JP6425671B2 - ムチンの製造方法 - Google Patents

ムチンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6425671B2
JP6425671B2 JP2016026053A JP2016026053A JP6425671B2 JP 6425671 B2 JP6425671 B2 JP 6425671B2 JP 2016026053 A JP2016026053 A JP 2016026053A JP 2016026053 A JP2016026053 A JP 2016026053A JP 6425671 B2 JP6425671 B2 JP 6425671B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
jellyfish
mucin
added
precipitate
edta
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2016026053A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017145200A (ja
Inventor
丑田 公規
公規 丑田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kitasato Institute
Original Assignee
Kitasato Institute
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kitasato Institute filed Critical Kitasato Institute
Priority to JP2016026053A priority Critical patent/JP6425671B2/ja
Publication of JP2017145200A publication Critical patent/JP2017145200A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6425671B2 publication Critical patent/JP6425671B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Material From Animals Or Micro-Organisms (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Cosmetics (AREA)

Description

本発明は、ムチンの製造方法に関する。
ムチンとは、単純な繰り返し構造を持つペプチド鎖に、1〜10個程度の単糖単位からなる糖鎖が、ペプチド鎖のトレオニン(Thr)残基又はセリン(Ser)残基にO−グリコシド結合で密に結合した高分子糖タンパク質である。ムチンは、細胞や動物の粘液の成分として自然界に多種存在し、細胞組織の保湿、保護、潤滑等の物理的作用や、細菌・ウイルス等の感染を抑制する抗菌作用等を有することが知られている。このため、ムチンを、医薬品、化粧品、健康食品・サプリメント等として利用することが検討されている。
ところで、クラゲは毎年大量発生し、定常的に港湾、漁業施設、発電所等に被害を与えている。陸上に引き上げられたクラゲは、産業廃棄物として取り扱われるため、大部分が水分であるにもかかわらず莫大な処理費用がかかっている。このため、クラゲを有効利用する技術の開発が求められている。例えば、特許文献1には、クラゲからムチンを抽出する方法が記載されている。
特許第5057383号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたクラゲからのムチンの抽出方法は、クラゲを破砕し、固形分を除去して得られた液体成分に、3〜4倍の容量のアルコールを添加してムチンを沈殿させる工程を含むものである。このため、ムチンの抽出に膨大な量のアルコールが必要となる。また、大量のアルコールを扱うことから、クラゲの処理施設が消防法上の規制を受けることとなり、施設の建設、防火対策、定期検査等に労力や費用が必要となる。
そこで、本発明は、クラゲからのムチンの製造において、アルコールの使用量を低減させることができる技術を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を含む。
