JP6423662B2 - ねじ溝形状測定装置とそれを用いた工作機械 - Google Patents

ねじ溝形状測定装置とそれを用いた工作機械 Download PDF

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Description

この発明は、ボールねじを構成するねじ軸のねじ溝形状を測定するねじ溝形状測定装置に関し、さらには、ねじ溝形状測定装置を備えた工作機械に関する。
ボールねじを構成するねじ軸のねじ溝の断面形状を測定する方法として、たとえば、特許第3577928号公報に記載された技術が知られている。この文献によれば、まず、ねじ軸のねじ溝を軸線方向に測定することによって軸方向断面形状を求め、次にリード角を用いてねじ溝に直角方向に投影した断面形状を求める。この文献では、測定子(探針)を用いた接触式の測定装置が開示されているが、レーザ変位センサなどの非接触方式の測定装置を用いることも可能である。
特許第3577928号公報
上記のようにねじ軸の軸線方向に沿って接触式または非接触式の変位センサを移動させながらねじ溝形状を測定する場合、軸線方向の移動量に比べて変位測定方向(軸線に直角方向)の変位量が大きくなると測定点間隔に粗密の差ができてしまう。この結果、ねじ溝の底付近に比べてねじ溝の縁付近(ねじ山の近傍)では正確なデータが得られないという問題が生じる。
この発明は上記の問題点を考慮してなされたものであり、その目的は、ボールねじを構成するねじ軸のねじ溝形状を従来よりも高精度に測定することが可能なねじ溝形状測定装置を提供することである。
この発明は、ボールねじを構成するねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するねじ溝形状測定装置であって、変位センサと、駆動機構と、制御部とを備える。変位センサは、ねじ軸の表面にレーザ光を照射するかまたは探針を接触させることによって、レーザ光の照射方向の変位または探針の軸方向の変位を検出する。駆動機構は、変位センサをねじ軸に対して相対移動可能であるとともに、少なくとも1つの軸の回りに変位センサを旋回可能である。制御部は、変位センサおよび駆動機構を制御する。ここで、ねじ軸の軸方向を第1の方向とし、第1の方向と垂直な方向を第2の方向とする。制御部は、レーザ光の照射方向または探針の軸方向である変位測定方向が第2の方向に対して傾斜した方向となるように、変位センサを旋回させながら又は変位センサの旋回角を固定した状態で、変位センサによってねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するように構成される。
上記のように変位測定方向を傾斜させることによって、ねじ溝の縁付近まで精度良く測定することができ、測定点の粗密もほとんど生じないようにすることができる。
好ましい一実施形態では、制御部は、第2の方向に対する変位測定方向の傾斜角を固定した状態で、変位センサを第1の方向に相対移動させながら、変位センサによってねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するように構成される。
好ましい他の実施形態では、制御部は、第2の方向に対する変位測定方向の傾斜角を固定した状態で、ねじ溝ごとに第2の方向に対して変位測定方向と反対側に傾斜した方向に変位センサを相対移動させながら、変位センサによって各ねじ溝の形状を測定するように構成される。
上記のように変位センサの移動方向を斜め方向にすることによって、変位センサから測定点までの距離の変動をより小さくすることができるので、測定精度をより高めることができる。
上記の他の実施形態において、好ましくは、ねじ溝ごとの変位センサの相対移動方向と変位測定方向とのなす角度は85度から95度の範囲に含まれる。
上記の一実施形態および他の実施形態において、好ましくは、第2の方向に対する変位測定方向の傾斜角は40度から50度の範囲に含まれる。
変位測定方向をこのような角度に設定することによって、ボールとねじ溝との接触点付近で最も精度良く測定を行うことができる。
好ましいさらに他の実施形態では、制御部は、レーザ光の照射位置または探針の接触位置において変位測定方向がねじ溝の表面に対して直交するように、ねじ溝ごとに変位センサを相対移動および旋回させながら、変位センサによって各ねじ溝の形状を測定するように構成される。
上記のようにレーザ光の照射位置または探針の接触位置において変位測定方向とねじ溝の表面とを直交させることによって、高精度の測定を可能にする。
上記したさらに他の実施形態において、好ましくは、制御部は、ねじ溝にボールねじのボールを接触させたと仮定した場合に、ボールと同心円上に変位センサが位置するとともにレーザ光または探針の中心軸線がボールの中心を通るように、ねじ溝ごとに変位センサを相対移動および旋回させながら、変位センサによって各ねじ溝の形状を測定するように構成される。
この発明は他の局面において、上記のいずれかのねじ溝形状測定装置を備えた工作機械である。
この発明によれば、ボールねじを構成するねじ軸のねじ溝形状を従来よりも高精度に測定することができる。
第1の実施形態によるねじ溝形状測定装置が設けられた工作機械の構成を模式的に示す斜視図である。 図1のねじ溝形状測定装置の機能的構成を示すブロック図である。 レーザ変位センサの構造を模式的に示す図である。 ねじ軸の側面図である。 第1の実施形態によるねじ溝形状の測定手順を示すフローチャートである。 第1の実施形態によるねじ溝形状の測定方法を説明するための模式図である。 比較例によるねじ軸のねじ溝形状の測定方法を説明するための模式図である。 測定したねじ溝形状データの処理手順を示すフローチャートである。 図8のステップS215,S220について説明するための図である。 図8のステップS225,S230について説明するための図である。 図8のステップS235について説明するための図である。 ねじ溝形状がゴシックアーチの場合において、図8のステップS235について説明するための図である。 第2の実施形態によるねじ溝形状の測定手順を示すフローチャートである。 第2の実施形態によるねじ溝形状の測定方法を説明するための模式図である。 第3の実施形態によるねじ溝形状の測定手順を示すフローチャートである。 第3の実施形態によるねじ溝形状の測定方法を説明するための模式図である。 第1〜第3の実施形態の変形例として、接触型変位センサを用いたねじ溝形状の測定について説明するための模式図である。
