図1は、本発明に係る蒸気使用設備評価システムSによる蒸気使用設備に対する改善必要性の評価の概要を示す。この蒸気使用設備評価システムSは、主に、対象の蒸気使用設備における複数の蒸気発生コスト要因σiを取得するデータ入力部S1、取得した蒸気発生コスト要因σiから蒸気発生コストCを演算する基準化演算部S2、蒸気使用設備に対する改善必要性を評価するための各種閾値を設定する閾値設定部S3、演算された蒸気発生コストCに基づいて対象の蒸気使用設備に対する改善必要性を評価するための評価情報Iを生成する評価情報生成部S4、評価情報Iを表示するモニターS5とから構成される。
蒸気発生コスト要因σiは、対象の蒸気使用設備における蒸気発生機器で蒸気を発生させるために必要なコストを形成するものであり、例えば、各蒸気発生機器における蒸気発生量、各蒸気発生機器で使用する燃料の種類・価格・使用量(2種以上の燃料を併用する場合は各燃料について)、各蒸気発生機器における燃料使用量に対する蒸気発生効率などである。
蒸気発生コストCは、複数の蒸気発生コスト要因σiを単一の基準値に基準化(又は規格化)した値である。
また、閾値設定部S3では、蒸気発生コストCの閾値として、蒸気使用設備に対する改善が必要であると評価する基準とする第1閾値x1や、第1閾値x1より低い値であって蒸気使用設備の運転が良好であると評価する基準とする第2閾値x2などを、対象の蒸気使用設備ごとに定める蒸気発生コストCの基準値に基づいて設定してある。
蒸気使用設備に対する改善必要性の評価において、この蒸気使用設備評価システムSでは、この様々な蒸気発生コスト要因σiをデータ入力部S1で取得し、基準化演算部S2で蒸気発生コスト要因σiを単一の基準値に基準化した蒸気発生コストCを演算する。
そして、評価情報生成部S4では、蒸気発生コストCの経時的な変化を示すグラフ情報Iaや、閾値設定部S3で設定された第1閾値x1や第2閾値x2などと演算された蒸気発生コストCを比較して蒸気使用設備に対する改善必要性を評価した改善評価情報Ib(改善が必要である、運転が良好である等)などを評価情報として生成し、これらの評価情報がモニターS5に表示される。
このように、蒸気使用設備評価システムSでは、蒸気発生コストCという複数の蒸気発生コスト要因σiが基準化された単一の基準値を用いて、損得がわかりやすいコストの面から蒸気使用設備に対する改善必要性を評価する評価情報を生成するため、蒸気使用設備に対する改善が必要かどうかやその改善後の効果などを蒸気発生コストという単一の値で且つ損得が把握しやすい値で評価することができ、これにより、蒸気使用設備に対する改善必要性を容易且つわかりやすく評価できる。
次に、この蒸気使用設備評価システムSを石油化学プラントである蒸気使用設備Pに適用した例について説明する。
図2は、蒸気使用設備Pの蒸気配管系の全体構成の概略図を示す。この蒸気使用設備Pの蒸気配管系は、主に、それぞれ異なる圧力の蒸気を給送する4つの蒸気管1〜4、蒸気発生機器Gs、蒸気使用機器Usから構成される。この蒸気使用設備Pでは、蒸気発生機器Gsで発生した蒸気が各蒸気管1〜4を通じて各種の蒸気使用機器Usに対し供給されて種々の用途で使用される。
各蒸気管1〜4について具体的に説明すると、1は高圧の蒸気(本実施形態では12000kPa(G))を給送する高圧蒸気管、2は中高圧の蒸気(本実施形態では4000kPa(G))を給送する中高圧蒸気管、3は中圧の蒸気(本実施形態では1000kPa(G))を給送する中圧蒸気管、4は低圧の蒸気(本実施形態では140kPa(G))を給送する低圧蒸気管である。
高圧蒸気管1には、蒸気発生機器Gsである第1ボイラー5から高圧の蒸気が供給される。第1ボイラー5は燃料ガスと燃料Aとを併用して蒸気を発生させる。また、第1ボイラー5における蒸気の発生に用いる燃料ガスと燃料Aの比率は、蒸気発生量や蒸気使用設備の運転状況などに応じて適宜変化するようになっている。
高圧蒸気管1に供給された高圧の蒸気は、高圧蒸気管1に接続された蒸気使用機器Usである第1タービン発電機6に供給され、そこで使用される。高圧蒸気管1から第1タービン発電機6に供給された高圧の蒸気は、第1タービン発電機6での発電に使用されることで中高圧の蒸気に減圧されたのち、中高圧蒸気管2に供給される。
また、高圧蒸気管1は高圧蒸気管1の高圧の蒸気を減圧して中高圧の蒸気として中高圧蒸気管2に供給する第1減圧供給路7と接続してある。この第1減圧供給路7に介装した制御弁(図示しない)の開閉操作により高圧蒸気管1における一部蒸気が適宜に中高圧蒸気管2に供給される。
中高圧蒸気管2には、第1タービン発電機6、第1減圧供給路7、並びに、蒸気発生機器Gsである第2ボイラー8及び廃熱ボイラー9〜12から中高圧の蒸気が供給される。第2ボイラー8は燃料ガスを用いて蒸気を発生させる。廃熱ボイラー9〜12(及び、後述する廃熱ボイラー19及び22)は、蒸気使用設備Pの運転(例えば、後述する燃焼炉の運転)において生じた廃熱により蒸気を発生させる。即ち、廃熱ボイラー9〜12(及び、後述する廃熱ボイラー19及び22)では実質的に蒸気発生のための燃料は要さない。
中高圧蒸気管2に供給された中高圧の蒸気は、中高圧蒸気管2に接続された蒸気使用機器Usである第2タービン発電機13、第1中高圧タービン14、第2中高圧タービン15、第3中高圧タービン16、及び、熱交換器17に供給され、そこで使用される。
中高圧蒸気管2から第2タービン発電機13に供給された中高圧の蒸気は、第2タービン発電機13での発電に使用されることで中高圧の蒸気又は低圧の蒸気に減圧されたのち、中圧蒸気管3又は低圧蒸気管4に供給される。中高圧蒸気管2から第1中高圧タービン14に供給された中高圧の蒸気は、第2中高圧タービン14で使用されることで中圧の蒸気に減圧されたのち、中圧蒸気管3に供給される。中高圧蒸気管2から第2中高圧タービン15に供給された中高圧の蒸気は、第2中高圧タービン15で使用されることで低圧の蒸気に減圧されたのち、低圧蒸気管4に供給される。
中高圧蒸気管2は中高圧蒸気管2の中高圧の蒸気を減圧して中圧の蒸気として中圧蒸気管3に供給する第2減圧供給路18と接続してある。この第2減圧供給路18に介装した制御弁(図示しない)の開閉操作により中高圧蒸気管2における一部蒸気が適宜に中圧蒸気管3に供給される。
