以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
本実施形態の空気調和装置(10)は、対象空間である試験室(2)の空気の温度を調節する。空気調和装置(10)は、試験室(2)の湿度を調節する調湿機能も有する。
〈試験設備の全体構成〉
本実施形態の空気調和装置(10)は、図1に示す試験設備(1)に適用されている。試験設備(1)は、試験対象としての空気調和装置(被試験機側空調装置(A))の性能等を評価するためのものである。試験室(2)には、被試験機側空調装置(A)の室外機(3)が試験対象(被試験機)として設置される。試験室(2)では、室外機(3)の周囲環境(温度及び湿度環境)が擬似的に再現可能である。本実施形態の試験室(2)では、寒冷地を再現するために0℃〜−15℃までの氷点下の温度雰囲気が再現可能である。
室外機(3)の筐体の内部には、室外熱交換器(4)と室外ファン(6)とが収容される。被試験機側空調装置(A)は、圧縮機、室外熱交換器(4)、膨張弁、室内熱交換器が接続される冷媒回路を備え、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷凍装置を構成している。また、被試験機側空調装置(A)は、蒸発器となった室外熱交換器(4)に付着した霜を融解させるためのデフロスト動作を実行可能である(詳細は後述する)。
図1に示すように、試験設備(1)は、空気通路(11)と試験室(2)との間を空気が循環するように構成される。具体的に、試験設備(1)は、空気通路(11)と試験室(2)とを仕切る仕切部(5)を有し、空気通路(11)の吹出口(12)及び吸込口(13)が試験室(2)に開口している。
〈空気調和装置の構成〉
空気調和装置(10)は、空気の温度及び湿度を調節するように構成される。図1に示すように、空気調和装置(10)は、空気通路(11)と、該空気通路(11)に配置される空気処理ユニット(20)とを備える。更に、空気調和装置(10)は、空気処理ユニット(20)に冷熱媒体や温熱媒体を供給するための熱源ユニット(図示省略)と、空気処理ユニット(20)と熱源ユニットとを繋ぐ熱媒体回路(40)(一部のみを図示)とを備える。
〈空気処理ユニット〉
空気処理ユニット(20)は、空気通路(11)の上流側から下流側に向かって順に、冷却コイルユニット(21)、ファン(25)、加温用加熱コイル(26)、噴霧ユニット(35)、加湿用加熱コイル(30)、及びエリミネータ(27)を備えている。
冷却コイルユニット(21)は、熱媒体が流れる熱交換器で構成される。より具体的には、冷却コイルユニット(21)は、例えばフィンアンドチューブ式の熱交換器で構成される。冷却コイルユニット(21)は、その内部を流れる熱媒体と空気通路(11)を流れる空気とを熱交換させる。また、冷却コイルユニット(21)は、熱媒体が流れる方向と空気流れとが実質的に対向する対向流式である。
冷却コイルユニット(21)は、上流側の第1伝熱部(22)と、下流側の第2伝熱部(23)とを有する。第2伝熱部(23)の空気通過方向の幅は、第1伝熱部(22)の空気通過方向の幅よりも大きい。本実施形態の第1伝熱部(22)には、比較的低温の冷熱媒体と、比較的高温の温熱媒体とが切換可能に供給される。
第1伝熱部(22)は、その下部において第1下部伝熱領域(22a)が形成され、第1下部伝熱領域(22a)以外の残りの部分に第1上部伝熱領域(22b)が形成される。同様に、第2伝熱部(23)は、その下部において第2下部伝熱領域(23a)が形成され、第2下部伝熱領域(23a)以外の残りの部分に第2上部伝熱領域(23b)が形成される。
第1下部伝熱領域(22a)には、熱媒体が流れる第1パス(P1)が、第1上部伝熱領域(22b)には、熱媒体が流れる第2パス(P2)が、第2下部伝熱領域(23a)には、熱媒体が流れる第3パス(P3)が、第2上部伝熱領域(23b)には、熱媒体が流れる第4パス(P4)がそれぞれ形成される。
第1パス(P1)及び第2パス(P2)は、冷却コイルユニット(21)の上流側の形成される前列パス(P1,P2)を構成する。第3パス(P3)及び第4パス(P4)は、冷却コイルユニット(21)における前列パス(P1,P2)の下流側に形成される後列パス(P3,P4)を構成する。
