JP6409612B2 - 配向角の測定方法、及び、複層フィルムの製造方法 - Google Patents

配向角の測定方法、及び、複層フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複層フィルムに含まれる位相差層それぞれの配向角の測定方法、及び、前記の測定方法を含む複層フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置は、一般に、液晶セルと、この液晶セルを挟むように配置される一対の偏光板(即ち、入射側偏光板及び出射側偏光板)とを備える。前記の一対の偏光板は、例えばVAモード及びIPSモード等の一般的な液晶表示モードの場合には、通常、偏光板の吸収軸が直交するように配置される。
前記のような液晶表示装置の光学補償を行うため、液晶表示装置には、光学補償フィルムが設けられることがある。このような光学補償フィルムとしては、通常、複屈折を有する位相差層を備えた位相差フィルムが用いられている。また、位相差フィルムの光学特性を測定するために、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrcs社製)を用いて、位相差フィルムのミュラーマトリックスを測定する方法が知られている(特許文献1)。
特開2008−241634号公報
位相差フィルムで液晶表示装置の光学補償を行う場合、位相差フィルムに含まれる位相差層の配向角が当該位相差フィルムの光学補償能力に影響を与えることがある。ここで、位相差層の配向角とは、ある基準方向に対して位相差層の遅相軸がなす角をいう。例えば樹脂層を延伸して位相差層を製造する場合、延伸条件の変動によって配向角は大きく変動する傾向があった。そのため、所望の光学補償能力を発揮できる位相差フィルムを得るために、位相差フィルムを製造する際には位相差フィルムの配向角の測定を行なうことが求められていた。
ところが、従来は、位相差フィルムとして2層以上の位相差層を備える複層フィルムを用いる場合に、その複層フィルムに含まれる位相差層それぞれの配向角を簡単に測定することはできなかった。例えば、別々に用意した位相差層を貼り合わせて複層フィルムを製造する場合、貼り合わせ前に各位相差層の配向角を測定することが一般的であり、位相差層を貼り合わせた後に各位相差層の配向角を測定することは困難であった。
特に、複層構造を有する延伸前フィルムを延伸して位相差フィルムとしての複層フィルムを製造する場合、当該複層フィルムに含まれる位相差層それぞれの配向角を測定することは、特に困難であった。このような複層フィルムは、当該複層フィルムから位相差層をそれぞれ剥離させて配向角を測定することは可能であるが、剥離の操作を要し、また位相差層それぞれで別々に配向角を測定することになるので、手間が多くなっていた。
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、2層以上の位相差層を備える複層フィルムの前記位相差層それぞれの配向角を簡単に測定できる測定方法;並びに、前記配向角の測定方法を含む複層フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は前記課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、複層フィルムのミュラーマトリクスを利用することにより、その複層フィルムが備える位相差層の配向角を簡単に測定できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
〔1〕 複屈折を有する2層以上の位相差層を備える複層フィルムの、前記位相差層それぞれの配向角の測定方法であって、
前記2層以上の位相差層が有する配向角の値の数が、2つ以下であり、
前記測定方法が、
前記複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスを測定する工程と、
前記ミュラーマトリクスの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;前記ミュラーマトリクスのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、前記位相差層それぞれのレターデーションから、前記位相差層それぞれの配向角を計算する工程と、を含む、配向角の測定方法。
〔2〕 2層以上の延伸前層を備える延伸前フィルムを延伸して、複屈折を有する2層以上の位相差層を備える複層フィルムを得る工程と、
前記複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスを測定する工程と、
前記ミュラーマトリクスの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;前記ミュラーマトリクスのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、前記位相差層それぞれのレターデーションから、前記位相差層それぞれの配向角を計算する工程と、を含み、
前記2層以上の位相差層が有する配向角の値の数が、2つ以下である、複層フィルムの製造方法。
本発明によれば、2層以上の位相差層を備える複層フィルムの前記位相差層それぞれの配向角を簡単に測定できる測定方法;並びに、前記配向角の測定方法を含む複層フィルムの製造方法、を提供できる。
図1は、本発明の第一実施形態に係る測定方法によって位相差層の配向角を測定する対象としての複層フィルムを模式的に示す斜視図である。 図2は、本発明の第二実施形態に係る測定方法によって位相差層の配向角を測定する対象としての複層フィルムを模式的に示す斜視図である。 図3は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルムの製造方法に用いる製造装置を模式的に示す概要図である。 図4は、実施例1及び比較例1の結果を示すグラフである。 図5は、実施例2及び比較例2の結果を示すグラフである。 図6は、実施例3及び比較例3の結果を示すグラフである。 図7は、実施例4及び比較例4の結果を示すグラフである。 図8は、実施例5及び比較例5の結果を示すグラフである。
以下、例示物及び実施形態を挙げて本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は以下に挙げる例示物及び実施形態に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、別に断らない限り、レターデーションとは面内レターデーションのことを表す。また、ある膜の面内レターデーションは、別に断らない限り、(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、その膜の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、その膜の前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。dは、その膜の厚みを表す。
以下の説明において、ある膜の遅相軸とは、別に断らない限り、面内の遅相軸を表す。
以下の説明において、位相差層の配向角とは、前述の通り、ある基準方向に対して位相差層の遅相軸がなす角をいう。前記の基準方向は任意に設定できる。例えば複層フィルムが長尺のフィルムである場合、その長手方向又は幅方向を基準方向として設定しうる。また、位相差層の配向角は、通常、−90°〜90°の範囲である。
前記のレターデーション及び遅相軸の測定波長は、配向角の測定波長と同様の波長を採用しうる。
以下の説明において、「長尺のフィルム」とは、幅に対して、通常5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍以上の長さを有するフィルムをいい、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
以下の説明において、固有複屈折値が正の樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、固有複屈折値が負の樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
