以下、本発明のボイラ装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。第1実施形態のボイラ装置1は、水を加熱して蒸気の生成を行う蒸気ボイラであり、負荷機器(図示省略)に蒸気を供給するものである。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
図1に示すように、ボイラ装置1は、ボイラ2と、ボイラ2に燃焼用空気を送り込む送風機20と、ボイラ2と送風機20とを接続し燃焼用空気が流通する空気供給ラインとしての給気ダクト30と、給気ダクト30に配置されるダンパ31と、燃焼用空気減圧部材としてのパンチングメタル32と、空気流量検知部としてのエア差圧センサ33と、ボイラ2から排出される燃焼ガス(排ガス)が流通する排ガス排出部としての排気筒80と、ボイラ2に燃料ガスを供給する燃料供給部50と、ボイラ2に水を供給する給水路(図示省略)と、燃料ガスや燃焼用空気の供給量等を制御する制御装置70と、を備える。
ボイラ2は、缶体10によって構成され、缶体10は、ボイラ筐体11と、複数の水管12と、下部ヘッダ13と、上部ヘッダ14と、バーナ15と、を備える。
ボイラ筐体11は、缶体10の外形を構成し、平面視矩形形状の直方体状に形成される。このボイラ筐体11の長手方向の一端側に位置する第1側面11aには、給気口16が形成され、ボイラ筐体11の長手方向の他端側に位置する第2側面11bには、排気口17が形成される。
複数の水管12は、ボイラ筐体11の内部に上下方向に延びて配置されると共に、ボイラ筐体11の長手方向及び幅方向に所定の間隔をあけて配置される。
下部ヘッダ13は、ボイラ筐体11の下部に配置される。下部ヘッダ13には、複数の水管12の下端部が接続される。上部ヘッダ14は、ボイラ筐体11の上部に配置される。上部ヘッダ14には、複数の水管12の上端部が接続される。
バーナ15は、給気口16に配置される。バーナ15によって燃料ガスと燃焼用空気との混合気が燃焼し、水管12の水が加熱されて蒸気が発生する。
送風機20は、ファン及びこのファンを回転させるモータを有する送風機本体21と、ファン(モータ)の回転数を増減させるインバータ22と、を備える。送風機20は、インバータ22に入力される周波数に応じて、ファンが所定の回転数で回転することで、缶体10に燃焼用空気を送り込む。
本実施形態では、負荷機器(図示省略)から要求される要求負荷に応じて燃焼用空気の流量が設定される。送風機20は、設定された燃料用空気の流量になるように制御装置70によってインバータ22を介して制御される。
給気ダクト30は、ボイラ2に燃料ガスと混合させる燃焼用空気を供給する空気供給ラインである。給気ダクト30は、上流側の端部が送風機20に接続され、下流側の端部が給気口16に接続される。給気ダクト30は、送風機20から送り込まれた燃焼用空気を缶体10に供給する。
ダンパ31は、給気ダクト30の内部の燃焼用空気の流路を塞いだ閉状態と、この閉状態から90度回転し、給気ダクト30の内部の燃焼用空気の流路を開放した開状態との間で回転可能に配置される。
パンチングメタル32は、複数の貫通孔が形成された金属板であり、流通する燃焼用空気を減圧する燃焼用空気減圧部材である。パンチングメタル32は、給気ダクト30の内部のダンパ31の下流側に配置される。このパンチングメタル32によって、ダンパ31を通って給気ダクト30まで流れてきた燃焼用空気は減圧される。
エア差圧センサ33は、燃焼用空気の流量を検知するための空気流量検知部である。エア差圧センサ33は、パンチングメタル32の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検知する。燃料用空気の流量は、この差圧情報に基づいて算出される。また、エア差圧センサ33は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70はエア差圧センサ33によって検知されたエア差圧情報を取得する。
