JP6424921B2 - ダイナモメータ装置 - Google Patents

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Description

この発明は、車両のパワートレインやエンジンなどの性能評価や試験を行うダイナモメータ装置に関し、特に、ダイナモメータの主軸と供試体との間にトルクメータを備えたダイナモメータ装置の改良に関する。
車両のパワートレインやエンジン単体あるいはトランスミッションなどを供試体として、性能評価や試験を行うダイナモメータ装置が知られている。このダイナモメータ装置は、ダイナモメータの主軸の先端に、例えばトランスミッションのドライブシャフトやエンジンのクランクシャフトなどの供試体側の回転軸が接続されるように構成されている。特許文献1および特許文献2には、軸トルクを検出するトルクメータを、ダイナモメータの主軸と供試体との間に備えたダイナモメータ装置が開示されている。
トルクメータは、一般に、ダイナモメータの主軸側のフランジと供試体側のフランジとの間に作用しているトルクを高精度に検出し、非接触で出力の取り出しを行う構成となっている。このような高い検出精度を要求されるトルクメータにあっては、特許文献1に課題として挙げられているように、温度に応じた特性変化つまり温度ドリフトが比較的大きく発生する、という問題がある。
特許文献2は、供試体を極高温下あるいは極低温下に晒して試験を行うために、ダイナモメータに接続された供試体を環境槽内に収容するようにしたダイナモメータ装置に関するもので、供試体とダイナモメータとの間に、回転軸が通過する孔を備えた断熱壁を設けるとともに、この断熱壁付近にエアダクトを介して冷却風を送るようにした構成を開示している。
また特許文献3は、ブロアによってトルクメータに温調空気を当てるとともに、トルクメータと中間軸受で支持される中間軸との間に断熱材を介在させたダイナモメータ装置を開示している。
特開2003−130751号公報 特開2013−130557号公報 特開2013−210202号公報
電動機を主体とするダイナモメータは、試験運転中に発熱し、空冷あるいは液冷式の冷却機構を備えていても、かなりの高温となる。そして、電動機の熱は、金属部品からなる主軸やフランジ継ぎ手を介してトルクメータに伝達され、トルクメータを加熱してしまう。特に、近年、ダイナモメータ装置の小型化のために、トルクメータがダイナモメータ内部の電動機に軸方向で近い位置となる傾向があり、トルクメータに対するダイナモメータの熱の影響がそれだけ大きなものとなる。
特許文献2の技術は、このような主軸を介してダイナモメータ(電動機)から伝達される熱に対して、対処するものではない。特許文献2の技術は、環境槽からの熱の影響を排除しているに過ぎない。従って、特許文献2のように環境槽との間の断熱壁へ向けて冷却風を供給しても、ダイナモメータからの伝熱があると、トルクメータの温度を低温に保持することは困難である。
一方、特許文献3は、中間軸とトルクメータとの間に断熱材を介在させているが、このように断熱材が介在すると、回転軸全体の長さが断熱材の厚さ分だけ長くなり、ダイナモメータ装置の許容最高回転速度が低下する。また、金属部材に比較して断熱材の剛性は低いので、厚い断熱材が介在すると、中間軸の回転中心軸線とトルクメータ側の回転中心軸線との同心度が低下しやすい。
従って、この発明は、許容回転速度の低下等の弊害を伴わずにダイナモメータの電動機からトルクメータへ伝達される熱の影響を抑制して、トルクメータの温度をより常温に近い温度に維持することを目的とする。
この発明に係るダイナモメータ装置は、
主軸の先端がハウジングから突出したダイナモメータと、
上記主軸と供試体接続部との間に配設されたトルクメータと、
上記主軸と上記トルクメータとの間に位置するいずれかのフランジ継ぎ手において2つのフランジ面の間に挟み込まれた別部材からなる断熱プレートと、
上記断熱プレートと接する少なくとも一方のフランジ面に設けられたセラミックス溶射層と、
上記ハウジングの端面と上記供試体接続部との間において少なくとも上記トルクメータの周囲を囲むように形成されたカバーと、
上記カバーの内部空間に温調風を供給する空調機と、
を備えたことを特徴としている。
