JP6424490B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、トレッドパターンにピッチバリエーションを採用した空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を同時に改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤにおいて、トレッドパターンにピッチバリエーションを採用したものが種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。より具体的には、トレッド部に横溝を含む複数の繰り返し要素をタイヤ周方向に沿って反復的に形成し、これら繰り返し要素に複数種類のピッチを設定する。このようなピッチバリエーションを採用した場合、走行時に発生するパターンノイズの周波数を分散させて空気入りタイヤのノイズ性能を改善することができる。
しかしながら、ピッチバリエーションを採用した場合、各繰り返し要素の溝体積がタイヤ周上で不均一になるためウエット路面での操縦安定性が悪化するという問題がある。また、横溝を含む複数の繰り返し要素の剛性がタイヤ周上で不均一になるためドライ路面での操縦安定性が悪化するという問題がある。そのため、ピッチバリエーションという枠組みの中でウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を同時に改善することは極めて困難である。
特開2012−56464号公報 特開2010−76561号公報 特開2007−168572号公報 特開2004−299652号公報 特開2004−210133号公報
本発明の目的は、トレッドパターンにピッチバリエーションを採用するにあたって、ウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を同時に改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド部に、タイヤ周方向に延びる少なくとも2本の主溝と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、前記主溝のうちタイヤ幅方向最外側に位置する一対の最外側主溝の中心線よりもタイヤ幅方向内側をセンター領域とし、前記最外側主溝の中心線から前記トレッド部の接地端までをショルダー領域としたとき、前記センター領域及び前記ショルダー領域に前記横溝を含む複数の繰り返し要素をタイヤ周方向に沿って反復的に形成し、これら繰り返し要素を少なくとも3種類のピッチを含むピッチバリエーションで構成し、そのピッチバリエーション数をNとし、前記センター領域における各繰り返し要素の溝面積比率をピッチがより長いものから順番にSc(1)、Sc(2)、・・・、Sc(N−1)、Sc(N)としたとき、Sc(2)−Sc(1)>Sc(3)−Sc(2)>・・・>Sc(N)−Sc(N−1)、かつ、Sc(1)<Sc(2)<・・・<Sc(N−1)<Sc(N)の関係を満足し、前記ショルダー領域における各繰り返し要素の溝面積比率をよりピッチが長いものから順番にSs(1)、Ss(2)、・・・、Ss(N−1)、Ss(N)としたとき、Ss(2)−Ss(1)>Ss(3)−Ss(2)>・・・>Ss(N)−Ss(N−1)、かつ、Ss(1)<Ss(2)<・・・<Ss(N−1)<Ss(N)の関係を満足することを特徴とするものである。
本発明では、上記関係式に基づいて、センター領域及びショルダー領域において繰り返し要素の溝面積比率を最長ピッチから最短ピッチに向けて増加させ、ピッチが相対的に小さい繰り返し要素の溝面積比率を相対的に大きくすることにより、各繰り返し要素の溝体積をタイヤ周上で均一化し、ウエット路面での操縦安定性を改善することができる。また、ピッチが相対的に小さい繰り返し要素ほど溝面積比率の変化量を小さくすることにより、繰り返し要素の剛性を均一化し、ドライ路面での操縦安定性を改善することができる。その結果、ピッチバリエーションという枠組みの中でウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を同時に改善することが可能になる。しかも、このような手法によれば、繰り返し要素の溝面積比率を特定することで所望の効果が得られるので、ウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性とを両立するためにセンター領域とショルダー領域とで異なるピッチ数や配列を採用する必要がなくなり、その結果、ピッチの設計に要する時間を短縮することができ、また、金型製作工程の複雑化を回避することができるという利点もある。
ここで、各繰り返し要素の溝面積比率は、その繰り返し要素に含まれるネガティブ要素の面積とポジティブ要素の面積との総和に対するネガティブ要素の面積の比率(%)である。ネガティブ要素とは溝部分を意味し、ポジティブ要素とは陸部分を意味する。