本実施形態の冷却コイルユニット(21)のフィンは、各パス(P1〜P4)に1つずつ対応するように4つのフィン群に分割されている。しかし、冷却コイルユニット(21)のフィンは、各伝熱領域(22a,22b,23a,23b)に跨がって共用されていてもよい。
ファン(25)は、例えばシロッコファンで構成され、空気通路(11)の空気を搬送する。ファン(25)で搬送された空気は、空気通路(11)と試験室(2)とを交互に流れる。
加温用加熱コイル(26)は、温熱媒体が流れる熱交換器で構成される。加温用加熱コイル(26)は、その内部を流れる温熱媒体と空気通路(11)を流れる空気とを熱交換させる。
噴霧ユニット(35)は、空気通路(11)を流れる空気へ水を噴霧する。本実施形態の噴霧ユニット(35)は、複数(3つ)の噴霧スプレー(36)を有している。噴霧スプレー(36)の数量は、1つであってもよいし、他の数量であってもよい。各噴霧スプレー(36)は、水を噴出するノズル(37)をそれぞれ有している。各ノズル(37)には、水タンクからポンプ等で搬送された水が供給される。各ノズル(37)は、先端が空気通路(11)の下流側、ないし加湿用加熱コイル(30)側を向いている。
空気通路(11)の空気を加湿する動作(加湿動作)では、噴霧スプレー(36)から水が間欠的に噴霧される。また、詳細は後述する加湿用加熱コイル(30)の内部を温熱媒体が流れる。空気通路(11)の空気に噴霧水が付与されることで、空気が加湿される。また、空気に含まれなかった残りの水は、加湿用加熱コイル(30)の上流側の表面に付着する。このため、空気の温度が氷点下である場合、この水が加湿用加熱コイル(30)の表面で凍結する。この状態で、噴霧スプレー(36)の噴霧動作が停止されると、加湿用加熱コイル(30)の温熱媒体により、その表面の氷が融解する。この結果、融解後の水が空気に付与され、空気が加湿される。
加湿用加熱コイル(30)(加熱コイル)は、熱を放出可能な加熱部を構成している。本実施形態の加湿用加熱コイル(30)は、温熱媒体が流れる、例えばフィンアンドチューブ式の熱交換器で構成される。つまり、加湿用加熱コイル(30)は、図2に示すように、互いに平行に配置される複数のフィン(31)と、該フィン(31)をその板厚方向に貫通する伝熱管(32)とを有する。各フィン(31)は、縦長の長方形状に形成され、その幅方向が空気流れに沿うように空気通路(11)に配置される。各フィン(31)の間には、空気が通過可能な複数の通風路(33)が形成される。
エリミネータ(27)は、空気中の比較的大きな水滴が試験室(2)へ飛散するのを防止する水滴飛散防止用の部材を構成している。
〈熱媒体回路〉
図1に示すように、熱媒体回路(40)は、熱源ユニットで生成された熱媒体(温熱媒体や冷熱媒体)を空気処理ユニット(20)へ供給するための配管である。熱媒体は、0℃以下であっても凍結しない不凍液である。熱媒体回路(40)は、第1回路(41)、第2回路(61)、及び第3回路(64)を含んでいる。
第1回路(41)は、冷却コイルユニット(21)に対応している。第1回路(41)は、第1温熱流入路(43)、第1温熱流出路(42)、第1冷熱流入路(45)、及び第1冷熱流出路(44)を有する。
第1温熱流入路(43)は、熱源ユニットの温熱媒体を冷却コイルユニット(21)に供給するための配管を構成する。第1温熱流入路(43)には、第1開閉弁(47)が接続される。第1温熱流出路(42)には、冷却コイルユニット(21)を流れた後の温熱媒体を熱源ユニットへ戻すための配管を構成する。第1温熱流出路(42)には、第2開閉弁(46)が接続される。第1冷熱流入路(45)は、熱源ユニットの冷熱媒体を冷却コイルユニット(21)に供給するための配管を構成する。第1冷熱流出路(44)は、冷却コイルユニット(21)を流れた後の冷熱媒体を熱源ユニットへ戻すための配管を構成する。