以下の説明において、別に断らない限り、「長手方向」とはフィルムの長手方向を指し、「幅方向」とはフィルムの幅方向を指す。
[1.第一実施形態]
第一実施形態では、位相差層を2層備える複層フィルムを対象とした、配向角の測定方法の実施形態を説明する。
〔1.1.複層フィルムの説明〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る測定方法によって位相差層の配向角を測定する対象としての複層フィルム100を模式的に示す斜視図である。
図1に示すように、第一実施形態に係る複層フィルム100は、第一の位相差層110及び第二の位相差層120を備える。「位相差層」とは、複屈折を有する層をいい、具体的には、通常2nm以上のレターデーションを有する層をいう。
複層フィルム100が備える位相差層の数は2層であるので、これらの位相差層が有する配向角の値の数は、2つ以下である。具体的には、第一の位相差層110の配向角θと第二の位相差層120の配向角θとが同じ値である場合、複層フィルム100が備える位相差層が有する配向角の数は1つとなる。また、第一の位相差層110の配向角θと第二の位相差層120の配向角θとが異なる値である場合、複層フィルム100が備える位相差層が有する配向角の数は2つとなる。このように複層フィルム100が備える位相差層(即ち、第一の位相差層110及び第二の位相差層120)が有する配向角の値の数が2つ以下である場合に、本実施形態に係る測定方法によってこれらの位相差層それぞれの配向角を測定できる。
本実施形態では、樹脂からなる2層の延伸前層を備えた延伸前フィルムを延伸して製造された、長尺の複層フィルム100を用いた例を示して説明する。このような例の複層フィルム100では、通常、第一の位相差層110及び第二の位相差層120が含む樹脂の種類が同じである場合には第一の位相差層110の配向角θと第二の位相差層120の配向角θとが同じ値となり、また、第一の位相差層110及び第二の位相差層120が含む樹脂の種類が異なる場合には第一の位相差層110の配向角θと第二の位相差層120の配向角θとが異なる値となる。
〔1.2.複層フィルムのミュラーマトリクスの測定〕
本発明の第一実施形態に係る測定方法では、複層フィルム100のトータルのミュラーマトリックスMtotalを測定する工程を行う。ミュラーマトリックスとは、光学部材のレターデーション等の偏光特性を数値化した4行4列の行列を表す。通常、複層フィルム100のトータルのミュラーマトリックスMtotalは、複層フィルム100への入射光10のストークスベクトルS、及び、複層フィルム100を透過した出射光20のストークスベクトルS’との間に、S’=MtotalSの関係を満たす。したがって、複層フィルム100への入射光10のストークスベクトルSを式(I)のように表し、複層フィルム100を透過した出射光20のストークスベクトルS’を式(II)のように表し、複層フィルム100のトータルのミュラーマトリックスMtotalを式(III)のように表した場合、通常は、下記式(IV)が成立する。
Figure 0006409612
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複層フィルム100のトータルのミュラーマトリックスMtotalは、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrcs社製)を用いて測定しうる。この測定は、測定に用いる光が第一の位相差層110及び第二の位相差層120をこの順に透過するようにして、行う。ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて実測したミュラーマトリクスは、そのまま用いてもよい。ただし、一般に、実測したミュラーマトリクスには、配向角の測定に用いるための位相差の成分に加え、偏光解消(Depolarization)の成分及び部分透過(Diattenuation)の成分が含まれる。そこで、配向角の測定精度を高めるために、実測したミュラーマトリクスから位相差の成分を抽出し、このように抽出したマトリクスを複層フィルム100のトータルのミュラーマトリックスMtotalとして用いてもよい。実測したミュラーマトリクスからの位相差の成分の抽出は、「S.Lu and R.A.Chipman “Interpretation of Mueller matrices based on polar decomposition”,J.Opt.Soc.A 13 1106−1113(1996)」の記載を参照して行いうる。
〔1.3.各位相差層のレターデーションの特定〕
本発明の第一実施形態に係る測定方法では、必要に応じて、第一の位相差層110及び第二の位相差層120それぞれのレターデーションの特定を行う。レターデーションの特定は、例えば、第一の位相差層110及び第二の位相差層120のそれぞれのレターデーションを実測して特定してもよい。
また、第一の位相差層110及び第二の位相差層120それぞれのレターデーションが予め判明している場合、その判明しているレターデーションを用いてもよい。例えば、複層フィルムの製造条件から第一の位相差層110のレターデーション及び第二の位相差層120のレターデーションが推定できる場合、その推定されたレターデーションの値を採用してもよい。一般に、位相差層の配向角は複層フィルムの製造条件の変動に応じて敏感に変化しうるが、位相差層のレターデーションは配向角ほどには複層フィルムの製造条件の変動に敏感ではない。そのため、例えば延伸前フィルムの延伸条件(延伸温度、延伸倍率、延伸方向、延伸速度等)を意図的に変化させない限り、通常は、所望のレターデーションを有する位相差層を安定に製造できる。したがって、製造条件から推定されるレターデーションの値を、第一の位相差層110及び第二の位相差層120それぞれのレターデーションとして用いることができる。これにより、レターデーションの実測が不要となるので、本実施形態に係る測定方法の工程数を減らすことができる。
また、前記のように、位相差層の配向角は、延伸条件等の製造条件が僅かでも変動すれば、大きく変化する傾向がある。そのため、例えば延伸前フィルムの延伸条件を意図的に変化させない場合でも、配向角の変化が生じることがありえる。本実施形態に係る測定方法は、このように変化しやすい第一の位相差層110及び第二の位相差層120それぞれの配向角θ及びθを簡単に測定できる点で、有用である。
〔1.4.配向角の計算〕
複層フィルム100のトータルのミュラーマトリックスMtotalを測定した後で、第一の位相差層110及び第二の位相差層120それぞれの配向角θ及びθを計算する工程を行う。この工程では、
(i)前記ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;
(ii)前記ミュラーマトリクスMtotalのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、
(iii)第一の位相差層110及び第二の位相差層120それぞれのレターデーション
から、第一の位相差層110及び第二の位相差層120それぞれの配向角θ及びθを計算する。
ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」とは、成分m12から成分m21を引いた差を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m21−m12」、とは、成分m21から成分m12を引いた差を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m11+m22」とは、成分m11と成分m22との和を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m11」とは、式(III)で表されるマトリクスの第2行第2列の成分を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m12」とは、式(III)で表されるマトリクスの第2行第3列の成分を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m13」とは、式(III)で表されるマトリクスの第2行第4列の成分を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m21」とは、式(III)で表されるマトリクスの第3行第2列の成分を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m22」とは、式(III)で表されるマトリクスの第3行第3列の成分を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m23」とは、式(III)で表されるマトリクスの第3行第4列の成分を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m31」とは、式(III)で表されるマトリクスの第4行第2列の成分を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m32」とは、式(III)で表されるマトリクスの第4行第3列の成分を表す。ミュラーマトリクスMtotalの「m33」とは、式(III)で表されるマトリクスの第4行第4列の成分を表す。
以下、本実施形態において配向角θ及びθを計算する工程を具体的に説明する。
一般に、ある位相差層のミュラーマトリクスMは、下記式(V)で表される。
Figure 0006409612
また、通常、複層フィルム100のトータルのミュラーマトリクスMtotalは、第一の位相差層110のミュラーマトリクスM及び第二の位相差層120のミュラーマトリクスMにより、下記式(VI)のように表される。
式(VI):
total=M
したがって、第一の位相差層110のミュラーマトリクスMを下記式(VII)のように表し、第二の位相差層120のミュラーマトリクスMを下記式(VIII)のように表した場合、下記式(IX)が成立する。
Figure 0006409612
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前記の式(VII)〜式(IX)において、θは第一の位相差層110の配向角を表し、φは「φ=2π×Re/λ」で表される値を表し、θは第二の位相差層120の配向角を表し、φは「φ=2π×Re/λ」で表される値を表す。また、πは円周率を表し、Reは第一の位相差層110のレターデーションを表し、Reは第二の位相差層120のレターデーションを表し、λはミュラーマトリクスMtotal及びレターデーションの測定波長を表す。
前記の式(IX)から分かるように、複層フィルム100においては、ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」は、「θ−θ」を変数に用いて表せる。具体的には、「m12−m21」は下記式(X)で表され、「m21−m12」は下記式(XI)で表され、「m11+m22」は下記式(XII)で表され、「m33」は下記式(XIII)で表される。下記の式において、x=2(θ−θ)である。
Figure 0006409612
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Figure 0006409612
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前記の式(X)〜式(XIII)において、成分m11、m12、m21、m22及びm33の値はミュラーマトリクスMtotalの測定によっていずれも判明しており、値φは第一の位相差層110のレターデーションReから算出でき、値φは第二の位相差層120のレターデーションReから算出できる。よって、式(X)〜式(XIII)は、いずれもxのみを変数とする方程式である。したがって、式(X)〜式(XIII)のいずれか一つを解くことにより、x=2(θ−θ)の値を得ることができる。また、式(X)〜式(XIII)は単純な1変数方程式であるので、計算を速やかに行うことができる。したがって、ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータから、「θ−θ」の値x/2を短時間で計算できる。
また、前記のように「θ−θ」の値x/2が求められると、配向角θ及びθを含むミュラーマトリクスMtotalの各成分m11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32を、θ又はθのみを変数とした方程式として表すことができる。例えば、ミュラーマトリクスMtotalの成分m11は下記式(XIV)で表されるが、この式(XIV)に「θ=θ+x/2」又は「θ=θ−x/2」を代入することで、θ又はθのみを変数とした方程式が得られる。
Figure 0006409612
ミュラーマトリクスMtotalの各成分m11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32から得られる方程式は、単純な1変数方程式であるので、計算を速やかに行うことができる。したがって、ミュラーマトリクスMtotalのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分に「x=2(θ−θ)」を適用した方程式を解くことにより、第一の位相差層110の配向角θ及び第二の位相差層120の配向角θを短時間で計算できる。
以上のように、本実施形態の測定方法によれば、第一の位相差層110の配向角θ及び第二の位相差層120の配向角θをそれぞれ測定できる。また、この測定方法は、第一の位相差層110及び第二の位相差層120の剥離が不要であるので、非破壊での測定が可能であり、また、配向角θ及び配向角θの測定が簡単である。さらに、前記の測定方法は、計算に要する時間が短時間であるので、例えばインライン測定機のような早い測定スピードが要求される場合において特に効果を発揮する。
[2.第二実施形態]
第二実施形態では、位相差層を3層備える複層フィルムを対象とした、配向角の測定方法の実施形態を説明する。
〔2.1.複層フィルムの説明〕
図2は、本発明の第二実施形態に係る測定方法によって位相差層の配向角を測定する対象としての複層フィルム200を模式的に示す斜視図である。図2において、図1で示したのと同様の部位には、図1で用いたのと同様の符号を用いて示す。
図2に示すように、第二実施形態に係る複層フィルム200は、第一実施形態に係る複層フィルム100の第二の位相差層120側の面に第三の位相差層230を設けた構造を有する。したがって、本実施形態に係る複層フィルム200は、第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230をこの順に備える。
本実施形態では、第一の位相差層110の配向角θ、第二の位相差層120の配向角θ、及び、第三の位相差層230の配向角θのうち、少なくとも2つの配向角が同じ値となっている。そのため、複層フィルム200が備える位相差層の数は3層であるが、これらの位相差層が有する配向角の値の数は、2つ以下となっている。このように複層フィルム200が備える位相差層(即ち、第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230)が有する配向角の値の数が2つ以下である場合に、本実施形態に係る測定方法によってこれらの位相差層それぞれの配向角を測定できる。
本実施形態では、樹脂からなる3層の延伸前層を備えた延伸前フィルムを延伸して製造された、長尺の複層フィルム200を用いた例を示して説明する。また、この例に示す複層フィルム200では、第一の位相差層110及び第三の位相差層230が含む樹脂の種類が同じであることにより、第一の位相差層110の配向角θと第三の位相差層230の配向角θとが同じ値となっている。さらに、第一の位相差層110及び第三の位相差層230が含む樹脂の種類と第二の位相差層120が含む樹脂の種類とが異なっていることにより、第一の位相差層110の配向角θ及び第三の位相差層230の配向角θと第二の位相差層120の配向角θとは異なる値になっている。したがって、本実施形態で示す例に係る複層フィルム200が備える位相差層が有する配向角の数は、2つとなっている。
