最新の半導体マイクロデバイスにおいては、デバイス構造の高密度化のために、半導体ウェーハ(例えばシリコンウェーハ。以下、単にウェーハという。)の上に異なる複数の配線を多層形成し、層間絶縁膜にビアホールやコンタクトホールを形成して各層間を電気的に接続する、多層配線技術が多用されるようになってきている。この多層配線技術においては、下層側の回路パターンが、フォトリソグラフィ工程によって形成された後に、上層側の回路パターンが、下層側の回路パターンと位置ずれを起こさないようにしつつ、同様にフォトリソグラフィ工程によって形成される。
このとき、下層側表面に凹凸が生じていると、上層側の回路パターンを形成する際にデフォーカスに起因する位置ずれが生じやすい。このため、上層側の回路パターンを形成する前に、下層側表面を化学機械研磨(Chemical−Mechanical Polishing:以下、CMPという。)によって平坦化する工程が採用されるのが一般的である。このCMP工程においては、図2に示すように、例えば、回転定盤T上に張り付けた、独立気泡を有する硬質ウレタン樹脂(以下、パッドPという。)の表面に、ウェーハWと化学的反応(ケミカル作用)を起こす薬液と、超微細な砥粒(主にSiO2)(メカニカル作用)とを混ぜたスラリーSをかけ流しつつ、このパッドPの表面にウェーハWの表面を押し付けて、その表面を平坦化する。
このCMP工程を行うと、ウェーハWの切粉等の付着物がパッドPの表面に付着して、この表面がフラットな状態となり、ウェーハW表面を研磨するメカニカル作用が低下するとともに、パッドPの表面に開口する独立気泡内のスラリーSが次第に劣化して、ケミカル作用も徐々に低下する。その結果、パッドPの研磨能力(ウェーハWの研磨レート)が著しく損なわれる問題が生じる。そこで、このパッドPの表面に、後述するパッド用コンディショナ1を押し付けて、パッドP表面に付着した付着物を削ぎ落として目詰まりを解消し、その表面を粗化することによりメカニカル作用を回復させるとともに、独立気泡内のスラリーSを掻き出して、新鮮なスラリーSを改めて供給することによりケミカル作用を回復させ、パッドPの表面を改質(コンディショニング)する技術が採用される。パッド用コンディショナ1を用いたパッドP表面の改質は、ウェーハWの研磨とは別のタイミングで行ってもよいが、最近では、ウェーハWの研磨と同時に(In−Situ)行うことが多い(図2参照)。
パッド用コンディショナ1には、パッドP表面の研磨材として作用するダイヤモンド等の高硬度の超砥粒2が固定されている。この超砥粒2は、パッド用コンディショナ1一個当たり、数百から数万個程度用いられる。一般的な用途(例えば、硬質部材の表面研削用等)に用いられるダイヤモンド砥石等の超砥粒工具においては、その表面に固定された多数の超砥粒2のうち一部が脱落しても、研磨能力が脱落した超砥粒2の数の分だけ低下するだけで、特に大きな問題は生じない。
ところが、ウェーハWの研磨用として用いるパッド用コンディショナ1においては、超砥粒2が1個脱落しただけで、脱落した超砥粒2がウェーハWとパッドP表面の間に噛み込まれて、完成間近のウェーハWの表面を傷付けるため、非常に大きなコスト的ダメージを与えるという問題を生じ得る。このため、使用中に超砥粒2が1個たりとも脱落しないように、この超砥粒2を確実に固定する必要がある。このパッド用コンディショナ1の製造方法として、主に電着法とロー付け法がある。
電着法は、図5に示すように、台金10上に超砥粒11を配置し、この台金10の超砥粒11を配置した面側に金属のメッキ層(例えば、ニッケルメッキ層)からなる金属被膜12を所定厚さ形成し、超砥粒11をこの金属被膜12の中に埋め込んで保持する方法である。超砥粒11と金属被膜12との間の結合力は非常に小さいため、超砥粒11の脱落を防止するためには、この超砥粒11が金属被膜12の中に、少なくとも60%埋め込まれた状態とするのが好ましい。