この構成では、フランジ面の間に断熱プレートが介在することによって、両者間の伝熱面積が少なくなり、主軸を介してトルクメータに伝わる熱量が少なくなる。さらに、セラミックス溶射層によって、より確実に断熱される。そして、このように主軸から断熱されているトルクメータの周囲を囲むカバー内の空間に空調機から温調風(冷風ないし温風)が供給されるので、例えば冷風によってトルクメータを効果的に冷却でき、トルクメータの基準温度例えば常温(例:25℃)により近付けることができる。
なお、空調機としては、冷媒が循環する冷凍サイクルを利用して外気温よりも低い温度の冷風や温風を生成・供給できるものであることが望ましい。
一つの態様では、上記空調機は、上記トルクメータの検出温度に応じて、温調風の温度が制御される。
本発明では、断熱要素として断熱プレートとセラミックス溶射層とを組み合わせて用いているので、所望の断熱性能に比較して断熱プレートの厚さが比較的に薄くなる。従って、断熱要素を付加することによる回転軸全体の長さの増加が抑制され、ダイナモメータ装置の許容最高回転速度の低下を抑制できる。また断熱プレートの厚さを薄くすることで、前後の回転軸の同心度の低下も抑制することができる。
本発明の具体的な一つの態様では、
上記トルクメータは、一対のフランジを備えており、
上記トルクメータの一方のフランジが取り付けられる第2の回転部材のフランジ面と、上記主軸の先端部における第1の回転部材のフランジ面と、の間に上記断熱プレートが配置されており、
上記第1の回転部材と上記第2の回転部材とは、上記断熱プレートを貫通した複数本のボルトによって互いに結合されている。
さらに好ましくは、
上記断熱プレートは中央に円形の開口部を有する環状をなしており、
上記第1の回転部材および第2の回転部材の一方の内周側部分に設けられた円形の突出部と、他方の内周側部分に設けられた円形の凹部と、上記開口部を通して互いに嵌合している。
これにより、第1の回転部材と第2の回転部材との同心度が断熱プレートによらずに維持される。従って、断熱プレートを貫通した上記のボルトによって第1の回転部材と第2の回転部材とが堅固に結合されて確実なトルク伝達が可能である。
また、本発明の好ましい一つの態様では、互いに嵌合する上記突出部および上記凹部の少なくとも一方の接触面に、セラミックス溶射層が設けられている。このセラミックス溶射層によって、突出部と凹部との接触面においても、断熱作用が得られる。
上記カバーは、好ましくは、上記ハウジングの端面から上記供試体接続部の前端面まで延びており、上記供試体接続部の前端面に沿った前面壁に、上記供試体接続部が露出する円形の開口部を備えている。これにより、冷風が供給されるカバーの内部空間と外部とが確実に隔絶され、比較的少量の冷風でもって効果的に冷却できる。
また、上記トルクメータの供試体接続部側に位置するいずれかのフランジ継ぎ手において第2の断熱プレートを設けるようにしてもよい。例えば、試験中に温度上昇する供試体の場合には、第2の断熱プレートを付加することが望ましい。
この発明によれば、許容最高回転速度の低下を伴うことなくトルクメータの温度を常温に近付けることができ、温度ドリフトの校正が容易になるとともに、トルクメータの測定値の信頼性が向上する。
本発明の一実施例のダイナモメータ装置全体の側面図。 空調機を含むダイナモメータ装置の正面図。 空調機を含むダイナモメータ装置の平面図。 カバーを取り除いて示すダイナモメータ装置前端部の拡大図。 トルクメータを含む主軸先端部分の断面図。 カップリングの(a)断面図および(b)左側面図。 断熱プレートの平面図。 アダプタフランジの(a)断面図、(b)左側面図および(c)右側面図。 トルクメータの(a)正面図、(b)左側面図および(c)右側面図。 カップリングフランジの(a)断面図および(b)左側面図。 カバーの正面図。 カバーの第2前面壁をスライドさせた状態を示す説明図。 カバーを左右に開いた中間段階の状態を示す説明図。 カバーを全開とした状態を示す説明図。
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明に係るダイナモメータ装置1の一実施例を示す側面図である。このダイナモメータ装置1は、基台2の上端のベッド2a上に、回転軸線を水平とした姿勢でもって搭載されたダイナモメータ3を備えている。
