JP6412458B2 - 超音波センサ - Google Patents
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Description
これは、呼吸による胸郭の動きは吸気時と呼気時で高々1cm程度の差であり、一般的なパルス幅である数百[ns]の超音波を送信してもTOFの差は数十[ns]にとどまり、正確に測定するには精密な測距装置が求められるからである。さらには、人体表面は平面ではないことに加え、壁や家具からの反射音が重畳されるため、反射波は鋭いパルス状にはならず、強度ピークが不規則に連続する波形として観察される。よっていずれの強度ピークが人体表面で反射したものかの判別はしにくいという問題があった。また就寝中の人物は寝返りを打つことがあり反射波が乱れるため、寝返りなども含めた統一的な処理で判断をする必要があった。
本実施の形態にかかる生体検知装置は、特に就寝動作や就寝中の人物の呼吸の状況などを把握するもので、呼吸停止などの異常状態を検知して外部に通報することを目的とする。
生体検知装置1は、超音波センサ100と装置本体200から構成され、両者は無線にて通信する機能を有している。また超音波センサ100は、ベッド11が置かれている床面から2.5[m]の高さに、図示しない取り付け器具にて設置、固定されているとする。
符号13の矢印は超音波の送信方向であり人物10がいる方向に送信される。また超音波センサ100は、人物10または布団12の表面にて反射した反射波を受信するが、実際には符号14の矢印に示す人物10までの最短距離の反射波のみならず、人物10または布団12の表面の各所、あるいは図示しない壁や家具にて反射した反射波が重畳される。なお、超音波は布団12を一部透過し、人物10の表面にて反射することが実験で確認されている。
図2に示すように、超音波センサ100は、送受波制御部105、送波部110、受波部115、強度算出部120、強度情報バッファ125、強度変化算出部130、反射場情報生成部135、無線送信部140、電池145から構成される。
送波部110は、送受波制御部105からの超音波の出力用の制御信号を受けると、周波数40[kHz]、長さ500[ns]の超音波パルスを出力する。出力する超音波パルスは周波数と長さが別の値のものを用いてもよい。これらの値は送波部110や受波部115によって適宜好適なものを採用する。超音波パルスのパルス幅は距離分解能の観点からは短い方が良いが、検波処理のしやすさからは長い方がよい。これらのバランスから決定される。
強度算出部120は、まず受波部115から出力された反射波のデジタル信号に対して40[kHz]の正弦波を乗算して周波数シフト処理を行い、適宜後続の処理に好適なダウンサンプリング処理を行った後に、出力を2乗して反射強度系列とする。本実施の形態では102[kHz]から3.4[kHz]にダウンサンプリングすることで、測定間隔として5[cm]ごとの反射強度の情報を得ることにする。これらのサンプリング周波数やダウンサンプリングレートは、強度情報をどれくらいの間隔で必要かで適宜変更が可能である。
これら反射強度系列を求める処理は当該分野では公知であるので詳細は省略する。
符号31aは超音波センサ100からの距離が50[cm]の位置での反射強度、以下同様に符号31bは距離が100[cm]の位置での反射強度、符号31cは距離が150[cm]の位置での反射強度、符号31dは距離が200[cm]の位置での反射強度、符号31eは距離が250[cm]の位置での反射強度、符号31fは距離が300[cm]の位置での反射強度を表す。
強度算出部120は、作成した強度情報を強度情報バッファ125および強度変化算出部130に出力する。
一時記憶される強度情報は、一計測時刻前(200[ms]前)で取得されたものとする。一計測時刻以上過去の計測時刻、例えば10[s]前までの強度情報を逐次記憶してもよい。
記憶された強度情報は、強度変化算出部130にて、その変化を求めるために用いられる。
図4(a)には、強度情報バッファ125に記憶されている強度情報40が示されている。図4(b)には、最新の計測時刻にて得られた強度情報42が示されている。なお、図4の強度情報では、説明の都合上、距離が3[m]の範囲までのみを示している。