以下、各実施形態について図面を参照して詳しく説明する。以下では、ねじ溝形状測定装置を組み込んだ工作機械を例に挙げて説明するが、工作機械に限定するものではない。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰り返さない。
<第1の実施形態>
[工作機械の概略構成]
図1は、第1の実施形態によるねじ溝形状測定装置2が設けられた工作機械1の構成を模式的に示す斜視図である。図1の工作機械1には、加工装置10に加えて、NC(Numerical Control)装置40、ATC(自動工具交換装置:Automatic Tool Changer)44、およびコンピュータ64が設けられている。
図2は、図1のねじ溝形状測定装置2の機能的構成を示すブロック図である。図2には、NC装置40、ATC44、コンピュータ64ならびに加工装置10に備えられているX軸用駆動機構34、Y軸・B軸用駆動機構36、Z軸用駆動機構38、チャック28,29、および主軸台20の回転駆動機構30が示されている。この明細書では、X軸用駆動機構34、Y軸・B軸用駆動機構36、およびZ軸用駆動機構38を、駆動機構32と総称する。以下、図1および図2を参照して、加工装置10およびNC装置40について簡単に説明する。
加工装置10は、刃物台24と、工作物(本実施形態では、ねじ軸80)を支持する主軸台20と、工作物の先端部を支持する補助主軸台(または、心押し台)22と、タレット26と、機械本体12とを含む。なお、加工装置10を正面から見て、上下方向、前後方向、左右方向をそれぞれX軸方向、Y軸方向、Z軸方向とする。互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸により、直交3軸が構成される。X軸方向における上向きおよび下向きを区別する場合は、+X方向および−X方向のように符号を付して記載する。Y軸方向およびZ軸方向についても同様である。
主軸台20は、チャック28によって工作物を把持し、把持した工作物を回転駆動機構30によって矢印C1に示す方向に回転駆動する。補助主軸台22は、主軸台20に対して対向配置されており、Z軸方向と平行なZ1軸方向に移動可能である。補助主軸台22のチャック29は、矢印C2に示すように、工作物を把持して回転可能である。
タレット26には、主軸台20のチャック28に把持されている工作物を旋削加工するための複数の工具が取付けられている。タレット26は、X軸方向と平行なX1軸方向と、Z軸方向と平行なZ2軸方向にそれぞれ移動可能である。
刃物台24に設けられた主軸25には、主軸台20のチャック28に把持されている工作物を旋削加工または切削加工するための工具が着脱可能に装着される。主軸25の工具は、ATC(自動工具交換装置)44によって交換される。
加工装置10の機械本体12に設けられたZ軸用移動部18は、Z軸用駆動機構38に駆動されてZ軸方向に移動する。Z軸用移動部18に設けられたX軸用移動部14は、X軸用駆動機構34に駆動されてX軸方向に移動する。X軸用移動部14に設けられたY軸用移動部16は、Y軸・B軸用駆動機構36に駆動されてY軸方向に移動する。
刃物台24は、Y軸用移動部16の前方に取付けられている。刃物台24は、Z軸用移動部18、X軸用移動部14およびY軸用移動部16にそれぞれ駆動されて、Z軸方向、X軸方向、Y軸方向にそれぞれ移動する。Y軸用移動部16の中心軸すなわちB軸は、Y軸と平行になっている。矢印B1に示すように、刃物台24はY軸・B軸用駆動機構36に駆動されてB軸まわりに旋回可能である。
工作機械1は、刃物台24の工具およびタレット26の工具で工作物を旋削加工する旋盤の機能と、刃物台24の工具で工作物を切削加工するマシニングセンタの機能とを有している。工作機械1を旋盤として使用するときには、主軸25に装着された工具は回転せず、工作物を回転させて工具で旋削加工を行う。または、タレット26に取付けられた工具を使用し、工作物を回転させてこの工具で旋削加工を行う。工作機械1をマシニングセンタとして使用するときには、主軸25で工具を回転させて、非回転の工作物を切削加工する。このときの刃物台24は、マシニングセンタの主軸頭としての機能を発揮することになる。
NC装置40は、工作機械1の全体の動作を制御するPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ:Programmable Logic Controller)42を含む。たとえば、PLC42は、図2のX軸用駆動機構34、Y軸・B軸用駆動機構36、Z軸用駆動機構38、および主軸台20の回転駆動機構30を制御する。PLC42は、さらに、補助主軸台22の移動機構、タレット26の移動機構、およびATC44を制御する。
[ねじ溝形状測定装置の構成]
ねじ溝形状測定装置2の基本的な機能は、加工装置10の駆動機構32およびNC装置40のPLC42と連携することによって、ボールねじを構成するねじ軸のねじ溝形状を測定するものである。ねじ溝形状測定装置2は、さらに、測定したねじ溝形状データ76とねじ軸の設計データ78とに基づいて、ねじ軸のリード等を算出する。
図2に示すように、ねじ溝形状測定装置2は、測定ヘッド62と、駆動機構32と、コンピュータ64とを含む。コンピュータ64とNC装置40とによって、測定ヘッド62および駆動機構32を制御するための制御部60が構成される。