ダイナモメータ3は、箱型のハウジング4が内部の電動機を囲った構成となっており、内部の電動機を冷却する例えば空冷式の冷却機構として、外気を取り込んでハウジング4の内部へ送る送風ファン5を、ハウジング4の上面に備えている。
ダイナモメータ3の回転軸つまり主軸6の先端は、ハウジング4の前端面から突出しており、かつこの主軸6先端部分を覆うように、矩形の箱状をなすカバー7がハウジング4の前端面に取り付けられている。なお、図1では、内部構成を示すために、カバー7が仮想線で示されている。
図2および図3は、ダイナモメータ装置1の前端部の構成を示しており、これらの図に示すように、ダイナモメータ装置1は、ダイナモメータ3とは別置きとなる可搬型の空調機11を備えている。この空調機11は、冷媒の圧縮・膨張を伴ういわゆる冷凍サイクルを利用して外気温よりも低温の冷風あるいは外気温よりも高温の温風を生成し、内部のファンにより送風するものであり、上面に配置された風出口が送風ダクト12を介してカバー7の上面に接続されている。これにより、カバー7の内部空間に、温調風(冷風ないし温風)が供給される。カバー7の内部空間に上面から垂直方向下方へ温調風を導入するように、送風ダクト12の先端部は、カバー7の上面にほぼ垂直に接続されている。なお、空調機11は、ダイナモメータ3の基台2等と一体化してもよいが、この実施例では、ダイナモメータ3からの熱をできるだけ受けないように、ダイナモメータ3と並べて床面上に個別に設置されている。
上記空調機11は、基本的に、一定風量の送風を継続的に行う構成であり、温調風の温度(吹き出し温度)が、後述するトルクメータの温度を目標温度(例えば25℃)に近付けるように、トルクメータの検出温度に応じて可変制御される。
図4は、カバー7によって覆われているダイナモメータ3の主軸6先端部分の構成の詳細を示す拡大図である。図示するように、主軸6の先端部分は複数のフランジ状の部材から構成されており、これらがフランジ継ぎ手として互いに結合されている。具体的には、主軸6先端部分は、電動機の回転軸の先端に取り付けられるカップリング21(第1の回転部材)と、このカップリング21に取り付けられる円盤状のアダプタフランジ22(第2の回転部材)と、供試体接続部を構成する円盤状のカップリングフランジ23と、アダプタフランジ22とカップリングフランジ23との間に配置されたトルクメータ24と、カップリング21とアダプタフランジ22との間に挟み込まれた断熱プレート25と、カップリングフランジ23の供試体接続面に付加された第2断熱プレート26と、を備えている。図5は、これらの部材(第2断熱プレート26を除く)の結合状態を示した断面図である。
トルクメータ24の下方位置には、トルクメータ24から無線で送信された検出信号を受信して外部の操作測定ユニット(コンピュータ)に出力するステータ部27が配置されている。このステータ部27は、トルクメータ24の周面の一部を囲むように構成されており、ハウジング4の前端面に取り付けられた支持台28の上に支持されている。カバー7は、この支持台28とともに、ハウジング4の前端面から第2断熱プレート26の端面付近までの長さ範囲の周囲を囲っている。
カップリング21は、図6に示すように、キー溝31を介して電動機の回転軸に結合される円筒部32と、円盤状のフランジ部33と、を備えている。フランジ部33には、アダプタフランジ22との結合を行うためのボルト34(図5参照)が通る円形のボルト貫通孔35が、周方向に沿って複数個等間隔に配置されている。ここで、フランジ部33の内周側部分は、段部36として軸方向に僅かに突出しており、この段部36よりも外周側部分が断熱プレート25と接する環状のフランジ面33aとなっている。
断熱プレート25は、高い断熱性を有するとともに高い強度を有するいわゆる高強度断熱板として市販されている非金属の断熱板からなり、図7に示すように、上記フランジ面33aに対応した環状に形成されている。そして、カップリング21のボルト貫通孔35に対応して、複数のボルト貫通孔37が開口形成されている。ここで、断熱プレート25の内径つまり円形開口部38の径は、カップリング21の段部36の径に対応しており、この開口部38が段部36に比較的密に嵌合することによって断熱プレート25が位置決めされるようになっている。