センター領域において最短ピッチを有する繰り返し要素の溝面積比率Sc(N)とセンター領域において最長ピッチを有する繰り返し要素の溝面積比率Sc(1)との差〔Sc(N)−Sc(1)〕から求まるセンター領域での溝面積比率の最大差は1%〜4%であることが好ましい。これにより、ウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を効果的に改善することができる。
また、ショルダー領域において最短ピッチを有する繰り返し要素の溝面積比率Ss(N)とショルダー領域において最長ピッチを有する繰り返し要素の溝面積比率Ss(1)との差〔Ss(N)−Ss(1)〕から求まるショルダー領域での溝面積比率の最大差は1%〜4%であることが好ましい。これにより、ウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を効果的に改善することができる。
特に、Sc(N)−Sc(1)>Ss(N)−Ss(1)とした場合、偏摩耗への影響が大きいショルダー領域では溝面積比率の最大差が相対的に小さくなり、剛性の均一化が促進されるため耐偏摩耗性が良化する。また、Sc(N)−Sc(1)<Ss(N)−Ss(1)とした場合、ドライ路面での操縦安定性への影響が大きいセンター領域では溝面積比率の最大差が相対的に小さくなり、剛性の均一化が促進されるためドライ路面での操縦安定性が良化し、通過音への影響が大きいショルダー領域では溝面積比率の最大差が相対的に大きくなり、パターンノイズの周波数分散性が向上するためノイズ性能が良化し、通過音が低減される。
タイヤ周上において、最長ピッチを有する繰り返し要素の数は最短ピッチを有する繰り返し要素の数よりも少ないことが好ましい。本発明ではピッチが相対的に小さい繰り返し要素の溝面積比率を調整するため、最短ピッチを有する繰り返し要素の数が最長ピッチを有する繰り返し要素の数よりも多い配列において上述の構成を適用した場合に顕著な効果が得られる。
また、繰り返し要素はピッチの長さがタイヤ周方向に沿って周期的に増減するように配列することが好ましい。このような周期配列ではピッチが相対的に小さい繰り返し要素が局所的に集合することになるため、周期配列において上述の構成を適用した場合に顕著な効果が得られる。
本発明において、トレッド部の接地領域は、タイヤを正規リムにリム組みして正規内圧を充填した状態で平面上に垂直に置いて正規荷重を加えたときに測定されるタイヤ軸方向の接地幅に基づいて特定される。接地端は、接地領域のタイヤ軸方向の最外側位置である。「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRAであれば“Design Rim”、或いはETRTOであれば“Measuring Rim”とする。「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”であるが、タイヤが乗用車である場合には180kPaとする。「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表“TIRE ROAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車である場合には前記荷重の88%に相当する荷重とする。
本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線断面図である。 図1の空気入りタイヤのトレッドパターンを示す展開図である。 トレッド部のセンター領域を示す平面図である。 トレッド部のショルダー領域を示す平面図である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図4は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、該トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2,2と、これらサイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3,3とを備えている。
一対のビード部3,3間にはカーカス層4が装架されている。このカーカス層4は、タイヤ径方向に延びる複数本の補強コードを含み、各ビード部3に配置されたビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。ビードコア5の外周上には断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層7が埋設されている。これらベルト層7はタイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、スチールコードが好ましく使用される。ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して例えば5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルトカバー層8が配置されている。ベルトカバー層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