第1回路(41)は、第1から第8までの分岐管(51〜58)を有している。第1分岐管(51)は、第1温熱流出路(42)と第1パス(P1)の一端とを繋いでいる。第2分岐管(52)は、第1温熱流出路(42)と第2パス(P2)の一端とを繋いでいる。第3分岐管(53)は、第1温熱流入路(43)と第1パス(P1)の他端とを繋いでいる。第4分岐管(54)は、第1温熱流入路(43)と第2パス(P2)の他端とを繋いでいる。第5分岐管(55)は、第1冷熱流入路(45)と第3パス(P3)の一端とを繋いでいる。第6分岐管(56)は、第1冷熱流入路(45)と第4パス(P4)の他端とを繋いでいる。第7分岐管(57)は、第1冷熱流出路(44)と第3パス(P3)の他端とを繋いでいる。第8分岐管(58)は、第1冷熱流出路(44)と第4パス(P4)の他端とを繋いでいる。
第1回路(41)は、第1バイパス管(59)と第2バイパス管(60)とを有している。第1バイパス管(59)は、第1温熱流入路(43)と第1冷熱流入路(45)とを繋いでいる。第1バイパス管(59)には、第3開閉弁(48)が接続される。第2バイパス管(60)は、第1温熱流出路(42)と第1冷熱流出路(44)とを繋いでいる。第2バイパス管(60)には、第4開閉弁(49)が接続される。
第1開閉弁(47)、第2開閉弁(46)、第3開閉弁(48)、及び第4開閉弁(49)は、第1回路(41)(即ち、熱媒体回路(40))の熱媒体の流路を切り換える流路切換機構(46,47,48,49)を構成している。具体的には、流路切換機構(46,47,48,49)は、少なくとも、第1状態、第2状態、及び第3状態に切換可能である。
第1状態(図2に示す状態)では、第1開閉弁(47)及び第2開閉弁(46)が閉状態となり、第3開閉弁(48)及び第4開閉弁(49)が開状態となる。これにより、冷却コイルユニット(21)では、前列パス(P1,P2)及び後列パス(P3,P4)の双方を冷熱媒体が流れる。第2状態(図4に示す状態)では、第1開閉弁(47)及び第2開閉弁(46)が開状態となり、第3開閉弁(48)及び第4開閉弁(49)が閉状態となる。これにより、冷却コイルユニット(21)では、前列パス(P1,P2)を温熱媒体が流れ、後列パス(P3,P4)を熱媒体(温熱媒体及び冷熱媒体の双方を含む、以下同様)が流れない。第3状態(図3に示す状態)では、第1開閉弁(47)、第2開閉弁(46)、第3開閉弁(48)、及び第4開閉弁(49)が閉状態となる。これにより、冷却コイルユニット(21)では、前列パス(P1,P2)を熱媒体が流れず、後列パス(P3,P4)を冷熱媒体が流れる。
なお、流路切換機構は、必ずしも4つの開閉弁(46,47,48,49)でなくてもよく、例えば開閉弁、三方弁、四方切換弁等を適宜組み合わせて構成してもよい。
第2回路(61)は、加温用加熱コイル(26)に対応している。第2回路(61)は、第2温熱流入路(63)と第2温熱流出路(62)とを有している。第2温熱流入路(63)の流出端は、加温用加熱コイル(26)のパス(伝熱管)の一端に繋がっている。第2温熱流出路(62)の流入端は、加温用加熱コイル(26)のパス(伝熱管)の他端に繋がっている。
第3回路(64)は、加湿用加熱コイル(30)に対応している。第3回路(64)は、第3温熱流入路(66)と第3温熱流出路(65)とを有している。第3温熱流入路(66)の流出端は、加湿用加熱コイル(30)のパス(伝熱管)の一端に繋がっている。第3温熱流出路(65)の流入端は、加湿用加熱コイル(30)のパス(伝熱管)の他端に繋がっている。
第3回路(64)には、第3バイパス管(69)及び三方弁(68)が接続される。第3バイパス管(69)は、第3温熱流入路(66)と第3温熱流出路(65)とを繋いでいる。三方弁(68)は、第3温熱流出路(65)と第3バイパス管(69)とを遮断し、第3温熱流出路(65)と加湿用加熱コイル(30)とを連通させる第1状態と、第3温熱流出路(65)と加湿用加熱コイル(30)とを遮断し、第3温熱流出路(65)と第3バイパス管(69)とを連通させる第2状態とに切り換わるように構成される。
第3回路(64)には、加湿用加熱コイル(30)を流れる温熱媒体の流量を調節するための流量調節機構(図示省略)が接続される。この流量調節機構は、例えば第3回路(64)に接続される流量可変式のポンプや、流量調節弁等が挙げられる。なお、三方弁(68)は、上述したように、加湿用加熱コイル(30)を温熱媒体が流れる状態(第1状態)と、加湿用加熱コイル(30)を温熱媒体が流通しない状態(第2状態)とを切り換える。