アダプタフランジ22は、図8に示すように、中心に開口部44を備えた環状をなし、外周部に、上記ボルト34がそれぞれ螺合する複数のネジ孔39を備えている。そして、このネジ孔39を含む外周側部分が上記断熱プレート25と接する環状のフランジ面22aとなっている。また、図8(c)に示すカップリング21側の面には、カップリング21の段部36に対応して、該段部36の先端面が嵌合する円形の凹部40が内周側部分に形成されている。また、図8(b)に示すトルクメータ24側の面には、トルクメータ取付座面41が環状に形成されているとともに、トルクメータ24を取り付けるためのボルト42(図5参照)が螺合する複数のネジ孔43が形成されている。
上記カップリング21と上記アダプタフランジ22とは、図5に示すように、各々のフランジ面33a,22aの間に断熱プレート25を挟み込んだ状態でボルト34によって堅固に結合されている。この結合状態において、カップリング21の段部36の外周面は、アダプタフランジ22の凹部40の内周面に高精度に嵌合しており、この両者の嵌合によって、カップリング21とアダプタフランジ22との相互のセンタリングがなされている。つまり、カップリング21とアダプタフランジ22との同心度が、断熱プレート25やボルト34に依存せずに、段部36と凹部40との嵌合によって確保される。従って、複数のボルト34をそれぞれ規定トルクで締め付けることにより、カップリング21とアダプタフランジ22との同心度ならびに両者のフランジ面33a,22aの平行度が確実に得られる。なお、段部36の先端面と凹部40の底面とは、互いに接することなく極僅か離れている。
ここで、上記断熱プレート25と接するフランジ面33a,22aの少なくとも一方には、セラミックス溶射によって断熱層となるセラミックス溶射層が設けられている。一実施例では、カップリング21側のフランジ面33aに、ジルコニアからなる厚さ0.5mmのセラミックス溶射層が設けられている。そして、このセラミックス溶射層は、フランジ面33aの内周端から段部36の外周面に連続して設けられている。上述したように、段部36の外周面はアダプタフランジ22の凹部40の内周面に嵌合するが、両者の径寸法は、このセラミックス溶射層の厚み(0.5mm)を考慮して設定されている。つまり、段部36外周面のセラミックス溶射層の上に、凹部40の内周面が高い精度で嵌合している。
より具体的には、セラミックス溶射層は、フランジ面33aおよび段部36外周面の双方において、例えば0.7mm程度の厚さに溶射した上で、セラミックス溶射層を含む外形が規定の外形寸法となるように研磨加工を施してあり、この研磨加工を経たセラミックス溶射層の厚さが、設計値で0.5mmとなっている。従って、特に、段部36外周面においては、研磨後の実際の径寸法が凹部40の径に対応しており、凹部40の内周面との間で高い精度の嵌合状態が得られる。なお、溶射材料として、アルミナやチタニア等の他のセラミックス材料を用いて、セラミックス溶射層を構成してもよい。
このように、カップリング21とアダプタフランジ22との間に断熱要素として断熱プレート25とセラミックス溶射層が介在することによって、電動機からカップリング21に伝わっている熱のアダプタフランジ22への伝達が制限される。つまり、カップリング21とアダプタフランジ22との間の伝熱経路が、複数のボルト34のみとなり、実質的な伝熱面積が減少する。
特に、断熱要素として断熱プレート25とセラミックス溶射層とを組み合わせて用いることにより、所望の断熱性能に比較して断熱プレート25の厚さが比較的に薄くなる。仮に断熱プレートのみで所望の断熱性能を得ようとすると、断熱プレートが厚くなり、ダイナモメータ3から突出する回転軸全体の長さが長くなることから、ダイナモメータ装置1の許容最高回転速度が低下する。しかも、断熱プレートは、金属部材に比較して剛性が低いので、同心度が低下し、同様に許容最高回転速度の低下や測定精度の低下の要因となる。上記実施例では、断熱プレート25とセラミックス溶射層を組み合わせることで、このような不具合が最小となる。
しかも、前述したように、剛性の高いカップリング21の段部36とアダプタフランジ22の凹部40とが断熱プレート25を介さずに互いに嵌合しているので、断熱プレート25を具備していても、カップリング21とアダプタフランジ22とを高い精度で同軸状態に結合することができる。さらに、上記実施例では、両者の嵌合面にもセラミックス溶射層が介在しており、両者間での伝熱が最小限のものとなる。