排気筒80は、基端側が缶体10(ボイラ筐体11に形成された排気口17)に接続され、筒状に形成される。この排気筒80を通じて缶体10で発生した燃焼ガス(排ガス)が缶体10の外部に排出される。
本実施形態の排気筒80の内部には、空気比検知部としてのO2センサ81が配置されている。O2センサ81は、排ガスの酸素濃度を検知する酸素濃度検知部である。O2センサ81は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70はO2センサ81の測定値に基づいて排ガスの酸素濃度を取得する。
次に、ボイラ2に燃料を供給する燃料供給部50について説明する。燃料供給部50は、燃料供給ライン51と、燃料ガス流量計52と、開閉弁54と、ガバナ55と、流量調整弁56と、燃料ガス温度センサ57と、燃料ガス圧力センサ58と、オリフィス59と、燃料ガス差圧センサ60と、ノズル61と、を備える。
燃料供給ライン51は、その上流側が燃料供給源(図示両略)に接続され、その下流側が給気ダクト30に接続される。燃料供給ライン51の下流側の端部は、給気ダクト30におけるダンパ31が配置された位置よりも下流側に接続される。本実施形態では、燃料供給ライン51によって流通する燃料ガスはLNGである。LNGサテライト供給によってLNG貯蔵施設に貯蔵されたLNGを気化したものが燃料供給ライン51に供給されている。
燃料ガス流量計52は、燃料供給ライン51を流れる燃料ガスの流量を測定する。本実施形態の燃料ガス流量計52は、燃料供給ライン51の最も上流側に配置されている。燃料ガス流量計52は、制御装置70に電気的に接続されている。制御装置70は燃料ガス流量計52の測定値に基づいて燃料ガスの流量を取得する。
開閉弁54は、燃料供給ライン51を開放又は閉止し、燃料ガスの供給及び停止を行う。本実施形態の開閉弁54は、燃料供給ライン51における燃料ガス流量計52の下流側に配置される。
ガバナ55は、燃料供給ライン51を流れる燃料ガスの圧力が瞬間的に大きくなる場合等の急激な圧力変動を抑制するための調圧手段である。本実施形態のガバナ55は、燃料供給ライン51における開閉弁54の下流側に配置される。
流量調整弁56は、燃料供給ライン51を流れる燃料ガスの流量を調整するものである。流量調整弁56は、開度を調整可能に構成される。本実施形態の流量調整弁56は、燃料供給ライン51におけるガバナ55の下流側に配置される。流量調整弁56は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70が流量調整弁56の開度を調節可能になっている。
燃料ガス温度センサ57は、燃料供給ライン51を流れる燃料ガスの温度を流量調整弁56の下流側で測定する。本実施形態の燃料ガス温度センサ57は、燃料供給ライン51における流量調整弁56の下流側に配置される。燃料ガス温度センサ57は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70は燃料ガス温度センサ57の温度情報を取得する。
燃料ガス圧力センサ58は、燃料供給ライン51を流れる燃料ガスの圧力を流量調整弁56の下流側で測定する。本実施形態の燃料ガス圧力センサ58は、燃料供給ライン51における燃料ガス温度センサ57の下流側に配置される。燃料ガス圧力センサ58は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70は燃料ガス圧力センサ58の圧力情報を取得する。
オリフィス59は、燃料供給ライン51を流れる燃料ガスを減圧する燃料ガス減圧部材である。本実施形態のオリフィス59は、燃料供給ライン51における燃料ガス圧力センサ58の下流側に配置される。
燃料ガス差圧センサ60は、燃料ガスの流量を検知するための燃料ガス流量検知部である。オリフィス59の上流側と下流側の圧力の差圧を検知する。流量調整弁56の下流側での燃料ガスの流量は、この燃料ガス差圧情報に基づいて算出される。燃料ガス差圧センサ60は、制御装置70に電気的に接続されており、制御装置70は燃料ガス差圧情報を取得する。
