JP6424170B2 - 核磁気共鳴分析のための方法 - Google Patents

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Description

本発明は一般に、特に試料を分析するために使用される核磁気共鳴(NMR)技術に関する。本発明は有利には、例えば人体に由来する生物学的資料を分析するための医療分野に応用し、または化学的組成物を分析するための科学分野に応用する。自由誘導減衰(FID)信号の位相及び/または周波数の修正に関して特に有利である。1つの有利だが非限定的な応用例において、本発明は、アンテナアレイによって検出されるNMR信号を効率的に再結合するために使用されることとなる。
核磁気共鳴(NMR)は、約40年前に発見され、材料分析科学の多くの分野及び特に人体の体内観察に関する医療分野で、重要性が増大している。この発見の多くの応用例が実現されている。医療分野では、磁気共鳴画像化またはMRI及びNMR分光法により、体組織の組成を分析することが可能となった。本発明の範囲内で、分光法及び分光分析法という用語は、そのような技術は試料内の化学種の含有量を特定し及び/または定量化することを可能にするため、ほとんど同じ意味で使用される。
核磁気共鳴は、量子物理法則のみで完全に記述される、複雑な現象である。しかし、本発明及び先行技術を理解するためには、NMRによって実現される主要な現象を知ることができれば十分であり、簡単に後述する。ここで、NMRの全ての態様を取り扱う非常に豊富な技術的文献が存在することに注意すべきである。
典型的には1テスラ(T)またはそれ以上であるように、通常B0で表される強い磁場内に配置されると、いくつかの原子は、適切な周波数を有する電磁波によってかく乱されたときに分析可能な信号を返すような特定の特性を得る。
関連する原子は、ゼロでない磁気モーメントまたはスピンを有する原子核を伴うものである。医療分野では、人体の主要部を構成する水(H2O)の水素(H)がこの特性を有する。水分子は、ラーモア周波数と呼ばれる特定の周波数で軸の歳差運動により駆動される、ゼロでないスピンを有する2つの水素原子核または陽子を有する。強い外部静磁場に置かれると、原子核は外部磁場の方向またはその反対の方向のいずれかに配向したスピンを有するようになり、その一方で、外部磁場B0の強度に依存したラーモア周波数で歳差運動を受ける。水素原子について、ラーモア周波数は1テスラごとに42MHz(1メガヘルツ=10ヘルツ)だけ増加する。例えば0.1Tでは4MHz、1.5Tでは64MHz、14Tでは600MHzに近づく。
次いで、原子核は、電磁波または高周波(RF)によって、その周波数がラーモア周波数に近く、そのため好適にはこれらを共鳴させるため、より容易に全てかく乱することができる。かく乱は、外部磁場B0によって許される他の方向に切り替えられる場合があるまで、スピンの配向を変化させる効果を有する。これは、配向が平行または反平行であり、一方から他方に切り替えられることを意味する。通常B1で表されるかく乱電磁波の磁気誘導は、B0に対して垂直に印加され、原子核のスピンを切り替える。そのような切替及び安定状態へ戻ることまたは緩和は、全てのNMR装置において検出される電気信号を発生させる。この信号は通常、自由誘導減衰(FID、free induction decay)と呼ばれる。
電磁かく乱B1は、アンテナと通常呼ばれる電気コイルを使用して印加される。コイルまたはアンテナは、一般に、かく乱の印加、及び原子核の安定状態に戻る間に発生する電気信号の検出の両方に使用される。この目的のために、これらは一方では電流をラーモア周波数で制御された時間だけ循環させることができ、分析対象物の領域に電磁波及びかく乱場B1を発生させる電子回路と、他方では電磁かく乱が中断された後に原子核が安定状態に戻ることによって発生する電気信号を検出することを可能にする電子回路と、関連付けられる。これらのアンテナで検出されなければならない電気信号は通常低く、または非常に低く、これらを、使用される電気機器の固有のノイズのレベルから識別することは困難であることに注意すべきである。信号対ノイズ比(SNR)はいかなるNMR装置の電気的検出部においても、鍵となる基準である。考えられる応用例によって使用可能となるように、ノイズよりも高いレベルで信号を検出することができる程度に十分高くなければならない。
図1を参照しながら、より詳細に後述するように、既知の技術は、試料の分光分布を得るために、FID複素数信号のフーリエ変換の実施を含む。そのような分光分布は、基準信号の周波数及び強度を、特定する代謝産物の信号のそれと比較することを可能にする。
基準信号は通常、試料内の主要な化学種に対応する。生物学的試料を分析する場合、基準信号は通常水の信号である。
水の信号の周波数及び強度を、特定しようとする代謝産物の信号のそれと比較することで、試料内の代謝産物の性質及び含有量を特定することが可能となる。
この技術は世界的に評価されている。それでもなお、理論的位置に対する位相及び周波数の点で、得られた基準信号が正確に位置することを必要とする。このとき基準信号は「共鳴している」と言われる。この目的のために、受信器、典型的にはコイルの変換周波数を、基準信号の共鳴周波数に正確に設定しなければならない。
ここで、多くのパラメータが、得られた基準信号を理論的位置から遠ざける周波数シフトを示す傾向にある。
後述するように、そのようなシフトは少なくとも部分的には、実際には受信器によって使用される復調周波数と基準信号の実際の周波数との間に存在する差異に起因する。
そのため、既知の技術は、使用に先立って、複素数FID信号の位相及び周波数を手動で修正する必要がある。そのような修正ステップは、比較的時間を要し、面倒である。
さらに、他の手動の修正操作は、基準信号の位相の再整合を含む。実際には、受信器によって使用される信号の位相と基準信号の位相との間には、実際上ランダムなオフセットが必ず存在する。これは、複素数FID信号を表す場合に、FIDの第1の点が一般には実部でないという事実によって示される。
さらに、通常ボクセルで示される試料のいくつかの実在の体積からの信号が得られる場合には、場B0の不均一性が、位相シフト及び周波数オフセットを招くこともある。
さらに、位相シフト及び周波数オフセットはまた、複数のアンテナの使用によっても発生する。実際には、数十年の開発の間において、アンテナ構造は顕著に進歩したことが知られており、NMR装置の研究及び開発は、現在では人体の所定の領域を分析するための複数のアンテナの使用を促進する傾向にある。そのような複数のアンテナは一般的には同一であり、小型であり、同一の分析領域を覆う単一のアンテナで得られるよりも顕著に良好なSNRを有する合成信号を得ることができるように、個別に検出された信号が結合される。さらに、複数のアンテナを使用することで、一般的に、取得の速度を増加させる一方で、良好なSNRを保つこととなり、これは試料が生体に属し、そのため通常は完全に静止していない場合に不可欠であることが分かる。この種類のアンテナは「フェーズドアレイアンテナ」と呼ばれ、電子機器の複雑さ及びアレイ内の各アンテナによって個別に生成された信号を処理するコンピュータの複雑さが顕著に増大するという特徴がある。実際には、アンテナアレイの予期される改善を実際に得るために補償されなければならいアンテナ間の不可避の幾何学的、物理的及び電気的差異があっても、信号を効率的に再結合することが可能でなければならない。特許文献1は、いくつかのコイルによってもたらされるFID信号の再結合のための解決手段を開示している。
そのため、本発明の目的は、コイルなどのアンテナによって検出されるNMR信号の位相及び/または周波数の修正を簡略化し、改善するための方法を提供することを含む。
さらに、既知の方法に対して、得られる信号のSNRを改善することが特に有利である。
また、1つまたは複数のアンテナによって個別に検出されたNMR信号の再結合を、既知の装置を顕著に複雑化させることなく改善するための解決手段を提供することが特に有利である。
他の利点は、具体的にはいくつかの受信コイルを使用するNMR装置の複雑さを簡略化するための解決手段を提供することを含む。
本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の説明および添付された図面を読むことによって明らかになるであろう。他の利点も統合され得ることは理解されるべきである。
米国特許出願第2004/0095139号明細書
1つの実施形態によれば、本発明は、特性決定すべき少なくとも1つの化学種及び基準化学種を含む少なくとも1つの試料の核磁気共鳴(NMR)を使用する分光分析のための方法に関し、試料内の含有量は、特性決定すべき少なくとも1つの化学種の含有量よりも2倍超多く、本方法は、
a.1つの一定の場Bを少なくとも1つの試料に印加する段階と、
b.1つまたは複数のアンテナによって1つまたは複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号S(t)を取得する段階であって、各FID複素数信号S(t)が、実部及び虚部を含み、取得する段階が、各複素数FID信号S(t)において基準化学種の信号強度が特性決定すべき少なくとも1つの化学種の信号強度よりも少なくとも2倍大きい、1つまたは複数のFID信号S(t)を取得する段階と、を含み、本方法はまた、少なくとも、
c.各複素数FID信号S(t)に関して、各複素数FID信号の絶対値を抽出する段階を含むことを特徴とする。
好適な実施形態によれば、本方法は、フーリエ変換を、FID絶対値を考慮に入れる信号に適用する後続の段階を含む。この段階は任意選択的である。これにより、試料の分光表現を生成することができる。他の実施形態によれば、信号は時間領域で保存される。そのような他の実施形態は、例えばCSIによって代謝マップを生成するように選択されるであろう。複素数自由誘導減衰(FID)信号はそれぞれ、基準化学種に関連するデータを含む。そのため、FID絶対値を生成する前に、本発明に従う方法は、基準化学種の信号を保持する。そのため、好適には、本発明はFID絶対値を抽出する前に、基準化学種の完全な除去を行わない。部分的抑制は可能であるが、基準化学種信号の強度はFID絶対値を抽出する前は、特性決定される化学種の信号の強度の2倍より少なくとも大きくなければならない。
次いで、基準化学種の信号は特性決定される化学種の信号のキャリアとして使用される。そのため、特性決定される化学種の信号の位相情報は、絶対値を考慮に入れるとしても、保存される。
そのため本発明では、基準化学種の信号、典型的には水の信号が得られるとすぐに、実部及び虚部は省略することができる。ついで、基準化学種の信号は絶対値を考慮に入れることによって、信号の位相を修正した後に抑制されまたは大きく低減することが可能である。
本発明に従う方法を適用することにより、対称的なスペクトルが、主要な化学種、試料が生物学的組織である場合には典型的には水の周波数に対応する周波数のいずれの側においても得られる。
アンテナによって得られた情報(位相情報)のいくつかが、FID絶対値を考慮する際に抑制されるにもかかわらず、信号の最終的な信号対ノイズ比(SNR)は完全に満足できる状態を保つ。本発明の開発の範囲において、この情報の損失はSNRの非常に有害な低下につながると予測された。非常に満足すべきSNRを得ることは、キャリアを有する信号及び特性決定すべき化学種を表す弱い信号における絶対値を考慮する一方で、本発明に従う段階の順列によって可能となる位相シフト及び周波数オフセットの自動的な排除により、情報の損失の大部分が補償されるという事実に恐らく起因する。実際には、本発明により、特にFIDの間の試料の動き、場B0の不均一性及びいくつかのアンテナによって得られる範囲内での様々なアンテナのふるまいの不可避の変化に起因する位相シフト及び周波数オフセットを自動的に修正することが可能となる。
そのため、得られるスペクトルは、試料の化学種を特定し、非常に容易に特性決定するために使用される。
特に有利には、本発明はまた具体的には位相及び周波数の修正専用の追加的な段階の必要性を排除し、そのような段階は通常は顕著な処理時間、多くの場合は作業者による手動の動作さえも必要とする。
さらに、処理されるデータの量は、複素数信号が信号の位相シフトを計算するために必要である場合に従来処理しなければならない量の半分である。さらに、絶対値は、2つの数の和の平方根を取るのに十分であるため、実部において計算することができ、それぞれが平方化され、その一方位相計算は複素数と共に働く必要があり、これは実現がより困難である。処理の時間及びコストは顕著に減少し、作業者による手動の動作はもはや必要でないという事実により、使用者に影響することなくリアルタイム自動処理が可能になる。
そのため本発明は、正確性、信頼性、再現性、処理時間及びコスト低減に関して顕著な利点をもたらす。
任意選択的に、しかし有利に、本発明に従う方法はまた、単独でまたは組み合わせて用いられうる以下の任意選択の段階及び特徴の少なくとも1つを含んでもよい。
一実施形態によれば、本方法は、各複素数FID信号S(t)の絶対値の抽出後に、各複素数FID信号S(t)の絶対値から、特性決定すべき少なくとも1つの化学種の性質及び含有量を特定する段階を含む。
一実施形態によれば、本方法は、各複素数FID信号S(t)の絶対値の抽出後であって、各複素数FID信号の絶対値の特性決定から、少なくとも1つの化学種の性質及び含有量を特定する前に、フーリエ変換をこのFID絶対値を考慮に入れた信号に適用する段階を含む。
一実施形態によれば、溶媒内の基準化学種の含有量は、特性決定される各化学種の含有量よりも少なくとも5倍よりも大きく、好適には10倍、好適には10倍、より好適には10倍である。本発明において、特性決定される少なくとも1つの化学種の含有量は、試料内の質量含有量である。一実施形態によれば、基準化学種の信号は特性決定される少なくとも1つの化学種の信号に関するキャリアとして使用される。一実施形態によれば、試料内の基準化学種の含有量は、特性決定される少なくとも1つの化学種の信号に関するキャリアとして使用される基準化学種の信号に関して、試料内で特定決定される化学種の含有量よりも十分高い。基準化学種は共鳴周波数を有する。
1実施形態によれば、基準化学種及び特性決定される少なくとも1つの化学種の相対的含有量は、その相対的な緩和時間とともに、基準化学種の信号強度が、特性決定される少なくとも1つの化学種の1つの強度の少なくとも2倍であるように選択される。そのため試料は、取得された複素数FID信号S(t)のそれぞれにおいて、化学種の基準信号の強度が、特性決定される少なくとも1つの化学種の信号強度の少なくとも2倍であるように選択される。好適には、試料は、取得されるFID複素数信号S(t)のそれぞれにおいて、基準化学種の信号の強度が、特性決定される化学種のそれぞれの信号強度よりも少なくとも3倍、またさらには少なくとも5倍、またさらには少なくとも10倍大きい。
特性決定される化学種を含む試料のFID絶対値は、
Figure 0006424170
に等しく、以下の数式で定義される。
Figure 0006424170
ここで、Δω=ω−ωH2O及び
Figure 0006424170
は、特性決定する少なくとも1つの化学種と基準化学種との間の周波数オフセット及び位相シフトにそれぞれ対応し、AH2O(t)は、基準化学種からの時間に対するFID信号の強度であり、A(t)は特性決定する化学種の時間に対するFID信号の強度である。
一実施形態によれば、取得する段階において、試料のいくつかのボクセルによって与えられる複素数FID信号S(t)が取得され、各ボクセルの複素数FID信号S(t)の絶対値を計算した後に、空間フィルタリング段階が実行される。
そのような各段階の順列(絶対値の計算及び空間フィルタリング)により、SNRを顕著に改善することが可能である。そのため本発明は、CSIの範囲内で顕著な利点を提供する。
有利な実施形態によれば、取得段階において複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号が取得される。
有利には、複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号の各複素数自由誘導減衰(FID)のためのFID絶対値を発生させる段階の後に、FID絶対値の合計が実行されて、結合FID信号を得る。
有利には、前述のフーリエ変換が、結合FID信号に適用される。
取得段階は、好適には、複素数FID信号の各スペクトル表現において、基準化学種の信号の強度が好適には、特性決定される少なくとも1つの化学種の信号の強度の少なくとも2倍であるように実施される。
1つの有利な実施形態によれば、アンテナはコイルであり、取得される複素数FID信号は同じコイルによってもたらされる。この実施形態において、有利には、本発明によって、特に取得中の試料の動きに起因する位相シフト及び周波数オフセットの効率的かつ簡便な修正が可能となる。有利な実施形態によれば、アンテナはコイルであり、取得される複素数FID信号は、異なるコイルによってもたらされる。この実施形態において、有利には、本発明によって互いに対する位相シフト、また特に場B0の不均一性に起因する位相シフト及び周波数オフセットの効率的かつ簡便な修正が可能となる。
有利な実施形態によれば、アンテナはコイルであり、取得される複素数FID信号は異なるコイルによってもたらされる。この実施形態において、本発明により、有利には、互いに、また特に磁場B0の不均一性に起因する位相シフト及び周波数オフセットに対する各コイルの位相シフトの効果的で簡便な修正の実行が可能となる。
1つの有利な実施形態によれば、アンテナはコイルであり、取得される複素数FID信号は異なるコイルによってもたらされ、いくつかの複素数FID信号が少なくともいくつかのコイルに関して取得される。この実施形態において、本発明は有利には、特に試料の動き及びB0の不均一性に起因する位相シフト及び周波数オフセットの効率的かつ簡便な修正が可能となる。