(1)破砕されたクラゲを液体成分及び固体成分に分離する工程と、前記液体成分に金属塩を添加してムチンを沈殿させる工程と、を備える、ムチンの製造方法。
(2)前記金属塩が塩化カルシウムである、(1)に記載の製造方法。
本発明により、クラゲからのムチンの製造において、アルコールの使用量を低減させることができる技術を提供することができる。
実験例7の結果を示すグラフである。 実験例8の結果を示すグラフである。 実験例9の結果を示すグラフである。 実験例10の結果を示すグラフである。 実験例11の結果を示すグラフである。
1実施形態において、本発明は、破砕されたクラゲを液体成分及び固体成分に分離する工程と、前記液体成分に金属塩を添加してムチンを沈殿させる工程と、を備える、ムチンの製造方法を提供する。
発明者は、クラゲ由来ムチンが金属イオンと反応すると沈殿することを見出し本発明を完成させた。また、発明者は、この反応が可逆的であり、キレート試薬等のイオン剥離剤の添加等により、形成された沈殿を再び溶解させることができることを見出した。
本実施形態の製造方法により、アルコールを使用しなくてもクラゲ由来ムチンを濃縮し、減量化することができる。したがって、クラゲからのムチンの製造において、アルコールの使用量を低減させることができる。
(クラゲ)
クラゲとしては特に制限されず、例えば、ミズクラゲ、エチゼンクラゲ、アカクラゲ、スナイロクラゲ、ハブクラゲ、カミクラゲ等の、ヒドロ虫綱、鉢虫綱、箱虫綱に属する刺胞動物のいずれも用いることができる。また、クラゲは採取直後のものであってもよく、冷凍保存を経たものであってもよい。
クラゲは、採取直後にコラーゲン分解酵素阻害剤を添加したものであることが好ましい。これについて説明する。クラゲの体内には、コラーゲン分解酵素が存在している。このため、採取後のクラゲは自己分解して低分子コラーゲンを生成する。低分子コラーゲンは、ムチンの精製時にムチンに混入し、ムチンの純度を低下させてしまう。
コラーゲン分解酵素阻害剤としては、キレート剤、コラーゲン分解酵素の阻害効果が高い化合物(キレート剤を除く。)等が挙げられる。
発明者は、採取後のクラゲの自己分解による低分子コラーゲンの生成を抑制するために、採取後のクラゲに速やかにキレート剤を添加することが有効であることを見出した。これは、クラゲの体内に存在するコラーゲン分解酵素が、主にマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)であるためであると推測している。
キレート剤としては、Mg2+、Ca2+、Zn2+等の金属イオンとの安定化平衡定数pKが約5以上のものが挙げられる。具体的には、エチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリメチレンジアミン、β,β’,β’’−トリアミノトリエチルアミン、プオピレンジアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、o−フェナントロリン、α,α’ジピリジル、アラニン、アスパラギン、グリシン、ヒスチジン、トリプトファン、ジヨードチロシン、バリン、システイン、イミノジ酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸、1,3−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸、1,4−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸、エチレンジアミン−N,N’−ジ酢酸、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラ酢酸(EDTA)、エチレンジアミンジプロピオン酸、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、グリシン−N−プロピオン酸、トリメチレンジアミンテトラ酢酸、テトラメチレンジアミンテトラ酢酸、ペンタメチレンジアミンテトラ酢酸、テトラメタリン酸、ベンゾイルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、チオベンゾイルメタン、β−オキシキノリン、エリオクロムブラック−T、エリオクロムブラック−A、エリオクロムブラック−B、エリオクロムブラック−R、o−アミノベンゼンチオール、o−アミノフェノール、グリコールエーテルジアミン四酢酸、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸、ニトリロトリスメチルホスホン酸、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N’’,N’’−5酢酸、ニトリロトリ酢酸、トリエチレンテトラアミン−N,N,N’,N’’,N’’’,N’’’−6酢酸、8−ヒドロキシキノリン−5硫酸等が挙げられる。
