JP6407771B2 - 振動吸収材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、振動吸収材及びその製造方法に関する。
従来から樹脂等の材料に対して粘弾性を付与する研究が盛んに行われている。粘弾性とは、低い弾性を有しつつ圧縮された場合には徐々に回復する性質をいう。例えば、軟質フォーム及びエラストマーは、粘弾性を有する材料として知られており、エネルギー吸収性を有する材料設計するにあたって有用な材料である。
粘弾性を有する材料は、音響及び振動減衰性物質として用いられることが多く、緩衝作用(cushioning)が求められる多様な用途、例えば、枕、車椅子シート、マットレス等に対広く用いられる。例えば、樹脂自体を改質することで粘弾性を改良して粘弾性を付与する方法が提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。このような粘弾性が付与された樹脂は、振動エネルギー吸収材等に応用されている。
特に、ポリウレタン及びポリウレタン尿素は、反応的に加工可能な(reactively processable)材料であるので、粘弾性物質の製造用原料として特に有用であり続けている。粘弾性物質が、圧縮されたとき又は他の方法で歪められた場合、その初期形状を回復できることは(たとえ、徐々にであっても)重要である。ポリウレタン化学は、微細に調整された物理的性質を有する物質を設計することによって、複雑な造形品や複合構造物をin−situで製造する特有の機会を提供する重要な分野である。
樹脂の粘弾性を向上させる手段として、三次元的に複雑に絡み合ったカーボンナノチューブ(CNT)をフィラーとしてポリマーである樹脂に混合する方法が知られており、近年ではそのような研究開発も盛んである。カーボンナノチューブ(CNT)は、広い温度域で粘弾性を示すことが報告されている材料である(例えば、非特許文献1等を参照)。そのため、CNTをフィラーとしてポリマー材料に添加すれば、従来のフィラーよりも少ない充填量であってもポリマー材料に高い粘弾性を付与できることが期待されている。その他、ポリウレタン及びポリウレタン尿素物質等で構成される樹脂に対して粘弾性を与える手段としては、ポリマーセグメントの相分離を何らかの方法で妨害させる方法も挙げられる。この具体的な方法としては、樹脂への可塑剤の添加、粒状充填剤の添加及びこれらの方法の種々の組み合わせ等が挙げられる。
特開平6−299005号公報
X. Ming, D. N. Futaba, T. Yamada, M. Yumura and K. Hata, Science 330(2010) 1364-1368.
しかしながら、上述のようなCNT、可塑剤又は充填剤の使用は、例えば、樹脂自体の引張り強度及び引き裂き抵抗のような材料強度に関連した機械的性質を失わせるという問題がある。優れた粘弾性能の樹脂を得るためには、通常、充填剤等の添加量が樹脂に対して30重量%、しばしば100重量%を超えることもある。そのため、樹脂の機械的強度が低下するばかりか、樹脂が硬くなり過ぎたり、重量が増加したりする問題が生じ、また、経済的に不利でもあった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、充填剤の含有量が少なくても高い粘弾性を有し、優れたエネルギー吸収性を有する振動吸収材及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、コアと、該コアから伸びる帯状グラファイトとを有して形成されるカーボン粒子を粘弾性フィラーとして樹脂に含有させることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の振動吸収材及びその製造方法に関する。
1.カーボン粒子及び樹脂を少なくとも含み、
前記カーボン粒子は、コアと、該コアから伸びる帯状グラファイトとを有する、振動吸収材。
2.前記帯状グラファイトが、幅20〜600nm、長さ0.1〜20μmの帯状に形成されている、上記項1に記載の振動吸収材。
3.前記帯状グラファイトが、1〜50層のグラフェン層を有する、上記項1又は2に記載の振動吸収材。
4.前記カーボン粒子の1個あたり、2〜200本の帯状グラファイトを有する、上記項1〜3のいずれか1項に記載の振動吸収材。
5.前記コアがグラファイト構造を有する、上記項1〜4のいずれか1項に記載の振動吸収材。
6.前記コアの平均直径が、前記カーボン粒子の平均粒子径の99%以下である、上記項1〜5のいずれか1項に記載の振動吸収材。