有利には、各複素数FID信号に関してFID絶対値を生成した後、かつ結合FID信号を得るためにFID絶対値の合計を行う前に、各コイルに関する重み付け因子を計算する段階が実行され、各FID絶対値が、それによって得られたコイルの重み付け因子によって重み付けされる。重み付け因子を計算する段階は、有利にはFID絶対値の開始時において、強度の二乗を合計する方法を用いて実行される。
一実施形態によれば、取得段階において、単一の複素数自由減衰誘導(FID)信号S(t)が取得され、フーリエ変換が、絶対値をそのような単一の複素数FID信号から抽出することによって得られたFID絶対値に適用される。
一実施形態によれば、取得段階において、空間的に符号化されたFID信号が取得され、複数の符号化された信号を得るために、この取得は複数回、好適には少なくとも2回繰り返され、この符号化された信号のそれぞれは、次に復号化され、試料のボクセルと関連付けられ、FID絶対値が各ボクセルに関連するFID信号に関して生成される。
好適には、取得段階において、複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号が取得される。そのような複素数FID信号は、試料の複数のボクセルの位置に依存して空間的に符号化し、これらの複素数信号は各ボクセルに関連するFID信号を得るために復号化され、FID絶対値が、各ボクセルに関連するFID信号に関して生成される。
一実施形態によれば、試料は生物学的材料の試料であり、基準化学種は水であり、特性決定される化学種は代謝産物である。代替的な実施形態によれば、試料は化学的複合物であり、基準化学種は水またはその他の溶媒であり、特性決定すべき化学種は化学的組成物である。
一実施形態によれば、試料は特性決定されるいくつかの化学種を含む。
一実施形態によれば、一定の場B0は試料のいくつかのボクセルに印加され、異なるボクセルの結合FID信号の周波数スペクトルは1つまたは複数の分光画像を生成するために使用される。
FID信号の取得に先立ち、NMR分光試行を実施するために必要な設定の従来の段階が実行される。
特定の実施形態によれば、絶対値の計算に先立ち、1つまたは複数のアンテナによって1つまたは複数の複素数FID信号S(t)を取得する段階の後に、以下の段階が実行される。
−フーリエ変換を少なくとも1つの複素数FID信号S(t)の実部及び複素数部に適用することによってFIDスペクトルS(ω)を得る段階であって、得られたFIDスペクトルS(ω)は基準化学種及び特性決定される化学種を含み、それぞれが基準化学種の共鳴周波数(F0Ref)からF0Refのそれぞれの側方に延びる2つの位置(UFR、DFR)を有し、特性決定される化学種の周波数が前述の2つの位置(UFR、DFR)の間に取られるスペクトルの第1の位置に位置する、FIDスペクトルS(ω)を得る段階、
−少なくとも1つの複素数FID信号S(t)の実部及び複素数部から基準化学種の信号Sref(t)をモデル化する段階、
−フーリエ変換を基準化学種の信号Sref(t)のモデルに適用することによって基準化学種のスペクトルSref(ω)を得る段階であって、基準化学種のスペクトルSref(ω)が、スペクトルSref(ω)の基準化学種の共鳴周波数(F0Ref’)から延び、F0Ref’の側方にそれぞれ伸びる2つのスペクトル位置を有する、基準化学種のスペクトルSref(ω)を得る段階、
−FIDスペクトルS(ω)の第2の部分を減算することにより修正されたFIDスペクトル
Figure 0006424170
を得る段階(1324)であって、この第2の位置が、スペクトルSref(ω)のF0Ref’から延びるスペクトルの2つの部分から取られ、スペクトルS(ω)の前述の第2の部分と同じ側に延びるスペクトルSref(ω)の一部によって、スペクトルS(ω)の前述の2つの位置(UFR及びDFR)から取られ、特性決定される化学種を含まない位置である、修正されたFIDスペクトルを得る段階、
−時間領域で修正されたFID信号
Figure 0006424170
を得るために、逆フーリエ変換を、修正されたスペクトル
Figure 0006424170
に適用する段階、
−修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階、及び
−修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値から、特性決定する化学種の特定及び/または定量化を行う段階。
このとき、特性決定される化学種の特定及び/または定量化の段階は、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値から実行可能である。
本発明は、改善されたSNRを得ることができる。実際には、絶対値を考慮に入れることにより、特にFIDにおける試料の移動、場B0の不均一性及びいくつかのアンテナによる取得の範囲における様々なアンテナの挙動の不可避の変化に起因する位相及び周波数のシフトを自動的に修正することが可能になる。基準化学種の信号は、特性決定される化学種の信号に関するキャリアとして使用され、後者の位相情報は絶対値を考慮に入れるにもかかわらず保存される。
そのため得られたスペクトルによって、試料の化学種を特定し、非常に容易に特性決定することが可能となる。
さらに、基準化学種のモデル化に起因するスペクトルSref(ω)の一部によるスペクトルS(ω)の一部の置き換えにより、特性決定される化学種を含まないその部分におけるノイズを有さない修正されたスペクトル
Figure 0006424170
を得ることができる。次いで、絶対値が計算される信号
Figure 0006424170
は、特性決定される化学種を含むスペクトルの一部S(ω)からのノイズのみを有する。そのため、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値の計算を実行する前述の段階によって、絶対値を考慮に入れつつスペクトルS(ω)の2つの部分によって最初に実行されるノイズの重畳を防ぐことができる。そのため、絶対値を考慮に入れる際に避けられない欠点がこれらの段階によって限定され、または排除さえされるので、得られる信号のSNRは顕著に改善する。
さらに、周知の解決手段と比較して、本発明の絶対値によれば、特に位相及び周波数修正専用の追加的な段階を必要としないことができ、そのような段階は通常顕著な処理時間及び、通常は作業者による手動動作さえ必要とする。
本方法は、試料の分光法/分光分析核磁気共鳴(NMR)分析の範囲内で特に有利である。これは、試料の化学種を容易に特定し及び/または定量化することを可能にする。
有利な実施形態によれば、本方法は、FID信号S(t)の絶対値を計算する段階1314及び、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値の計算後であって、特性決定される化学種を特定し及び/または定量化する段階の前に実行される以下の、
−修正されたFID信号絶対値
Figure 0006424170
から信号S(t)の絶対値を減算し、次いで修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値から、前の段階で得られた結果を減算する段階、または
−フーリエ変換を信号S(t)の絶対値及び修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値に適用し;修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値のスペクトルから信号S(t)の絶対値のスペクトルを減算し;次いで前述の段階で得られた結果を修正されたFID信号
Figure 0006424170
のスペクトルから減算する段階、のいずれかの段階を含む。
従って、第1の減算は、「修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する」段階の後に、修正された信号
Figure 0006424170
に存在する「サイドバンド」を分離することと等価であり、その一方これらは以前に信号S(t)の絶対値を考慮することによって取り除かれている。第2の減算に関して、修正されたFID信号
Figure 0006424170
のサイドバンドを排除することが可能になる。そのため、本発明によって、サイドバンド及びより一般的には全ての反対称アーティファクトを効率的に排除することが可能となり、アーティファクトは、基準信号の共鳴周波数に対して対称に分布する周波数を有し、その強度は等しく、反対の符号を有する。
一実施形態によれば、取得段階において、試料のいくつかのボクセルから複素数FID信号S(t)が取得され、空間フィルタリングの段階が、各ボクセルに対して修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算した後に実行される。
1つまたは複数のコイルによってこれらが取得されるか否かによらず、CSIが考慮されるため、空間フィルタリングが適用可能である。
典型的には、空間フィルタリングは、2つの空間次元を有するCSIの場合には、以下の段階、空間領域におけるフーリエ変換に先立って、CSI行列の各行及び各列を、「ベル」(例えばガウシアン、コサイン、ハニング窓関数、ハミング窓関数など)関数を用いて乗算する段階を含む。これは、空間フィルタリングが絶対値の計算後に実行されることが望ましい場合には、k空間に戻るために、逆フーリエ変換が空間領域において実行されるためである。
これは、特定のCSIの範囲で重要な利点を表している。実際には、空間フィルタリングが絶対値処理後になされると、CSIのボクセルのスペクトルは、位相及び周波数で整列される。対称的に、空間フィルタリングが絶対値抽出前に実行されると、関心のあるボクセルは、位相及び周波数で整列されず、得られるスペクトルの分解能が低下する可能性があり、そのためSNRの低下につながる。ここで、CSI分析は、複数のボクセルの処理を伴い、例えば複数のスペクトルを結果として取得し、これらはそれぞれ1つのボクセルまたは2次元画像に、例えば対応することに注意すべきである。
1つの有利な実施形態によれば、取得段階において、単一の複素数FID信号S(t)が取得され、固有のFIDスペクトルS(ω)が、フーリエ変換をこの単一のFID信号S(t)の実部及び複素数部に適用することによって得られる。特性決定される化学種を特定及び/または定量化する段階において、フーリエ変換が修正されたFID信号
Figure 0006424170
の単一の絶対値に適用される。
一実施形態において、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階の後であって、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値から、特性決定される化学種を特定及び/または定量化するために、フーリエ変換は、一実施形態によれば、少なくとも修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を含む信号に適用可能である。好適にはFFTが修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値に適用される。次いでスペクトルが得られ、作業者にとっても、その周波数によって化学種を特定し、それらが画定するピーク面積によって定量化することは非常に容易である。試料が複数のボクセルを含む場合、ボクセルあたり1つのスペクトルが得られることとなる。
修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階の後であって、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値から、特性決定される化学種を特定及び/または定量化するために、少なくとも修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を含む信号にフーリエ変換を適用することを、別の実施形態によれば、避けることができる。このとき、特定及び/または定量化は時間領域で実行される。この場合、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を近似できるように、周知のソフトウェアによって、要素FIDを合計することができ、これらはそれぞれ化学種に対応する。修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を最もよく再構築するために、選択された要素FID及びこれに関連する係数は、試料内に存在する化学種の性質及び量についての情報を与える。ここで、定量化のそのような段階が時間領域で実行されたとしても、結果を可視化できるように、フーリエ変換を実行することが通常望ましい。
一実施形態によれば、特性決定する化学種を、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値から特定及び/または定量化する段階において、フーリエ変換が、少なくとも修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を含む信号に適用される。
一実施形態によれば、取得段階において、複数の複素数FID信号S(t)が取得される。
一実施形態によれば、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階は、修正されたFID信号
Figure 0006424170
のそれぞれについて実行される。
一実施形態によれば、各複素数FID信号S(t)に関して修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階の後であって、特性決定される化学種の特定及び/または定量化の段階の前に、結合FID信号を得るために、修正された信号
Figure 0006424170
の絶対値の合計が実行されてもよい。有利には、特性決定される化学種を特定及び/または定量化する段階は、この合計にフーリエ変換を適用することを含む。有利には、特性決定される化学種の特定及び/または定量化の段階は、フーリエ変換をこの合計に適用することを含む。
一実施形態によれば、アンテナはコイルであり、取得される複素数FID信号S(t)は、異なるコイルによってもたらされ、取得段階において、試料のいくつかのボクセルによってもたらされる複素数FID信号S(t)が取得される。各ボクセルについて修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値の計算を完了した後に、空間フィルタリングの段階が実行される。
他の態様によれば、本発明はまた、命令を含むコンピュータプログラム製品に関し、少なくとも1つのプロセッサによって実行される場合には、以下の、
−1つまたは複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号を受け取る段階であって、各複素数FID信号が実部及び虚部を含み、各複素数FID信号において、基準化学種の信号の強度が特性決定される少なくとも1つの化学種の信号の強度の少なくとも2倍大きい、FID信号を受け取る段階と、
−各複素数FID信号の絶対値を計算、または各複素数FID信号に関して修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階と、を実行する。
他の実施形態において、本発明は、特性決定される少なくとも1つの化学種及び溶媒から取られた基準化学種を含む少なくとも1つの試料についての核磁気共鳴(NMR)分光システムに関し、試料内の基準化学種の含有量が、特性決定される少なくとも1つの化学種の値の少なくとも2倍大きい。このシステムは、時間領域で、1つまたは複数の複素数自由減衰誘導(FID)信号を取得する(310)ように構成された少なくとも1つのアンテナを含み、各複素数FID信号は、少なくとも1つの試料に対して少なくとも1つの場B0を印加することによって生成され、実部及び虚部を含み、本システムは、各複素数FID信号に関して各複素数FID信号の絶対値を計算するように構成された処理手段を含むことを特徴とする。
任意選択的ではあるが有利には、本発明に従うシステムはまた、単独でまたは組み合わせて用いられうる以下の任意選択的な特徴の少なくともいずれか1つを有してもよい。
システムはまた、一定の場B0を試料に印加するための手段と、一定の場B0に電磁励起を発生させる場を印加するための手段と、を含む。
一実施形態によれば、アンテナはコイルであり、取得される複素数FID信号S(t)は異なるコイルによってもたらされ、システム処理手段は、
取得段階において、試料のいくつかのボクセルによってもたらされる複素数FID信号S(t)が取得され、
空間フィルタリング段階が、各ボクセルに関して修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算した後に実行される、ように構成される。
一実施形態によれば、本システムは、上述の段階を実行し、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値の計算を完了するように構成された処理手段を含む。
1つの代替的な実施形態によれば、本システムは、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値から複素数FID信号S(t)の絶対値を減算する段階1351、次いで修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値から前述の段階で得られた結果を減算する段階1354を実行するように構成された処理手段を含む。
