JP6427823B2 - 堆肥の短期製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、本発明は、牛、豚、鶏、馬など家畜の糞尿(以下、単に「畜産糞尿」という)、人糞尿、青刈り作物、さらに食品残渣(これらを含めてここでは畜産糞尿とする)、特に牛の糞尿(以下、単に「牛糞」ともいう)を主原料とする、堆肥の短期製造方法、さらに耕作放棄地の短期農地化方法、加えて汚染土壌の農地利用方法に関する。
(堆肥化時間の短縮問題)
伝統的な畜産糞尿を主原料にして作られる堆肥は、畜産糞尿と稲藁などの副材料を混合して、野積みにして、長時間かけてゆっくり堆肥化して得られる。現在では、法規制、悪臭問題などもあり、畜産糞尿を、屋根がある土壌に浸透しない床の上に山積みにし、発酵が進み所定温度に到達したことを目安に、切り返し(反転)を繰り返し、悪臭を除きながら、完熟させて作られている。そして、畜産糞尿、特に、牛糞の完熟堆肥を得るには、おおよそ120日〜150日間必要とされている。そのため、家畜牛糞は、焼却処理などされ、処理費用、環境負荷を高めている。
昨今では、特許文献1〜3などに開示されているように、種々の畜産糞尿を用いた有機肥料、有機肥料の製造方法が提案されている。しかしながら、いずれも早期堆肥化においては満足できるものではない。
そこで、発明者は、すでに特許文献4に開示のように、畜産糞尿の従来にない肥料成分を高めた早期有機肥料化を実現する有機肥料及び有機肥料の製造方法を開発している。その後、鋭意研究した結果、さらに、早期に堆肥化できることを見出し、本件発明を完成させるに至った。
特許文献4に開示の発明は、主に畜産糞尿、特に牛糞を主原料として、早期堆肥化でき、製造工程中の悪臭を低減した、リン高含有率の肥料、かつ連作障害を防ぎ、植物に耐病性を付与し、作物の収穫量増大、大きな花及び果実を栽培することを可能にする有機肥料及びその製造方法であって、糞尿に植物質原料を混合し糞尿の硬さを調節する糞尿前処理工程と、前記糞尿前処理工程後の糞尿を山積みし部分分解・発酵させる一次発酵工程と、前記一次発酵工程後の糞尿に米糠及び微生物培養液を添加して発酵を促進させる二次発酵工程と、前記二次発酵工程後の糞尿に微生物分解物を添加して追加発酵させる三次発酵工程とからなることを特徴とする。
(耕作放棄地の問題)
他方、農業人口の減少、高齢化に伴い、耕作を放棄し農地(耕作放棄地(農地としての未開拓地も含む。また短期間放置され雑草が生い茂った圃場も含む。))が散見されるようになり、その対応が農村地域、その自治体において大きな問題となりつつある。企業の農業事業が認められるものの、耕作放棄地は、雑草に覆われ、簡単に農地として復元することはできず、また復元後も短期に農作物の栽培を開始することができない。
したがって、農地への復元、作物栽培による収入が得られるまで、多大な時間と費用が必要になり、企業の農業事業が認められたとしても、耕作放棄地の問題は簡単に解決されるものではない。他方、農業者でなかった者が途中から農業に就業しようとしても、個人で広大な耕作放棄地を農地化することは現実的には不可能であると言わざるを得ないのが現状である。したがって、耕作放棄地の早期農地化、早期作物栽培による収入が可能な技術の開発が期待されている。
(汚染土壌の栽培制限問題)
他方、汚染物質の検出により、作物栽培が制限されている農地がある。原発事故による放射性物質による汚染地域、重金属による汚染地域などであり、栽培作物への汚染物質の移動、残留が深刻な問題である。これらの地域では、除染、土壌の入れ替え、汚染物質の不動化など様々な対策が取られているが、耕作開始の目途が立たず、農業による収入がないのが現状である。
また、耕作制限地域では、結果的に、耕作放棄地と同様に、農地が雑草に覆われ、耕作が再開できるとなったとしても、農地化への時間、費用面の負担が懸念される。すでに、耕作放棄地と化しており、農地に復元したとしても、再度農地化を防ぐため、作物栽培しない場合には雑草の刈り込みを継続する必要があり、作物栽培を継続する場合には、収入にならない作物の栽培を継続する必要がある、極めて負担が大きい。耕作制限地域において、継続的な作物生産と、収入とを両立する新たな農業生産システムの構築が望まれている。
特開2005−320181号公報 特開2005−060210号公報 特開2004−131356号公報 特開2010−208893号公報
そこで、本発明は、畜産糞尿を、従来に比べ一層早期に有機肥料・堆肥化する、堆肥の短期製造方法、さらに耕作放棄地の短期農地化方法、また汚染土壌の農地利用方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、
(1)
屋根付きコンクリート床で堆肥を短期に製造する方法であって、
畜産糞尿と麹を含む添加物を混合した混合物を厚さ20−30cmで積む前処理工程と、
前記混合物を5−8日間毎日或いは1日おきに撹拌し好気発酵させる一次発酵工程と、
一次発酵物に米糠及び大豆かすを追加して5−8日間毎日或いは1日おきに撹拌し好気発酵させる二次発酵工程と、
からなることを特徴とする堆肥の短期製造方法。