強度変化算出部130は、2つの強度情報40、42について、同じ距離における反射強度の値を比較して変化量を求め、反射場情報生成部135に出力する。
強度変化算出部130は、強度情報バッファ125に記憶されている一計測時刻前の強度情報と最新の強度情報を比較して変化量を求めるが、さらに過去の計測時刻の強度情報との変化量を求めたり、指定時間にわたる強度情報の分散値や、平均値からの差分の絶対値の最大値としても良い。
反射場情報とは、図4(c)に示すように、強度情報42に、強度変化算出部130が算出した強度変化のフィールド(符号45)を追加したものである。
つまり反射場情報44は、超音波センサ100からの超音波の送信方向の距離ごとに、その距離の位置における反射波の強度と、その時間変化である強度変化から成り、後述するように、装置本体200において当該反射場情報を参照することで図1の模式図における人物10が超音波センサ100からどのくらいの距離に位置しているか、およびその人物10がどのような状態であるかの判定に用いられる。
反射場情報44は、図1の模式図に示すように超音波センサ100と人物10の間にある超音波が伝播する空間、およびその周辺の空間がどのような伝達特性と反射特性を示しているのかを表すものであり、人物10の状態判定に有用な情報である。特に反射場情報には強度変化45をフィールドに持つので、距離の変化を捉えるよりも反射体の状態の変化を微細に捉えることが可能となっている。
反射場情報生成部135は、生成した反射場情報を無線送信部140に出力する。
電池145は、超音波センサ100を構成する各部が動作するための駆動電源である。これまで述べてきたように、超音波センサ100の構成はシンプルなものであり各部の処理負荷は低いので電池駆動が可能である。送波部110が遠距離まで届く超音波を出力することが求められるなどの事情がある場合には、適宜AC電源に置き換えてもよい。
図5に示すように、装置本体200は、パラメータ記憶部205、無線受信部215、反射場情報記憶部220、反射体距離範囲特定部225、反射体距離位置特定部210、判定部230、通報部235、電源240から構成されている。
これら各構成要素は、公知のハードウェアにて、またはCPU上で動作するソフトウェアモジュールにて実現される。
図6には、図4(c)と同様の反射場情報49が示されている。ただし、図4(c)とは異なり、距離範囲フラグ46のフィールドが追加されている。
距離範囲フラグ46とは、図6では強度変化45の値を参照して、その値が強度変化閾値以上である距離には“1”、強度変化閾値未満の距離には“0”が付与される。本実施の形態では強度変化閾値を0.5とする。そして図6の反射場情報49では、“1”が付与された最小の距離は170cmであり、最大の距離は210cmであるので、170cmから210cmが反射体距離範囲47である。
また反射体距離範囲が活動状態距離(本実施の形態では1[m]とする)以上の長さとして特定された場合には、後述するように反射体(人物10)はベッド11の上で単に横臥しているよりも大きな動きである活動状態であると判定される。
判定部230は、反射体距離範囲特定部225が反射体距離範囲47を特定すると、反射体距離特定部210が特定した超音波センサ100からベッド11の表面までの距離である設置距離その特定された反射体距離範囲、反射体距離範囲の長さ、反射体距離範囲47に含まれる強度変化45の値を参照して、人物10の状態を判定する。
活動状態とは、人物10がベッド11の上で横臥して通常の安静状態程度の反射強度よりも大きな反射強度を示しており、通常の安静状態や寝返りを打つのではなく、人物10が入室後にベッド11に近づいているような大きな動作にて活動していることを表すものである。本実施の形態では活動閾値は0.5、活動状態距離は1[m]として、通常の安静状態や寝返りを打つこととは区別するものとする。
なお、当該平均値の代わりに、強度変化45の絶対値の分散や、反射強度48の絶対値の平均値や分散値を併用してもよい。以下の判定部230の説明においては同様である。
本実施の形態では、設置距離が195[cm]と特定されているので、超音波センサ100からの距離が5[m]、あるいは3[m]という距離の近辺に着目すれば良い。