中圧蒸気管3には、第2タービン発電機13、第1中高圧タービン14、第2減圧供給路18、及び、蒸気発生機器Gsである廃熱ボイラー19を通じて中圧の蒸気が供給される。
中圧蒸気管3に供給された中圧の蒸気は、中圧蒸気管3に接続された蒸気使用機器Usである中圧タービン20、及び、熱交換器21に供給され、そこで使用される。中圧蒸気管3から中圧タービン20に供給された中圧の蒸気は、中圧タービン20で使用されることで低圧の蒸気に減圧されたのち、低圧蒸気管4に供給される。
低圧蒸気管4には、第2タービン発電機13、第2中高圧タービン15、中圧タービン20、及び、蒸気発生機器Gsである廃熱ボイラー22を通じて低圧の蒸気が供給される。
低圧蒸気管4に供給された低圧の蒸気は、蒸気使用機器Usである脱気器23、及び、熱交換器24に供給され、そこで使用される。脱気器23では、低圧蒸気管4から供給される低圧蒸気による加熱により、第1ボイラー5,第2ボイラー8、廃熱ボイラー9〜12,19,22に対し蒸気源として供給する水の脱気が行われる。また、低圧蒸気管4における余分の低圧の蒸気はベント管25を通じ不要蒸気として系外に放出される。
このように、蒸気使用設備Pは、蒸気発生機器Gsで発生した蒸気が蒸気使用機器Usで使用されたのち、より低圧側の蒸気管に接続された蒸気使用機器Usで順次再利用される構成となっている。
また、蒸気使用設備Pの蒸気配管系の各部には、各部を通過する蒸気の情報(流量、圧力、温度など)や、蒸気発生機器Gsにおける蒸気発生量、蒸気使用機器Usにおける蒸気使用量、第1及び第2タービン発電機6,13における発電量などの情報を検出して蒸気使用機器評価システムSに送信する各種検出器(図示しない)が設けられている。この検出器により検出された情報は蒸気使用設備評価システムSに送信される。なお、機器の設置場所や機器や検出する情報の監視の重要性に応じて、点検員による点検により各種情報を収集して、点検員が各種情報を蒸気使用設備評価システムSに入力するようにしてもよい。
なお、図2はあくまでも概略図であり、図2において各機器1〜25はそれぞれ1つずつしか表示していないが、必ずしも蒸気使用設備Pの蒸気配管系において各機器1〜25がそれぞれ1つずつだけ設けられていることを意味しない。例えば、図2において、第1タービン発電機6は1つしか表示されていないが、これは、蒸気使用設備Pの全体において第1タービン発電機6が1つのみ設けられていることを示すのではなく、蒸気使用設備Pの全体において複数設けられている第1タービン発電機6が、簡略化して1の第1タービン発電機6としてまとめて表示されていることを含む。これは他の各機器1〜25についても同様である。
図3に示すように、蒸気使用設備Pにおける蒸気配管系の各部には、多数の蒸気トラップTやバルブBが分散配備されている。そして、機器状態検出用のセンサを備え、検出した機器状態情報(温度や振動など)を位置情報や設置機器の型式情報などとともに蒸気使用設備評価システムSに送信する検出器Dが、監視対象として設定した蒸気トラップTやバルブBごとに装備されている。これにより、監視対象とする各蒸気トラップTや各バルブBごとの機器状態情報が蒸気使用設備評価システムSに集計され、蒸気使用設備評価システムSにより、ドレン排出箇所(蒸気トラップTやバルブB)の状態を常時又は定期的に監視できる。
なお、検出器Dを蒸気トラップTやバルブBに直接装備することなく、その近傍に装備して間接的に監視対象の蒸気トラップTやバルブBの機器状態情報(温度や振動など)を検出するようにしてもよい。
また、設置場所などのドレン排出箇所の設置環境やドレン排出箇所の監視の重要性によっては、検出器Dを用いず、点検員が各ドレン排出箇所(蒸気トラップTやバルブB)の機器状態情報を可搬式の検出器により収集し、収集した機器状態情報を蒸気使用設備評価システムSに入力するようにする。つまり、この蒸気使用設備Pでは、各ドレン排出箇所の設置環境や監視の重要性などの条件に応じて、各ドレン排出箇所を検出器Dにより機器状態情報を収集するものと点検員による点検により機器状態情報を収集するものとに分類する。
なお、全ドレン排出箇所の検出器Dにより機器状態情報を収集するようにしてもよく、又は、全ドレン排出箇所を点検員による点検により機器状態情報を収集するようにしてもよい。
図4は、蒸気使用設備Pの燃料配管系の一部構成を示す。この蒸気使用設備Pの燃料配管系は、2つの燃料ガス管30,31、燃焼炉32〜35、上記した第1及び第2ボイラー5,8、液体のC4留分の燃料を貯留する燃料タンク36、C4留分の燃料が供給されるガスタービン37などから構成される。以下では、燃料ガス管30,31に燃料ガスを供給する機器を燃料ガス発生機器Gf、燃料ガス管30,31から燃料ガスの供給を受ける機器を燃料ガス使用機器Ufとする。
各燃料ガス管30,31について具体的に説明すると、30は高圧の燃料ガスを輸送する高圧ガス管、31は低圧の燃料ガスを輸送する低圧ガス管である。
高圧ガス管30では、燃料ガス発生機器Gfである燃焼炉32,33から供給される高圧の燃料ガスが図示しない輸送先へ輸送される。また、高圧ガス管30は、高圧ガス管30の高圧の燃料ガスを減圧して低圧の燃料ガスとして低圧ガス管31に供給する供給路38と接続してある。この供給路38に介装した制御弁(図示しない)の開閉操作により高圧ガス管30における燃料ガスが適宜に低圧ガス管31に供給される。
低圧ガス管31では、供給路38から供給される低圧の燃料ガスが図示しない輸送先へ輸送され、輸送される低圧の燃料ガスの一部は、燃料ガス使用機器Ufである燃焼炉34,35、上述した第1及び第2ボイラー5,8に供給される。燃料ガスが供給された燃焼炉34,35はC4留分の燃料を発生させて、発生したC4留分の燃料は燃料タンク36に貯留されるとともに、その一部が必要に応じて燃料ガス使用機器Ufであるガスタービン37に供給される。第1及び第2ボイラー5,8は、供給される燃料ガスにより蒸気を発生させる。また第1ボイラー5には燃料ガスとは異なる燃料A(図示しない、例えば石油、石炭など)も供給される。