〈被試験機側空調装置のデフロスト動作に係る構成〉
上述した被試験機側空調装置(A)は、室外熱交換器(4)の表面の霜を融かすためにデフロスト動作(蒸発器側デフロスト動作)を適宜実行可能である。例えば蒸発器側デフロスト動作として、例えばいわゆる逆サイクルデフロストが行われる。即ち、蒸発器側デフロスト動作では、圧縮機で圧縮された高圧の冷媒が室外熱交換器(4)を送られる。これにより、室外熱交換器(4)の表面の霜が内側から融かされていく。なお、蒸発器側デフロスト動作は、必ずしも逆サイクルデフロストでなくてもよく、ヒータ等の熱源を利用するものであってもよい。
また、蒸発器側デフロスト動作の実行の開始の判定は、例えば室外熱交換器(4)の冷媒の温度や圧力、室外熱交換器(4)を通過する空気温度等で適宜判定することができる。デフロスト動作の終了の判定は、例えば蒸発器側デフロスト動作の実行時間や、室外熱交換器(4)の冷媒の温度や圧力、室外熱交換器(4)を通過する空気温度等で適宜判定することができる。
本実施形態の被試験機側空調装置(A)は、蒸発器側デフロスト動作が実行されると、出力信号(デフロスト信号)を出力する出力部(16)を備える。つまり、デフロスト信号は、蒸発器側デフロスト動作が実行されていることを示す信号といえる。この出力信号は、空気調和装置(10)の制御器(70)に受信される。
〈センサ〉
空気調和装置(10)は、試験室(2)の空気の温度を検出する温度検出部と、試験室(2)の空気の湿度を検出する湿度検出部とを備えている。本実施形態の空気調和装置(10)では、例えば温度検出部及び湿度検出部が露点温度センサ(15)により兼用されている。つまり、露点温度センサ(15)は、試験室(2)の温度Trと、試験室(2)の湿度(本例では相対湿度)を示す指標となる露点温度Tdとを検出可能に構成される。
なお、温度検出部と湿度検出部とをそれぞれ別部材のセンサで構成してもよい。また、湿度検出部は、露点温度センサ以外の他の方式であってもよい。
〈制御器〉
制御器(70)は、CPU(中央演算処理装置)及びメモリ等の記憶部を有する制御基板を含んでいる。制御器(70)には、露点温度センサ(15)で検出した温度Tr及び露点温度Td等のセンサの検出信号が入力される。制御器(70)は、このような検出信号等に基づいて、空気調和装置(10)の各機器(ファン(25)、各開閉弁(46,47,48,49)、噴霧ユニット(35)等をそれぞれ制御する。
制御器(70)は、受信部(71)、弁制御部(72)、及び設定部(73)を備えている。受信部(71)には、被試験機側空調装置(A)から出力されたデフロスト信号が入力される。
弁制御部(72)は、受信部(71)に入力されたデフロスト信号に応じて、流路切換機構(46,47,48,49)を制御する。つまり、弁制御部(72)は、原則として、被試験機側空調装置(A)の室外熱交換器(4)のデフロスト動作(蒸発器側デフロスト動作)に連動して、冷却コイルユニット(21)のデフロスト動作(コイル側デフロスト動作)を行うように、流路切換機構(46,47,48,49)を制御する。より具体的には、弁制御部(72)は、デフロスト信号が受信部(71)に入力されると、流路切換機構(46,47,48,49)を第2状態とする。これにより、前列パス(P1,P2)及び後列パス(P3,P4)のうち前列パス(P1,P2)のみを温熱媒体が流れ、該温熱媒体で冷却コイルユニット(21)を除霜するコイル側デフロスト動作(第2動作)が行われる。
弁制御部(72)は、蒸発器側デフロスト動作の回数Nをカウントし、この回数が所定回数Ns(例えば5回)に至るときだけ、蒸発器側デフロスト動作に連動してコイル側デフロスト動作を実行させる。つまり、制御器(70)は、室外熱交換器(4)のデフロスト動作が所定の複数回Nsに達する毎にコイル側デフロスト動作を実行させる。コイル側デフロスト動作が複数回Nsに至ると、カウントされた回数Nが再びリセットされる。
