以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1実施形態]
図1及び図2に示されるように、分光器1Aは、光検出素子20と、支持体30と、第1反射部11と、第2反射部12と、分光部40と、カバー50と、を備えている。光検出素子20には、光通過部21、光検出部22及び0次光捕捉部23が設けられている。支持体30には、光検出部22に対して電気信号を入出力するための配線13が設けられている。支持体30は、光通過部21、光検出部22及び0次光捕捉部23との間に空間Sが形成されるように光検出素子20に固定されている。一例として、分光器1Aは、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれの方向の長さが10mm以下である直方体状に形成されている。なお、配線13及び支持体30は、成形回路部品(MID:Molded Interconnect Device)として構成されたものである。
光通過部21、第1反射部11、第2反射部12、分光部40、光検出部22及び0次光捕捉部23は、光通過部21を通過する光L1の光軸方向(すなわち、Z軸方向)から見た場合に、X軸方向に延在する基準線RLに沿って並んでいる。分光器1Aでは、光通過部21を通過した光L1は、第1反射部11及び第2反射部12で順次反射されて分光部40に入射し、分光部40で分光されると共に反射される。そして、分光部40で分光されると共に反射された光のうち、0次光L0以外の光L2は、光検出部22に入射して光検出部22で検出され、0次光L0は、0次光捕捉部23に入射して0次光捕捉部23で捕捉される。光通過部21から分光部40に至る光L1の光路、分光部40から光検出部22に至る光L2の光路、及び分光部40から0次光捕捉部23に至る0次光L0の光路は、空間S内に形成される。
光検出素子20は、基板24を有している。基板24は、例えば、シリコン等の半導体材料によって矩形板状に形成されている。光通過部21は、基板24に形成されたスリットであり、Y軸方向に延在している。0次光捕捉部23は、基板24に形成されたスリットであり、光通過部21と光検出部22との間においてY軸方向に延在している。なお、光通過部21における光L1の入射側の端部は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向において、光L1の入射側に向かって末広がりとなっている。また、0次光捕捉部23における0次光L0の入射側とは反対側の端部は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの方向において、0次光L0の入射側とは反対側に向かって末広がりとなっている。0次光L0が0次光捕捉部23に斜めに入射するように構成することで、0次光捕捉部23に入射した0次光L0が空間Sに戻るのをより確実に抑制することができる。
光検出部22は、基板24における空間S側の表面24aに設けられている。より具体的には、光検出部22は、基板24に貼り付けられているのではなく、半導体材料からなる基板24に作り込まれている。つまり、光検出部22は、半導体材料からなる基板24内の第一導電型の領域と、該領域内に設けられた第二導電型の領域とで形成された複数のフォトダイオードによって、構成されている。光検出部22は、例えば、フォトダイオードアレイ、C−MOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等として構成されたものであり、基準線RLに沿って並んだ複数の光検出チャネルを有している。光検出部22の各光検出チャネルには、異なる波長を有する光L2が入射させられる。基板24の表面24aには、光検出部22に対して電気信号を入出力するための複数の端子25が設けられている。なお、光検出部22は、表面入射型のフォトダイオードとして構成されていてもよいし、或いは裏面入射型のフォトダイオードとして構成されていてもよい。
支持体30は、ベース壁部31と、一対の側壁部32と、一対の側壁部33と、を有している。ベース壁部31は、空間Sを介して、Z軸方向において光検出素子20と対向している。ベース壁部31には、空間S側に開口する凹部34、空間S側とは反対側に突出する複数の凸部35、及び空間S側とその反対側とに開口する複数の貫通孔36が形成されている。一対の側壁部32は、空間Sを介して、X軸方向において互いに対向している。一対の側壁部33は、空間Sを介して、Y軸方向において互いに対向している。ベース壁部31、一対の側壁部32及び一対の側壁部33は、AlN、Al2O3等のセラミックによって一体的に形成されている。