本実施形態の場合、測定ヘッド62は、無線通信によってコンピュータ64と通信する無線式のものであり、刃物台24の主軸25にATC44によって装着される着脱可能なものである。これに代えて、刃物台24に固定的に取り付けられ、信号線を介してコンピュータ64と通信する有線式の測定ヘッドを用いることもできる。
測定ヘッド62は、ねじ軸80の外部の基準点33(本実施形態の場合、基準点33はB軸上に位置する)からねじ軸80の表面までの距離DM、すなわち、ねじ溝形状を測定するための変位センサを含む。測定ヘッド62に設けられる変位センサは、測定対象物に接触して測定対象物の表面の変位を測定する接触式のものでもよいし、レーザ光、超音波、または電磁波などを利用して非接触で測定対象物の表面の変位を測定する非接触式のものでもよい。
本実施形態では、一例としてレーザ変位センサによってねじ軸80の表面の変位を測定する例を示す。レーザ変位センサは、測定対象物の表面にレーザ光Lを照射し、レーザ光Lの反射光に基づいてレーザ変位センサからレーザ光Lの照射位置までの距離、すなわち、測定対象物のレーザビーム方向(変位測定方向)の変位を測定する。
駆動機構32は、測定ヘッド62(変位センサ)を測定対象物(ねじ軸80)に対して相対移動可能であるとともに、少なくとも1つの軸の回りに測定ヘッド62(変位センサ)を旋回可能である。本実施形態の場合、測定ヘッド62は、駆動機構32によってX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動可能であるので、少なくとも2軸方向の移動を組み合わせることによって任意の方向に移動可能である。さらに、測定ヘッド62は、Y軸と平行なB軸の回りに旋回可能である(旋回角をψとする)。ねじ軸80は、その中心軸線82の方向がZ軸方向と平行になるようにチャック28,29によって固定される(ねじ溝形状の測定時には、主軸台20の回転駆動機構30は用いられない)。
コンピュータ64は、プロセッサ66、メモリ68、NC装置40との間の入出力インターフェース(図示せず)、および測定ヘッド62との間で無線通信を行う通信装置70等を含む。プロセッサ66は、測定制御プログラムを実行することによってねじ軸80のねじ溝形状を測定する測定制御部72として機能する。測定結果(ねじ溝形状データ76)はメモリ68に格納される。プロセッサ66は、さらに、ねじ軸の設計データ78に基づいて、ねじ溝形状データ76に対して演算処理を行うデータ処理部74として機能する。
ねじ軸80のねじ溝形状を測定する際には、PLC42は、コンピュータ64のプロセッサ66からの指令に基づいて駆動機構32を制御するともに、所定周期でトリガ信号を通信装置70に出力する。通信装置70はトリガ信号を受信すると測定指令fを測定ヘッド62に送信する。測定ヘッド62は、測定指令fに従って、基準点33からねじ軸80までの変位測定方向(レーザビーム162の方向)に沿った距離DMを測定する。測定された距離DMのデータFは、測定ヘッド62から通信装置70を介してコンピュータ64のプロセッサ66に送信される。
PLC42は、さらに、上記の測定ヘッド62による距離測定のタイミングに合わせて、基準点33の位置情報(X,Y,Z)と旋回角ψの情報とを駆動機構32から取得し、取得したこれらの情報をコンピュータ64のプロセッサ66に送信する。プロセッサ66は、基準点33の位置情報(X,Y,Z)、旋回角ψの情報、および距離DMの測定値に基づいて、ねじ溝の測定点(レーザ光の照射位置)の位置情報を算出し、算出した測定点の位置情報を、ねじ溝形状データ76としてメモリ68に記憶する。
[レーザ変位センサの概要]
次に、上記の測定ヘッド62に組み込まれたレーザ変位センサの構造について説明する。
図3は、レーザ変位センサの構造を模式的に示す図である。図3を参照して、レーザ変位センサ100は、発光部110と、光学系としての集光レンズ118と、受光部としてのリニアイメージセンサ(Linear Image Sensor)120とを含む。発光部110は、レーザダイオード112と、レンズ114とを含む。
レーザダイオード112から発せられたレーザビーム116はレンズ114によって略平行光に整形され、測定対象物130へ照射される。測定対象物130上で拡散反射された光は、レーザビーム116とγの角度方向に配置されたリニアイメージセンサ120上に、集光レンズ118によって集光される。この結果、リニアイメージセンサ120上ではガウス分布状の輝度レベルを示すデータが得られる。輝度データの重心位置から三角測量に基づいて、発光部110から測定対象物130上のレーザスポット(レーザ光照射位置)132までの距離が計算される。すなわち、レーザビーム116の方向134(この明細書では、変位測定方向134と称する)における測定対象物130の変位が測定される。
リニアイメージセンサ120はシャインプルーフ条件(Scheimpflug Condition)に基付いた角度で配置されるのが好ましい。すなわち、リニアイメージセンサ120の検出面と集光レンズ118の主面とは1直線で交わり、これらの面のなす角度をβとする。レーザビーム116を含む面が被写体面となる。この配置により、測定対象物130とレーザ変位センサ100の距離が変化しても、レーザスポット132はリニアイメージセンサ120上にボケることなく結像される。
レーザダイオード112から発せられたレーザビーム116のビームサイズは、実際にはレーザダイオード112からの距離に応じて変化する。具体的に、レンズ114の焦点距離によって決まるビームウェストの位置が基準位置となる。この明細書では、レーザダイオード112から基準位置までの距離を基準距離と称する。基準位置で最も精度の良い測定が可能であり、基準位置からずれるほどレーザスポットサイズが増大し、測定誤差も増大する。また、測定可能範囲は、リニアイメージセンサ120の検出面の大きさによって制限される。
[ボールねじについて]
次に、測定対象であるボールねじについて簡単に説明する。