この電着法を採用したものとして、例えば、特許文献1に示すパッド用コンディショナ(CMPコンディショナ)がある。このパッド用コンディショナは、導電性スペーサに複数のドーム状の穴と、このドーム状の穴と連通する超砥粒の平均粒径よりも小さい直径を有する円筒形の穴を形成し、この円筒形の穴に、超砥粒を1個ずつ、この超砥粒の先端が導電性スペーサの下面を向くように載置し、電気メッキによって導電性スペーサの上面にメッキ層(ボンド層)からなる金属被膜を形成することにより超砥粒を固着する。同じ大きさの穴に、同じように先端を下向きにして超砥粒を載置することにより、各超砥粒の先端位置が同一平面上にほぼ揃った状態となる。金属被膜の形成による固着後に、導電性スペーサを除去して得た超砥粒層を台金に接着して、パッド用コンディショナを完成させる。すなわち、このパッド用コンディショナは、図6に示すように、台金20上に接着剤層21を介して接着された金属被膜22のドーム状の突起部22aの先端に超砥粒23が1個ずつ配置され、かつ、この突起部22aの先端からの超砥粒23の突出量gが、全ての超砥粒23において、ほぼ揃った状態となっている。
ロー付け法は、図7に示すように、台金30上に超砥粒31を配置するとともに、この台金30上に例えば、銅−銀−チタン系(Cu−Ag−Ti系)、ニッケル−クロム−ホウ素系(Ni−Cr−B系)等の活性ロー材32の粉末を散布し、真空、アルゴンガス等の活性ロー材32の種類に適した雰囲気中で850〜950℃程度に加熱する。この加熱によって活性ロー材32が溶融し、活性成分であるチタンやクロムが超砥粒31と化学的に結合し、強固な固着が達成できる。このロー付け法は、電着法と比較すると短時間で超砥粒31の固着工程を完了することができる。
上記の各方法においては、超砥粒として、パッドの独立気泡の大きさと同程度の粒径のものが選択される。このようにすれば、この超砥粒の先端部で、パッド表面に開口した独立気泡の内部のスラリーを効率的に掻き出して、その内部に新鮮なスラリーを容易に供給することができる。超砥粒の粒径が大きすぎると、その先端部が独立気泡内に入り込めず、スラリーの掻き出し作用が低下するため好ましくない。
図5に示した一般的な電着法は、上述したように、台金10上に超砥粒11を配置した上で金属被膜12(メッキ層)が形成される。この超砥粒11は、予め分級がなされており、ある程度その大きさは揃っているが、多少の粒径のばらつきは避けられない。このように、粒径にばらつきがある場合、台金10の表面が超砥粒11の下端位置を決める基準面となることにより、この超砥粒11の上端の高さにばらつきが生じる。その結果、粒径の異なる超砥粒11ごとに金属被膜12中への埋め込み深さが変わってしまい、平均粒径を基準として金属被膜12を形成した場合に、粒径の小さな超砥粒11(11a)が、この金属被膜12の中に完全に埋め込まれた状態となったり、逆に粒径の大きな超砥粒11(11b)の埋め込み深さがこの超砥粒11を安定的に保持できる基準(通常は60%程度)を下回って、その保持状態が不安定となったりする問題がある。また、最大粒径の超砥粒11を基準として金属被膜12の厚さを決定した場合、この最大粒径の超砥粒11を適切な埋め込み深さで保持できる一方で、その他の超砥粒11は、金属被膜12からの突出量が不十分、あるいは完全に埋め込まれた状態となって、これらの超砥粒11によるパッドP表面の十分な改質作用が発揮されない問題が生じる。
また、図2に示したパッドPの改質は、超砥粒11がパッドP表面に付着した付着物を削ぎ落とすとともに、独立気泡内の劣化したスラリーを掻き出すことによって行われるが、超砥粒11ごとにその先端部の高さが異なると、先端部の高さが高い超砥粒11(11b)がパッドP表面に届いて改質作用を発揮するのに対して、先端部の高さが低い超砥粒11(11c)はパッドP表面に届かず、改質作用が発揮できない。すなわち、改質作用を発揮する超砥粒11の数の製品ごとのばらつきが生じやすく、品質が安定しないという問題もある。
また特許文献1に係る電着法(図6参照)は、超砥粒23の先端位置はほぼ揃っているため、改質作用を発揮する超砥粒23の数の製品ごとのばらつきは小さい。その一方で、超砥粒23が、安定保持のためにドーム状の金属被膜22中に深く(通常は60%以上)埋め込まれて保持されているため、軟質部材であるパッドPの表面にパッド用コンディショナを押し付けた際に、超砥粒23のみならず、この超砥粒23を支持する金属被膜22のドーム状の突起部22aもパッドPに接触した状態となることがある。すると、この突起部22aが次第に摩耗し、超砥粒23を安定的に保持できなくなり、パッド用コンディショナ表面から、超砥粒23が脱落する問題が生じ得る。