第1反射部11は、支持体30に設けられている。より具体的には、第1反射部11は、ベース壁部31における空間S側の表面31aのうち所定角度で傾斜する平坦な傾斜面37に、成形層41を介して設けられている。第1反射部11は、例えば、Al、Au等の金属蒸着膜からなり且つ鏡面を有する平面ミラーであり、空間Sにおいて、光通過部21を通過した光L1を第2反射部12に対して反射する。なお、第1反射部11は、成形層41を介さずに、支持体30の傾斜面37に直接形成されていてもよい。
第2反射部12は、光検出素子20に設けられている。より具体的には、第2反射部12は、基板24の表面24aのうち光通過部21と0次光捕捉部23との間の領域に、設けられている。第2反射部12は、例えば、Al、Au等の金属蒸着膜からなり且つ鏡面を有する平面ミラーであり、空間Sにおいて、第1反射部11で反射された光L1を分光部40に対して反射する。
分光部40は、支持体30に設けられている。より具体的には、以下のとおりである。すなわち、ベース壁部31の表面31aには、凹部34を覆うように成形層41が配置されている。成形層41は、凹部34の内面34aに沿って膜状に形成されている。内面34aのうち球面状の領域に対応する成形層41の所定領域には、例えば、鋸歯状断面のブレーズドグレーティング、矩形状断面のバイナリグレーティング、正弦波状断面のホログラフィックグレーティング等に対応するグレーティングパターン41aが形成されている。成形層41の表面には、グレーティングパターン41aを覆うように、例えば、Al、Au等の金属蒸着膜からなる反射膜42が形成されている。反射膜42は、グレーティングパターン41aの形状に沿って形成されており、この部分が、反射型グレーティングである分光部40となっている。なお、成形層41は、成形材料(例えば、光硬化性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン、有機・無機ハイブリッド樹脂等のレプリカ用光学樹脂等)に成形型を押し当て、その状態で、成形材料を硬化(例えば、UV光等による光硬化、熱硬化等)させることで、形成される。
以上のように、分光部40は、ベース壁部31の表面31aのうち凹部34の内面34aに、設けられている。分光部40は、基準線RLに沿って並んだ複数のグレーティング溝を有しており、空間Sにおいて、第2反射部12で反射された光L1を光検出部22に対して分光すると共に反射する。なお、分光部40は、上述したように、支持体30に直接形成されたものに限定されない。例えば、分光部40と、分光部40が形成された基板と、を有する分光素子が、支持体30に貼り付けられることで、分光部40が支持体30に設けられていてもよい。
各配線13は、光検出部22側の端部13aと、光検出部22側とは反対側の端部13bと、接続部13cと、を有している。各配線13の端部13aは、光検出素子20の各端子25と対向するように、各側壁部32の端面32aに位置している。各配線13の端部13bは、ベース壁部31における空間S側とは反対側の表面31bのうち各凸部35の表面に、位置している。各配線13の接続部13cは、各側壁部32における空間S側の表面32b、ベース壁部31の表面31a、及び各貫通孔36の内面において、端部13aから端部13bに至っている。このように、配線13が支持体30における空間S側の表面を引き回されることで、配線13の劣化を防止することができる。
対向する光検出素子20の端子25と配線13の端部13aとは、例えば、Au、半田等からなるバンプ14によって接続されている。分光器1Aでは、複数のバンプ14によって、支持体30が光検出素子20に固定されていると共に、複数の配線13が光検出素子20の光検出部22に電気的に接続されている。このように、各配線13の端部13aは、光検出素子20と支持体30との固定部において、光検出素子20の各端子25に接続されている。
カバー50は、光検出素子20の基板24における空間S側とは反対側の表面24bに固定されている。カバー50は、光透過部材51と、遮光膜52と、を有している。光透過部材51は、例えば、石英、硼珪酸ガラス(BK7)、パイレックス(登録商標)ガラス、コバールガラス等、光L1を透過させる材料によって、矩形板状に形成されている。遮光膜52は、光透過部材51における空間S側の表面51aに形成されている。遮光膜52には、Z軸方向において光検出素子20の光通過部21と対向するように、光通過開口52aが形成されている。光通過開口52aは、遮光膜52に形成されたスリットであり、Y軸方向に延在している。分光器1Aでは、遮光膜52の光通過開口52a及び光検出素子20の光通過部21によって、空間Sに入射する光L1の入射NAが規定される。
なお、赤外線を検出する場合には、光透過部材51の材料として、シリコン、ゲルマニウム等も有効である。また、光透過部材51に、AR(Anti Reflection)コートを施したり、所定波長の光のみを透過させるフィルタ機能を持たせたりしてもよい。また、遮光膜52の材料としては、例えば、黒レジスト、Al等を用いることができる。ただし、0次光捕捉部23に入射した0次光L0が空間Sに戻ることを抑制する観点からは、遮光膜52の材料として、黒レジストが有効である。