キレート剤の濃度は、終濃度で、例えば5〜100mMであってもよく、例えば5〜20mMであってもよく、例えば5〜10mMであってもよい。キレート剤は、必要濃度の10〜100倍濃度の水溶液を調製し、クラゲの質量又は体積の1/10〜1/100質量又は体積程度添加して混和すると簡便である。クラゲの身体は寒天状のゲルであり、拡散係数が大きいため、キレート剤の添加時にクラゲを破砕する必要はない。
キレート剤は、クラゲの採取後5時間以内に添加することが好ましく、3時間以内に添加することがより好ましく、1時間以内に添加することが更に好ましい。
また、発明者は、クラゲに共存する微生物が有するコラーゲン分解酵素によっても低分子コラーゲンが生成されることを見出した。そこで、ムチンへの低分子コラーゲンの混入を抑制するためには、採取後のクラゲに殺菌剤を添加することも有効である。
殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等の塩素系殺菌剤、アジ化ナトリウム等を用いることができる。例えば、5%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、クラゲの質量又は体積の1/10〜1/100質量又は体積程度添加して混和するとよい。
(破砕されたクラゲを液体成分及び固体成分に分離する工程)
まず、破砕されたクラゲを液体成分及び固体成分に分離する。クラゲの破砕方法は特に制限されず、裁断機、ミキサー等を用いて破砕されたクラゲであってもよい。破砕されたクラゲを液体成分及び固体成分に分離する方法は特に制限されず、例えば、遠心分離によって行ってもよいし、圧搾によって行ってもよいし、ろ過によって行ってもよい。
(高分子コラーゲンを除去する工程)
続いて、任意選択で本工程を実施してもよい。すなわち、破砕されたクラゲから得られた上記の液体成分は、そのまま、後述する金属塩を添加する工程に用いてもよい。あるいは、本工程を実施して高分子コラーゲンを除去した後に、金属塩を添加する工程に用いてもよい。本工程を実施することにより、より純度が高いムチンを製造することが容易になる。また、破砕されたクラゲには浮遊成分が発生する場合があり、この浮遊成分に高分子コラーゲンが多く含まれる場合がある。したがって、浮遊成分が発生した場合には浮遊成分も除去することが好ましい。
本工程では、破砕されたクラゲから分離した液体成分にアルコールを添加し、アルコールの濃度を50容量%程度に調整する。これにより、液体成分中の高分子コラーゲン類が沈殿する。沈殿した高分子コラーゲンは遠心分離等により除去することができる。アルコールとしては、エタノール、メタノール、プロパノール等を用いることができる。
(液体成分に金属塩を添加してムチンを沈殿させる工程)
続いて、上述した液体成分に金属イオンを添加してムチンを沈殿させる。金属イオンは、水中で電離して金属イオンを生じる金属塩の形態で添加することが簡便である。金属イオンとしては、Ca2+、Sc3+、Ti3+、Ti4+、Ti6+、VO2+、VO3+、V3+、V4+、Cr2+、Cr3+、Mn2+、Mn3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Ni2+、Cu、Cu2+、Zn2+、Ga2+、Ga3+、Ge2+、Ge4+、Sr2+、Y3+、ZrO2+、Zr4+、Nb4+、Nb5+、Mo3+、Mo5+、Tb4+、Ru3+、Rh3+、Rh4+、Rh5+、Pd2+、Ag、Cd2+、In3+、Sn2+、Sn4+、Sb3+、Sb5+、Ba2+、La3+、Ce3+、Ce4+、Pr3+、Nd3+等が挙げられる。
