一般的な考察
本明細書に記載される原理による方法は、試料中の分析物同族体の総量を測定するためのアッセイで得られるシグナルの量に対する2つまたはそれ以上の分析物同族体の寄与を調節することを対象とする。アッセイで得られるシグナルに対する分析物同族体の寄与が、試料中の分析物同族体の総量の測定を不正確にする可能性がある理由はいくつかある。こうした理由としては、これらに限定されるものではないが、試料中に存在する異なる分析物同族体に等しく結合しないアッセイ抗体および/または分析物同族体のうちの1つが、置換剤によって他の分析物同族体よりも多く内在性結合物質から外れる場合もあるという事実が挙げられる。上記の両状況により、生成されるシグナルの量が不均等になる。この場合、シグナルの量に対する1つの分析物同族体の寄与により、もとの試料中の分析物同族体の総量を誤って反映させた総シグナル量になる。例えば、説明のためであって、限定するものではないが、25−ヒドロキシビタミンD2のアッセイシグナルを高くするであろう潜在的な要因が2つある。第1の要因は、25−ヒドロキシビタミンD2は、25−ヒドロキシビタミンD3よりもビタミンD結合タンパク質との結合が弱いため、25−ヒドロキシビタミンD2の方が容易にビタミンD結合タンパク質から遊離し、アッセイ抗体が接触可能な遊離型25−ヒドロキシビタミンD2分子の濃度がより高くなることである。第2の要因は、ある場合には、アッセイ抗体が、25−ヒドロキシビタミンD3よりも25−ヒドロキシビタミンD2類似体に対してより大きな親和性を有する。2つの要因が共に働くと、25−ヒドロキシビタミンD3からよりも25−ヒドロキシビタミンD2からより高いシグナルが生じる可能性があり、これが、等モルでない根本的原因である。
医療上の判断範囲の下限における特定のアッセイ方式の性能は、分析物の対象の疑われる濃度範囲にまたがるキャリブレータに対して得られたシグナルの量の差を観察することによって監視することができる。例えば、キャリブレータL1とキャリブレータL2またはキャリブレータL2とキャリブレータL3またはキャリブレータL1とキャリブレータL4などのキャリブレータ間のシグナルの差または分離が大きいことが、例えば望ましい。場合によっては、5つのキャリブレータを利用してもよい、任意にL1〜L5と呼ぶ。シグナル対ノイズ比は、任意にキャリブレータL1と呼ぶ、分析物を含まないキャリブレータ(バックグラウンド)を使用したシグナルの量および任意にキャリブレータL2と呼ぶ、0を超える第1の既知の量の分析物を含むキャリブレータに対して得られたシグナルの量を測定することによって評価してもよい。この評価は、キャリブレータL1および任意にL3と呼ぶ、0を超える第2の既知の量の分析物を含むキャリブレータに関するシグナルの量を使用してシグナルの量を測定することも含んでもよい。そのような評価は、キャリブレータL4およびL5を使用したそのような測定も含むであろう。その場合、キャリブレータのそれぞれは、既知の漸増量の分析物を含む。アッセイの方式に応じて、シグナルの差は、シグナルの増加またはシグナルの減少である場合もある。例えば、競合アッセイに関する大半の例では、分析物の濃度に関連してシグナルが減少することになり;サンドイッチアッセイに関する大半の例では、分析物の濃度に関連してシグナルが増加することになる。
既知の濃度の分析物を使用して形成されたキャリブレータに対するアッセイから得られるシグナルの量を、各キャリブレータの分析物の濃度に関してグラフ化して検量線または標準曲線を作成する。未知の量のシグナルを含む試料に対するアッセイで得られた、結果は、検量線と比較されて、分析物に対するアッセイで得られたシグナルの量に基づいて未知の試料中の分析物の量を確かめる。
本明細書に記載される原理による方法は、分析物同族体またはそれらのそれぞれの代謝産物が有効な2つまたはそれ以上の分析物同族体の総量を測定する。「分析物同族体」または「分析物の同族体型」という語句は、構造および官能基によって関連し、例えば、メチレン基、メチル基、水素、ケト基およびエピマーなどの1つまたはそれ以上の化学的部分が互いに異なる分析物の形態を指す。「有効である」という用語は、例えば、骨代謝などの生物学的機能である場合もある特定の機能に対する分析物の活性の程度を指す。例えば、物質の生物学的活性は、生物学的機能、例えば、対象中の無機物および塩を適切なレベルに維持する細胞の機能などを向上させるか、または抑制する物質の能力に関連する。説明のためであって、限定するものではないが、ビタミンDは、カルシウム恒常性および骨代謝に関わる対象中のカルシウムおよびリン酸塩を適切なレベルに維持する。
2つまたはそれ以上の同族体型を有する、生物学的試料中の分析物の総量を正確に評価することは、特に2つまたはそれ以上の同族体型が有効な場合に重要である。分析物の存在が、例えば、疾患状態、欠乏症、遺伝子変異または薬理遺伝学に関連する代謝パターンを示す場合もある。例えば、ビタミンDの欠乏は哺乳動物では多くの障害に関連するため、生物学的試料中のビタミンDレベルの測定は重要である。乳幼児では、例えば、ビタミンDの測定が不正確だと、乳幼児のビタミンDレベルの評価が不正確になり、これが次に、適切な補充がされないことにつながる可能性がある。乳幼児が必要に応じて適切なビタミンD療法を受けることができるよう、活性型のビタミンDの総量を測定することは重要である。
「ビタミンD」という用語は、脂溶性セコステロイドのグループを指す。ヒトでは、ビタミンDは、コレカルシフェロール(ビタミンD3)またはエルゴカルシフェロール(ビタミンD2)として摂取可能であるため、および日光曝露が適切である場合には、体がビタミンDを(コレステロールから)合成できるため、ビタミンDは特有なものである。この後者の特性のため、一部の人からは、ビタミンDが非必須の食物性ビタミンであると考えられているが、大半の人はビタミンDを必須栄養素であると考えている。ビタミンDは、カルシウムイオン恒常性の正の調節に重要な生理的役割をもつ。ビタミンD3は、動物が合成するビタミンの形態である。ビタミンD3は、ビタミンD2と同様に、乳製品および特定の食品に添加される一般的なサプリメントでもある。25−ヒドロキシビタミンD3および25−ヒドロキシビタミンD2についての構造を図1に示す。
食物由来および本質的に合成されたビタミンD3およびビタミンD2の両方とも、代謝活性化を受けて生理活性代謝産物を形成しなければならない。ヒトでは、ビタミンD3活性化の最初の工程は、主に肝臓で起こり、中間代謝産物である25−ヒドロキシコレカルシフェロール(カルシジオール、カルシフェジオール、25−ヒドロキシコレカルシフェロールまたは25−ヒドロキシビタミンD3とも称される)を形成するためのヒドロキシル化を伴う。カルシジオールが循環器系におけるビタミンD3の主な形態である。ビタミンD2も、類似の代謝活性化を受けて25−ヒドロキシビタミンD2を形成する。一括して、これらの化合物は25−ヒドロキシビタミンDと呼ばれ(省略して25(OH)D)、これらは、主要な代謝産物であり、ビタミンDの状態を確認するために血清中で測定され;25(OH)Dは前駆ホルモンであり、生物学的機能を発揮するために1,25(OH)Dに変換される必要がある。
本明細書に記載される原理による方法は、特に、試料中の分析物同族体のすべてと結合する抗体などの1つの受容体または特異的に結合する対メンバーが利用される場合に、試料中の2つの分析物同族体の総量を測定するためにアッセイで得られるシグナルの量に対する2つの分析物同族体のうちの1つの寄与を調節することを提供する。一部の例において、試料中の実質的に等モル量の複数の分析物同族体を反映して測定されたシグナルの総量を得るために、別の同族体よりも高い1つの同族体からのシグナルの量を調節することが重要である。上述のとおり、実質的に等モル量の複数の分析物同族体の測定を取り巻くいくつかの問題としては、例えば、分析物同族体と等しく結合する抗体などの受容体を入手することの難しさおよび内在性結合物質が結合した分析物同族体の遊離が等しくないことが挙げられる。「実質的に等モル量」という語句は、アッセイ媒体中の各分析物同族体の量が同等であるか、または例えば、互いが約10%、もしくは約9%、もしくは約8%、もしくは約7%、もしくは約6%、もしくは約5%、もしくは約4%、もしくは約3%、もしくは約2%、もしくは約1%、もしくは0%以下の差で異なることを意味する。
2つまたはそれ以上の分析物同族体に対するアッセイに関して、2つまたはそれ以上の分析物同族体に等しく結合する抗体などの1種の受容体が利用されるのが理想的である。しかしながら、多くの場合に、そのような受容体を得ることは難しく、2つまたはそれ以上の分析物同族体に不均等に結合する受容体を使用せざるをえない。各分析物同族体に不均等に結合する受容体が利用される状況では、アッセイは、試料中の分析物同族体の合計濃度が不正確な結果になる可能性もある。そのような状況では、分析物同族体の1つのみを使用したキャリブレータが一般に形成される。アッセイに使用される受容体が分析物同族体のうちの1つとより力強く結合すると、その分析物同族体からより高いシグナルが生成され、シグナルの総量が増加する。総シグナルのこの量が検量線と比較されると、検量線から得られる対応する分析物同族体の総量が試料中の分析物同族体の実際の総量よりも多くなることになる。本明細書に記載される原理による方法は、シグナルが試料中の分析物同族体の実際の総量と正確に関連づけられるよう、得られるシグナルの量を調節する手段を提供する。
上述のとおり、複数の分析物同族体に対するアッセイで得られるシグナルが不正確になる別の理由は、内在性結合物質が結合した各分析物同族体の遊離が等しくないことである。多くの分析物同族体には、内在性結合物質が結合する。そのような内在性結合物質は、採取元から採取された試料中に存在するものである。内在性結合物質の性質は、例えば、試料の性質、試料の採取元の性質、分析物の性質および分析物を含む分子複合体の性質の1つまたはそれ以上によって決まる。
内在性結合物質が結合した分析物同族体は、本明細書中で考察するような置換剤によってそのような物質から遊離することができる。内在性結合物質としては、内在性特異的結合物質および内在性非特異的結合物質の両方が挙げられる。特異的結合物質は、表面もしくは空洞に分析物の特定の空間および極性機構(polar organization)と特異的に結合する領域を有し、それにより分析物と相補的であると定義される物質であり、または逆もまた同様である。特異的結合は、非特異的結合と区別される。その理由は、特異的結合は、認識が実質的に低い他の分子と比較して、2つの異なる分子の他方に対して一方を特異的に認識するためである。非特異的結合物質は、一般に、特異的な表面構造とは比較的無関係である分子間の非共有結合によって分析物と結合する物質である。分析物に対する内在性結合物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、抗分析物抗体および受容体などの分析物と特異的に結合するタンパク質、ならびに分析物に非特異的に結合する結合タンパク質が挙げられる。特定の例では、説明のためであって、限定するものではないが、分析物がビタミンDであり、内在性結合物質がビタミンD結合タンパク質である。
内在性結合物質を含む場合には、内在性結合物質から分析物を遊離させるために置換剤を利用してもよい。置換剤を使用した場合の問題の1つは、多くの場合、置換剤が内在性結合物質から各分析物同族体を等しい量で外さないことである。むしろ、1つの分析物同族体の方が、その同じ分析物の別の同族体が外れるのと比較して多く外れる場合もある。この現象は、アッセイに利用される分析物同族体に対する受容体が、アッセイにおける検出のための各分析物同族体と実質的に等しく結合した場合でも、アッセイで得られるシグナルが実質的に等モル量でない問題をもたらす。本明細書に記載される原理による方法は、シグナルが試料中の分析物同族体の実際の総量と正確に関連づけられるよう得られたシグナルの量を調節する手段を提供する。
上述のとおり、分析物同族体の測定は、置換剤で処理した試料に対して行うことができる。試料に添加される置換剤の量は、実質的にすべての分析物同族体を内在性結合物質から外すのに十分な量である。「実質的にすべての分析物同族体を内在性結合物質から外す」という語句は、分析物同族体が少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも99%、または少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%または100%内在性結合物質から外れ、アッセイの間に検出のために利用できることを意味する。
置換剤の添加後、試料は、実質的にすべての分析物同族体を内在性結合物質から外すための時間、条件下においてインキュベートされる。インキュベーションの長さおよび条件は、例えば、置換剤の性質、分析物同族体の性質および分析物同族体の可能性のある濃度の1つまたはそれ以上により決まる。一部の実施形態において、この工程に対するインキュベーション温度は、例えば、約5℃から約99℃、または約15℃から約70℃、または約20℃から約45℃であってもよい。インキュベーションの時間は、例えば、約0.2秒から約24時間、または約1秒から約6時間、または約2秒から約1時間、または約1から約15分間である。インキュベーションは、本明細書中で考察するとおり、都合上、アッセイ媒体でもよい媒体中で行われてもよいが、その必要はない。
本明細書に記載される原理によるアッセイ法において、組み合わせは、アッセイ媒体中に準備される。この組み合わせは、2つの分析物同族体を含む可能性のある試料、試料中の2つの分析物同族体の総量を測定するためのアッセイを行うための試薬であって、2つの分析物同族体と結合する少なくとも1種のアッセイ受容体を含む試薬およびシグナルの量に対する寄与が調節されるべき2つの分析物同族体のいずれに対してもより大きな結合親和性を有する非アッセイ受容体を含む。非アッセイ受容体の量は、シグナルに対する分析物同族体の寄与に対して所定量の調節を行うのに十分な量である。2つの分析物同族体の総量を測定するためのアッセイが行われる。
非アッセイ受容体は、別の分析物同族体よりも1つの分析物同族体に対して選択的に結合し、試料中の分析物同族体の存在または量に関連する複合体の形成に関与しない物質である。説明のためであって、限定するものではないが、非アッセイ受容体は、例えば、抗体、分子インプリントポリマー、アンチセンスRNAまたはアンチセンスDNAであってもよい。
説明のためであって、限定するものではないが、本明細書に記載される原理により抗体を作製する方法の例を記載する。本明細書に記載される原理に従った特性をもつ少なくとも2つの異なる抗体、アッセイ抗体および非アッセイ抗体が必要とされる。アッセイ抗体は、試料中に存在することが疑われる複数の分析物同族体に対して十分なアッセイ結合親和性を示す。非アッセイ抗体は、過剰でない分析物同族体に対する結合親和性よりも大きな結合親和性で過剰な分析物同族体と結合する。一部の例において、非アッセイ抗体は、過剰な分析物同族体に対して十分な結合親和性を示すが、過剰でない分析物同族体に対しては十分な結合親和性を示さないか、または実質的に結合親和性を示さない。
「アッセイ結合親和性」という語句は、分析物同族体と結合したアッセイ抗体の複合体を生成するためにアッセイ抗体が対応する分析物同族体と結合する強さを指す。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであってもよい。抗体としては、完全な免疫グロブリンまたはそのフラグメントが挙げられ、その免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3、IgMなどのさまざまなクラスならびにアイソタイプが含まれる。そのフラグメントとしては、Fab、FvおよびF(ab‘)2、Fab‘ならびに同種のものが挙げられる。さらに、必要に応じて特定の分子に対する結合親和性が維持されるならば、免疫グロブリンまたはそれらのフラグメントの凝集体、重合体および複合物が使用できる。
モノクローナル抗体は、連続的に雑種細胞株を作製し、分泌されたタンパク質を収集する(体細胞雑種形成技術)などの当該技術分野において周知の技術によって作製することができる。モノクローナル抗体は、KohlerおよびMilstein、Nature 265:495〜497ページ、1975年の標準的な技術により生成してもよい。モノクローナル抗体技術の総説は、Lymphocyte Hybridomas、Melchersら編、Springer−Verlag(New York 1978)、Nature 266:495ページ(1977年)、Science 208:692ページ(1980年)およびMethods of Enzymology 73(Part B):3〜46ページ(1981年)に見出される。
抗体の作製に関する別のアプローチでは、抗体結合部位をコードする配列を、染色体DNAから切り取り、クローニングベクターに挿入することができ、この配列が細菌中で発現して、対応する抗体結合部位を有する組換え型タンパク質を産生することができる。このアプローチには、天然の抗体の特異的結合のために必要とされるアミノ酸配列を少なくともコードするヌクレオチド配列またはその突然変異版のクローニングおよび発現が含まれる。
モノクローナル抗体の産生に関するアプローチの1つでは、第1の工程は、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジまたは雌ウシなどの抗体産生動物の、抗原、例えば、免疫源による免疫化を含む。免疫化は、完全フロイントアジュバントもしくはモノホスホリルリピドAおよび合成トレハロースジコリノミコラートアジュバントなどのその他のアジュバントなどのアジュバントを用いて、または用いずに行うことができる。次の工程は、抗体産生動物から脾細胞を単離すること、およびポリエチレングリコールの使用またはその他の技術によってなど抗体産生脾細胞を適切な融合パートナー、一般に骨髄腫細胞と融合することを含む。一般に、使用される骨髄腫細胞は、通常、ヒポキサンチン−チミジン(HT)培地においては増殖するが、融合細胞の選択のために使用されるヒポキサンチン−アミノプテリン−チミジン(HAT)培地においては増殖できないものである。次の工程は、一般にHAT培地における選択による融合細胞の選択を含む。次の工程は、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)などのイムノアッセイまたはスクリーニングに適したその他のイムノアッセイを使用した適切な抗体産生のためのクローン化雑種のスクリーニングを含む。
上記のとおり分析物同族体に対して必要な結合親和性を有するアッセイ抗体は、周知のスクリーニング手法によって選択でき、これらとしては、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、ELISA、ドットブロット、ウエスタン分析および表面プラズモン共鳴が挙げられる。
上述のとおり、非アッセイ受容体の機能は、試料中の2つの分析物同族体の総量を測定するためのアッセイで得られるシグナルの量に対する2つの分析物同族体のうちの1つの寄与を調節することを提供することである。本明細書に記載される原理による一部の例において、非アッセイ受容体は、アッセイにおいて実質的に等モル量のシグナルを提供する。非アッセイ抗体などの非アッセイ受容体は、この目的のために選択される。例えば、非アッセイ抗体は、別の分析物同族体と比較して1つの分析物同族体に対して結合する能力(その結合親和性)に関して選択される。非アッセイ抗体は、上記のとおりアッセイ媒体中に過剰にあることがわかっている分析物同族体に対して選択的な結合親和性を示さなければならない。
したがって、非アッセイ抗体は作製され、各分析物同族体に対するアッセイ受容体の結合親和性の不均衡および内在性結合物質からの分析物同族体のうちの1つの不均等な遊離の一方または両方に関して、分析物同族体に対するアッセイで得られるシグナルが調節されるように、非アッセイ抗体が、別の分析物同族体と比較して1つの分析物同族体に対して十分な結合親和性を示すよう適切なスクリーニング法によって選択される。この説明の目的に対して、アッセイ受容体がより大きな結合親和性を有するか、または内在性結合物質からより多く遊離する分析物同族体を、本明細書中では「過剰な分析物同族体」と呼び、他方の分析物同族体を、本明細書中では「過剰でない分析物同族体」と呼ぶ。
本明細書に記載される原理による一部の例において、非アッセイ受容体は、非アッセイ抗体である。上記のとおり分析物同族体に対して必要な結合親和性を有する非アッセイ抗体は、周知のスクリーニング手法により選択することができ、これらとしては、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、ELISA、ドットブロット、ウエスタン分析および表面プラズモン共鳴が挙げられる。
「選択的な結合親和性」という語句は、過剰な分析物同族体に対する非アッセイ抗体の結合親和性が、過剰でない分析物同族体に対する非アッセイ抗体の結合親和性よりも大きいことを意味する。本明細書に記載される原理による一部の例において、非アッセイ抗体は、過剰な分析物同族体に対して、過剰でない分析物同族体に対する結合親和性よりも、例えば、約10、または約102、または約103、または約104、または約105倍だけ大きい結合親和性を有する。例えば、過剰な分析物同族体に対する非アッセイ抗体の結合親和性が約109リットル/モルである場合、過剰でない分析物同族体に対する非アッセイ抗体の結合親和性は、例えば、約107リットル/モル未満、または約106リットル/モル未満であってもよい。本明細書に記載される原理による一部の例において、非アッセイ抗体は、過剰でない分析物同族体に対して実質的に結合親和性を示さない。「実質的に結合親和性を示さない」という語句は、非アッセイ抗体と過剰でない分析物同族体との間では実質的に検出可能な複合体が形成されないことを意味する。
本明細書に記載される原理による一部の例において、過剰な分析物同族体に対する非アッセイ抗体の結合親和性は、例えば、少なくとも約107リットル/モル、または少なくとも約108リットル/モル、または少なくとも約109リットル/モル、または少なくとも約1010リットル/モル、または少なくとも約1011リットル/モル、または少なくとも約1012リットル/モル、または少なくとも約1013リットル/モル、または少なくとも約1014リットル/モルである。本明細書に記載される原理による一部の例において、過剰な分析物同族体に対する非アッセイ抗体の結合親和性は、例えば、約107から約1014リットル/モル、または約107から約1011リットル/モル、または約107から約1012リットル/モル、または約108から約1014リットル/モル、または約108から約1011リットル/モル、または約108から約1012リットル/モルである。
本明細書に記載される原理による一部の例において、過剰でない分析物同族体に対する非アッセイ抗体の結合親和性は、例えば、約107リットル/モル未満、または約106リットル/モル未満、または約105リットル/モル未満、または約104リットル/モル未満、または約103リットル/モル未満、または約102リットル/モル未満、または約10リットル/モル未満である。本明細書に記載される原理による一部の例において、過剰でない分析物同族体に対する非アッセイ抗体の結合親和性は、例えば、約10から約106リットル/モル、または約10から約105リットル/モル、または約10から約104リットル/モル、または約10から約103リットル/モル、または約10から約102リットル/モル、または約102から約106リットル/モルである。
利用される非アッセイ受容体の量は、分析物同族体の総量に関するアッセイで得られるシグナルに対する過剰な分析物同族体の寄与の調節を行うのに十分な量である。一部の例において、アッセイ媒体中の非アッセイ受容体の量は、アッセイ媒体中の過剰な分析物同族体および過剰でない分析物同族体に関して実質的に等しいシグナルの量を達成するのに十分な量である。非アッセイ受容体の量は多くの要因により決まり、要因としては、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、異なる分析物同族体に対する非アッセイ受容体の性質および結合親和性、異なる分析物同族体に対するアッセイ受容体の性質および結合親和性、遊離する過剰でない分析物同族体の量と比較した置換剤によって遊離する過剰な分析物同族体の量、分析物同族体の性質、アッセイの性質、アッセイ試薬の性質ならびに臨床試料の性質が挙げられる。一部の例において、利用される非アッセイ受容体の量は経験的に決定され、上述の要因の1つまたはそれ以上に基づく。本明細書に記載される原理による一部の例において、非アッセイ受容体の量は、例えば、約1μg/mLから約100μg/mL、または約1μg/mLから約75μg/mL、または約1μg/mLから約50μg/mL、または約1μg/mLから約25μg/mL、または約1μg/mLから約10μg/mL、または10μg/mLから約100μg/mL、または約10μg/mLから約75μg/mL、または約10μg/mLから約50μg/mL、または約10μg/mLから約25μg/mLである。
分析物同族体を含む媒体の処理は、分析物同族体に対するアッセイと別の工程としてまたはそれと同時に行われてもよい。本明細書中で考察されるとおり、過剰な分析物同族体の量が、放出剤(releasing agent)による試料の処理により生じる場合、非アッセイ受容体による媒体の処理は、放出剤による処理に引き続いて行われる。過剰な分析物同族体の量が、各分析物同族体に対するアッセイ抗体のアッセイ結合親和性の不均衡により生じる場合、非アッセイ受容体による媒体の処理は、分析物同族体に対するアッセイ中に行われる。
本明細書に記載される原理により分析物同族体を含む媒体を処理する条件は、分析物同族体に対するアッセイに利用されるものと同じであってもよい。一部の例において、処理は水性の緩衝媒体中において中程度のpHで行われ、一般に、これにより、過剰な分析物同族体に対する非アッセイ受容体の最適な結合がもたらされる。水性媒体は水のみでもよく、または0.1から約40体積パーセントの共溶媒を含んでもよい。媒体のpHは、例えば、約4から約11の範囲、または約5から約10範囲、または約6.5から約9.5の範囲になる。pHは、一般には、任意の特異的な結合対の結合メンバーの最適な結合、シグナル生成系のメンバーなどのアッセイの他の試薬に最適なpHなどの間で折り合いをつけることになる。所望のpHにし、アッセイの間、そのpHに維持するためにさまざまなバッファーを使用してもよい。実例となるバッファーとしては、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、TRIS、バルビタール、PIPES、HEPES、MES、ACES、MOPSおよびBICINEが挙げられる。利用される特定のバッファーは重要ではないが、個々のアッセイでは、何らかのバッファーが好ましい場合もある。非アッセイ受容体による処理に、さまざまな補助材料を利用してもよい。例えば、バッファーに加えて、媒体は、利用される媒体および試薬のための安定剤を含んでもよい。
非アッセイ受容体による処理に利用される各種試薬の添加の間の任意の間隔を含む1つまたはそれ以上の間隔で1つまたはそれ以上のインキュベーション期間を媒体に適用してもよい。媒体は、一般に非アッセイ受容体が過剰な分析物同族体と結合するのに十分な温度、時間でインキュベートされる。本方法を行うために中程度の温度が通常利用され、一般には、測定の期間中、一定温度、好ましくは室温である。一部の例において、インキュベーション温度は、例えば、約5℃から約99℃、または約15℃から約70℃、または約20℃から約45℃の範囲に及ぶ。インキュベーションの時間は、一部の例において、例えば、約0.2秒から約24時間、または約1秒から約6時間、または約2秒から約1時間、または約1分から約15分間である。時間は多くの要因に左右され、要因としては、これらに限定されるものではないが、例えば、媒体の温度ならびに必要に応じて過剰な分析物同族体および過剰でない分析物同族体に対する非アッセイ受容体の結合親和性が挙げられる。
その後、試料中の第1の分析物同族体および第2の分析物同族体の量を測定するために、第1の分析物同族体および第2の分析物同族体に対してアッセイが行われる。アッセイを行うための試薬は、例えば、分析物同族体のそれぞれと結合して複合体を形成することができるアッセイ抗体などのアッセイ受容体および複合体中の分析物同族体の量と関連してシグナルを生成するシグナル生成系のメンバーを含む。非アッセイ受容体の量は、シグナルに対する第1の分析物同族体または第2の分析物同族体の寄与の調節を行うのに十分な量である。アッセイ媒体は、複合体を形成する条件下でインキュベートされる。複合体からのシグナルの量が測定され、試料中の分析物同族体の総量と関連づけられる。アッセイは、下でより詳細に考察するとおり任意の数のアッセイから選択することができる。
アッセイの概括的な説明
以下の解説は、説明のためであって、限定するものではない。抗体を利用する任意の適切なアッセイ(イムノアッセイ)が本明細書に記載される原理が関与する測定に利用できる。アッセイは、任意のアッセイ成分または生成物の分離を伴わず(均一)または分離を伴って(不均一)行うことができる。不均一アッセイは、一般に1つまたはそれ以上の分離工程を含み、競合または非競合の場合がある。アッセイは、手動または自動であってもよい。
分析対象の試料は、2つまたはそれ以上の分析物同族体を含むことが疑われるものである。試料は、生物学的試料または非生物学的試料であってもよい。生物学的試料は、哺乳動物対象または非哺乳動物対象からのものでもよい。哺乳動物対象は、例えば、ヒトまたはその他の動物種であってもよい。生物学的試料としては、全血、血清、血漿、痰、リンパ液、精液、膣粘液、糞、尿、脊髄液、唾液、大便、脳脊髄液、涙、粘液および同種のものなどの生体液;毛、皮膚、臓器の切片もしくは切除された組織またはその他の体の一部などの生物学的組織;などが挙げられる。多くの場合、試料は、全血、血漿または血清である。以下に限定されるものではないが、例えば、排水流を含む非生物学的試料も、本明細書に記載される原理による化合物を使用して分析することができる。
都合がよい任意の媒体中で試料を準備してもよく、それは、下でより完全に考察するとおり、例えば、アッセイ媒体であってもよい。ある場合には、例えば、内在性結合物質から分析物同族体を遊離させるため、または血液細胞を溶解させるためなど、試料に前処理を施してもよい。一部の例において、そのような前処理は、それに続くアッセイの妨げにならない媒体中で行われる。
多くの実施形態において、イムノアッセイは、標識試薬を伴う。標識試薬を伴うイムノアッセイとしては、例えば、化学発光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、蛍光偏光イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、阻害アッセイ、励起発光アッセイ(induced luminescence assay)および蛍光酸素チャネリングアッセイ(fluorescent oxygen channeling assay)が挙げられる。
イムノアッセイの一般的なグループの1つとしては、限定された濃度の1つのアッセイ試薬を使用したイムノアッセイが挙げられる。イムノアッセイの別のグループは、過剰な1つまたはそれ以上の主要な試薬の使用を伴う。イムノアッセイの別のグループは、分離のいらない均一アッセイであり、この場合、試料中の分析物同族体にアッセイ抗体が結合したときに標識試薬が標識シグナルを変化させる。
上述のとおり、アッセイは、任意のアッセイ成分または生成物の分離を伴わず(均一)または分離を伴って(不均一)行うことができる。均一イムノアッセイは、Rubensteinらの米国特許第3,817,837号、第3欄、6行目から第6欄、64行目に開示されているEMIT(登録商標)アッセイ(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、ディアフィールド、イリノイ州);米国特許第5,340,716号(Ullmanら)に開示されている励起発光イムノアッセイ(「LOCI(登録商標)技術」);Ullmanらの米国特許第3,996,345号、第17欄、59行目から第23欄、25行目に開示されているものなどの免疫蛍光法;Maggioらの米国特許第4,233,402号、第6欄、25行目から第9欄、63行目に開示されているものなどの酵素チャネリングイムノアッセイ(enzyme channeling immunoassay)(「ECIA」);例えば、とりわけ、米国特許第5,354,693号に開示されているとおりの蛍光偏光イムノアッセイ(「FPIA」);酵素結合免疫吸着測定法などの酵素イムノアッセイ(「ELISA」)によって例証される。例となる不均一アッセイは、Yalowら、J. Clin. Invest. 39:1157ページ(1960年)に開示されているラジオイムノアッセイである。上記開示をすべて、参照によって本明細書に組み入れる。
その他の酵素イムノアッセイは、例えば、NgoおよびLenhoff、FEBS Lett. (1980年)116:285〜288ページに考察されている酵素調節媒介イムノアッセイ(enzyme modulate mediated immunoassay)(「EMMIA」);Oellerich、J. Clin. Chem. Clin. Biochem.(1984年) 22:895〜904ページに開示されている基質標識蛍光イムノアッセイ(substrate labeled fluorescence immunoassay)(「SLFIA」);Khannaら、Clin. Chem. Acta (1989年) 185:231〜240ページに開示されている組み合わせ酵素ドナーイムノアッセイ(combined enzyme donor immunoassay)(「CEDIA」);粒子増強比濁阻害イムノアッセイ(particle enhanced turbidimetric inhibition immunoassay)(「PETINIA」)および粒子増強比濁イムノアッセイ(particle enhanced turbidimetric immunoassay)(「PETIA」)などの均一粒子標識イムノアッセイ(homogeneous particle labeled immunoassay)などである。
その他のアッセイとしては、ゾル粒子イムノアッセイ(sol particle immunoassay)(「SPIA」)、分散色素イムノアッセイ(disperse dye immunoassay)(「DIA」);メタロイムノアッセイ(「MIA」);酵素膜イムノアッセイ(enzyme membrane immunoassay)(「EMIA」);発光イムノアッセイ(luminoimmunoassay)(「LIA」);などが挙げられる。他の種類のアッセイとしては、分析物の結合時に試薬の光学的、音響的および電気的特性の変化を観察することを含む免疫センサーアッセイが挙げられる。そのようなアッセイとしては、例えば、光学的免疫センサーアッセイ、音響的免疫センサーアッセイ、半導体免疫センサーアッセイ、電気化学的変換器免疫センサーアッセイ、電位差測定免疫センサーアッセイおよび電流測定電極アッセイ(amperometric electrode assay)が挙げられる。
不均一アッセイは、一般に1つまたはそれ以上の分離工程を含み、競合または非競合の場合がある。参照によって本明細書に組み入れるDavalianらの米国特許第5,089,390号、第14欄、25行目から第15欄、9行目にさまざまな競合および非競合不均一アッセイの方式が開示されている。競合不均一アッセイの例において、分析物を結合させるための抗体を有する支持体が、複数の分析物同族体を含むことが疑われる試料および標識を含む分析物類似体を含む媒体と接触させられる。本明細書に記載される原理による非アッセイ抗体は、支持体上のアッセイ抗体の前またはそれと同時に試料とともにインキュベートされる。試料中の分析物同族体は、アッセイ抗体との結合に関して標識された分析物類似体と競合する。支持体と媒体を分離した後、支持体または媒体の標識活性が従来の技術によって測定され、試料中の分析物の量と関連づけられる。上記競合不均一アッセイの変形では、支持体は分析物類似体を含み、それは、本明細書に記載される原理によるアッセイ抗体試薬との結合に関して試料の分析物同族体と競合する。
一部の例において、分析対象の試料は、分析物と結合する、例えば、血漿または血清タンパク質などの内在性結合物質から分析物を遊離させるために前処理される。内在性結合物質からの分析物の遊離は、例えば、消化剤もしくは放出剤の添加によって、または連続的に使用される消化剤および放出剤の組み合わせによって行ってもよい。消化剤とは、内在性結合物質を分解するものであり、その結果、内在性結合物質が分析物と結合できなくなる。そのような薬剤としては、これらに限定されるものではないが、プロテイナーゼKおよび、例えば、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)などのタンパク質変性剤が挙げられる。内在性結合物質から分析物を遊離させるための放出剤としては、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、サリチル酸、ワルファリン、スルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、アニリノナフタレンスルホン酸(ANS)(例えば、1−アニリノナフタレン−8−スルホン酸(1,8−ANS)および8−アニリノナフタレン−1−スルホン酸(8−ANS)を含む)、サリチル酸ならびに上記のものの誘導体などの酸性変性剤が挙げられる。
消化および/または遊離操作を行うための、例えば、持続時間、温度、pHおよび媒体中の放出剤の濃度などの条件は、例えば、分析物の性質、内在性結合物質の性質、試料の性質および放出剤の性質によって決まる。一般に、条件は、所望の効果または機能を達成するのに十分なものである。本明細書に記載される原理による一部の例において、放出剤の有効な濃度は、約0.01から約20mg/mL、または約0.01から約10mg/mL、または約0.01から約5mg/mL、または約0.1から約20mg/mL、または約0.1から約10mg/mL、または約0.1から約5mg/mL、または約0.1から約1mg/mLである。内在性結合物質から分析物を遊離させるための試料の前処理は、アッセイを行う前の個別の工程として、またはアッセイの第1の工程として行われてもよい。いずれの場合でも、消化剤および/または放出剤の作用を止めるために1つまたはそれ以上の試薬が必要とされこともある。
本明細書に記載される原理に従って試料に対してアッセイを行う条件には、一般に、最適なアッセイ感度をもたらす中程度のpHの水性の緩衝媒体中でアッセイを行うことが含まれる。水性媒体は、水のみでもよく、または0.1から約40体積パーセントの共溶媒を含んでもよい。媒体のpHは、例えば、約4から約11の範囲、または約5から約10の範囲、または約6.5から約9.5の範囲になる。pHは、通常、任意の特異的な結合対の結合メンバーの最適な結合、シグナル生成系のメンバーなどのアッセイの他の試薬に最適なpHなどの間で折り合いをつけることになる。所望のpHにし、アッセイの間、そのpHに維持するためにさまざまなバッファーを使用してもよい。実例となるバッファーとしては、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、TRIS、バルビタール、PIPES、HEPES、MES、ACES、MOPS、およびBICINEが挙げられる。利用される特定のバッファーは重要ではないが、個々のアッセイでは、何らかのバッファーが好ましい場合もある。
本アッセイ法に、さまざまな補助材料を利用してもよい。例えば、バッファーに加えて、媒体は、利用される媒体および試薬のための安定剤を含んでもよい。一部の実施形態において、こうした添加剤に加えて、例えば、アルブミンなどのタンパク質;例えば、ホルムアミドなどの有機溶媒;第4級アンモニウム塩;例えば、デキストラン硫酸などのポリアニオン;例えば、ポリアルキレングリコールなどの結合促進剤;例えば、デキストランまたはトレハロースなどのポリサッカライドを含んでもよい。媒体はまた、血餅の形成を防ぐための薬剤を含んでもよい。そのような薬剤は、当該技術分野において周知であり、これらに限定されるものではないが、例えば、EDTA、EGTA、クエン酸塩、ヘパリンが挙げられる。媒体はまた、以下に限定されるものではないが、例えば、アジ化ナトリウム、硫酸ネオマイシン、PROCLIN(登録商標)300、ストレプトマイシンなどの1つまたはそれ以上の保存料を含んでもよい。媒体は、1つまたはそれ以上の界面活性剤をさらに含んでもよい。上記の任意の材料は、利用される場合、所望の効果または機能を達成するのに十分な濃度または量で存在する。
アッセイに利用される上記のものを含む各種試薬の添加の間の任意の間隔を含む1つまたはそれ以上の間隔で1つまたはそれ以上のインキュベーション期間を媒体に適用してもよい。媒体は、試料中の試薬の各種成分の結合および分析物の結合のために十分な温度および時間で通常インキュベートされ、例えば、非アッセイ抗体の1つの分析物同族体との結合またはアッセイ抗体の複数の分析物同族体との結合などが生じる。本方法を行うために中程度の温度が通常利用され、一般に、測定の期間中は、一定温度、好ましくは室温である。一部の例において、インキュベーション温度は、例えば、約5℃から約99℃、または約15℃から約70℃、または約20℃から約45℃の範囲に及ぶ。インキュベーションの時間は、一部の例において、例えば、約0.2秒から約24時間、または約1秒から約6時間、または約2秒から約1時間、または約1分から約15分間である。この時間は、媒体の温度および各種試薬の結合速度により左右され、結合速度は、会合速度定数、濃度、結合定数および解離速度定数によって決定される。
本明細書中で考察される多くのアッセイは、シグナル生成系を使用し、これは、1つまたはそれ以上の成分を有してもよく、少なくとも1つの成分は標識である。シグナル生成系は、試料中の分析物同族体の存在に関連するシグナルを生成する。シグナル生成系は、測定可能なシグナルを生成するために必要とされる試薬をすべて含む。シグナル生成系の他の成分は展開液(developer solution)に含まれ、シグナル生成系の他の成分としては、これらに限定されるものではないが、例えば、基質、促進剤、活性化物質、化学発光化合物、補酵素、阻害物質、捕捉剤、金属イオン、およびシグナル生成物質の結合に必要とされる特異的結合物質が挙げられる。シグナル生成系の他の成分は、例えば、補酵素、酵素的生成物と反応する物質、その他の酵素および触媒であってもよい。シグナル生成系は、外部手段によって、電磁放射の使用によって、望ましくは、視覚による調査によって検出可能なシグナルをもたらす。例となるシグナル生成系は、米国特許第5,508,178号に記載されており、この関連した開示を参照によって本明細書に組み入れる。
「標識」という用語は、ポリ(アミノ酸)標識および非ポリ(アミノ酸)標識を含む。「ポリ(アミノ酸)標識部分」という用語は、例えば、以下に限定されるものではないが、酵素、抗体、ペプチドおよび免疫源などのタンパク質である標識を含む。例えば、酵素などの標識タンパク質に関して、分子量の範囲は、約10,000から約600,000、または約10,000から約300,000の分子量になる。一般に、例えば、タンパク質の本明細書に記載される原理による少なくとも1つの化合物(類似体群)あたり約200,000分子量、または少なくとも約1つあたり約150,000分子量、または少なくとも約1つあたり約100,000分子量、または少なくとも約1つあたり約50,000分子量ある。酵素の場合には、類似体群の数は、一般に、1から約20個、約2から約15個、約3から約12個、または約6から約10個である。
酵素としては、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、デヒドロゲナーゼ、例えば、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼなどの酸化還元酵素;過酸化水素の生成および色素前駆体を酸化させて色素にするための過酸化水素の使用を伴う、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼおよびミクロペルオキシダーゼなどの酵素;例えば、アルカリホスファターゼおよびβ−ガラクトシダーゼなどの加水分解酵素;例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼなどのルシフェラーゼ;トランスフェラーゼ;以下に限定されるものではないが、色素前駆体を酸化させるために過酸化水素を利用する酵素、すなわち、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ラクトペルオキシダーゼもしくはミクロペルオキシダーゼなどのペルオキシダーゼと結合した、例えば、グルコースおよびガラクトースオキシダーゼなどの糖酸化酵素またはウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼなどの複素環酸化酵素などの酵素の組み合わせが挙げられる。
「非ポリ(アミノ酸)標識」という用語は、タンパク質ではない標識を含む。非ポリ(アミノ酸)標識は、直接検出することができるか、または検出可能なシグナルを生成する反応により検出可能である。非ポリ(アミノ酸)標識は、同位体または非同位体のものが可能であり、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、放射性同位体、(以下に限定されるものではないが、例えば、蛍光化合物および化学発光化合物を含む)発光化合物、触媒をコードするポリヌクレオチド、プロモーター、色素、補酵素、酵素基質、放射性基、および増幅可能なポリヌクレオチド配列でもよい。
一部の例において、シグナル生成系の1つのメンバー一は有機小分子であり、有機小分子とは、分子量が約200から約2,000、または約200から約1,500、または約200から約1,000、または約200から約500の分子を指す。そのような有機小分子としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ビオチン、蛍光分子(例えば、フルオレセインおよびローダミンなど)、化学発光分子およびジニトロフェノールが挙げられる。有機小分子の結合パートナーは、この小分子を特異的に認識し、それと結合する分子である。小分子の結合パートナーは、小分子の性質によって定義され、そのようなものとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、アビジン、ストレプトアビジン、有機小分子に対する抗体(これらに限定されるものではないが、蛍光分子に対する抗体(例えば、フルオレセインに対する抗体およびローダミンに対する抗体など)、化学発光分子に対する抗体、ジニトロフェノールに対する抗体を含む)が挙げられる。
アッセイの一部の例では、支持体が利用される。支持体は、有機または無機の、固体または液体の不水溶性材料から構成され、これは、透明または部分的に透明であってもよい。支持体は、以下に限定されるものではないが、例えば、ビーズを含む粒子(粒状の支持体)、薄膜、膜、チューブ、ウェル、細片、棒、繊維、または、例えば、プレートもしくは紙などの平面など多くの任意の形状を有してもよい。支持体は、利用される媒体に懸濁可能であっても、または可能でなくてもよい。懸濁可能な支持体の例は、例えば、ラテックスなどの高分子材料、脂質二重層すなわちリポソーム、油滴、細胞およびハイドロゲルならびに磁性粒子である。その他の支持体組成物としては、説明のためであって、限定するものではないが、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルクロリド)、ポリアクリルアミド、ポリアクリラート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4メチルブテン)、ポリスチレン、ポリメタクリラート、ポリ(エチレンテレフタラート)、ナイロン、ポリ(ビニルブチラート)などのポリマーが挙げられ、単独でまたは他の材料とともに使用される。支持体を、例えば、色素、触媒またはその他の検出可能な基によりさらに標識してもよいし、しなくてもよい。
一部の例において、支持体は、粒子であってもよい。粒子の平均直径は、少なくとも約0.02マイクロメートルであり、約100マイクロメートル以下である。一部の例において、粒子の平均直径は、約0.05マイクロメートルから約20マイクロメートル、または約0.3マイクロメートルから約10マイクロメートルである。粒子は、有機または無機の膨潤性または非膨潤性で多孔質または非多孔質であり、好ましくは、水に近い密度、一般に約0.7g/mLから約1.5g/mLであってもよく、透明、部分的に透明または不透明であってもよい材料から成る。粒子は、例えば、細胞ならびに微生物、例えば、赤血球、白血球、リンパ球、ハイブリドーマ、連鎖球菌、黄色ブドウ球菌および大腸菌、ウイルスなどの生物学的材料が可能である。粒子は、有機および無機ポリマー、リポソーム、ラテックス粒子、磁性または非磁性粒子、リン脂質ベシクル、カイロミクロン、リポタンパク質ならびに同種のものからなる粒子でもよい。一部の例において、粒子は、二酸化クロム(クロム)粒子またはラテックス粒子である。
化学発光粒子は、それと化学発光化合物が結合した粒子である。「それと結合した」という語句は、本明細書中で使用される場合、例えば、化学発光化合物などの化合物と粒子が直接的または間接的な接着、吸着、吸収、組み込みまたは溶解によって結合できることを意味する。利用できる化学発光化合物の例は、米国特許第5,340,716号および同第6,251,581号に記載されているものであり、この関連する開示を参照によって本明細書に組み入れる。本明細書に記載される原理による一部の例において、化学発光化合物は、光活性化可能な物質であり、これは、光によって直接もしくは増感励起時または一重項酸素との反応時に、化学反応を受けて一般に250から1200nmの波長範囲内である発光と同時またはその後に分解される準安定の反応生成物を形成する。「光活性化可能な」という用語は、「光化学的に活性化可能な」を含む。一部の例において、化学発光化合物は、一重項酸素と反応してジオキセタンまたはジオキセタノンを形成するものである。後者は、一般に電子豊富なオレフィンである。例となるそのような電子豊富なオレフィンは、エノールエーテル、エナミン、9−アルキリデン−N−アルキルアクリダン、アリールビニルエーテル、ジオキセン、アリールイミダゾール、9−アルキリデン−キサンタンおよびルシゲニンである。その他の化合物としては、ルミノールおよびその他のフタルヒドラジドならびに光化学的に不安定な保護基により保護されていることにより化学発光反応を受けることから保護された化学発光化合物が挙げられ、そのような化合物には、例えば、ホタルルシフェリン、アクアフォリン(aquaphorin)、ならびにルミノールが含まれる。利用できるそのような化学発光化合物の例は、米国特許第5,709,994号に記載されているものであり、この関連する開示を参照によって本明細書に組み入れる。
増感剤粒子は、それと結合した増感剤化合物を有する粒子であり、そのようなものとしては、以下に限定されるものではないが、光増感剤化合物が挙げられる。利用できる増感剤化合物の例は、米国特許第5,340,716号および同第6,251,581号に記載されているものであり、この関連する開示を参照によって本明細書に組み入れる。
光増感剤は、一般に光による励起によって一重項酸素を形成するための増感剤である。一部の例において、光増感剤は、化学発光化合物よりも長い波長で吸収し、化学発光化合物よりも低いエネルギーの三重項を有する。光増感剤は、光活性化可能なものであってもよい(例えば、色素および芳香族化合物)。光増感剤は、一般に共有結合した原子から構成される化合物であり、通常、複数の共役二重または三重結合を含む。化合物は、200〜1100nm、一般には300〜1000nm、好ましくは450〜950nmの波長範囲の光を吸収しなければならない。一般的な光増感剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アセトン、ベンゾフェノン、9−チオキサントン、エオシン、9,10−ジブロモアントラセン、メチレンブルー、メタロポルフィリン(例えば、ヘマトポルフィリン)、フタロシアニン、クロロフィル、ローズベンガル、バックミンスターフラーレン、およびこれらの化合物の誘導体が挙げられる。その他の光増感剤の例は、N.J. Turro、「Molecular Photochemistry」、132ページ、W. A. Benjamin Inc.、N.Y. 1965年に列挙されている。光増感剤は、光活性化を補助し、この場合、活性化は一重項酸素による。一般には、光増感剤は、光を吸収し、それにより形成される励起された光増感剤が酸素を活性化して一重項酸素を生成し、これが、化学発光化合物と反応して準安定の発光中間体をもたらす。
一部の既知のアッセイは、シグナル生成系(sps)を利用し、これは、第1および第2のspsメンバーを使用する。spsメンバーは、spsの一方のメンバーの活性化が、例えば、光または活性化生成物などの生成物を生成することに関連する場合もあり、これがspsの別のメンバーを活性化する。
そのようなアッセイの例において、spsメンバーは、例えば、光増感剤などの増感剤と、増感剤の活性化が化学発光組成物を活性化する生成物をもたらす化学発光化合物を含む化学発光組成物とを含む。第2のspsメンバーは、通常、結合および/または非結合spsメンバーの量、すなわち、検出している分析物と結合した、または、結合していないspsメンバーの量に関連した検出可能なシグナルを生成する。本明細書に記載される原理による一部の例において、増感剤試薬または化学発光試薬のいずれか一方は、本明細書に記載される原理に従った抗体試薬を含む。
アッセイ可能な試料中の分析物同族体の濃度は、一般に、例えば、約10−5から約10−17M、または約10−6から約10−14Mまで変動する。アッセイが(試料中に存在する分析物の量に対して)質的、半定量的または定量的なものであるかどうかなどの
要件、特定の検出技術および分析物の予測される濃度が、通常、各種試薬の濃度を決定する。
アッセイ媒体中の各種試薬の濃度は、一般に、例えば、分析物同族体の対象の濃度範囲およびアッセイの性質によって決定される。しかしながら、それぞれの試薬の最終濃度は、通常、対象の範囲にわたってアッセイの感度を最適化するために経験的に決定される。すなわち、重要な分析物の濃度の変化が正確に測定可能なシグナルの差をもたらさなければならない。シグナル生成系の性質および分析物同族体の性質などの要件が、通常、各種試薬の濃度を決める。
上述のとおり、試料および試薬は、媒体中に組み合わせが準備される。媒体への添加の順序は変更することができるが、本明細書に記載されるアッセイ方式の一部の実施形態については特定の優先度がある。添加の最も単純な順序は、当然、すべての材料を同時に添加することであり、均一アッセイにおける場合、シグナルに対するアッセイ媒体の影響を決定する。あるいは、試薬のそれぞれまたは試薬の群は、連続的に混ぜ合わせることができる。一部の実施形態において、上記のとおりのそれぞれの添加に続いて、インキュベーション工程を伴ってもよい。不均一アッセイでは、1つまたはそれ以上のインキュベーション工程の後に洗浄工程を用いることもできる。
本明細書に記載される原理による方法の特定の例
上記のとおり、本明細書に記載される原理による方法は、複数の分析物同族体を含むことが疑われる試料中の2つまたはそれ以上の分析物同族体の総量を測定することを対象とする。分析物同族体の総量は、例えば、アッセイ抗体などのアッセイ受容体を使用して試料に対してアッセイを行うことによって測定される。より詳細に上述したとおり、それに先立って、またはそれと同時に試料は非アッセイ抗体とともにインキュベートされる。下記の実施例において、アッセイ抗体および非アッセイ抗体の両方は、1つまたはそれ以上の上記の手順によって作製および選別されるモノクローナル抗体である。
以下の特定の例において、各分析物同族体は、ビタミンD2およびビタミンD3であるが、説明のためであって、限定するものではない。本明細書に記載される原理による一部の例は、ビタミンDの複数の同族体を含むことが疑われる試料中のビタミンD2およびビタミンD3の総量を測定する方法を対象とし、本明細書中では、「ビタミンDに対するアッセイ」と呼ぶ場合もある。下記の特定のアッセイに関して本明細書中で使用される場合、「ビタミンD同族体」という用語は、ビタミンD2およびビタミンD3を指す。
一例では、励起発光イムノアッセイを利用してもよい。励起発光イムノアッセイについて、米国特許第5,340,716号(Ullman)に言及されており、この開示を参照によって本明細書に組み入れる。アプローチの1つでは、アッセイは、光増感剤と結合した粒子を使用し、この場合、ビタミンD類似体が粒子と結合している(粒子類似体試薬)。化学発光試薬は、ビタミンD2およびビタミンD3同族体のそれぞれに対して十分なアッセイ結合親和性を示すアッセイ抗体を含む。この例において、アッセイ抗体は、ビタミンD2およびビタミンD3同族体に対して実質的に同等の結合親和性を示す。ただし、試料は、放出剤により前処理され、ビタミンD2同族体は、ビタミンD3同族体の量よりも多く内在性結合物質から遊離している。本明細書に記載される原理によると、上記のとおり作製された非アッセイ抗体は、遊離した同族体を含む媒体とともにインキュベートされる。非アッセイ抗体は、放出剤によって過剰に遊離するビタミンD2同族体に対して選択的な結合親和性を示す。非アッセイ抗体の量は、アッセイで得られるシグナルの量を調節して、ビタミンD3同族体の量を上回って遊離するビタミンD2同族体の量を打ち消すのに十分な量である。ビタミンD2およびビタミンD3同族体を含む媒体の処理は、個別の工程において行うことができ、またはアッセイ抗体を使用したアッセイと同時に行うこともできる。
上の例において、アッセイ抗体は、小分子と連結され、この小分子は、化学発光粒子上の小分子に対する結合パートナーと結合する。この化学発光試薬は、予め形成するか、またはその場で形成することができる。ビタミンD分析物同族体は、ビタミンDに対するアッセイ抗体との結合に関して粒子類似体試薬と競合する。ビタミンD分析物同族体が存在すると、化学発光試薬と近接近する粒子類似体試薬の分子の数が少なくなる。したがって、アッセイのシグナルが減少することになる。光増感剤は一重項酸素を形成し、2つの標識が近接近すると化学発光試薬を活性化させる。活性化した化学発光試薬は、その後、光を生成する。この場合、分析物の存在下ではシグナルの減少が観察される。生成された光の量は、形成された複合体の量と関連づけられ、これば次に、試料中に存在するビタミンD2およびビタミンD3同族体の総量と関連づけられる。
例としてビタミンDを使用した励起発光イムノアッセイの別の特定の例において、説明のためであって、限定するものではないが、アッセイは、化学発光化合物と結合した粒子を使用し、この場合、ビタミンD類似体が粒子と結合している(粒子類似体試薬)。ビタミンD2同族体に対して、ビタミンD3同族体に対する結合親和性よりも大きな結合親和性を示すアッセイ抗体を含む光増感剤試薬が利用される。アッセイ抗体は、その後、化学発光粒子上の小分子に対する結合パートナーと結合することになる小分子と連結される。
この例において、アッセイ抗体は、ビタミンD2同族体に対して、ビタミンD3同族体に対する結合親和性よりも大きな結合親和性を示す。試料は、放出剤により前処理され、これにより、内在性結合物質から実質的に等しい量の各ビタミンD同族体の遊離がもたらされる。本明細書に記載される原理によると、上記のとおりに作製された非アッセイ抗体は、遊離した同族体を含む媒体とともにインキュベートされる。非アッセイ抗体は、アッセイ抗体がより大きな結合親和性を有するビタミンD2同族体に対して選択的な結合親和性を示す。非アッセイ抗体の量は、アッセイで得られるシグナルの量を調節して、ビタミンD3同族体の量に対してよりも多くアッセイ抗体が結合するビタミンD2同族体の量を打ち消すのに十分な量である。ビタミンD2およびビタミンD3同族体を含む媒体の処理は、アッセイ抗体を使用したアッセイと同時に行われる。
ビタミンD2およびビタミンD3同族体の両方が、ビタミンDに対するアッセイ抗体との結合に関して粒子類似体試薬と競合する。ビタミンD分析物同族体が存在すると、光増感剤試薬と近接近する粒子類似体試薬の分子の数が少なくなる。したがって、アッセイのシグナルが減少することになる。光増感剤は、一重項酸素を形成し、2つの標識が近接近すると、粒子類似体試薬の化学発光化合物を活性化する。活性化した化学発光化合物は、その後、光を生成する。この場合、分析物の存在下ではシグナルの減少が観察される。生成された光の量は、形成された複合体の量と関連づけられ、これが次に、試料中に存在するビタミンD2およびビタミンD3同族体の両方の量に関連づけられる。
説明のためであって、限定するものではないがビタミンDを使用した励起発光アッセイの別の特定の例において小分子に対する、(ビオチンに対する結合パートナーである)、例えば、アビジンまたはストレプトアビジンなどの結合パートナーと結合した光増感剤粒子が利用される。アッセイ抗体試薬は、利用される各ビタミンD分析物同族体の両方と結合するアッセイ抗体と連結されたビオチンを含む。化学発光試薬は、検出系の一部として利用される。
この例において、アッセイ抗体は、ビタミンD2同族体に対して、ビタミンD3同族体に対する結合親和性よりも大きな結合親和性を示す。さらに、試料は、放出剤により前処理され、ビタミンD2同族体は、ビタミンD3同族体の量よりも多く内在性結合物質から
遊離する。本明細書に記載される原理によると、上記のとおりに作製された非アッセイ抗体は、遊離した同族体を含む媒体とともにインキュベートされる。非アッセイ抗体は、アッセイ抗体がより大きな結合親和性を有するビタミンD2同族体に対して選択的な結合親和性を示し、ビタミンD2同族体は、ビタミンD3同族体についてよりも多く内在性結合物質から遊離する。非アッセイ抗体の量は、アッセイで得られるシグナルの量を調節して、ビタミンD3同族体の量に対するよりも多い量でアッセイ抗体が結合するビタミンD2同族体の量および遊離するビタミンD3同族体の量を上回って遊離するビタミンD2同族体の量を打ち消すのに十分な量である。ビタミンD2およびビタミンD3同族体を含む媒体の処理は、アッセイ抗体を使用したアッセイと同時に行われる。
上記試薬を含む反応媒体はインキュベートして、アビジンとビオチンの間の結合により光増感剤粒子のアビジンまたはストレプトアビジンをアッセイ抗体試薬のビオチンと結合させ、そしてまた光増感剤粒子に付着しているアッセイ抗体試薬のアッセイ抗体と試料の分析物同族体や化学発光試薬の一部である分析物の間を特異的に結合させる。インキュベーションは、非アッセイ抗体とビタミンD2分析物同族体の間も結合させる。その後、媒体は、励起状態で酸素を一重項状態に活性化することができる光増感剤を励起するために光が照射される。ここで、分析物同族体の存在により、光増感剤に近接近する化学発光試薬が少なくなるため、一重項酸素による化学発光試薬の活性化が減り、発光が減る。その後、媒体は発光もしくは放射される光の存在および/または量について確認され、その存在は、分析物同族体の存在および/または量に関連づけられる。この場合、分析物の存在下ではシグナルの減少が観察される。生成された光の量は、形成された複合体の量と関連づけられ、これが次に、試料中に存在するビタミンD2およびビタミンD3同族体の両方の量と関連づけられる。
説明のためであって、限定するものではないが、試料中のビタミンDの検出に関するアッセイ方式の別の例は、ACMIAアッセイ方式である。ACMIAアッセイ方式については、ビタミンDまたはビタミンD類似体によりコーティングされたクロム粒子(クロム粒子試薬)が第1の成分として利用される。第2の成分は、ビタミンD2およびビタミンD3同族体に対する第1のアッセイ抗体を含むアッセイ抗体試薬である。抗体試薬中で、第1のアッセイ抗体は、連結基によってレポーター酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ)と連結されてアッセイ抗体−酵素複合物を形成する。
この例において、アッセイ抗体は、ビタミンD2およびビタミンD3同族体に対して実質的に同等の結合親和性を示す。ただし、試料は、放出剤により前処理され、ビタミンD2同族体は、ビタミンD3同族体の量よりも多く内在性結合物質から遊離する。本明細書に記載される原理によると、上記のとおりに作製された非アッセイ抗体は、遊離した同族体を含む媒体とともにインキュベートされる。非アッセイ抗体は、放出剤によって過剰に遊離するビタミンD2同族体に対して選択的な結合親和性を示す。非アッセイ抗体の量は、アッセイで得られるシグナルの量を調節して、ビタミンD3同族体の量を超えて遊離するビタミンD2同族体の量を打ち消すのに十分な量である。ビタミンD2およびビタミンD3同族体を含む媒体の処理は、個別の工程において行うことができ、またはアッセイ抗体を使用したアッセイと同時に行うこともできる。
試料を含む媒体は、第2のアッセイ抗体試薬により処理され、これは、ビタミンD分析物同族体のそれぞれに対して実質的に同等のアッセイ結合親和性を示す第2のアッセイ抗体を含み;第2のアッセイ抗体は、試料中のビタミンD同族体と結合する。媒体は、上記のとおりの非アッセイ抗体も含む。ビタミンD分析物同族体を第1のアッセイ抗体と結合させるために、抗体−酵素複合物が、媒体中の試料と混合される。次に、クロム粒子試薬が添加されて、あらゆる過剰な抗体−酵素複合物と結合する。その後、磁石が利用され、この磁石は、懸濁液からクロム粒子および過剰な抗体−酵素複合物のすべてを引き寄せ、上清が最終的な反応容器に移される。レポーター酵素の基質が最終的な反応容器に添加され、酵素活性が、経時的な吸光度の変化として分光光度的に測定される。このシグナルの量は、試料中のビタミンDの両同族体型の量と関連づけられる。
(説明のためであって、限定するものではないが)試料中のビタミンDの同族体型に対するアッセイの別の例は、固相として常磁性粒子を使用したアクリジニウムエステル標識イムノアッセイである(ADVIAイムノアッセイ)。ビタミンDアッセイのこの例に利用される検出系は、小分子複合物または捕捉複合物(capture conjugate)としての小分子標識化ビタミンD(捕捉部分)、固相(SP)としての小分子被覆常磁性ラテックス粒子に対する結合パートナーならびにビタミンD2およびビタミンD3同族体に対するアクリジニウムエステル標識化アッセイ抗体(検出抗体)を含む。小分子は、例えば、ビオチンまたはフルオレセインであってもよく、それぞれの結合パートナーは、ストレプトアビジンであるか、またはフルオレセインに対する抗体であってもよい。ビタミンD類似体は、小分子と直接連結されるか、または例えば、タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)などの連結基を介して連結される。患者試料中のビタミンD2およびビタミンD3同族体は、アクリジニウムエステル標識化抗ビタミンDアッセイ検出抗体との結合に関して捕捉部分のビタミンD類似体と競合する。
ビタミンDの複数の同族体を含むことが疑われる試料は、1,8−ANSにより前処理される。この例において、アッセイ抗体は、ビタミンD2およびビタミンD3同族体に対して実質的に同等の結合親和性を示す。ただし、1,8−ANSによる前処理の結果として、ビタミンD2同族体は、ビタミンD3同族体の量よりも多く内在性結合物質から遊離する。本明細書に記載される原理によると、上記のとおりに作製された非アッセイ抗体は、遊離した同族体を含む媒体とともにインキュベートされる。非アッセイ抗体は、放出剤によって過剰に遊離するビタミンD2同族体に対して選択的な結合親和性を示す。非アッセイ抗体の量は、アッセイで得られるシグナルの量を調節して、ビタミンD3同族体の量を上回って遊離するビタミンD2同族体の量を打ち消すのに十分な量である。非アッセイ抗体によるビタミンD2およびビタミンD3同族体を含む媒体の処理は、個別の工程として行ってもよく、またはアッセイ抗体を使用したアッセイと同時に行ってもよい。アッセイは、ともに提供される製造業者の説明書に従ってADVIA CENTAUR(登録商標)、ADVIA CENTAUR(登録商標)XPまたはADVIA CENTAUR(登録商標)CP装置(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、ニューアーク、デラウェア州)を使用して行うことができる。
本明細書に記載される原理に従った分析物に対するアッセイの別の例は、固相として常磁性粒子を使用したアクリジニウムエステル標識イムノアッセイである(ADVIAイムノアッセイ)。ビタミンD同族体に対するアッセイのこの例に利用される検出系は、捕捉複合物としてアッセイ抗体およびアッセイ抗体と連結された小分子を含むアッセイ抗体試薬(捕捉抗体)、アッセイ抗体試薬の小分子に対する結合パートナーにより被覆された固相(SP)として常磁性ラテックス粒子ならびにアクリジニウムエステル標識化ビタミンD分析物類似体(検出ハプテン)を含む。アクリジニウムエステル標識は、分析物類似体と直接結合して検出ハプテンを形成することもでき、または例えば、BSAなどの例えば、タンパク質を含む連結基を利用してもよい。試料のビタミンD2およびビタミンD3同族体は、アッセイ抗体との結合に関してアクリジニウムエステル標識化検出ハプテンと競合する。
この例において、アッセイ抗体は、ビタミンD2同族体に対して、ビタミンD3同族体に対する結合親和性よりも大きな結合親和性を示す。ビタミンD2およびビタミンD3同族体を含むことが疑われる試料は、1つまたはそれ以上の放出剤および消化剤により前処理され、これらは、内在性結合物質から実質的に等しい量の各ビタミンD同族体の遊離をもたらす。本明細書に記載される原理によると、上記のとおりに作製された非アッセイ抗体は、遊離した同族体を含む媒体とともにインキュベートされる。非アッセイ抗体は、アッセイ抗体がより大きな結合親和性を有するビタミンD2同族体に対して選択的な結合親和性を示す。非アッセイ抗体の量は、アッセイで得られるシグナルの量を調節して、ビタミンD3同族体の量よりも多くアッセイ抗体が結合するビタミンD2同族体の量を打ち消すのに十分な量である。ビタミンD2およびビタミンD3同族体を含む媒体の処理は、アッセイ抗体試薬を使用したアッセイと同時に行われる。
上記アッセイは、ともに提供される製造業者の説明書に従ってADVIA CENTAUR(登録商標)、ADVIA CENTAUR(登録商標)XPまたはADVIA CENTAUR(登録商標)CP装置(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、ニューアーク デラウェア州)を使用して行うことができる。上記アクリジニウムエステルアッセイの変形では、小分子は、例えば、ビオチンまたはフルオレセインであってもよく、小分子に対する結合パートナーは、それぞれ、例えば、アビジンもしくはストレプトアビジンであってもよく、またはフルオレセインに対する抗体であってもよい。
検査工程
アッセイ法の一工程において、媒体は、本明細書に記載される原理に従って、分析物の同族体型および分析物に対する抗体を含む複合体の存在について検査される。複合体の量は、試料中の分析物の同族体型の量を示す。
「分析物の量を測定すること」という語句は、分析物の同族体型の定量的、半定量的および質的な測定を指す。定量的、半定量的および質的な方法ならびに分析物を測定するための他のすべての方法が分析物の量を測定する方法であると見なされる。例えば、単に分析物を含むことが疑われる試料中の分析物の有無を検出する方法は、本発明の範囲内に含まれると考えられる。「検出すること」および「測定すること」という用語ならびに測定に関するその他の一般的な同義語は、本発明の範囲内であると考えられる。
多くの実施形態において、媒体の検査は、媒体からのシグナルの検出を伴う。シグナルの存在および/または量は、試料中の分析物の同族体型の存在および/または量と関連づけられる。検出の詳細な方式は、シグナル生成系の性質によって決まる。上記のとおり、シグナル生成系の標識が、外部手段によって検出可能なシグナルを生成することができる多数の方法がある。シグナル生成系の活性化は、シグナル生成系メンバーの性質によって決まる。
測定中の温度は、一般に、例えば、約10℃から約70℃、または約20℃から約45℃、または約20℃から約25℃の範囲に及ぶ。アプローチの1つでは、上記のとおり既知の濃度のビタミンD分析物を使用して標準曲線が形成される。キャリブレータおよびその他の対照も使用することもできる。
任意の標識からの発光または生成された光は、光電子増倍管もしくはフォトダイオードを使用することによって、またはその量を測定するのに都合のよいその他の任意の手段によってなど、視覚により、写真により、光量計により、分光光度的に測定することができ、その量は、媒体中の分析物同族体の量と関連づけられる。シグナルの存在および/または量についての検査は、一般には、単にシグナルが読み取られる工程であるシグナルの検出も含む。シグナルは、通常、計器を使用して読み取られ、その計器の性質は、シグナルの性質により決まる。計器は、以下に限定されるものではないが、例えば、分光光度計、蛍光光度計、吸光度計、ルミノメーターおよびケミルミノメーター(chemiluminometer)であってもよい。
アッセイを行うための試薬を含むキット
分析物の同族体型を複数含むことが疑われる試料の1回分に対してアッセイを行うためのキットを製造してもよい。キットは、試料中の分析物同族体に対する少なくとも1種のアッセイ抗体を含む抗体試薬を含む。キットは、本明細書に記載される原理による非アッセイ受容体をさらに含む。非アッセイ受容体の量は、シグナルに対する2つの分析物同族体のうちの1つの寄与の調節を行うのに十分な量である。キットは、アッセイを実施するためのその他の試薬をさらに含んでもよく、その性質は、特定のアッセイ方式によって決まる。
試薬の交差反応性および安定性に応じて、試薬をそれぞれ個別の容器に入れてもよく、またはさまざまな試薬を、1つもしくはそれ以上の容器中に組み合わせてもよい。キットは、例えば、追加の特異的に結合する対メンバー、シグナル生成系メンバーおよび補助試薬など、別々に包装されたアッセイを行うためのその他の試薬をさらに含んでもよい。
キットの各種試薬の相対量は、本方法の間に生じる必要のある反応を実質的に最適化する試薬の濃度を提供するため、さらに実質的にアッセイの感度を最適化するために大きく変化する可能性がある。適切な状況下において、キットの1つまたはそれ以上の試薬は、通常、賦形剤を含む凍結乾燥された乾燥粉末として提供することができ、溶解時に本明細書に記載される原理による化合物試薬を使用した方法またはアッセイを実施するために適した濃度の試薬溶液をもたらす。キットは、本明細書に記載される原理による化合物試薬を含む試薬を利用した方法の書面による説明をさらに含んでもよい。
「第1の」および「第2の」の呼称は、本明細書中で使用される場合、完全に任意のものであり、本方法の言及される部分のいかなる順序もしくは順位付けまたは部分の付加のいかなる順序を示すことも意味するものではない。
「少なくとも」という語句は、本明細書中で使用される場合、特定の要素の数が、挙げた数以上であってもよいことを意味する。「約」という語句は、本明細書中で使用される場合、挙げた数がプラスマイナス10%だけ異なってもよいことを意味し;例えば、「約5」は、4.5から5.5の範囲を意味する。
以下の考察は、限定するものではなく説明のための、本明細書に記載される原理による特定の実施例を対象とし;特定の実施例は、本開示の範囲および添付の特許請求の範囲を限定する意図はない。本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、多数の改変物および代替的組成物、方法および系を考え出すことができる。
別に指示がある場合を除いて、以下の実験における材料は、Sigma−Aldrich Chemical Corporation(セントルイス、ミズーリ州)またはFluka Chemical Corporation(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入できる。本明細書中で開示される部および百分率は、別に指示がある場合を除いて重量対体積による。
定義:
mg=ミリグラム
g=グラム
ng=ナノグラム
mL=ミリリットル
μL=マイクロリットル
μmol=マイクロモル
℃=摂氏度
min=分
sec=秒
hr=時間
w/v=重量/体積
v/v=体積/体積
EDA=エチレンジアミン
EDAC=N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩
スルホNHSまたはSNHS=スルホN−ヒドロキシスクシンイミド
TLC=薄層クロマトグラフィー
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
EDTA=エチレンジアミンテトラアセタート
PEG=ポリエチレングリコール
EtOAc=エチルアセタート
DMF=ジメチルホルムアミド
DMSO=ジメチルスルホキシド
MeOP=1−メトキシ−2−プロパノール
MES=2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸
DI=蒸留
UPA=微粒子分析器(Ultra Particle Analyzer)
LOCI=発光酸素チャネリングイムノアッセイ(luminescent oxygen channeling immunoassay)
Ab=抗体
25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3の両方に対して実質的に等モルのアッセイ結合親和性を示すビオチン化アッセイ抗体の作製
10mMのPO4、300mMのNaCl(pH7.0)中のビタミンD抗体5H10(Bioventix、ファーンハム、サリー、英国のヒツジモノクローナル抗体)の溶液(2.63mg/mLで0.8mL)を、NHS−dPEG(登録商標)4−ビオチン(Quanta Biodesign Ltd.、パウエル、オハイオ州、品番10200)の水溶液(2.0mg/mL)43.2μLと混合した。添加したビオチン化試薬の量は、抗体に対するビオチン化剤の10倍モルの曝露に相当する。この反応混合物を室温で3hrインキュベートし、その後、0.5MのTRIS 80μLを添加することによって反応をクエンチした。Amicon(登録商標)(YM10)デバイス中で、この反応混合物を、260nmにおける廃液の吸収が≦0.03になるまで10mMのPO4、300mMのNaCl(pH7.0)を用いてバッファー交換した。抗体溶液(2.1mg/mLのタンパク質1.04mL)を、PROCLIN(登録商標)300 10μLおよび0.2um Acrodisc(登録商標)シリンジフィルター(Pall Corporation)を使用してろ過した硫酸ネオマイシンの水溶液10μL(10mg/mL)と混合し、2〜8℃で保存した。
EPRM−EDAビーズの作製
EPRMビーズ(2000mg、20.0mL)を40mLのバイアルに加えた。米国特許第7,179,660号に記載されているのと類似の手順でEPRMビーズを作製し、化学発光化合物は、ユウロピウムキレートを伴う2−(4−(N,N,ジ−テトラデシル)−アニリノ−3−フェニルチオキセンとした。EDA(800mg、890μL)を、pH6のMESバッファー(「バッファー」)10mLおよび6N HCl約4.2mLと混合した。この混合物のpHは、約6.9であるか、または約6.9に調節した。そのEDA溶液を、ボルテックスしながらEPRMビーズに添加し、その混合物を、室温で15分間振動させた。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(400mg)を、15mLのバイアル中で蒸留水10mLと混合し、その組み合わせを、上記のビーズの混合物に添加した。その混合物を、37℃で18〜20時間振盪した。そのビーズを6本の40mLの遠心沈殿管に移した。MESバッファーを添加して体積を35mLにし、その混合物を、19,000rpmで30min間遠心分離した。その上清をデカントし、そのビーズを、撹拌棒によりバッファー2mLに再懸濁させ、追加のバッファーを添加して35mLにした。その混合物を、氷を使用して混合物を低温に維持し、18ワットの力で30sec間超音波処理した。あらゆる活性化学物質を除去するために洗浄/超音波処理工程を4回行った。最後のMESバッファー遠心分離の後、5%のMeOPおよび0.1%のTween(登録商標)20を含むバッファー(「第2のバッファー」)2mLを、再懸濁工程のために遠心沈殿管に添加した。超音波処理の前に追加の第2のバッファーを添加して、35mLにした。そのビーズ懸濁液を、19,000rpmで30min間遠心分離した。その上清を捨てた。最後の超音波処理は、各遠心沈殿管中の第2のバッファー12mLを使用して、25mg/mLの希釈液を得た。UPA計器により測定すると粒子径は277nmであった。
EPRMケミビーズ(chemibead)を、米国特許第6,153,442号および米国特許出願公開第20050118727A号に記載されている方法と類似の手法で作製し、この関連する開示を参照によって本明細書に組み入れる。EPRMケミビーズは、アミノデキストラン内層および遊離アルデヒド官能基を有するデキストランアルデヒド外層を含む。例えば、米国特許第5,929,049号、同7,179,660号および同7,172,906号を参照のこと。この関連する開示を参照によって本明細書に組み入れる。この反応を、例えば、MESなどの適したバッファーを用いた緩衝水性媒体中で約0から約40℃の温度で約16から約64時間、約5.5から約7.0または約6のpHにおいて行った。この反応を、例えば、カルボキシメトキシルアミン0.5塩酸塩(CMO)などの適したクエンチ剤を添加することによってクエンチし、続いて粒子を洗浄した。
外側デキストランアルデヒド層にあるアルデヒド基を、還元的アミノ化条件下でエチレンジアミンと反応させてエチレン鎖および末端アミン基を含むペンダント部分を有する試薬EPRM−EDAを形成した。還元的アミノ化条件としては、例えば、金属水素化物などの還元剤の使用が挙げられる。その反応を、反応中、約20℃から約100℃の温度で約1時間から約48時間、水性媒体中で行った。
25−OH ビタミンD3 3−カルバマート(25−OH ビタミンD2 3−カルバマート)の合成
(ホイルで覆った)5mlのフラスコにおいて無水アセトニトリル1ml中のChemReagents.com、シュガーランド、テキサス州から購入した25−OH VD3 22mg(55μmol)、ジスクシンイミジルカルボナート(DSC)100mg(420μmol)、トリエチルアミン100μLの混合物を、室温で窒素下において18hr撹拌して活性化25−OH VD3を調製した。TLC(EtOAc:ヘキサン=2:1)は、出発材料が残っていなかったことを示した。10mlのフラスコにカルボキシメトキシルアミン0.5塩酸塩(CMO)150mg、トリエチルアミン0.3mlおよびDMF 1mlを添加することによって懸濁液を調製した。活性化25−OH VD3を含む溶液を、撹拌しながらCMO懸濁液に滴加した、これを、さらに18hr続けた。可能な限り溶媒を除去するために減圧を利用した(熱浴温度は、50℃を超えるべきでない)。EtOAc(25ml)を残留物に添加し、これを、塩水2mlにより3回洗浄した。その有機相を、無水Na2SO4で乾燥し、ろ過した;ロータリーエバポレータを使用して溶媒を除去した。乾燥後に粗生成物(42mg)が得られ、HPLCにより精製した。高真空下で乾燥した後、純粋な生成物(24mg)が得られた。その生成物を無水DMSO 1.2mlに溶解させた。アリコートをバイアルに移し、−70℃に維持した。
ケミビーズ試薬を得るためのEPRM−EDAと25−OH ビタミンD3 3−カルバマートのカップリング
25−OH ビタミンD3 3−カルバマート(上記のとおりに調製したDMSO中のアリコート10μL)(0.2mg)を、2mLのバイアルに添加した。EDAC(6.8mg)およびSNHS(9.4mg)プラス無水DMSO 2.27mL(3mg/mL)を、5mLのバイアルに添加した。EDAC/SNHS溶液(190μL)を上記の2mLのバイアルの中身(1mg/mL)と混合して活性化25−OH ビタミンD3 3−カルバマートを調製した。その混合物を、室温で18hr回転させた。16%のGAFAC(登録商標)界面活性剤溶液(GAF Corporation、ウェイン、ニュージャージー州)のアリコート0.4mL(0.15%)を、蒸留水3.6mLにより1.6%に希釈した。
ビタミンD3(8.5mg)およびDMSO 850μL(10mg/mL)を混合した。撹拌子を備えた10mLの丸底フラスコ(標識化3323−064B)に、EPRM−EDA 2.0mL(200MG)を添加し、続いて上記のビタミンD3溶液400μL(4mg)を添加した。その混合物を室温で一晩撹拌した。
撹拌子を備えた10mLの丸底フラスコに、穏やかに撹拌しながら、(上記のとおりに作製した)EPRM−EDA 2.0mL(200mg)を添加し、続いて1.6%のGAFAC(登録商標)界面活性剤溶液260μL(0.15%)を添加した。小さな試験管に、無水DMSO 504μLを添加し、続いて上記のとおりに調製した活性化ビタミンD3−3−カルバマート60μL(0.06mg)を添加し;その混合物をEPRM−EDAビーズ混合物に添加した。ビーズ懸濁液の総DMSO含有量を20%とした。反応容器を室温で一晩撹拌した。その後、そのビーズをダイアフィルトレーションにより洗浄した。
10%のMeOP/1%のGAFAC(登録商標)/pH6のMESバッファーを含むそれぞれのビーズロットを、最大20mLの使用体積(working volume)とした。その混合物に5体積のバッファーを用いてダイアフィルトレーションを行い、その後、混合物を低温に維持するために氷を使用して、プローブ型超音波処理器(probe sonicator)により18〜21ワットで超音波処理をした。ダイアフィルトレーション/超音波処理を50体積まで継続し、流出液試料を35、40、45および50体積において採取した。バッファーを、LOCIハプテン洗浄バッファー(50mMのHEPES、300mMのNaCl、1mMのEDTA、0.01%の硫酸ネオマイシン、0.1%のTRITON(登録商標)405Xおよび0.15%のPROCLIN(登録商標)300、pH7.2)に変え、10体積を使用した。その混合物を約7mLに減らし、UPAを行った。粒子径は、3323−064A=289nmおよび3323−064B=298nmであった。パーセント固体を測定し、そのビーズロットをpH7.2のLOCIハプテン洗浄バッファーにより最大で10mg/mLにした。生成量は160.4mgであった。
25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3の総量についてのアッセイ
LOCIアッセイのプロトコールに従って、さまざまな量の25−ヒドロキシビタミンD3を含むキャリブレータ溶液を使用して、DIMENSION(登録商標)VISTA(登録商標)分析器(Siemens Healthcare Diagnostics Inc.、ディアフィールド、イリノイ州)によりアッセイを行った。この実施例において、このアッセイには、化学発光試薬として、上記のとおりに調製したケミビーズ試薬を使用した。ビタミンDを含むことが疑われる試料を、pH7.5のHEPESバッファー(5mMのHEPES、4.9mMのナトリウムHEPES、300mMの塩化ナトリウム、10%のエチレングリコール、12.26mMのコール酸ナトリウムおよび0.20%のPLURONIC(登録商標)25R2)中で5%のトリクロロ酢酸ナトリウムおよび6%のサリチル酸ナトリウムを用いて前処理した。
前処理に関する条件は以下のとおりとした:約45ng/mLの25−ヒドロキシビタミンD2または25−ヒドロキシビタミンD3を含む血清試料8μLを、上記の前処理試薬およびビオチン化アッセイ抗体試薬とともに約18分間インキュベートした。その後、未反応の(結合していない)ビオチン化アッセイ抗体を除去するために、25OH D3被覆ケミビーズ試薬を添加した。次に、ストレプトアビジン被覆センシビーズ(sensibead)試薬を、その後、添加して、結合していないアッセイ抗体のLOCIシグナルを生成した。25−ヒドロキシビタミンD濃度は、LOCIシグナルに反比例する。前処理の結果として、内在性結合物質から遊離し、アッセイ抗体と結合した25−ヒドロキシビタミンD2の量は63ng/mLであり、内在性結合物質から遊離した25−ヒドロキシビタミンD3の量は42ng/mLであった。明らかなように、遊離した25−ヒドロキシビタミンD2の量が遊離した25−ヒドロキシビタミンD3の量よりも多かった。
試料を上記のとおりに調製したビオチン化アッセイ抗体試薬と反応させ、その後、ケミビーズ試薬と反応させた。溶液としての非アッセイ抗体として、ビタミンD抗体3A10(Bioventix Inc.、ファーンハム、サリー、英国のマウスモノクローナル抗体)を利用し、非アッセイ抗体は、遊離した25−ヒドロキシビタミンD3の量よりも多く遊離した25−ヒドロキシビタミンD2の過剰な量を打ち消すために40μg/mL(または5H10抗体の量の53倍)の量で存在するものとした。ケミビーズは、試料の分析物によってふさがったモノクローナル抗体結合部位の部分と結合する。その後、ストレプトアビジン結合増感剤ビーズを、反応混合物に添加した。これにより、ケミビーズ/センシビーズ対が形成され、その濃度は、ビタミンDの両方の型(第1の試料部分)またはビタミンDのエピ体(第2の試料部分)のいずれかの濃度と逆相関した。680nmでの照射時、増感剤ビーズは、一重項酸素を形成し、一重項酸素はケミビーズ中に拡散し、そのケミビーズは、センシビーズと対になり、オレフィン系色素と反応し、およそ612nmで化学発光シグナルを誘発し、これは、分析物濃度と逆相関する。
ストレプトアビジン−増感剤ビーズ(「センシビーズ」)を、米国特許第6,153,442号、同第7,022,529号、同第7,229,842号および米国特許出願公開第20050118727A号に記載されているのと類似の方法を使用して作製した。光増感剤は、ビス−(トリヘキシル)−シリコン−t−ブチル−フタロシアニンとした。150mMのNaClを含むpH8.0のHEPESバッファー中のセンシビーズ試薬の濃度を200μg/mLとした。上記のとおりに調製されたEPRM−EDA−25−OHビタミンD3粒子試薬を、「ケミビーズ試薬」として150mMのNaClおよび0.1%の界面活性剤を含むpH7.2のHEPESバッファー中において200μg/mLの濃度で利用した。
時間t=0secに、ビオチン化抗体試薬20μLおよび水20μLを反応容器に添加した。試料12μLを21.6秒後に添加し、続いて水8μLを添加した。t=414.0秒に、ケミビーズ試薬40μLを添加し、続いて水20mLを添加した。センシビーズ試薬を、その後、457.2秒の時点で分注した。反応シーケンスの開始601.2秒後に測定を行った。
上記のアッセイ方式を使用して、さまざまな量の25−ヒドロキシビタミンD2および25−ヒドロキシビタミンD3を含む血清試料に対してアッセイを行った。モノクローナル抗体10H9の代わりに、それぞれモノクローナル抗体5F6および6F11(共にBioventix、ファーンハム、サリー、英国のヒツジモノクローナル)を使用して上記アッセイを繰り返した。その結果を、以下のとおり表にし、説明する:
個々の出版物または特許出願のそれぞれを、参照により組み入れることを具体的に個々に示したかのように、本明細書中に挙げられた出版物および特許出願のすべてを参照によって本明細書に組み入れる。
当然のことながら、上記の例は、本明細書に記載される原理を示す多くの特定の例のうちの一部の例に過ぎない。明らかに、当業者は、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲から逸脱することなく、数々のその他の組み合わせを容易に考え出すことができる。