(2)
圃場で堆肥を短期に製造する方法であって、
畜産糞尿と麹を含む添加物と土壌を混合した混合物を厚さ20−30cmで積む前処理工程と、
前記混合物の水分調整をしながら5−8日間毎日或いは1日おきに撹拌し好気発酵させる一次発酵工程と、
一次発酵物に米糠及び大豆かすを追加して5−8日間毎日或いは1日おきに撹拌し好気発酵させる二次発酵工程と、
からなることを特徴とする堆肥の短期製造方法。

(3)
前記添加物に、カキ殻が含まれることを特徴とする(1)又は(2)に記載の堆肥の短期製造方法。

(4)
前記添加物が、
畜産糞尿2トン当たり、
米糠 100〜300kg
大豆かす 50〜100kg
カキ殻 30〜 80kg
ケイ素源 10〜 30kg
カニ殻 30〜 50kg
麹 50〜200kg
であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の堆肥の短期製造方法。

(5)
前記麹が、種麹を増殖させた残渣であることを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の堆肥の短期製造方法。

(6)
前記ケイ素源が、笹又は竹であることを特徴とする(4)に記載の堆肥の短期製造方法。

(7)
地上部が3kg/mより少ない密度で雑草が生い茂った耕作放棄地の農地化方法であって、
雑草を粉砕する雑草粉砕工程と、
圃場10アール当たり、以下の添加物を0.2〜0.5トン投入する添加物散布工程と、
米糠 100〜300kg
大豆かす 50〜100kg
カキ殻 30〜 80kg
ケイ素源 10〜 30kg
カニ殻 30〜 50kg
麹 50〜200kg
粉砕した雑草と添加物と土壌を混合し、3週間放置する荒耕し工程と、
圃場10アール当たり、以下の微生物酵素を散布、混合し、2週間放置する微生物酵素混合工程と、
圃場表層をロータリで均す表層仕上げ工程と、
からなり、
表層仕上げ工程後、直ちに、作物の播種・苗植えを可能とした耕作放棄地の農地化方法。

(8)
地上部が3kg以上/mの密度で雑草が生い茂った耕作放棄地の農地化方法であって、
雑草を粉砕する雑草粉砕工程と、
微生物酵素を散布する工程と、
粉砕した雑草と散布した微生物酵素と土壌を混合する混合工程と、
圃場表層をロータリで均す表層仕上げ工程と、
からなり、
前記雑草粉砕工程〜表層仕上げ工程まで1日で行い、表層仕上げ工程後、直ちに、作物の播種・苗植えを可能とした耕作放棄地の農地化方法。

(9)
前記微生物酵素が、醤油の種麹を増殖させた小麦麹の残渣又は/及び味噌の種麹を増殖させた大麦麹の残渣(圃場10アール当たり50〜150kg)、であることを特徴とする(7)又は(8)に記載の耕作放棄地の農地化方法。

(10)
汚染土壌に、バイオ燃料の原料となる作物を栽培し、得られたバイオマスからバイオ燃料を生成することを特徴とする汚染土壌の農地利用方法。

(11)
前記汚染土壌を、(7)〜(9)の何れかに記載の耕作放棄地の短期農地化方法によって、整地、圃場化した後に、前記作物の栽培を開始することを特徴とする(10)に記載の汚染土壌の農地利用方法。