ボールねじとは、回転運動を直線運動に変換または直線運動を回転運動に変換する機械要素であり、ねじ軸、ナット、ボール(鋼球)、循環部品などから構成されている。ねじ軸とナットとの間をボールが転がることによってねじ軸またはナットを非常に軽く回転させることができる。循環部品は、ボールを無限循環させるように構成されている。
図4は、ねじ軸の側面図である。図4には、傾斜角θ(すなわち、リード角θ)のねじ溝86を有するねじ軸80が示されている。図4(A)を参照して、ねじ軸のねじ山84の部分の外径を呼び径(nominal diameter)D1と称する。ねじ軸のねじ溝86に理想的な接触点でボール88が接触している場合、ボール88の中心90を包含する円筒の直径をピッチ円径(pitch circle diameter)D2と称する。図4(A)において、隣接するボール88の中心間の距離がリードLLに相当する。
図4(B)を参照して、ねじ軸のリードLLの測定手順について簡単に説明する。(i)まず、ねじ軸の軸線方向92に測定点を移動しながら(すなわち、図4(B)の直線92に沿って)ねじ軸の表面形状を測定する。(ii)次に、各測定点のZ軸座標にリード角θの余弦(cosθ)を乗算することによって、測定した表面形状をねじ溝86に垂直方向(図4(B)の直線94の方向)の表面形状に変換する。(iii)次に、変換後の表面形状に基づいて、ボール88がねじ溝86に理想的に接触していると仮定し、このときの隣接するボールの中心間の距離を求める。(iv)次に、求めたボールの中心間の距離をリード角θの余弦(cosθ)で除算する。この結果、ボールねじのリードLLが求められる。以下、上記の手順(i)の表面形状の測定についてさらに詳しく説明する。
[ねじ軸の表面形状の測定方法]
図5は、第1の実施形態によるねじ溝形状の測定手順を示すフローチャートである。図6は、第1の実施形態によるねじ溝形状の測定方法を説明するための模式図である。図6の模式図は、ねじ軸80をその中心軸を通る断面で切断した断面図を示している。図6において、ねじ軸80は、その軸線方向がZ軸方向になるように固定されており、ねじ軸80の断面はXZ面に平行である。レーザ変位センサ100による測定点MPは図中の丸印で示されている。
図2、図5、図6を参照して、まず、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、測定ヘッド62(レーザ変位センサ100)の旋回角を所定角度に設定する(S100)。具体的には図6(A)に示すように、レーザビーム116の方向(すなわち、変位測定方向134)は、ねじ軸の軸線に垂直な方向(X軸方向)から角度ψ1だけねじ軸の軸線方向(Z軸方向)に傾けられる。この場合の傾斜角ψ1は40度〜50度(典型的には45度付近)が望ましい。第1の実施形態では、旋回角は固定される。
次に、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することによって、ねじ軸80に対して相対移動させることによって、図6(A)に示すように、最初のねじ溝の測定開始位置140に測定ヘッド62(レーザ変位センサ100)を移動させる(S105)。
次に、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、X軸方向に対して変位測定方向134と反対側に傾斜した方向である移動方向148に沿って、レーザ変位センサ100を移動させながら、測定対象のねじ溝86の形状をレーザ変位センサ100によって測定する(S110)。この場合の移動方向148は、変位測定方向134に対して概ね直交する方向(85°〜95°)の角度範囲が望ましい。具体的に図6(A)の場合、レーザ変位センサ100は、測定開始位置140から測定終了位置142まで斜め方向に直線的に移動しながら、ねじ溝86の一方側(+Z方向側)の形状を測定する。なお、このようなレーザ変位センサ100の斜め方向の移動は、X軸方向の移動とZ軸方向の移動とを同時に行うことによって実現できる。
隣接する次のねじ溝の形状を測定する場合には(ステップS115でYES)、レーザ変位センサ100の旋回角を傾斜角ψ1に固定したまま上記の手順が繰り返される。すなわち、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、次のねじ溝86の測定開始位置144にレーザ変位センサ100を移動させる(S105)。さらに、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、次に測定開始位置144から測定終了位置146まで斜め方向に直線的にレーザ変位センサ100を移動させながら、レーザ変位センサ100によって測定対象のねじ溝86の一方側(+Z方向側)の斜面の形状を測定する(S110)。
以上によって(ステップS115でNOとなるまで)、Z軸方向に沿って配置された複数のねじ溝86の一方側(+Z方向側)の斜面の形状がねじ溝86の配置順に(+Z方向から−Z方向に向かう順に)測定される。
その後、プロセッサ66は、変位測定方向134がX軸方向に対してステップS100の場合とは逆方向に傾斜するように(すなわち、傾斜角ψ2となるように)、NC装置40を介して、レーザ変位センサ100の旋回角を設定する(S120)。そして、プロセッサ66は、ステップS110の場合とは逆方向にレーザ変位センサ100を移動させながら、レーザ変位センサ100によって複数のねじ溝86の他方側(−Z方向側)の斜面の形状を測定する。
具体的には図6(B)に示すように、プロセッサ66は、最初のねじ溝86の測定開始位置140にレーザ変位センサ100を移動させる(S125)。次に、プロセッサ66は、測定開始位置140から測定終了位置142まで斜め方向に直線的に(変位測定方向134に対して85°〜95°の角度をなす方向148、望ましくは変位測定方向134と直交する方向に)レーザ変位センサ100を移動させながら、レーザ変位センサ100によって測定対象のねじ溝86の他方側(−Z方向側)の斜面の形状を測定する(S130)。