金属塩としては、上記のいずれかの金属イオンと陰イオンとのイオン結合により形成された塩が挙げられる。金属塩は水和物であってもよい。陰イオンとしては、無機アニオン及び有機アニオンが挙げられる。無機アニオンとしては、例えば、塩化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン等が挙げられる。なお、用いた金属イオンとの結合定数が大きく水に溶けにくい難溶性塩を形成する陰イオンは選択することができない。有機アニオンとしては、メシレートイオン、ベシレートイオン、トシレートイオン、トリフレートイオン等のスルホン酸イオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、フマル酸イオン等のカルボン酸イオン等が挙げられる。有機アニオンについても上述した無機アニオンと同様に、用いた金属イオンとの結合定数が大きく水に溶けにくい難溶性塩を形成する陰イオンは選択することができない。
金属塩としては、ほとんどの金属イオンと水に溶けやすい塩をつくり、酸化力の低い塩化物が好適である。また、従来から医薬品や食品添加物として用いられており、安全性が高く、価格も安いことから、金属塩の中でも塩化カルシウムが好適である。
本工程において、上述した液体成分に金属塩を投入し撹拌して速やかに溶解させる。金属塩添加時の温度は、溶解を促進するために常温でもよいが、生体分子の分解を抑えるためには低温であることが好ましい。
液体成分に金属塩を添加すると、数秒〜数10秒で沈殿が生成しはじめる。添加する金属塩の量は、ムチンを沈殿させるのに十分な量であれば特に制限されない。但し、大量の金属塩を用いて、過剰に金属イオンをムチン成分に結合させて沈殿させると、後述する、金属イオンを剥離する工程の収率が下がり支障をきたす場合がある。金属塩の添加開始からムチンの沈殿生成の完了までの時間は特に制限されないが、液体成分と金属イオンを長時間反応させると、より多数のイオンが反応して、後に沈殿から金属イオンを除去することが困難になる傾向にあることから、例えば、1時間以内であってもよい。生成した沈殿は、遠心分離、ろ過等により液体成分から回収する。
クラゲの採取地において、本工程までの工程を行うことにより、クラゲの減量化を行ってもよい。これにより、クラゲをそのまま輸送する場合と比較して、輸送コストを大幅に低減することができる。
(追加の精製工程)
回収した沈殿は、そのままカルシウム化した粗精製ムチンとして使用してもよく、更に精製して純度を高めてもよい。更なる精製としては、例えば、得られた沈殿から金属イオンを剥離することが挙げられる。
沈殿から金属イオンを剥離する方法としては、例えば、沈殿に上述したキレート剤を添加する方法が挙げられる。この場合、ムチンを沈殿させるのに用いた金属イオンとの結合定数がより高いキレート剤を使用することが好適である。
沈殿から金属イオンを剥離する他の方法としては、例えば、ムチンを沈殿させるのに用いた金属イオンと結合して難溶性塩を生じる陰イオンを作用させる方法が挙げられる。
陰イオンは、水中で電離して陰イオンを生じる塩の形態で添加することが簡便である。例えば、ムチンを沈殿させるのにカルシウムイオンを用いた場合には、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸カリウムナトリウム水溶液等を添加すればよい。これらとカルシウムイオンとの反応により、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム等の難溶性塩が形成され、ムチンの沈殿から金属イオンが剥離される。
沈殿から金属イオンを剥離する他の方法としては、例えば、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を用いて金属イオンを剥離する方法が挙げられる。例えば、ムチンの沈殿に、陽イオン交換樹脂及び蒸留水を適量混合して、激しく振とうすることにより、ムチンを液相に溶出させることができる。
あるいは、ムチンの沈殿(ムチン−金属イオン複合体)を、陰イオン交換樹脂に一旦保持させ、ムチンが保持される範囲で適当なイオン濃度のナトリウムイオンを含んだ溶液(例えば塩化ナトリウム溶液)を大量に流して洗浄した後、更に高濃度のナトリウムイオンを含んだ溶液(例えば塩化ナトリウム溶液)で溶出させることにより、ムチンの沈殿に用いた金属イオンをナトリウムイオンに交換することが挙げられる。