蒸気使用設備Pの燃料配管系の各部には、各部を通過する燃料ガスの情報(流量、圧力、温度など)や、燃料ガス発生機器Gfにおける燃料ガス発生量、燃料ガス使用機器Ufにおける燃料使用量、燃料タンクに貯留された液体燃料の量などの情報を検出して位置情報や型式情報などとともに蒸気使用機器評価システムSに送信する検出器(図示しない)が設けられている。この検出器により検出された情報は蒸気使用設備評価システムSに送信される。なお、機器の設置場所や機器や検出する情報の監視の重要性に応じて、点検員による点検により各種情報を収集して、点検員が各種情報を蒸気使用設備評価システムSに入力するようにしてもよい。
なお、図2と同様に、図4における各機器5,8,30〜38は、図4においてそれぞれ1つずつしか表示していないが、必ずしも蒸気使用設備Pの燃料配管系において各機器5,8,30〜38がそれぞれ1つずつだけ設けられていることを意味せず、蒸気使用設備Pの全体において複数設けられている各機器5,8,30〜38が、簡略化して1つに
まとめて表示されていることを含む。
次に、この蒸気使用設備Pにおける蒸気使用機器の用途及び蒸気使用機器まわりの構成について例示する。
例えば、図5は蒸気使用機器としての第1中高圧タービン14の用途の1つを示す第1中高圧タービン14まわりの構成図である。この第1中高圧タービン14まわりでは液体燃料の生成が行われる。
具体的に説明すると、第1中高圧タービン14はコンプレッサー50と連結してあり、中高圧蒸気管2と連通する蒸気入口路51から第1中高圧タービン14に蒸気Stが供給されることによりコンプレッサー50は駆動する。このコンプレッサー50の駆動により燃料ガス供給路53からコンプレッサー50に供給される燃料ガスFが液体燃料Lに圧縮生成される。そして、生成された液体燃料Lは液体燃料供給路54を通じて排出される。蒸気入口路51から第1中高圧タービン14に供給された蒸気Stは中圧蒸気管3と連通する蒸気出口路52を通じて排出される。また、第1中高圧タービン14に供給される蒸気Stの量は調節バルブ55により調節可能に構成されている。
第1中高圧タービン14及びコンプレッサー50は、前記した中圧タービン20と連結されたタービンポンプ56及びモーター57により駆動するモータポンプ58と潤滑油供給路59を介して接続されている。中圧タービン20に中圧蒸気管3と連通する蒸気入口路60から蒸気Stが供給されることによりタービンポンプ56は駆動する。蒸気入口路60から中圧タービン20に供給された蒸気Stは中圧蒸気管3と連通する蒸気出口路61を通じて排出される。これらタービンポンプ56及びモータポンプ58の駆動により、第1中高圧タービン14及びコンプレッサー50に潤滑油Oが供給される。潤滑油Oが安定的に供給されることにより、第1中高圧タービン14及びコンプレッサー50は円滑に駆動する。
また、基本的には、第1中高圧タービン14及びコンプレッサー50への潤滑油Oの供給はモータポンプ58が行い、潤滑油Oの供給圧力が設定値以下になった場合に、タービンポンプ56による潤滑油Oの供給も行う。このため、潤滑油Oの供給圧力が設定値以下になった場合に、調節バルブ62の調節によりタービンポンプ56に所定の運転をさせるのに必要な量の蒸気Stが中圧タービン20に供給される。なお、潤滑油Oの供給をモータポンプ58でのみ行う場合でも、調節バルブ62の調節により暖気のためのスローロール運転を行う程度の蒸気Stが中圧タービン20に供給される。
第1中高圧タービン14の蒸気入口路51及び蒸気出口路52、中圧タービン20の蒸気入口路60及び蒸気出口路61、並びに、中圧タービン20には蒸気トラップTが配備されている。そして、各蒸気トラップTを監視対象として、上記した検出器Dにより各蒸気トラップTの機器状態情報(温度、振動など)が検出され、蒸気使用設備評価システムSに送信される。
第1中高圧タービン14の蒸気入口路51及び蒸気出口路52、コンプレッサー50の燃料ガス供給路53及び液体燃料供給路54、並びに、潤滑油供給路59には検出器Dとしての圧力計63〜68が装備され、各場所を流れる流体の圧力が検出される。第1中高圧タービン14の蒸気入口路51、及び、コンプレッサー50の液体燃料供給路54には検出器Dとしての流量計69,70が装備され、蒸気St又は液体燃料の流量が検出される。また、第1中高圧タービン14と接続された検出器Dとしての回転数計71により第1中高圧タービン14の回転数が計測される。また、モーター58には検出器Dとしての温度振動センサ72が装備されており、モーター58の温度や振動が検出される。そして圧力計63〜68、流量計69,70、回転数計71、温度振動センサ72で検出された
各種情報は蒸気使用機器評価システムSに送信される。
同じく、蒸気使用設備Pにおける蒸気使用機器Usの用途及び蒸気使用機器Usまわりの構成の例示として、図6に蒸気使用機器Usとしての中圧タービン20まわりの構成図を示す。図6は、図5における中圧タービン20とは別の中圧タービン20であり、図5における中圧タービン20と異なる用途を示す。
この中圧タービン20まわりでは廃熱ボイラー9〜12,19,22への蒸気発生用の水の供給が行われる。
具体的に説明すると、中圧タービン20まわりは、中圧タービン20と連結されたタービンポンプ80、モーター81により駆動するモータポンプ82により構成される。タービンポンプ80は中圧蒸気管3と連通する蒸気入口路83から中圧タービン20に蒸気Stが供給されることにより駆動する。これらタービンポンプ80及びモータポンプ82の駆動により、給水路85を通じて廃熱ボイラー9〜12,19,22へ蒸気発生用の水が供給される。蒸気入口路83から中圧タービン20に供給された蒸気Stは低圧蒸気管4と連通する蒸気出口路84を通じて排出される。中圧タービン20に供給される蒸気Stの量は調節バルブ86により調節可能に構成されている。
基本的には、廃熱ボイラー9〜12,19,22への蒸気発生用の水Wの供給はモータポンプ82が行い、水Wの供給圧力が設定値以下になった場合にタービンポンプ80による水Wの供給も行われる。このため、水Wの供給圧力が設定値以下になった場合にのみ、調節バルブ86の調節によりタービンポンプ80に所定の運転をさせるのに必要な量の蒸気Stが中圧タービン20に供給される。水Wの供給をモータポンプ82でのみ行う場合は、蒸気入口路83からの蒸気Stの供給は行われない。なお、蒸気出口路84の蒸気Stにより中圧タービン20が暖気される。