弁制御部(72)は、コイル側デフロスト動作が終了すると、流路切換機構(46,47,48,49)を第3状態とする。これにより、前列パス(P1,P2)を熱媒体(冷熱媒体及び温熱媒体)が流れ、後列パス(P3,P4)を冷熱媒体が流れるとともに、該冷熱媒体で空気を冷却する第2冷却動作(第3動作)が行われる。これらの動作の詳細は後述する。
設定部(73)では、コイル側デフロスト動作を許容する第1の設定と、該コイル側デフロスト動作が禁止される第2の設定とが切り換えられる。つまり、設定部(73)を第1の設定とすると、上述のように、蒸発器側デフロストに連動するコイル側デフロストが実行可能となる。これに対し、設定部(73)を第2の設定とすると、蒸発器側デフロストが実行されたとしても(厳密には、回数NがNsに到達しても)、コイル側デフロスト動作は実行されない。これにより、ユーザ等は、被試験機側空調装置(A)の仕様、運転条件、周囲環境に応じて、コイル側デフロスト動作の実行の可否を適宜変更できる。
−運転動作−
空気調和装置(10)は、プルダウン運転と通常運転とデフロスト運転(コイル側デフロスト運転)を行う。
プルダウン運転は、試験開始時において、試験室(2)の温度(乾球温度)Trを所定の目標温度Tsまで低下させる運転である。
通常運転は、プルダウン運転の後、試験室(2)の温度Trを目標温度Tsに維持するとともに、試験室(2)の湿度(露点温度Td)を目標値に近づける運転である。従って、通常運転では、原則として、空気を加湿する加湿動作が行われる。また、試験室(2)の目標温度Tsは0℃より低い所定温度(即ち、氷点下)に設定される。
コイル側デフロスト運転は、冷却コイルユニット(21)の表面に付着した霜を融かす運転である。コイル側デフロスト運転は、プルダウン運転や通常運転において、被試験機側空調装置(A)のデフロスト運転に連動して実行される。
〈プルダウン運転〉
図2に示すプルダウン運転では、ファン(25)が運転される。第1回路(41)では、流路切換機構(46,47,48,49)が第1状態となり、前列パス(P1,P2)と後列パス(P3,P4)の双方に冷熱媒体が供給される(第1動作)。第2回路(61)及び第3回路(64)にも、温熱媒体は供給されない。従って、プルダウン運転では、冷却コイルユニット(21)が作動し、加温用加熱コイル(26)及び加湿用加熱コイル(30)は作動しない。また、プルダウン運転では、噴霧ユニット(35)も停止状態となる。
プルダウン運転時の冷却コイルユニット(21)では、第1伝熱部(22)及び第2伝熱部(23)に冷熱媒体が供給される。即ち、第1冷熱流入路(45)を流れる冷熱媒体は、図2に示すように、4つのパス(P1〜P4)にそれぞれ分岐した後、最終的に第1冷熱流出路(44)で合流し、熱源ユニットへ送られる。このように、プルダウン運転では、冷却コイルユニット(21)の全てのパス(P1〜P4)を冷熱媒体が流れる。このため、冷却コイルユニット(21)を流れる空気は、全ての伝熱領域(22a,22b,23a,23b)において冷熱媒体によって冷却される。
冷却コイルユニット(21)で冷却された空気は、加温用加熱コイル(26)、噴霧ユニット(35)、加湿用加熱コイル(30)、及びエリミネータ(27)をそのまま通過し、試験室(2)へ供給される。このプルダウン運転が継続されることで、試験室(2)の温度Trが、0℃より低い目標温度Tsへ収束していく。
例えばプルダウン運転が終了すると、被試験機である被試験機側空調装置(A)で暖房運転が実行される。これにより、被試験機側空調装置(A)の冷媒回路では、室内熱交換器が凝縮器ないし放熱器となり、室外熱交換器(4)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。従って、室外熱交換器(4)を流れる冷媒は、試験室(2)の空気から吸熱して蒸発する。これにより、プルダウン運転の後には、試験室(2)の空気が室外熱交換器(4)によって冷却されることになる。
なお、被試験機側空調装置(A)は、例えばプルダウン運転の開始時又は途中から暖房運転を開始してもよい。これにより、被試験機側空調装置(A)の立ち上がりの時間を短縮でき、その後の試験時間を短縮できる。
〈通常運転〉
通常運転は、試験室(2)の温度Trが0℃より低い目標温度Tsに至り、プルダウン運転が終了すると実行される。