(12)
前記バイオエタノールの生成に伴い、前記汚染物質を濃縮、回収し、汚染土壌の汚染物質濃度を低下させることを特徴とする(10)又は(11)に記載の汚染土壌の農地利用方法。

(13)
(10)又は(11)に記載の方法によって、得られたことを特徴とするバイオ燃料。
とした。

(14)
(1)〜(6)の何れかに記載の堆肥の短期製造方法で得られたことを特徴とする堆肥。

(15)
(14)に記載の堆肥と、粘土質を多く含む建設残土を混合したことを特徴とする土壌改良材。
本発明は、上記構成であるので、堆肥の熟成期間が極めて短い。加えて、リン成分が高く、栽培作物の病害虫に対する抵抗性が高く、作物品質も高い。
また、耕作放棄地であっても、農地復元、整地化後、短期或いは直ちに、播種、苗植え等が可能で、短期間で作物の栽培を可能にし、農業収入を短期間で得られる。
汚染土壌が、耕作放棄地状態であっても、本発明である耕作放棄地の短期農地化方法によって、作物の栽培が早期に可能で、バイオエタノールなどを生成可能なバイオ燃料源となる作物を選択、栽培することで、汚染土壌においても農作物を栽培し、収入を得ることができる。加えて、汚染土壌の汚染物質が作物に吸収、濃縮され、作物栽培を繰り返すことで、土壌中の汚染物質の濃度が低減し、人が摂取可能な作物の栽培可能になる年数を大幅に短縮することができる。
本発明である堆肥の短期製造方法の第一の実施形態の製造フロー図である。 短期製造方法の第一の実施形態に用いられる添加物の組成例である。 本発明である堆肥の短期製造方法の第二の実施形態の製造フロー図である。 本発明である耕作放棄地の短期農地化方法(雑草が少ない場合)の工程図である。 本発明である耕作放棄地の短期農地化方法(雑草が多い場合)の工程図である。 本発明である耕作放棄地の短期農地化方法(雑草が多い場合)の作業風景である。 本発明である雑草が多い茂った土地の短期農地化方法で、整備した農地に、直ちに、ラッカセイの種を播種したときの生育の様子(播種から10日後)を写した写真である。対象では、発芽はほとんど確認できない。 本発明である汚染土壌の農地利用方法の工程図である。
次に、以下に、添付図面に基づいて、本発明についてより詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
堆肥の短期製造方法1/屋内(コンクリート床のストックヤード)での堆肥化
(1)本発明である堆肥の短期製造方法1は、図1に示すように、前処理工程2と、一次発酵工程3と、二次発酵工程4と、三次発酵工程5とからなり、堆肥6を極めて早期に製造することができる。
(2)前処理工程2
前処理工程2は、畜産糞尿と、アルカリ資材を含む添加物と混合し、混合物を屋根付きコンクリート床上に厚さ20−30cmに積む工程である。従来の堆肥の製造方法と異なり、畜産糞尿を堆く山積みすることなく
畜産糞尿は、糞尿としては、主に牛、さらに豚、鶏、馬などの家畜の単一又は複合糞尿(畜産糞尿)、人糞が採用でき、それらに加え、食品残渣、植物も畜産糞尿に混合して利用できる。何れの糞尿等であってもよいが、元肥、追肥としての堆肥の栄養素(N、P、K)のバランスを考慮すると、牛糞4重量部、豚糞4重量部、鶏糞2重量部が好ましい。なお、畜産糞尿には、敷き藁、米の籾殻なども含まれてもよい。
添加物は、図2に示すように、圃場10アールに施肥される堆肥量に対応する畜産糞尿2〜5トンに対し、米糠、大豆かす、カキ殻、ケイ素源、カニ殻、麹を図2に示す量を目安に調整する。
米糠・大豆かすは、主に、畜産糞尿の水分(粘度)調整に用い、さらに、米糠は乳酸菌源ともなり、リン成分を高める効果がある。大豆かすは発酵時のアミノ酸源となる。
カキ殻は、アルカリ資材であり、畜産糞尿のpHを高め、アルカリ発酵を促し、酸敗微生物等の生育を抑制するなど、発酵微生物を選別するとともに、微生物酵素の生産、活性化に必要な亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)の供給源ともなる。
亜鉛、マグネシウムを増強することで、酵素生産、活性が高まるが、カギ殻を多量に投入すると、畜産糞尿のpHが高くなりすぎる。畜産糞尿の高pH化を防止しつつ、Zn、Mgを増強する場合には、にがりを添加するとよい。また、カキ殻に換え、アルカリ鉱物である医王石の粉末などを使用することもできる。