7.前記コアの平均アスペクト比が10以下である、上記項1〜6のいずれか1項に記載の振動吸収材。
8.前記カーボン粒子の平均粒子径が1〜40μmである、上記項1〜7のいずれか1項に記載の振動吸収材。
9.前記カーボン粒子の含有量が0.05〜15重量%である、上記項1〜8のいずれか1項に記載の振動吸収材。
10.上記項1〜9のいずれか1項に記載の振動吸収材の製造方法であって、
前記カーボン粒子と前記樹脂とを混合して混合物を得る工程を少なくとも備える、振動吸収材の製造方法。
本発明に係る振動吸収材は、コアと、該コアから伸びる帯状グラファイトとを有するカーボン粒子と、樹脂とを少なくとも含んでいる。上記カーボン粒子は、粘弾性フィラーとしての役割を果たし、このようなカーボン粒子で構成される粘弾性フィラーは、その充填量が少なくても優れた粘弾性を樹脂に付与することができる。そのため、上記振動吸収材は、上記カーボン粒子を粘弾性フィラーとして含有することで高い粘弾性を有し、しかも、樹脂そのものが有する優れた軽量性、加工性や機械的特性も備える。
また、本発明に係る振動吸収材の製造方法は、簡便且つ安価に、加えて大量生産可能な方式で製造することができる上記カーボン粒子を用いるため、振動吸収材の製造に適している。
実施例1で得られたカーボン粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
振動吸収材は、カーボン粒子及び樹脂を少なくとも含んでいる。カーボン粒子は、コアと、該コアから伸びる帯状グラファイトとを有する。
上記カーボン粒子は、上記樹脂に対する粘弾性フィラーとしての役割を果たす。このようなカーボン粒子で構成される粘弾性フィラーは、その充填量が少なくても優れた粘弾性が樹脂に付与される。そのため、本実施形態の振動吸収材は、高い粘弾性を有する。以下、本実施形態の振動吸収材を構成するカーボン粒子や樹脂の詳細について説明する。
1.カーボン粒子
カーボン粒子は、コアと、該コアから外方に向かって伸びる帯状グラファイトとを有する。例えば、カーボン粒子は、コアと、該コアから帯状グラファイトが3次元方向に広がる形状を有することができ、具体例として「パイプウニ」のような形状である。このようにカーボン粒子をパイプウニの形状に見立てると、パイプウニの本体がコアに相当し、刺が帯状グラファイトに相当する。
上記コアは、例えば、複数本の帯状グラファイトの長尺方向における一方の端部どうしが集まることによって形成される。このように複数本の帯状グラファイトの長尺方向の一方の端部どうしが融合すると、この融合した部分がカーボン粒子のコアとして形成される。ここでいう融合とは、例えば、複数本の帯状グラファイトの端部どうしが熱によって融着されている状態や、複数本の帯状グラファイトの端部どうしが物理的な作用によって凝集している状態等をいう。
上記のようにコアが形成されると、複数本の帯状グラファイトの他方の端部はコアから外方に向かって伸びるように存在する。これにより、3次元方向に放射状に広がる構造を有するカーボン粒子が形成され、いわゆるグラファイトナノリボンとなる。
上記コアにおいて、複数の帯状グラファイトが端部で融合して形成される部分は、アモルファス構造であってもよいし、グラファイト構造であってもよい。具体的には、コアの結晶は、六方晶系に属する層状構造を有し、六角形の網面をなす層が弱いファンデルワールス力により積層されているグラファイト構造であることが好ましい。このグラファイト構造は、一つのグラファイト結晶であってもよいし、小さなグラファイト結晶の集合体であってもよい。また、これらグラファイト結晶は乱層構造であってもよい。
上記融合部分(コア)の大きさを明確に規定することは困難であるが、例えば、カーボン粒子を粉砕処理した場合、融合部分は硬いために粉砕されずに残るので、この粉砕物の大きさを融合部分の大きさと定義することができる。このように融合部分を定義した場合、その融合部分の大きさは、例えば、20〜2000nmであり、好ましくは40〜1000nmとすることができる。融合部分の大きさが20nm以上であれば、帯状グラファイトの平均幅が狭くなるのを防止することができ、帯状グラファイトが折れるのを抑制できる。一方、融合部分の大きさが2000nm以下であれば、カーボン粒子において帯状グラファイトよりも粘弾性を付与しにくい多結晶グラファイト部分が大きくなり過ぎることがないので、より高い粘弾性を樹脂に付与することができる。なお、本明細書でいう融合部分の大きさや後述のコアの平均直径は、TEM観察において任意の10個のカーボン粒子を選定し、これらのカーボン粒子のTEM画像上における融合部分の大きさをそれぞれ計測して平均することで求められる。