1つの代替的な実施形態において、本システムは、複素数FID信号S(t)の絶対値及び修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値にフーリエ変換を適用する段階と;次いで修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値のスペクトルから信号S(t)の絶対値のスペクトルを減算する段階と;次いで修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値のスペクトルから、前述の段階で得られた結果を減算する段階と、を実行するように構成された処理手段を含む。
本発明において、アンテナとの用語は、任意の種類の電磁波受信器を指す。
他の実施形態において、本発明は、特性決定される少なくとも1つの化学種及び水または溶媒から取られた基準化学種を含む少なくとも1つの試料の核磁気共鳴分析(NMR)の方法に関し、溶媒内の基準化学種の含有量は、特性決定される少なくとも1つの化学種の内容物の少なくとも2倍大きい。本方法は、以下の、
a.少なくとも1つの一定の場Bを少なくとも1つの試料に印加する段階と、
b.1つまたは複数のアンテナによって、1つまたは複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号S(t)を取得する段階であって、各FID複素数信号S(t)が実部及び虚部を含み、取得する段階が、各複素数FID信号S(t)において、基準化学種の信号の強度が特性決定される少なくとも1つの化学種の信号の強度よりも少なくとも2倍大きい、FID信号を取得する段階と、
c.各複素数FID信号S(t)に関して各複素数FID信号S(t)の絶対値を計算する段階と、
d.任意選択的に、FID絶対値を考慮に入れた信号にフーリエ変換を適用する段階であって、任意選択である、段階と、を含む。
上述の特徴の全ては、この実施形態と結合してもよい。
他の実施形態によれば、本発明は核磁気共鳴を用いて分析する方法に関し、少なくとも1つの試料が、特性決定する少なくとも1つの化学種及び基準化学種を含み、試料内の基準化学種の含有量が、特性決定する少なくとも1つの化学種の含有量の2倍より多く、本方法は、以下の、
a.少なくとも1つの一定の場Bを少なくとも1つの試料に印加する段階と、
b.1つまたは複数のアンテナによって、1つまたは複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号S(t)を取得する段階であって、各FID複素数信号S(t)が実部(140)及び虚部(150)を含む、1つまたは複数のFID信号S(t)を取得する段階と、を含み、
本方法はまた、少なくとも以下の、
c.フーリエ変換を少なくとも1つの複素数FID信号S(t)の実部及び複素数部に適用することによってFIDスペクトルS(ω)を得る段階であって、得られたFIDスペクトルS(ω)が基準化学種及び、基準化学種の共鳴周波数(F0Ref)からF0Refのそれぞれの側にそれぞれ延設する2つの部分(UFR、DFR)を有する、特性決定される化学種を含み、特性決定される化学種の周波数が前述の2つの部分(UFR、DFR)の間に取られたスペクトルの第1の部分に位置する、FIDスペクトルS(ω)を得る段階と、
d.少なくとも1つの複素数FID信号S(t)の実部及び複素数部からの基準化学種の信号Sref(t)をモデル化する段階と、
e.フーリエ変換を基準化学種の信号Sref(t)のモデル化に適用することによって基準化学種のスペクトルSref(ω)を得る段階であって、基準化学種のスペクトルSref(ω)が、スペクトルSref(ω)の基準化学種の共鳴周波数(F0Ref’)からF0Ref’のそれぞれの側にそれぞれ延設する2つのスペクトル部分を有する、スペクトルSref(ω)を得る段階と、
f.FIDスペクトルS(ω)の第2の部分を、スペクトルSref(ω)のF0Ref’から延設するスペクトルの2つの部分から取られ、スペクトルS(ω)の前述の第2の部分と同じ側に延設するスペクトルSref(ω)の部分によって置き換えることによって修正されたFIDスペクトル
Figure 0006424170
を得る段階であって、前述の第2の部分が、スペクトルS(ω)の前述の2つの部分(UFR及びDFR)から取られ、特性決定される化学種を含まない部分である、修正されたFIDスペクトルを得る段階と、
g.逆フーリエ変換を修正されたスペクトル
Figure 0006424170
に適用して、時間領域で修正されたFID信号
Figure 0006424170
を得る段階と、
h.修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階と、を含むことを特徴とする。
前述の特徴の全ては、この実施形態と組み合わせることができる。
他の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つのプロセッサによって実行される際に、前述の方法の少なくとも段階cからhを実行する命令を含む、コンピュータプログラム製品または非一時コンピュータ可読媒体に関する。
本発明の特徴及び利点とともに目的及び対象は、以下の添付された図面によって示される実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
既知のNMR装置の任意のアンテナによって検出されるFID信号の種類を簡単に示す。 FID信号を処理する本発明の方法及び従来の処理を、単一のアンテナ及びFID信号の単一の取得の場合から比較する。 いくつかの取得が連続的に実施され、処理するのに十分なSNRを有するFID信号を得る場合を示す。 FID信号の処理に関する絶対値を使用する利点を示す試行結果を比較する。 複数のボクセルを含む組織の体積の分光画像が取得される場合を示す。 人間の脳内の異なる場所に位置する2つのボクセルに関して得られた試行結果を比較する。 FID信号がアンテナアレイから取得される場合を示す。 アンテナアレイから取得されたFID信号を処理するための本発明の方法の各段階を示し、それを従来の処理のものと比較する。 アンテナアレイから得られた試行結果を比較する。 NMR信号を処理するための絶対値の使用に起因するアーティファクトのエイリアシングを示す。 NMR信号を処理するための絶対値の使用に起因するアーティファクトのエイリアシングを示す。 本発明の1つの実施形態による方法、いわゆるDFRR方法を示し、基準化学種(水)のモデルがスペクトルの半分に関して置換される。 本発明の1つの実施形態による方法、いわゆるDFRR方法を示し、基準化学種(水)のモデルがスペクトルの半分に関して置換される。 本発明の1つの実施形態による方法、いわゆるDFRR方法を示し、基準化学種(水)のモデルがスペクトルの半分に関して置換される。 本発明の1つの特定の実施形態に従う、反対称なアーティファクトまたは「サイドバンド」の処理を示す。 本発明の1つの特定の実施形態に従う、反対称なアーティファクトまたは「サイドバンド」の処理を示す。 本発明の1つの特定の実施形態に従う、反対称なアーティファクトまたは「サイドバンド」の処理を示す。 本発明の1つの特定の実施形態に従う、反対称なアーティファクトまたは「サイドバンド」の処理を示す。 本発明の1つの特定の実施形態に従う、反対称なアーティファクトまたは「サイドバンド」の処理を示す。 本発明の1つの特定の実施形態に従う、反対称なアーティファクトまたは「サイドバンド」の処理を示す。 本発明に従うFID信号における、位相及び/または周波数を修正するための、本方法の1つの実施形態の段階のフロー図である。 本発明の方法の異なる実施形態で得られたノイズシミュレーション結果を示す。 水の抑制のない、脳における長エコーCSI取得の同一のボクセルから抽出されたスペクトルを示す。 部分的に水を抑制した、脳において実施された短エコーCSI取得の同一のボクセルの2つのスペクトルを示す。 ファントムにおいて短エコーCSI取得における空間フィルタリングの前後で絶対値が処理される場合に達成可能な差を示す。 脳における前述の図と同じ図を示す。 脳の長エコーCSI取得における空間フィルタリングの前後で絶対値の処理を適用する影響を示す。 まずファントムにおいて、次に患者に対して実施したCSI取得の前述の図の1つと同じ効果を示す。 まずファントムにおいて、次に患者に対して実施したCSI取得の前述の図の1つと同じ効果を示す。 本発明による方法の1つの実施形態の段階のフロー図を示す。 本発明の方法を効果的に実装するために、取得の間基準信号の少なくとも一部を保存する必要性を示す。
添付の図面は例として挙げるものであり、本発明を限定するものではない。
図1は、NMR装置の任意のアンテナによって検出される信号の種類を簡単に示している。信号は、一定の磁場B0では安定している水素原子核または陽子をかく乱するために使用される電磁パルスB1の各放射後に観察されうる。前述のように、使用されるRF周波数は、好適には、考慮するNMR装置によって発生する磁場B0の強度に関して、陽子のラーモア周波数で共鳴するべきであり、磁場B0が大きくなるにつれて全て高くなる。前述のように、これは1テスラあたり42MHzだけ大きくなる。
検出されるNMR信号は、FID(自由誘導減衰、free induction decay)信号と呼ばれる。これは、印加された電磁かく乱が終了した後に原子核の安定状態へ戻ることを表している。説明されず、本発明を理解するうえで必要でない従来の手段を使用することで、取得されるFID信号はアンテナ110によってカバーされる領域の要素体積単位によってもたらされる。そのような要素はボクセル110と呼ばれる。ボクセルの物理的な大きさは、使用されるNMR装置の体積分解能に依存する。
アンテナによって得られる信号は、通常は主にアナログ増幅器121及び2つのアナログデジタル変換器(ADC)124を含む電子受信器120によって処理される。実際には、増幅後に、アンテナ122によって取得されたFIDアナログ信号の周波数変換及び直交検出が、90°オフセットした信号から、通常行われる。周波数変換は、FID信号を、以下のADCの動作に互換性のある周波数範囲に移調することを意図される。そのため、フィルタリング123の後、いわゆる「実部」及びいわゆる「虚部」を有する複素数信号が各アンテナに関して得られる。そのため、得られた2つの実アナログ電気信号は、ADC124によってサンプリングされて、「実部」成分132及び「虚部」成分131を有するデジタル形式130、すなわち実部を有する直交形式で複素数FID信号を有する。典型的には、得られたFID信号のそれぞれに関して、各チャネルについて利用可能なデジタル信号の数が、210、すなわち1024サンプルのオーダーである。そのため、デジタル信号130は、アナログ信号のデジタル処理に関して数十年間発展してきた全てのソフトウェアおよび物的資源を使用して処理することとなる。そのようなリソースはより具体的には、具体的には受け取った時間信号のスペクトル分析を実行することを可能にするフーリエ変換を実装するための専用デジタル、いわゆる「信号プロセッサ」及び特定のアルゴリズムを含む。
図140及び150は、アナログ形態で、例示的なFID信号の2つの成分を示している。これらはそれぞれ、アンテナによって得られたFID信号の、信号の増幅、変換及び直交検出後の実部及び虚部である。
第1近似として、FID信号は単調減少指数関数である。実際には、FID信号は多くの外部の原因によって影響を受ける可能性があり、時間に依存する強度を導入するという事実は、その形状に関して仮定をしないようにすることができる。そのため、数学的な計算に関して、各アンテナ信号は、
Figure 0006424170
の形式の時間(t)の関数である複素数表現であり、ωは水の共鳴周波数であり、
Figure 0006424170
は位相歪みである。
図1の例は、単一のアンテナからFID信号を1つだけ取得した単純な場合を示している。実際は、この単純な例において、取得された信号は信号取得後の処理に十分な強度を有し、以下に示すいくつかの場合において見られるようにSNRを改善するためにいくつかの連続的な取得を実行する必要はないものと仮定する。
FIDの取得の間に患者が動くと、FIDの最初とFIDの最後の間で周波数及び位相の変化が発生し、これはフーリエ変換後の曲線の形態に変化を引き起こし、本発明による方法で得られる結果の正確性が減少する可能性があることを、ここで注意するほうがよい。FID取得の時間は数ミリ秒なので、これは実際には可能性は低い。反対に、患者が周波数が調整された時刻と、FIDの取得が開始された時刻との間(1秒から数秒)に動いた場合には、これは以下に説明されるような場合である。
水の信号は通常「共鳴」状態にある、すなわち受信器の変換周波数が正確に水の信号の共鳴周波数に調整されることにも注意すべきである。この調整が正しければ、水の信号は実際には指数関数が減少するにつれて現れる。この調整が正しくない場合は、水の信号の周波数は、変換周波数とはわずかに異なる。このことは、FID信号の振動という結果となる。次いで、減少指数関数は、周波数が水の信号の周波数と変換器の周波数変換との間の差に等しいサイン曲線によって変調される。図1のFID信号の振動は、周波数オフセットを示す。正確に「共鳴する」取得された信号は、図2のグラフ222におけるそれと類似することとなる。信号の位相に関しては、受信するFID信号の位相は受信器変換信号の位相とは完全に独立しているため、任意である。受信器の周波数変換は、ラーモア周波数に等しい周波数を有する信号をFID信号から減算することによって得られる。しかし受信器はFID信号の位相を知らない。従って、必然的に、受信器によって使用される信号の位相と水の信号の位相との間にランダムなオフセットが生じる。これは、FIDの最初の点が一般的に実部でないという事実によって、図に示されている。複素平面におけるそのような最初の点の座標は、基準がグラフ140及び150に作られる場合、この例では約(−60、−100)である。仮に信号が同相であるとすると、この点の座標は(116、0)、すなわち実部が116であり虚部が0となる。
図2は、図1の場合、すなわち単一のアンテナ及び単一の信号取得の場合から、FID信号処理の本発明の方法と従来の処理とを比較する。
前述の図に見られるように、アンテナによって得られた信号は、実部140と虚部150とを有する。そのため、従来のFID信号の処理は、複素平面で実行される。対応するフーリエ変換210は、時間領域から周波数領域への切替を可能にし、受信した信号のスペクトル分析を得ることを可能にするものであり、複素数信号130に存在する可能性のある周波数及び位相シフト213を反映し、そのため、共鳴水信号211に戻る、すなわちフーリエ変換の周波数を0に設定するために、位相214及び周波数216の修正が連続的に適用されなければならない周波数スペクトル212を得る。
図1の説明で言及したように、複素数NMR信号は、受信した信号の一部の位相を90°シフトすることによって得られる。しかし、修正される信号は実数であり、数学的な便利さのために、一度全ての動作が複素平面でなされると、得られるスペクトルも実数であるように調整される。その結果、計算の単純化の理由のために導入される虚部が除去される。FID信号が減少指数関数であると仮定すると、細いいわゆる「ローレンツ型」曲線が、グラフ214に示すように得られる。グラフ212の曲線は、ローレンツ型曲線と分散曲線との混合である。位相操作または位相化は、実部においてローレンツ曲線を回復すること及び虚部において分散曲線を置くことからなる。この操作が完了すると、虚部は無視することができ、処理は実部のみに実行することができる。
周波数オフセットは、図1において前述したものと同じである。図1において、これは結果的にFIDの変調となるのに対し、図2は、このスペクトル表示である。この場合、周波数オフセットは、前述のように、受信器により使用される復調周波数と水の信号の実際の周波数との差による。
前述のように、いわゆる「グローバル」位相及び周波数を、他のFID信号または他の位置と比較した位相及び周波数の違いに対応するいわゆる「相対」位相及び周波数から区別することが可能でなければならないことに注意すべきである。2つのFID信号が連続的に取得される場合、受信器の復調信号は1つのFID信号から他の信号へ変更したものではないため、これらはともに同一の位相及び同一のグローバル周波数を有することとなる。対称的に、患者が取得の際に動いた場合、第2のFID信号の位相及び周波数は、最初のものとはわずかに異なることとなる。これは、図5に示されるいわゆるCSI分析(「化学的シフト画像化」の頭文字をとったCSI分析は、既に簡単に前述したように原子核の共鳴周波数の「化学的シフト画像化」を意味する)の場合のように、異なるボクセルによって与えられるFID信号の場合でもある。異なるボクセルによって与えられる位相及び周波数は、磁場B0の変動によってわずかに異なるが、「グローバル」周波数及び位相は、全てのボクセルに関して同じになるであろう。
そこで、2つの修正をする必要が生じる。一般的なものは、変換器によって生じた位相及び周波数の変動の修正と、次いでFIDごとまたはボクセルごとの患者の動きまたは磁場B0の変化によって生じる小さな変動の修正からなる。
本発明によって、一度に両方の操作を実行することが可能となる。
本発明による、アンテナによって取得された信号の処理は、上記で定義されたように複素数信号130の絶対値220の計算から始まる。
上述の、時間(t)の関数である複素数表現
Figure 0006424170