ケイ素源は、ガラス質を多く含む植物などであり、笹、竹、籾殻などが例示できる。ガラス質が豊富であると、作物の葉が丈夫になり、病害虫への抵抗性が高まる。また、笹、竹、籾殻などは、従来から肥料成分として有効といわれているが、堆肥化に時間がかかり、堆肥としての利用実績は多くなく、焼却処分として、処分費用、環境負荷が高まっている。本発明において、堆肥の材料とすることで、作物の病害中への抵抗性を高める他に、環境負荷の低減も図れる効果がある。
カニ殻は、L−キトサン源で、発酵微生物の増殖を助ける。
麹は、麹の増殖に伴って分泌される澱粉成分の加水分解させるアミラーゼ、タンパク質のアミノ酸化するプロテアーゼ、脂質のエステル結合を加水分解するリパーゼによって、畜産糞尿の分解(低分子化)を促す。さらに、抗生物質、ビタミン類も生成し、発酵菌相を好適に整える。また、セルラーゼ、セミセルラーゼを生成し、畜産糞尿、ケイ素源を効果的に分解し、ガラス質(ケイ素)豊富な堆肥の製造を可能にする。
麹源として、日本酒、味噌、醤油用の黄麹、焼酎の白、黒麹、泡盛用の黒麹などがある。特に、種麹を増殖させた残渣を用いるとよい。種麹は、栄養源である、蒸した小麦、大麦、大豆、米等の培養材で増殖させ、乾燥後、篩いで胞子を篩いおとし、粉末状或いは顆粒化して流通している。種麹メーカは、従来から、種麹の残渣を産業廃棄物として、その処理に費用を支払って、焼却処分しており、廃棄に多大なコストを掛けていた。種麹の残渣を本発明に用いることで、原料の短期肥料化を可能にし、焼却処分費用の低減も図れる。さらに、穀物飲料、例えば、麦茶の抽出残座(煮殻)に、麹菌(胞子粉末)、種麹、種麹の残渣を植え付け、必要に応じて他の栄養源を添加し、拡大培養した麹増殖物を用いてもよい。これによっても、食品残渣の低減に繋がる。麹菌の増殖床は、流通農産物、食品と競合しないことが望ましい。
麹の用途によって、培養材、種麹の種類はことなる。例えば、醤油用麹(小麦麹)であれば、全粒小麦粉砕物を培養材として培養される。味噌用麹であれば大麦が培養材として用いられる。特に、小麦麹の残渣は、麹の種類、ケイ素源(小麦ふすま)が豊富なことから好適である。
種麹の残渣には、畜産糞尿の堆肥化に十分な麹菌が残存していること、また小麦麹の残渣にはふすまが含まれ、ケイ素源ともなる。大豆であればアミノ酸源となる。また、黒麹は、クエン酸を生産し、発酵微生物活性を高める。
(3)一次発酵工程3
一次発酵工程3は、図1に示すように、畜産糞尿と添加物の混合物を1〜2日に1回撹拌し、1週間ほど主に好気アルカリ発酵を促し、畜産糞尿を分解させる。一次発酵では混合物が70〜80℃まで達温し、そのころを一次発酵の終点とする。アルカリ性と高熱により、一次発酵の微生物菌相が選択され、堆肥化に好適な環境が整えられる。
(4)二次発酵工程4
二次発酵工程4は、図1、2に示すように、米糠、大豆かすを追加して、さらに、混合物を1〜2日に1回撹拌し、1週間ほど主に好気アルカリ発酵を促す。米糠、大豆かすの追加は、一次発酵で微生物増殖に消費された栄養素を補充し、施肥後の土壌微生物、作物の栄養源であるとともに、乳酸菌を混合物に補充するために行う。元肥として使用するのであれば、二次発酵物を圃場に施肥することができる。二次発酵中期以後後、混合物から、ほとんど悪臭はしない。
(5)三次発酵工程5
三次発酵工程5は、追肥用として、作物に怖じて、さらに米糠、大豆かすを追加し、発酵させる工程である。これにより、堆肥の栄養価、特に、米糠の追加によりリン成分(P)が高まる。
なお、各発酵工程に、黒糖蜜(1/100希釈程度)及び/又は微生物発酵酵素液を噴霧、添加すると、発酵速度が速まり、各発酵工程を短縮することができる。微生物発酵酵素液としては、バイオイオンバランス((有)アグリクリエイト製)を100倍に希釈した液、その他、所謂「ぼかし」液などが使用できる。実施例2においても同じ。
(6)堆肥6
堆肥6は、畜産糞尿から約3週間の短期で製造することができる。元肥として使用する場合には、約2トンからできる二次発酵物を圃場10aに施肥すればよい。元肥であれば、畜産糞尿から約2週間で製造できる。また、熟成途中での悪臭の発生が極めて少ない。
本発明である堆肥の短期製造方法1によって得られた堆肥は、肥料成分比率、特にリン含有率が従来の堆肥に比べ高い上、作物の連作障害防止、耐病性向上(特に葉の病気(うどん粉病、黒斑病、灰色カビ病)が極めて低減される)、収穫量向上、作物品質、特に糖度が向上し、農業分野において極めて有効である。