通常運転では、ファン(25)が運転される。通常運転では、試験室(2)の温度Trに応じて、冷却コイルユニット(21)及び加温用加熱コイル(26)の熱媒体の流れが切り換えられる。
具体的には、試験室(2)の温度Trが目標温度Tsよりも所定温度低くなると、加温用加熱コイル(26)に温熱媒体が供給される。また、冷却コイルユニット(21)には、熱媒体が供給されない。これにより、加温用加熱コイル(26)の温熱媒体により空気を加熱でき、試験室(2)の温度Trを目標温度Tsに近づけることができる。
また、試験室(2)の温度Trが目標温度Tsよりも大きく、これらの温度差(Tr−Ts)が所定値αより大きくなると、第1回路(41)の流路切換機構(46,47,48,49)が第3状態となり、後列パス(P3,P4)のみに冷熱媒体が供給される(図3を参照)。また、加温用加熱コイル(26)には、温熱媒体が供給されない。これにより、冷却コイルユニット(21)では、後列パス(P3,P4)で空気を冷却でき、試験室(2)の温度Trを目標温度Tsに近づけることができる。
また、試験室(2)の温度Trが目標温度Tsよりも大きく、これらの温度差(Tr−Ts)が所定値β(ここで、βはαよりも大きい)より大きくなると、プルダウン運転と同様、第1回路(41)の流路切換機構(46,47,48,49)が第1状態となる。これにより、冷却コイルユニット(21)の前列パス(P1,P2)及び後列パス(P3,P4)に冷熱媒体が供給される(図2を参照)。また、加温用加熱コイル(26)には、温熱媒体が供給されない。これにより、冷却コイルユニット(21)では、前列パス(P1,P2)及び後列パス(P3,P4)で空気を冷却でき、試験室(2)の温度Trを目標温度Tsに速やかに近づけることができる。
また、通常運転では、試験室(2)の露点温度Tdを目標値に近づける加湿動作が行われる。ただし、試験室(2)の温度Trと目標温度Tsとの差が所定値よりも大きい条件下で加湿動作を行うと、露点温度Tdの収束性が損なわれる。このため、温度Trと目標温度Tsとの差が所定値γより大きい条件下では、加湿動作が禁止され、この差がγ以下であるときに加湿動作が行われる。
加湿動作では、各噴霧スプレー(36)から水を噴霧する動作(噴霧動作)が間欠的に実行させる。同時に、第3回路(64)では、三方弁(68)が第1状態になるとともに、温熱媒体が第3温熱流入路(66)に供給される。この結果、加湿用加熱コイル(30)を温熱媒体が流れる。
噴霧スプレー(36)から水が噴霧されると、この水は一部が空気中に付与され、残りは加湿用加熱コイル(30)に付着して凍結する。一方、噴霧動作が停止されると、加湿用加熱コイル(30)の表面の氷が温熱媒体から吸熱して融解する。融解した水は空気中に付与される。このように、加湿動作では、噴霧スプレー(36)から噴霧された水を加湿用加熱コイル(30)の表面で氷にする動作と、この氷を温熱媒体で融かす動作とが繰り返し行われる。これにより、高い加湿効率で空気を加湿することができる。
〈コイル側デフロスト動作〉
被試験機側空調装置(A)では、暖房運転を継続して行うことで室外熱交換器(4)の表面に霜が付着する。このため、被試験機側空調装置(A)では、蒸発器側デフロスト動作が適宜実行される。
蒸発器側デフロスト動作が実行されると、被試験機側空調装置(A)の出力部(16)からデフロスト信号が、その都度出力される。空気調和装置(10)の受信部(71)には、この信号が都度入力される。弁制御部(72)は、受信部(71)に入力された信号の回数Nを適宜カウントする。この回数Nが所定値Nsに至ると、弁制御部(72)は、第1回路(41)の流路切換機構(46,47,48,49)を第3状態に変更する。これにより、空気調和装置(10)では、蒸発器側デフロスト動作に連動して、コイル側デフロスト動作が行われる。
図4に示すコイル側デフロスト動作では、第1回路(41)において、前列パス(P1,P2)を温熱媒体が流れ、後列パス(P3,P4)を熱媒体が流れない(第2動作)。第2回路(61)及び第3回路(64)にも熱媒体が流れない。