タービンポンプ80、並びに、タービンポンプ80の入口側の給水路85a及び出口側の給水路85bには、蒸気Stを通過させるトレース配管87がそれぞれ設けられている。そして、このトレース配管87への蒸気Stの供給と供給蒸気Stの遮断を適宜繰り返すことにより、又は通過させる蒸気量や蒸気Stの温度を変化させることにより、そこを流れる水Wの温度が適温に保たれる。供給蒸気Stから変化し、トレース配管87に滞留した復水や凝縮水などのドレンは、各トレース配管87に装備された蒸気トラップTにより排出される。
トレース配管87に加え、中圧蒸気管3、並びに、中圧タービン20の蒸気入口路83及び蒸気出口路84にも蒸気トラップTは配備されている。そして、各蒸気トラップTを監視対象として、上記した検出器Dにより各蒸気トラップTの機器状態情報(温度、振動など)が検出され、蒸気使用設備評価システムSに送信される。また、この検出器Dはモーター82の機器状態情報(温度、振動など)が検出可能な位置にも配備されており、検出器Dによりその機器状態情報が検出され、蒸気使用設備評価システムSに送信される。
中圧蒸気管3には検出器Dとしての圧力計88及び流量計89が装備されており、中圧蒸気管3から中圧タービン20の蒸気入口路83に供給される蒸気Stの圧力及び流量が検出される。給水路85にも検出器Dとしての圧力計90が装備されており、廃熱ボイラー9〜12,19,22へ供給される蒸気発生用の水Wの吐出圧力が検出される。中圧タービン20には検出器Dとしての回転数計91が装備されており、中圧タービン20の回転数が検出される。モーター81には検出器Dとしての電流計92及び温度振動センサ93が装備されており、モーター81の電流値、温度、振動が検出される。そして検出された各種情報は蒸気使用機器評価システムSに送信される。
次に、蒸気使用設備評価システムSについて説明する。図7は蒸気使用設備評価システムSのシステム構成を示す。蒸気使用設備評価システムSは、上記したデータ入力部S1、基準化演算部S2、閾値設定部S3、評価情報生成部S4、モニターS5と、各種情報を記憶する記憶部S6、評価情報生成部S4に対する指示が入力される指示入力部S7とから構成される。
データ入力部S1は、蒸気使用設備Pに設けた各検出器Dから送信される情報や点検員により収集された情報を取得する。なお、取得される各種情報は下記に示すように情報Ja〜Jdに分類されている。
詳しくは、取得された各種情報は、蒸気使用設備Pの蒸気配管系の各部を通過する蒸気量などの蒸気配管系情報Jaと、蒸気使用設備Pの燃料ガス配管系の各部を通過する燃料ガス量などに基づく燃料配管系情報Jbと、蒸気使用設備Pにおける機器(蒸気発生機器Gsや蒸気使用機器Usなど)ごとにその機器の情報とその周辺機器や配管などの情報を関連付けた状態でまとめた機器情報Jcと、蒸気使用設備Pにおけるドレン排出箇所の状態情報をまとめたドレン排出箇所情報Jdとに分類されている。なお、これら情報Ja〜Jdは記憶部S6に記憶される。
蒸気配管系情報Jaは、具体的には、図2に示した、蒸気発生機器Gsによる発生蒸気、蒸気発生機器Gsなどによる各蒸気管1〜4への供給蒸気、各蒸気使用機器Usによる使用蒸気、各6,13〜15,20から各蒸気管1〜4への供給蒸気、ベント管25からの放出蒸気、第1及び第2減圧供給管7、18から中高圧及び中圧蒸気管2,3への供給蒸気、各蒸気管1〜4に接続された蒸気トラップT(例えば、図5、図6)での蒸気通過損失量と管中の凝縮とを併せた不明蒸気などの主な蒸気の情報(流量、圧力、温度などの情報)、各タービン発電機6、13での発電量の情報、蒸気使用設備Pの電力需要や受電量の情報などである。
燃料配管系情報Jbは、具体的には、燃料発生機器Gfによる発生燃料ガス、燃料発生機器Gfからの高圧ガス管30への供給燃料ガス、燃料使用機器Ufによる使用燃料ガス、供給路38から低圧ガス管31への供給燃料ガスなどの主な燃料ガスの情報(流量、圧力、温度などの情報)、燃焼炉34,35で発生するC4留分の燃料の量の情報、ガスタービン37でのC4留分の燃料の使用量、燃料タンク36のC4留分の燃料の貯留量などのC4留分の燃料の情報、第1ボイラー5への燃料Aの供給量の情報、第1及び第2ボイラー5,8において蒸気を発生させるのに要した燃料費の情報などである。
機器情報Jcは、蒸気使用機器Usである第1中高圧タービン14を例にすると、対象の第1中高圧タービン14やその周辺の蒸気トラップTやコンプレッサー50などの周辺機器に装備された検出器Dからの各種情報を関連付けた状態でまとめた情報である。
ドレン排出箇所情報Jdは、蒸気使用設備Pにおける監視対象の蒸気トラップT及びバルブBの機器状態情報(温度、振動など)と各蒸気トラップTやバルブBの位置関係及び蒸気トラップTとバルブBとの対応関係とを関連付けた情報である。
また、記憶部S6には、各情報Ja〜Jdの各値に対する基準値や、蒸気使用設備における各機器(蒸気発生機器Gs、蒸気使用機器Us、燃料発生機器Gf、燃料使用機器Ufやその周辺機器、各種配管など)の仕様や各蒸気発生機器Gsで使用する燃料の種類・価格、ドレン排出箇所における配管レイアウト・蒸気トラップTの状態や型式・蒸気トラップTの周辺のバルブBの状態や型式などのドレン排出箇所のデータベースなどの基本情報をまとめた基準情報Je、蒸気使用設備に対する改善アイデアとその具体的実行内容をまとめた改善アイデア情報Jfを格納してある。各基準値としては、蒸気使用設備Pの設
計時における各情報の値や、蒸気使用設備Pの点検において検出された値などを格納してある。
そして、データ入力部S1は、各検出器Dから送信され、又は、点検員により収集された情報Ja〜Jdに加え、これら基準情報Je、改善アイデア情報Jfを記憶部S6から取得する。つまり、データ入力部S1は、各種情報Ja〜Jfを取得する。
基準化演算部S2は、データ入力部S1で取得された情報のうち、蒸気発生コスト要因σiとして、本例では、各蒸気発生機器Gsにおける蒸気発生量、各蒸気発生機器Gsにおける燃料使用量、その燃料の種類や価格に基づいて、蒸気発生コストCを演算する。