さらに、堆肥6を培養土或いは土壌改良材とする場合には、使用される圃場に合わせて、各種土と混合すればよい。粘土質が少ない圃場、例えば水田の場合には、建築現場、整地工事等から廃棄される粘土質が多い建設残土を混合すればよい。そうすることで、建設残土の処理コストも抑制し、低コストの培養土、土壌改良材を提供することができる。各種土は、発酵前、発酵途中、発酵後に混合してもよい。
堆肥の短期製造方法11/圃場での堆肥化
以下、10アール規模の圃場に施肥する堆肥の圃場での製造方法について具体的に説明する。
(1)畜産糞尿:2トン/10アール
施肥される圃場の面積に応じて、上記畜産糞尿重量を比例的に増減させればよい。例えば、1ヘクタールの圃場には、畜産糞尿20トン使用する等。当該方法であれば、広大な圃場の堆肥をその圃場で短期間に製造することができ、堆肥の製造時間、化学費用の使用量、購入コストを押さえることができ、排出された畜産糞尿の処理も可能になり、処理費の抑制にも実現する。大規模農場、極めて経済的に経営することを可能にする。
(2)添加物:実施例1の添加物と同じものである。
(3)製造工程
1)堆肥の短期製造方法11は、前処理工程12と、一次発酵工程13と、二次発酵工程14とからなる。
2)前処理工程12(畜産糞尿の圃場への搬入)
圃場に、畜産糞尿を搬入し、実施例1と同じ添加物を混合し、畜産糞尿が2トンであれば、縦横約3m×3m、厚さ約20−30cmに積む。
3)一次発酵工程13
一次発酵13は、図3に示すように、畜産糞尿と添加物と土壌の混合物を1〜2日に1回撹拌し、1週間ほど主に好気アルカリ発酵を促し、畜産糞尿を分解させる。一次発酵では混合物が70〜80℃まで達温し、そのころを一次発酵の終点とする。アルカリ性と高熱により、一次発酵の微生物菌相が選択され、堆肥化に好適な環境が整えられる。一次発酵では、土壌上に載置され、大気中に水分も拡散しやすいことから、4日程度で、畜産糞尿はカラカラに乾燥する。そのため、発酵が進行する程度に、水分を噴霧する。その際、1重量%濃度の黒糖蜜液を噴霧すると発酵がより早く進む。また、微生物酵素液を加えてもよい。
4)二次発酵工程14
二次発酵工程14は、図3に示すように、米糠、大豆かすを追加して、さらに、混合物を土壌とともに1〜2日に1回撹拌し、1週間ほど主に好気アルカリ発酵を促す。米糠、大豆かすの追加は、一次発酵で微生物増殖に消費された栄養素を補充し、施肥後の土壌微生物、作物の栄養源であるとともに、乳酸菌を混合物に補充するために行う。二次発酵物は、堆肥16(元肥)となり、直接圃場に施肥することができる。二次発酵中期以後後、混合物から、ほとんど悪臭はしない。
5)堆肥16
圃場に10アールに、散布し、トラクターに牽引されるロータリで圃場に鋤込まれる。
耕作放棄地の短期農地化方法21(雑草少)
耕作放棄地といっても、雑草が生い茂り、そのままでは、農作物の栽培が直ちに行えない、圃場、未開拓地も含むものである。
(1)
そこで、本発明である耕作放棄地の短期農地化方法21は早期農地化を可能とすべく、雑草粉砕工程22と、添加物散布工程23と、荒耕し工程24と、微生物酵素混合工程25と、表層仕上げ工程26とからなり、その後、播種・苗植え工程27が可能になる。
(2)雑草粉砕工程22
雑草粉砕工程22は、ハンマーナイフで、耕作放棄地の雑草を切断、粉砕し、圃場表面に散乱させる工程である。粉砕された雑草は、土壌に混合し、発酵、分解させ、作物の肥料にする。
(3)添加物散布工程23
添加物散布工程23は、実施例1の添加物を、実施例1同様に、10アール当たり、0.2〜0.5トン散布する工程である。
(4)荒耕し工程24
荒耕し工程24は、トラクターで牽引されるプラウなどで、圃場土を30cm程度の深さで、耕起、反転する工程である。刃で土を切断した後、切り出された土をモールドボードに沿ってすり上げ、下層の土が地表にくるように反転させる。圃場土の上下が反転することによって、雑草粉砕物が土中に鋤込まれ埋まるとともに下層の有機物の分解が早める。耕起、反転の後、3週間放置する。この間に、雑草、添加物は、分解が進む。
(5)微生物酵素混合工程25