トルクメータ24は、いわゆる非接触フランジ型トルクメータとして市販されているものであり、図9に示すように、アダプタフランジ22に複数のボルト42(図5参照)によって固定される円盤状の第1フランジ46と、カップリングフランジ23に複数のボルト47(図5参照)によって固定される円盤状の第2フランジ48と、両者間のセンサ部49と、を備えている。センサ部49は、第1フランジ46と第2フランジ48との間に作用しているトルクを検出し、上述したように、非接触の形でステータ部27(図4参照)に検出信号を出力する。センサ部49は、温度ドリフトの校正のために、トルクメータ24自体の温度を検出する温度センサを含んでおり、同様に温度信号がステータ部27へ出力される。前述したように、空調機11は、このトルクメータ24の温度に応じて吹き出し温度が可変制御される。なお、トルクメータ24自身が有する温度センサとは別に、カバー7内部の温度ないしトルクメータ24付近の温度を検出する温度センサを設け、その検出温度に基づいて空調機11を制御するように構成してもよい。
トルクメータ24の第1フランジ46は、周方向に沿って等間隔に複数のボルト貫通孔51を有し、このボルト貫通孔51を貫通してアダプタフランジ22のネジ孔43に螺合するボルト42によって、アダプタフランジ22のトルクメータ取付座面41に固定されている。なお、アダプタフランジ22のトルクメータ取付座面41の内周に環状に設けられた段部41a(図8(a)参照)が第1フランジ46の円形の凹部46a(図9(c)参照)に嵌合し、これによって両者の相互のセンタリングがなされている。
トルクメータ24の第2フランジ48は、上記のボルト42を通過させるための複数の円形の貫通孔52を有するとともに、当該第2フランジ48とカップリングフランジ23とを結合するボルト47が螺合する複数のネジ孔53を備えている。貫通孔52とネジ孔53とは、周方向に交互に配置されている。
カップリングフランジ23は、図10に示すように、一方に平坦なトルクメータ取付座面55を備え、他方に平坦な供試体接続面56を備えている。また、周方向に沿って等間隔に複数の段付のボルト貫通孔57を有し、このボルト貫通孔57を通してトルクメータ24の第2フランジ48のネジ孔53に螺合するボルト47によって、カップリングフランジ23が第2フランジ48に固定されている。図5に示すように、ボルト47の頭部は、段付のボルト貫通孔57の中に位置し、供試体接続面56には突出しない。なお、第2フランジ48の内周に環状に設けられた段部48a(図9(a)参照)がカップリングフランジ23の円形開口部内周に設けられた凹部23aに嵌合し、これによって両者の相互のセンタリングがなされている。
また、カップリングフランジ23の供試体接続面56には、図外の供試体を直接にあるいは適宜な治具を介して固定するための複数のネジ孔58が設けられている。第2断熱プレート26(図4参照)は、断熱プレート25と同様の高強度断熱板からなり、供試体接続面56と供試体ないしは治具との間に介装される。
空調機11によって冷風(あるいは温風)が内部空間に供給されるカバー7は、図11〜図14に示すように、空調機11からの送風ダクト12が接続される給気口61を有する上面中央の固定頂部壁62と、ハウジング4の前端部に複数のヒンジ63を介して左右に開閉可能に構成された一対の可動半部64A,64Bと、から構成されている。固定頂部壁62は、平面視で四角形をなし、上述したカップリング21やトルクメータ24等の直上に位置している。
一対の可動半部64A,64Bは、基本的に互いに対称の構成であり、カバー7の側壁面を構成する側壁65と、固定頂部壁62とともにカバー7の上面を構成するように側壁65の上縁に沿って設けられた頂部壁66と、支持台28の側縁に連続してカバー7の底面を構成するように側壁65の下縁に沿って設けられた底壁67と、カバー7の前面の一部を構成するように頂部壁66の一端縁と底壁67の一端縁と側壁65の側縁とに亘って形成された第1前面壁68と、この第1前面壁68の上(前面)に重ねられた第2前面壁69と、をそれぞれ備えている。なお、図面においては、一方の可動半部64Aに属する各部に符号「A」を付し、他方の可動半部64Bに属する各部に符号「B」を付してある。以下の説明では、特に左右の区別が必要な場合にのみ符番に符号「A」,「B」を加えて説明する。