〔2.2.複層フィルムのミュラーマトリクスの測定〕
本発明の第二実施形態に係る測定方法では、複層フィルム200のトータルのミュラーマトリックスMtotalを測定する工程を行う。複層フィルム200のトータルのミュラーマトリックスMtotalは、第一実施形態に係る測定方法と同様に、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrcs社製)を用いて測定しうる。また、この測定は、測定に用いる光が第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230をこの順に透過するようにして、行う。さらに、ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて実測したミュラーマトリクスは、そのまま用いてもよく、実測したミュラーマトリクスから抽出した位相差の成分のマトリクスを複層フィルム200のトータルのミュラーマトリックスMtotalとして用いてもよい。
〔2.3.各位相差層のレターデーションの特定〕
本発明の第二実施形態に係る測定方法では、必要に応じて、第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230それぞれのレターデーションの特定を行う。レターデーションの特定は、第一実施形態に係る測定方法と同様に行いうる。したがって、レターデーションは、例えば、第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230それぞれのレターデーションを実測して特定してもよい。また、レターデーションは、例えば、第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230それぞれのレターデーションが予め判明している場合、その判明しているレターデーションを用いてもよい。
〔2.4.配向角の計算〕
複層フィルム200のトータルのミュラーマトリックスMtotalを測定した後で、第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230それぞれの配向角θ、θ及びθを計算する工程を行う。この工程では、
(i)前記ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;
(ii)前記ミュラーマトリクスMtotalのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、
(iii)第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230それぞれのレターデーション
から、第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230それぞれの配向角θ、θ及びθを計算する。
以下、本実施形態において配向角θ及びθを計算する工程を具体的に説明する。
通常、複層フィルム200のトータルのミュラーマトリクスMtotalは、第一の位相差層110のミュラーマトリクスM、第二の位相差層120のミュラーマトリクスM及び第三の位相差層230のミュラーマトリクスMにより、下記式(XV)のように表される。
式(XV):
total=M
ここで、第一の位相差層110のミュラーマトリクスMを前記式(VII)のように表し、第二の位相差層120のミュラーマトリクスMを前記式(VIII)のように表し、第三の位相差層230のミュラーマトリクスMを下記式(XVI)のように表した場合を考える。
Figure 0006409612
前記の式(XVI)において、θは第三の位相差層230の配向角を表し、φは「2π×Re/λ」で表される値を表す。また、πは円周率を表し、Reは第三の位相差層230のレターデーションを表し、λはミュラーマトリクスMtotal及びレターデーションの測定波長を表す。
この場合、本実施形態に係る複層フィルム200においては、式(XV)に式(III)、式(VII)、式(VIII)及び式(XVI)を当てはめて分かるように、ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」は、「θ−θ」、「θ−θ」及び「θ−θ」を変数に用いて表せる。具体的には、「m12−m21」は下記式(XVII)で表され、「m21−m12」は下記式(XVIII)で表され、「m11+m22」は下記式(XIX)で表され、「m33」は下記式(XX)で表される。下記の式において、x=2(θ−θ)、x=2(θ−θ)、x=2(θ−θ)である。
Figure 0006409612
Figure 0006409612
Figure 0006409612
Figure 0006409612
前記の式(XVII)〜式(XX)において、成分m11、m12、m21、m22及びm33の値はミュラーマトリックスMtotalの測定によっていずれも判明しており、値φは第一の位相差層110のレターデーションReから算出でき、値φは第二の位相差層120のレターデーションReから算出でき、値φは第三の位相差層230のレターデーションReから算出できる。さらに、本実施形態では、θ=θとなっている。よって、式(XVII)〜式(XX)は、いずれもx又はxのみを変数とする方程式として表しうる。したがって、式(XVII)〜式(XX)のいずれか一つを解くことにより、x=2(θ−θ)又はx=2(θ−θ)の値を得ることができる。また、式(XVII)〜式(XX)は単純な1変数方程式であるので、計算を速やかに行うことができる。したがって、ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータから、「θ−θ」の値x/2又は「θ−θ」の値x/2を短時間で計算できる。
また、前記のように「θ−θ」の値x/2又は「θ−θ」の値x/2が求められると、配向角θ、θ及びθを含むミュラーマトリクスMtotalの各成分m11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32を、θ、θ及びθのいずれか一つのみを変数とした方程式として表すことができる。この方程式は、単純な1変数方程式であるので、計算を速やかに行うことができる。したがって、ミュラーマトリクスMtotalのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分に、「θ=θ」及び「x=2(θ−θ)」の組み合わせ、又は、「θ=θ」及び「x=2(θ−θ)」の組み合わせを適用した方程式を解くことにより、第一の位相差層110の配向角θ、第二の位相差層120の配向角θ及び第三の位相差層23の配向角θを短時間で計算できる。
以上のように、本実施形態の測定方法によれば、第一の位相差層110の配向角θ、第二の位相差層120の配向角θ及び第三の位相差層230の配向角θをそれぞれ測定できる。また、この測定方法は、第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230の剥離が不要であるので、非破壊での測定が可能であり、また、配向角θ、配向角θ及び配向角θの測定が簡単である。さらに、前記の測定方法は、計算に要する時間が短時間であるので、例えばインライン測定機のような早い測定スピードが要求される場合において特に効果を発揮する。
