JP6407786B2 - 溶接補助装置および溶接補助方法 - Google Patents
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複数の溶接方法を組み合わせた方法として、例えば、レーザまたは電子ビームによるキーホール溶接の後に残層部に肉盛りをする組合わせ溶接がある。付き合わせた厚板材に両側から組合わせ溶接を施す場合、レーザ溶接の溶け込み深さなどを考慮してU字型の開先部が設けられることが多い。
よって、この始端部および終端部の少なくとも一方に(以下、(以下、「終始端部」という))にタブ板と呼ばれる経路延長器具を取り付けて、ビードを延長することがある。この延長されたビードが溶接後にタブ板ごと切断されて、終始端部の欠陥の発生が防止される。
そこで、アーク溶接のみで溶接される場合においては、タブ板の内部に流水経路を形成して、タブ板を冷却することでタブ板切除の労力を低減する装置が提案されている。
また、生産コストの高いこのタブ板を一度の溶接により全て廃棄する他の従来技術では、一度の終始端部の欠陥防止処理にかかる総コストが高額となっていた。
図1は、第1実施形態にかかる溶接補助装置10(図3)によって好適に溶接が補助される2つの金属板11(母材11)の溶接箇所の斜視図である。
上述したように、2枚の金属板11を溶接する場合、例えばキーホール溶接およびアーク溶接を用いた溶接など、2種類の溶接が組み合わされることがある。
例えば、板厚120mmの厚板材の表裏両面に35mm深さのU字型の開先部18が設けられる。このとき、ルート面13の長さは50mm(120mm−35×2mm)である。
金属板11が厚板材であって、この厚板材の表裏両面から組合わせ溶接を施す場合、まず、レーザ等を母材11に照射して母材11を融解して溶接するキーホール溶接を施す。キーホール溶接によって2枚の母材11のルート面13が溶接される。
キーホール溶接によって、厚さ方向Aのルート面13に沿って開先底部17にビード16a(16)が形成される。
このようにして形成されたビード16は、溶接線14の終始端部22に欠陥が発生しやすい。
図3は、第1実施形態にかかる溶接補助装置10の斜視図である。
第1実施形態にかかる溶接補助装置10は、図3に示されるように、溶接接合される2枚の母材11が有する開先底部17を延長するように母材11の溶接線14の終始端部22に接合される底部延長板24と、底部延長板24を挟み込んで固定されるとともに開先部18の開先側面26の形状を模した疑似側面27を有して開先部18の開先側面26を延長する2つの側面延長部材28と、側面延長部材28に経路の一部が内設される通水管29と、を備える。
この底部延長板24の一側面は、開先底部17の高さに揃えられて、延長底部24aを形成する。延長底部24aの横幅は開先底部17の幅に、奥行きはビード16を延長する長さに調整されている。
底部延長板24は、開先部18に肉盛りされた溶材19に溶融した底部延長板24が混入しても溶接品質を低下させない観点から母材11と同材質であることが望ましい。この底部延長板24は、例えば母材11に接合されて固定される。
これら2つの側面延長部材28は、例えば図3に示されるような固定治具31によって挟み込まれて、底部延長板24に押し当てられて底部延長板24に固定される。この側面延長部材28には、開先部18の開先側面26の形状を模した疑似側面27が設けられる。
側面延長部材28は、例えば上述した銅または銅合金に代表されるように、母材11と比較して熱伝導率が高い金属で組成される。側面延長部材28に熱伝導率が高い金属を用いることで、溶接により加熱された溶材19との接触部を即時に冷却して側面延長部材28と溶材19とが結合することを防止する。
また、シール材32によるシール性を発揮させるため、例えば、図3に示されるように、底部延長板24に固定される第1支持部材33と、この第1支持部材33に支持されて側面延長部材28を母材11へ押し付ける第1押しねじ34と、を備えているのが望ましい。
この延長底部24aの形状は必要に応じて開先底部17の形状に合わせて湾曲していてもよい。そして、側面延長部材28で底部延長板24の溶接線14に平行な側面を挟み込む(S12)。