ムチンの沈殿から金属イオンを剥離するためには、上述した方法のいずれかを単独で行ってもよいし、複数を組み合わせて行ってもよい。上述した方法のいずれの場合においても、ムチンが溶液中に溶出される。この溶液を回収し、透析等の脱塩処理を行ない、凍結乾燥することにより、純度の高いムチンを得ることができる。
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実験例1]
(クラゲ由来ムチンの沈殿の調製)
湿重量2kgのクラゲをミキサーで破砕して破砕液を調製した。続いて破砕液を遠心分離して上清を回収し、ガラス製の容器に入れた。続いて、回収した上清を激しく撹拌しながら、4℃で2Lのエタノールを30分間かけて添加した。その結果、高分子コラーゲンの沈殿が形成された。約半日静置した後、遠心分離して高分子コラーゲンの沈殿を除去し、上清を回収した。回収した上清に、塩化カルシウム粉末(CaCl・2HO)を10g添加し、撹拌して溶解させた。その結果、ムチンの沈殿が形成され、数分で溶液が濁り始めた。30分後、遠心分離を行って、カルシウム化したムチンの沈殿を回収した。沈殿の量は700mgであった。
[実験例2]
(キレート剤を用いたクラゲ由来ムチンの精製)
実験例1で調製したムチンの沈殿1gに、0.1M EDTA水溶液40mLを添加し、4℃で6時間撹拌した。遠心分離により沈殿を除去して上清を回収し、48時間透析して脱塩し、凍結乾燥によりムチンを得た。アミノ酸分析により、クラゲ由来ムチンの主たる構成アミノ酸である、バリン、アラニン、スレオニン、プロリン、グルタミン酸、アミノガラクトースの存在量を確認し、従来法で生成したクラゲ由来ムチン標品と比較した。表1にアミノ酸分析の結果を示す。その結果、本実験例で精製したムチンは、十分な純度を有していることが確認された。
Figure 0006425671
[実験例3]
(難溶性塩生成によるクラゲ由来ムチンの精製)
実験例1で調製したムチンの沈殿1gに、リン酸緩衝液40mLを添加し、4℃で6時間撹拌した。遠心分離により沈殿を除去して上清を回収し、48時間透析して脱塩し、凍結乾燥によりムチンを得た。
得られたムチンをアミノ酸分析し、従来法で生成したクラゲ由来ムチン標品と比較した。上記表1に、本実験例で精製したムチンのアミノ酸分析の結果を示した。その結果、本実験例で精製したムチンは、十分な純度を有していることが確認された。
[実験例4]
(陽イオン交換樹脂によるクラゲ由来ムチンの精製)
実験例1で調製したムチンの沈殿1gに、強酸性の陽イオン交換樹脂(スルホン酸型陽イオン交換樹脂、型式「SP Sepharose Fast Flow」、GEヘルスケア社)5gと蒸留水10mLとを加え、4℃で8時間撹拌した。続いて、遠心分離により沈殿を除去し、上清をガラスフィルターでろ過して回収した。得られたろ液を48時間透析して脱塩し、凍結乾燥によりムチンを得た。アミノ酸分析した結果、本実験例で精製したムチンは、十分な純度を有していることが確認された。
[実験例5]
(陰イオン交換樹脂によるクラゲ由来ムチンの精製)
弱塩基性の陰イオン交換樹脂(型式「TOYOPEARL(登録商標)DEAE−650M」、東ソー社)10mLを、蒸留水及び10mMリン酸緩衝液で洗浄後、10mMリン酸緩衝液を20mL添加した。
続いて、イオン交換樹脂に実験例1で調製したムチンの沈殿100mgを添加し、2時間振とうした。続いて、ろ過によりイオン交換樹脂を回収し、回収したイオン交換樹脂に、1M塩化ナトリウム−10mMリン酸緩衝液(抽出液)30mLを添加した。続いて、2時間振とうしてろ過し、ろ液を回収した。イオン交換樹脂は1M塩化ナトリウム−10mMリン酸緩衝液30mLで更に2回抽出してろ過し、回収したろ液を脱塩して凍結乾燥し、ムチンを得た。
[実験例6]
(連続カラムによるクラゲ由来ムチンの精製)
強酸性の陽イオン交換樹脂(スルホン酸型陽イオン交換樹脂、型式「SP Sepharose Fast Flow」、GEヘルスケア社)の内径20mm、長さ10cmのカラム1と、弱塩基性の陰イオン交換樹脂(型式「TOYOPEARL(登録商標)DEAE−650M」、東ソー社)の内径20mm、長さ3cmのカラム2を連結してフロー系を作製した。
続いて、実験例1で調製したムチンの沈殿1gを、カラム1に用いたものと同じ強酸性の陽イオン交換樹脂1gと5mLの蒸留水中でよく混和し、カラム1の上方に注いだ。続いて、カラム1に蓋をしてフロー系を作動させ、蒸留水をカラム1からカラム2にかけて通液させた。適当な時間の後、カラム1を取り外し、カラム2だけに1M塩化ナトリウム−10mMリン酸緩衝液(抽出液)を通液させ、溶出された液体を回収した。回収された液体を脱塩して凍結乾燥し、ムチンを得た。