において、項A(t)は複素数信号の絶対値または強度である。この絶対値は周波数及び位相とは独立である。そのため、実際的な観点からは、各瞬間tにおける絶対値は、その瞬間における、取得され各アンテナに関連する電子モジュール120によって変換されたFID信号の実部及び虚部の2乗の合計の平方根である。
そのため、各瞬間tにおいて、FID信号の絶対値は以下で定義される。
Figure 0006424170
Figure 0006424170
であるため、FID信号(t)の絶対値はA(t)となる。かく乱位相及び周波数が共に取り扱われるため、実際には試行目的であるA(t)の定量化をここで議論する。
そのため、得られる信号は、各瞬間においてFID絶対値に対応する。本特許出願において、これを「FID絶対値」または単に絶対値と呼ぶ。
この種類の信号の例が、図222に示されている。
次いで、フーリエ変換230がFID絶対値222に適用され、周波数スペクトル232が得られる。アンテナによって取得された信号の絶対値は周波数の情報も位相情報も含まないため、簡単に前述した、適用されるべき従来の処理方法における修正214及び216を必要としない。
具体的には、このとき水のスペクトル231は、常に周波数0の中央に位置する。実部のみを有する信号である絶対値のスペクトルは、対称形233であることを特徴とする。これは、NMR用途のそれぞれに特有な以下の処理によって直接使用可能である。そのため、本発明は、位相及び周波数の修正のための段階の必要性を排除し、これらの段階は、通常、顕著な処理時間を必要とし、多くの場合作業者による手動の動作さえ必要とするものである。試料は、好適には時間領域におけるフーリエ変換に基づく従来の解決手段とともに、主な化学種の1つに対応する周波数の両側に信号を有しないように選択される。
絶対値のスペクトルが対称なので、一般的に半分の一方は保留される。特に、処理されるデータの量が、取得されたFID信号の実部及び虚部に対して同時に操作が実行される際に、従来処理しなければならなかった量の半分であるため、FID絶対値のフーリエ変換はより単純になることにも注意すべきである。そのため処理時間は顕著に低減され、このことによって使用者に影響を及ぼすことなくリアルタイム処理が可能となる。特に、実部信号についてのみ処理することにより、コンピュータのRAM占有を半分にすることができることに注意すべきである。このことによって、機械の速度低下を引き起こすことなく、より大きなデータ量を処理することが可能となる。さらには、処理後にスペクトルの半分のみを保持すればよいので、保存されるデータの全量が4分の1になる。計算時間の増大は、データの大きさがコンピュータによって割り当てられるメモリの大きさを超える場合にのみ効果的に達成される。しかし、これは多くの場合いわゆるCSI分析、より具体的には図5で示されたものの場合であり、これは高分解能で実行され、4ギガバイト、すなわち4×10バイトにのぼるデータ量を伴う。
アンテナによって取得された情報の一部(位相情報)が、FID絶対値を考慮に入れる際に排除されるにもかかわらず、驚くべきことに、SNRは完全に要件を満たしたままである。
ここで、本発明はより具体的には、スペクトル分解に現れ、調べた組織内に存在する可能性のある代謝産物によって一般化される2次ピーク234の分析に関するNMR用途が重要であることに注意すべきである。組織の主要部を形成する水は、検出されるべきであり、注目されるボクセルにおいて、代謝産物の存在に特有である2次ピーク234のキャリア及び基準として働く、非常に高い強度231を有する信号を発生させる。これらは、これらの対象についての英語文献において、共鳴原子核の歳差周波数の「化学的オフセットまたはシフト」を定性化するために使用される用語である「化学的シフト」を発生させる。周波数シフトまたはオフセットは、そのような代謝産物の存在を示す、千鳥状の2次ピークの形態におけるスペクトル分解において現れる。周波数オフセットは、代謝産物の性質の特徴である。水に対するピーク領域によって、測定された組織におけるその濃度を定量化することが可能となる。
図3は、いくつかの連続的な取得310が、十分なSNRを有し応用例によって操作されるべきFID信号を得るために必要である場合を示している。
FID信号の従来の処理及び本発明による処理は、図2に示されたものと本質的に同一である。差は、合計の段階に関するもののみである。従来の処理において、連続的に取得されたFID信号の実部320及び虚部330は、別個に合計する必要がある。対称的に、本発明による処理では、各FID信号の絶対値340が最初に計算される。このとき、フーリエ変換230が得られた絶対値に適用される前に、FIDの絶対値を合計する(350)必要があるのみであり、これは実質的に本発明の場合における計算処理を簡略化することとなる。この場合、従来の場合とは異なり、合計はたがいに整列された位相化信号において実行される。これは最適なSNRをもたらす。
図4は、実部及び虚部の従来の個別の処理410を使用するのではなく、FID信号の処理についての絶対値の使用420の利点を示す試行結果を比較している。
図410及び420は、各スペクトルの興味ある部分に注目しており、すなわちこれらは代謝産物に関連する部分のみを示している。水の信号及び対称的な体積信号は、スペクトルの領域422をより可視化できるように除去されている。
図420は、絶対値処理が取得されたFID信号のSNRを顕著に改善し、スペクトル曲線の幅を低減することを示している。特に、この例において示されるように、曲線の幅の低減は、従来のスペクトルでは見えなかったいくつかの小さな2次共鳴422を明らかにする。そのため本発明によって、従来技術の解決手段では検出するのが困難であった、または検出不可能でさえあった化学種を検出することが可能となる。共鳴424の形状も改善する。
図2に示される、合計前の各FIDの位相及び周波数シフトまたはオフセットの修正は、スペクトル曲線の幅及びSNRを改善すべきであることが分かっている。しかし、実際には、合計前にリアルタイムで各FIDの位相及び周波数を発見することが困難であるため、この修正は行われることはない。そのため、本発明のようにFID信号の絶対値を使用することは、FID信号の取得において観察される位相及び周波数シフトの主な原因であるターゲットの動きの効果を修正するための高速、単純かつ堅牢な方法である。
図5は、いくつかのボクセルを含む組織の体積の分光画像が得られる場合を示している。この種類のCSI分析は、各ボクセルによって得られる信号の空間的識別を実行することができるように、従来は固定された磁化B0に磁化勾配を重畳することによって、実行される。この場合は、図1に示されるものに類似しているが、ボクセル510の体積に関連し、磁場B0の不均一性による位相及び周波数シフトが見られる。
ここで、空間領域においてなされるものはいずれも、NMR画像化において従来なされるものと同一であることに注意すべきである。フーリエ変換は、1つのFID信号からそのスペクトルに切り替える際に使用されるように、磁場勾配によって符号化された信号から、空間的に分解された信号に切り替えるために実行される。FID信号をスペクトルに変換するフーリエ変換は、時間信号に対して作用し、それを周波数信号に変換し、これは知られた時間(または周波数)TFを説明する。勾配によって符号化された信号をNMR画像に変換するフーリエ変換は、空間次元において作用する。この処理はCSI分析に特徴的であり、本発明が適用される前であっても、上流で実行される。図5は、本発明の技術がCSI分析におけるものに適用可能であることを示している。
前述のように、グローバル修正は、全てのFID信号に対して同じように実行されるものである。これは、主に受信器の復号信号と実際に取得された信号との間の周波数及び位相オフセットに関連する。局所的な、または相対的な修正は、2つの異なるコイルによって得られるか、またはFID信号が空間的に異なる領域によって得られる場合には、または同一のコイルによって連続的に得られる、2つの取得されたFID信号の間にある位相及び周波数の差に関連するものである。場合に応じて、この差は患者の動き、コイルの電子部品、磁場B0の空間的変動、またはこれらの現象の組み合わせによって引き起こされる。
図6は、人間の脳の異なる位置にある2つのボクセルに関して、前述の図に示された条件下で得られた試行的結果を比較している。
一方の図610及び620並びにもう一方の図630及び640はそれぞれ、異なる位置(1及び2)における2つのボクセルについて、取得されたFID信号の従来の処理及び本発明によるその絶対値の処理をして得られた信号を示している。
取得された信号の従来の処理に見られる周波数オフセット650及び位相オフセット660は、絶対値処理には670で示すように現れず、これはその定量化を顕著に向上することに注意すべきである。
上述の図5及び図6に示された場合、すなわちCSI信号の取得の場合には、多数回の取得が、SNRの改善のために実行される必要がある場合もあることに注意すべきである。本発明はまた、前述のように、また特に図3に示されるように、FIDの絶対値の合計を伴って適用することとなる。
図7は、FID信号が、背景技術の節で議論したようなアンテナアレイから取得される場合を示している。本発明は特に、個々のアンテナ間に存在し得る顕著な差異、より具体的には位相に関連する差異が、容易に修正可能でなければならないようなこの複雑な場合において有利である。
この場合、各ボクセル110によって放出されるFID信号は、いくつかのアンテナによって取得される。2つのアンテナ101及び102がこの例では示されている。より多くの数のアンテナが共通に関連付けられ、例えば8つのアンテナネットワークが使用されることが多い。個別のアンテナのそれぞれは、この例ではそれ自体が受信システム1201及び1202を有し、それぞれが複素数FID信号1301及び1302を得る。
一方の図710及び730並びにもう一方の図720及び740はそれぞれ、各アンテナによって得られた複素数FID信号の実部及び虚部の例である。予測されるように、アンテナアレイの個々のアンテナによって取得される信号の位相及び強度における顕著な差750が見られる。
ここで、アレイ内の個々のアンテナすべてに共通なグローバル位相シフト及び周波数シフトが存在するが、各アンテナ間の位相及び強度の個々の差は、以下で示すように常に補償されなければならないことに注意すべきである。
図8は、アンテナアレイから取得されたFID信号を処理するための本発明の方法の各段階を、その従来の処理方法のそれと比較して示している。
本発明の方法は、極端に単純であり、単一のアンテナからのFID信号の連続的な取得に関して図3に示されたものとは顕著に異なるものではない。図8の場合において、信号が好適には同時に取得され、絶対値340が、この例では個別のアンテナ101及び102から取得された信号のそれぞれについて計算される。アンテナアレイの場合における多数取得は、もちろん図3のように除外されていない。
アンテナアレイの場合において認識可能な差は、次の段階810の際に、異なるアンテナによって得られた絶対値の強度の修正が、アレイの個々のアンテナ間の不可避の差全てを考慮に入れるために必要であることである。
強度の修正を適用するための方法は、各FID信号の重み付けの実行からなる。例えば重み付け因子が、各FID絶対値に関して、信号を得るコイルに適用されてもよく、この重み付け因子は、時間t=0における絶対値FIDの二乗を、時間t=0における各FIDの絶対値の二乗の和で割ったものに等しい。
次いで、強度が重み付けされた絶対値の合計350が実行される。次いで、FID信号の組み合わせに起因する絶対値のスペクトル成分が、フーリエ変換230を用いて計算可能である。
FID信号の重み付けは、好適ではあるが任意選択であるにすぎないことに注意すべきである。
比較によれば、図8の左側の従来の処理はずっと複雑である。この部分はまた、図2とも比較されるべきであり、図2は1つのFID信号に関するものである。ここで、図2の場合には、1つのFID信号しかないので、位相修正はフーリエ変換の前であっても後であっても相違点なく実行可能であることに注意すべきである。FID信号におけるものよりもスペクトルにおける位相変動を視覚化する方が容易であるため、通常は、フーリエ変換後に手動で実行される。図8の場合には、異なるコイルの信号が処理に先立って最初に再結合されるため、この修正は事前に実行される。しかし、各コイルの各信号のフーリエ変換を実行し、次いでその位相化及び合計を実行することもまた考えられる。しかし、コイルの存在と同じ数のフーリエ変換を実行すべきであり、例えば、64個のコイルが使用される場合には64回である。
図9は、前述の図に示された条件下でアンテナアレイから得られた試行結果を比較している。
図910及び920は、代謝産物をより良好に視覚化するために、これらの例ではFID信号の取得及び合計、フーリエ変換並びに水の線の排除の後に得られたスペクトルを示している。図920は、FID信号の従来の処理の後に得られたスペクトルの実部を示している。前述のように、虚部は受信器によって人為的に導入されたものであり、追加的な情報を含まない。そのため、信号を処理するにあたって使用されるのみであり、結果の表示には使用されない。図910は、本発明によるFID信号の絶対値の処理の結果を示している。前述のように、絶対値の処理はスペクトルを対称化することとなり、その半分のみが保持される。既知のシステムで得られた図920のピークは、本発明の解決手段で得られた図910におけるものである。そのため、異なるFIDを合計する前の絶対値を考慮に入れることによって発生した情報の損失にもかかわらず、代謝産物は依然として特性決定されうる。化学種の特性決定は、通常試料内のそのような化学種の性質を特定すること及び/または定量化することを伴う。さらに、そのピークは非常に細く、正確な特性決定が可能であり、これは信号/ノイズ比が、本発明による信号の絶対値の処理によって目に見えて劣化していないことを示していることに注意すべきである。
図9に示されるように、代謝産物からの信号の取得を改善するために、水を除去することが有利でありうる。実際に、脳において、水の信号は、代謝産物の信号よりも非常に大きく、約10倍大きい。アナログデジタルコンバータ(ADC)の全動特性に起因する全ての利点を得ることができるように、水の信号は多くの場合、FID信号を取得する前に部分的にまたは完全に除去される。
既知の方法において、また従来の処理を示す図920の結果の場合のように、水の信号は典型的には2つの段階で排除される。第1の段階は、取得中に適切な順序を用いて実行される(すなわち、この場合は減衰)。そのような抑制は完全にはなり得ないので、第2の排除が、処理すべき信号の数を低減するために合計後であって、通常はスペクトルの定量化の直前に実行される。前述のように、最初の抑制は、受信器のアナログデジタル変換器によって受信された信号の強度を低減し、それによって全符号化範囲を保つことを目的とし、この全符号化範囲は、最小の信号でもデジタル化するために典型的には16ビットである。第2の段階は、代謝産物の定量化を容易にするために実行される。この目的のために、水の信号が、信号の特異値分解を実行し、その一方で、主な成分のうち水の信号に対応するもののみを保持することによってモデル化される。信号はスペクトルから減算されるこれらの値から再構成される。
しかし、前述のように、水の信号は本発明の範囲では位相及び周波数の基準信号として使用される。次いで、水は、使用されるのに十分な強度を有する信号を保持するように、部分的にのみ抑制される。前述のように、水の信号はまた、代謝産物の絶対濃度を推定するための濃度基準としても使用可能である。この場合、水の信号全体を得る必要がある。一方では代謝産物のより良い視覚化及び他方ではその定量化の要請を調和することができるように、水の部分的または完全な抑制を伴う試行と、そのような抑制を伴わない試行の2つの連続的な試行を実行する必要がありうる。
本発明の理論的側面は、以下の数学的な進展によって支持される。
A(t)が単一の成分、すなわち単一の化学種を有するボクセルから、ノイズなく得られた信号である場合、これは以下の数式[1]に示すように表される。
Figure 0006424170
ここでA(t)はFID信号の波形であり、ωは単一の成分の共鳴周波数であり、
Figure 0006424170
は全ての位相歪みを表す。
位相歪みを修正するための1つの方法は、以下の数式[2]に示すように、信号の絶対値を取ることからなる。
Figure 0006424170
絶対値はまた、周波数情報も除去し、フーリエ変換後には、結果は「共鳴」信号である。ここで、単一の成分が水のピークに対応すると仮定すると、以下の数式[3]におけるように同じ記号を使用して、以下の数式が得られる。
Figure 0006424170
ここで、これらの数式において、基準化学種は、水であると考えられることに注意すべきである。しかし、本発明は、基準化学種としては水に限定されない。これらの数式は、基準化学種として使用される任意の溶媒を、水と置き換えて使用されうる。
別の成分が水の信号に追加されると、取得される信号の絶対値は、以下のようになる。
Figure 0006424170
この数式において、記号*は、共役複素数を表す。平方根内の積は、数式[1]及び[3]を用いて整理すると、以下のように書くことができる。
Figure 0006424170
それぞれ、追加された成分と水との間の周波数シフト及び位相シフトに対応する項Δω=ω−ωH2O及び
Figure 0006424170
がここで導入されると、以下の数式を得る。
Figure 0006424170
そして、最終的に数式[5]を得る。
Figure 0006424170
水が抑制されていない全ての試行の場合のように、AH2O(t)がA(t)と比較して非常に大きいと仮定すると、数式の第2項は無視することができる。そのため、以下の数式を得る。
Figure 0006424170