微生物酵素混合工程25は、麹又は微生物酵素発酵液(微生物酵素)を散布し、表面を混合する工程であり、添加物とともに粉砕された雑草を発酵、分解させる。例えば、醤油の種麹を増殖させた小麦麹の残渣又は/及び味噌の種麹を増殖させた大麦麹の残渣を圃場10アール当たり50〜150kg投入する。麹に換え、或いは麹とともに、実施例1のバイオバランス、或いは/及びぼかしを散布してもよい。その後、プラウで耕耘された土は帯状または大きな土塊であるので、ロータリ等で圃場の表層10−20cm程度の土壌を砕き、表面を荒く均す。この後、約2週間放置する。この間に、雑草、添加物の分解を促進させる。
(6)表層仕上げ工程26
種子の播種、或いは苗の移植が容易になるように、圃場表面を均す工程である。これで、農地化は完了する。この後、播種、苗植えを行えば、作物栽培を開始することができる。当該方法であれば、約1ヶ月で、耕作放棄地(雑草が少ない場合、概ね雑草の地上部の重量が3kg/mより少ない場合である)を農地として利用できる。
(7)播種・苗植え工程27
基本的に、その土地で栽培可能な作物を栽培することができ、特別な種類、品種に限定されることはない。
耕作放棄地の短期農地化方法31(雑草多)
本発明である耕作放棄地の短期農地化方法31は、一層の早期農地化を可能とすべく、雑草粉砕工程22と、微生物酵素散布工程32と、混合工程35と、表層仕上げ工程26とからなり、その後、播種・苗植え工程27が可能になる。
なお、雑草粉砕工程22、表層仕上げ工程26、播種・苗植え工程27は、実施例3と同じである。
また、当該方法は、雑草多い場合、概ね雑草の地上部の重量が3kg以上/m以上の密度で生い茂った耕作放棄地に適用できる。雑草としては、イネ科植物(笹、竹も含む)が最適である。イネ科植物は、葉にガラス質(ケイ素源)を多く含み、栽培作物の葉を丈夫にし、病害虫への抵抗性を高める。
微生物酵素散布工程32
微生物酵素散布工程32は、実施例3における微生物酵素混合工程25の麹又は微生物酵素発酵液を散布する工程である。これらが、種子の発芽、苗の生育を阻害することなく、同時に、粉砕された雑草を分解、肥料化させる。
混合工程33
混合工程33は、微生物酵素が散布された雑草粉砕物を土壌に鋤込む工程で、トラクターのロータリで土壌の表層10−20cmを撹拌する。鋤込まれた雑草粉砕物が、微生物酵素によって分解され、栽培作物の元肥となる。
このようにしてなる耕作放棄地の短期農地化方法31では、雑草粉砕工程22から播種・苗植え工程27を一日で行うことができる。これまでの常識では、雑草を圃場に鋤込んだ場合には、所定の期間、放置して雑草の分解、分解熱、作物にとって有害ガスが除かれた後、播種・苗植え工程をとるのが常識であった。
しかしながら、微生物酵素を雑草粉砕物に散布した後、土壌に鋤込むことで、直ちに、種子の播種・苗の移植が可能であることが確認された。雑草粉砕物は分解され、生命活動がある種子、苗は分解されず、生育可能になる。そのメカニズムはこれからの研究が待たれるが、微生物酵素、とりわけ、小麦麹を用いた場合、何らかの選択が働き、例えば、分解に伴う発熱を抑え、或いは有毒ガスを抑制或いは生成を回避させ、又は、それらの複合現象、或いは知られていない新たな現象によって、雑草分解物は分解され、種子、苗は分解されることなく或いは発芽を抑制させることなく、生育可能になっている。
これにより、雑草の処理簡素化、肥料化、それに伴う肥料コストの削減、農地化までの待機時間の削減、それにともなる早期収入を可能にし、耕作放棄地の実現可能な問題解決手段を提供することができる。
耕作放棄地の短期農地化方法31の様子撮影した写真を、図6に掲載した。(A)雑草が、生い茂った耕作放棄地の風景である。(B)は、荒耕し(30センチ深さで上下反転耕起)の風景である。ここでは、雑草粉砕工程後、微生物酵素散布前に、荒耕し工程を加えたが、荒耕し工程は必須ではない。(C)は、醤油用種麹(小麦麹)の残渣を散布している風景である。
その後、圃場表面をロータリで、均し、ラッカセイの種を播種した。その後、実施例区では、4日後に発芽が確認できた。発芽率は、ほぼ100%であったの対して、比較例(微生物酵素散布工程32なし)では、4日目には発芽はまったく確認できなかった。
雑草を利用した短期農地化方法
図7に、雑草が生い茂った圃場を整地し、直ちに、ラッカイセイの種子を播種し、その生育を観察した写真を掲載した。