冷却コイルユニット(21)では、その上流側である第1伝熱部(22)の表面に霜が付着しやすい。冷却コイルユニット(21)では、その下流側よりも上流側の方が空気の湿度が低くなる傾向にあるからである。従って、コイル側デフロスト動作では、前列パス(P1,P2)に温熱媒体を流すことで、冷却コイルユニット(21)の霜を効率良く融かすことができる。
この際、後列パス(P3,P4)には温熱媒体が供給されないため、温熱媒体の熱が空気中へ過剰に放出されることを抑制できる。従って、コイル側デフロスト動作に伴う試験室(2)の空気温度の上昇を抑制できる。一方、第2伝熱部(23)にはさほど霜が付かないため、後列パス(P3,P4)の温熱媒体を流さなくても、第2伝熱部(23)の霜付きが大きな問題になることはない。
加えて、蒸発器側デフロスト動作と連動して、コイル側デフロスト動作を行うことで、試験室(2)の空気温度が高くなってしまう時間を短縮できる。これにより、蒸発器側デフロスト動作に起因して被試験機側空調装置(A)の試験時間が短くなってしまうことを抑制できる。
即ち、コイル側デフロスト動作と蒸発器側デフロスト動作とを個別に制御すると、例えば蒸発器側デフロスト動作が終了した後、コイル側デフロスト動作が実行される可能性がある。この場合、被試験機側空調装置(A)で再び暖房運転が行われるタイミングでコイル側デフロスト動作が実行されてしまうため、暖房運転中に試験室(2)の空気温度が上昇してしまう。従って、被試験機側空調装置(A)では、定常の運転条件にて暖房運転を行うことができず、所望の試験データを得ることができない。この結果、正確な試験データを得ることができる試験時間が短くなってしまう。
これに対し、本実施形態では、蒸発器側デフロスト動作に連動してコイル側デフロスト動作が実行されるため、両者のデフロスト動作に起因する空気の昇温のタイミングも一致する。このため、暖房運転の再開後において、試験室(2)の空気温度が上昇してしまうことを回避でき、試験時間を十分確保できる。
本実施形態の蒸発器側デフロスト動作は、コイル側デフロスト動作の終了に連動して終了される。即ち、蒸発器側デフロスト動作が終了し、受信部(71)にデフロスト信号が入力されなくなると、コイル側デフロスト動作も終了する。なお、コイル側デフロスト動作は、例えばコイル側デフロスト動作が開始されてから所定時間が経過すると終了するものであってもよい。また、冷却コイルユニット(21)の除霜が終了したことを示す所定の条件が成立すると、コイル側デフロスト動作を終了させてもよい。
コイル側デフロスト動作が終了すると、第1回路(41)には、冷熱媒体及び温熱媒体が何ら供給されない。従って、冷却コイルユニット(21)では、前列パス(P1,P2)及び後列パス(P3,P4)を何ら熱媒体が流れない(休止動作)。
休止動作の後、空気調和装置(10)は、予備冷却動作を行う。予備例冷却動作では、第1回路(41)の流路切換機構(46,47,48,49)が第3状態となる。これにより、冷却コイルユニット(21)では、図3に示すように、前列パス(P1,P2)を熱媒体が流れず、後列パス(P3,P4)を冷熱媒体が流れる。
予備冷却動作では、冷却コイルユニット(21)の第2伝熱部(23)によって空気が冷却される。これにより、試験室(2)の空気が速やかに低下していく。コイル側デフロスト動作の後、前列パス(P1,P2)及び後列パス(P3,P4)の双方に冷熱媒体を流してしまうと、前列パス(P1,P2)では、温熱媒体が流れていた状態から直ぐに冷熱媒体が供給される。このため、前列パス(P1,P2)では、熱媒体の急激な温度変化に起因して、伝熱管に温度衝撃が作用し、伝熱管の破損等の不具合を招く可能性がある。これに対し、本実施形態の予備冷却動作では、前列パス(P1,P2)に冷熱媒体を流さないため、前列パス(P1,P2)の伝熱管に温度衝撃が作用することを抑制できる。
予備冷却動作が実行され、所定時間が経過すると、上述した通常運転が再開される。
このような蒸発器側デフロスト動作に連動するコイル側デフロスト動作は、設定部(73)が第1の設定にある状態であるときに実行される。一方、設定部(73)が第2の設定である状態では、蒸発器側デフロスト動作に連動してコイル側デフロスト動作が実行されない。つまり、設定部(73)を第2の設定とすると、コイル側デフロスト動作の実行そのものを禁止できる。これにより、コイル側デフロスト動作に起因する試験室(2)の空気温度の上昇を確実に抑制できる。