その一方で、ロー付け法は、活性ロー材と超砥粒との間の結合力により、両者の間の接触面積が小さくても高い結合強度が確保される。その一方で、一般的な活性ロー材が金属系であるのに対して、超砥粒は活性ロー材よりも比重が小さい素材であるのが一般的であり、図7に示すように、活性ロー材32を溶融したときに超砥粒31(31a)が浮き上がったり、超砥粒31(31b)同士が凝集したりし易く、超砥粒31ごとにその先端部の高さが異なって、上記において説明した電着法の場合と同様にパッド用コンディショナの品質が安定しないという問題がある。
超砥粒31の先端部の高さを揃えるために、活性ロー材32を溶融させた際に、複数の超砥粒31の上端部に、平板等の部材を押し付けることも考えられる。しかしながら、この場合、超砥粒31の上端部の位置は揃うものの、前記部材の平坦部と、超砥粒31の平坦部が安定的に当接し、活性ロー材32の固化後に、超砥粒31の尖った部分ではなく、改質作用の小さい平坦部がパッド用コンディショナの表面に揃った状態となる。このため、表面に尖った部分を揃えた場合と比較して、パッドPの改質作用が大幅に低下する問題がある。
電着法やロー付け法以外にも、超砥粒を台金上に保持するために、メタルボンド(金属系ボンド材)、レジンボンド(樹脂系ボンド材)、ビトリファイドボンド(ガラス質系ボンド材)等を使用する方法もある。しかしながら、いずれも各ボンド材と超砥粒との間の結合力が小さいため、超砥粒周囲のボンド材が摩耗して超砥粒の保持力が低下すると、この超砥粒がボンド材から外れて脱落しやすいという問題があり、採用するのは難しい。
そこで、この発明は、超砥粒の脱落を確実に防止するとともに、超砥粒によるパッドの改質作用を高めることを課題とする。
上記の課題を解決するため、この発明は、一平面内に配置された複数の超砥粒と、前記一平面と平行な平坦部と、前記超砥粒の配置位置に対応して前記一平面側に向かって起立する突起部と、を有し、前記突起部において、前記複数の超砥粒の先端を露出させつつ、その周囲から保持する金属被膜と、前記金属被膜の前記突起部の起立方向とは反対側の面側に、前記超砥粒の後端部を包むように積層された板状の活性ロー材と、前記活性ロー材の前記金属皮膜とは反対側の面に設けられ、前記活性ロー材を支持する台金と、を備えたパッド用コンディショナを構成した。
この構成においては、超砥粒の後端側と活性ロー材が強固に結合しているため、パッド用コンディショナの使用中に、その表面から超砥粒が脱落してウェーハの表面を傷付けるのを確実に防止することができる。
前記構成においては、前記超砥粒の先端と前記平坦部との間の段差の大きさが、前記超砥粒の平均粒径の1.0倍以上とするのが好ましい。このようにすれば、超砥粒の先端が、平坦部から十分突出した状態となる。このため、スラリーの供給をスムーズに行うことができるとともに、パッドの改質作業の際に、パッドに付着した付着物を効率的に削ぎ落とすことができる。さらに、パッド表面と平坦部が接触して、この平坦部が摩耗するのを極力防止することができる。
前記各構成においては、前記平坦部から測定した前記複数の超砥粒の先端位置のばらつきが、前記超砥粒の平均粒径の1/10以下の範囲内とするのが好ましい。超砥粒の先端位置のばらつきをこの範囲内とすることにより、ほぼ全ての数の超砥粒をパッド表面の改質に寄与させることができる。このため、製品ごとのパッドの改質作用のばらつきを抑制することができ、パッド用コンディショナの安定した品質を確保することができる。
前記各構成においては、前記超砥粒が、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素であるのが好ましい。これらを選択することにより、上述したように、使用中の超砥粒の脱落によってウェーハの表面を傷付けるのを防止するとともに、その高い硬度と角張った形状によって、高いパッドの改質作用を発揮し得る。
また、上記の課題を解決するため、この発明は、表面側に複数の先細状の凹部を形成するとともに、この凹部の先端と連通し裏面側に貫通する貫通孔を形成した型枠の前記凹部内に、前記裏面側から前記貫通孔内の空気を吸引しつつ超砥粒を一つずつ設置する工程と、前記吸引によって前記凹部内に前記超砥粒が嵌り込んだ状態で、前記型枠の表面側に、所定厚さの金属被膜を形成する工程と、前記金属被膜の形成後に、前記型枠の表面側に、前記超砥粒の後端側を包むように活性ロー材を設ける工程と、前記活性ロー材に台金を押し付けつつ加熱して、前記活性ロー材と、前記超砥粒及び前記台金とを密着させる工程と、を備えたパッド用コンディショナの製造方法を構成した。