ノズル61は、燃料供給ライン51の下流側の端部に配置され、給気ダクト30への燃料ガスの噴出を行う。ノズル61から噴出された燃料ガスは、送風機20によって送られてきた燃焼用空気と混合され、この混合された混合気がバーナ15によって燃焼する。
このように、燃料供給部50は、燃料供給ライン51を通じて燃料ガスを適切な流量でボイラ2(缶体10)に供給可能になっている。
制御装置70について説明する。制御装置70は、電気的に接続される各センサからの信号に基づいて流量調整弁56や送風機20の制御を行う。制御装置70は、燃焼用空気の流量及び燃料ガスの流量を調整するための各種の制御を行う制御部71と、各種の情報が記憶される記憶部72と、を備える。
第1実施形態の制御装置70は、空気比を想定される所定範囲に維持するために、排ガスの酸素濃度を参照して流量調整弁56の制御を行う。まず、図2を参照して、燃料ガスの質量流量の変化と燃焼率の関係について説明する。図2は、燃料ガスの質量流量と排ガスの酸素濃度との関係を示すグラフである。図2では、試算条件を設定し、燃料ガスの温度変化による質量流量の変化と、燃焼率を示す排ガスの酸素濃度の割合が算出されている。なお、燃料ガスの圧力は一定として考える。
図2に示すように、燃料ガスに温度変化が生じると、燃料ガスの体積が変化し、質量流量が変化する。燃料ガスの温度が上昇した場合は燃料ガスの体積が大きくなるので燃料ガスの質量流量は小さくなり、燃料ガスの温度が下降した場合は体積が小さくなるので燃料ガスの質量流量は大きくなる。このような質量流量の変動が生じると、たとえ体積流量が一定であっても燃料ガスの燃焼に必要な燃焼用空気の理論空気量が変化し、空気比が変動する。図2に示すように、燃料ガスの質量流量が小さくなれば空気比が大きくなって排ガス中のO2濃度は高くなり、その一方、燃料ガスの質量流量が大きくなれば空気比が小さくなって排ガス中のO2濃度は低くなる。空気比は、燃焼を適切に行うためにボイラ装置1に設定されている値であり、空気比を一定に制御できなければ、過剰空気による熱損失が生じて燃焼効率が低下してしまったり、不完全燃焼によるエネルギー損失が大きくなってしまったりするおそれがある。
そこで、本実施形態の制御装置70は、空気比が適切な範囲にあるか否かを排ガスの酸素濃度に基づいて判定し、空気比が適切な範囲にある場合は通常の制御を行う制御モードを選択し、空気比が適切な範囲外の場合は空気比が適切になるように流量調整弁の開度を調整する制御モードを選択して流量調整弁56の制御を行う構成とした。次に、第1実施形態のボイラ装置1が備える制御部71の詳細な構成について説明する。図3は、制御部71の構成を示すブロック図である。図3に示すように、第1実施形態の制御部71は、制御値設定部91と、流量制御部95と、モード判定部96と、補正値設定部97と、を備える。
制御値設定部91は、流量調整弁56の開度を示す開度値を設定する。開度値は、所定条件における燃焼用空気の流量に対する燃料ガスの流量を決めるための流量調整弁56の制御値である。ここでいう所定条件とは、燃料ガスの組成に基づく基準熱量及び空気比等の予め設定される諸条件であり、燃料ガスがこの所定条件にあるものとして開度値は設定される。記憶部72には、所定条件における燃焼用空気の流量に対応する開度値を設定する関数式又はデータテーブル等が記憶されている。
流量制御部95は、流量調整弁56の開度の制御を行う。本実施形態の流量制御部95は、第1制御モード及び第2制御モードを有する。第1制御モードは、制御値設定部91によって設定された開度値に基づいて流量調整弁56の開度を制御する制御モードである。第2制御モードは、空気比が想定されている範囲から外れた場合に、後述の補正値設定部97によって設定された補正値を開度値に加えて流量調整弁56の開度を制御する制御モードである。
モード判定部96は、第1制御モードと、第2制御モードと、を切り替える判定を空気比に基づいて行う。本実施形態では、O2センサ81によって取得される排ガスの酸素濃度が空気比の状態を検知する指標として用いられる。記憶部72には、第1制御モードから第2制御モードに移行する判定条件が記憶されている。判定条件は、O2センサ81によって取得される酸素濃度が所定濃度範囲(第1範囲)にあるか否かである。この所定濃度範囲は、空気比に基づいて予め設定されており、酸素濃度がこの所定濃度範囲内にある場合は、空気比が想定されている範囲内にあると考えることができる。