なお、上述したタイヤ内部構造は空気入りタイヤにおける代表的な例を示すものであるが、これに限定されるものではない。
図2に示すように、トレッド部1には、タイヤ周方向に延びる4本の主溝11が形成されている。主溝11はタイヤ赤道CLの両側に位置する一対の内側主溝11A,11Aとタイヤ幅方向最外側に位置する一対の最外側主溝11B,11Bとを含んでいる。これら4本の主溝11により、トレッド部1には、タイヤ赤道CL上に位置するセンター陸部20と、該センター陸部20のタイヤ幅方向外側に位置する一対の中間陸部30と、各中間陸部30のタイヤ幅方向外側に位置する一対のショルダー陸部40とが区画されている。
センター陸部20には、タイヤ幅方向に延長して一端が内側主溝11Aに連通する一方で他端がセンター陸部20内で閉止した複数本の横溝21がタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。また、センター陸部20には、タイヤ幅方向に延長して一端が内側主溝11Aに連通する一方で他端がセンター陸部20内で閉止した複数本のサイプ25と、センター陸部20の両縁部に形成された横溝21,21同士を連結する複数本のサイプ26とが形成されている。横溝21とサイプ25とはタイヤ周方向に沿って交互に配置されている。
中間陸部30には、タイヤ幅方向に延長して一端が内側主溝11Aに連通する一方で他端が中間陸部30内で閉止した複数本の横溝31と、タイヤ幅方向に延長して一端が最外側主溝11Bに連通する一方で他端が中間陸部30内で閉止した複数本の横溝32と、タイヤ幅方向に延長して一端が最外側主溝11Bに連通する一方で他端が中間陸部30内で閉止した複数本の横溝33とがそれぞれタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。横溝32と横溝33とはタイヤ周方向に沿って交互に配置され、横溝33の方が横溝32よりも長くなっている。また、中間陸部30には、タイヤ幅方向に延長して一端が内側主溝11Aに連通する一方で他端が中間陸部30内で閉止した複数本のサイプ35と、横溝31の先端部からタイヤ幅方向に延長する複数本のサイプ36と、横溝32の先端部からタイヤ幅方向に延長する複数本のサイプ37とが形成されている。横溝31とサイプ35とはタイヤ周方向に沿って交互に配置されている。
ショルダー陸部40には、タイヤ周方向に延長して最外側主溝11Bよりも狭い周方向補助溝48が形成されている。更に、ショルダー陸部40には、接地端Eを横切るようにタイヤ幅方向に延長して周方向補助溝48に連通する複数本の横溝41と、接地端Eを横切るようにタイヤ幅方向に延長して周方向補助溝48に対して非連通となる複数本の横溝42とがタイヤ周方向に間隔をおいて形成されている。横溝41と横溝42とはタイヤ周方向に沿って交互に配置されている。また、ショルダー陸部40には、最外側主溝11Bと周方向補助溝48とを連結する複数本のサイプ45と、周方向補助溝48と横溝42とを連結する複数本のサイプ46とが形成されている。
一対の最外側主溝11Bの中心線よりもタイヤ幅方向内側をセンター領域Ceとし、最外側主溝11Bの中心線からトレッド部1の接地端Eまでをショルダー領域Shとしたとき、センター領域Ceにはセンター陸部20及び中間陸部30が配置され、ショルダー領域Shにはショルダー陸部40が配置されている。なお、最外側主溝11Bの中心線は最外側主溝11Bの最も狭い部位において溝幅中心位置を通る直線である。
図3に示すように、センター領域Ceには、横溝21,31,32,33を含む複数の繰り返し要素Rcが形成されている。ここでは、各繰り返し要素Rcは横溝21,31,32,33とサイプ25,26,35,36,37と主溝11A,11Bとからなるネガティブ要素とそれ以外の陸部からなるポジティブ要素とから構成されている。これら繰り返し要素Rcは少なくとも3種類のピッチPc(1)〜Pc(N)を含むピッチバリエーションで構成されている。つまり、繰り返し要素Rcのピッチバリエーション数はNである。ピッチPc(1)〜Pc(N)は、Pc(1)>Pc(2)>・・・>Pc(N)の関係を満足している。なお、ピッチPc(1)〜Pc(N)は各繰り返し要素Rcにおけるタイヤ周方向の同一位置を基準として測定されるものである。図3では、センター陸部20の横溝21の特定位置を基準としてピッチPc(1)〜Pc(N)が特定されているが、その基準となる位置は任意に定めることができる。
センター領域Ceにおける各繰り返し要素Rcの溝面積比率をピッチがより長いものから順番にSc(1)、Sc(2)、・・・、Sc(N−1)、Sc(N)としたとき、Sc(2)−Sc(1)≧Sc(3)−Sc(2)≧・・・≧Sc(N)−Sc(N−1)、かつ、Sc(1)<Sc(N)の関係を満足している。より好ましくは、Sc(2)−Sc(1)>Sc(3)−Sc(2)>・・・>Sc(N)−Sc(N−1)、かつ、Sc(1)<Sc(2)<・・・<Sc(N−1)<Sc(N)の関係を満足している。