また、第1押しねじ34によって側面延長部材28は、母材11に押し付けられ、母材11との接触面における密着性が高められる。
次に、底部延長板24を含めて開先部18を溶接する(S15)。
まず、キーホール溶接によって母材11を溶融させて開先底部17を溶接する。このとき、終始端部22に設けられた延長底部24aをも母材11と同様に溶融してキーホールビード16aを形成させる。次に、例えば肉盛溶接を繰り返す多層盛り溶接によって、開先部18に溶材19を充填する。
側面延長部材28への通水によって側面延長部材28への溶材19の結合は防止されているので、固定治具31を取外すことで側面延長部材28は容易に底部延長板24から取り外される。
そして、開先部18から突出したビード16を底部延長板24ごと切断して動作を終了する(S17)。
さらに、単純形状の底部延長板24のみを量産して使い捨てればよいので、従来と比較して製造コストも抑制される。
図4は、第2実施形態にかかる溶接補助装置10の斜視図である。
なお、図4以降では、簡単のため、図3で示した第1押しねじ34、第1支持部材33および固定治具31の表示を省略している。
図5は、ルート壁部材36を疑似側面27の反対側の背面から見た図である。
なお、図5以降の各図では、簡単のため、図3などで示したシール材32は省略している。例えば、ルート壁部材36および固定台37は、それぞれの接触面に互いに嵌め合されるように成形された凹凸部39を備える。
また、この孔穴41は、例えば接触面に沿った長穴41aである。この場合、ルート壁部材36は、固定台37に嵌め合された後も、この孔穴41の範囲内で接触面に沿ってスライドさせることができる。
よって、固定台37を底部延長板24に固定した後も、ルート壁部材36の位置を調節して開先側面26(図4)の形状に合わせて調整することができる。
また、図6は、第2実施形態にかかる溶接補助装置10の固定台37の斜視図である。
図6は、固定台37を図5のルート壁部材36と同一の視角から見た図である。
また、図7は、第2実施形態にかかる溶接補助装置10のルート壁部材36の位置調整の説明図である。
図7に示されるように第2押しねじ46でルート壁部材36を押し込むことで、直接手でルート壁部材36の位置を調整するよりも、より容易に正確に調整することができる。
図8および図9に示されるように、凹凸部39に設けられる孔穴41は、接触面に沿って複数設けられていてもよい。
例えば、ルート壁部材36の孔穴41の個数は、固定台37の孔穴41の個数よりも多く設けられ、孔穴41のうちの1つは図6と同様に固定棒38で貫通される長穴41a(41)である。ルート壁部材36の位置が調整された場合に、長穴41aに並置された他の孔穴41に第2固定棒38a(38)を貫通させて位置を固定する。
このように、第2実施形態にかかる溶接補助方法によれば、第1実施形態の効果に加え、固定台37に対するルート壁部材36の位置を調整ことができる。
そこで、固定台37に第1支持部材33を固定して、第1押しねじ34でルート壁部材36を押し込んでシール材32によるシール性を高めてもよい。当然、第1支持部材33が固定される部材は、第1実施形態と同様に底部延長板24であってもよい。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。
図11は、第3実施形態にかかる溶接補助装置10の斜視図である。
上段壁部52および下段壁部51の内部には、それぞれ通水管29が設けられる。また、上段壁部52は、下段壁部51との接触面に沿って開先の開先幅dを狭める向きに可動に嵌め合わされる。
さらに、図14は、上段壁部52および下段壁部51を係合させたときの正面図。
また、下段壁部51は、上段壁部52の疑似側面27と反対側の背面から上段壁部52を開先幅dを狭める向きに押し込む第3押しねじ53と、第3押しねじ53を支持する第3ねじ孔54が設けられた下段壁部51に固定される第3支持部材58と、を備えているのが好ましい。
第2押しねじ46と同様に、第3押しねじ53を押し込むことで、下段壁部51に対する上段壁部52の位置を調整することができる。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