より具体的には、蒸気発生機器Gsにおける総蒸気発生量を、各ボイラー5,8〜12,19,22による発生蒸気量を合計することにより求める。次に、蒸気発生機器Gsにおける総燃料費を、第1及び第2ボイラー5,8における各燃料の燃料使用量(第1ボイラー5については燃料ガスと燃料A夫々の使用量、第2ボイラーについては燃料ガスの使用量)と各燃料の価格に基づいて求める(廃熱ボイラー9〜12,19,22については蒸気使用設備Pの運転において生じた廃熱により蒸気を発生させるため除いてある)。そして、蒸気発生機器Gsにおける総燃料費を、蒸気発生機器Gsにおける総蒸気発生量で除することにより蒸気発生コストCを演算する。
なお、演算された蒸気発生コストCは記憶部S6に記憶される(図7での表記は省略する)。
閾値設定部S3は、基準情報Jeのうち、蒸気使用設備Pにおける蒸気発生コストCの基準値に基づいて、基準値よりも高く蒸気使用設備に対する改善が必要であることの基準とする第1閾値x1、基準値よりも低く蒸気使用設備の運転が良好であることの基準とする第2閾値x2を設定する。なお、第1及び第2閾値x1,x2に代えて、又は、これに加えて、蒸気使用設備に対する改善必要性を評価するための閾値をさらに設定するようにしてもよい。
評価情報生成部S4では、上記したように、演算した蒸気発生コストCの経時的な変化を示すグラフ情報Iaや蒸気使用設備Pに対する改善評価情報Ib(改善が必要である、運転が良好である等)などの各種の評価情報Iを生成する。また、評価情報Iを生成するために、評価情報生成部S4はデータ入力部S1で取得された各種情報Ja〜Jdにおける各値とこれに対応する基準情報Jeにおける各基準値とを比較した比較情報Jg(大小関係やその差の量など)を生成する。
グラフ情報Iaとしては、図8に示すようなグラフ情報画像Gaを生成する。グラフ情報画像Gaは、演算された蒸気発生コストCの値とその基準値、蒸気発生コストCの値が基準値を100%とした場合に何%かを表示する数値表示欄ga1と蒸気発生コストCの経時的な変化を示すグラフを表示するグラフ表示欄ga2から構成される。グラフ表示欄ga2には、蒸気発生コストの経時変化を示す線に併せて、蒸気発生コストの基準値を示す線が表示されている。
蒸気発生コストの経時的な変化をグラフ情報画像GaとしてモニターS5に表示することにより、現在の蒸気発生コストCだけでなく過去の蒸気発生コストCの変動を把握できるから、例えば、過去の蒸気使用設備Pの運転状況を参照するなどにより過去の蒸気発生コストCの変動の原因を分析することができて、これにより、蒸気使用設備に対する改善必要性の評価を的確に行うことができる。
また、グラフ表示欄ga2には、蒸気使用設備Pにおいて消費される燃料の経時変化を
示す線も併せて表示してもよい。蒸気使用設備Pのように廃熱ボイラー9〜12,19,22によっても蒸気を発生させる場合には、蒸気使用設備Pにおいて消費される燃料が少ない、即ち、蒸気使用設備Pの運転が停滞しているほど運転により生じる廃熱が減少して、廃熱ボイラー9〜12,19,22において発生する蒸気の量が減ることになる。すると、その分、第1及び第2ボイラーにおいて燃料を使用して蒸気を発生させなければならず、蒸気発生機器Gsにおける燃料使用量が増加し、その結果、蒸気発生コストCが増加することとなる。このように、蒸気発生コストCと蒸気使用設備Pにおいて消費される燃料にはある程度の相関があるため、蒸気発生コストの経時変化と蒸気使用設備Pにおいて消費される燃料の経時変化をあわせて表示することで、蒸気使用設備に対する改善必要性を評価しやすくなる。
改善評価情報Ibについて説明すると、評価情報生成部S4では、演算した蒸気発生コストCが第1閾値x1を超えた場合に蒸気使用設備Pに対する改善が必要であるとする改善評価情報Ibを生成する。これにより蒸気使用設備に対する改善が必要なことがわかる。また、蒸気発生コストCが第2閾値x2を下回った場合に蒸気使用設備Pの運転が良好であるとする改善評価情報Ibを生成する。これにより蒸気使用設備の運転が良好であることがわかるから、例えば、運転が良好と判断された蒸気使用設備の状態を蒸気使用設備の最適な状態を探索する助けとすることができる。
演算された蒸気発生コストCの値が第1閾値と第2閾値の間の値である場合には、評価情報生成部S4は蒸気使用設備Pの運転が平常であるとする改善評価情報Ibを生成する。なお、改善評価情報Ibの生成において、閾値設定部S3において第1及び第2閾値x1,x2に加えてさらに閾値を設定するなどして、蒸気使用設備Pに対する改善必要性の評価を段階的に行うようにしてもよい(改善の緊急度の大中小や、運転の良好の度合いの大中小など)。
評価情報生成部S4は、改善評価情報Ibの生成において、さらに蒸気使用設備Pへの改善策も生成するようにしてもよい。改善策は、例えば、取得された改善アイデア情報Jfを参照して、演算により現状の蒸気使用設備Pの改善に最適な1つの改善アイデア又は改善アイデアの組み合わせを導出することにより生成される。又は、予め記憶部S6に修理保守情報を記憶しておき、蒸気使用設備Pに対する改善が必要であると評価された場合に、生成した比較情報Jgに基づいて異常箇所を判定する(例えば、蒸気使用設備Pにおいて基準値との差が許容範囲を超えた値を示す箇所を異常箇所として認定する、又は比較情報Jgにおける各情報を組み合わせて判断した上で異常箇所を認定するなど)とともに、その異常箇所に対応する修理保守情報を取得するなど、他の適当な手段により生成してもよい。
改善評価情報Ibの出力は、改善評価情報Ibの内容(改善必要性の評価や改善策)をグラフ情報画像Ga上にその旨表示する、または、図示しない通信部により管理者のコンピュータや携帯電話などの通信端末に改善評価情報Ibの内容を送信するなどにより行う。改善評価情報Ibの出力を蒸気使用設備Pに対する改善が必要であると評価された場合や、蒸気使用設備Pの運転が良好であると評価された場合のみに行うなど、改善評価情報Ibの内容に応じて改善評価情報Ibの出力を行うようにしてもよい。
評価情報生成部S4は、評価情報の1つとして、蒸気配管系情報Jaに基づいて、蒸気配管系各部を表示体で示す蒸気使用設備Pの蒸気配管系の構成図情報(蒸気配管系評価情報)Icも生成する。具体的には、蒸気配管系評価情報Icとしては、図9に示すような蒸気配管系画像Gbを生成する。
評価情報生成部S4は、比較情報Jgのうち、蒸気配管系情報Jaにおける蒸気使用設