ところで、本実施形態では、第一の位相差層110の配向角θと第三の位相差層230の配向角θとが同じ値となり、且つ、第一の位相差層110の配向角θ及び第三の位相差層230の配向角θと第二の位相差層120の配向角θとが異なる値になっている例を示して説明した。しかし、複層フィルム200が備える位相差層が有する配向角の値の数が2つ以下である場合には、本実施形態と同様の要領で、(i)ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;(ii)ミュラーマトリクスMtotalのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、(iii)第一の位相差層110、第二の位相差層120及び第三の位相差層230それぞれのレターデーションから、第一の位相差層110の配向角θ、第二の位相差層120の配向角θ及び第三の位相差層230の配向角θをそれぞれ簡単に測定できる。したがって、本実施形態に係る測定方法は、例えば、配向角θ、配向角θ及び配向角θが同じ値となっている複層フィルム200に適用してもよい。また、本実施形態に係る測定方法は、例えば、配向角θと配向角θとが同じ値となり、且つ、配向角θ及び配向角θと配向角θとが異なる値になっている複層フィルム200に適用してもよい。さらに、本実施形態に係る測定方法は、例えば、配向角θと配向角θとが同じ値となり、且つ、配向角θと配向角θ及び配向角θとが異なる値になっている複層フィルム200に適用してもよい。
[3.配向角の測定方法に係る変形例]
本発明の測定方法は、上述した実施形態に限定されず、更に変更して実施しうる。
例えば、複層フィルムが備える位相差層の数は、4層以上であってもよい。複層フィルムが4層以上の位相差層を備える場合でも、それらの位相差層が有する配向角の値の数が2つ以下であれば、「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」を単純な1変数方程式で表せるので、上述した実施形態で示したのと同様の要領で計算することにより、(i)ミュラーマトリクスの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;(ii)ミュラーマトリクスのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、(iii)位相差層それぞれのレターデーションから、位相差層それぞれの配向角を求められる。
また、複層フィルムは、位相差層に加えて、等方性層を備えていてもよい。「等方性層」とは、別に断らない限り、複屈折を有さない層をいい、具体的には、レターデーションが通常2nm未満の層をいう。等方性層の位置及び数は、任意である。等方性層は光学的な等方性を有するので、位相差層の配向角の測定方法においては無視できる。したがって、等方性層を備える複層フィルムにおいても、上述した測定方法によって位相差層それぞれの配向角を測定できる。
さらに、上述した実施形態では、樹脂からなる延伸前層を備えた延伸前フィルムを延伸して製造された複層フィルムについて配向角を測定した例を示したが、このような製造方法以外の方法で製造された複層フィルムに上述した測定方法を適用してもよい。例えば、液晶性組成物の成膜及び硬化によって得られた位相差層を備える複層フィルムに、上述した配向角の測定方法を適用してもよい。
また、本発明の測定方法は、必要に応じて、上述した工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
[4.第三実施形態]
第三実施形態では、上述した配向角の測定方法を含む複層フィルムの製造方法の実施形態を説明する。
本発明の第三実施形態に係る製造方法では、2層以上の延伸前層を備える延伸前フィルムを用意する工程を行う。延伸前層とは、延伸されることにより位相差層となりうる層である。また、延伸前フィルムとは、延伸されることにより複層フィルムとなりうるフィルムである。本実施形態では、熱可塑性樹脂からなる延伸前層を備える延伸前フィルムを用いた例を示して説明する。また、この例に示す延伸前フィルムは、製造される複層フィルムの位相差層が有しうる配向角の値の数が2つ以下となるように、延伸前層が含む熱可塑性樹脂の種類を2種類以下にしている。
熱可塑性樹脂を用いて延伸前フィルムを製造する方法に制限は無く、例えば、共押出法及び共流延法を用いうる。中でも、共押出法が好ましい。共押出法は、延伸前層それぞれに対応した熱可塑性樹脂を溶融状態で同時に押し出して成形して、延伸前フィルムを得る方法である。共押出法は、製造効率の点、並びに、延伸前フィルム中に溶媒などの揮発性成分を残留させないという点で、優れている。
共押出方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。これらの中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法にはフィードブロック方式及びマルチマニホールド方式がある。その中でも、位相差層それぞれの厚みのバラツキを小さくできるので、マルチマニホールド方式が特に好ましい。
延伸前フィルムは、通常、長尺のフィルムとして製造される。また、このような長尺の延伸前フィルムは、通常、適切な巻き芯に巻き取ったロールの状態で用意される。
図3は、本発明の第三実施形態に係る複層フィルム340の製造方法に用いる製造装置300を模式的に示す概要図である。
図3に示すように、延伸前フィルム310は、当該延伸前フィルム310のロール320から引き出され、延伸装置330に供給される。そして、この延伸装置330において、延伸前フィルム310を延伸して、2層以上の位相差層(図3では図示省略。)を備える複層フィルム340を得る工程が行われる。
延伸前フィルム310の延伸方法は特に限定はされない。延伸方法としては、例えば、一軸延伸法及び二軸延伸法が挙げられる。一軸延伸法の例としては、フィルム搬送用のロールの周速の差を利用して延伸前フィルムをその長手方向に一軸延伸する方法;テンター延伸機を用いて延伸前フィルムをその幅方向に一軸延伸する方法;等が挙げられる。また、二軸延伸法の例としては、延伸前フィルムを把持するクリップの間隔を開いてその長手方向の延伸を行うと同時に、クリップを案内するガイドレールの広がり角度によりその幅方向に延伸する同時二軸延伸法;フィルム搬送用のロール間の周速の差を利用してその長手方向に延伸する工程と、フィルムの両端部をクリップで把持してテンター延伸機を用いてその幅方向に延伸する工程とを、異なる時に行う逐次二軸延伸法;などが挙げられる。さらに、例えば、長手方向又は幅方向に左右異なる速度の送り力若しくは引張り力又は引取り力を付加できるようにしたテンター延伸機を用いて、フィルムの幅方向に対して平行でも垂直でもない斜め方向に連続的に延伸する斜め延伸法を用いてもよい。
延伸温度は、複層フィルム340に発現させたいレターデーション等の光学特性に応じて、任意に設定しうる。具体的な延伸温度は、例えば、延伸前層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、Tg〜Tg+20℃としうる。また、各延伸前層に含まれる熱可塑性樹脂のガラス転移温度が異なる場合、前記Tgとしては、いずれか適切なガラス転移温度を設定しうる。
延伸装置330内の温度は、一様でなくてもよい。例えば、延伸装置330内に複数のヒーターを設けることにより、延伸温度に長手方向で分布を設けてもよく、延伸温度に幅方向で分布を設けてもよい。
延伸倍率は、複層フィルム340に発現させたいレターデーション等の光学特性に応じて、任意に設定しうる。具体的な延伸倍率は、長手方向の延伸では1.1倍〜3.0倍の範囲に設定してもよく、また、幅方向の延伸では1.3倍〜3.0倍の範囲に設定してもよい。
前記のような延伸により、2層以上の位相差層を備える複層フィルム340が得られる。こうして得られた複層フィルム340は、通常、適切な巻き芯に巻き取られて、ロール350の状態で回収される。
また、本実施形態に係る製造装置300には、複層フィルム340のトータルのミュラーマトリクスMtotalを測定するための測定装置として、ミュラーマトリクス・ポラリメーター360が設けられている。このミュラーマトリクス・ポラリメーター360によって、複層フィルム340のトータルのミュラーマトリクスMtotalを測定する工程が行われる。そして、測定された複層フィルム340のトータルのミュラーマトリクスMtotalは、制御装置370へ送られる。