Claims (14)
- 溶接接合される2枚の母材が有する開先部の底部を延長するように前記母材の溶接線の始端部および終端部の少なくとも一方に接合される底部延長板と、
前記底部延長板を挟み込んで固定されるとともに前記開先部の開先側面の形状を模した疑似側面を有して前記開先部の開先側面を延長する2つの側面延長部材と、
前記側面延長部材に経路の一部が内設される通水管と、を備えることを特徴とする溶接補助装置。 - 前記2つの前記側面延長部材を前記底部延長板に押し当てる向きに挟み込んで前記固定をする固定治具を備える請求項1に記載の溶接補助装置。
- 前記側面延長部材は、前記疑似側面が前記底部延長板が形成する前記底部に連続的に接続される位置で固定される請求項1または請求項2に記載の溶接補助装置。
- 前記側面延長部材は、前記疑似側面を有するルート壁部材と、前記底部延長板に直接接合される固定台と、に分離可能である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の溶接補助装置。
- 前記ルート壁部材と前記固定台とのそれぞれの接触面に互いに嵌め合されるように成形された凹凸部と、
互いに嵌め合わされた前記凹凸部を貫通して前記ルート壁部材を前記固定台にピン留めする固定棒と、
前記凹凸部に設けられて前記固定棒を貫通させる孔穴と、を備える請求項4に記載の溶接補助装置。 - 前記孔穴は、前記接触面に沿って複数設けられている請求項5に記載の溶接補助装置。
- 前記孔穴は、前記接触面に沿った長径を有する非真円な円形である請求項5または請求項6に記載の溶接補助装置。
- 前記ルート壁部材の前記疑似側面と反対側の背面から前記ルート壁部材を前記開先部の開先幅を狭める向きに押し込む第2押しねじと、
前記第2押しねじを支持する第2ねじ孔が設けられて前記固定台に固定される第2支持部材と、を備える請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の溶接補助装置。 - 前記側面延長部材の前記母材との接触面に設けられて前記側面延長部材と前記母材とを密着させるシール材を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の溶接補助装置。
- 前記ルート壁部材は、
前記固定台に直接接触する下段壁部と、
前記下段壁部に可動に係合される上段壁部と、を備え、
前記上段壁部は、前記下段壁部との接触面に沿って前記開先部の開先幅を狭める向きに可動に嵌め合わされる請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の溶接補助装置。 - 前記上段壁部の前記疑似側面と反対側の背面から前記上段壁部を前記向きに押し込む第3押しねじと、
前記第3押しねじを支持する第3ねじ孔が設けられた前記下段壁部に固定される第3支持部材と、を備える請求項10に記載の溶接補助装置。 - 前記側面延長部材は、前記母材と比較して熱伝導率が高い金属で組成される請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の溶接補助装置。
- 前記金属は、銅を主成分とする請求項12に記載の溶接補助装置。
- 溶接接合される2枚の母材が有する開先部の底部を延長するように前記母材の溶接線の始端部および終端部の少なくとも一方に底部延長板を接合するステップと、
前記開先部の開先側面の形状を模した疑似側面を有する2つの側面延長部材で前記底部延長板の前記溶接線に平行な側面を挟み込むステップと、
前記2つの前記側面延長部材を前記底部延長板に押し当てる向きに固定治具で挟み込んで固定するステップと、
前記側面延長部材に形成された通水経路に通水するステップと、
前記底部延長板を含めて前記開先部を溶接するステップと、
前記側面延長部材を取り外すステップと、
前記開先部から突出したビードを前記底部延長板ごと切断するステップと、を含むことを特徴とする溶接補助方法。
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