図7に示すように、背丈ほど雑草が生い茂っている圃場(奥実施例区、手前比較例区)の雑草(1)を、ハンマーナイフ34で、切断し、試験区に放置し、その上に、実施例区では実施例3の微生物酵素と米糠を散布(5)し、耕耘、すなわち切断した雑草を土壌に鋤込んだ(3)。このとき、地上部の雑草重量は、6.56kg/mであった(2014年6月25日)。なお、比較例区では、微生物酵素と米糠を散布していない。
その後、直ちに、実施例区及び比較例区において、ラッカセイ(おおまさり)の種子を播種した(4)。
実施例区では播種から4日目に発芽(5)、比較例は播種から10日目にやっと発芽が確認できた(6)。写真(6)からわかるように、実施例区では雑草の生育も旺盛であるが、比較例区では雑草の生育も極めて少ない。この結果は、従来から知られている、雑草を鋤込んだ後の圃場では作物の生育が悪いことと一致した。
他方、微生物酵素(ここでは麹)を散布した実施例区では、生の雑草を鋤込んでも、切断された雑草は分解され、種子は分解されることなく発芽し、順調に成長した(7)。
このことは、切断した雑草を栽培圃場に鋤込むことで、肥料として利用できる可能性を示唆している。したがって、雑草を十分成長させることで、光合成による有機物の蓄積量を増やし、肥料価値を高め、直ちに種子の播種、苗の移植を可能にする新たな農法が開拓されたと言える。
従来繁茂した雑草は、コストをかけ圃場から除去していたが、本発明では、除去コストがかからない上、肥料として利用でき、簡易かつ低コスト農法を可能にする。
汚染土壌の農地利用方法41
本発明である汚染土壌の農地利用方法41は、図8に示すように、耕作放棄地の短期農地化方法21、31と、バイオ燃料用作物栽培42と、バイオマス43の収穫と、バイオ燃料製造44とからなり、バイオ燃料を得る。
汚染物質が基準を超えて検出される汚染土壌においては、耕作放棄地と同様に、雑草が生い茂り、直ちに、耕作地として使用できない。汚染物質としては、水銀、カドミウム、銅などの金属物質、放射性物質などが周知である。
次に、圃場として整地できても、そこで栽培された作物は、人の摂取が許容される基準濃度を超えて汚染物質が検出するため、人が摂取する作物として流通、販売することができない。
汚染土壌を耕作地として使用する場合、先ず、圃場に生い茂った雑草の除去、一定期間放置して農作物の栽培圃場とする必要があった。また、必要に応じて、従来は、土壌の入れ換えを行っていた。そして、この期間、作物栽培による収入が得られないことが問題であった。汚染土壌の農地化は、多大な費用と、時間を要し、ほとんど実施できないのが現状である。
そこで、本発明である耕作放棄地の短期農地化方法21、31によって、短期間で農地として整地し、短期或いは直ちに、播種・苗植え工程27を行い、作物栽培を開始する。その際、選択する作物は、人が摂取することを目的とせず、バイオ燃料45となり得る、澱粉、糖質の多い作物を選択し、バイオ燃料用作物栽培42をする。
収穫されたバイオマス43(果実由来の澱粉、糖質分等、葉、茎由来のセルロース分等)は、それぞれ、既知の化学的、微生物的発酵手法(バイオ燃料製造44)により、バイオエタノールなどのバイオ燃料45に変換する。
これにより、短期農地化、作物栽培による短期の収入を可能にし、流通基準を超える汚染物質濃度により、作物栽培制限を受けている土地においても、農作物の栽培が可能になり、汚染土壌の農地利用を可能にするとともに、汚染土壌の耕作放棄地化を防止することが可能になる。
また、汚染物質が、バイオマスに濃縮され、回収することができるとともに、土壌を入れ換えることなく、汚染土壌において、汚染物質の濃度が低下し、人が摂取できる通常の農作物の栽培を短期に実現することもできるようになる。
1 堆肥の短期製造方法
2 前処理工程
3 一次発酵工程
4 二次発酵工程
5 三次発酵工程
6 堆肥
11 堆肥の短期製造方法
12 前処理工程
13 一次発酵工程
14 二次発酵工程
16 堆肥
21 耕作放棄地の短期農地化方法
22 雑草粉砕工程
23 添加物散布工程
24 荒耕し工程
25 微生物酵素混合工程
26 表層仕上げ工程
27 播種・苗植え工程
31 耕作放棄地の短期農地化方法
32 微生物酵素散布工程
33 混合工程
34 ハンマーナイフ
41 汚染土壌の農地利用方法
42 バイオ燃料用作物栽培
43 バイオマス
44 バイオ燃料製造
45 バイオ燃料