以下の本発明の説明は、前述の図面(図1から9)において詳細に示され、FID信号の絶対値を用いることからなり、特定の用途において限定的でありうる技術を考慮に入れる。
実際には、前述のように、FID信号の絶対値の使用によって、基準化学種、通常水1010の周波数の周囲に対称的なスペクトルが得られ、図10a及び10bに示されるように、スペクトルの左側に位置するノイズ1030及びアーティファクト1020が、もしあれば、図10bに示されるように対称性に起因する信号上に重畳される。ノイズの増加だけでなく、分析しようとする代謝産物がほとんどの場合位置する右側領域1040のスペクトルの注目する部分におけるアーティファクトのエイリアシングもまた、見つけることができる。
アーティファクトには、いくつかの原因がありうる。これらの理由には、以下のものが含まれる。
−検査される領域または検査される領域の近傍領域に起因し得る不要な信号。そのような信号は、取得手順によって排除されるべきであるが、例えば、対象物の動き、磁場に影響を与えうる磁石近傍の物体の動き(例えば部屋のドアの開閉)、磁場の均一性が低いこと、磁場の時間による変動のために、このような抑制はうまくいかないことがある。
−所望する信号であるが、前述と同様の理由により、それらの通常の共鳴周波数からシフトしている信号。例えば、磁場の不均一な領域からの水は、検査される領域(目、滑液など)の共鳴周波数と比較して数ヘルツずれた共鳴周波数が余分な共鳴として現れる可能性がある。
−NMRプローブによって感知され、スペクトルに重畳する電磁干渉(ラジオ波、wifiなど)。
−スプリアス信号。例えば、取得手順が、多くのパルスを含み、そのようなパルスの特定の組み合わせが、スペクトルに重畳するスプリアス信号を形成しうる。
前述のように、このようなアーティファクトの原因が何であれ、後者及び/または水の信号の左側へのノイズが発見されると、絶対値によって導入された対称性により、水の右側の信号にも重畳する。
図11aから11cは、本発明によって提供される、この問題に対する解決手段を図示し、簡単に説明している。
図11aに示されるように、水のスペクトルはまず、特性決定しようとする試料からモデル化される。このモデル化は、本発明において、基準化学種の周波数の左側に位置する取得されたスペクトルの半分について、モデルの対応する部分を置き換えるために使用されることとなる。次いで、図11bに示された結果が得られる。そのため、再構成されたスペクトルは、左側にノイズもアーティファクトも含まない。右側は、特性決定すべき化学種を含む取得された信号に対応する。以下の、逆フーリエ変換を実行して時間領域におけるFIDに戻す段階、再構成されたスペクトルの絶対値を抽出する段階、及び図11cに示されるように左側からノイズ及びどのアーティファクトによってもかく乱されない最終的なスペクトルを得るために、典型的にはフーリエ変換を使用して、周波数領域に戻す段階は、前述したものと同一である。
そのためSNRが、予期したように、図10bの対応する値と比較して2の平方根の比だけ改善することに注意すべきである。
キャリア、すなわち基準の場合の信号をモデル化するために、いくつかの技術が使用されうる。そのような技術の1つは、水をモデル化するためにこの領域において幅広く使用される。このモデル化は、NMRスペクトルからモデル化された水の信号を減算するために使用される。そのようなモデル化技術は、「Hankel Lanczos Singular Value Decomposition、ハンケル・ランチョス特異点分解」の頭文字を取ったHLSVD、すなわち「特異点分解に関するハンケル・ランチョス法」として知られている。基準化学種の信号をモデル化するために本発明に適用する場合、HLSVD法は以下の主な段階を含む。
行列がFID信号から生成される(そのような行列の第1行はFID信号を含み、以降の行はこのFID信号の円順列を、第2行に関して1点、第3行に関して2点など含む)。
この行列は、固有値及び固有ベクトルに分解され、次いで10または20の主成分のみが残される。
そのような10または20(選択は使用者に任される)の主成分のうち、水の信号の周波数に近い周波数に現れるもののみ(例えば水の信号の位置の周囲の0.5ppm)が残される。次いで、FID信号がそのような共鳴から再構築される。そのような分解では、任意の形状を有しうる水の信号は、いくつかのローレンツ型曲線に分割される。そのようなローレンツ型曲線の合計は、水の信号の形状を再生成する。
参照が特に、そのよなモデル化技術に関する非特許文献1において示されうる。
しかし、図11aから11cに記載された技術は、ほとんどの場合ピークまたはサイドバンドの形状を取るため通常「サイドバンド」と呼ばれる反対称アーティファクトが、取得されたスペクトルに存在する場合には別の制限を呈する。そのような種類のアーティファクト1210は、図12aの例において示されている。そのようなアーティファクトは、対になって、基準信号の共鳴周波数に対して対称的な周波数、等しい強度及び反対の符号を有する。図1から9に示された、FID信号の絶対値が用いられる技術を用いた処理は、水の右側のスペクトル位置に反対称アーティファクトを重畳する結果となる。そのため、そのような処理は、そのような種類の不要なアーティファクトの自動的な抑制につながり、信号の絶対値のそのような処理の後にスペクトルが特に図12bに示されるように得られ、それらは現れない。
図11a、11cに簡単に説明した、ノイズの低減が可能であり、図10aに示された種類の非対称アーティファクト1020を除去することが可能な技術が事前に適用される場合には、この利点はもちろん失われる。
そのため、以下の図は、ノイズを改善し、「サイドバンド」型の非対称アーティファクト1210及び非対称アーティファクト1020を除去することも可能な完全な技術を説明する。
図13は、囲み1310の中に、より具体的にはCSI型処理に適用する図1から9において上述されたFID信号の絶対値の処理に関するフローチャートを示し、この例では、これは制限的ではない。前述の追加的な結果、すなわちSNRの改善及びアーティファクトの除去を得るために追加されなければならない段階は、囲み1320内に含まれる。追加的な処理は、以後「DFRR」と呼ばれ、図11a、11cにおいて簡単に説明されたモデルによってスペクトルの一部を置き換えることを指す、「ダウンフィールド領域置換、Downfield region replacement」の頭文字をとっている。そのような処理はまた、基準信号のスペクトルの対応する部分をスペクトルの一部と置き換えるものとして説明可能である。そのような囲みに属しないフローチャートの構成要素は以下に説明する。
取得されたCSI生データ1330のストリームから、空間領域1311における種類のフーリエ変換の処理がそれに適用される。使用されるアルゴリズムは、「高速フーリエ変換、fast Fourier transform」の頭文字を取ったFFT型であり、これはデジタル化されたアナログ信号を処理するのに幅広く使用される。最初のボクセルのFID S(t)は、CSIファイル1312から抽出され(1313)、前述のHLSVD法などのモデル化法を用いて処理される。そして、基準化学種の信号のモデルは、水の共鳴の周囲±0.5ppm(100万分の1)の範囲内の共鳴を選択することによって、特異値分解から抽出される(1321)。基準化学種の信号は、一般的な項Sref(t)で表される。そのような基準化学種は多くの場合水であり、以下の例では、基準化学種の信号に使用される項はh2o(t)となる。もちろん、本発明は、どのような基準化学種にも適用され、後者は溶媒から有利にとられる。通常、h2o(t)は残留した水の信号を除去するために使用され、信号S(t)から減算される。本発明に関して、S(t)のFFT及びh2o(t)の両方が計算され、それぞれS(ω)及びH2O(ω)を得ることとなる(後者の項は、基準化学種、典型的には水の信号の周波数のスペクトルを指す。この項は、本明細書で使用される項Sref(ω)と同等であり、そのような項は実施形態とは関係なく、特に、基準化学種が水でない実施形態において相互に取り換えられる)。FFTを計算するこれら2つの段階はそれぞれ、図13の囲み1320内で、符号1322および1323で参照されている。
取得が共鳴基準化学種の信号で実行されると、S(ω)は2つの領域に分割可能である。基準化学種の信号の左側に位置するスペクトルの半分の部分であるダウンフィールド領域(DFR)及び基準化学種の信号の右側に位置するスペクトルの半分の部分であるアップフィールド領域(UFR)である。これら2つの領域のそれぞれは、基準化学種の共鳴周波数F0Refから延設している。
同様に、S(t)からモデル化された水の信号のスペクトルは、2つの領域に分けることができる。基準化学種の信号の左側に位置するスペクトルの半分の部分であるダウンフィールド領域及び基準化学種の共鳴の右側のスペクトルの半分の部分であるアップフィールド領域である。これら2つの領域のそれぞれは、このモデル化に起因する、このスペクトルの基準化学種の共鳴周波数F0Ref’から延設している。実際には、モデル化されたスペクトルの基準ケースの信号の共鳴周波数F0Ref’は、全ての化学種を含むスペクトルの基準化学種の信号の共鳴周波数F0Ref’と等しく、すなわちF0Ref’=F0Refである。
ここで、対象の代謝産物の共鳴が全て、スペクトルのUFR部分に位置すると仮定すると、DFRはノイズ及びアーティファクトのみを含む。そのためこの領域は、スペクトルの定量性を変化させることなく、水の信号のモデルH2O(ω)から抽出された同じ領域1324によって置き換えられてもよい。
そのため、基準化学種のモデル化された信号H2O(ω)における基準化学種の右側の領域は、特性決定すべき化学種を含む信号S(ω)から減算されないが、信号S(ω)のDFR部分を置き換える。DFR S(ω)の、H2O(ω)のDFRによる置き換え1324は、以下で記述可能なノイズ及びアーティファクトを含まないDFRによって特性決定されるスペクトルS(ω)の新しい信号となる。
Figure 0006424170
DFRについてのモデルとしてH2O(ω)を用いることは、DFRが単純にヌルになり、または除去された場合には、新しい信号S(ω)に不連続点をもたらさない。変数
Figure 0006424170
は、依然として連続的であり、その微分係数も連続である。既に述べたように、処理におけるこの段階1324は、DFRRと呼ばれる。ここで、S(ω)の逆高速フーリエ変換(iFFT)が計算される(1325)と、新しいFID
Figure 0006424170
が時間領域で得られる。次いで、
Figure 0006424170
の絶対値が計算され(1326)、元のCSIファイルに再導入する(1315)。
使用されるボクセルシフト技術が、NMRにおいて周知であり幅広く用いられるデータ構造であるいわゆるk空間(k−空間)の操作に基づくため、このシステムが選択されることが好適である。次いでデータはk−空間において再構築される。
次いで、背景技術で提供されたように、直接経路1340を取ることとなる従来の処理の場合における元の生データに対して行われる、標準処理(1360)を行うことができる。
修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階及びそれをCSIファイルに再導入する段階(1315)の後に、ある実施形態によればフーリエ変換を省略してもよい。次いで、時間領域における特定及び/または定量化が実施される。この場合、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を近似することができるように、例えば周知のソフトウェアによって、それぞれ化学種に対応する所定の要素FIDを合計することができる。修正されたFID信号
Figure 0006424170
の修正された絶対値を最も良好に再構築するための、選択された要素FID及びそれに関連する係数は、試料内に存在する化学種の性質及び定量性についての情報を与える。
代替的かつ好適に、修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値を計算する段階及びそれを元のCSIに再導入する段階1315の後に、フーリエ変換を適用することができる。次いで、スペクトルが修正されたFID信号
Figure 0006424170
の絶対値のそれぞれに対して得られ、これらのスペクトルのそれぞれはボクセルに対応する。
そして、新しい合成スペクトル
Figure 0006424170
が得られる。しかし、絶対値を処理する際に導入される対称性は、元のスペクトルのUFRを、ノイズもアーティファクトも含まない計算されたDFRと混合する。図1から9において前述のように、代謝産物の共鳴の強度は常に2で割ったものとなる。本発明のこの任意選択的な実装形態において、ノイズもまた同じだけ減少し、SNRは変化しないままである。そのため、SNRはその前より劣化することはない。
既に述べたように、「サイドバンド」型の反対称アーティファクトの存在下で、DFRに位置するものはDFRR処理1320によって除去されることとなる。DFRにおける「サイドバンド」の除去それ自体が、既に述べたようにその相殺に影響を及ぼす。これから、本発明はこの問題を解決するための手段を説明する。DFRR処理が、水の抑制なく使用され得ることもまた示す。
前述の例は、本方法がCSI型(すなわち多数のボクセル)画像化に適用される際に特に有利であるが、この方法はCSI画像化に限定されない。実際には、単一ボクセルの処理にも適用可能である。この場合、本方法は、既に必要がない空間的処理のための段階を除いて、ほとんど同じとなる。空間フィルタリングの段階は特に抑止される。
さらに、特性決定される化学種はほとんどの場合基準化学種の信号の右側に位置するが、本発明はまた、特性決定される化学種が基準化学種の左側に位置する場合にも適用する。
前述のように、ほとんどの場合、分析しようとする化学種は、基準信号の右側に位置する。水の左側にも特性決定される化学種が存在し得るが、それらは通常、生物学的産業において実際には、普通の分光分析/分光測定では見ることができない。しかし、本発明は特性決定される化学種が基準化学種の信号の左側に位置する場合に拡張する。この場合、本質的には、特性決定される化学種を運ぶ左側部分を残した状態で、基準化学種からモデル化された信号の右側部分が、FIDのスペクトルの右側部分と置き換えられることとなる。例えば、このとき2つの段階におけるスペクトルの処理が必要となる(1つの場合にはDFRが保存され、UFRを保持したまま処理が繰り返される)。UFRの化学種はまた、DFRの化学種と同じである基準信号からの距離に現れないことがあり、対称性もまたこの場合には問題を全く発生させないことがある。
本発明の以下の説明は、ノイズにおけるDFR処理1320の結果に関連する。「サイドバンド」の問題は後程取り扱う。
ノイズに関して、平均がゼロであり、標準偏差がσであるガウシアン分布を有するノイズ信号n(t)のFFTは、以下のようなノイズ信号であることが良く知られている。
Figure 0006424170
これは、ノイズが二次的に加えられるため、平均がゼロであり、標準偏差が
Figure 0006424170
であるガウシアン分布として特徴づけられる。Nは時間における点の数である。ノイズ信号の分布はゼロを中心としており、モデル化された信号は、本質的にゼロ信号であるDFRR処理の間、不連続性を導入しない。NMRで得られるノイズは、ゼロを中心とするガウシアン分布として特徴づけられる。信号が存在しない場合、この場合のように、ノイズはX軸の中央にある。信号が存在する場合、ノイズは本質的に信号に重畳し、中央位置への帰還は信号の線幅に依存し(典型的には半値幅に対して数ヘルツであるが、ローレンツ型曲線の場合には、翼部が相対的に大きい)、信号が強い(水である)場合、これは数百ヘルツに達する可能性がある。
次いで、DFRR処理1320は、DFR N(ω)をゼロで置き換える段階からなり、これは新しい信号
Figure 0006424170
を得ることとなる。いかなる処理も行わず、N(ω)のiFFTは本質的に、標準偏差σを有する元のノイズ信号の生成につながる。
Figure 0006424170
しかし、N(ω)の点の半分はゼロで置き換えられているので、iFFT
Figure 0006424170
は、以下の新しいノイズ信号を導く。
Figure 0006424170
点の半分はゼロ値を有するので、合計は残り半分で実行可能である。
Figure 0006424170
の標準偏差σはこのとき
Figure 0006424170
に等しくなる。
そのため、DFRR処理で得られるノイズ信号
Figure 0006424170
の標準偏差は、元のノイズ信号n(t)の標準偏差と比較して、
Figure 0006424170
で割った分だけ減少するということができ、これが第1の結果である。
データ処理は、図1から9に示された信号の絶対値を用いて続行され、新しい信号は以下の通りである。
Figure 0006424170
上述のように、ゼロを中心とする平均を有するガウシアン分布によって特徴づけられるノイズの絶対値は、いわゆるライス則に従って分布する。分布はSNRが3より大きい場合にはガウシアン分布で近似可能であり、SNRがゼロに向かう傾向にあるときには、レイリー分布によって近似可能である。上の両方の条件下で得られるSNRの特性は、図1から9の説明ですでに議論している。DFRR処理1320のみによって導入される改善をさらに議論する。ガウシアン分布に関して、σがn(t)の標準偏差である場合には、
Figure 0006424170
のそれもまたσに等しいことが示されている。これを、前述のように得られた合成スペクトルに適用することにより、
Figure 0006424170
の標準偏差は
Figure 0006424170