隣接する次のねじ溝の形状を測定する場合には(ステップS135でYES)、レーザ変位センサ100の旋回角を傾斜角ψ2に固定したまま上記の手順が繰り返される。すなわち、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、次のねじ溝86の測定開始位置144にレーザ変位センサ100を移動させる(S125)。続いて、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、次の測定開始位置144から測定終了位置146まで斜め方向に直線的にレーザ変位センサ100を移動させながら、レーザ変位センサ100によって測定対象のねじ溝86の他方側(−Z方向側)の斜面の形状を測定する(S130)。
以上によって(ステップS130でNOとなるまで)、Z軸方向に沿って配置された複数のねじ溝86の他方側(+Z方向側)の斜面の形状がステップS105〜S115とは逆順に(−Z方向から+Z方向に向かう順に)測定される。
[効果]
次に上記のねじ溝形状の測定方法の効果について比較例の測定方法と対比しながら説明する。
図7は、比較例によるねじ軸のねじ溝形状の測定方法を説明するための模式図である。図2および図7を参照して、比較例の測定方法では、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、レーザビーム116の方向(すなわち、変位測定方向134)をねじ軸の軸線に垂直な方向(X軸方向)に一致させる。この状態で、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、レーザ変位センサ100をねじ軸の軸線に平行な方向(Z軸方向)に移動させながら、レーザ変位センサ100によって各ねじ溝の形状を順に測定する。この場合、以下のような問題点がある。
まず、比較例の場合には測定値の変動幅が比較的大きいという問題がある。具体的に図7において、測定値の変動幅は、測定点MPがねじ溝86の底の場合の測定値L5とねじ溝86の縁の場合の測定値L4との差L6=L5−L4として与えられる。一方、第1の実施形態における測定値の変動幅は、図6に示すように、L3=L2−L1で求まり、比較例の変動幅L6より小さくなる。
既に説明したように、レーザ変位センサの測定範囲には限界があり、さらに、基準位置から離れるについて測定誤差が増大する。本実施形態によれば、比較例に比べて測定値の変動幅をより小さくできるので、測定精度を向上させることができるとともに測定限界を超えてしまう可能性を小さくできる。
比較例の場合の他の問題点として、ねじ軸80の軸線方向(Z軸方向)のレーザ変位センサ100の移動量に比べて測定値の変化が大きくなると(具体的には、ねじ溝86の縁付近において)、測定点MPの間隔が広くなりすぎてしまい正確な測定ができないという点が挙げられる。この結果、図7に示すように、ねじ溝86の縁付近とねじ溝86の底付近とで測定点MPの間隔に粗密ができてしまう。本実施形態ではこのような不都合は生じ難く、特に重要なねじ溝86とボールとの接触点付近(X軸からの傾斜角が45度付近において)において正確な形状データを得ることができる。
さらに、比較例の場合には、ねじ溝86の縁付近でレーザビーム152が多重反射する可能性がある。この結果、多重反射したレーザビーム152の散乱光がレーザ変位センサ100の受光部に入射するため、測定精度の低下が避けがたいという問題がある。これに対して本実施形態によれば、ねじ溝86の縁付近において多重反射したレーザビームの散乱光を誤検出する可能性は低い。
[ねじ軸のリードの算出方法]
次に、測定したねじ溝形状データに基づいて、ねじ軸のリードを算出する手順について説明する。
図8は、測定したねじ溝形状データの処理手順を示すフローチャートである。図9〜図12は、図8の各ステップについて説明するための図である。具体的に、図9は、図8のステップS215,S220について説明するための図である。図10は、図8のステップS225,S230について説明するための図である。図11は、図8のステップS235について説明するための図である。図12は、ねじ溝形状がゴシックアーチの場合において、図8のステップS235について説明するための図である。なお、図9〜図12において、<Z>方向はねじ溝に垂直な方向を意味し、<Y>方向はX方向および<Z>方向の両方に垂直な方向を意味する。
図2、図8を主として参照して、まず、プロセッサ66は、概ね−Z方向へのレーザ変位センサの移動時に(図5のステップS110で)測定したデータと、概ね+Z方向へのレーザ変位センサの移動時に(図5のステップS130で)測定したデータとを統合する(S200)。
次に、プロセッサ66は、図4(B)で説明したように、各測定点のZ軸方向の座標にリード角θの余弦(cosθ)を乗算することによって、測定したZ軸方向の形状データをねじ溝に垂直方向の形状データに変換する(S205)。
次に、プロセッサ66は、変換後の測定データをねじ溝ごとに分割した後(S210)、分割後のデータごとに、ねじ山部分のデータを抽出してねじ山の高さを算出する(S210)。具体的には、プロセッサ66は、両端から所定個数の測定点MP(図9の場合には、ハッチングを付した各3個の測定点)をねじ山部分のデータとして抽出する。なお、図9において、ねじ溝の底には研削時のオイルを逃すための窪みが形成されている。
次に、プロセッサ66は、分割後の各データにおいて、仮円の近似計算に使用するためのねじ溝部分のデータを抽出する(S215)。具体的には図9に示すように、プロセッサ66は、ステップS210で算出したねじ山の高さを基準として、この基準の高さよりも下方の測定点MPのうち基準高さとの距離がL7以上L8以下の測定点を抽出する。これによって、ねじ山の近傍の測定点とねじ溝の底部の測定点とが除外される。上記のL7,L8の値はボールねじの設計データに基づいて決定される。