図4に示すように、ショルダー領域Shには、横溝41,42を含む複数の繰り返し要素Rsが形成されている。ここでは、各繰り返し要素Rsは横溝41,42とサイプ45,46と周方向補助溝48と主溝11Bとからなるネガティブ要素とそれ以外の陸部からなるポジティブ要素とから構成されている。これら繰り返し要素Rsは少なくとも3種類のピッチPs(1)〜Ps(N)を含むピッチバリエーションで構成されている。つまり、繰り返し要素Rsのピッチバリエーション数はNである。ピッチPs(1)〜Ps(N)は、Ps(1)>Ps(2)>・・・>Ps(N)の関係を満足している。なお、ピッチPs(1)〜Ps(N)は各繰り返し要素Rsにおけるタイヤ周方向の同一位置を基準として測定されるものである。図4では、ショルダー陸部40の横溝41の特定位置を基準としてピッチPs(1)〜Ps(N)が特定されているが、その基準となる位置は任意に定めることができる。
ショルダー領域Shにおける各繰り返し要素Rsの溝面積比率をピッチがより長いものから順番にSs(1)、Ss(2)、・・・、Ss(N−1)、Ss(N)としたとき、Ss(2)−Ss(1)≧Ss(3)−Ss(2)≧・・・≧Ss(N)−Ss(N−1)、かつ、Ss(1)<Ss(N)の関係を満足している。より好ましくは、Ss(2)−Ss(1)>Ss(3)−Ss(2)>・・・>Ss(N)−Ss(N−1)、かつ、Ss(1)<Ss(2)<・・・<Ss(N−1)<Ss(N)の関係を満足している。
表1には、センター領域Ce及びショルダー領域Shにおける繰り返し要素Rc,Rsのピッチと溝面積比率の具体例を示す。
Figure 0006424490
上述した空気入りタイヤでは、上記関係式に基づいて、センター領域Ce及びショルダー領域Shにおいて繰り返し要素Rc,Rsの溝面積比率を最長ピッチPc(1),Ps(1)から最短ピッチPc(N),Ps(N)に向けて増加させ、ピッチが相対的に小さい繰り返し要素Rc,Rsの溝面積比率〔例えば、Sc(N),Ss(N)〕を相対的に大きくすることにより、各繰り返し要素Rc,Rsの溝体積をタイヤ周上で均一化し、ウエット路面での操縦安定性を改善することができる。また、ピッチが相対的に小さい繰り返し要素Rc,Rsほど溝面積比率の変化量〔例えば、Sc(N)−Sc(N−1)の絶対値、Ss(N)−Ss(N−1)の絶対値〕を小さくすることにより、繰り返し要素Rc,Rsの剛性を均一化し、ドライ路面での操縦安定性を改善することができる。その結果、ピッチバリエーションという枠組みの中でウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を同時に改善することが可能になる。
上記空気入りタイヤにおいて、センター領域Ceにおいて最短ピッチを有する繰り返し要素Rcの溝面積比率Sc(N)とセンター領域Ceにおいて最長ピッチを有する繰り返し要素Rcの溝面積比率Sc(1)との差〔Sc(N)−Sc(1)〕から求まるセンター領域Ceでの溝面積比率の最大差は1%〜4%であると良い。これにより、ウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を効果的に改善することができる。ここで、センター領域Ceでの溝面積比率の最大差が1%未満であるとウエット路面での操縦安定性の改善効果が低下し、逆に4%超であるとピッチが相対的に小さい繰り返し要素Rcの剛性が不足し、ドライ路面での操縦安定性の改善効果が低下する。
また、ショルダー領域Shにおいて最短ピッチを有する繰り返し要素Rsの溝面積比率Ss(N)とショルダー領域Shにおいて最長ピッチを有する繰り返し要素Rsの溝面積比率Ss(1)との差〔Ss(N)−Ss(1)〕から求まるショルダー領域Shでの溝面積比率の最大差は1%〜4%であると良い。これにより、ウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を効果的に改善することができる。ここで、ショルダー領域Shでの溝面積比率の最大差が1%未満であるとウエット路面での操縦安定性の改善効果が低下し、逆に4%超であるとピッチが相対的に小さい繰り返し要素Rsの剛性が不足し、ドライ路面での操縦安定性の改善効果が低下する。
センター領域Ce及びショルダー領域Shでの溝面積比率の最大差については、Sc(N)−Sc(1)=Ss(N)−Ss(1)とすることが可能であるが、Sc(N)−Sc(1)の値とSs(N)−Ss(1)の値とを互いに異ならせることも可能である。
Sc(N)−Sc(1)>Ss(N)−Ss(1)とした場合、ショルダー領域Shでは繰り返し要素Rsの溝面積比率の最大差〔Ss(N)−Ss(1)の絶対値〕が相対的に小さくなり、剛性の均一化が促進されるため耐偏摩耗性が良化する。