のそれと等しく、これはそれ自体が
Figure 0006424170
と等しい。ガウシアン近似が有効である場合には、DFRR変換を使用して得られたノイズ信号の標準偏差は、絶対値の処理のみを使用した場合に得られる標準偏差と比べて
Figure 0006424170
で割った分だけ減少する。SNRにおける減少は、絶対値を用いる処理が同じノイズのガウシアン近似に対する従来の処理と比較した際に見られる。DFRR処理によって、ノイズのガウシアン分布の存在下における絶対値の処理の帰結である失われたSNRを回復することが可能になる。
前述のいわゆるレイリー条件に関して、ノイズは中央にない一方で、分析はより複雑になる。この近似下で得られるノイズ特性を以下に議論する。
DFRRの以下の数学的表記において、これら2つのノイズ分布近似における処理1320が導入される。そして、これらの数学的表記はシミュレーションのために使用される信号の全てを計算するために使用される。
レイリー近似が最初にモデル化される。r(t)が時間領域におけるノイズ信号であり、R(ω)がそのフーリエ変換である場合、R(ω)のDFRをゼロで置き換えることは、以下で定義される単位ステップ関数の逆関数をR(ω)に乗じることと正確に等価である。
Figure 0006424170
DFRR処理は以下のように合計される。
Figure 0006424170
逆変換iFFTは、以下の通りである。
Figure 0006424170
絶対値がとられると、以下が得られる。
Figure 0006424170
そして、高速フーリエ変換は以下のようになる。
Figure 0006424170
ガウシアン近似は元のノイズスペクトルr(t)に以下で定義される一定信号C(t)を加えることによってモデル化可能である。
Figure 0006424170
これは新しいノイズ信号g(t)=r(t)+cを与える。
上と同じ記号を使用して、以下が得られる。
Figure 0006424170
Figure 0006424170
Figure 0006424170
と非常に似ているが、結果の節において、得られるノイズの形状が大きく異なることが分かる。
「サイドバンド」、すなわち水の信号の周りの反対称アーティファクトに関して、絶対値を処理することが、これらを最終的なスペクトルから除去するための簡単で効果的な方法であった場合に、対称性が導入されたことが示された。スペクトルのDFRを水のモデルで置き換えると、この領域に位置する「サイドバンド」は除去され、絶対値の処理によって導入される自動的な相殺はもはや行われない。UFRスペクトルの「サイドバンド」によって引き起こされるひずみの除去を引き続き行うための解決手段は以下の通りである。
Figure 0006424170
は絶対値処理のみを使用する場合に得られるスペクトルである。
Figure 0006424170
は絶対値及びDFRR処理の両方を使用する場合に得られるスペクトルである。
Figure 0006424170
は「サイドバンド」型のアーティファクトを含まないが、
Figure 0006424170
は、対称化によって相殺されないためUFR部分ではアーティファクトを依然として含む。
Figure 0006424170
から
Figure 0006424170
を減算した結果のUFRは「サイドバンド」及びある程度のノイズのみを含む。そのような「サイドバンド」は除去することができ、これは「サイドバンド」型の反対称アーティファクトによる汚染を含まないスペクトルとなる。このような変換及びどのようにDFRR処理1320に導入されるかを表す処理は、図13の囲み1350内に表されている。
この図において、段階1351はスペクトル
Figure 0006424170
からスペクトル
Figure 0006424170
を減算して「サイドバンド」1352を得ることに対応する。段階1353は、スペクトル
Figure 0006424170
から「サイドバンド」1352を減算して新しいスペクトル1354を得ることに対応し、「サイドバンド」1352は除去される。
ここで、減算1351は、図13に示されるようにFIDに対して、または図12cから12eに示されるようにスペクトルに対して実行可能であり、FFTは加算に対して分布性がある。
好適であるが任意選択的に、平滑化関数が、得られた減算に適用される。
この実施形態は、SNRを改善するうえで特に単純で信頼性があり、効果的であるという顕著な利点を有する。そのため、これによって、基準化学種の共鳴周波数のいずれかの側に存在するノイズの重畳を有する絶対値によって通常導入される制限なく、反対称アーティファクトを自動的に除去することによる絶対値の利点を利用することができる。
CSI型の試行、すなわちいくつかのボクセルを分析する場合を以下で検討する。前述のように、SNRを
Figure 0006424170
で割った分だけ減少することは、絶対値を考慮に入れることに基づいて方法を実装する場合に実行される生体中での試行においては実際には観察されなかった。本発明の範囲では、これはほとんどの例がCSI型試行から抽出された事実であるということ、そして絶対値の処理が図13の囲み1310に示されるプロセスによって実装されたものであることに起因することが特定されている。既にみてきたように、FFT1311がまず空間次元において実行され、次いでCSIの各ボクセルの絶対値1314の計算が行われる。これによって、空間領域における全ての位相及び周波数シフトの修正が可能となる。次いで、逆変換iFFT1317が空間次元において実行され、k空間の新しいデータセットを得ることが可能となる。ついで、従来の処理が行われる(1360)。この従来の処理において、空間フィルタリングが実行される。
空間フィルタリングは、CSIが行われるとすぐに、それらが1つまたは複数のコイルによって取得されたか否かに関わらず、適用される。
空間フィルタリングは、段階1321から1326が実行される場合もしくはそのような段階1321から1326が実行されない場合に、絶対値を考慮に入れる前に、または段階1321から1326が実行される場合もしくはそのような段階1321から1326が実行されない場合に、絶対値を考慮に入れた後に、適用可能である。段階1321から1326が実行される場合、信号ノイズ比の増加が、段階1321から1326によって提供されるものに追加される。
空間フィルタリングは、空間フーリエ変換の前に、空間符号化の次元(すなわちk空間)におけるベル(例えばガウシアン、コサイン、ハニング、ハミングなど)関数をCSIに乗ずることによって実行されることが好適である。
空間フィルタリングの1つの帰結は、空間分解能の低下、すなわちボクセルの大きさの増大である。これは、空間フィルタリング後には、新しいスペクトルは元のスペクトルと、元のスペクトルの周りのスペクトルの一部との合計の結果であることを意味している。空間フィルタリングが絶対値の処理の後に実行される場合には、CSIのスペクトルは位相及び周波数において整列される。これは、フィルタリング後に得られた新しいボクセルの大きさが何であれ、伴われるすべてのボクセルが位相及び周波数において整列されることを意味している。さらにこれは、ボクセルの大きさの増大に起因する線幅の増大はないことを意味している。反対に、空間フィルタリングが絶対値の抽出に先立って行われる場合には、伴うボクセルは位相及び周波数において整列されず、得られるスペクトルの分解能は、結果を与える以下の節で示すように劣化し、SNRの減少につながる。
図22は、図13と部分的に同じである。図13におけるものと同じ参照符号を有する段階は、図13を参照して上述されたものと同一である。この図は、点線で従来の処理(絶対値を考慮に入れない)を示している。また、複素数FID信号S(t)(段階1314)に適用される絶対値による処理1310も示す。このフロー図はまた、絶対値による処理と組み合わされたDFRR処理(段階1321から1326)も示す。後者の2つの処理において、空間フィルタリングが前述の結果を有する絶対値の計算(段階1314または1326)に先立って実行される。空間フィルタリングが段階1314または1326の後に実行される場合は好適となる。
この図では、本発明の任意選択の最適化であるサイドバンドの処理は示されていない。
単一ボクセルの分析の場合には、空間処理全体がなくなるため、処理が非常に簡略化される。図13の段階1131、1312及び1317が必要でなくなり、段階1313は、取得されたものからFIDを抽出するものとなる。段階1326において、時間領域において定量化可能なFIDが得られ、または空間領域で定量化可能なスペクトルを得るために一時的なフーリエ変換を行うことができる。どの方法を選択しても、結果の最終的な評価は空間領域におけるものが好ましいであろう。なぜなら、これは作業者が容易にスペクトルの品質を判定できる空間だからである。実際には、SNR、アーティファクトの存在または不存在、線の幅は時間領域では作業者が視覚的に評価できない。
SNRを改善するために試行を何度か繰り返すと、図13の合計(段階1315)の前に、処理が各FIDに関して実行されることとなる。図13の1313と1315との間の段階は、以下の説明から明らかになるように、図3の段階340を図5の「各FIDの絶対値の計算」の段階(絶対値が空間フィルタリングの後に計算される場合)、及び図8の段階340と置き換えたものでありうる。
この段落では、本発明の生体内及び生体外用途に関する実験的枠組みがより具体的に説明される。本発明の実装形態に関して使用される仮定は、最初にシミュレーションで試験され、次いで実験で試験された。生体内実験は、いわゆるOVS−CSI特性パルスシーケンスを用いて、3テスラの値の磁場を発生させることができる「スキャナー」型のNMR装置(Verio,Siemens Medical Solutions, Erlanger, Germany)で行われた。以下の結果の節において示されるスペクトルのほとんどは、水の抑制が低い状態または全くない状態で、25×25符号化ピッチ、円形重み付け、短エコー時間、または「25×25円形重み付け短エコー時間」で得られたCSI試行の抜粋である。取得パラメータは、TR/TE=1500/16ms、サンプリング点=2000、SW=2000Hzである。視野は240×240ミリメートル(mm)であり、ウェハは20mmの厚さである。全取得時間は11分7秒である。長エコー時間でのCSI試行の結果も、その他のパラメータは全て同じままで、特にエコー時間135msであるものについて示されている。続く処理は、いわゆるハニング空間フィルタリング、時間領域の8000サンプル点の取得データのゼロパディング及びHLSVD技術を用いた残りの水の信号の除去を適用する、いわゆるCSIAPOと呼ばれる専用ソフトウェアを用いて実行された。1つの絶対値のみを処理して、または絶対値にDFRRを加えたものを処理して得られた全てのスペクトルは、絶対値の処理によって導入される同じ因子だけ信号の強度が低下するのを補償するために、2倍される。これらのスペクトルは、信号の従来の処理で得られたスペクトルと比較して容易に視覚化される。
本発明の以下の説明において、本発明の実施形態の仮定を評価するために実行されるシミュレーションの結果を説明する。
それぞれレイリー分布及びガウシアン近似を用いて得られたノイズ信号の形状を可視化するために、2つの複素数ノイズ信号が、米国コロラド州ボールダーにある「Interactive Data Language,Research Systems Inc.」社によって開発されたいわゆる「IDL」ソフトウェアを用いて生成された。第1の信号r(t)1411は、統計学的な意味の用語である正規分布からなり、平均がゼロであり標準偏差が10である疑似乱数列を形成し、レイリー分布を表す4000サンプルの2倍からなる。第2の信号g(t)1412は、50の強度を有する一定の信号を加えることによって得られる。これはガウシアン分布を表す。
図14は、絶対値の処理のみまたは絶対値及びDFRRの処理のいずれかで使用される処理の各段階におけるこれら2つのノイズ信号において得られる結果を示している。絶対値を処理するために、絶対値
Figure 0006424170
及び
Figure 0006424170
の両方が抽出され、変換FFTの後に、ノイズスペクトル
Figure 0006424170
及び
Figure 0006424170
が得られる。すでに議論したように、これらのノイズ信号は、絶対値の処理によって導入される信号強度の損失を補償するために2倍にされる。このとき、SNRの改善がノイズ強度の単一評価によって、視覚的に推定可能である。DFFRを処理するにあたって、フーリエ変換が信号r(t)及びg(t)に適用され、それぞれが信号
Figure 0006424170
及び
Figure 0006424170
、すなわち従来の処理で得られるノイズ信号を得る(1422)こととなる。次いで各信号のDFRがゼロで置き換えられ、操作が完了すると
Figure 0006424170
1431及び
Figure 0006424170
1432が得られる。次いで、逆フーリエ変換またはiFFTがこれら2つの信号に適用され、絶対値が抽出され、FFTが再び適用され、前述と同じ理由で2倍にされ、これによって最終的な結果
Figure 0006424170
1441及び
Figure 0006424170
1442が得られる。
より具体的には信号
Figure 0006424170
1441がより具体的に考慮されると、DFFR処理がスペクトル次元において不均一なノイズを得ることにつながることは明らかである。レイリー条件は、1つの絶対値
Figure 0006424170
の処理を用いた場合に、SNRの劣化が生じないものであり、従来の処理((R(ω))と比較されるべきものであることを想起すべきである。DFRR処理が
Figure 0006424170
に追加された場合、スペクトルウィンドウの中央の周囲のノイズは、1つの絶対値の処理を使用して得られたものと実質的に同じ強度を有し、その一方で、スペクトルウィンドウの端に向かうとノイズ強度の減少が見られる。
信号
Figure 0006424170
に、より詳細に注意を払うと、ノイズの強度が
Figure 0006424170
と比較して減少することが明らかになる。これは、従来の処理が使用された場合に得られるノイズであるG(ω)のそれと同等である。
以下の表1a及び1bは、そのようなシミュレーションが1000回繰り返された場合の、異なる注目する段階において得られたノイズの標準偏差を示している。表1aは、時間領域で得られた結果を示しており、表1bは周波数領域におけるものである。ここでも、DFRR処理を伴うか伴わないかに関わらず、絶対値を処理した後に得られた信号は、この処理によって生成された信号強度の損失を補償するために2倍にされている。ノイズの標準偏差は直接的にはSNRに関係する。
Figure 0006424170
Figure 0006424170
この表は、元のFID信号のノイズがガウシアン分布に従う、すなわち標準偏差がゼロになる傾向にある分布に従う領域においては、DFRRを伴う絶対値の処理を使用して得られたスペクトルのSNRは、絶対値のみの処理を用いて得られたスペクトルのSNRと比較して、
Figure 0006424170
だけ増大する。このとき、DFRRを伴う絶対値を用いて得られたSNRは、従来の処理を用いて得られたものと同じである。元のFID信号のノイズがレイリー則に従う領域において、すなわちFIDのSNRが3を超える場合、DFRRを伴う絶対値の処理を使用して得られたスペクトルのSNRは従来の処理を用いて得られたものよりも高くなる。この増加は、スペクトルウィンドウの限界に近い4.6倍にも達する可能性がある。実際に、両方の領域が取得されたFID信号に存在し、結果として得られるSNRはガウシアン分布によって近似可能なノイズと元のFID信号のレイリー分布に達するものとの間に存在する関係に従うこれら2つの制限の間にある。
様々な理由によって、適用するレイリー則に必要な条件が望ましいものでない場合、絶対値の抽出の直前に一定信号を追加し、それを抽出した後に除去することが可能であることに注意すべきである。一定信号の値が、元のFID信号のノイズの標準偏差の3倍より大きくなるように選択される場合、分布がガウシアン分布であると考えるための条件が満たされる。DFRRを伴う絶対値の処理を用いて得られたスペクトルのSNRは、従来の処理を用いて得られたスペクトルのそれと同じであるべきである。SNRの増大は失われるが、得られるスペクトルのノイズは平坦になる。図13の枠1370は、この追加的な処理がどのようにしてDFRR1320の処理に導入可能であるかを示している。
本発明の実装形態を可能とするすべての仮説もまた、次の節で説明するように生体内及び生体外で試験された。DFRR処理、絶対値のみの処理、及び従来の処理の結果を比較した。脳の生体内NMR分光法/分光分析データ及び「ファントム」の生体外データは、前述の実験的条件を使用して得られた。
周知のように、ファントムは、調べられるべきもののモデルである。例えば、それは水を含む容器及び脳内で見られるいくつかの代謝産物であってもよい。
図15は、水を抑制せずに、脳における長エコーCSIの取得の同じボクセルから抽出された8つのスペクトルを示す。グラフ1510、1520、1530及び1540はそれぞれ、従来の処理、絶対値処理、DFRを伴う絶対値処理及び一定信号の追加を伴う処理から得られたスペクトルを表している。これは、ガウスノイズ寄与を最大化することができるように、時間領域でアポダイゼーションなくなされる。これは、実際にはFIDの最初に都合がよく(すなわち、信号が存在する領域)、FIDの最後を減衰させる(ノイズのみが残る領域)、減少指数関数をFIDに乗ずることからなる。グラフ1550、1560、1570及び1580は、同じ処理を用いるが、レイリー分布を得るための条件に都合のよいように、0.5の帯域幅で指数時間フィルタリングを加えることで得られるスペクトルを示している。