コアにおいて、最も長い直径を長径、最も短い直径を短径とした場合、平均アスペクト比(すなわち、長径/短径の平均値)は、10以下であることが好ましく、この場合、樹脂の粘弾性をより向上させることが可能となる。
コアの平均直径は、特に限定されないが、帯状グラファイトの長さをできるだけ長くしてより高い粘弾性を付与させ、かつ、帯状グラファイトがより折れにくくするという観点で調節することが好ましい。この観点から、コアの平均直径は、例えば、カーボン粒子の平均粒子径の99%以下であることが好ましく、0.1〜98%がより好ましく、0.5〜50%がさらに好ましい。
帯状グラファイトは、帯状(シート状といってもよい)に形成されており、周知のグラファイト結晶構造を有し得る。具体的には、帯状グラファイトの結晶は、六方晶系に属する層状構造を有し、六角形の網面をなす層が弱いファンデルワールス力により積層されていることが好ましい。なお、グラファイトを構成するそれぞれの層(単一層)は、グラフェンとも称される。また、帯状グラファイトの1層(グラフェンシート)を見た場合、その端部形状はジグザグ型又は安楽椅子型が好ましい。端部形状は、製造条件を選択することにより制御することができる。
帯状グラファイトの平均幅は20〜600nmが好ましい。この場合、樹脂の粘弾性をより向上させつつ帯状グラファイトが折れるのを防止しやすくなり、また、前記コアの平均直径とコアから伸びる帯状グラファイトの数との関係においても有利である。帯状グラファイトの平均幅が上記範囲内であれば、帯の端から端まで幅が帯状グラファイトの全長にわたって必ずしも一定である必要はない。より好ましい帯状グラファイトの平均幅は、30〜400nmである。帯状グラファイトの幅とは、長尺に形成された帯状(又はシート状)の短尺方向の長さをいう。よって、帯状グラファイトの平均幅は、TEM観察において任意の10個のカーボン粒子を選定し、これらのカーボン粒子における帯状グラファイトの幅をそれぞれ計測して平均することで算出できる。
帯状グラファイトの数は、粘弾性をより向上させる観点から、カーボン粒子1個につき2〜200本が好ましく、3〜100本がより好ましい。
帯状グラファイトの平均厚みは、帯状グラファイトを折れにくくするために、グラフェン層の積層数換算で1〜50層が好ましく、3〜20層がより好ましい。また、帯状グラファイトの平均厚みが上記範囲内である限り、帯状グラファイトの全長にわたって厚みが一定である必要はなく、場所によって厚みが異なっていてもよい。
帯状グラファイトの平均長さ(すなわち、帯状グラファイトの長尺方向の長さ)は、特に限定的ではないが、高い粘弾性を付与させやすく、かつ、帯状グラファイトがより折れにくくなるという観点から、0.1〜20μmであることが好ましい。なお、ここでいう帯状グラファイトの平均長さとは、TEMによって観察される、コア表面から帯状グラファイトの先端までの直線距離を「帯状グラファイトの長さ」と定義し、TEM観察において任意に選択した10個のカーボン粒子各々の「帯状グラファイトの長さ」を計測して平均することで算出される。帯状グラファイトの平均長さが上記範囲内である限り、帯状グラファイトの全長にわたってその長さは必ずしも一定である必要はなく、分布があってもよい。帯状グラファイトの平均長さは、0.15〜15μmであることがより好ましい。
カーボン粒子は、炭素原子以外の異種の元素を含有してもよい。異種元素としては、例えば、水素、窒素、イオウ、酸素、ケイ素等が挙げられる。異種元素の含有量は、特に制限されないが、例えば、カーボン粒子の全重量に対して0〜5重量%程度、特に0.001〜1重量%程度、さらに0.005〜0.5重量%程度とすることができる。なお、異種元素を2種類以上含む場合は、その総量が上記範囲内に入るように調整すればよい。
カーボン粒子は、非金属元素、金属元素及び金属塩の少なくとも1種を含んでいてもよい。非金属元素としては、イオウ、リン、ホウ素等が挙げられる。金属元素としては、例えば、鉄、コバルト、銅、白金、パラジウム、銀、セシウム、バナジウム、マンガン、ニッケル等の遷移金属元素;ストロンチウム、ルビジウム、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、マグネシウム等の典型金属元素等が挙げられる。金属塩としては、例えば、上記金属元素のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物のようなハロゲン化物;アセチルアセトネート塩のような有機塩等が挙げられる。