備Pの蒸気配管系各部を通過する各蒸気量と、基準情報Jeにおけるこれらの蒸気量に対応する基準値との比較情報Jg(大小関係やその差など)に基づいて、蒸気配管系画像Gbにおいて、各表示体の近傍の各々に、取得された蒸気量の値のうちの各表示体に対応する部位を通過する蒸気量の値をその比較情報と関連付けた状態で表示されるようにしてある。蒸気量の値を比較情報と関連付けた状態とは、例えば、蒸気量の値を基準値との大小関係や差に応じて、蒸気量の値を色分けして表示したり、数値を強調したり、数値を枠で囲む、網掛けして表示する、又は、各機器と配管をつなぐ矢印や線を色分けする若しくは強調するなどした状態である。
画像Gbには、蒸気使用設備Pの蒸気配管系を示す設備構成表示欄gb1、蒸気使用設備Pの総蒸気発生量・不明蒸気量・不明蒸気率(総蒸気発生量に占める不明蒸気量の割合)を示す蒸気量表示欄gb2、蒸気使用設備Pにおける各燃料消費量、発電量、水の消費量、CO2消費量などを示す燃料等表示欄gb3が表示される。
設備構成表示欄gb1には、図2で説明した各構成を示す表示体1〜25に加え、各蒸気管1〜4に接続された多数の蒸気トラップTでの通過蒸気損失量及び各蒸気管1〜4での給送中の凝縮などで損失する蒸気損失量の合計値を各蒸気管1〜4における不明蒸気量とし、この各不明蒸気量の行き先と仮定した表示体26〜28を表示する。そして、設備構成表示欄g1における各表示体1〜28の近傍には、各表示体1〜28の各々を通過する蒸気量(t/h)の情報を比較情報と関連付けた状態で表示する(図9では基準値よりも高い値を示すものを網掛けして表示し、基準値よりも低い値を示すものを枠で囲んで表示してある)。
蒸気量表示欄gb2には、蒸気使用設備Pの総蒸気発生量・不明蒸気量・不明蒸気率を比較情報と関連付けた状態で表示する(図9では基準値よりも高い値を示すものを網掛けして表示してある)。
燃料等表示欄gb3では、各燃料消費量(本例では燃料(C4)、燃料ガス)、発電量、水の消費量と基準情報Jeにおけるこれらの基準値との差とその差の金額換算値、CO2消費量の基準値との差を表示する。
評価情報生成部S4は、評価情報の1つとして、燃料配管系情報Jbに基づいて、燃料配管系各部を表示体で示す蒸気使用設備Pの燃料配管系の構成図情報(燃料配管系評価情報)Idも生成する。具体的には、燃料配管系評価情報Idとしては、図10に示すような燃料配管系画像Gcを生成する。
評価情報生成部S4は、比較情報Jgのうち、燃料配管系情報Jbにおける蒸気使用設備Pの燃料配管系各部を通過する各燃料の量などの情報と、基準情報Jeにおけるこれらの情報に対応する基準値との比較情報(大小関係やその差など)に基づいて、燃料配管系画像Gcにおいて、各表示体の近傍の各々に、取得された燃料の量の値のうちの各表示体に対応する部位を通過する燃料量の値をその比較情報と関連付けた状態で表示されるようにしてある。燃料量の値を比較情報と関連付けた状態とは、例えば、各燃料の値を基準値との大小関係や差に応じて、各燃料の値を色分けして表示したり、数値を強調したり、数値を枠で囲む、網掛けして表示する、又は、各機器と配管をつなぐ矢印や線を色分けする若しくは強調するなどした状態である。
燃料配管系画像Gcには、蒸気使用設備Pの燃料配管系を示す設備構成表示欄gc1、蒸気使用設備Pの総燃料ガス発生量、総燃料ガス消費量・不明ガス量・不明ガス率(総燃料ガス発生量に占める不明蒸気量の割合)を示す燃料ガス消費量表示欄gb2、蒸気使用設備Pにおける各燃料の消費量を示す燃料等表示欄gb3が表示される。
設備構成表示欄gc1には、図2で説明した各構成を示す表示体30〜38を表示する。そして、設備構成表示欄g1における各表示体30〜38の近傍には、各表示体30〜38から給送される又は各表示体30〜38に供給される各燃料(本例では燃料ガス、C4留分の燃料)の量(t/h)の情報を比較情報と関連付けた状態で表示する(図10では基準値よりも高い値を示すものを網掛けして表示し、基準値よりも低い値を示すものを枠で囲んで表示してある)。
燃料ガス量表示欄gc2には、蒸気使用設備Pの総燃料ガス発生量、総燃料ガス消費量・不明ガス量・不明ガス率を比較情報と関連付けた状態で表示する(本例では基準値よりも高い値を示すものを網掛けして表示し、基準値よりも低い値を示すものを枠で囲んで表示するようにしてある)。
燃料等表示欄gc3では、各燃料消費量(本例では燃料ガス、C4留分の燃料、燃料Aの消費量)と基準情報Jeにおけるこれらの基準値との差とその差の金額換算値を表示する。
評価情報生成部S4は、評価情報の1つとして、機器情報Jcに基づいて、蒸気使用設備Pにおける機器(蒸気発生機器Gsや蒸気使用機器Usなど)ごとに対象の機器に加えその周辺機器や配管を表示体で示す機器まわりの構成図情報(機器評価情報)Ieも生成する。具体的には、機器評価情報Ieとしては、例えば、図11,12に示すような機器画像Gd、Geを生成する。
評価情報生成部S4は、比較情報Jgのうち、機器情報Jcにおける計測値や検出値と、基準情報Jeにおけるこれらに対応する基準値との比較情報(大小関係やその差など)に基づいて、機器画像Gd、Geにおいて、各表示体を比較情報と関連付けた状態で表示されるようにしてある。各表示体を比較情報と関連付けた状態とは、例えば、計測値や検出値と基準値との大小関係や差に応じて、各表示体を色分けする若しくは強調するなどした状態である。
例えば、蒸気使用機器Usである第1中高圧タービン14まわりの機器評価情報Ieとして、図11に示すような機器画像Gdを生成する。画像Gdでは、図5で説明した各構成を示す表示体14,20,50〜72、Tを比較情報と関連付けた状態で表示する(例えば、図11では、基準値との比較からその箇所が異常と判断された場合にその箇所を囲むようにしてある)。
また、例えば、蒸気使用機器Usである中圧タービン20まわりの機器評価情報Ieとして、図12に示すような機器画像Geを生成する。機器画像Geでは、図6で説明した各構成を示す表示体20,80〜93、Tを比較情報と関連付けた状態で表示する(例えば、図12では、基準値との比較からその箇所が異常と判断された場合にその箇所を囲むようにしてある)。
評価情報生成部S4は、評価情報の1つとして、ドレン排出箇所情報Jdに基づいて、蒸気使用設備Pにおけるドレン排出箇所(蒸気トラップTやバルブB)を表示体で表示する配置図の情報や各ドレン排出箇所の状態の判定情報を示すドレン排出箇所評価情報Ieも生成する。