様々な処理技術を用いて得られたSNRが図15に示されており、ガウシアン条件が好適である1520、1530及び1580では、従来の処理を用いて得られたSNRはDFRR処理を用いることによって回復することを検証することができる。
この例において、絶対値を抽出し、レイリー則が適用される(1580)領域におけるFID信号から除去する前に、FID信号に対して一定値を加えることにより、レイリー条件が好適である場合(1570)に得られるスペクトルと比較して、得られるスペクトルのSNRを低減させることとなる。このとき、得られるスペクトルのSNRは従来の処理を用いて得られるものと同一である。SNRが
Figure 0006424170
分の1に減少することは、実際には従来の処理1510を絶対値処理1520と比較すると得られる。これは、そのような特定の場合には、既に述べたように(CSI試行)、絶対値及びDFRR処理が、それらが事前に行われた場合に得ることができるSNRの増大を排除するために、空間フィルタリングの後に実施されるという事実による。示された結果は、25×25の符号化ピッチで得られるCSIからの例によって得られたものである。そのような結果は、単一ボクセルの試行で得られたものと比較可能である。図15は、DFRR処理のみがもたらすものを示している。絶対値による処理は、それが事前に実行されたときに得られるSNRの増大を追加しないように、空間アポダイゼーションの後に実行される。そのため、この図の結果はCSIにおいて得られたものであるが、これらは単一ボクセルについて得られたであろうものと等価である。
図16は、「サイドバンド」を最小化するために水の部分的な抑制のみを伴う、脳において行われた短エコーCSI取得の同じボクセルの2つのスペクトルを示している。図1610は、1つの絶対値の処理を用いて得られたスペクトル及びDFRR処理で得られたスペクトルを示している。図1620は、DFRR処理及び単一の絶対値処理を用いて得られたスペクトル間の減算の結果を示している。減算の結果であるこの曲線において、代謝産物からの残留信号は存在しないことが分かる。減算信号は、おそらく「サイドバンド」であるノイズ及びアーティファクトのみからなる。
前述のように、「サイドバンド」型の反対称アーティファクトは、図12aにおいて明確に特定することができ、これは脳スペクトルを模すことができるようにいくつかの代謝産物を含んだファントムにおける短エコーCSI取得に対応する。すでに説明した図12a及び12b、並びに図12cはそれぞれ、従来の処理、絶対値のみの処理及び絶対値にDFRRを加えた処理を使用して得られるスペクトルを示している。前述のように、「サイドバンド」は絶対値のみの処理において除去されるが、1220に見られるように、絶対値にDFRRを加えた処理の場合には除去されない。図12dは図5b及び5cのスペクトルの間の減算の結果、すなわち1つの絶対値のみと、絶対値にDFRRを加えたものとの差を示している。4から4.95ppmの間の残留した水1230及びサイドバンドが明確に見られる。図12eは、DFRRを伴う絶対値の処理の後、すなわち図5cのものの後にこの信号を信号から減算した場合に得られるスペクトルを示している。このとき「サイドバンド」は実際に抑制され、このスペクトルは絶対値のみの処理を用いて得られたもの、すなわち図12bのものと非常に類似している。図12fは、1つの絶対値のみの処理で得られたスペクトルと、DFRR法を使用して「サイドバンド」を減算した後に得られたスペクトルとの間の減算の結果を示している。このスペクトルは主に、もしあれば、「サイドバンド」型のアーティファクトを含む。そのため、この結果は明らかに、DFRR法がいかなるサイドバンドを除去するにも非常に効果的であることを確認するものである。
図17は、脳スペクトルを模したファントムにおける短エコーCSI取得に空間フィルタリングを行う前または後に絶対値処理を行う場合に得ることができる差を示している。好適には、この場合における空間フィルタリングは、CSIの行および列を、空間フーリエ変換(すなわちk空間における)を行う前にハニング関数に乗じることからなる。図1710及び1720は、CSIスペクトルの全てを合計することによって得られる全スペクトルを示している。図1710は、この場合は、試料の励起位置、すなわちパルス手順によって選択されたウェハ厚さに対応する2cmの全てのスペクトルである得られたスペクトルを全く処理を行わずに得られたスペクトルを示している。
前述のように、空間フィルタリングは、隣接するボクセルのスペクトルの合計となる。この現象を活用するために、この図はCSIの全てのスペクトルを合計している。図1710は、絶対値が考慮に入れられる(これは、空間フィルタリングが、これを考慮に入れる前に実行されたとすると得られたであろうものを増幅する)前にスペクトルが合計される場合に得られるものを示しており、1720は、絶対値がスペクトルの合計の前に適用される場合を示している。
このスペクトルについて見られうる低い周波数分解能は、そのような大きな体積に渡って磁場を均一化することが困難であることによる。図1720は、図13の囲み1310に見られるように、絶対値処理を用いて得られたCSIの全てのスペクトルを合計することによって得られたスペクトルを示している。
図17はさらに、空間分解能が顕著に向上することを明確に示している。この場合、絶対値処理は、非常に高い均一性を有する磁場B0が取得において得られたかのように働くが、この現れた良好な均一性は処理に起因する。これは、単一ボクセルが大きな体積中で取得されなければならない場合、従って均一化が困難である磁場の場合に、新しい領域を開くこととなる。実際に、代わりにCSIを取得すること、そして良好な品質のスペクトルを究極的に得るために絶対値処理を実行することを考慮することには価値がある場合がある。そのような技術は、本発明によって提供されるような絶対値を考慮に入れると、大きく簡略化される。
図18は、脳における長エコーCSI取得からの同じパターンを用いて得られた結果を示している。生データから得られたスペクトルと比較して、絶対値処理で得られたスペクトル解像度の増加も見ることができる。いくつかのボクセルでは、脂質の信号が水の信号よりも大きい場合があることに注意すべきである。この場合、脂質の信号が絶対値処理の基準として取られる。次いで、これらのボクセルのスペクトルはそのような脂質の共鳴に従って位相及び周波数で整列される。幸運なことに、脳の分光法/分光分析において、そのような領域は関心のある共鳴を含まない。さらに、脂質の共鳴の最大値が約0.8ppmである場合、これは4.7ppm(水の共鳴位置)にシフトされる。この時、水の共鳴は、約8.8から−0.8ppmに位置することとなる2つの部分(絶対値を考慮に入れることにより導入される対称性による)に分けられ、これは、幸いに関心領域の外側の領域に対応する。注目するスペクトルは2ppm(NAA)及び4ppm(クレアチン)の間にあることが、図18から分かる。約2ppmに位置するピークはNAAに対応し、約4ppmに位置するピークはクレアチンに対応する。0.8から1.8ppmの間に位置する質量は、脂質のものである。しかし、脂質信号が水の信号より高い全てのボクセルにおいて、脂質信号が水の共鳴に再配置され、残留する水を除去する際に水の信号とともに除去されるため、この効果は脂質を除去するための連続する処理として働く。これは、脂質の信号が、絶対値の処理で得られるスペクトル1820と比較可能な、絶対値の処理をせずに得られるスペクトル1810においてより高いためである。
図19は、脳の長エコーCSI取得における空間フィルタリング前または後の絶対値を伴う処理の用途の影響を示している。この場合、空間フィルタリング関数は、いわゆるカイザー・ベッセル窓である。図19は、絶対値が事前に(点線)及び事後に(実線)実施されて得られるスペクトルを示している。
αがより高いと、フィルタが狭くなり、そのためフィルタリングが強くなる。ここで、フィルタリングが強くなると、ボクセルの大きさが大きくなり、そのため隣接するボクセルが多くなり、その信号が、考慮されるボクセルに追加される。さらに、考慮されるボクセルに追加される信号は、考慮されるボクセルからますます離れた領域、そのためスペクトルが、磁場B0の非均一性によって位相外になりシフトされたものである可能性が非常に高い領域からくる。α=0である場合、空間フィルタリングは存在せず、両方のスペクトルのSNRは等価である。α>0である場合、絶対値による処理が空間フィルタリングの前に実行されて得られるSNRが、事後に実行されて得られるものよりも良好であり、両方のSNRの間の逸脱は、αを増大させる(そのためボクセルサイズを増大させる)ことが分かる。前述の特徴は、空間フィルタリングが、絶対値の抽出後に実行される場合には、絶対値による処理に起因する理論SNRの予想される損失がCSIの場合には得られないという事実に関連しており、ここで改めて指摘する。
図20及び21は、一方ではファントム(図20)で、また他方では患者(図21)で実行されるCSI取得のこの効果を示している。
これらの図のそれぞれは、これらの図の上から順に示された以下のスペクトルを含む。
−従来の方法を用いて得られたスペクトル
−図1から9を参照して説明され、空間フィルタリングの後に絶対値を考慮に入れる絶対値法を用いて得られたスペクトル
−DFRR法を用いて得られたスペクトル
−図1から9を参照して説明され、空間フィルタリングの前に絶対値を考慮に入れる絶対値法を用いて得られたスペクトル。
これらのスペクトルは、DFRR技術及び空間フィルタリングの前に絶対値を用いる技術によって、従来の方法と比較して、非常に満足すべきであり改善されたSNRを得ることができる。SNRにおけるこの増大は、図21においてより明らかになる。これはおそらく、ファントムにおけるものよりもコントロールにおける方が高い磁場不均一性によるものである。
図23は明らかに、サンプルが特性決定されるべきいくつかの化学種を含む場合に、特性決定される化学種のためのキャリアとして用いられるように、量の多い基準化学種の存在を、本発明が必要とすることを示している。実際には、絶対値を考慮に入れることは、後者を特性決定される化学種の信号と比較することを可能にする一方でキャリアに影響を与えることとなる。
そのため、本発明は、単一の化学種の緩和時間を分析することを目的とし、そのために磁場の周波数が調整される技術とは明らかに異なる。
本発明は具体的には、単一のボクセルまたは多数のボクセル(CSI)に関わらず分光法/分光分析に適用する。
取得の際の水の信号を除去し、次いで得られた信号に絶対値を適用することで、代謝産物の定量化が不可能になる場合がある。これは、分光法/分光分析に関連する図23に明確に現れている。FID2301は、水の信号がほとんど完全に抑制された後に得られ、そのような抑制は取得の際に行われる。FID2302は、水の信号がほとんど完全に抑制され、絶対値を考慮に入れた後に得られたものである。スペクトル2303は、FID2301のフーリエ変換及び手動での位相修正を用いて得られたスペクトルである。スペクトル2303において、代謝産物が特定され、定量化可能である。スペクトル2303は、サンプルの組成を正確に再現する。ピーク2303aは、残留する水の信号に対応し、ピーク2303bからcは、代謝産物に対応する。次いで、2301及び2303は、従来の処理に対応する。
スペクトル2304は、FID2302のフーリエ変換を用いて得られたスペクトルである。このスペクトルは操作できない。スペクトル2303とは非常に異なり、代謝産物は特定も定量化もできない。絶対値を考慮に入れることは、基準化学種の信号抑制を伴う取得であるために、間違った解釈となる。
実際には、基準化学種が、特性決定される化学種よりもずっと多く存在する場合、基準化学種の信号はその他の化学種の信号に対するキャリアを形成する。
基準化学種として水を用いる生体内分析において、水は10を超える量で存在しているため、常にこのような状態である。ほとんどの場合、水は他の化学種の量の10倍、場合によっては10倍をも超える量で存在する。そのため、化学種の緩和時間に関わらず、水の信号は他の化学種の信号のキャリアを形成し、絶対値を考慮することは、水よりも少ない量で存在する化学種の信号の位相情報を除去することとならない。
基準化学種は最初は主要な量で存在するが例えば2倍である他の場合であって、基準化学種の緩和時間及び特性決定される化学種の緩和時間が顕著に異なる場合には、以下の段階の少なくとも1つを行うことによって、サンプルの組成を改善することが望ましい。
−溶液に溶媒を追加してその含有量を増加させ、それにより基準化学種の信号を増加させ、キャリアとして働くようにすること
−信号を発生しない(共鳴周波数を有しない)がサンプルの緩和時間を改善する化学種を追加すること。例えば、CuSOの場合がそうである。
詳細な説明は、例示として、生物学的サンプル内の代謝産物の特性決定を参照するが、本発明はまた非生物学的化学組成を分析するためにも有利であることが分かる。実際には、本発明によれば例えば、水またはその他任意の溶媒などの基準化学種を含む溶液における化学的組成物を特定し、この溶液中のその化学的組成物の含有量を測定することが可能となる。
さらに、本発明は、基準化学種の性質が何であれ適用する。そのような基準化学種は前述の例に示されたように通常は水であるが、例えば水以外の溶媒などのその他の化学種でもよい。
本発明は、説明された実施形態に限定されず、特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態に拡張する。
101 アンテナ
102 アンテナ
110 ボクセル
120 電子受信器
121 アナログ増幅器
122 アンテナ
123 フィルタリング
124 アナログデジタル変換器
130 デジタル信号
131 虚部成分
132 実部成分
140 実部
150 虚部
210 フーリエ変換
211 共鳴水信号
212 周波数スペクトル
213 周波数及び位相シフト
214 位相
216 周波数
220 絶対値
222 FID絶対値
230 フーリエ変換
231 水のスペクトル
234 2次ピーク
310 取得
320 実部
330 虚部
340 絶対値
350 絶対値の計算
410 個別処理
420 絶対値の使用
422 2次共鳴
424 共鳴
510 ボクセル
650 周波数オフセット
660 位相オフセット
1020 アーティファクト
1030 ノイズ
1040 右側領域
1201 受信システム
1202 受信システム
1230 水
1301 複素数FID信号
1302 複素数FID信号
1311 空間領域
1312 CSIファイル
1313 FIDの抽出
1320 DFRR処理
1330 CSI生データ
1352 サイドバンド
1411 第1の信号
1412 第2の信号

Claims (33)

  1. 核磁気共鳴(NMR)を用いた、特性決定される少なくとも1つの化学種及び基準化学種を含む少なくとも1つのサンプルの分光分析のための方法であって、前記サンプルの前記基準化学種の含有量が、特性決定される前記少なくとも1つの化学種の含有量の2倍より多く、
    前記方法が、
    a.少なくとも1つの一定の磁場Bを前記少なくとも1つのサンプルに印加する段階と、
    b.1つまたは複数のアンテナによって、1つまたは複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号S(t)を取得する段階(310、1313)であって、各FID複素数信号S(t)が実部(140)及び虚部(150)を含み;前記基準化学種及び特性決定される前記少なくとも1つの化学種の相対的含有量がその相対的な緩和時間とともに、各複素数FID信号S(t)において、前記基準化学種の信号の強度が、特性決定される前記少なくとも1つの化学種の信号の強度の少なくとも2倍の大きさであるように選択される、取得する段階と、
    を含み、前記方法がさらに、少なくとも、
    c.各複素数FID信号S(t)に関して、各複素数FID信号S(t)の絶対値を計算する段階(340、1314)と、
    d.各複素数FID信号S(t)の絶対値から、特性決定される前記少なくとも1つの化学種の性質及び含有量を特定する段階を含むことを特徴とする、方法。
  2. 各複素数FID信号S(t)の絶対値の抽出(340)の後に、前記FID絶対値(222)を考慮した信号にフーリエ変換を適用する段階(230)を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 溶媒中の前記基準化学種の含有量が、特性決定される各化学種の含有量より少なくとも5倍、好適には10倍、好適には10倍、より好適には10倍大きい、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記基準化学種の信号が、特性決定される前記少なくとも1つの化学種の信号のキャリアとして使用される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記サンプルの前記基準化学種の含有量が、前記基準化学種の信号が特性決定される前記少なくとも1つの化学種の信号のキャリアとして使用できる程度に、前記サンプル内の特性決定される前記化学種の含有量よりも十分に高い、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 特性決定される前記化学種を含むサンプルの前記FID絶対値(222)が、
    Figure 0006424170
    に等しく、以下の方程式によって定義され、
    Figure 0006424170
    、Δω=ω−ωH2O及び
    Figure 0006424170