補正値設定部97は、第2制御モードで開度値を補正するための補正値を設定する。補正値は、モード判定部96によって所定濃度範囲から外れたと判定されたときの酸素濃度に基づいて設定される。例えば、O2センサ81によって取得される酸素濃度が所定濃度範囲の上限を上回ったことが検知された場合は、燃料ガスの流量が大きくなる補正が行われるように補正値を設定する。同様に、所定濃度範囲の下限を下回ったことが検知された場合は、燃料ガスの流量が小さくなる補正が行われるように補正値を設定する。記憶部72には、所定濃度範囲から外れたときの酸素濃度に基づいて補正値を算出するための関数式又はデータテーブル等が記憶されている。例えば、補正値は、所定濃度範囲との上限又は下限と検知された酸素濃度との差に基づいて求めることができる。
第2制御モードが実行されている間は、補正値が加えられた開度値に基づいて流量調整弁56の制御が続行される。本実施形態の補正値は固定値であり、第2制御モードが実行されている間は常に同じ補正値が開度値に加えられる。燃焼用空気の流量が変化して開度値が新たに設定された場合でも、補正値による補正が解除されるわけではなく、開度値に補正値を加える制御が続行される。なお、ここでいう補正値を加えるとは、加減乗除を含むものであり、開度値に対して補正値を足したり、掛けたりすることも補正値を開度に加えることに含まれる。
また、本実施形態のモード判定部96は、第2制御モードに移行している状態で、開度値に補正値を加える必要がなくなったことを空気比の状態によって検知した場合に、第1制御モードに移行する処理を行う。より具体的には、第2制御モードから第1制御モードへ移行する解除条件が記憶部72に記憶されており、この解除条件に基づいて第1制御モードに移行するか否かの判定が行われる。本実施形態の解除条件は、第2制御モード移行時に検知された酸素濃度に対し、第2制御モード実行時に検知された酸素濃度が所定濃度範囲を逆側に所定回数外れることを条件としている。従って、第2制御モード移行時の状況が、所定濃度範囲の上限を上回った場合と、下限を下回った場合と、によってそれぞれ異なってくる。例えば、第2制御モードへの移行時に、酸素濃度が上限を上回って所定濃度範囲外になっている場合は、第2制御モード実行時に酸素濃度が所定濃度範囲の下限を所定回数(1回も含む)下回ると、解除条件が満たされたと判定される。同様に、第2制御モードへの移行時に、酸素濃度が下限を下回って所定濃度範囲外になっている場合は、第2制御モード実行時に酸素濃度が所定濃度範囲の上限を所定回数(1回も含む)上回ると、解除条件が満たされたと判定される。なお、解除条件における所定回数は、ボイラ装置1の運転状況に応じてその回数を適宜設定することができる。
次に、第1実施形態における流量調整弁56の制御における第1制御モードと、第2制御モードと、の切り替え処理について図4を参照して説明する。図4は、第1実施形態の制御モードを切り替える処理を示すフローチャートである。
流量調整弁56の制御が開始されると、モード判定部96は、制御モードを設定するため、O2センサ81からの測定値に基づいて排ガスの酸素濃度を取得する(S101)。そして、所定濃度範囲を参照して、取得した酸素濃度が所定濃度範囲内にあるか否かを判定する(S102)。
S102での判定の結果、取得した酸素濃度が所定濃度範囲内の場合は、モード判定部96が流量調整弁56の制御を第1制御モードに設定する(S103)。第1制御モードでは、制御値設定部91に設定された開度値に補正値を加えることなく流量調整弁56の開度が制御される。より具体的には、制御値設定部91は、エア差圧センサ33の検知信号に基づいて算出された燃焼用空気の流量を取得する。制御値設定部91は、取得した燃焼用空気の流量に対応する開度値を記憶部72から設定する。流量制御部95は、制御値設定部91によって設定された開度値に基づいて流量調整弁56の開度を制御する。燃焼用空気の流量が変動すると、新たに開度値が取得され、当該開度値に基づいて流量調整弁56の開度が制御される。