具体的には、評価情報生成部S4は、ドレン排出箇所の状態の判定情報として、比較情報Jgのうち、各ドレン排出箇所の機器状態情報(温度、振動など)と基準情報Jeにおけるこれらに対応する基準値との比較情報に基づいて各ドレン排出箇所の状態の判定を行
い、状態が正常であるか異常であるか、その異常の種類(蒸気漏れ異常、トラップ閉塞異常、温度異常など)、その異常の度合いを段階的に判定した(例えば、注意レベル、故障レベルなど)情報を生成する。
なお、蒸気漏れ異常とは、蒸気トラップTの本来機能として蒸気の流出を阻止しながら復水のみを排出することが要求されるのに対し蒸気が許容限度を超えて流出する異常である。トラップ閉塞異常とは復水の排出が円滑に行われない異常(すなわちトラップ詰まり)であり、温度異常とはトラップ温度tsないしはトラップ周囲温度toが適正範囲を低下側ないし上昇側に逸脱する異常である。
そして、上記判定情報に基づいて、評価情報生成部S4は、ドレン排出箇所評価情報Ieとして、例えば、図13に示すような各表示体が上記判定情報と関連付けられた状態で表示されるドレン排出箇所の配置図であるドレン排出箇所画像Gfを生成する。各表示体を判定情報と関連付けた状態とは、例えば、その判定情報の内容に応じて、各表示体を色分けする、強調する若しくはその表示を変更するなどした状態である。
ドレン排出箇所画像Gfは、蒸気使用設備Pの一部におけるドレン排出箇所の配置を示し、各ドレン排出箇所がその配置場所で表示体T、Bとして表示されている。そして、各表示体T、Bは上記判定情報と関連付けた状態で表示されている。本例では、例えば表示体Tの場合は、図13では、100は蒸気トラップTの状態が正常であることを示し、101は蒸気トラップTの状態が蒸気漏れ異常の注意レベルであることを示し、102は蒸気トラップTの状態が蒸気漏れ異常の故障レベルであることを示し、103は蒸気トラップTの状態が温度異常であること、104は使用していない蒸気トラップTであること、105はバルブの状態が正常であることを示す。このように、画像Gfにより、視覚的にドレン排出箇所の状態が把握できる。
さらに、ドレン排出箇所評価情報Ifであるドレン排出箇所の配置図において、指示入力部7への選択処理により各表示体T、Bを選択することで、選択した表示体Tに対応する配置場所に設置されたドレン排出箇所の詳細情報や工事指示情報が表示されるようにしてある。詳細情報としては、そのドレン排出箇所の状態の詳細や、過去の故障情報や点検結果などの履歴情報が、現在その配置場所に設置されている蒸気トラップTやバルブBの情報に限らず、その配置場所に過去に配置され交換された歴代の蒸気トラップTやバルブBの情報にわたって表示される。工事指示情報としては、対応する蒸気トラップTやバルブBの画像やその配置場所の情報、及び、対応する蒸気トラップTやバルブBの場所や種類、その判定情報の内容(異常の種類、異常の度合いなど)に応じた適切な工事の指示が表示されるようにしてある。
なお、ドレン排出箇所評価情報Ifにおけるドレン排出箇所の配置図としては、蒸気使用設備Pにおけるプロセスフローを示すマップ上にドレン排出箇所(蒸気トラップTやバルブB)を表示体で表示するようにしてもよい。
これら蒸気配管系評価情報Ic、燃料配管系評価情報Id、機器評価情報Ie、ドレン排出箇所評価情報Ifにより、蒸気発生コストCだけでなく蒸気量、燃料の量、各機器の状態、ドレン排出箇所の状態の情報も加味した上で蒸気使用設備Pに対する改善必要性を評価することができ、これにより、蒸気使用設備Pに対する改善必要性の評価を的確に行うことができる。
また、評価情報Iのほか、評価情報生成部S4は、改善アイデア情報Jfに基づいて、図14に示すような改善アイデアが列挙された画像Ggを生成する。
評価情報生成部S4は、列挙された改善アイデアの1つ又は複数を指示入力部S7により選択することで(又は、上記した改善評価情報Ibとしての改善策に基づいて)、選択した改善アイデア(又は、上記した改善策)の実施後の情報である改善蒸気発生コストC´、改善蒸気配管系情報Ja´、改善燃料配管系情報Jb´を演算する。なお、改善蒸気発生コストC´は改善実施後の蒸気発生コストCの値、改善蒸気配管系情報Ja´は蒸気配管系情報Jaの改善実施後の情報、改善燃料配管系情報Jb´は燃料配管系情報Jbの改善実施後の情報である。
そして、評価情報生成部S4は、改善蒸気発生コストC´、改善蒸気配管系情報Ja´、改善燃料配管系情報Jb´に基づいて、グラフ情報Ia、改善評価情報Ib、蒸気配管系評価情報Ic、燃料配管系評価情報Idを更新する。そして、更新後の情報Ia〜IdをモニターS5に表示することで、基準情報Jeとの対比からその改善実施後の蒸気使用設備Pの運転状況を把握できる。
なお、評価情報生成部S4は、改善蒸気配管系情報Ja´及び改善燃料配管系情報Jb´における各値とこれに対応する蒸気配管系情報Ja及び燃料配管系情報Jbにおける各値とを比較した改善比較情報Jg´(大小関係やその差の量など)を生成し、比較情報Jgに代えて改善比較情報Jg´に基づいて蒸気配管系評価情報Ic、燃料配管系評価情報Idを更新するようにしてもよい。つまり、蒸気配管系評価情報Ic、燃料配管系評価情報Idが、各表示体の近傍の各々に、改善蒸気配管系情報Ja´、改善燃料配管系情報Jb´のうちの各表示体に対応する部位を通過する蒸気量又は燃料の値を改善比較情報Jg´(即ち、改善実施前の情報と改善実施後の情報とを比較した情報)と関連付けた状態で表示されるようにしてある。これにより、改善を実施することによる効果が把握できる。
蒸気配管系評価情報Ic及び燃料配管系評価情報Idと機器評価情報Ieとは関連付けしてある。具体的には、蒸気配管系画像Gb及び燃料配管系画像Gcにおける表示体1〜25,30〜38のいずれかを指示入力部S7により選択することで、選択された表示体に対応する機器の機器評価情報Ieの画像が表示される。例えば、図9の蒸気配管系画像Gbにおける表示体14を選択することにより、図11に示すような第1中高圧タービン14まわりの機器画像Gdが表示される。
また、機器評価情報Ieとドレン排出箇所情報Ifとも関連付けしてある。具体的には、機器評価情報Ieとしての画像に表示されるドレン排出箇所(蒸気トラップTやバルブB)の表示体T、Bを指示入力部S7により選択することで、選択された表示体T、Bに対応するドレン排出箇所情報Ifの画像(例えば上記したドレン排出箇所の詳細情報や工事指示情報の画像)が表示される。
