形態に係る水洗大便器装置FTでは、洗浄水を供給している期間(時刻t0から時刻t200まで)の全体において、ウォッシュダウン式の大便器本体にジェットポンプ式の給水機構が搭載された構成としながら、汚物の排出性能を確保すると共にボウル部110に供給される洗浄水の総量を低減することができる。その結果、洗浄性能を犠牲にすることなく節水性を高めることができる。
続いて、図8を参照しながら、ノズル310から噴射される水の流量がばらつくことの影響について説明する。図8のグラフGJ1は、ノズル310から噴射される水の流量の時間変化を示している。図8では、ノズル310から噴射される水の流量をQjetと表記している。
グラフGT1は、ジェットポンプ作用によってリム部120に供給される水の流量を示している。第一工程では、流量Qjetがジェットポンプ作用によって増幅される結果、リム部120に対して流量Q1の水が供給される。尚、図8では、時刻t100以降(第二工程)においてリム部120に供給される水の流量を示すグラフは描かれていない。
ところで、ジェットポンプユニット300によってリム部120に供給される水の流量は、例えばノズル310の上流側に配置された定流量弁232の機差等によって厳密には設計値(Qjet)通りとはならず、製品ごとにばらついてしまうことがある。図8のグラフGJ2は、ノズル310から噴射される水の流量が設計値通りとはならず、流量Qjetよりも僅かに大きい流量Qjet2となってしまった場合における、当該流量の時間変化を示している。このとき、大便器本体10に供給される水の流量は、グラフGT12で示したように流量Q1よりも大きい流量Q12となる。
図8のグラフGJ3は、ノズル310から噴射される水の流量が設計値通りとはならず、流量Qjetよりも僅かに小さい流量Qjet3となってしまった場合における、当該流量の時間変化を示している。このとき、リム部120に供給される水の流量は、グラフGT13で示したように流量Q1よりも小さい流量Q13となる。
図8から明らかなように、もしこのような場合においても第一工程を時刻t100で終了してしまうと、リム部120に供給される水の流量が十分に得られない状態で、第一工程から第二工程への切り替えが行われることとなる。すなわち、ボウル部110に供給される水の流量が十分に得られない状態で、ボウル部110へ供給される水の流量が減少してしまうこととなる。この場合には、第一工程における洗浄性能が十分に得られないため、ボウル部110の洗浄性能を確保し得ないこととなってしまう。
しかしながら、本実施形態においては、タンク20内の水位が第一水位(フロート392の下端の位置)に低下するまでの間は、第一工程が継続されるように構成されている。このため、大便器本体10に供給される水の流量が流量Q1から流量Q13に減少した場合には、時刻t100よりも遅い時点(時刻t110)まで第一工程が継続される。その結果、第一工程におけるボウル部110の洗浄性能が十分に確保される。
このように、本実施形態においては、第一工程においてリム部120に供給される水の流量が大きい程、第一工程から第二工程に移行するタイミングが早くなるように構成されている。すなわち、第一工程から第二工程に移行するタイミング(第一工程の期間の長さ)を固定するのではなく、第一工程においてリム部120に供給される水の流量に応じて変化させるように構成されている。このような構成により、第一工程においてリム部120に供給される水の流量が変動した場合であっても、当該変動に応じて、第一工程から第二工程に移行するタイミングが適切となるように調整される。
また、タンク20内の水位が第一水位(フロート392の下端の位置)まで低下した時点で、第一工程から第二工程への移行が行われる構成とすることにより、上記のようなタイミングの調整が自動的に行われるようになっている。従って、第一工程においてリム部120に供給される水の流量を直接測定することなく、第一工程から第二工程に移行するタイミングが適切且つ自動的に調整される。すなわち、流量計等の装置を必要とせず、簡易な構成によって、第二工程に移行するタイミングが適切に且つ自動的に調整される。
続いて、本発明の第二実施形態に係る水洗大便器装置FTaについて説明する。水洗大便器装置FTaのスロート管320aの下降部324aには、開閉板391aが設けられている。開閉板391aは、下降部324aに対して回転自在に取り付けられた板である。開閉板391aは、その上端が下降部324aの外側面に取り付けられており、当該上端を中心として回転することが可能となっている。開閉板391aには、制御部395aによって駆動が制御されたモータ396aが接続されている。また、制御部395aは、水位センサ397aとも接続しタンク20a内の現在水位を監視している。
スロート管320aの下降部324aのうち、開閉板391aと対向する位置には、開口部325aが形成されている。さらに開口部325aには、開口口をタンク20aの底面に向けるようにして、逃し流路394aが接続されている。逃し流路394aの開口口は、タンク20a内の水没した位置(最低水位より低い位置)に配置されている。水洗大便器装置FTaの他の構成については水洗大便器装置FTと同一となっている。このため、以下では、水洗大便器装置FTと共通する構成についてはその説明を省略する。
図9(A)は、リム部120に水が供給され始めた直後(第一工程)における、ジェットポンプユニット300の流路状態を模式的に示している。第一工程では、図9(A)に示したように、水位センサ397aが測定した水位500aが閾値510aを超えている場合には、制御部395aは、モータ396aを駆動させない。その結果、開閉板391aが開口部325aを塞いでおり、水が開口部325aを通ることはできない状態となっている。これによって、タンク20a内に貯留されていた水は、ジェットポンプ作用によって吸引口321aからスロート管320aの内部に流入した後、その全てがリム部120aに供給される。
タンク20a内の水位は次第に低下して行き、閾値510aに達する。水位センサ397aが測定した水位500aが、閾値510aを下回った場合、制御部395aは、モータ396aを駆動させる。図9(B)は、モータ396aによって開閉板391aが回転し、開口部325aが開いた状態(開閉板391aにより塞がれていない状態)を示している。尚、タンク20a内の水位はこの時点でも逃し流路394aの開口口よりも高くなっている。
このとき、タンク20a内に貯留されていた水は、引き続きジェットポンプ作用によって吸引口321aからスロート管320aの内部に流入するが、その一部が開口部325aを通じて逃がし流路394aに供給される。逃し流路394aに供給された水はタンク20a内の水没した位置に吐出され、底壁221aに衝突することで減速する。このように本実施形態においては、第二工程において、流出させた水によってタンク20a内の水面が波立つことを防止することができる。すなわち、フロート351aの高さによって動作するタンク20a内機器の誤作動を防止する。
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。