S102での判定の結果、取得した酸素濃度が所定濃度範囲外の場合は、モード判定部96が流量調整弁56の制御を第2制御モードに設定する(S104)。第2制御モードでは、制御値設定部91に設定された開度値に補正値を加えて流量調整弁56の開度が制御される。より具体的には、第2制御モードが設定されると、補正値設定部97が第2制御モードへの移行時に検知された酸素濃度に基づいて補正値を設定する。流量制御部95は、制御値設定部91によって燃焼用空気の流量に応じて設定された開度値に補正値を加える。そして、この補正値が加えられた開度値に基づいて流量調整弁56の開度が調整される。
S104の処理で第2制御モードが設定されると、モード判定部96は、O2センサ81からの測定値に基づいて排ガスの酸素濃度を取得し(S105)、取得した酸素濃度が所定濃度範囲内か否かを判定する(S106)。酸素濃度が所定濃度範囲内にある場合は、S105の排ガスの酸素濃度を取得する処理に戻る。
S106の処理で、酸素濃度が所定濃度範囲外にある場合は、第2制御モードの解除条件を満たすか否かを判定するため、第2制御モード移行時に検知された酸素濃度とは逆側で所定濃度範囲外となった回数が所定回数に達したか否かを判定する(S107)。例えば、所定濃度範囲の上限を上回って第2制御モードに移行している場合は、所定濃度範囲の下限を下回った回数が所定回数に達した場合に、解除条件を満たしたと判定する。同様に、所定濃度範囲の下限を下回って第2制御モードに移行している場合は、所定濃度範囲の上限を上回った回数が所定回数に達した場合に、解除条件を満たしたと判定する。
S107の処理で、第2制御モードの解除条件を満たしていた場合は、モード判定部96は、流量調整弁56の制御を第1制御モードに設定するS103の処理に移行する。一方、解除条件を満たしていなかった場合は、排ガスの酸素濃度を取得するS105の処理に戻る。なお、酸素濃度が逆側で所定濃度範囲外になったものの回数が所定回数に達していない場合は、S107の処理でカウント値に加算される処理が行われ、S105の処理に戻る。このカウント値は、所定回数に達したか否かを判定するためのもので、このカウント値が所定回数になると解除条件が満たされたと判定される。また、このカウント値は、所定時間経過後や、解除条件を満たした場合、適宜のタイミングでリセットされる構成とすることができる。
以上の処理により、燃焼状況に応じた適切な制御モードで流量調整弁56の開度が制御される。流量調整弁56によって適切な流量に調整された燃料ガスは、燃料供給ライン51を介して給気ダクト30に送られる。給気ダクト30の内部にノズル61を介して供給された燃料ガスは、送風機20により給気ダクト30に送り込まれた燃焼用空気と混合される。燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスは、バーナ15から缶体10の内部に噴出され、燃焼される。本実施形態では、質量変動や熱量変動等によって空気比が想定されている範囲から外れた場合は、第2制御モードに移行して流量調整弁56の開度が適切に調整されるので、LNGサテライト供給のような外部環境の影響を受けやすい場合でも、安定的なボイラ2の稼動を実現できる。
そして、バーナ15による混合ガスの燃焼に伴って発生する熱により、下部ヘッダ13から複数の水管12の内部に供給された水が加熱され、蒸気が生成される。複数の水管12の内部において生成された蒸気は、上部ヘッダ14に集合された後、蒸気導出管(図示省略)を介して外部に導出され、負荷機器(図示省略)に供給される。また、混合ガスの燃焼により生じた燃焼ガスは、排気筒80から外部に排出される。
以上説明した第1実施形態のボイラ装置1によれば、以下のような効果を奏する。