    がそれぞれ、特性決定される前記少なくとも1つの化学種と前記基準化学種との間の周波数及び位相オフセットに対応し、
    H2O(t)が前記基準化学種のFID信号の時間に対する強度であり、
    (t)が特性決定される前記化学種のFID信号の時間に対する強度である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記取得の段階(1330)において、複素数FID信号S(t)が、前記サンプルの複数のボクセルから取得され、空間フィルタリングの段階が、前記ボクセルのそれぞれに関して、前記複素数FID信号S(t)の絶対値の計算(340)の後に実行される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記取得の段階(310)において、複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号が取得され、前記複素数FID信号S(t)の各複素数FID信号S(t)について絶対値(222)を生成する段階(340)の後に、前記FID絶対値の合計(350)が行われて、結合FID信号を得る、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  9. フーリエ変換が前記結合FID信号に適用される(230)、請求項8に記載の方法。
  10. 前記アンテナがコイルであり、取得された前記複素数FID信号が同じコイルによって得られる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記アンテナがコイルであり、取得された前記複素数FID信号が異なるコイルによって得られる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記アンテナがコイルであり、取得された前記複素数FID信号が異なるコイルによって得られ、いくつかの複素数FID信号が少なくともいくつかのコイルに関して取得される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  13. 各複素数FID信号のFID絶対値(222)の生成の後であって、結合FID信号を得るために前記FID絶対値の合計(350)を行う前に、各コイルに関する重み付け因子(810)を計算する段階が実行され、各FID絶対値が、取得される前記コイルの前記重み付け因子によって重み付けされる(222)、請求項11または12に記載の方法。
  14. 前記取得する段階(310、1310)において、単一の複素数FID信号S(t)が取得され、フーリエ変換が、前記単一の複素数FID信号から絶対値を抽出することによって得られるFID絶対値(222)に適用される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記取得する段階(310、1310)において、空間的に符号化されたFID信号が取得され、前記取得が、いくつかの符号化された信号を得るために複数回繰り返され、前記符号化された信号のそれぞれは続いて、前記サンプルのボクセルに関連付けられるように復号化され、FID絶対値(222)が、各ボクセルに関連した前記FID信号について生成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  16. 前記サンプルが、特性決定される複数の化学種を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
  17. 前記サンプルが生物学的物質のサンプルであり、前記基準化学種が水であり、前記特性決定される化学種が代謝産物である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
  18. 前記サンプルが化学的組成物であり、前記基準化学種が溶媒であり、特性決定する前記化学種が化学的組成物である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
  19. 前記一定の磁場B0が、サンプルのいくつかのボクセルに印加され、異なる前記ボクセルの前記結合FID信号の周波数スペクトルが、1つまたは複数の分光画像を生成するために使用される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 前記分析が、分光法または分光分析である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 1つまたは複数のアンテナによる1つまたは複数の複素数FID信号S(t)の取得の段階(310、1313)の後であって絶対値の計算の前に、以下の段階、
    −前記少なくとも1つの複素数FID信号S(t)の実部及び複素数部にフーリエ変換を適用してFIDスペクトルS(ω)を得る段階(1323)であって、得られた前記FIDスペクトルS(ω)が基準化学種及び特性決定される化学種を含み、前記基準化学種の共鳴周波数(F0Ref)からF0Refのそれぞれの側へ延設する2つの部分(UFR、DFR)を有し、特性決定される前記化学種の周波数が、前記2つの部分(UFR、DFR)の間に取られたスペクトルの第1の部分に位置する、FIDスペクトルS(ω)を得る段階(1323)と、
    −前記少なくとも1つの複素数FID信号S(t)の実部及び複素数部から、前記基準化学種の信号Sref(t)をモデル化する段階(1321)と、
    −前記基準化学種のモデル化した信号Sref(t)にフーリエ変換を適用して前記基準化学種のスペクトルSref(ω)を得る段階(1322)であって、前記基準化学種の前記スペクトルSref(ω)が前記スペクトルSref(ω)の前記基準化学種の共鳴周波数(F0Ref’)から、F0Ref’のそれぞれの側に延設する2つのスペクトル部分を有する、前記基準化学種のスペクトルSref(ω)を得る段階(1322)と、
    −前記FIDスペクトルS(ω)の第2の部分を、前記スペクトルSref(ω)のF0Ref’から延設し前記スペクトルS(ω)の第2の部分と同じ側に延設するスペクトルの2つの部分から取られたスペクトルSref(ω)の部分によって置き換えることにより、修正されたFIDスペクトル
    Figure 0006424170
    を得る段階(1324)であって、前記第2の部分が、前記スペクトルS(ω)の前記2つの部分(UFR及びDFR)から取られ、特性決定される前記化学種を含まない部分である、修正されたFIDスペクトルを得る段階(1324)と、
    −時間領域における修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    を得るために、逆フーリエ変換を前記修正されたスペクトル
    Figure 0006424170
    に適用する段階(1325)と、
    −前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を計算する段階(1326)と、
    を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
  22. 各複素数FID信号S(t)の絶対値を抽出する段階(340、1314)の後であって、前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を計算する段階(1326)の後に実行される以下の段階、
    −前記複素数FID信号S(t)の絶対値を前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値から減算する段階(1351)と、
    −前記段階で得られた結果を、前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値から減算する段階(1354)と、
    を含む、請求項21に記載の方法。
  23. 各複素数FID信号S(t)の絶対値を抽出する段階(340、1314)の後であって、前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を計算する段階(1326)の後に実行される以下の段階、
    −前記複素数FID信号S(t)の絶対値及び前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値にフーリエ変換を適用し、次いで前記信号S(t)の絶対値のスペクトルを前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値のスペクトルから減算する段階と、
    −前記段階で得られた結果を前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値のスペクトルから減算する段階と、
    を含む、請求項21に記載の方法。
  24. 特性決定される前記化学種を前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値から特定及び/または定量化する段階が、フーリエ変換が前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を少なくとも含む信号に適用される間に実行される、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
  25. 取得する段階(1330)において複数の複素数FID信号S(t)が取得され、前記修正された信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を計算をする段階(1326)が、修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    のそれぞれについて実行される、請求項21から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 結合FID信号を得るために、複素数FID信号S(t)のそれぞれについて修正された信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を計算する段階(1326)の後に、前記修正された信号
    Figure 0006424170
    の合計(350)が実行され、次いで、フーリエ変換を前記合計に適用する段階を含む特性決定する前記化学種を特定及び/または定量化する段階が実行される、請求項25に記載の方法。
  27. 前記アンテナがコイルであり、前記取得された複素数FID信号S(t)が異なるコイルによって得られ、前記取得する段階(1330)の間に、前記サンプルの複数のボクセルからの複素数FID信号S(t)が取得され、各ボクセルに関する修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値の計算(1326)が完了した後に、空間フィルタリングの段階が実行される、請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも、
    1つまたは複数の前記複素数FID信号を受け取る段階と、
    前記1つまたは複数の前記複素数FID信号から、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法のFID信号の絶対値を計算する段階(340、1326)と、を実行する命令を含む、コンピュータプログラム製品。
  29. 特性決定される少なくとも1つの化学種と、溶媒から取られた基準化学種とを含む少なくとも1つのサンプルの核磁気共鳴(NMR)を使用した分光法のシステムであって、前記サンプル中の前記基準化学種の含有量が、特性決定される前記少なくとも1つの化学種の値の2倍よりも少なくとも大きく、前記システムが、時間領域で1つまたは複数の複素数自由誘導減衰(FID)信号S(t)を取得(310)できるように構成された少なくとも1つのアンテナを含み、複素数FID信号のそれぞれが、少なくとも1つの磁場B0を前記少なくとも1つのサンプルに印加することによって発生し、複素数FID信号が実部及び虚部を含み、前記基準化学種及び特性決定される前記少なくとも1つの化学種の相対的含有量がその相対的な緩和時間とともに、各複素数FID信号S(t)において、前記基準化学種の信号の強度が、特性決定される前記少なくとも1つの化学種の信号の強度の少なくとも2倍の大きさであるように選択され、
    前記システムが、前記複素数FID信号のそれぞれについて、各複素数FID信号の絶対値を計算するように構成された処理手段を含むことを特徴とする、システム。
  30. −複数の複素数FID信号S(t)を取得できるように構成された1つまたは複数のアンテナを含み、
    −前記複数の複素数FID信号S(t)のそれぞれの複素数FID信号S(t)についてFID絶対値を生成する段階(222)の後に、結合FID信号を得るために前記FID絶対値を合計する段階(350)を実行し、好適には前記結合されたFID信号にフーリエ変換を適用するように構成された、
    請求項29に記載のシステム。
  31. 前記アンテナがコイルであり、取得された前記複素数FID信号S(t)が異なるコイルによって得られ、前記システムの処理手段が、
    −取得する段階(1330)において、前記サンプルの複数のボクセルから得られた複素数信号FID S(t)が取得され、
    −各ボクセルに関して修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を計算する段階(1326)の後に、空間フィルタリングの段階が実行される、
    請求項29または30に記載のシステム。
  32. 前記システムが処理手段を含み、
    前記処理手段が、
    −フーリエ変換を前記少なくとも1つの複素数FID信号S(t)の実部及び複素数部に適用することによってFIDスペクトルS(ω)を得る段階(1323)であって、得られた前記FIDスペクトルS(ω)が前記基準化学種及び特性決定される前記化学種を含み、それぞれ前記基準化学種の共鳴周波数(F0Ref)から延設し、F0Refのそれぞれの側に延設する2つの部分(UFR、DFR)を有し、特性決定される前記化学種の周波数が、前記2つの部分(UFR、DFR)の間のスペクトルの第1の部分に位置する、FIDスペクトルS(ω)を得る段階(1323)と、
    −前記少なくとも1つの複素数FID信号S(t)の実部及び複素数部から基準化学種の信号Sref(t)をモデル化する段階(1321)と、
    −前記基準化学種のみを含む、前記基準化学種のスペクトルSref(ω)を、前記基準化学種のモデル化した信号Sref(t)にフーリエ変換を適用することによって得る段階(1322)であって、前記基準化学種のスペクトルSref(ω)が、前記スペクトルSref(ω)の前記基準化学種の共鳴周波数(F0Ref’)から、F0Ref’のそれぞれの側に延設する2つの部分を有する、スペクトルSref(ω)を得る段階(1322)と、
    −前記FIDスペクトルS(ω)の第2の部分を、前記スペクトルSref(ω)のF0Ref’から延設し、前記スペクトルS(ω)の前記第2の部分と同じ側に延設する、スペクトルの前記2つの部分から取られたスペクトルSref(ω)の部分によって置き換えることによって修正されたFIDスペクトル
    Figure 0006424170
    を得る段階(1324)であって、前記第2の部分が、前記スペクトルS(ω)の前記2つの部分(UFR及びDFR)から取られ、特性決定される前記化学種を含まない部分である、修正されたFIDスペクトルを得る段階(1324)と、
    −時間領域における修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    を得るために、前記修正されたスペクトル
    Figure 0006424170
    に逆フーリエ変換を適用する段階(1325)と、
    −前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を計算する段階(1326)と、
    を実行するように構成された、請求項29から31のいずれか一項に記載のシステム。
  33. 各複素数FID信号S(t)の絶対値を抽出する段階(1314)の後であって、前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値を計算する段階(1326)の後に、以下の段階、
    −前記複素数FID信号S(t)の絶対値を、前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値から減算する段階(1351)または前記複素数FID信号S(t)の絶対値及び前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値にフーリエ変換を適用し、次いで、前記信号S(t)の絶対値のスペクトルを前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値のスペクトルから減算する段階と、
    −前記段階で得られた結果を、前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値のスペクトルからのそれぞれの前記修正されたFID信号
    Figure 0006424170
    の絶対値から減算する段階(1354)と、
    を実行するように構成された処理手段を含む、請求項32に記載のシステム。
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