次に、プロセッサ66は、ステップS215で抽出した測定点に基づいて、最小二乗近似によって仮円166を決定する(S225)。仮円166の半径にはボールの設計データが用いられる。さらに、プロセッサ66は、決定した仮円166に基づいて、ボールとねじ溝との接触点付近の測定点MPをさらに抽出する(S230)。具体的には図10に示すように、仮円166の中心168から見て、X軸方向170とのなす角度がδ1−δ2からδ1+δ2の範囲のデータが抽出される。たとえば、δ1は40°から50°の範囲で選択され、δ2は5°から10°の範囲で選択される。
次に、プロセッサ66は、ステップS230で抽出したデータ(ボールとねじ溝との接触点付近のデータ)に基づいて、図11に示すように、最小二乗近似によって最終的にねじ溝の断面プロファイル(円172の中心174)を決定する(S235)。
なお、ねじ溝の断面形状がゴシックアーチの場合には、プロセッサ66は、図12に示すように、ねじ溝の底に対して一方側(図の右側)の測定点MPに基づいて最小二乗近似によって円176(中心178)を求め、他方側(図の左側)の測定点MPに基づいて最小二乗近似によって円180(中心182)を求める。次いで、プロセッサ66は、円の中心178および182に基づいて最終的な断面プロファイル(円の中心184)を決定する。
次に、プロセッサ66は、ステップS235で決定されたねじ溝の断面プロファイルをねじ軸の軸線方向の断面プロファイルに変換する(S240)。具体的には、求めた円の中心の<Z>座標をリード角θの余弦(cosθ)で除算する。変換後の断面プロファイルにおいて、隣接する円の中心間の距離がリードに相当する。
[まとめ]
以上のとおり、第1の実施形態によれば、従来技術に比べてボールねじのねじ溝形状の測定精度を高めるとともに、測定点に粗密が生じないようにすることができる。さらに、多重反射したレーザビームによって測定誤差が生じないようにできる。
なお、図5および図6において最初にレーザ変位センサ100を概ね−Z方向に移動させ、次にレーザ変位センサ100を概ね+Z方向に移動させると説明したが、必ずしもこれに限るものでない。変位測定方向134を+Z方向側に傾斜させた場合と、−Z方向側に傾斜させた場合の2回の測定を行うのであれば、レーザ変位センサ100の移動方向自体は2回とも概ね+Z方向であってもよいし、その逆方向であってもよい。
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、ねじ軸の表面形状の測定中におけるレーザ変位センサの移動方向が第1の実施形態の場合と異なる。具体的に第2の実施形態では、レーザ変位センサをねじ軸の軸線方向(Z軸方向)と平行に移動させる。変位測定方向(レーザビームの方向)をX軸方向(ねじ軸の軸線に垂直な方向)から傾けた状態で固定する点は第1の実施形態と同じである。以下、図面を参照して具体的に説明する。なお、ねじ溝形状測定装置の構成は、図2で説明したものと同じであるので説明を繰返さない。
図13は、第2の実施形態によるねじ溝形状の測定手順を示すフローチャートである。図14は、第2の実施形態によるねじ溝形状の測定方法を説明するための模式図である。図14の模式図は、第1の実施形態の図6に対応するものであり、ねじ軸80をその中心軸を通る断面で切断した断面図を示している。図14において、ねじ軸80は、その軸線方向がZ軸方向になるように固定されている。
図2、図13、図14を参照して、まず、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、測定ヘッド62(レーザ変位センサ100)の旋回角を所定角度に設定する(S300)。具体的には図14(A)に示すように、レーザビーム116の方向(すなわち、変位測定方向134)は、ねじ軸の軸線に垂直な方向(X軸方向)から角度ψ1だけねじ軸の軸線方向(Z軸方向)に傾けられる。この場合の傾斜角ψ1は40度〜50度(典型的には45度付近)が望ましい。第2の実施形態においても、旋回角は固定される。
次に、プロセッサ66は、NC装置を介して駆動機構32を制御することにより、レーザ変位センサ100をねじ軸80の軸線方向(−Z方向)に移動させながら、各ねじ溝86の形状をレーザ変位センサ100によって測定する(S310)。この結果、各ねじ溝86の一方側(+Z方向側)の斜面の形状が測定される。
次に、プロセッサ66は、変位測定方向134がX軸方向に対してステップS300の場合とは逆方向に傾斜するように(すなわち、傾斜角ψ2となるように)、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、レーザ変位センサ100の旋回角を設定する(S320)。そして、プロセッサ66は、ステップS310の場合とは逆方向である+Z方向にレーザ変位センサ100を移動させながら、レーザ変位センサ100によって複数のねじ溝86の他方側(−Z方向側)の斜面の形状を測定する(S330)。
上記の測定方法によれば、レーザビーム116の方向(すなわち、変位測定方向134)をX軸方向から傾かせることによって、測定点の粗密を低減させ、測定精度を高めることができる。さらに、レーザビームの多重反射による誤差を回避することができる。第1の実施形態に比べてレーザ変位センサ100の動きが単純であるので、測定プログラムの作成が容易である。
ただし、図14に示すように、レーザ変位センサ100から測定点MPまでの距離の変動幅L9は、L8−L7で与えられ比較的大きくなるので、測定可能範囲の狭いレーザ変位センサを用いる場合は、第1の実施形態の測定方法のほうが望ましい。
なお、上記の説明において最初にレーザ変位センサ100を−Z方向に移動させ、次にレーザ変位センサ100を+Z方向に移動させると説明したが、必ずしもこれに限るものでない。変位測定方向を+Z方向側に傾斜させた場合と、−Z方向側に傾斜させた場合の2回の測定を行うのであれば、レーザ変位センサ100の移動方向自体は+Z方向および−Z方向のどちらでも構わない。