制御装置370は、複層フィルム340が備える位相差層それぞれの配向角を計算するための計算部371、及び、延伸装置330における延伸条件を制御するための制御部372を備える。この制御装置370のハードウェア構成に制限はなく、通常は、CPU等のプロセッサ、RAM及びROM等のメモリ、入出力端子等のインターフェースなどで構成されるコンピュータにより構成される。このようなコンピュータは、予めメモリ等に記録された処理内容に従って処理を行い、計算部371及び制御部372の機能を実現しうるように設けられる。
計算部371は、ミュラーマトリクス・ポラリメーター360から送られてきたミュラーマトリクスMtotalの情報を受け取る。また、計算部371には、延伸装置330での延伸条件に応じて複層フィルム340の各位相差層に発現するレターデーションの情報が記録されている。計算部371は、これらの情報を用いて、(i)ミュラーマトリクスMtotalの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;(ii)ミュラーマトリクスMtotalのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、(iii)位相差層それぞれのレターデーションから、複層フィルム340の位相差層それぞれの配向角を計算する工程を行う。こうして計算された配向角の情報は、必要に応じて、図示しないディスプレイ等の出力装置に出力される。これにより、製造装置300を用いて複層フィルム340を製造する製造者は、複層フィルム340に含まれる位相差層それぞれの配向角を簡単に知ることができる。
また、本実施形態では、前記の配向角の情報は、制御部372へ送られる。制御部372は、計算部371での計算により得られた複層フィルム340の位相差層それぞれの配向角の情報に応じて、所望の配向角を有する複層フィルム340が得られるように、延伸装置330での延伸条件を制御する工程を行う。この際の制御態様は任意であり、例えば、特開2014−149346号公報に記載の方法を採用しうる。制御態様の具体例を示すと、延伸温度に長手方向又は幅方向で適切な分布を設けられるように、延伸装置330内に設けられたヒーターの温度を調整する態様が挙げられる。
前記のように、測定された配向角の情報に基づいて、前記配向角が所望の値となるように延伸条件を制御することによって、所望の配向角を有する位相差層を備えた複層フィルム340を安定して製造できる。そのため、製造装置300に供給される電力の電圧変化、製造環境における気流の変化、フィルム搬送に伴う振動などの影響によって延伸条件が意図しない変動を生じる場合でも、所望の複層フィルム340を簡単に製造することができる。
前記のような製造方法は、特に、ボーイングを生じやすい樹脂製の複層フィルムに用いて好適である。「ボーイング」とは、ある樹脂からなる層を延伸することによってその層に含まれる分子を配向させる場合に、分子配向方向が、層の幅方向中央部と幅方向端部とで異なる現象をいう。前記のボーイングの大きさは、延伸条件に応じて変化し易い。そのため、例え延伸条件の変化が小さいものであっても、ボーイングを原因とした配向角の変化は、大きくなり易い。したがって、従来は、所望の配向角を有する位相差層を安定して製造することは難しかった。特に、樹脂の種類が異なる場合、その樹脂からなる層のボーイングの大きさは異なることが多いので、前記の位相差層を複数備える複層フィルムは、安定な製造が特に困難であった。これに対し、本実施形態に係る製造方法では、位相差層それぞれの配向角を測定しながら当該位相差層を含む複層フィルム340を製造しており、更に測定された配向角の情報に基づいて延伸条件のフィードバック制御を行うことができる。そのため、本実施形態に係る製造方法によれば、ボーイングを生じやすい樹脂製の複層フィルムであっても、当該複層フィルムに含まれる位相差層の配向角を所望の値に簡単に調整できる。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
[製造例1.位相差層を2層備える複層フィルムの製造]
レターデーションが判明している単層の延伸フィルムとして、熱可塑性樹脂からなる位相差フィルムAを用意した。そして、この位相差フィルムAの片面を当該位相差フィルムAの「おもて面」、もう片面を当該位相差フィルムAの「裏面」と設定した。
さらに、レターデーションが判明している単層の延伸フィルムとして、熱可塑性樹脂からなる位相差フィルムBを用意した。そして、この位相差フィルムBの片面を当該位相差フィルムBの「おもて面」、もう片面を当該位相差フィルムBの「裏面」と設定した。
その後、位相差フィルムAの裏面と位相差フィルムBのおもて面とを貼り合わせて、位相差フィルムA及び位相差フィルムBを備える複層フィルムを得た。
[製造例2.位相差層を3層備える複層フィルムの製造]
ポリカーボネート樹脂及びポリスチレン樹脂を共押出することにより、ポリカーボネート樹脂からなる第一の延伸前層、ポリスチレン樹脂からなる第二の延伸前層、及び、ポリカーボネート樹脂からなる第三の延伸前層をこの順に備える長尺の延伸前フィルムを製造した。
前記の延伸前フィルムを、当該延伸前フィルムの幅方向に延伸することにより、ポリカーボネート樹脂からなる第一の位相差層、ポリスチレン樹脂からなる第二の位相差層、及び、ポリカーボネート樹脂からなる第三の位相差層をこの順に備える複層フィルムを製造した。この複層フィルムの第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層それぞれのレターデーションを、延伸条件から推定して得た。この複層フィルムでは、第一の位相差層及び第三の位相差層がいずれも同じ樹脂からなるので、第一の位相差層の配向角と第三の位相差層の配向角とは同じ値になる。
[製造例3.位相差層を3層備える複層フィルムの製造]
延伸前フィルムの延伸方向を当該延伸前フィルムの長手方向に変更した。以上の事項以外は製造例2と同様にして、ポリカーボネート樹脂からなる第一の位相差層、ポリスチレン樹脂からなる第二の位相差層、及び、ポリカーボネート樹脂からなる第三の位相差層をこの順に備える複層フィルムを製造した。この複層フィルムの第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層それぞれのレターデーションを、延伸条件から推定して得た。この複層フィルムでは、第一の位相差層及び第三の位相差層がいずれも同じ樹脂からなるので、第一の位相差層の配向角と第三の位相差層の配向角とは同じ値になる。
[1.実施例1]
(1−1.おもて側からの測定)
製造例1で製造した複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスMtotalを、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrcs社製)によって測定した。この際、測定に用いる光が位相差フィルムA及び位相差フィルムBをこの順に透過するようにして、ミュラーマトリクスMtotalの測定を行った。また、測定に用いる光の波長は、550nmとした。そして、測定されたミュラーマトリクスMtotalの成分m12及び成分m21、位相差フィルムAのレターデーション、並びに、位相差フィルムBのレターデーションを、m12−m21に係る方程式(式(X)参照)に当てはめることで、位相差フィルムA及び位相差フィルムBの配向角差θ−θを計算した。さらに、この配向角差θ−θを、ミュラーマトリクスMtotalの成分m11に係る方程式(式(XIV)参照)に適用して解くことにより、複層フィルムに含まれる位相差フィルムA及び位相差フィルムBそれぞれの配向角を計算した。
また、前記の配向角の測定は、複層フィルムの8つの地点で行った。
(1−2.裏側からの測定)
複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスMtotalの測定の際、測定に用いる光が位相差フィルムB及び位相差フィルムAをこの順に透過するようにした。以上の事項以外は前記工程(1−1)と同様にして、複層フィルムに含まれる位相差フィルムA及び位相差フィルムBそれぞれの配向角を、前記工程(1−1)での測定地点と同様の地点で測定した。
[比較例1]
(C1−1.おもて側からの測定)
実施例1で配向角の測定を行った複層フィルムの、位相差フィルムAと位相差フィルムBとを剥がして分離させた。