表2には、Sc(N)−Sc(1)>Ss(N)−Ss(1)とした場合のセンター領域Ce及びショルダー領域Shにおける繰り返し要素Rc,Rsのピッチと溝面積比率の具体例を示す。
Figure 0006424490
また、Sc(N)−Sc(1)<Ss(N)−Ss(1)とした場合、センター領域Ceでは繰り返し要素Rcの溝面積比率の最大差〔Sc(N)−Sc(1)の絶対値〕が相対的に小さくなり、剛性の均一化が促進されるためドライ路面での操縦安定性が良化し、ショルダー領域Shでは繰り返し要素Rsの溝面積比率の最大差〔Ss(N)−Ss(1)の絶対値〕が相対的に大きくなり、パターンノイズの周波数分散性が向上するためノイズ性能が良化する。
表3には、Sc(N)−Sc(1)<Ss(N)−Ss(1)とした場合のセンター領域Ce及びショルダー領域Shにおける繰り返し要素Rc,Rsのピッチと溝面積比率の具体例を示す。
Figure 0006424490
上記空気入りタイヤでは、タイヤ周上において、最長ピッチ〔即ち、Pc(1),Ps(1)〕を有する繰り返し要素Rc,Rsの数は最短ピッチ〔即ち、Pc(N),Ps(N)〕を有する繰り返し要素Rc,Rsの数よりも少ないことが望ましい。つまり、ピッチが相対的に小さい繰り返し要素Rc,Rsの溝面積比率を調整することでウエット路面での操縦安定性とドライ路面での操縦安定性を改善する効果を得ているため、最短ピッチを有する繰り返し要素Rc,Rsの数が最長ピッチを有する繰り返し要素Rc,Rsの数よりも多い配列において上述の構成を適用した場合に顕著な効果が得られる。
また、繰り返し要素Rc,Rsはピッチの長さがタイヤ周方向に沿って周期的に増減するように配列すると良い。例えば、ピッチPc(1)〜Pc(N),Ps(1)〜Ps(N)の長さがタイヤ周上で3〜5回増減を繰り返すような配列が良い。その際、ピッチの長さがタイヤ周方向に沿って一様に増加又は減少することは必ずしも要求されず、同じ長さのピッチが並ぶ場合を含んでいても良い。このような周期配列ではピッチが相対的に小さい繰り返し要素が局所的に集合することになるため、周期配列において上述の構成を適用した場合に顕著な効果が得られる。
上述した空気入りタイヤにおいて、センター領域Ce及びショルダー領域Shにおける各繰り返し要素Rc,Rsの溝面積比率は特に限定されるものではないが、例えば、20%〜40%の範囲、より好ましくは、25%〜35%の範囲に設定することが望ましい。これにより、ウエット路面での操縦安定性及びドライ路面での操縦安定性の改善効果を十分に確保することができる。
また、上述した空気入りタイヤにおいて、センター領域Ceにおける繰り返し要素RcのピッチPc(1)〜Pc(N)の値とショルダー領域Shにおける繰り返し要素RsのピッチPs(1)〜Ps(N)の値は互いに一致するものであり、その配列も同じである。しかしながら、センター領域Ce及びショルダー領域Shにおいて繰り返し要素Rc,Rsの配列を異ならせたり、或いは、センター領域CeのピッチPc(1)〜Pc(N)とショルダー領域ShのピッチPs(1)〜Ps(N)の値を異ならせたりすることは可能である。いずれの場合においても、Pc(1)/Pc(N)及びPs(1)/Ps(N)を1.2〜2.0の範囲、より好ましくは、1.3〜1.6の範囲に設定することが望ましい。
タイヤサイズ215/45R17で、トレッド部と一対のサイドウォール部と一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、トレッド部に、タイヤ周方向に延びる4本の主溝と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、センター領域及びショルダー領域に横溝を含む複数の繰り返し要素をタイヤ周方向に沿って反復的に形成し、これら繰り返し要素を5種類のピッチを含むピッチバリエーションで構成し、センター領域における各繰り返し要素の溝面積比率をピッチがより長いものから順番にSc(1)、Sc(2)、Sc(3)、Sc(4)、Sc(5)とし、ショルダー領域における各繰り返し要素の溝面積比率をよりピッチが長いものから順番にSs(1)、Ss(2)、Ss(3)、Ss(4)、Ss(5)としたとき、Sc(1)〜Sc(5)及びSs(1)〜Ss(5)の関係を表4のように設定した従来例、比較例及び実施例1〜7のタイヤを製作した。
最短・最長ピッチ数について、最長ピッチを有する繰り返し要素の数が最短ピッチを有する繰り返し要素の数よりも少ない場合を「最短>最長」にて示し、最長ピッチを有する繰り返し要素の数が最短ピッチを有する繰り返し要素の数よりも多い場合を「最短<最長」にて示した。また、配列について、繰り返し要素をピッチの長さがタイヤ周方向に沿って周期的に増減するように配列した場合を「周期」にて示し、繰り返し要素をピッチの長さがタイヤ周方向に沿ってランダムに増減するように配列した場合を「ランダム」にて示した。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により、ウエット路面での操縦安定性、ドライ路面での操縦安定性を評価し、その結果を表4に併せて示した。