この製造方法によれば、上述の電着法及びロー付け法の諸問題を解決しつつ、それぞれの方法の長所を活かすことができる。すなわち、型枠の凹部内に超砥粒を設置することにより、この超砥粒の先端の高さが揃った状態となる。また、活性ロー材を溶融して超砥粒を固定する工程に先立って、金属被膜を形成することにより、型枠に対してこの超砥粒が仮固定された状態となり、その後に活性ロー材を溶融する工程を行っても、その溶融に伴って超砥粒が浮き上がったり、超砥粒同士が凝集したりするのを防止することができる。このため、パッド用コンディショナの安定した品質が確保される。しかも、超砥粒の後端側と活性ロー材が化学的に強固に結合しているため、パッド用コンディショナの使用中に、その表面から超砥粒が脱落してウェーハの表面を傷付けるのを確実に防止することができる。
また、型枠と活性ロー材との間に金属被膜を介在させると、金属被膜と型枠(一般的にはセラミック製又は樹脂製)との間の密着力が小さいことから、この金属被膜が離型剤として作用する。このため、製造工程の終了時においてこの型枠を容易に剥離することができ、剥離の際に型枠が損傷するのを防止できるとともに、その剥離工程をスムーズに進めることができる。この金属被膜の形成には、電気メッキ法が一般的に採用される。
前記構成においては、前記型枠に、熱膨張率が9×10−6/K以上13×10−6/K以下の素材を用いるのが好ましい。上記工程で用いられる台金の素材として、ステンレス鋼(例えばSUS430)や炭素鋼を用いるのが一般的であり、その熱膨張率は10〜12×10−6/K程度である。型枠の熱膨張率を上記の範囲内とすることにより、ロー付け工程後における型枠と台金との間の歪みを非常に小さくすることができ、パッド用コンディショナの品質を一層高めることができる。型枠の素材として、チタン酸カルシウム系、フォルステライト系、ジルコニア系等の各セラミックを採用するのが好ましい。これらのセラミックは、比較的熱膨張率が高く、台金として通常用いられるステンレス鋼等の素材との間において、熱膨張率の整合性が高いためである。
あるいは、表面側に複数の先細状の凹部を形成するとともに、この凹部の先端と連通し裏面側に貫通する貫通孔を形成した型枠の前記凹部内に、前記裏面側から前記貫通孔内の空気を吸引しつつ超砥粒を一つずつ設置する工程と、前記吸引によって前記凹部内に前記超砥粒が嵌り込んだ状態で、前記型枠の表面側に、所定厚さの金属被膜を形成する工程と、前記金属被膜を、前記超砥粒がこの金属被膜に保持された状態のまま前記型枠から剥離する工程と、剥離した前記金属被膜に、前記超砥粒の後端側を包むように活性ロー材を設ける工程と、前記活性ロー材に台金を押し付けつつ加熱して、前記活性ロー材と、前記超砥粒及び前記台金とを密着させる工程と、を備えたパッド用コンディショナの製造方法を採用することもできる。
このように、活性ロー材を設ける工程の前に型枠から金属被膜を剥離すれば、活性ロー材を設ける工程における台金と型枠との間の熱膨張率の差が問題とはならないのに加えて、型枠に耐熱性も要求されない。このため、例えば、この型枠の素材として、汎用の樹脂材のように安価なものを採用することができるとともに、活性ロー材工程を経ることなく、この型枠を再使用することができるため、パッド用コンディショナの製造コストの削減を図ることができる。
前記各製造方法においては、前記金属被膜の膜厚を、前記超砥粒の平均粒径の1/100以上20/100以下とするのが好ましい。この金属被膜は、上述したように、型枠に対して超砥粒を仮固定する役目を有するところ、その膜厚をこの範囲内とすることにより、その役目を確実に発揮することができる。この膜厚が、超砥粒の平均粒径の1/100よりも小さいと、金属被膜による仮固定作用が十分に発揮されない問題があり、20/100よりも大きいと、超砥粒と活性ロー材との間の接触面積の減少が顕著となって、活性ロー材による超砥粒の保持安定性が低下する問題がある。この平均粒径の範囲は、3/100以上20/100以下とするのがより好ましく、5/100以上10/100以下とするのがさらに好ましい。
前記各製造方法においては、前記型枠の表面に電気伝導被膜を形成するのが好ましい。このように、電気伝導被膜を形成することにより、電気伝導性を有しない素材も型枠の素材として採用することができ、型枠のコスト削減につながる可能性がある。この電気伝導被膜の形成方法として、例えば、蒸着法、スパッタ法、化学メッキ法等を採用することができる。