カバー7は、通常の使用状態においては、矩形の箱状をなしており、正面視において、ほぼ正方形をなしている(図11参照)。ヒンジ63に連結されている側壁65は、縦長の長方形をなし、その3辺に、頂部壁66と底壁67と第1前面壁68とが接続されている。第2前面壁69は、断面L字形に折れ曲がった上縁部71および下縁部72が、第1前面壁68の上縁および下縁に左右にスライド可能に係合している。左右一対の第2前面壁69は、図11に示すように、主軸6の中心線上の合わせ面74において互いに突き当てられている。そして、互いに突き当てられた状態において、上下2箇所に設けたラッチ機構75によって互いに固定されている。前述した供試体接続面56に対応した円形の開口部73は、一対の第2前面壁69に跨って形成されている。つまり、各々の第2前面壁69は、互いに対称に半円形の切欠部73A,73Bを有している。供試体接続面56は、円形の開口部73(切欠部73A,73B)を通して外部に露出しており、基本的には、カバー7を開くことなく供試体の脱着が可能である。
なお、図示していないが、金属板からなるカバー7の各部の内壁面に、断熱材の貼着やセラミックス溶射による断熱層の形成などによる断熱処理を施すことが望ましい。カバー7の各部の外表面には、耐熱シートの貼着や耐熱塗装などの遮熱処理を施すことが望ましい。また、図示例のカバー7は、空調機11から供給された温調風をトルクメータ24等との熱交換後に外部へ排出するための排気口を具備しておらず、各部の隙間等から外部へ排出される態様となっているが、必要に応じて、例えば側壁65下部などに排気口を開口形成するようにしてもよい。
上記のカバー7は、通常の使用時には閉じており、トルクメータ24等の周囲をカバー7が囲った状態で供試体の種々の試験・測定が行われるが、例えばトルクメータ24等の保守点検の際などには必要に応じてカバー7を開放することが可能である。図12〜図14は、カバー7を開くときの動作ないし作業手順を示しており、まず初めに、前端面のラッチ機構75をアンロック状態とした上で、図12に示すように、第2前面壁69を左右に直線的にスライドさせて開く。第2前面壁69の左右方向の幅と第1前面壁68の左右方向の幅とは概ね等しく設定されており、従って、図12のように、第1前面壁68の上(前面)に第2前面壁69が重なった状態となる。
そして、この図12の状態からヒンジ63を中心として一対の可動半部64A,64Bを回動させて左右に開く。図13は、中間の角度まで可動半部64A,64Bが開いた状態を示している。ここで、可動半部64A,64Bを回動させる前に上記のように第2前面壁69が左右に退避しているので、半円形の切欠部73A,73Bがカップリングフランジ23に干渉することがない。また、供試体接続面56に何らかの供試体が取り付けられている状態でも、供試体が特に大型のものでなければ、供試体と干渉せずに可動半部64A,64Bの開閉が可能である。
図14は、最終的に可動半部64A,64Bが180°回動してカバー7が全開となった状態を示している。具体的には図示していないが、可動半部64A,64Bの側壁65あるいは対応するハウジング4の側壁面に永久磁石を取り付けておき、図14のように全開とした可動半部64A,64Bを磁力で保持するようにしてもよい。
このように図示の実施例では、カバー7を簡単に開閉することができる。そして、カバー7を全開とすることで、ハウジング4の前端面付近までカップリング21等の周囲を開放することができる。従って、トルクメータ24の点検や保守あるいはトルクレンチを使用した各部の締結作業等の作業性が向上する。
以上のように上記実施例のダイナモメータ装置1においては、通常の使用時には、トルクメータ24の周囲がカバー7によって囲まれた状態となっており、このカバー7の内部空間に空調機11によって冷風や温風が供給される。そして、発熱体である電動機の回転軸とトルクメータ24との間の伝熱は、断熱プレート25によって大きく制限されるので、空調機11が供給する冷風ないし温風によってトルクメータ24を効果的に冷却ないし加温することができ、トルクメータ24を常温(例えば25℃)により近付けることができる。これにより、トルクメータ24の温度ドリフトが相対的に小さく抑制され、その校正が容易になるとともに、校正後の測定値の信頼性が向上する。