ウエット路面での操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ17×7Jのホイールに組み付けて排気量1800ccの前輪駆動車に装着し、ウォームアップ後の空気圧(F/R)を230kPa/220kPaとし、ウエット路面において走行した際のパネラーによる官能評価を実施した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどウエット路面での操縦安定性が優れていることを意味する。
ドライ路面での操縦安定性:
各試験タイヤをリムサイズ17×7Jのホイールに組み付けて排気量1800ccの前輪駆動車に装着し、ウォームアップ後の空気圧(F/R)を230kPa/220kPaとし、ドライ路面において走行した際のパネラーによる官能評価を実施した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどドライ路面での操縦安定性が優れていることを意味する。
Figure 0006424490
この表4から判るように、実施例1〜7のタイヤは、ウエット路面での操縦安定性及びドライ路面での操縦安定性が同時に改善されていた。一方、比較例においては、センター領域及びショルダー領域において繰り返し要素の溝面積比率の変化量が一様であるため、ウエット路面での操縦安定性及びドライ路面での操縦安定性の改善効果が必ずしも十分ではなかった。
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
11 主溝
21,31,32,33,41,42 横溝
Ce センター領域
Sh ショルダー領域
Rc センター領域の繰り返し要素
Rs ショルダー領域の繰り返し要素

Claims (5)

  1. タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備えた空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッド部に、タイヤ周方向に延びる少なくとも2本の主溝と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝とを設け、前記主溝のうちタイヤ幅方向最外側に位置する一対の最外側主溝の中心線よりもタイヤ幅方向内側をセンター領域とし、前記最外側主溝の中心線から前記トレッド部の接地端までをショルダー領域としたとき、前記センター領域及び前記ショルダー領域に前記横溝を含む複数の繰り返し要素をタイヤ周方向に沿って反復的に形成し、これら繰り返し要素を少なくとも3種類のピッチを含むピッチバリエーションで構成し、そのピッチバリエーション数をNとし、前記センター領域における各繰り返し要素の溝面積比率をピッチがより長いものから順番にSc(1)、Sc(2)、・・・、Sc(N−1)、Sc(N)としたとき、Sc(2)−Sc(1)>Sc(3)−Sc(2)>・・・>Sc(N)−Sc(N−1)、かつ、Sc(1)<Sc(2)<・・・<Sc(N−1)<Sc(N)の関係を満足し、前記ショルダー領域における各繰り返し要素の溝面積比率をよりピッチが長いものから順番にSs(1)、Ss(2)、・・・、Ss(N−1)、Ss(N)としたとき、Ss(2)−Ss(1)>Ss(3)−Ss(2)>・・・>Ss(N)−Ss(N−1)、かつ、Ss(1)<Ss(2)<・・・<Ss(N−1)<Ss(N)の関係を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記センター領域において最短ピッチを有する繰り返し要素の溝面積比率Sc(N)と前記センター領域において最長ピッチを有する繰り返し要素の溝面積比率Sc(1)との差〔Sc(N)−Sc(1)〕から求まる前記センター領域での溝面積比率の最大差が1%〜4%であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記ショルダー領域において最短ピッチを有する繰り返し要素の溝面積比率Ss(N)と前記ショルダー領域において最長ピッチを有する繰り返し要素の溝面積比率Ss(1)との差〔Ss(N)−Ss(1)〕から求まる前記ショルダー領域での溝面積比率の最大差が1%〜4%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. タイヤ周上において、最長ピッチを有する繰り返し要素の数が最短ピッチを有する繰り返し要素の数よりも少ないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記繰り返し要素をピッチの長さがタイヤ周方向に沿って周期的に増減するように配列したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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