第1実施形態のボイラ装置1は、エア差圧センサ33によって検知された燃焼用空気の流量に対応する開度値(制御値)を設定する制御値設定部91と、開度値に基づいて流量調整弁56を制御する第1制御モードと、開度値に補正値を加えて流量調整弁56を制御する第2制御モードと、を有する流量制御部95と、流量調整弁56が第1制御モードで制御されている状態で、O2センサ81によって検知された測定値が所定濃度範囲(第1範囲)の上限を上回る又は下限を下回る場合に、第1制御モードから第2制御モードに移行させるモード判定部96と、モード判定部96によって第1範囲の上限を上回る又は下限を下回ると判定された測定値に基づいて補正値を設定する補正値設定部97と、を備える。
これにより、空気比が想定される範囲から外れている場合は、第2制御モードによって流量調整弁56の開度が補正値を加えられて適切に調整されるので、想定される範囲から空気比が外れていくことによって生じる燃焼効率の低下や不完全燃焼の発生を効果的に抑制できる。従って、ボイラ2の運転を停止させる必要がないような一時的な空気変動によってボイラ2の運転が停止する事態も効果的に防止できる。また、空気比が想定される範囲内の場合は、補正を行うことなく開度値に基づいて制御が行われるので、流量調整弁56の制御するための処理を効率良く行うことができる。
また、本実施形態のモード判定部96は、所定濃度範囲の上限を上回り第2制御モードに移行している状態でO2センサ81によって検知された測定値が所定濃度範囲の下限を所定回数下回った場合に、流量調整弁56の制御を第2制御モードから第1制御モードに移行させる。また、モード判定部96は、所定濃度範囲の下限を下回り第2制御モードに移行している状態で、O2センサ81によって検知された測定値が所定濃度範囲の上限を所定回数上回った場合に、流量調整弁56の制御を第2制御モードから第1制御モードに移行させる。
これにより、補正値を加えなくても空気比が想定される範囲で制御される場合は、第2制御モードが解除されるので、空気比の状況が変わった場合でも柔軟に対応できる現実の状況に応じた流量調整弁56の制御を実現できる。
また、本実施形態のボイラ装置1は、燃料ガスの燃焼によって生じる排ガスをボイラ2から排出する排気筒80を更に備え、空気比を検知するための空気比検知部は、排気筒80に配置され、排ガスの酸素濃度を検知するO2センサ81である。
これにより、排ガスの酸素濃度に基づいて流量調整弁56の開度が制御されることになるので、ボイラ2での実際の燃焼状況に応じて燃料ガスを適切な流量でボイラ2に供給ででき、空気比の制御をより精密に行うことができる。
次に、第2実施形態のボイラ装置について説明する。第2実施形態のボイラ装置は、第2制御モード実行時に、所定の停止条件を満たした場合は、ボイラ2の運転を停止する処理を行う点が、第1実施形態のボイラ装置1と異なる。図5は、第2実施形態の制御モードを切り替える処理を示すフローチャートである。なお、S201からS206までの処理は、第1実施形態で説明したS101からS106までの処理と同様なので、その詳細な説明は省略する。
図5に示すように、第2制御モードにおいて、解除条件を判定した結果、第2制御モードを続行する場合の処理が第1実施形態と異なる。S207の処理で、第2制御モード移行時とは逆側で所定回数だけ所定濃度範囲外となっていなかった場合は、ボイラ2の運転を停止するか否かの判定を行うS208の処理に進む。
S208では、ボイラ2の運転を停止する停止条件を満たすか否かが判定される。本実施形態の停止条件は、第1制御モードから第2制御モードへの移行時における所定濃度範囲外となった酸素濃度が、同じ側で所定回数外れることを条件とする。例えば、O2センサ81の測定値が所定濃度範囲の上限を上回って第1制御モードから第2制御モードへの移行が行われている場合は、第2制御モード実行時に酸素濃度が所定濃度範囲の上限を複数回、上回ると、モード判定部96は停止条件が満たされたと判定する。即ち、補正値を加えても所定濃度範囲から同じ方向に外れている場合には、ボイラ2の燃焼に異常が発生していると判断するのである。同様に、所定濃度範囲の下限を下回って第2制御モードへの移行が行われている場合は、第2制御モード実行時に酸素濃度が所定濃度範囲の下限を複数数、下回ると、モード判定部96は停止条件が満たされたと判定する。