前記各製造方法においては、前記貫通孔の直径が、前記超砥粒の平均粒径の20%以上75%以下の範囲内であるのが好ましい。貫通孔の直径をこの範囲内とすることにより、この貫通孔内に超砥粒の先端を適切な深さ嵌り込むようにすることができる。この貫通孔の直径が、超砥粒の平均粒径の20%よりも小さいと、パッド用コンディショナ表面からの超砥粒の突出量が小さくなり、この超砥粒によるパッドの十分な改質作用が得られず、75%よりも大きいと、貫通孔内への超砥粒の入り込み量が大きくなり、超砥粒と活性ロー材との接触面積が小さくなって、超砥粒の保持状態が不安定になる問題がある。
前記各製造方法においては、前記超砥粒が、ダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素(CBN)であるのが好ましい。これらの素材は、活性ロー材との化学的な結合によって高い保持信頼性を有しているため、使用中に超砥粒が脱落してウェーハの表面を傷付ける恐れがない。しかも、高い硬度を有するとともに角張った形状をしているため、高いパッドの改質作用を発揮し得る。
この発明では、表面側に複数の先細状の凹部を形成するとともに、この凹部の先端と連通し裏面側に貫通する貫通孔を形成した型枠の前記凹部内に、前記裏面側から前記貫通孔内の空気を吸引しつつ超砥粒を一つずつ設置する工程と、前記吸引によって前記凹部内に前記超砥粒が嵌り込んだ状態で、前記型枠の表面側に、所定厚さの金属被膜を形成する工程と、前記金属被膜の形成後に、前記型枠の表面側に、前記超砥粒の後端側を包むように活性ロー材を設ける工程と、前記活性ロー材に台金を押し付けつつ加熱して、前記活性ロー材と、前記超砥粒及び前記台金とを密着させる工程と、を備えたパッド用コンディショナの製造方法を構成した。
この製造方法においては、型枠の凹部内に超砥粒を設置することにより、この超砥粒の先端の高さが揃った状態となる。また、活性ロー材を溶融して超砥粒を固定する工程に先立って、金属被膜を形成することにより、型枠に対してこの超砥粒が仮固定された状態となり、このため、その後に活性ロー材工程を行っても、その溶融に伴って超砥粒が浮き上がったり、超砥粒同士が凝集したりするのが防止される。このため、パッド用コンディショナの安定した品質を確保することができる。しかも、超砥粒の後端側と活性ロー材が化学的に強固に結合しているため、パッド用コンディショナの使用中に、その表面から超砥粒が脱落してウェーハの表面を傷付けるのを確実に防止することができる。
本願発明に係るパッド用コンディショナ1の縦断面図を図1に示す。このパッド用コンディショナ1は、一平面内に配置された複数の超砥粒2と、金属被膜3と、活性ロー材4と、台金5とを主な構成要素としている。
複数の超砥粒2は合成ダイヤモンドであって、その粒径は、JISB4130で規定される粒度#100/120の粒径範囲内に管理されている。この合成ダイヤモンドは、尖った部分と平坦な面を有しており、このうち尖った部分が先端(本図では上方)を向くように配置されている。また、この複数の超砥粒2の尖った部分の先端位置のばらつきは、この超砥粒2の平均粒径の1/10以下の範囲内である。先端位置のばらつきをこの範囲内とすることにより、ほぼ全ての数の超砥粒2を一様にパッドP(後述する図2参照)の表面の改質に寄与させることができ、パッド用コンディショナ1の安定した品質を確保することができる。
金属被膜3は、電気メッキによって形成されたニッケル被膜であって、その膜厚は超砥粒2の平均粒径の10/100程度である。この金属被膜3は、前記一平面と平行な平坦部3aと、超砥粒2の配置位置に対応して前記一平面側に向かって起立する円錐状の突起部3bとを有する。この突起部3bにおいて、複数の超砥粒2は、その先端を露出しつつ、その周囲から金属被膜3によって保持されている。
活性ロー材4として、ニッケル−クロム−ホウ素系(Ni−Cr−B系)のものを採用した。この活性ロー材4は、金属被膜3の突起部3bの起立方向とは反対の面側に、超砥粒2の後端側を包むように積層され、板状の層を構成している。そして、超砥粒2との間で化学的に結合する性質を有し、超砥粒2を強固に保持することができる。活性ロー材4として、これ以外に銅−銀−チタン系(Cu−Ag−Ti系)等を採用することもできる。
台金5は、後述する製造工程におけるホットプレス(850〜950℃程度)に耐える素材であればよく、例えばステンレス(SUS430)製の円板が採用される。この台金5は、活性ロー材4の金属被膜3を設けたのと反対側の面に設けられ、この活性ロー材4を支持する役目を有する。