基板24の表面24aと各側壁部32の端面32a及び各側壁部33の端面33aとの間には、例えば樹脂等からなる封止部材15が配置されている。また、ベース壁部31の貫通孔36内には、例えばガラスビーズ等からなる封止部材16が配置されていると共に、樹脂からなる封止部材17が充填されている。分光器1Aでは、光検出素子20、支持体30、カバー50及び封止部材15,16,17を構成として含むパッケージ60Aによって、空間Sが気密に封止されている。分光器1Aを外部の回路基板に実装する際には、各配線13の端部13bが電極パッドとして機能する。なお、基板24の表面24bにカバー50を配置することに代えて、基板24の光通過部21に光透過性の樹脂を充填することで、基板24の光通過部21を気密に封止してもよい。また、ベース壁部31の貫通孔36内に、例えばガラスビーズ等からなる封止部材16を配置せずに、樹脂からなる封止部材17のみを充填してもよい。
以上説明したように、分光器1Aでは、光検出素子20及び支持体30によって形成された空間S内に、光通過部21から光検出部22に至る光路が形成される。これにより、分光器1Aの小型化を図ることができる。更に、光通過部21を通過した光L1が第1反射部11及び第2反射部12で順次反射されて分光部40に入射する。これにより、分光部40に入射する光L1の入射方向、及び当該光L1の広がり乃至収束状態を調整することが容易となるため、分光部40から光検出部22に至る光路長を短くしても、分光部40で分光された光L2を精度良く光検出部22の所定位置に集光させることができる。よって、分光器1Aによれば、検出精度の低下を抑制しつつ小型化を図ることが可能となる。
また、分光器1Aでは、光通過部21、第1反射部11、第2反射部12、分光部40及び光検出部22が、光通過部21を通過する光L1の光軸方向から見た場合に、基準線RLに沿って並んでいる。そして、分光部40が、基準線RLに沿って並んだ複数のグレーティング溝を有しており、光検出部22が、基準線RLに沿って並んだ複数の光検出チャネルを有している。これにより、分光部40で分光された光L2をより精度良く光検出部22の各光検出チャネルに集光させることができる。
また、分光器1Aでは、第1反射部11が平面ミラーとなっている。これにより、光通過部21を通過する光L1の入射NAを小さくし且つ「光通過部21を通過した光L1が有する広がり角と同じ広がり角を有する光L1の光路長であって、光通過部21から分光部40に至る光路長」>「分光部40から光検出部22に至る光路長」(縮小光学系)とすることで、分光部40で分光される光L2の分解能を高くすることができる。具体的には、次のとおりである。すなわち、第1反射部11が平面ミラーである場合、光L1は、広がりつつ分光部40に照射される。そのため、分光部40の領域が広くなるのを抑制する観点、及び、分光部40が光検出部22に光L2を集光する距離が長くなるのを抑制する観点からは、光通過部21を通過する光L1の入射NAを小さくする必要がある。そこで、当該光L1の入射NAを小さくし且つ縮小光学系とすることで、分光部40で分光される光L2の分解能を高くすることができる。
また、分光器1Aでは、光検出素子20に、分光部40で分光されると共に反射された光のうち0次光L0を捕捉する0次光捕捉部23が設けられている。これにより、0次光L0が多重反射等により迷光となって検出精度が低下するのを抑制することができる。
また、分光器1Aでは、支持体30に、光検出部22に電気的に接続された配線13が設けられている。そして、配線13における光検出部22側の端部13aが、光検出素子20と支持体30との固定部において、光検出素子20に設けられた端子25に接続されている。これにより、光検出部22と配線13との電気的な接続の確実化を図ることができる。
また、分光器1Aでは、支持体30の材料がセラミックとなっている。これにより、分光器1Aが使用される環境の温度変化、光検出部22での発熱等に起因する支持体30の膨張及び収縮を抑制することができる。したがって、分光部40と光検出部22との位置関係にずれが生じることに起因する検出精度の低下(光検出部22で検出された光におけるピーク波長のシフト等)を抑制することができる。分光器1Aでは、小型化が図られていることから、わずかな光路の変化であっても、光学系に大きな影響を及ぼし、検出精度の低下に繋がるおそれがある。そのため、特に、上述したように、分光部40が支持体30に直接形成されている場合には、支持体30の膨張及び収縮を抑制することは極めて重要である。
また、分光器1Aでは、光検出素子20及び支持体30を構成として含むパッケージ60Aによって、空間Sが気密に封止されていている。これにより、湿気による空間S内の部材の劣化及び外気温の低下による空間S内での結露の発生等に起因する検出精度の低下を抑制することができる。