S208の処理で、モード判定部96が停止条件を満たすと判定した場合は、ボイラ2の運転を停止し(S209)、流量調整弁56を制御する処理を終了する。一方、停止条件を満たさないと判定した場合は、排ガスの酸素濃度を取得するS205の処理に戻る。なお、S208の処理で酸素濃度が所定濃度範囲外になった回数が所定回数に満たない場合は、その回数をカウントしてS205の処理に戻る。このカウント値が所定回数に達したときに、停止条件が満たされることになる。また、このカウント値は、所定時間経過後や、ボイラ2の稼動停止後等の適宜のタイミングでリセットされる構成とすることができる。更に、停止条件における所定回数は、ボイラ装置1の運転状況に応じてその回数を適宜設定することができる。なお、第2実施形態のその他の構成及び制御については、第1実施形態と同様である。
以上説明した第2実施形態のボイラ装置によれば、以下のような効果を奏する。
第2実施形態のボイラ装置では、モード判定部96が以下の制御を行う。即ち、モード判定部96は、所定濃度範囲の上限を上回り第2制御モードに移行している状態で、O2センサ81によって検知された測定値が所定濃度範囲の上限を所定回数上回った場合に、ボイラ2の運転を停止させ、所定濃度範囲の下限を下回り第2制御モードに移行している状態で、O2センサ81によって検知された測定値が所定濃度範囲の下限を所定回数下回った場合に、ボイラ2の運転を停止させる。
これにより、第2制御モードによって開度値に補正を行っても空気比が所定濃度範囲から同じ側に外れ続けていく場合は、ボイラ2に異常が発生していると判定され、ボイラ2の運転が自動的に停止されるので、効率性を維持しつつ、ボイラ2のより安全な運転制御を実現できる。
次に、第3実施形態のボイラ装置について説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
第3実施形態のボイラ装置は、質量流量の変動に基づいて空気比の変動を検知する点が第1実施形態の構成と異なる。第3実施形態の燃料ガス流量計52は、質量流量を測定する質量流量計として構成されている。図3を参照して説明したように、質量流量の変動は、燃焼状況に影響を与えて空気比を変動させる。そこで、第3実施形態の制御部は、燃料ガス流量計52によって検知される質量流量の変動に基づいて空気比の状況を検知する構成とした。
第3実施形態の制御部は、燃料ガス流量計52によって検知される質量流量に基づいて第1制御モードと、第2制御モードと、を切り替える。第3実施形態の判定条件は、燃料ガス流量計52によって検知される質量流量が予め設定される所定質量流量範囲(第1範囲)にあるか否かである。この所定質量流量範囲は、この所定質量流量範囲から外れた場合は空気比が想定される範囲から外れたと判断できるように、空気比と対応付けて設定される。モード判定部96は、燃料ガス流量計52の測定値と、所定質量流量範囲と、を比較して、第1制御モード及び第2制御モードの何れを流量調整弁56の制御モードに選択するか判定する。
第2制御モードが設定された場合は、第1実施形態と同様に、第2制御モード移行時に検知された燃料ガス流量計52の測定値に基づいて補正値を設定する。例えば、燃料ガス流量計52によって取得された質量流量が所定質量流量範囲の上限を上回った場合は、燃料ガスの流量(体積流量)が小さくなるように開度値を補正する補正値を設定する。同様に、燃料ガス流量計52によって取得された質量流量が所定質量流量範囲の下限を下回った場合は、燃料ガスの流量が大きくなるように開度値を補正する補正値を設定する。このように、第3実施形態では、質量流量に基づいて空気比の状況を判断し、空気比の状況に応じた流量調整弁56の制御が行われる。なお、第3実施形態のその他の構成及び制御については、第1実施形態と同様である。
以上説明した第3実施形態のボイラ装置によれば、以下のような効果を奏する。
第3実施形態のボイラ装置における空気比検知部は、燃料供給ライン51に配置され、燃料ガスの質量流量の変動を検知する燃料ガス流量計52である。これにより、質量流量の変動を原因とする空気比の変動の影響を抑制し、安定的かつ効率的な燃焼制御を実現できる。