図6に示す反射場情報49がその状態を表しており、本実施の形態の設置距離195[cm]の位置を含む170〜210[cm]の範囲に反射体距離範囲47が特定されており、その範囲の強度変化の平均値は、活動閾値の0.5より大きい0.59、反射体距離範囲47は40cmである。よって、判定部230は、ベッド11の上で人物10が横たわり、就寝しようと布団12をかける動作をしているなどの多少体を動かしていると判定する。横臥距離とは、人物10がベッド11の上で多少の動きをしている場合に、強度変化が検出される距離として、横臥した人の厚みや布団の厚み、および身長などを考慮して適宜決定される閾値であり、本実施の形態では50[cm]とする。
すなわち、人物10は横臥した後に大きな動作を止めるものの、呼吸に伴う胸郭の動き程度しか動きを示さないことを意味している。本実施の形態では安静判定時間を10[s]、安静閾値を0.1とする。別途タイマーを備えて参照しても良い。
なお、判定部230は、安静判定時間よりも短い体位変換時間(例えば3[s])にわたって横臥状態になったものの、すぐその後に再び安静状態を判定すると、寝返りを打ったと判定しても良い。
すなわち、人物10は横臥した後に大きな動作を止めるものの、呼吸に伴う胸郭の動き程度の動きすら示さないことを意味しており、人物10の呼吸が止まった可能性があるとして直ちに外部へ通知する必要があるからである。本実施の形態では停止判定時間を1分とする。別途タイマーを備えて参照しても良い。
判定部230は、判定結果を通報部235に出力する。
超音波センサ100の動作は、図2のブロック図の説明において、構成要素を順を追って説明しているので省略する。
図7は、装置本体200の動作を示す状態遷移図である。一回の判定処理が行われる度に状態の変化の有無が決定される。
本実施の形態では、装置本体200が判定する人物10の状態SはS1からS6までの6種類とする。
状態S1は、不在状態であり、超音波センサ100が設置された部屋に、人物10が居ない状態である。
状態S2は、活動状態であり、部屋に人物10が居て、入室後、ベッド11に接近するなど、ベッド11以外の場所で活動中であることを示している。
状態S3は、在室静止状態であり、部屋に人物10が居て、立ち止まるなど、状態S2よりも動きが小さいことを示している。
状態S4は、横臥状態であり、人物10がベッド11に横たわっていたり、布団をかけようとするなどの大きな動きを示している。
状態S5は、横臥微動有状態であり、人物10がベッド11に横たわって安静にしており、睡眠中で呼吸による微動が見られることを示している。
状態S6は、横臥微動無状態であり、人物10がベッド11に横たわっているが、呼吸による微動が見られない異常状態であることを示している。
装置本体200の電源が投入されて、各構成要素に電源が供給されると、動作を開始する。この時点では超音波センサ100が設置された部屋に人物10は存在しないとする(状態S1)。
装置本体200は、順次超音波センサ100から、反射場情報を受信して反射場情報記憶手段記憶部220に記憶するとともに、反射体距離範囲特定部225は、強度変化45が大きい範囲を特定し、反射体距離範囲が存在するか否かを判定する。
また、反射体距離特定部210は、反射強度48を参照して、その最大値が概略時間変化しない距離を設置距離とする。これは、過去の動作時から、ベッドが移動したなどの設置距離が変化することも考えられるので、無人状態になるたびに設置距離を求めるのが好適である。
当該平均値が活動閾値未満であり安静閾値以上の場合には、人物10が在室して静止状態であるとして状態S3の静止状態に移行する。
反射体距離範囲が設置距離の位置を含み、その長さが横臥距離以内の場合には人物10がベッド11の上にて横臥しているとして状態S4の横臥状態に移行する。
これらの条件が満たされない場合状態S2を維持する。
判定部230は、状態S4になった後、反射体距離範囲特定部が反射体距離範囲を特定したが、設置距離の位置を含まない場合、またはそれが横臥距離を越える長さの場合にはベッドを離れたとして状態S2に移行する。
判定部230は、状態S4になった後、当該平均値が活動閾値以上の場合には、布団をかけようとしているなどの横臥しながらの動きをしているとして状態S4を維持する。
判定部230は、状態S4になった後、上記いずれの条件を満たさないと状態S5の横臥微動有状態へ移行する。
判定部230は、状態S6の横臥微動無状態の維持が停止判定時間以上にわたって繰り返された場合には、人物10の呼吸が止まった可能性があるとして異常判定をする。