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、レーザ変位センサをねじ軸に対して相対移動させるとともにレーザ変位センサを旋回させながら、レーザ変位センサによってねじ溝形状を測定する点に特徴がある。これによって、ねじ溝形状の測定中におけるレーザビームの方向(変位測定方向)をねじ溝の表面と略直交させるようにする。望ましくは、レーザ変位センサから測定点までの距離を一定に保つようにする。以下、図面を参照して具体的に説明する。なお、ねじ溝形状測定装置の構成は、図2で説明したものと同じであるので説明を繰返さない。
図15は、第3の実施形態によるねじ溝形状の測定手順を示すフローチャートである。図16は、第3の実施形態によるねじ溝形状の測定方法を説明するための模式図である。図16の模式図は、第1の実施形態の図6および第2の実施形態の図14に対応するものであり、ねじ軸80をその中心軸を通る断面で切断した断面図を示している。図16において、ねじ軸80は、その軸線方向がZ軸方向になるように固定されている。
図2、図15、図16を参照して、まず、プロセッサ66は、測定対象のねじ溝86に隣接するねじ山84の高さをレーザ変位センサ100によって測定する(S400)。具体的には図16(A)に示すように、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、レーザビーム116の方向(変位測定方向)がX軸方向となるように固定した状態で、レーザ変位センサ100をねじ軸80の軸線に平行な−Z方向に移動させながら、レーザ変位センサ100によってねじ山84の高さを測定する。この場合、レーザ変位センサ100からねじ山84までの距離L10は、最も高精度の測定が可能な基準距離となるように設定される。
次に、プロセッサ66は、NC装置40を介して駆動機構32を制御することにより、レーザ変位センサ100を相対移動および旋回させながら、レーザ変位センサ100によって測定対象のねじ溝の形状を測定する(S410)。より具体的には図16(B)に示すように、測定対象のねじ溝86にボール88が接触した仮定した場合に、プロセッサ66は、ねじ溝形状の測定中に、想定されるボール88の外周と同心円190上に位置するようにレーザ変位センサ100を移動させるとともに、レーザビーム116がボール88の中心90を通るようにレーザ変位センサを旋回させる。この場合も、レーザ変位センサ100からねじ溝86の表面の測定点MPまでの距離L10は、最も高精度の測定が可能な基準距離となるように設定される。
測定対象のねじ溝形状の測定後に、プロセッサ66は、ステップS400の場合とは反対側のねじ山84の高さをレーザ変位センサ100によって測定する(S420)。具体的な測定方法は、図16(A)に示したステップS400の場合と同様であるので説明を繰返さない。隣接する次のねじ溝形状を測定する場合には(ステップS430でYES)、上記のステップS400,S410,S420が繰り返される。
上記の測定方法によれば、レーザ変位センサ100から測定点までの距離が基準距離となるように調整されているので、最も精度良くねじ溝形状を測定することができる。さらに、レーザビーム116が想定されるボールの中心を通るようにレーザ変位センサ100を旋回させるので、レーザビーム116がねじ溝の表面にほぼ垂直に入射する。この結果、測定点に粗密が生じ難く、精度良くねじ溝の表面形状を測定することが可能になる。レーザビームの多重反射による誤差の虞もない。さらに、第1および第2の実施形態では、同一のねじ溝に対して変位測定方向の異なる2回の測定が必要であったのに対して、第3の実施形態の場合にはレーザ変位センサ100を旋回させながら測定することによって、同一のねじ溝に対して1回の測定で済むというメリットがある。
なお、上記は理想的な場合であるが、レーザ変位センサ100の移動経路がボールの同心円上から多少はずれていても、上記と同様の効果を奏する。
<変形例>
第1〜第3の実施形態ではレーザ変位センサを用いて表面形状を測定する例について説明したが、レーザ変位センサに代えて倣い式の接触型変位センサを用いることもできる。
図17は、第1〜第3の実施形態の変形例として、接触型変位センサを用いたねじ溝形状の測定について説明するための模式図である。図17の模式図は、第1の実施形態の図6、第2の実施形態の図14、および第3の実施形態の図16に対応するものであり、ねじ軸80をその中心軸を通る断面で切断した断面図を示している。
図17を参照して、接触型変位センサ200は、探針202を測定対象物の表面に接触させることによって、探針202の中心軸線204の方向の変位を検出するように構成されている。この場合、探針202の中心軸線204の方向が第1〜第3の実施形態におけるレーザビーム116の方向(すなわち、変位測定方向134)に相当する。
図17(B)に示すように、探針202の中心軸線204の方向(すなわち、変位測定方向134)が、ねじ軸80の軸線に垂直方向(X軸方向)の場合、測定点がねじ溝86の縁に近づくほどねじ溝86の表面の傾斜が急になるために、測定精度が低下するという問題がある。さらには、接触型変位センサ200をZ軸方向に移動させながらねじ溝86の表面形状を測定した場合、ねじ溝86の縁付近と底付近とで測定点に粗密が生じてしまう。
図17(A)に示すように、探針202の中心軸線204をねじ軸の軸線方向(Z軸方向)に垂直な方向(X軸方向)から傾けることによって、ねじ溝86の縁付近においても精度良く表面形状を測定することができ、測定点に粗密も生じ難くなる。また、第3の実施形態の場合には、探針202の中心軸線204が想定されるボールの中心を通るように接触型変位センサ200を旋回させることによって、測定精度を高めることができる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 工作機械、2 ねじ溝形状測定装置、10 加工装置、25 主軸、32 駆動機構、33 基準点、34 X軸用駆動機構、36 Y軸・B軸用駆動機構、38 Z軸用駆動機構、40 NC装置、60 制御部、62 測定ヘッド、64 コンピュータ、66 プロセッサ、68 メモリ、70 通信装置、80 ねじ軸、82,204 中心軸線、84 ねじ山、86 ねじ溝、88 ボール、100 レーザ変位センサ、116,152,162 レーザビーム、130 測定対象物、132 レーザスポット、134 変位測定方向、148 移動方向、200 接触型変位センサ、202 探針。