また、分光器1Aでは、第2反射部12が光検出素子20に設けられている。光検出素子20において第2反射部12が形成される基板24の表面24aは平坦面であり、また、光検出素子20の製造工程において第2反射部12の形成が可能であることから、所望のNAに応じた第2反射部12を精度良く形成することができる。
また、分光器1Aでは、ベース壁部31の表面31aのうち凹部34の周囲に平坦な領域(若干傾いていてもよい)が存在している。これにより、光検出部22で反射光が生じたとしても、当該反射光が光検出部22に再度到達することを抑制することができる。また、樹脂に成形型を押し当てて凹部34の内面34aに成形層41を形成する際、及び、基板24の表面24aと各側壁部32の端面32a及び各側壁部33の端面33aとの間に、樹脂からなる封止部材15を配置する際に、当該平坦な領域が余分な樹脂の逃げ場となる。このとき、ベース壁部31の貫通孔36に余分な樹脂を流し込むようにすれば、例えばガラスビーズ等からなる封止部材16が不要となり、当該樹脂が封止部材17として機能する。
また、分光器1Aの製造工程においては、上述したように、成形型を用いて、ベース壁部31の傾斜面37に平滑な成形層41を形成し、その成形層41に第1反射部11を形成している。通常、支持体30の表面よりも成形層41の表面のほうが、凸凹が少なく平滑であるため、鏡面を有する第1反射部11をより精度良く形成することができる。ただし、成形層41を介さずに、ベース壁部31の傾斜面37に第1反射部11を直接形成する場合には、成形層41に用いる成形材料を減らすことができ、また、成形型の形状を単純化することができるため、成形層41を容易に形成することが可能となる。
なお、図3に示されるように、カバー50が、例えば、黒レジスト、Al等からなる遮光膜53を更に有していてもよい。遮光膜53は、光透過部材51における空間S側とは反対側の表面51bに形成されている。遮光膜53には、Z軸方向において光検出素子20の光通過部21と対向するように、光通過開口53aが形成されている。光通過開口53aは、遮光膜53に形成されたスリットであり、Y軸方向に延在している。この場合、遮光膜53の光通過開口53a、遮光膜52の光通過開口52a及び光検出素子20の光通過部21を用いて、空間Sに入射する光L1の入射NAをより精度良く規定することができる。
また、図4に示されるように、カバー50が、上述した遮光膜53を更に有し、Z軸方向において光検出素子20の0次光捕捉部23と対向するように、遮光膜52に光通過開口52bが形成されていてもよい。この場合、0次光捕捉部23に入射した0次光L0が空間Sに戻ることをより確実に抑制することができる。
また、分光器1Aを製造する際には、第1反射部11及び分光部40が設けられた支持体30を用意し(第1工程)、光通過部21、第2反射部12及び光検出部22が設けられた光検出素子20を用意し(第2工程)、それらの後に、空間Sが形成されるように支持体30と光検出素子20とを固定することで、光通過部21から光検出部22に至る光路を空間S内に形成する(第3工程)。このように、支持体30と光検出素子20とを固定するだけで、空間S内に、光通過部21から光検出部22に至る光路が形成される。よって、分光器1Aの製造方法によれば、検出精度の低下を抑制しつつ小型化を図ることができる分光器1Aを容易に製造することが可能となる。なお、支持体30を用意する工程及び光検出素子20を用意する工程の実施順序は任意である。
特に、分光器1Aを製造する際には、支持体30に設けられた配線13の端部13aを光検出素子20の端子25に接続するだけで、配線13と光検出部22との電気的な接続だけでなく、支持体30と光検出素子20との固定、及び光通過部21から光検出部22に至る光路の形成が実現される。
[第2実施形態]
図5及び図6に示されるように、分光器1Bは、第1反射部11が凹面ミラーである点で、上述した分光器1Aと主に相違している。分光器1Bでは、第1反射部11は、ベース壁部31の凹部34の内面34aのうち球面状の領域に、成形層41を介して設けられている。第1反射部11は、例えば、Al、Au等の金属蒸着膜からなり且つ鏡面を有する凹面ミラーであり、空間Sにおいて、光通過部21を通過した光L1を第2反射部12に対して反射する。なお、第1反射部11は、成形層41を介さずに、支持体30の凹部34の内面34aに直接形成されていてもよい。また、カバー50は、図3及び図4に示される構成を有するものであってもよい。