上記のように構成されたパッド用コンディショナ1は、図2に示すように、ウェーハWの表面を研磨するCMP装置に、その表面が回転定盤Tに張り付けたパッドPと接触するように取り付けられる。そして、ウェーハWのCMP工程とともに、又はCMP工程とは別のタイミングで、パッドP表面の付着物を削ぎ落として目詰まりを解消し、その表面を粗化するとともに、パッドP表面の独立気泡内のスラリーSを掻き出して、新鮮なスラリーSを改めて供給することによる、パッドP表面の改質が行なわれる。本願発明に係るパッド用コンディショナ1は、超砥粒2が活性ロー材4によって強固に結合されているため、活性ロー材4からの超砥粒2の突出量gを大きめとしても(活性ロー材4への超砥粒2の埋め込み深さを60%よりも小さくしても)、使用中に超砥粒2が脱落して、完成直前の非常に高価なウェーハWの表面を傷付ける問題は生じない。また、複数の超砥粒2の先端位置が揃っているため(図1中に示した破線参照)、このパッド用コンディショナ1の安定した品質を確保することができる。
本願発明に係るパッド用コンディショナ1の製造方法の第一実施形態について、図3A及び図3Bを用いて説明する。
まず、このパッド用コンディショナ1を製造するための型枠6(外径Φ30mm、内径Φ10mm、厚み5mmの円板状)を用意する。この型枠6の素材として、例えば、チタン酸カルシウム系のセラミックを採用することができる。このチタン酸カルシウム系セラミックは、1000℃以上の耐熱性を有し、後述するホットプレス処理(処理温度:850〜950℃)にも十分耐えることができる。また、台金5の素材として用いられることが多いステンレス(SUS430)の熱膨張率と大きく異ならない熱膨張率(12.1×10−6/K)を有し、ホットプレス処理における加熱によって、型枠6と台金5との間の歪みを非常に小さくすることができ、パッド用コンディショナ1の品質を一層高めることができる。この型枠6の素材として、上記以外に、フォルステライト、ジルコニア等のセラミックを使用することもできる。
この型枠6には、先端角が45度の先細形状のダイヤモンド工具を用いて、その表面側に、超砥粒2を設けたい箇所に対応するそれぞれの位置に、表面側から奥に向かうほど細くなる、深さが1mmの総数310個の先細状(円錐状)の凹部6aが形成される。さらに、レーザ加工装置を用いて、この凹部6aの先端(円錐頂部)と連通し、この型枠6の裏面側に貫通する直径が0.10mmの貫通孔6bが形成されている(図3A(a)参照)。凹部6a同士の間隔は適宜決めることができるが、超砥粒2の平均粒径の1倍以上200倍以下とするのが、パッドP表面の改質作用を確保する上で好ましい。なお、凹部6aの形状は先細状の先端に超砥粒2の尖った部分が嵌り込むものであればよく、円錐状の代わりに角錐状とすることもできる。
さらに、この型枠6上に電気メッキを行うことができるように、その表面側に金属膜を形成する。この金属膜の形成には、例えばスパッタリング装置等を用いることができるが、その方法はこれに限定されない。この金属膜の種類としては、ニッケル、タングステン等を採用することができる。なお、この金属膜は図3A(a)中には図示されていない。
この凹部6a内に、JISB4130で規定される粒度#100/120の粒径範囲内に管理された合成ダイヤモンドからなる超砥粒2を撒く。これにより、各凹部6a内に、複数の超砥粒2が入った状態となる。この状態で、型枠6の裏面側(貫通孔6bが開口している面側)から、真空ポンプ等を用いて貫通孔6b内の空気を吸引する。すると、この貫通孔6bに最も近い超砥粒2のみが空気とともに貫通孔6b側に吸引された状態となる(図3A(b)参照)。このとき、型枠6に適度な振動を加えると、超砥粒2は尖った箇所が貫通孔6b内に向いた状態で安定する。空気を吸引しつつ、型枠6を逆さまにして軽く振動させると、貫通孔6bに最も近い超砥粒2以外の超砥粒2が脱落して、各凹部6a内に超砥粒2が1個ずつ設置された状態となる(図3A(c)参照)。
この状態で、型枠6をメッキ槽の中に静かに置き、各凹部内6aに設置された超砥粒2が動かないように、このメッキ槽の中に少しずつメッキ液を充填する。好ましいメッキ液はニッケル電解メッキ液であり、その種類はワット浴、スルファミン酸浴のいずれでもよい。メッキ液の充填が完了したら、型枠6に形成した金属膜部分にメッキ電源装置の陰極を接続し、例えば、メッキ時間が1時間、電流密度が1A/dm2の条件でメッキ処理を行う。このメッキ処理によって、平均で12μmの膜厚の金属被膜3(ニッケルメッキ層)が形成される(図3B(d)参照)。なお、金属被膜3を形成したくない部分には、予めメッキ防止塗料を塗布して、メッキ液が型枠6上のその部分に接液しないようにしておく。