カーボン粒子中に非金属元素、金属元素及び金属塩の群から選ばれる少なくとも1種を含む場合、その含有量は特に制限されないが、カーボン粒子の全重量に対して0〜5重量%程度、特に0.001〜1重量%程度、さらに0.005〜0.5重量%程度とすることができる。なお、非金属元素、金属元素、金属塩等を2種類以上含む場合は、その総量が上記範囲内に入るように調整すればよい。
カーボン粒子の平均粒子径は特に限定的ではないが、得られる振動吸収材の粘弾性特性がより向上するという観点から、1〜40μmとすることができる。本明細書でいうカーボン粒子の平均粒子径は、TEM観察において任意に選択した10個のカーボン粒子の帯状グラファイトの一方の端部(コア中心部)から他方の端部までの最大距離をそれぞれ計測し、これを平均することで算出できる。より好ましいカーボン粒子の平均粒子径は1.5〜30μmである。
2.カーボン粒子の製造方法
カーボン粒子は、結晶性ポリイミド粒子をグラファイト化することによって得ることができる。この場合、結晶性ポリイミド粒子としては、コアと、該コアから外方に伸びるポリイミド結晶シートと有していることが好ましい。より好ましくは、複数の帯状のポリイミド結晶シートの長尺方向側の一方の端部が融合し、他方の端部が3次元方向に放射状に広がる構造を有していることが好ましい。ここでいう融合とは上述と同様の意味である。このような結晶性ポリイミド粒子をグラファイト化することで、上述した形態を有するカーボン粒子が得られる。
上記結晶性ポリイミド粒子は、例えば、ポリイミド合成時の条件を制御して結晶化をさせる方法、あるいは、合成したポリイミドを任意の適切な方法で配向処理する方法等により調製することができる。
以下に、このような結晶性ポリイミド粒子及びこの結晶性ポリイミド粒子を使用したカーボン粒子の製造方法の一例を示すが、これに限定されるものではない。
2−1.結晶性ポリイミドの調製
本発明において、カーボン粒子の製造方法に用いられる結晶性ポリイミド粒子は、以下の一般式(2):
[式中、X〜Xはそれぞれ同一であってもよいし、異なっていても良い。X及びXは一方が水素原子、他方が水素原子、アルキル基及びアリール基の群から選ばれ、Xは水素原子又はアシル基である。]
で示される化合物(以下、「化合物2」と言うこともある)を溶媒中で重合又は共重合させることにより得ることができる。具体的には、化合物2の縮合重合で結晶性ポリイミド粒子が得られる。
一般式(2)において、アルキル基としては、特に制限されず、直鎖アルキル基及び分岐鎖アルキル基のいずれでもよい。また、アルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜6がさらに好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基等が挙げられ、これらのうちメチル基、エチル基等が好ましい。
アリール基としては、特に制限されず、炭素数6〜14程度のものが挙げられる。例えば、フェニル基、ナフチル基、ベンジル基等が挙げられる。
アシル基はRCO−(ただし、Rはアルキル基又はアリール基である)として示される。置換基Rのアルキル基又はアリール基としては、上記したアルキル基又はアリール基が例示され、アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(2)において、X及びXのうちいずれか一方は水素原子であり、他方はアルキル基であることが好ましい。Xとしては、水素原子が好ましい。
上記の重合による生成物、すなわち、結晶性ポリイミド粒子は、固体として析出することが好ましい。得られる結晶性ポリイミド粒子は、以下の一般式(1):
で示される繰り返し単位を有することが好ましい。
上記化合物2は、任意の適切な方法により調製され得る。例えば、Xが水素原子の場合であれば、4−ニトロ無水フタル酸(4−ニトロ−1,2−ベンゼンカルボン酸無水物:4NPAH)にアルコールを付加させることで、4NPAHの5員環を開環させた後、ニトロ基を還元してアミノ基とすることで調製できる。この場合、XおよびXのうちいずれが水素原子となるかにより2種の構造異性体が生じるので、これら2種の構造異性体をそれぞれ分離精製してもよい。なお、特段問題がない場合、例えば、2種の構造異性体各々によって生成するポリイミドの組織や収率等があまり変わらない場合、2種の構造異性体を分離精製することなく混合物として用いてもよい。