以上のように構成された分光器1Bによれば、上述した分光器1Aと同様の理由により、検出精度の低下を抑制しつつ小型化を図ることが可能となる。また、分光器1Bでは、第1反射部11が凹面ミラーとなっている。これにより、第1反射部11で光L1の広がり角が抑えられるため、光通過部21を通過する光L1の入射NAを大きくして感度を高くしたり、分光部40から光検出部22に至る光路長をより短くして分光器1Bの更なる小型化を図ったりすることができる。具体的には、次のとおりである。すなわち、第1反射部11が凹面ミラーである場合、光L1は、コリメートされたような状態で分光部40に照射される。そのため、光L1が広がりつつ分光部40に照射される場合に比べ、分光部40が光検出部22に光L2を集光する距離が短くて済む。そこで、当該光L1の入射NAを大きくして感度を高くしたり、分光部40から光検出部22に至る光路長をより短くして分光器1Bの更なる小型化を図ったりすることができる。
[第3実施形態]
図7及び図8に示されるように、分光器1Cは、光検出素子20及び支持体30を収容するパッケージ60Bによって空間Sが気密に封止されている点で、上述した分光器1Aと主に相違している。パッケージ60Bは、ステム61と、キャップ62と、を有している。ステム61は、例えば、金属によって円板状に形成されている。キャップ62は、例えば、金属によって円筒状に形成されている。ステム61とキャップ62とは、ステム61の外縁に設けられたフランジ部61aとキャップ62の開口端に設けられたフランジ部62aとが接触させられた状態で、気密に接合されている。一例として、ステム61とキャップ62との気密封止は、露点管理(例えば−55℃)がなされた窒素雰囲気中、又は真空引きされた雰囲気中で行われる。
キャップ62においてステム61と対向する壁部62bには、Z軸方向において光検出素子20の光通過部21と対向するように、光入射部63が設けられている。光入射部63は、壁部62bに形成された光通過孔62cを覆うように窓部材64が壁部62bの内側表面に気密に接合されることで、構成されている。光通過孔62cは、Z軸方向から見た場合に、光通過部21を含む形状を有している。窓部材64は、例えば、石英、硼珪酸ガラス(BK7)、パイレックス(登録商標)ガラス、コバールガラス等、光L1を透過させる材料によって、板状に形成されている。分光器1Cでは、光L1は、パッケージ60B外から光入射部63を介して光通過部21に入射する。なお、赤外線を検出する場合には、窓部材64の材料として、シリコン、ゲルマニウム等も有効である。また、窓部材64に、ARコートを施したり、所定波長の光のみを透過させるフィルタ機能を持たせたりしてもよい。また、窓部材64の少なくとも一部は、窓部材64の外側表面と壁部62bの外側表面とが面一となるように、光通過孔62c内に配置されていてもよい。
ステム61には、複数の貫通孔61bが形成されている。各貫通孔61bには、リードピン65が挿通されている。各リードピン65は、例えば、電気的絶縁性及び遮光性を有する低融点ガラス等の封着用ガラスからなるハーメティックシール部材を介して、各貫通孔61bに気密に固定されている。各リードピン65におけるパッケージ60B内の端部は、ベース壁部31の表面31bにおいて、支持体30に設けられた各配線13の端部13bに接続されている。これにより、対応するリードピン65と配線13との電気的な接続、並びにパッケージ60Bに対する光検出素子20及び支持体30の位置決めが実現されている。
なお、リードピン65におけるパッケージ60B内の端部は、ベース壁部31に形成された貫通孔内、又はベース壁部31の表面31bに形成された凹部内に配置された状態で、当該貫通孔内又は当該凹部内に延在する配線13の端部13bに接続されていてもよい。また、リードピン65におけるパッケージ60B内の端部と配線13の端部13bとは、支持体30がバンプボンディング等により実装された配線基板を介して電気的に接続されていてもよい。この場合、リードピン65におけるパッケージ60B内の端部は、ステム61の厚さ方向(すなわち、Z軸方向)から見た場合に支持体30を包囲するように、配置されていてもよい。また、当該配線基板は、ステム61に接触した状態でステム61に配置されていてもよいし、或いはステム61から離間した状態で複数のリードピン65によって支持されていてもよい。
なお、分光器1Cでは、光検出素子20の基板24及び支持体30のベース壁部31は、例えば六角形板状に形成されている。また、光検出素子20及び支持体30がパッケージ60Bに収容されていることから、分光器1Cでは、上述した分光器1Aのように、各側壁部32における空間S側の表面32b、ベース壁部31の表面31a、及び各貫通孔36の内面において、各配線13の接続部13cを引き回すことが不要となっている。分光器1Cでは、各配線13の接続部13cは、各側壁部32における空間S側とは反対側の表面、及びベース壁部31の表面31bにおいて、端部13aから端部13bに至っている。このように、配線13が支持体30における空間S側とは反対側の表面を引き回されることで、空間Sに露出した配線13による光の散乱を防止することができる。更に、分光器1Cでは、上述した分光器1Aのように、封止部材15,16,17を配置したり、カバー50を設けたりすることが不要となっている。