判定部230にて、人物10の異常が判定されると通報部235は外部にその旨を出力する。
図2および図5と比較すると無線通信に関する構成要素が省略されるが、その他の構成要素は、名称と付与した符号が同じであれば、これまで述べてきた実施の形態と同じ構成要素として実現できる。
そのため、人が居ない状態と、人がベッド上に居て、かつ、呼吸が停止している状態とを正確に判定することが出来るので、人が不在で呼吸停止の異常判定するといった誤った判定を避けることができる。
周波数スイープ信号とは、図9のグラフ500に示すように、振幅は一定ながらも周波数が時間的に変化する性質を有する信号であり、周波数はグラフ501のように低下していく。強度算出部120では、受信した反射波からインパルス信号を生成して強度を算出する。このような信号を用いることで、単純なパルス信号を出力するよりも受信パワーを確保でき、測距結果の分解能が向上することが知られている。周波数を40[kHz]から24[kHz]の幅で周波数を変化させることで、超音波センサからの距離について約1cmの測定間隔とできる。
周波数スイープ信号を出力し、受信した反射波からインパルス信号を生成して、反射強度系列を求める方法などについては当該分野においては適宜公知の方法を採用すればよいので、詳細は省略する。
このように、本発明の範囲を超えない形態にて実現が可能となる。
130・・・強度変化算出部
135・・・反射場情報生成部
225・・・反射体距離範囲特定部
230・・・判定部
235・・・通報部
Claims (6)
- 超音波の送信波を出力する送波部と、
前記送信波が人体に反射した反射波を受信する受波部と、
前記反射波の反射強度を算出する強度算出部と、
前記反射強度の強度変化量を算出する強度変化算出部と、
一の前記送信波に対する一又は複数の前記反射波ごとに、前記送信波の送信方向における距離情報、前記反射強度、および前記強度変化量を対応させたデータ構造を有する反射場情報を生成する反射場情報生成部と、
強度変化閾値以上である前記強度変化量に対応した前記距離情報の最大と最小から定まる範囲を前記人体に対応した反射体距離範囲として特定する反射体距離範囲特定部と、
前記反射場情報と前記反射体距離範囲を用いて前記人体の状態を判定する判定部を有し、
前記判定部は、前記反射体距離範囲が特定されないと前記人体の不存在を判定する一方で、活動状態距離以上の長さの前記反射体距離範囲が特定され、該反射体距離範囲の前記強度変化量が活動閾値以上のとき前記人体の活動状態を判定する
ことを特徴とした超音波センサ。
- 前記超音波センサは、さらに、反射強度閾値以上である前記反射強度を参照し、当該反射強度の前記距離情報が略時不変な距離を、前記人体の状態を判定するための基準面までの距離を表す設置距離に決定する反射体距離位置特定部を有し、
前記判定部は、さらに、前記人体の不存在を判定した後に、前記設置距離以上離隔した位置にて前記反射体距離範囲が特定され、当該反射体距離範囲の強度変化量が活動閾値以上のとき、人体の新規出現を判定する請求項1に記載の超音波センサ。
- 前記超音波センサは、前記基準面の上方に前記設置距離の高さの位置に略鉛直下向きに設置され、
前記判定部は、さらに、前記人体の新規出現を判定した後に、前記反射体距離範囲特定部が前記反射体距離範囲を前記設置距離の位置を含む前記活動状態距離よりも短い横臥距離以内の長さに特定すると、前記人体の前記基準面における横臥状態を判定する請求項2に記載の超音波センサ。
- 前記判定部は、さらに、前記人体の横臥を判定した後に、前記反射体距離範囲における前記強度変化量が安静判定時間にわたり前記活動閾値未満、かつ該活動閾値より小さな安静閾値以上であると、当該人体の安静状態を判定する請求項3に記載の超音波センサ。
- 前記判定部は、さらに、前記人体の安静状態を判定した後、体位変換時間にわたり当該人体の横臥状態を判定して再び当該人体の安静状態を判定すると、当該人体の寝返り動作を判定する請求項4に記載の超音波センサ。
- 前記判定部は、さらに、前記人体の横臥状態を判定した後に、停止判定時間にわたり前記反射体距離範囲における前記強度変化量が前記安静閾値未満であると、当該人体の異常を判定する請求項3または4に記載の超音波センサ。
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