分離後の位相差フィルムAの配向角を、ミュラーマトリクス・ポラリメーター(Axometrcs社製)を用いて測定した。また、分離後の位相差フィルムBの配向角を、前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定した。位相差フィルムAの配向角の測定の際、測定に用いる光は、位相差フィルムAのおもて面から裏面へと透過するようにした。また、位相差フィルムBの配向角の測定の際、測定に用いる光は、位相差フィルムBのおもて面から裏面へと透過するようにした。さらに、前記の測定の際、測定に用いる光の波長は、550nmとした。また、配向角の測定は、前記工程(1−1)での測定地点と同様の地点で行った。
(C1−2.裏側からの測定)
位相差フィルムAの配向角の測定の際、測定に用いる光が位相差フィルムAの裏面からおもて面へと透過するようにした。また、位相差フィルムBの配向角の測定の際、測定に用いる光が位相差フィルムBの裏面からおもて面へと透過するようにした。以上の事項以外は前記工程(C1−1)と同様にして、位相差フィルムA及び位相差フィルムBそれぞれの配向角を、前記工程(1−1)での測定地点と同様の地点で測定した。
[結果(実施例1及び比較例1)]
前記の実施例1及び比較例1の結果を、図4に示す。図4に示すグラフにおいて、横軸は位相差フィルムAの配向角を表し、縦軸は位相差フィルムBの配向角を表す。また、図4に示すプロットのうち、白色四角形のプロットは実施例1の工程(1−1)で測定された値を示し、白色三角形のプロットは実施例1の工程(1−2)で測定された値を示し、黒色四角形のプロットは比較例1の工程(C1−1)で測定された値を示し、黒色三角形のプロットは比較例1の工程(C1−2)で測定された値を示す。
図4から分かるように、いずれの測定地点においても、測定される配向角の値は実施例1と比較例1とでほぼ一致している。このように、比較例1において実測された配向角とほぼ一致する値が実施例1において得られているのであるから、本発明の測定方法により、複層フィルムに含まれる位相差層それぞれの配向角を簡単に測定できることが確認された。
[実施例2]
ミュラーマトリクスMtotalの測定に用いる光の波長を400nmに変更した。以上の事項以外は実施例1の工程(1−1)と同様にして、製造例1で製造した複層フィルムに含まれる位相差フィルムA及び位相差フィルムBそれぞれの配向角を、複層フィルムの8つの地点で測定した。
[比較例2]
実施例2で配向角の測定を行った複層フィルムの、位相差フィルムAと位相差フィルムBとを剥がして分離させた。
分離後の位相差フィルムAの配向角を、前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定した。また、分離後の位相差フィルムBの配向角を、前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定した。位相差フィルムAの配向角の測定の際、測定に用いる光は、位相差フィルムAのおもて面から裏面へと透過するようにした。また、位相差フィルムBの配向角の測定の際、測定に用いる光は、位相差フィルムBのおもて面から裏面へと透過するようにした。さらに、前記の測定の際、測定に用いる光の波長は、400nmとした。また、配向角の測定は、実施例2での測定地点と同様の地点で行った。
[結果(実施例2及び比較例2)]
前記の実施例2及び比較例2の結果を、図5に示す。図5に示すグラフにおいて、横軸は位相差フィルムAの配向角を表し、縦軸は位相差フィルムBの配向角を表す。また、図5に示すプロットのうち、白色四角形のプロットは実施例2で測定された値を示し、黒色四角形のプロットは比較例2で測定された値を示す。
図5から分かるように、いずれの測定地点においても、測定される配向角の値は実施例2と比較例2とでほぼ一致している。このように、比較例2において実測された配向角とほぼ一致する値が実施例2において得られているのであるから、本発明の測定方法により、複層フィルムに含まれる位相差層それぞれの配向角を簡単に測定できることが確認された。
[実施例3]
ミュラーマトリクスMtotalの測定に用いる光の波長を800nmに変更した。以上の事項以外は実施例1の工程(1−1)と同様にして、製造例1で製造した複層フィルムに含まれる位相差フィルムA及び位相差フィルムBそれぞれの配向角を、複層フィルムの8つの地点で測定した。
[比較例3]
実施例3で配向角の測定を行った複層フィルムの、位相差フィルムAと位相差フィルムBとを剥がして分離させた。
分離後の位相差フィルムAの配向角を、前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定した。また、分離後の位相差フィルムBの配向角を、前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定した。位相差フィルムAの配向角の測定の際、測定に用いる光は、位相差フィルムAのおもて面から裏面へと透過するようにした。また、位相差フィルムBの配向角の測定の際、測定に用いる光は、位相差フィルムBのおもて面から裏面へと透過するようにした。さらに、前記の測定の際、測定に用いる光の波長は、800nmとした。また、配向角の測定は、実施例3での測定地点と同様の地点で行った。
[結果(実施例3及び比較例3)]
前記の実施例3及び比較例3の結果を、図6に示す。図6に示すグラフにおいて、横軸は位相差フィルムAの配向角を表し、縦軸は位相差フィルムBの配向角を表す。また、図6に示すプロットのうち、白色四角形のプロットは実施例3で測定された値を示し、黒色四角形のプロットは比較例3で測定された値を示す。
図6から分かるように、いずれの測定地点においても、測定される配向角の値は実施例3と比較例3とでほぼ一致している。このように、比較例3において実測された配向角とほぼ一致する値が実施例3において得られているのであるから、本発明の測定方法により、複層フィルムに含まれる位相差層それぞれの配向角を簡単に測定できることが確認された。
[実施例4]
製造例2で製造した複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスMtotalを、前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターによって測定した。この際、測定に用いる光が第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層をこの順に透過するようにして、ミュラーマトリクスMtotalの測定を行った。また、測定に用いる光の波長は、530nmとした。そして、測定されたミュラーマトリクスMtotalの成分m12及び成分m21、第一の位相差層のレターデーション、第二の位相差層のレターデーション、及び、第三の位相差層のレターデーションを、m12−m21に係る方程式(式(XVII)参照)に当てはめることで、第一の位相差層及び第二の位相差層の配向角差θ−θを計算した。さらに、この配向角差θ−θを、ミュラーマトリクスMtotalの成分m11に係る方程式に適用して解くことにより、複層フィルムに含まれる第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層それぞれの配向角を計算した。
また、前記の配向角の測定は、複層フィルムの幅方向の一端近傍の地点1、幅方向の中央の地点2、及び、幅方向の他端近傍の地点3で行った。
[比較例4]
実施例4で配向角の測定を行った複層フィルムの、第二の位相差層及び第三の位相差層を研磨によって除去し、第一の位相差層のみからなるサンプルフィルムを用意した。そして、このサンプルフィルムの配向角を前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定することにより、第一の位相差層の配向角を測定した。
また、実施例4で配向角の測定を行った複層フィルムの、第一の位相差層及び第三の位相差層を研磨によって除去し、第二の位相差層のみからなるサンプルフィルムを用意した。そして、このサンプルフィルムの配向角を前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定することにより、第二の位相差層の配向角を測定した。