次に、第4実施形態のボイラ装置401について説明する。図6は、第4実施形態のボイラ装置401を模式的に示す図である。なお、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する場合がある。
図6に示すように、第4実施形態のボイラ装置401は、第1実施形態の構成に加え、熱量検知部としてのカロリメータ53を更に備える。第4実施形態のボイラ装置は、カロリメータ53によって検知される熱量変動に基づいて空気比の変動を検知する点が第1実施形態の構成と異なる。燃焼用空気の供給量に対する燃料ガスの必要供給量は、基準熱量に基づいて設定されるため、熱量が変動すれば、燃焼用空気の供給量に対する燃料ガスの必要供給量も変動し、空気比が変動する。第4実施形態では、熱量変動を原因とする空気比の変動をカロリメータ53の測定値に基づいて検知し、流量調整弁56の制御に反映させる構成とした。
第4実施形態の制御部471は、カロリメータ53の測定値に基づいて第1制御モードと、第2制御モードと、を切り替える。第4実施形態の判定条件はカロリメータ53によって検知される熱量が予め設定される所定熱量範囲(第1範囲)にあるか否かである。所定熱量範囲は、この所定熱量範囲から外れた場合は空気比が想定される範囲から外れたと判断できるように、空気比と対応付けて設定される。モード判定部96は、カロリメータ53の測定値と、所定熱量範囲と、を比較して、第1制御モード及び第2制御モードの何れかを設定するか判定する。
第2制御モードが設定された場合は、第1実施形態と同様に、第2制御モード移行時に検知されたカロリメータ53の測定値に基づいて補正値を設定する。例えば、カロリメータ53によって取得された熱量が所定熱量範囲の上限を上回った場合は、燃料ガスの流量(体積流量)が小さくなるように開度値を補正する補正値を設定する。同様に、カロリメータ53によって取得された熱量が所定熱量範囲の下限を下回った場合は、燃料ガスの流量が大きくなるように開度値を補正する補正値を設定する。このように、第4実施形態では、熱量に基づいて空気比の状況を判断し、空気比の状況に応じた流量調整弁56の制御が行われる。なお、第4実施形態のその他の構成及び制御については、第1実施形態と同様である。
以上説明した第4実施形態のボイラ装置401によれば、以下のような効果を奏する。
第4実施形態のボイラ装置401における空気比検知部は、燃料供給ライン51に配置され、燃料ガスの熱量を検知するカロリメータ53である。これにより、熱量の変動を原因とする空気比の変動の影響を抑制し、安定的かつ効率的な燃焼制御を実現できる。
以上、本発明のボイラ装置の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、制御値を目標流量として、燃料ガス差圧センサ60によって検知される燃料ガスの流量に基づいて流量調整弁56の開度をフィードバック制御する構成に、本発明を適用することができる。この場合、補正値が加えられる対象は、制御値である目標流量になる。また、第1実施形態の制御モードを切り替える処理は、バーナ15の着火開始後、燃焼制御が安定してから開始する処理とすることもできる。また、第3実施形態では、燃料ガス流量計52によって質量流量の変動を検知する構成であるが、質量流量の変動を検知する構成は、事情に応じて適宜変更することができる。例えば、燃料ガス温度センサ57及び燃料ガス圧力センサ58によって検知する温度情報及び圧力情報に基づいて質量流量の変動を検知する構成としてもよい。このように、空気比検知部は、空気比を直接的又は間接的に検知できる構成であればよく、事情に応じて適宜変更することができる。また、補正値の算出処理は、上記実施形態の処理に限定されるわけではなく、空気比検知部によって検知された測定値に基づいて算出する方法であれば適宜変更できる。
上記実施形態では、燃料ガスがLNGサテライト供給によって供給される構成を採用しているが、燃料ガスや燃料ガスの供給源は適宜変更することができる。例えば、燃料供給事業者からパイプラインを通じて直接的に燃料ガスが供給される構成にも本発明を適用することができる。