Claims (6)

  1. 屋根付きコンクリート床で堆肥を短期に製造する方法であって、
    畜産糞尿と麹を含む添加物を混合した混合物を厚さ20−30cmで積む前処理工程と、
    前記混合物を5−8日間毎日或いは1日おきに撹拌し好気発酵させる一次発酵工程と、
    一次発酵物に米糠及び大豆かすを追加して5−8日間毎日或いは1日おきに撹拌し好気発酵させる二次発酵工程と、
    からなることを特徴とする堆肥の短期製造方法。
  2. 圃場で堆肥を短期に製造する方法であって、
    畜産糞尿と麹を含む添加物と土壌を混合した混合物を厚さ20−30cmで積む前処理工程と、
    前記混合物の水分調整をしながら5−8日間毎日或いは1日おきに撹拌し好気発酵させる一次発酵工程と、
    一次発酵物に米糠及び大豆かすを追加して5−8日間毎日或いは1日おきに撹拌し好気発酵させる二次発酵工程と、
    からなることを特徴とする堆肥の短期製造方法。
  3. 前記添加物に、カキ殻が含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の堆肥の短期製造方法。
  4. 前記添加物が、
    畜産糞尿2トン当たり、
    米糠 100〜300kg
    大豆かす 50〜100kg
    カキ殻 30〜 80kg
    ケイ素源 10〜 30kg
    カニ殻 30〜 50kg
    麹 50〜200kg
    であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の堆肥の短期製造方法。
  5. 前記麹が、種麹を増殖させた残渣であることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の堆肥の短期製造方法。
  6. 前記ケイ素源が、笹又は竹であることを特徴とする請求項4に記載の堆肥の短期製造方法。
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