[実験例7]
(クラゲの自己分解の検討1)
採取したクラゲを、そのまま−20℃、−50℃又は−80℃で凍結保存した。凍結から図1の横軸に示す日数後に解凍し、網目2mmのザルに入れて固体成分及び液体成分に分離し、固体成分の割合(質量%)を測定した。
図1は、固体成分の割合(質量%)の変化を示すグラフである。その結果、−20℃で保存したクラゲは、約3ヶ月後にほぼ完全に自己分解し液化してしまうことが明らかとなった。一方、−50℃及び−80℃で保存したクラゲは、最初の約1週間で固体成分が約40質量%に減少するが、それ以降は自己分解がほぼ停止することが明らかになった。
[実験例8]
(クラゲの自己分解の検討2)
採取したクラゲに終濃度0.01、0.1、1及び10mMのEDTAを添加し、室温及び4℃で保存した。EDTAの添加は、採取後のクラゲに終濃度の10倍の濃度のEDTA水溶液を添加し、混和することにより行った。保存開始から図2の横軸に示す日数後に、網目2mmのザルに入れて固体成分及び液体成分に分離し、固体成分の割合(質量%)を測定した。
図2は、固体成分の割合(質量%)の変化を示すグラフである。その結果、室温保存では約3〜4日で固体成分が分解した。室温保存における固体成分の分解速度は、EDTA濃度が高い方が遅かった。一方、4℃では最大10日程度固体成分が残留した。4℃における固体成分の分解速度は、EDTA濃度が高い方が遅かった。
本実験例の結果から、EDTAの終濃度10mMにおいて、最もクラゲの自己分解を抑制する効果が高いことが示された。
[実施例9]
(クラゲの自己分解の検討3)
採取したクラゲに終濃度0、0.01、0.1、1及び10mMのEDTAを添加し、−20℃で保存した。EDTAの添加は、採取後のクラゲに終濃度の10倍の濃度のEDTA水溶液を添加し、混和することにより行った。保存開始から図3の横軸に示す日数後に、網目2mmのザルに入れて固体成分及び液体成分に分離し、固体成分の割合(質量%)を測定した。
図3は、固体成分の割合(質量%)の変化を示すグラフである。その結果、EDTAの終濃度が1mM及び10mMの試料において、保存開始から2〜3ヶ月後に、EDTA無添加の試料と比較して、固体成分の割合に有意な差が生じたことが明らかとなった。また、クラゲの分解速度は、EDTA濃度が高い方が遅かった。
本実験例においても、EDTAの終濃度10mMにおいて、最もクラゲの自己分解を抑制する効果が高いことが示された。
[実施例10]
(クラゲの自己分解の検討4)
採取したクラゲから、そのまま何も添加しなかった群(対照)、殺菌剤のみ添加した群、終濃度10mMのEDTAのみ添加した群、終濃度1mMのEDTA及び殺菌剤を添加した群、終濃度10mMのEDTA及び殺菌剤を添加した群を調製した。殺菌剤としては、終濃度0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使用した。
その後、各群の試料を室温で保存した。保存開始から図4の横軸に示す日数後に、網目2mmのザルに入れて固体成分及び液体成分に分離し、固体成分の割合(質量%)を測定した。
図4は、固体成分の割合(質量%)の変化を示すグラフである。その結果、終濃度10mMのEDTA及び殺菌剤を添加した群において、最もクラゲの自己分解を抑制する効果が高いことが示された。
[実施例11]
(クラゲの自己分解の検討5)
採取したクラゲから、そのまま何も添加しなかった群(対照)、殺菌剤のみ添加した群、終濃度10mMのEDTAのみ添加した群、終濃度1mMのEDTA及び殺菌剤を添加した群、終濃度10mMのEDTA及び殺菌剤を添加した群を調製した。殺菌剤としては、終濃度0.1%の次亜塩素酸ナトリウムを使用した。
その後、各群の試料を4℃で保存した。保存開始から図5の横軸に示す日数後に、網目2mmのザルに入れて固体成分及び液体成分に分離し、固体成分の割合(質量%)を測定した。
図5は、固体成分の割合(質量%)の変化を示すグラフである。その結果、4℃で保存した場合には、終濃度10mMのEDTA及び殺菌剤を添加した群と、終濃度10mMのEDTAのみ添加した群において、クラゲの自己分解を抑制する効果が同等であることが示された。
本発明により、クラゲからのムチンの製造において、アルコールの使用量を低減させることができる技術を提供することができる。