サンプルフィルムの配向角の測定の際、測定に用いる光は、実施例4で複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスMtotalの測定に用いた光と同じ向きでサンプルフィルムを透過するようにした。また、前記の測定の際、測定に用いる光の波長は実施例4と同様にした。さらに、配向角の測定は、幅方向の位置が実施例4での測定地点と同じになる地点で行った。
なお、実施例4で配向角の測定を行った複層フィルムの第三の位相差層は、厚みが薄かったため、第一の位相差層及び第二の位相差層を研磨してもサンプルフィルムを得られなかった。そのため、この複層フィルムの第三の位相差層については、ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いた配向角の実測を行っていない。
[結果(実施例4及び比較例4)]
前記の実施例4及び比較例4の結果を、表1及び図7に示す。図7に示すグラフにおいて、横軸は測定地点の幅方向の位置を表し、縦軸は配向角を表す。また、図7に示すプロットのうち、白色四角形のプロットは実施例4で測定された第一の位相差層の配向角の値を示し、白色円形のプロットは実施例4で測定された第二の位相差層の配向角の値を示し、黒色四角形のプロットは比較例4で測定された第一の位相差層の配向角の値を示し、黒色円形のプロットは比較例4で測定された第二の位相差層の配向角の値を示す。
ただし、表1及び図7では、第二の位相差層の配向角の値は、幅方向における配向角の分布を把握し易くするために、前記実施例4及び比較例4で得られた配向角の値に90°を加算した値を示す。ポリカーボネート樹脂の固有複屈折値は正であるので第一の位相差層には分子の配向方向に対して平行な遅相軸が発現するのに対し、ポリスチレン樹脂の固有複屈折値は負であるので第二の位相差層には分子の配向方向に対して垂直な遅相軸が発現することに対応したものである。
Figure 0006409612
表1及び図7から分かるように、いずれの測定地点においても、測定される配向角の値は実施例4と比較例4とでほぼ一致している。このように、比較例4において実測された配向角とほぼ一致する値が実施例4において得られているのであるから、本発明の測定方法により、複層フィルムに含まれる位相差層それぞれの配向角を簡単に測定できることが確認された。
[実施例5]
複層フィルムとして製造例3で製造したものを用いた。以上の事項以外は実施例4と同様にして、複層フィルムに含まれる第一の位相差層、第二の位相差層及び第三の位相差層それぞれの配向角を、複層フィルムの幅方向の一端近傍の地点1、幅方向の中央の地点2、及び、幅方向の他端近傍の地点3で測定した。
[比較例5]
実施例5で配向角の測定を行った複層フィルムの、第二の位相差層及び第三の位相差層を研磨によって除去し、第一の位相差層のみからなるサンプルフィルムを用意した。そして、このサンプルフィルムの配向角を前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定することにより、第一の位相差層の配向角を測定した。
また、実施例5で配向角の測定を行った複層フィルムの、第一の位相差層及び第三の位相差層を研磨によって除去し、第二の位相差層のみからなるサンプルフィルムを用意した。そして、このサンプルフィルムの配向角を前記ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いて測定することにより、第二の位相差層の配向角を測定した。
サンプルフィルムの配向角の測定の際、測定に用いる光は、実施例5で複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスMtotalの測定に用いた光と同じ向きでサンプルフィルムを透過するようにした。また、前記の測定の際、測定に用いる光の波長は実施例5と同様にした。さらに、配向角の測定は、幅方向の位置が実施例5での測定地点と同じになる地点で行った。
なお、実施例5で配向角の測定を行った複層フィルムの第三の位相差層は、厚みが薄かったため、第一の位相差層及び第二の位相差層を研磨してもサンプルフィルムを得られなかった。そのため、この複層フィルムの第三の位相差層については、ミュラーマトリクス・ポラリメーターを用いた配向角の実測を行っていない。
[結果(実施例5及び比較例5)]
前記の実施例5及び比較例5の結果を、表2及び図8に示す。図8に示すグラフにおいて、横軸は測定地点の幅方向の位置を表し、縦軸は配向角を表す。また、図8に示すプロットのうち、白色四角形のプロットは実施例5で測定された第一の位相差層の配向角の値を示し、白色円形のプロットは実施例5で測定された第二の位相差層の配向角の値を示し、黒色四角形のプロットは比較例5で測定された第一の位相差層の配向角の値を示し、黒色円形のプロットは比較例5で測定された第二の位相差層の配向角の値を示す。
ただし、表2及び図8では、第二の位相差層の配向角の値は、幅方向における配向角の分布を把握し易くするために、前記実施例5及び比較例5で得られた配向角の値に90°を加算した値を示す。実施例4及び比較例4の結果と同様に、ポリカーボネート樹脂の固有複屈折値は正であるので第一の位相差層には分子の配向方向に対して平行な遅相軸が発現するのに対し、ポリスチレン樹脂の固有複屈折値は負であるので第二の位相差層には分子の配向方向に対して垂直な遅相軸が発現することに対応したものである。
Figure 0006409612
表2及び図8から分かるように、いずれの測定地点においても、測定される配向角の値は実施例5と比較例5とでほぼ一致している。このように、比較例5において実測された配向角とほぼ一致する値が実施例5において得られているのであるから、本発明の測定方法により、複層フィルムに含まれる位相差層それぞれの配向角を簡単に測定できることが確認された。
10 入射光
20 出射光
100 複層フィルム
110 第一の位相差層
120 第二の位相差層
200 複層フィルム
230 第三の位相差層
300 複層フィルムの製造装置
310 延伸前フィルム
320 延伸前フィルムのロール
330 延伸装置
340 複層フィルム
350 複層フィルムのロール
360 ミュラーマトリクス・ポラリメーター
370 制御装置
371 計算部
372 制御部

Claims (2)

  1. 複屈折を有する2層以上の位相差層を備える複層フィルムの、前記位相差層それぞれの配向角の測定方法であって、
    前記2層以上の位相差層が有する配向角の値の数が、2つ以下であり、
    前記測定方法が、
    前記複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスを測定する工程と、
    前記ミュラーマトリクスの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;前記ミュラーマトリクスのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、前記位相差層それぞれのレターデーションから、前記位相差層それぞれの配向角を計算する工程と、を含む、配向角の測定方法。
  2. 2層以上の延伸前層を備える延伸前フィルムを延伸して、複屈折を有する2層以上の位相差層を備える複層フィルムを得る工程と、
    前記複層フィルムのトータルのミュラーマトリクスを測定する工程と、
    前記ミュラーマトリクスの「m12−m21」、「m21−m12」、「m11+m22」及び「m33」からなる群より選ばれる一つのパラメータ;前記ミュラーマトリクスのm11、m12、m13、m21、m22、m23、m31及びm32からなる群より選ばれる一つの成分;並びに、前記位相差層それぞれのレターデーションから、前記位相差層それぞれの配向角を計算する工程と、を含み、
    前記2層以上の位相差層が有する配向角の値の数が、2つ以下である、複層フィルムの製造方法。
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