以上のように構成された分光器1Cによれば、上述した分光器1Aと同様の理由により、検出精度の低下を抑制しつつ小型化を図ることが可能となる。また、分光器1Cでは、光検出素子20及び支持体30を収容するパッケージ60Bによって、空間Sが気密に封止されていている。これにより、湿気による空間S内の部材の劣化及び外気温の低下による空間S内での結露の発生等に起因する検出精度の低下を抑制することができる。
また、分光器1Cでは、支持体30の各側壁部32の端面32a及び各側壁部33の端面33aと、光検出素子20の基板24の表面24aとの間に、隙間が形成されている。これにより、光検出素子20の変形の影響が支持体30に及び難くなり、また、支持体30の変形の影響が光検出素子20に及び難くなるため、光通過部21から光検出部22に至る光路を精度良く維持することができる。
また、分光器1Cでは、支持体30が、ステム61から離間した状態で複数のリードピン65によって支持されている。これにより、ステム61の変形の影響、パッケージ60B外からの外力の影響等が、支持体30に及び難くなるため、光通過部21から光検出部22に至る光路を精度良く維持することができる。
[第4実施形態]
図9及び図10に示されるように、分光器1Dは、第1反射部11が凹面ミラーである点で、上述した分光器1Cと主に相違している。分光器1Dでは、第1反射部11は、ベース壁部31の凹部34の内面34aのうち球面状の領域に、成形層41を介して設けられている。第1反射部11は、例えば、Al、Au等の金属蒸着膜からなる凹面ミラーであり、空間Sにおいて、光通過部21を通過した光L1を第2反射部12に対して反射する。
以上のように構成された分光器1Dによれば、上述した分光器1Aと同様の理由により、検出精度の低下を抑制しつつ小型化を図ることが可能となる。また、分光器1Dでは、第1反射部11が凹面ミラーとなっている。これにより、第1反射部11で光L1の広がり角が抑えられるため、光通過部21を通過する光L1の入射NAを大きくして感度を高くしたり、分光部40から光検出部22に至る光路長をより短くして分光器1Bの更なる小型化を図ったりすることができる。また、分光器1Dでは、光検出素子20及び支持体30を収容するパッケージ60Bによって、空間Sが気密に封止されていている。これにより、湿気による空間S内の部材の劣化及び外気温の低下による空間S内での結露の発生等に起因する検出精度の低下を抑制することができる。
[分光器の小型化と分光部の曲率半径との関係]
図11に示されるように、(a)の分光器及び(b)の分光器では、光通過部21を通過した光L1が分光部40に直接入射し、分光部40で分光されると共に反射された光L2が光検出部22に直接入射する。(c)の分光器では、光通過部21を通過した光L1が第1反射部11及び第2反射部12で順次反射されて分光部40に入射し、分光部40で分光されると共に反射された光L2が光検出部22に直接入射する。なお、(a)の分光器では、分光部40が形成された内面34aの曲率半径が6mmとなっている。(b)の分光器では、分光部40が形成された内面34aの曲率半径が3mmとなっている。(c)の分光器では、第1反射部11及び分光部40が形成された内面34aの曲率半径が4mmとなっている。
まず、(a)の分光器と(b)の分光器とを比較すると、(a)の分光器の高さ(Z軸方向の高さ)に比べ、(b)の分光器の高さが低くなっている。これは、分光部40が形成された内面34aの曲率半径が小さい分、分光部40が光検出部22に光L2を集光する距離が短くなるからである。
ただし、分光部40が形成された内面34aの曲率半径を小さくすればするほど、次のように、種々の問題が現れる。すなわち、光L2のフォーカスライン(異なる波長を有する光L2が集光する位置を結んだ線)が歪み易くなる。また、各種収差の影響が大きくなるため、グレーティングの設計で補正し難くなる。また、特に長波長側への回折角がきつくなるため、グレーティングピッチを狭くする必要があるが、グレーティングピッチが狭くなると、グレーティングの形成が困難となる。更に、感度を高くするためにはブレーズ化が必要であるが、グレーティングピッチが狭くなると、ブレーズ化が困難となる。また、特に長波長側への回折角がきつくなるため、光L2の分解能的にも不利となる。
このような種々の問題が現れるのは、光検出素子20の基板24に、スリットとしての光通過部21を設ける場合、基板24の表面24a,24bに垂直な方向に沿って光L1が通過するように光通過部21を構成するのが現実的であるからである。また、0次光L0を光検出部22側とは反対側に反射しなければならないという制約が存在するからである。
これに対し、(c)の分光器では、第1反射部11及び分光部40が形成された内面34aの曲率半径が4mmであるにもかかわらず、(b)の分光器の高さに比べ、(c)の分光器の高さが低くなっている。これは、(c)の分光器では、第1反射部11及び第2反射部12を用いることで、分光部40に入射する光L1の入射方向、及び当該光L1の広がり乃至収束状態を調整することが可能となっているからである。