Claims (8)

  1. ボールねじを構成するねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するねじ溝形状測定装置であって、
    前記ねじ軸の表面にレーザ光を照射するかまたは探針を接触させることによって、前記レーザ光の照射方向の変位または前記探針の軸方向の変位を検出する変位センサと、
    前記変位センサを旋回可能な第1の駆動機構と、
    前記変位センサ、および、前記第1の駆動機構を搭載する移動台と、
    前記移動台を前記ねじ軸の軸方向に移動させる第2の駆動機構と、
    前記移動台を前記ねじ軸の軸方向と垂直な方向に移動させる第3の駆動機構と、
    前記変位センサ前記第1の駆動機構、前記第2の駆動機構、および、前記第3の駆動機構を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記レーザ光の照射方向または前記探針の軸方向である変位測定方向が前記ねじ軸の軸方向と垂直な方向に対して傾斜した方向となるように、前記変位センサを旋回させながら又は前記変位センサの旋回角を固定した状態で、前記変位センサによって前記ねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するように構成される、ねじ溝形状測定装置。
  2. ボールねじを構成するねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するねじ溝形状測定装置であって、
    前記ねじ軸の表面にレーザ光を照射するかまたは探針を接触させることによって、前記レーザ光の照射方向の変位または前記探針の軸方向の変位を検出する変位センサと、
    前記変位センサを前記ねじ軸に対して相対移動可能であるとともに、少なくとも1つの軸の回りに前記変位センサを旋回可能な駆動機構と、
    前記変位センサおよび前記駆動機構を制御する制御部とを備え、
    前記ねじ軸の軸方向を第1の方向とし、前記第1の方向と垂直な方向を第2の方向としたとき、前記制御部は、前記レーザ光の照射方向または前記探針の軸方向である変位測定方向が前記第2の方向に対して傾斜した方向となるように、前記変位センサの旋回角を固定した状態で、前記変位センサを前記第1の方向に相対移動させながら、前記変位センサによって前記ねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するように構成されるねじ溝形状測定装置。
  3. ボールねじを構成するねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するねじ溝形状測定装置であって、
    前記ねじ軸の表面にレーザ光を照射するかまたは探針を接触させることによって、前記レーザ光の照射方向の変位または前記探針の軸方向の変位を検出する変位センサと、
    前記変位センサを前記ねじ軸に対して相対移動可能であるとともに、少なくとも1つの軸の回りに前記変位センサを旋回可能な駆動機構と、
    前記変位センサおよび前記駆動機構を制御する制御部とを備え、
    前記ねじ軸の軸方向を第1の方向とし、前記第1の方向と垂直な方向を第2の方向としたとき、前記制御部は、前記レーザ光の照射方向または前記探針の軸方向である変位測定方向が前記第2の方向に対して傾斜した方向となるように、前記変位センサの旋回角を固定した状態で、前記ねじ溝ごとに前記第2の方向に対して前記変位測定方向と反対側に傾斜した方向に前記変位センサを相対移動させながら、前記変位センサによって各ねじ溝の形状を測定するように構成されるねじ溝形状測定装置。
  4. 前記ねじ溝ごとの前記変位センサの相対移動方向と前記変位測定方向とのなす角度は8
    5度から95度の範囲に含まれる、請求項3に記載のねじ溝形状測定装置。
  5. 前記第2の方向に対する前記変位測定方向の傾斜角は40度から50度の範囲に含まれ
    る、請求項2〜4のいずれか1項に記載のねじ溝形状測定装置。
  6. 前記制御部は、前記レーザ光の照射位置または前記探針の接触位置において前記変位測
    定方向が前記ねじ溝の表面に対して直交するように、前記ねじ溝ごとに前記変位センサを
    相対移動および旋回させながら、前記変位センサによって各ねじ溝の形状を測定するよう
    に構成される、請求項1に記載のねじ溝形状測定装置。
  7. ボールねじを構成するねじ軸の各ねじ溝の形状を測定するねじ溝形状測定装置であって、
    前記ねじ軸の表面にレーザ光を照射するかまたは探針を接触させることによって、前記レーザ光の照射方向の変位または前記探針の軸方向の変位を検出する変位センサと、
    前記変位センサを前記ねじ軸に対して相対移動可能であるとともに、少なくとも1つの軸の回りに前記変位センサを旋回可能な駆動機構と、
    前記変位センサおよび前記駆動機構を制御する制御部とを備え、
    前記制御部は、前記ねじ溝に前記ボールねじのボールを接触させたと仮定した場合に、前記ボールと同心円上に前記変位センサが位置するとともに前記レーザ光または前記探針の軸線が前記ボールの中心を通るように、前記ねじ溝ごとに前記変位センサを相対移動および旋回させながら、前記変位センサによって各ねじ溝の形状を測定するように構成されるねじ溝形状測定装置。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のねじ溝形状測定装置を備えた工作機械。
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