Claims (2)

  1. 破砕されたクラゲを液体成分及び固体成分に分離する工程と、前記液体成分に金属塩を添加してムチンを沈殿させる工程と、を備え、前記クラゲは採取直後にコラーゲン分解酵素阻害剤が添加されたものである、ムチンの製造方法。
  2. 前記金属塩が塩化カルシウムである、請求項1に記載の製造方法。
JP2016026053A 2016-02-15 2016-02-15 ムチンの製造方法 Expired - Fee Related JP6425671B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016026053A JP6425671B2 (ja) 2016-02-15 2016-02-15 ムチンの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016026053A JP6425671B2 (ja) 2016-02-15 2016-02-15 ムチンの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017145200A JP2017145200A (ja) 2017-08-24
JP6425671B2 true JP6425671B2 (ja) 2018-11-21

Family

ID=59681973

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016026053A Expired - Fee Related JP6425671B2 (ja) 2016-02-15 2016-02-15 ムチンの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6425671B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112125967A (zh) * 2020-09-28 2020-12-25 嘉文丽(福建)化妆品有限公司 一种水母粘蛋白的分离方法及其在修复化妆品中的应用

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2359645T3 (es) * 2005-08-12 2011-05-25 Riken Glucoproteína de tipo mucina y su uso.
JP4796914B2 (ja) * 2006-07-28 2011-10-19 公立大学法人福井県立大学 クラゲ類からのコラーゲン回収方法
JP6410855B2 (ja) * 2016-02-15 2018-10-24 学校法人北里研究所 ムチンの製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017145200A (ja) 2017-08-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102107844B1 (ko) 양이온을 이용한 세포밖 소포체의 분리 방법
EP3395966A1 (en) Agent for selective metal recovery, metal recovery method, and metal elution method
JP2008136945A (ja) 天然ミネラル含有剤、及びそれらの製造方法
Han et al. Complexation of mercury by dissolved organic matter in surface waters of Galveston Bay, Texas
CA3126268C (fr) Complexe de gadolinium et d'un ligand chelateur derive de pcta diastereoisomeriquement enrichi et procede de preparation et de purification
WO2011132729A1 (ja) 煙灰からの結晶性ヒ酸鉄原料液の製造方法
SG144902A1 (en) Method and apparatus for obtaining purified phosphoric acid from phosphoric acid aqueous solution containing plural metal ions
CN101255198B (zh) 一种脱重金属残留的多糖配合物
JP6425671B2 (ja) ムチンの製造方法
AU2021201560A1 (en) Processes for metal ions removal of from aqueous solutions
JP6410855B2 (ja) ムチンの製造方法
CN101664589A (zh) 稳定脱硫石膏中Hg(Ⅱ)的方法
CN102676845B (zh) 锌液净化后所得滤渣及其制备方法
FR2913970A1 (fr) Production de thorium 228 a partir d'un sel de thorium naturel
US2912378A (en) Method of treating oil well flooding waters to reduce sulfate-reducing bacteria concentration
JP6840354B2 (ja) ホウ素含有水の処理方法
CN102303854A (zh) 一种磷酸二氢钾的纯化方法
WO2015008398A1 (ja) 水質浄化材、その製造方法、および魚介類の養殖場の水質の浄化方法
JP6768126B1 (ja) 透析機器用洗浄剤およびそれを用いた透析機器内のカルシウムスケールの除去方法
JP2013032243A (ja) 植物灰化物抽出液からのヨウ素分離方法及びそれによって得られるヨウ素を低減させた植物灰化物抽出液の製造方法。
JP2007061805A (ja) パワークリーン・イオン水
CN103889946A (zh) 制造氨基酸的方法
RU2700072C2 (ru) Способ очистки сточных вод от ионов тяжёлых металлов
CN111663041B (zh) 锂钴剥除添加剂及其应用
CN103787853B (zh) 一种从棉酚粗提液中分离棉酚的方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180521

A871 Explanation of circumstances concerning accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A871

Effective date: 20180521

A975 Report on accelerated examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971005

Effective date: 20180607

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180626

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180823

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181016

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181023

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6425671

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees