以下、図1から図8を参照し、本発明の第1実施形態に係る消火設備について説明する。
ここで、本実施形態は、トンネル内で火災が発生した際に、消火剤を放出させることや、火災が発生していることなどの警告を確実に道路利用者に認知させ、道路利用者の安全を確保することを可能にする消火設備に関するものである。
本実施形態の消火設備Aは、図1に示すように、火災検知器などの自動通報設備や押しボタン通報設備などの手動通報設備からの信号を受けて火災が検知されるとともに、消火剤(本実施形態では水)を放出させる消火剤放出手段1と、消火剤放出手段1によって消火剤の水を放出させる際の消火剤の圧送力(吐出圧)を利用して警告を表示させる警告表示手段2とを備えて構成されている。
さらに、本実施形態の消火設備Aは、警告表示手段2で警告を表示させた後に消火剤を放出させる遅延装置(遅延機構:図4参照)15を備えて構成されている。
本実施形態の警告表示手段2は、消火剤放出手段1の配置構成、防火区画の設定状況などに応じ、トンネルMの一方の坑口から他方の坑口までの長さ方向に所定の間隔をあけて複数配設されている。また、本実施形態では、この警告表示手段2がトンネルMの側壁部(壁部)に沿うように設けられるとともに、警告を記したスクリーン3を備え、消火剤の圧送力が作用するとともにスクリーン3が開くように構成されている。
具体的に、図1及び図2に示すように、本実施形態の警告表示手段2は、トンネルMの側壁部の覆工コンクリートなどに固着する固定部4a、及び固定部4aに繋がって側壁部に沿う略上下方向T1に延びる支持部4bからなる枠体4と、軸線O1方向を略上下方向T1に向け、この軸線O1周りに回転自在に枠体4に支持された軸部5と、一端を軸部5に固着して軸部5に巻き回されたスクリーン3と、枠体4に一端を繋げて支持され、軸線O1直交方向のトンネルM内側に向かう前後方向S1に進退する進退機構6と、スクリーン3の他端、進退機構6の他端にそれぞれ接続して支持された進退部材7とを備えている。
スクリーン3は、その表面に、例えば「火災発生!・停車!・放水します!」などの文字やビクトグラムなどが記されており、このスクリーン3が開くことにより、道路利用者(人)に火災が発生したことや消火剤が放出されることなどを認知させるように形成されている。
また、本実施形態のスクリーン3は、火災時の高温に対する耐熱性を備え、例えば900℃の高温に60分間晒されても燃えることがなく、また有毒ガスが発生することがないように形成されていることが望ましい。
進退機構6は、図3に示すように、例えば、消火剤放出手段1の噴霧用自動弁と噴霧ヘッドの間の配管と独立して設けられた配管を連通させて設けられたシリンダー8と、シリンダー8の内部を配管に連通する一方(後方)のシリンダー室8aと他方(前方)のシリンダー室8bに区画しつつ前後方向S1に進退自在に設けられたピストン9と、ピストン9に一端を接続し、軸線O2に沿って他方のシリンダー室8bからシリンダー8の前端よりも前方に突出して進退部材7に接続されたピストンロッド10とを備えて構成されている。また、本実施形態ではこの進退機構6が軸部5を挟んで上方と下方にそれぞれ設けられている。
さらに、図2及び図3に示すように、各進退機構6は、シリンダー8の他方のシリンダー室8bにバネ11がピストン9を後方側に付勢するように内蔵されている。これにより、通常時には、ピストン9が後端側に配され、ピストンロッド10が他方のシリンダー室8b内に収容され、シリンダー8の前端に近接して進退部材7が配されるように構成されている。
次に、本実施形態の消火剤放出手段1は、図4に示すように、消火剤の水を放出する噴霧ヘッド(噴霧ノズル、スプリンクラー)16と、消火剤を加圧供給する貯水タンクや圧送ポンプ等を備えた給水手段(不図示)と、防災盤の信号に基づき、給水手段で送られた消火剤を噴霧ヘッド16からの放出/停止させるように制御装置(制御手段)によって駆動制御される自動弁装置17とを備えている。
また、制御装置は、防災盤からの操作信号に基づき、自動弁装置17を起動するともに、この自動弁装置17の起動または遠隔テストに伴うポンプ起動信号を受けて圧送ポンプを駆動し、自動弁装置17に加圧した消火剤を供給するように制御する。
また、自動弁装置17は、トンネルMの側壁部に設置した自動弁格納箱に収容され、例えばトンネル軸方向の50m間隔の水噴霧区間に1台(1セット)ずつ設置されている。さらに、自動弁装置17からトンネルMの周方向に延び、さらに軸方向に分岐して配管が設けられ、この配管に所定の間隔で複数の噴霧ヘッド16が取り付けられている。
具体的に本実施形態の自動弁装置17について説明を行う。図4に示すように、この自動弁装置17は、自動弁20、初期放水圧力制御弁21、圧力調整弁22、パイロット弁(起動弁)23、手動起動弁24、テスト放水弁25、自動排水弁26、圧力スイッチ27を備えて構成されている。
自動弁20は、例えば、弁ボディ18に消火剤の流入口20a、流出口20bが形成され、流入口20aに給水手段からの配管(不図示)が接続され、流出口20bに噴霧ヘッド16に繋がる配管28が接続されている。弁ボディ18には、その内部に流入口側の室30と流出口側の室31を区画形成する仕切壁(弁座)32が設けられ、流入口側の室30と流出口側の室31が仕切壁(弁座)32に貫通形成された弁孔33によって連通している。
さらに、弁ボディ18には、ステム(弁体作動軸)34が進退自在に支持されている。ステム34には、ステム34に進退に応じて弁孔33を開閉できるように弁体35が一体に設けられている。ステム34は、ピストン36が一体に取り付けられている。そして、このピストン36が弁ボディ18に一体形成されたシリンダー内を開放加圧側シリンダー室40と閉鎖加圧側シリンダー室41に区画するように配設されている。
また、弁ボディ18には、カバー部材42が取り付けられている。カバー部材42には、初期放水圧力制御弁21に繋がる配管を接続するための第1接続口18aと、第2接続口18bが貫通形成されている。そして、ステム34が進出して弁孔33が閉鎖されている状態でカバー部材42の第1接続口18aと第2接続口18bが内部空間を通じて連通し、ステム34が退避して弁孔33が開放された状態で第2接続口18bがステム34に設けられたOリングなどのシール材43で閉塞され、第1接続口18aと第2接続口18bの間が遮断されるように形成されている。
初期放水圧力制御弁21は、弁ボディ45に互いに連通する第1接続口45aと第2接続口45bを備えるとともに、第1接続口45aと第2接続口45bを開閉(連通/遮断)する弁体46を備えて構成されている。また、弁体46は、シリンダー内で進退するピストン47に繋がり、ピストン47の進退に応じて第1接続口45aと第2接続口45bを開閉するように設けられている。ピストン47で区画されるシリンダー内の一方のシリンダー室48は第2接続口45bと連通している。シリンダー内の他方のシリンダー室49の内部にはピストン47を一方のシリンダー室48側に所定の押圧力で付勢するバネ50が設けられている。また、このバネ50の押圧力は適宜調整可能とされている。
この初期放水圧力制御弁21は、第1接続口45aを自動弁20のカバー部材42の第1接続口18aに第1配管51によって接続し、第2接続口45bをカバー部材42の第2接続口18bに第2配管52によって接続して設けられている。また、第1配管51には第3配管53が分岐接続され、第3配管53が自動弁20の弁ボディ18の閉鎖加圧側シリンダー室41に連通する第3接続口18cに接続されている。
そして、カバー部材42の内部、閉鎖加圧側シリンダー室41、第1配管51、第2配管52、第3配管53、初期放水圧力制御弁21の第1接続口45aと第2接続口45bの連通路、初期放水圧力制御弁21のシリンダーの一方のシリンダー室48には、制御水が充満している。
圧力調整弁22は、弁ボディ55に互いに連通する第1接続口55aと第2接続口55bを備えるとともに、第1接続口55aと第2接続口55bを開閉(連通/遮断)する弁体56を備えて構成されている。弁体56はバネ57によって第1接続口55aと第2接続口55bを閉じる(遮断する)方向に付勢されている。さらに、圧力調整弁22には、シリンダーとこのシリンダーの内部に進退自在に設けられ、シリンダーの内部を一方のシリンダー室58と他方のシリンダー室59に区画するピストン60とが設けられている。ピストン60にはピストンロッド61が接続されている。
この圧力調整弁22においては、ピストン60が一方のシリンダー室58側に移動し、これに従動してピストンロッド61が進出すると、バネ57を縮長する方向に押圧し、弁体56が第1接続口55aと第2接続口55bを閉じる方向に押圧される。また、ピストン60が他方のシリンダー室59側に移動し、これに従動してピストンロッド61が退避すると、バネ57が伸長し、弁体56の第1接続口55aと第2接続口55bを閉じる方向に作用する押圧力が小さくなる。
また、圧力調整弁22は、ピストン60に一方のシリンダー室58と他方のシリンダー室59を繋ぐ逆止弁62が設けられ、さらに一方のシリンダー室58と他方のシリンダー室59を連通させ、その途中にニードル弁63を備えたバイパス管64が設けられている。
この圧力調整弁22は、自動弁20の第2接続口18bと初期放水圧力制御弁21の第2接続口45bを繋ぐ第2配管52に分岐接続された第4配管65が他方のシリンダー室59に連通する第3接続口55cに接続されている。また、この第4配管65に分岐接続された第5配管66が第1接続口55aに接続されている。さらに、圧力調整弁22の第1接続口55aと第2接続口55bの連通路に繋がる第4接続口55dと、自動弁20の開放加圧側シリンダー室40に連通する第4接続口18dとが第6配管67で接続されている。
また、自動弁20の開放加圧側シリンダー室40に接続して第7配管68が設けられている。第7配管68は、並列管を備え、一方の並列管に自動排水弁26、他方の並列管にテスト放水弁25が設けられている。第7配管68には、並列管よりも自動弁20の流出口側の室31側に圧力スイッチ27が接続して設けられている。さらに、第8配管69が、一端を第7配管68の並列管よりも自動弁20の流出口側の室31側に分岐接続し、他端を第4配管65に分岐接続して設けられている。
次に、第9配管70が、自動弁20の流入口側の室30に一端を、遅延装置15の弁ボディ71の第1接続口71aに他端を接続して設けられている。第9配管70は、並列管を備え、一方の並列管にパイロット弁(起動弁)23、他方の並列管に手動起動弁24が設けられている。
本実施形態の遅延装置(遅延機構)15は、弁ボディ71に第1接続口71aと第2接続口71bが形成され、第1接続口71aに自動弁20の流入口側の室30に繋がる第9配管が70接続されている。また、第2接続口71bには、圧力調整弁22の第2接続口55bに一端を接続した第10配管72の他端が接続されている。さらに、弁ボディ71には、その内部に第2接続口71bに連通する流出口側の室76と第3接続口71cに連通する流入口側の室77が仕切壁(弁座)74によって区画形成されている。また、仕切壁(弁座)74には流出口側の室76と流入口側の室77を連通するように貫通形成された弁孔75が設けられている。
さらに、遅延装置15の弁ボディ71には、ステム(弁体作動軸)80が進退自在に支持されている。このステム80には、ステム80に進退に応じて弁孔75を開閉できるように弁体81が一体に設けられている。また、弁孔75を閉塞させるように弁体81を付勢するバネ82が設けられている。
遅延装置15には、シリンダーと、シリンダーの内部に進退自在に設けられ、シリンダーの内部を一方のシリンダー室83と他方のシリンダー室84に区画するピストン85とが設けられている。また、このピストン85にはピストンロッド86が接続され、ピストン85が進出すると、ピストンロッド86がステム80を弁体81が弁孔75を開放させる方向に押圧するように構成されている。
また、遅延装置15のシリンダーには、他方のシリンダー室84に連通するように第1接続口71aが設けられ、第9配管70がこの第1接続口71aに接続されている。
さらに、遅延装置15には、ピストン85に一方のシリンダー室83と他方のシリンダー室84を繋ぐ逆止弁89が設けられ、さらに、一方のシリンダー室83と他方のシリンダー室84を連通させ、その途中にニードル弁87を備えたバイパス管88が設けられている。
そして、図2から図4に示すように、本実施形態の警告表示手段2は、進退機構6のシリンダー8の一方のシリンダー室8aと他方のシリンダー室8bに連通するように一端を接続して第11配管90を設け、この第11配管90の他端を第9配管70に分岐接続して遅延装置15に接続されている。第11配管90には一端側から他端側への消火剤の水の流通を阻止する逆止弁91が設けられている。
さらに、遅延装置15の弁ボディ71には流入口側の室77に連通して第3接続口71cが設けられ、第12配管92が一端をこの第3接続口71cに接続し、他端を第9配管70に分岐接続して設けられている。
また、第9配管70と第8配管69を接続する第13配管93が設けられ、この第13配管93には給水用バルブ94が設けられている。
ここで、上記のように構成した本実施形態の自動弁装置17の通常監視時、自動弁装置の起動時、消火剤の初期放水時、消火剤の低圧放水時、消火剤の規定圧放水時の動作について説明する。
まず、通常監視状態では、図4に示すように、自動弁20の閉鎖加圧側シリンダー室41に制御水が充満され、弁体35によって弁孔33が閉鎖されている。なお、制御水の充水は、給水用バルブ94を開放することによって行うことができる。
次に、自動弁装置17が起動する際には、図5に示すように、制御装置からの動作指令を受けてパイロット弁(起動弁)23が開放される。又は手動起動弁24を手動操作して開放する。これにより、自動弁20の開放加圧側シリンダー室40に第4接続口18dから加圧水(1次側加圧水)が圧入され、ピストン36、ステム34、弁体35が上昇し、弁孔33が開放され始める。また、このとき、ピストン36の上昇に伴い、閉鎖加圧側シリンダー室41内の制御水が、カバー部材42の内部、閉鎖加圧側シリンダー室41、第1配管51、第2配管52、第3配管53、初期放水圧力制御弁21の第1接続口45aと第2接続口45bの連通路、初期放水圧力制御弁21の一方のシリンダー室48の間で循環する。
次に、初期放水時には、図6に示すように、自動弁20の弁体35が徐々に上昇することで、流入口側の室30から弁孔33を通じて流出口側の室31に消火剤の水が供給され、噴霧ヘッド16から放水が始まる。また、自動弁20の弁体35が徐々に上昇し、弁体35が上昇制限位置に達すると、ステム34に取り付けられたシール材43が自動弁20の第2接続口18bを閉塞し、制御水の循環が停止する。そして、自動弁20の流出口側の室31内の圧力、すなわち2次側加圧水の圧力が予め設定した一定圧力を超えると、圧力スイッチ27がオンとなり、防災盤に自動弁作動の信号が発信される。
次に、消火剤の低圧放水時には、図7に示すように、2次側配管内の充水が完了すると、これら配管内に一定の圧力が発生する。この圧力が初期放水圧力制御弁21の設定圧力を超えると、初期放水圧力制御弁21の弁孔が開放される。初期放水圧力制御弁21が開放すると、制御水の流路が確立され、再び制御水の循環が始まり、これにより、自動弁20のステム34、弁体35が全閉から全開の範囲を自由に動くことが可能になる。
そして、圧力調整弁22の設定圧力に2次側加圧水の圧力(自動弁20の流出側の圧力)がなるように、自動弁20のピストン36の位置、ひいては弁孔33の開度、さらに加圧水流入出量が制御される。これにより、圧力調整弁22の設定圧力を低圧設定にしておけば、低圧放水が行える。
次に、規定圧放水時には、図8に示すように、圧力調整弁22の他方のシリンダー室59に制御水が流入し、制御水がピストン60を押し下げる。ピストン60が押し下がると圧力調整弁22の設定圧力が高くなる。これにより、高くなった圧力調整弁22の設置圧力に応じて自動弁20のピストン36の位置、ひいては弁孔33の開度、さらに加圧水流入出量が制御され、噴霧ヘッド16から規定圧の本格放水が行われる。なお、このとき、ピストン60に逆止弁62が設けられているため、制御水が逆止弁62を通って一方のシリンダー室58に抜け、ニードル弁63を通って再び他方のシリンダー室59に戻る。これにより、ニードル弁63の開度を調整することで、設定圧力の切り替え時間を調整することができる。
一方、本実施形態の消火設備Aにおいては、図3、図4から図8に示すように、火災により当該区画の自動弁装置17から消火剤の水を放水(噴霧)する場合、上記の通り、パイロット弁23が閉から開に制御されると、消火剤の加圧水が第9配管70、第11配管90を通じて警告表示手段2のシリンダー8の後方の室8aに流れる。
また、このとき、第9配管70が遅延装置15に接続され、この遅延装置15がバネ82の付勢力で弁孔75を閉じているため、自動弁20の開放加圧側シリンダー室40には加圧水が流れず、放水が行われない。
そして、徐々に圧力が上昇すると、警告表示手段2のピストン9が前方に押圧され、これにより、一対の進退機構6のピストンロッド10が前方に進出する。また、ピストンロッド10に進退部材7、進退部材7にスクリーン3がそれぞれ接続されているため、ピストンロッド10が前方に進出すると、進退部材7が前方に進出し、スクリーン3が進退部材7に引っ張られて軸部5が軸線O1周りに回転し、スクリーン3が繰り出される。
これにより、例えば「火災発生!・停車!・放水します!」などの文字やビクトグラムなどが記されたスクリーン3が開くことになる。
また、このようにスクリーン3が開き始めるとともに、遅延装置15の他方のシリンダー室84に一次側加圧水が流れ込む。この圧力が予め設置した圧力値を超えるとピストン85が下がっていく。ここで、遅延装置15の設定圧力値は、例えば、スクリーン3が開く圧力と同じか、それより大きい値にしておく。これにより、スクリーン3が開き、その後、遅延装置15が時間差をもって作動するようにすることができる。
また、遅延装置15のピストン85が下がる速度は、上下に通じるバイパス88のニードル弁87の開度により決定される。すなわち、遅延時間はニードル開度によって調整することができる。
なお、ピストン85に逆止弁89が設けられ、この逆止弁89を加圧水が一方向に流れることで、またピストン85がバネ95で付勢されていることで、ピストン85を初期位置に復帰させることができる。
そして、遅延装置15のピストン85が押下していくと、ステム80に当たり、そのままステム80及び弁体81を下げ、弁孔75が開放し、1次側加圧水が自動弁20の開放加圧側シリンダー室40に流入する。これにより、自動弁20が開方向に動き、2次側に流水し、噴霧ヘッド16から放水が開始される。
また、2次側圧力が所定の圧力より大きい場合、圧力調整弁22は自動弁20の開放加圧側シリンダー室40への供給を停止する。これとともに自動弁20の開放加圧側シリンダー室40の加圧水が排水され、自動弁20が閉方向に動く。
2次側圧力が所定の圧力より小さい場合、圧力調整弁22は自動弁20の開放加圧側シリンダー室40への供給を増やし、自動弁20が開方向に動く。
また、スクリーン3による警告表示後は、通常の圧力調整機能付き自動弁の機能、すなわち、1次側圧力変動に対して2次側圧力を一定に保持する機能が発揮される。
したがって、本実施形態の消火設備Aにおいては、火災が検知され、消火剤放出手段1の自動弁20が開操作されて水などの消火剤が放出される際に、この消火剤の圧送力を利用して警告表示手段2が起動し、例えば文字やビクトグラムなどが記されたスクリーン3が開き、警告を表示することができる。
これにより、消火剤放出手段1によって消火剤を放出するとともに(消火剤放出手段1が起動するとともに)自動的に警告表示を出すことが可能になり、警告表示によって人に火災が発生したことや消火剤が放出されることなどを認知させることができる。よって、従来と比較し、確実に安全行動をとるように促すことが可能になる。
さらに、遅延装置(遅延機構)15によって、警告表示手段2で警告を表示させた後、所定の時間が経過してから消火剤が放出されるため、警告表示手段2で表示された警告を人が認知して安全行動をとった段階で消火剤を放出することが可能になる。
さらに、本実施形態の消火設備Aにおいては、警告表示手段2で警告表示を行った後、小量の消火剤を放出し、その後、大量の消火剤を本格的に放出する。これにより、警告表示手段2による警告表示と、消火剤の小量放出の2段階で、人に安全行動をとるように促すことができる。
さらに、本実施形態の消火設備Aにおいては、警告表示手段2がトンネルMの側壁部(壁部)に設けられていることにより、警告表示手段2によって表示された警告の視認性を高くすることができ、トンネル利用者などの人に確実に警告を認知させることが可能になる。
そして、このように警告表示手段2が起動して道路利用者などの人に火災が発生したことや消火剤が放出されることなどを認知させ、確実に自動車を停止させるなどの安全行動をとるように促すことができるため、従来のように本格散水が行えなくなるような不都合を確実に解消することが可能になる。すなわち、消火設備A(消火剤放出手段1)としての本来の機能、目的を有効に発揮させることが可能になる。
さらに、消火剤放出手段1によって消火剤を放出する圧送力を利用して警告表示手段2を起動させるようにしたことで、警告表示手段2にかかる機器の追加、電気配線の追加、制御システムの変更などを不要にして、警告表示を行うことができる。このため、例えば新規トンネルのみならず既存トンネル(新規の施設のみならず既存の施設)に対しても大幅な変更を必要とせずに本実施形態のように消火設備Aを構成し、その作用効果を付与することが可能になる。
また、消火剤放出手段1によって消火剤を放出する圧送力を利用して警告表示手段2のスクリーン3を開いて警告を表示するようにしたことで、スクリーン3が開けば、文字などの警告がしっかりと表示され、文字が見えないなどの不都合が生じることがない。さらに、消火剤放出手段1によって消火剤を放出している間、消火剤放出手段1に圧送力が作用し続けるため、スクリーン3を開いた状態にすることができる。また、このとき、圧送力が作用し続けることで風などの影響を受けにくく、長時間、安定した状態で警告表示を持続することが可能になる。
以上、本発明に係る消火設備の第1実施形態について説明したが、本発明は上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、トンネル火災に対して本発明にかかる消火設備A及び火災時警告表示方法を適用するものとして説明を行ったが、本発明はあらゆる施設等に適用可能である。
例えば、化学工場に本発明の消火設備Aを設け、火災が発生した際に、消火剤の圧送力で「火災発生! 有毒ガス危険! 立ち入り禁止!」、「火災発生! 爆発危険! 立ち入り禁止!」などの警告を表示するようにしてもよい。
また、地下駐車場、地下道などで火災が発生した際に、消火剤の圧送力で「火災発生! 入るな!」などの警告を表示するようにしてもよい。
また、本発明にかかる消火剤を水に限定する必要もない。
さらに、本実施形態では、警告表示手段2がスクリーン3を開いて警告表示を行うものとして説明を行ったが、本発明にかかる警告表示手段2は本実施形態のように限定する必要はない。例えば、消火剤の圧送力を利用し、光を照射させて警告表示したり、音を鳴らして警告表示したり、発煙筒又は発炎筒を着火しつつ放出させて警告表示するなど、あらゆる警告表示手段を適用することができる。
また、本実施形態では、警告表示手段2で警告を表示した後、消火剤の小量放出、その後、消火剤の本格的な大量放出を行うものとして説明を行ったが、消火剤の小量放出を行わないように構成しても構わない。すなわち、本発明においては、遅延機構15を備え、警告表示手段2で警告を表示した後、所定の時間が経過してから消火剤を放出させることができれば、小量放水による放水の予告を行わずとも、警告表示手段2で放水予告を行うことができ、その目的を達成することができる。よって、人が安全行動をとる前に消火剤が放出され、この消火剤の放出に起因して避難が遅れたり、二次災害が発生することを防止できる。
次に、図9(図1から図3)を参照し、本発明の第2実施形態に係る消火設備について説明する。
ここで、本実施形態は、第1実施形態と同様、トンネルM内で火災が発生した際に、消火剤を放出させることや、火災が発生していることなどの警告を確実に道路利用者に認知させ、道路利用者の安全を確保することを可能にする消火設備Aに関するものである。また、警告表示手段2、消火剤放出手段1、遅延機構15を備えて構成されるものである。
よって、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成について同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の消火設備Aは、第1実施形態と同様、火災検知器などの自動通報設備や押しボタン通報設備などの手動通報設備からの信号を受けて火災が検知されるとともに、水などの消火剤を放出させる消火剤放出手段1と、消火剤放出手段1によって消火剤を放出させる際の消火剤の圧送力を利用して警告を表示させる警告表示手段2と、警告表示手段2で警告を表示させた後に消火剤を放出させる遅延装置(遅延機構)15を備えて構成されている。
一方、本実施形態の消火設備Aは、図9に示すように、第12配管92に遅延機構の構成要素としてのアキュムレータ100が設けられている。
そして、このように構成した本実施形態の消火設備Aにおいては、火災により当該区画の自動弁装置17から消火剤の水を放水(噴霧)する場合、上記の通り、パイロット弁23が閉から開に制御されると、消火剤の加圧水が第9配管70、第11配管90を通じて警告表示手段2のシリンダー8の一方のシリンダー室8aに流れる。
また、このとき、第9配管70が遅延装置15に接続され、この遅延装置15がバネ82、95の付勢力で弁孔75を閉じているため、自動弁20の開放加圧側シリンダー室40には加圧水が流れず、放水が行われない。
さらに、本実施形態では、アキュムレータ100が設けられているため、昇圧時間を延ばすことができる。
そして、アキュムレータ100で昇圧時間を延ばしつつ徐々に圧力が上昇すると、警告表示手段2のピストン9が前方に押圧され、これにより、一対の進退機構6のピストンロッド10が前方に進出する。また、ピストンロッド10に進退部材7、進退部材7にスクリーン3がそれぞれ接続されているため、ピストンロッド10が前方に進出すると、進退部材7が前方に進出し、スクリーン3が進退部材7に引っ張られて軸部5が軸線O1周りに回転し、スクリーン3が繰り出される。
これにより、例えば「火災発生!・停車!・放水します!」などの文字やビクトグラムなどが記されたスクリーン3が開くことになる。
また、このようにスクリーン3が開き始めるとともに、遅延装置15の一方のシリンダー室84に一次側加圧水が流れ込む。この圧力が予め設置した圧力値を超えるとピストン85が下がっていく。ここで、遅延装置15の設定圧力値は、例えば、スクリーン3が開く圧力と同じか、それより大きい値にしておく。これにより、スクリーン3が開き、その後、遅延装置15が時間差をもって作動するようにすることができる。
また、ピストン85が下がる速度は、アキュムレータ100の1次側にスピードコントローラーやオリフィスを設けた場合にはこれらスピードコントローラーやオリフィス、さらにピストン85を境にして上下に通じるバイパス88のニードル弁87の開度により決定され、自動弁20の開動作開始にタイムディレーを持たせることができる。
そして、アキュムレータ100で蓄圧した圧力が放水圧力制御弁21の作動圧力より大きくなると、ピストン47を押し上げる。これにより、放水圧力制御弁21の弁体が開放し、一次側加圧水が自動弁20の開放加圧側シリンダー室40に流入する。また、この圧力により、自動弁20が開方向に動き、2次側に流水し、噴霧ヘッド16から放水が開始される。
したがって、本実施形態の消火設備Aにおいては、第1実施形態と同様の作用効果に加え、遅延装置(遅延機構)15にアキュムレータ100が具備されていることで、昇圧時間を自在に延ばすことができ、遅延装置15、ひいては消火剤放出手段1と警告表示手段2を所望の時間差をもって作動させることができる。よって、より確実且つ効果的に、警告表示手段2で表示された警告を人が認知して安全行動をとった段階で消火剤を放出することが可能になる。
以上、本発明に係る消火設備の第2実施形態について説明したが、本発明は上記の第2実施形態に限定されるものではなく、第1実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、図10に示すように、遅延機構15をアキュムレータ100で構成するようにしてもよい。この場合においても、アキュムレータ100で昇圧時間を自在に延ばすことができ、このアキュムレータ100で消火剤放出手段1と警告表示手段2を所望の時間差をもって作動させることができる。
次に、図11(図1から図3)を参照し、本発明の第3実施形態に係る消火設備について説明する。なお、本実施形態では、第1、第2実施形態と同様の構成について同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の消火設備Aは、第1、第2実施形態と同様、消火剤放出手段1と、警告表示手段2と、遅延装置(遅延機構)15を備えて構成されている。
一方、本実施形態の消火設備Aは、図11に示すように、初期放水圧力制御弁21と略同様に構成された圧力制御弁101が遅延装置15の構成要素として用いられている。そして、この遅延装置15としての圧力制御弁101は、第7配管68に分岐接続した第8配管69が他方のシリンダー室48に連通する第3接続口45cに接続されている。また、遅延装置15には、第4配管65に分岐接続した第14配管102の他端が他方のシリンダー室48に連通する第4接続口45dに接続されている。さらに、遅延装置15の第2接続口45bに一端を、警告表示手段2の一方のシリンダー室8aに他端を繋げて第15配管103が設けられている。また、圧力調整弁22の第2接続口55bに一端を接続した第10配管72の他端が遅延装置15の第1接続口45aに接続されている。
さらに、本実施形態の遅延装置(遅延機構)15においては、第15配管103にオリフィス104とアキュムレータ100が設けられ、第9配管70に逆止弁91が設けられている。
そして、このように構成した本実施形態の消火設備Aにおいては、火災により当該区画の自動弁装置17から消火剤の水を放水(噴霧)する場合、パイロット弁23が閉から開に制御されると、消火剤の加圧水が第9配管70を通じて警告表示手段2の一方のシリンダー室8aに流れる。
また、このとき、警告表示手段2の一方のシリンダー室8aが遅延装置15の圧力制御弁に接続され、この圧力制御弁15がバネ50の付勢力で弁孔を閉じているため、自動弁20の開放加圧側シリンダー室40には加圧水が流れず、放水が行われない。
一方、本実施形態においても、第2実施形態と同様、アキュムレータ100が設けられているため、昇圧時間を延ばすことができる。
そして、アキュムレータ100で昇圧時間を延ばしつつ徐々に圧力が上昇すると、警告表示手段2のピストン9が前方に押圧され、スクリーン3が繰り出され、例えば「火災発生!・停車!・放水します!」などの文字やビクトグラムなどが記されたスクリーン3が開くことになる。
また、このようにスクリーン3が開くとともに、遅延装置15の圧力制御弁の他方のシリンダー室48に一次側加圧水が流れ込み、遅延装置15の圧力制御弁の起動圧力が上昇してゆき、この圧力が設定値を超えるとピストン47が上がっていく。ここで、遅延装置15の圧力制御弁の設定圧力値は、例えば、スクリーン3が開く圧力と同じか、それより大きい値にしておく。これにより、スクリーン3が開き、その後、遅延装置15の圧力制御弁が時間差をもって作動するようにすることができる。
また、遅延装置15の圧力制御弁のピストン47が上がる速度は、アキュムレータ100の1次側のオリフィス104により決定される。
そして、アキュムレータ100で蓄圧した圧力が初期放水圧力制御弁21の作動圧力より大きくなると、初期放水圧力制御弁21のピストン47を押し上げる。これにより、初期放水圧力制御弁22の弁体が開放し、一次側加圧水が自動弁20の開放加圧側シリンダー室40に流入する。また、この圧力により、自動弁20が開方向に動き、2次側に流水し、噴霧ヘッド16から放水が開始される。
したがって、本実施形態の消火設備Aにおいても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、これに加え、遅延装置(遅延機構)15にアキュムレータ100、オリフィス104が具備されていることで、昇圧時間を自在に延ばすことができ、遅延装置15を所望の時間差をもって作動するようにすることができる。よって、より確実且つ効果的に、警告表示手段2で表示された警告を人が認知して安全行動をとった段階で消火剤を放出することが可能になる。
以上、本発明に係る消火設備の第3実施形態について説明したが、本発明は上記の第3実施形態に限定されるものではなく、第1、第2実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
次に、図12(図1から図3)を参照し、本発明の第4実施形態に係る消火設備について説明する。なお、本実施形態では、第1、第2、第3実施形態と同様の構成について同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
本実施形態の消火設備Aにおいては、図12に示すように、第1実施形態に対し、初期放水圧力制御弁21、圧力調整弁22をなくし、第9配管70に電磁弁(開閉弁)105を設けるとともにこの電磁弁105に第6配管67を接続して構成されている。また、第6配管67に圧力調整弁106(圧力調整弁22と同様の圧力調整弁)が設けられている。また、第8配管69が圧力調整弁106に接続されている。また、自動弁20の閉鎖加圧側シリンダー室41は空気孔を通じて外部に連通し、ピストン36の動きに応じて空気が給排される。
そして、この消火設備Aにおいては、流出口側の室31の圧力P2が圧力調整弁106の設定圧力より大きい場合には開放加圧側シリンダー室40の圧力P1を止め、流出口側の室31の圧力P2が圧力調整弁106の設定圧力より小さい場合には開放加圧側シリンダー室40の圧力P1の供給を行う。
さらに、第11配管90の逆止弁91と警告表示手段2の間に圧力センサ(圧力計測手段)107を設け、圧力センサ107の検出結果に基づいて制御装置(制御手段)108が電磁弁105を開閉制御するように構成されている。
そして、本実施形態の消火設備Aでは、電磁弁105と圧力センサ107と制御装置108(と圧力調整弁106)によって遅延機構15が構成されている。
上記構成からなる本実施形態の消火設備Aでは、パイロット弁23が開くと、消火剤が第9配管70から第11配管90を通じて警告表示手段2に供給され、警告表示手段2によって警告が表示される。
このとき、圧力センサ107によって圧力が計測されており、警告が表示されて第11配管90内の圧力が所定の値に上昇すると、これを検出する圧力センサ107からの検出結果に基づいて制御装置108が電磁弁105を開く。そして、消火剤が圧力調整弁106に送られ、その圧力が圧力調整弁106を介して自動弁20に供給される。これにより、自動弁20が開方向に動き、2次側に流水し、噴霧ヘッド16から放水が開始される。
したがって、本実施形態の消火設備Aにおいても、第1〜第3実施形態と同様、火災が検知され、消火剤放出手段1の自動弁20が開操作されて水などの消火剤が放出される際に、この消火剤の圧送力を利用して警告表示手段2が起動し、警告を表示することができる。
これにより、消火剤放出手段1によって消火剤を放出するとともに自動的に警告表示を出すことが可能になり、警告表示によって人に火災が発生したことや消火剤が放出されることなどを認知させることができる。よって、従来と比較し、確実に安全行動をとるように促すことが可能になる。
さらに、遅延機構15によって、警告表示手段2で警告を表示させた後、所定の時間が経過してから消火剤が放出されるため、警告表示手段2で表示された警告を人が認知して安全行動をとった段階で消火剤を放出することが可能になる。
以上、本発明に係る消火設備の第4実施形態について説明したが、本発明は上記の第3実施形態に限定されるものではなく、第1、第2、第3実施形態の変更例を含め、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態の遅延機構15にアキュムレータを設け、第2、第3実施形態に示したようにアキュムレータで遅延時間を調整するようにしてもよい。