上述したように、光検出素子20の基板24に、スリットとしての光通過部21を設ける場合、基板24の表面24a及び表面24bに垂直な方向に沿って光L1が通過するように光通過部21を構成するのが現実的である。このような場合であっても、第1反射部11及び第2反射部12を用いれば、分光器の小型化を図ることができる。(c)の分光器では、第2反射部12と光検出部22との間に位置する0次光捕捉部23によって0次光L0を捕捉することができることも、分光器の検出精度の低下を抑制しつつ分光器の小型化を図る上で大きな特徴となっている。
[分光部から光検出部に至る光路の優位性]
まず、図12に示されるように、光通過部21から、第1反射部11、分光部40及び第2反射部12を順次介して、光検出部22に至る光路が採用された分光器について検討する。図12の分光器では、平面グレーティングである分光部40で光L1が分光されると共に反射される。そして、分光部40で分光されると共に反射された光L2が、凹面ミラーである第2反射部12で反射されて、光検出部22に入射する。この場合、各光L2は、各光L2の集光位置が互いに近付くように、光検出部22に入射することになる。
図12の分光器では、検出する光L2の波長範囲を広げようとすると、分光部40が形成された内面34aの曲率半径、及び第2反射部12と光検出部22との距離を大きくする必要がある。しかも、各光L2の集光位置が互いに近付くように、各光L2が光検出部22に入射するため、内面34aの曲率半径、及び第2反射部12と光検出部22との距離をより大きくする必要がある。グレーティングピッチ(グレーティング溝の間隔)を狭くして、各光L2の集光位置の間隔を広げ過ぎると、光L2のフォーカスラインを光検出部22に合わせるのが困難となる。このように、光通過部21から、第1反射部11、分光部40及び第2反射部12を順次介して、光検出部22に至る光路は、小型化には不向きな光路であるといえる。
これに対し、図11の(c)に示されるように、光通過部21から、第1反射部11、第2反射部12及び分光部40を順次介して、光検出部22に至る光路が採用された分光器(すなわち、上述した分光器1A〜1Dに相当する分光器)では、各光L2は、各光L2の集光位置が互いに離れるように、光検出部22に入射することになる。したがって、光通過部21から、第1反射部11、第2反射部12及び分光部40を順次介して、光検出部22に至る光路は、小型化に適した光路であるといえる。図12の分光器では、内面34aの曲率半径が12mmとなっており、高さ(Z軸方向の高さ)が7mmとなっているのに対し、図11の(c)の分光器では、内面34aの曲率半径が4mmとなっており、高さが2mm程度となっていることからも、以上のことが分かる。
以上、本発明の第1〜第4実施形態について説明したが、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではない。例えば、上記第1及び第2実施形態では、空間Sに入射する光L1の入射NAが光検出素子20の光通過部21及び遮光膜52の光通過開口52a(場合によっては、遮光膜53の光通過開口53a)の形状によって規定されていたが、第1反射部11、第2反射部12及び分光部40の少なくとも1つの領域の形状を調整することで、空間Sに入射する光L1の入射NAを実質的に規定することができる。光検出部22に入射する光L2は回折光であるため、成形層41においてグレーティングパターン41aが形成された所定領域の形状を調整することで、当該入射NAを実質的に規定することができる。
また、上記各実施形態では、対向する光検出素子20の端子25と配線13の端部13aとがバンプ14によって接続されていたが、対向する光検出素子20の端子25と配線13の端部13aとを半田付けで接続してもよい。また、対向する光検出素子20の端子25と配線13の端部13aとの接続を、支持体30の各側壁部32の端面32aにおいてだけでなく、支持体30の各側壁部33の端面33aにおいて行ってもよいし、或いは支持体30の各側壁部32の端面32a及び各側壁部33の端面33aにおいて行ってもよい。また、分光器1A,1Bにおいて、配線13は、支持体30における空間S側とは反対側の表面を引き回されていてもよい。また、分光器1C,1Dにおいて、配線13は、支持体30における空間S側の表面を引き回されていてもよい。
また、支持体30の材料は、セラミックに限定されず、LCP、PPA、エポキシ等の樹脂、成形用ガラスといった他の成形材料であってもよい。また、パッケージ60Bの形状は、直方体箱型でもよい。また、光検出素子20及び支持体30を収容するパッケージ60Bによって空間Sが気密に封止されている場合、支持体30は、空間Sを包囲する一対の側壁部32及び一対の側壁部33に代えて、互いに離間する複数の柱部又は複数の側壁部を有するものであってもよい。このように、分光器1A〜1Dの各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を適用することができる。