また、カップリング21とアダプタフランジ22とは、外周側の広い範囲に断熱プレート25が介在するものの、カップリング21の段部36とアダプタフランジ22の凹部40との直接の嵌合・接触ならびに周囲の複数本のボルト34によって互いに堅固に結合されているので、断熱プレート25の弾性変形によるトルク測定値の信頼性の低下や、双方の回転中心軸線の角度的なずれ、などを招来することがない。
なお、上記実施例では、カップリング21とアダプタフランジ22との間に断熱プレート25が配置されているが、本発明は必ずしもこの実施例の構成に限定されるものではない。例えば、アダプタフランジ22を具備しないような構成ではカップリング21とトルクメータ24の第1フランジ46との間に断熱プレート25を配置してもよく、さらに多数のフランジ部材を連結した構成では他の適当な位置に断熱プレート25を配置することができる。
1…ダイナモメータ装置
3…ダイナモメータ
4…ハウジング
6…主軸
11…空調機
21…カップリング
22…アダプタフランジ
23…カップリングフランジ
24…トルクメータ
25…断熱プレート
26…第2断熱プレート

Claims (7)

  1. 主軸の先端がハウジングから突出したダイナモメータと、
    上記主軸と供試体接続部との間に配設されたトルクメータと、
    上記主軸と上記トルクメータとの間に位置するいずれかのフランジ継ぎ手において2つのフランジ面の間に挟み込まれた別部材からなる断熱プレートと、
    上記断熱プレートと接する少なくとも一方のフランジ面に設けられたセラミックス溶射層と、
    上記ハウジングの端面と上記供試体接続部との間において少なくとも上記トルクメータの周囲を囲むように形成されたカバーと、
    上記カバーの内部空間に温調風を供給する空調機と、
    を備えたことを特徴とするダイナモメータ装置。
  2. 上記トルクメータは、一対のフランジを備えており、
    上記トルクメータの一方のフランジが取り付けられる第2の回転部材のフランジ面と、上記主軸の先端部における第1の回転部材のフランジ面と、の間に上記断熱プレートが配置されており、
    上記第1の回転部材と上記第2の回転部材とは、上記断熱プレートを貫通した複数本のボルトによって互いに結合されている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のダイナモメータ装置。
  3. 上記断熱プレートは中央に円形の開口部を有する環状をなしており、
    上記第1の回転部材および第2の回転部材の一方の内周側部分に設けられた円形の突出部と、他方の内周側部分に設けられた円形の凹部と、上記開口部を通して互いに嵌合している、
    ことを特徴とする請求項2に記載のダイナモメータ装置。
  4. 互いに嵌合する上記突出部および上記凹部の少なくとも一方の接触面に、セラミックス溶射層が設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載のダイナモメータ装置。
  5. 上記カバーは、上記ハウジングの端面から上記供試体接続部の前端面まで延びており、
    上記供試体接続部の前端面に沿った前面壁に、上記供試体接続部が露出する円形の開口部を備えている、
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のダイナモメータ装置。
  6. 上記トルクメータの供試体接続部側に位置するいずれかのフランジ継ぎ手において第2の断熱プレートが設けられている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のダイナモメータ装置。
  7. 上記空調機は、上記トルクメータの検出温度に応じて、温調風の温度が制御される、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のダイナモメータ装置。
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