−実施形態の効果−
上記実施形態では、冷却コイルユニット(21)の除霜を行うコイル側デフロスト動作において、前列パス(P1,P2)のみに温熱媒体を流すため、温熱媒体から空気への過剰な放熱を抑制しつつ、冷却コイルユニット(21)の第1伝熱部(22)に付着した霜を確実に取ることができる。この結果、コイル側デフロスト動作に起因して、試験室(2)の温度が大きく上昇してしまうことを抑制できる。
上記実施形態では、コイル側デフロスト動作において前列パス(P1,P2)に温熱媒体を流して除霜を行った後、すぐに前列パス(P1,P2)に冷熱媒体を流さず、後列パス(P3,P4)のみに冷熱媒体を流す予備冷却動作を行う。このため、前列パス(P1,P2)に対応する伝熱管の温度衝撃を抑制しつつ、空気の冷却を速やかに再開できる。
上記実施形態では、蒸発器側デフロスト動作に連動してコイル側デフロスト動作を実行するため、蒸発器側デフロスト動作が実行されていない期間において、冷却コイルユニット(21)の除霜に起因して空気温度が上昇してしまうことを回避できる。これにより、蒸発器である室外熱交換器(4)の周囲を所望の温度雰囲気に維持できる時間が長くなり、ひいては被試験機側空調装置(A)の実質的な試験時間を長期化できる。
また、上記実施形態では、蒸発器側デフロスト動作が複数回Nsに達する毎に、コイル側デフロスト動作を実行するため、コイル側デフロスト動作の実行頻度を減らすことができる。これにより、コイル側デフロスト動作に起因する試験室(2)の空気温度の上昇を更に抑制でき、被試験機側空調装置(A)の実質的な試験時間を更に長期化できる。
《実施形態の変形例》
上記実施形態の制御器(70)は、被試験機側空調装置(A)が出力するデフロスト信号を受信すると、蒸発器側デフロスト動作を実行する。しかし、制御器(70)は、他の条件が成立すると蒸発器側デフロスト動作を実行するものであってもよい。この変形例について詳述する。
〈変形例1〉
図5に示す変形例1では、被試験機側空調装置(A)の室外ファン(6)の近傍に、風速センサである風速計(17)が設けられる。風速計(17)は、室外ファン(6)が搬送する空気の風速を検出する。一方、空気調和装置(10)の制御器(70)には、風速計(17)の検出信号が入力される。
被試験機側空調装置(A)が暖房運転を行うと、室外ファン(6)は蒸発器ファンとなる。被試験機側空調装置(A)が蒸発器側デフロスト動作を行うと、室外ファン(6)を停止させ、上述した逆サイクルデフロストを行う。このため、蒸発器側デフロスト動作が実行されると、風速計(17)で検出した風速は実質的にゼロになる。従って、制御器(70)は、風速計(17)で検出した風速が所定値以下(例えばゼロ)になると、蒸発器側デフロスト動作が実行されたと判定する。そして、制御器(70)は、このタイミングに併せて上述したコイル側デフロスト動作を実行させる。これにより、変形例1においても、蒸発器側デフロスト動作に連動してコイル側デフロスト動作を実行させることができる。
〈変形例2〉
被試験機側空調装置(A)が暖房運転から蒸発器側デフロスト動作へ移行する際には、冷媒回路の圧縮機が一時的に停止する。従って、例えば被試験機側空調装置(A)の入力電流(即ち、消費電力)が所定値よりも低くなることを条件として、蒸発器側デフロスト動作の判定を行うこともできる。この場合、制御器(70)は、被試験機側空調装置(A)の入力電流に相当する信号を受信し、この入力電流が所定値以下であると、コイル側デフロスト動作を実行させる。
《その他の実施形態》
上記実施形態の冷却装置(10)の制御器(70)は、蒸発器側デフロスト動作の実行回数Nが所定の複数回Nsに至る毎にコイル側デフロスト動作を実行させる。しかし、制御器(70)は、蒸発器側デフロスト動作を実行させる毎にコイル側デフロスト動作を実行させるものであってもよい。つまり、上記Ns=1としてもよい。
上記実施形態の冷却装置(10)は、試験室(2)の空気を冷却するものである。しかしながら、冷却装置(10)は、例えば冷蔵庫や冷凍庫などの庫内の空気を冷却するものであってもよいし、それ以外を冷却対象とするものであってもよい。