上記のような評価情報生成部S4において生成された各種評価情報Ia〜Ifや改善アイデア情報Jfのうち、指示入力部S7における選択処理により選択された情報の画像(例えば画像Ga〜Gg)がモニターS5に表示される。
次に、蒸気使用設備評価システムSを用いて、蒸気使用設備Pに対する改善必要性を評価した例について説明する。
まず、対象とする蒸気使用設備Pに対して、蒸気使用設備Pの基本情報を把握する設備現状調査を探索員により実施する。この設備現状調査において、探索員は、各機器(蒸気発生機器Gs、蒸気使用機器Us、燃料発生機器Gf、燃料使用機器Ufやその周辺機器、各種配管、蒸気トラップT、バルブBなどについて診断器等で実際に診断したり、設計図等から劣化状態を予測したりするなどの診断を行う。そして、その診断結果に基づいて蒸気使用設備Pの基本情報を把握し、記憶部S6に格納する上記した基準情報Jeを基本情報に基づいて作成する。
基本情報としては、各機器(蒸気発生機器Gs、蒸気使用機器Us、燃料発生機器Gf、燃料使用機器Gfやその周辺機器、各種配管など)の仕様や状態、各蒸気発生機器Gsで使用する燃料の種類・価格などを把握する。特に、ドレン排出箇所(蒸気トラップT、バルブBなど)については、ドレン排出箇所の配管レイアウトに問題があるかどうか、蒸気トラップTの状態、設置場所における型式の整合性、蒸気トラップTの周辺のバルブBが正常かどうかなど総合的に診断し、その診断結果をドレン排出箇所のデータベースとして基準情報Jeに含めるようにする。
また、診断の際に、蒸気使用設備Pの状態を遠隔監視するために、蒸気トラップTやバルブB、各機器に対し、特に監視が必要な箇所など、必要に応じて各種の検出器Dを適宜設置する。
以上のような診断や検出器Dの設置を行った後、蒸気使用設備評価システムSを用いた蒸気使用設備Pに対する改善必要性の評価を行う。蒸気使用設備評価システムSには、各検出器Dから送信される各種情報、又は、点検員が収集した各種情報が定期的にデータ入力部S1に入力され、入力された各種情報に基づいて、蒸気使用設備評価システムSの評価情報生成部S4により、評価情報Iとしてグラフ情報Ia、改善評価情報Ib、蒸気配管系評価情報Ic、燃料配管系評価情報Id、機器評価情報Ie、ドレン排出箇所評価情報Ifを生成する。蒸気使用設備Pの管理者は、指示入力部S7による選択処理によりモニターS5に所望の評価情報Iの画像を表示させて、蒸気使用設備Pの状態を監視し、また、評価情報Iに基づいて蒸気使用設備Pに対する改善必要性を評価する。
例えば、グラフ情報Iaにより蒸気発生コストCの経時的な変化を表示することで、複雑な蒸気使用設備Pの運転状況を単一の基準値の蒸気発生コストCで的確に把握・評価することができる。また、改善評価情報Ibにより改善が必要であるか、運転が良好であるかなどが即座にわかる。そして、改善評価情報Ibにより改善が必要である、又は、運転が良好であることが示された場合は、蒸気配管系評価情報Ic、燃料配管系評価情報Id、機器評価情報Ie、ドレン排出箇所評価情報Ifを参照することにより、改善が必要となっている要因や運転が良好である要因の推定が可能となる。
さらに、改善評価情報Ibにより示された改善策や、蒸気配管系評価情報Ic、燃料配管系評価情報Id、機器評価情報Ie、ドレン排出箇所評価情報Ifを参照することにより推定された改善策に基づいて、図14に示すような改善アイデア画像Ggから所望の改善アイデアを指示入力部S7により選択することで、改善による効果を確認できる。
以上のように、蒸気使用設備評価システムSでは、各種の評価情報Ia〜Ifを組み合わせて、蒸気発生コストC、蒸気量、燃料の量、各機器の状態、ドレン排出箇所の状態など、蒸気使用設備Pを総合的に把握して蒸気使用設備Pに対する改善必要性を評価することができ、これにより、蒸気使用設備Pに対して的確に改善を施すことができる。
なお、各種の評価情報Ia〜Ifの用途は上記したものに限られない。
さらに、蒸気使用設備評価システムSによれば、蒸気発生コストC・蒸気量・燃料の量、いわば、蒸気使用設備Pにおける蒸気バランス、熱・電気バランスや運転コストなどの蒸気使用設備P全体のエネルギーバランスと、蒸気使用設備Pにおける機器状態、蒸気使用設備Pにおけるドレン排出箇所の状態を把握でき、つまり、蒸気使用設備Pをエネルギーバランス、機器状態、ドレン排出箇所状態の3つの観点から総合的に把握できる。そして、蒸気使用設備評価システムSを用いて蒸気使用設備Pに対する改善必要性をシミュレートして最適な状態を探索することにより、エネルギーバランス、機器状態、ドレン排出箇所状態の3つの観点から蒸気使用設備Pの最適化を図ることができる。
また、蒸気使用設備評価システムSはインターネットにより外部からアクセス可能にしてあり、パソコンや携帯端末を通じて、蒸気使用設備の管理者や工事担当者、管理会社の担当者など複数人が蒸気使用設備評価システムSを監視・操作をすることができるようにしてある。
〈別実施形態〉
蒸気使用設備評価システムSは次のような発明にも利用できる。
(a)蒸気使用設備の各所に設置した検出器の検出情報に基づき前記蒸気使用設備における蒸気使用機器の作動状態及び蒸気トラップの作動状態を監視し、
この監視結果に基づいて前記蒸気使用設備の運転状態を最適化する蒸気使用設備管理方法。
(b)前記蒸気使用設備におけるエネルギーバランスを演算し、このエネルギーバランスの演算結果と前記監視結果とに基づいて前記蒸気使用設備の運転状態を最適化する上記(a)の蒸気使用設備管理方法。
(c)前記蒸気使用設備の運転状態を現行状態から最適化した場合に得られる経済効果又は環境効果を試算する上記(a)又は(b)の蒸気使用設備管理方法。
(d)上記(b)の蒸気使用設備管理方法を実施する蒸気使用設備管理システムであって、
蒸気使用設備の各所に配置した検出器の検出情報に基づき前記蒸気使用設備における蒸気使用機器の作動状態及び蒸気トラップの作動状態を監視する監視手段と、
前記蒸気使用設備におけるエネルギーバランスをシミュレートするシミュレート手段(評価情報生成部S4)とを備える蒸気使用設備管理システム。