本発明の分光器は、光通過部及び光検出部が設けられた光検出素子と、光通過部及び光検出部との間に空間が形成されるように光検出素子に固定された支持体と、支持体に設けられ、空間において、光通過部を通過した光を反射する第1反射部と、光検出素子に設けられ、空間において、第1反射部で反射された光を反射する第2反射部と、支持体に設けられ、空間において、第2反射部で反射された光を光検出部に対して分光すると共に反射する分光部と、を備える。
この分光器では、光検出素子及び支持体によって形成された空間内に、光通過部から光検出部に至る光路が形成される。これにより、分光器の小型化を図ることができる。更に、光通過部を通過した光が第1反射部及び第2反射部で順次反射されて分光部に入射する。これにより、分光部に入射する光の入射方向、及び当該光の広がり乃至収束状態を調整することが容易となるため、分光部から光検出部に至る光路長を短くしても、分光部で分光された光を精度良く光検出部の所定位置に集光させることができる。よって、この分光器によれば、検出精度の低下を抑制しつつ小型化を図ることが可能となる。
本発明の分光器では、光通過部、第1反射部、第2反射部、分光部及び光検出部は、光通過部を通過する光の光軸方向から見た場合に、基準線に沿って並んでおり、分光部は、基準線に沿って並んだ複数のグレーティング溝を有し、光検出部は、基準線に沿って並んだ複数の光検出チャネルを有してもよい。この構成によれば、分光部で分光された光をより精度良く光検出部の各光検出チャネルに集光させることができる。
本発明の分光器では、第1反射部は、平面ミラーであってもよい。この構成によれば、光通過部を通過する光の入射NAを小さくし且つ「光通過部を通過した光が有する広がり角と同じ広がり角を有する光の光路長であって、光通過部から分光部に至る光路長」>「分光部から光検出部に至る光路長」(縮小光学系)とすることで、分光部で分光される光の分解能を高くすることができる。
本発明の分光器では、第1反射部は、凹面ミラーであってもよい。この構成によれば、第1反射部で光の広がり角が抑えられるため、光通過部を通過する光の入射NAを大きくして感度を高くしたり、分光部から光検出部に至る光路長をより短くして分光器の更なる小型化を図ったりすることができる。
本発明の分光器では、光検出素子には、分光部で分光されると共に反射された光のうち0次光を捕捉する0次光捕捉部が設けられていてもよい。この構成によれば、0次光が迷光となって検出精度が低下するのを抑制することができる。
本発明の分光器では、支持体には、光検出部に電気的に接続された配線が設けられており、配線における光検出部側の端部は、光検出素子と支持体との固定部において、光検出素子に設けられた端子に接続されていてもよい。この構成によれば、光検出部と配線との電気的な接続の確実化を図ることができる。
本発明の分光器では、支持体の材料は、セラミックであってもよい。この構成によれば、分光器が使用される環境の温度変化等に起因する支持体の膨張及び収縮を抑制することができる。したがって、分光部と光検出部との位置関係にずれが生じることに起因する検出精度の低下(光検出部で検出された光におけるピーク波長のシフト等)を抑制することができる。
本発明の分光器では、空間は、光検出素子及び支持体を構成として含むパッケージによって、気密に封止されていてもよい。この構成によれば、湿気による空間内の部材の劣化及び外気温の低下による空間内での結露の発生等に起因する検出精度の低下を抑制することができる。
本発明の分光器では、空間は、光検出素子及び支持体を収容するパッケージによって、気密に封止されていてもよい。この構成によれば、湿気による空間内の部材の劣化及び外気温の低下による空間内での結露の発生等に起因する検出精度の低下を抑制することができる。
本発明の分光器の製造方法は、第1反射部及び分光部が設けられた支持体を用意する第1工程と、光通過部、第2反射部及び光検出部が設けられた光検出素子を用意する第2工程と、第1工程及び第2工程の後に、空間が形成されるように支持体と光検出素子とを固定することで、光通過部を通過した光が第1反射部で反射され、第1反射部で反射された光が第2反射部で反射され、第2反射部で反射された光が分光部で分光されると共に反射され、分光部で分光されると共に反射された光が光検出部に入射する光路を空間内に形成する第3工程と、を備える。
この分光器の製造方法では、第1反射部及び分光部が設けられた支持体と、光通過部、第2反射部及び光検出部が設けられた光検出素子とを固定するだけで、空間内に、光通過部から光検出部に至る光路が形成される。よって、この分光器の製造方法によれば、検出精度の低下を抑制しつつ小型化を図ることができる分光器を容易に製造することが可能となる。なお、第1工程及び第2工程の実施順序は任意である。