なお、図3B(d)〜(f)においては、型枠6の表面に形成した金属被膜3を見やすくするために、その膜厚を誇張して描いているが、その膜厚は、実際には、超砥粒2の粒径(例えば0.15〜0.3mm)に対し、1/100〜20/100程度の非常に薄い膜である。
このようにメッキ処理によって、ニッケルからなる金属被膜3を形成した後に、型枠6の上下を逆転し、型枠6の金属被膜3を形成した面側に、活性ロー材4である粉末状のニッケル−クロム−ホウ素系(Ni−Cr−B系)を介在させつつ台金5(外径Φ30mm、厚み10mmの円板状(素材:SUS430))を設ける。この活性ロー材4として、その他に、銅−銀−チタン系(Cu−Ag−Ti系)等を採用することもできる。また、粉末状の活性ロー材4を用いる代わりに、金属被膜3の外形形状に合わせて加工された板状のものを用いることもできる。
活性ロー材4を介在させた状態で、真空ホットプレス装置内に搬入し、装置内を真空ポンプで10−3Paまで減圧した後に、Ar−5%H2ガスで置換する。なお、活性ロー材4としてCu−Ag−Ti系のものを用いる場合は、真空又はAr等の不活性ガス雰囲気中で処理を行う。引き続いて、型枠6をその上方からプレスで加圧しつつ950℃まで昇温する(ホットプレス処理)(図3B(e)参照)。置換ガスの組成や、ホットプレス処理の温度は、加圧条件や活性ロー材4の種類等の諸条件によって、適宜変更することができる。
このホットプレス処理によって活性ロー材4が溶融し、金属被膜3と台金5が活性ロー材4を介して密着した状態となる。ホットプレス装置から搬出して冷却した後に、金属被膜3から型枠6を剥離すると、台金5の表面に所定間隔で超砥粒2が配置されたパッド用コンディショナ1が得られる(図3B(f)参照)。型枠6の表面に形成された金属被膜3は、超砥粒2だけでなく型枠6との密着性も低いため、この剥離の際に、離型剤としての作用も奏する。このため、この剥離作業をスムーズに行うことができる。このようにして得られたパッド用コンディショナ1は、超砥粒2の後端側と活性ロー材4が強固に結合しているため、その使用中に、その表面から超砥粒2が脱落してウェーハW(図2参照)の表面を傷付けるのを確実に防止することができる。
本願発明に係るパッド用コンディショナ1の製造方法の第二実施形態について、図3A及び図4を用いて説明する。
この第二実施形態に係る製造方法は、型枠6の素材として、耐熱性を有しないプラスチック樹脂材を使用した場合に主に採用される。まず、このパッド用コンディショナ1を製造するための型枠6(外径Φ30mm、内径Φ10mm、厚み5mmの円板状)を用意する。この型枠6には、その成形工程において、又は所定の工具を用いて、その表面側に超砥粒2を設けたい箇所に対応するそれぞれの位置に、表面側から奥に向かうほど細くなる、深さが1mmの総数310個の先細状(円錐状)の凹部6aと、この凹部6aの先端(円錐頂部)と連通し、この型枠6の裏面側に貫通する直径が0.10mmの貫通孔6bが形成されている(図3A(a)参照)。この凹部6aと貫通孔6bの形状は、第一実施形態に係る型枠6に形成したものと同じであるが、異なる形状とすることもできる。
この実施形態で用いた樹脂材は、ABS樹脂にグラファイトを所定量練り込んだ導電性プラスチック樹脂材である。導電性のない樹脂材を用いる場合は、型枠6を所定形状に成形した後に、凹部6aを形成した面側に金属膜を形成する。この金属膜の形成には、例えばスパッタリング装置等を用いることができるが、その方法はこれに限定されない。この金属膜の種類としては、ニッケル、タングステン等を採用することができる。なお、この金属膜は図3A(a)中には図示されていない。
第一実施形態に係る製造方法と同様に、型枠6の凹部6a内に、JISB4130で規定される粒度#100/120の粒径範囲内に管理された合成ダイヤモンドからなる超砥粒2を撒く。これにより、各凹部6a内に、複数の超砥粒2が入った状態となる。この状態で、型枠6の裏面側(貫通孔6bが開口している面側)から、真空ポンプ等を用いて貫通孔6b内の空気を吸引する。すると、この貫通孔6bに最も近い超砥粒2のみが空気とともに貫通孔6b側に吸引された状態となる(図3A(b)参照)。このとき、型枠6に適度な振動を加えると、超砥粒2は尖った箇所が貫通孔6b内に向いた状態で安定する。空気を吸引しつつ、型枠6を逆さまにすると、貫通孔6bに最も近い超砥粒2以外の超砥粒2が脱落して、各凹部6a内に超砥粒2が1個ずつ設置された状態となる(図3A(c)参照)。
この状態で、型枠6をメッキ槽の中に静かに置き、各凹部6a内に設置された超砥粒2が動かないように、このメッキ槽の中に少しずつメッキ液を充填する。好ましいメッキ液はニッケル電解メッキ液であり、その種類はワット浴、スルファミン酸浴のいずれでもよい。メッキ液の充填が完了したら、型枠6に形成した金属膜部分にメッキ電源装置の陰極を接続し、例えば、メッキ時間が1時間、電流密度が1A/dm2の条件でメッキ処理を行う。このメッキ処理によって、平均で12μmの膜厚の金属被膜3(ニッケルメッキ層)が形成される(図4(a)参照)。なお、金属被膜3を形成したくない部分には、予めメッキ防止塗料を塗布して、メッキ液が型枠6上のその部分に接液しないようにしておく。
なお、図4(a)〜(c)においては、型枠6の表面に形成した金属被膜3を見やすくするために、その膜厚を誇張して描いているが、その膜厚は、実際には、超砥粒2の粒径(例えば0.15〜0.3mm)に対し、1/100〜20/100程度の非常に薄い膜である。
次に、型枠6表面に形成した金属被膜3を、超砥粒2とともにこの型枠6から剥離する(図4(b)参照)。型枠6の表面に形成された金属被膜3は、超砥粒2だけでなく型枠6との密着性も低いため、この剥離の際に、離型剤としての作用も奏する。このため、この剥離作業をスムーズに行うことができる。この金属被膜3は、剥離した型枠6の表面に沿う平坦部3aと、この平坦部3aから起立する円錐状の突起部3bとを有している。
さらに、超砥粒2を保持した状態の金属被膜3を、この金属被膜3を形成する際に用いた樹脂材の型枠6と同一形状であって、耐熱性を有するチタン酸カルシウム(熱膨張率:12.1×10−6/K)からなるロー付け治具(図示せず)に載置する。そして、ロー付け治具に載置した金属被膜3に、活性ロー材4である粉末状のニッケル−クロム−ホウ素系(Ni−Cr−B系)を介在させつつ台金5(外径Φ30mm、厚み10mmの円板状(素材:SUS430))を設ける。この活性ロー材4として、その他に、銅−銀−チタン系(Cu−Ag−Ti系)等を採用することもできる。
活性ロー材4を介在させた状態で、真空ホットプレス装置内に搬入し、装置内を真空ポンプで10−3Paまで減圧した後に、Ar−5%H2ガスで置換する。引き続いて、プレスで加圧しながら950℃まで昇温する(ホットプレス処理)。置換ガスの組成や、ホットプレス処理の温度は、加圧条件や活性ロー材4の種類等の諸条件によって、適宜変更することができる。
このホットプレス処理によって活性ロー材4が溶融し、金属被膜3と台金5が活性ロー材を介して密着した状態となる。ホットプレス装置から搬出して冷却した後に、金属被膜3からロー付け治具を剥離すると、台金5の表面に所定間隔で超砥粒2が配置されたパッド用コンディショナ1が得られる(図4(c)参照)。このようにして得られたパッド用コンディショナ1は、超砥粒2の後端側と活性ロー材4が強固に結合しているため、その使用中に、その表面から超砥粒2が脱落してウェーハの表面を傷付けるのを確実に防止することができる。
この第二実施形態のように、型枠6の素材として、セラミックと比較して安価な樹脂材を用いることにより、パッド用コンディショナ1の製造コストを大幅に抑制することができる。また、活性ロー材工程の前に型枠6を剥離し、この型枠6を別のパッド用コンディショナ1の製造に使用することができるので、この型枠6の使用効率が高く、さらなる製造コストの抑制を図ることができる。
上記各実施形態に係る製造方法によって得られた外径Φ30mmのパッド用コンディショナ1は、ペレットタイプと称され、外径Φ100〜300mmの台金5に、4〜30個のねじでねじ止めした状態でパッド用コンディショナ1として使用される場合もある。
上記において説明したパッド用コンディショナ1及びその製造方法はあくまでも一例である。超砥粒2の脱落を確実に防止するとともに、超砥粒2による改質作用を高める、という本願発明の課題を解決し得る限りにおいて、その構成を適宜変更することが可能である。