上記化合物2を重合させて結晶性ポリイミド粒子を合成する際に用いられる溶媒としては、特に制限されない。例えば、化合物2を溶解することが可能であって、化合物2と不要な反応を起こさず、化合物2の重合条件(例えば、重合温度)下にて安定であり、生成した結晶性ポリイミドを粉体、粒体等の固体として析出させることができる溶媒を好ましく使用できる。より詳細には、当該溶媒は、高沸点(例えば、200〜400℃程度)の有機溶媒が好ましく、高沸点(例えば、200〜400℃程度)の芳香族化合物がより好ましい。このような溶媒の具体例としては、例えば、ジイソプロピルナフタレン、ジエチルナフタレン、エチル−イソプロピルナフタレン、シクロヘキシルビフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニル、ジベンジルトルエン等が挙げられ、これらの中でもジベンジルトルエンが好ましい。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のように化合物2を用いて、例えば、次の(A)及び(B)の工程を含む方法により、結晶性ポリイミドを調製できるが、特にこの方法に制限されるわけではない。
(A)化合物2を溶媒に溶解させる溶解工程、及び
(B)該溶解工程の後、化合物2を(共)重合させ、一般式(1)で示される繰り返し単位を有する結晶性ポリイミドを溶液中から固体として析出させる析出工程。
より詳細には、溶媒に溶解させた(すなわち、溶液状態における)化合物2の(共)重合により、上記式(1)で示される繰り返し単位を有する結晶性ポリイミドを溶液から固体として析出させることができる。その作用や機構は明らかではないが、結晶性ポリイミドを溶媒中から固体で析出させることにより、細長いポリイミド結晶シートが放射状に集合した微粒子状の結晶性ポリイミド粒子が得られると考えられる。
析出工程(工程(B))においては、上記溶液はあまり流動させない方が好ましく、撹拌は行わないことがさらに好ましい。このようにすれば、幅および厚みの均一性に優れた細長い帯状体が集合した微粒子状の結晶性ポリイミドを得ることができる。
また、工程(B)において、上記化合物2の重合温度は、240〜350℃が好ましく、260〜340℃がより好ましく、280〜330℃がさらに好ましい。重合温度がこのような範囲であれば、化合物2や溶媒の熱分解を生じさせることなく、適切な重合時間で結晶性ポリイミドを得ることができる。
工程(B)において、上記化合物2の重合時間は、1〜48時間が好ましく、2〜36時間がより好ましく、3〜24時間がさらに好ましい。重合時間をこの範囲とすることにより重合反応をより十分に進ませることができ、収率良く結晶性ポリイミド粒子を得ることができる。
工程(B)において、(共)重合の際の溶液中の化合物2の濃度は、溶媒1ml中の重量(g/ml)として、0.5〜12.0が好ましく、0.8〜11.0がより好ましく、1.0〜10.0がさらに好ましい。濃度をこの範囲とすることにより、結晶性ポリイミドをより十分に析出させるとともに、得られる結晶性ポリイミド粒子の形状をより十分に制御することができる。
上記のように得られる結晶性ポリイミド粒子を構成するポリイミド結晶シートの幅及び厚みは、重合の際の熱力学的環境を調整することにより制御することができる。例えば、重合の際の溶媒中に貧溶媒を用いることでポリイミド結晶シートの幅及び厚みを減少させることができる。すなわち、より貧溶媒中で重合することで、析出するポリイミドの過飽和度が増大し、小さな結晶核が多数生成することで、幅及び厚みを減少させることができる。
ポリイミド結晶シートの平均幅は、カーボン粒子の帯状グラファイトに対応するため、例えば、20〜800nmが好ましく、30〜600nmがより好ましい。ポリイミド結晶シートの平均幅が上記範囲内である限り、帯の幅がポリイミド結晶シートの全長にわたって必ずしも一定である必要はなく、パイプウニの刺のように場所によって幅が異なっていてもよい。
また、ポリイミド結晶シートの平均厚みも、上述した重合の際の熱力学的環境を調整することにより制御でき、上記した範囲の平均厚みの帯状グラファイトを有するカーボン粒子を得る観点から、1〜20nmが好ましく、1.5〜15nmがより好ましい。ポリイミド結晶シートの平均厚みが上記範囲内である限り、帯の平均厚みがポリイミド結晶シートの全長にわたって必ずしも一定である必要はない。
さらに、ポリイミド結晶シートの長さは、例えば、ポリイミドの結晶成長を継続させるような条件を採用すれば増加する。具体的には、モノマーやオリゴマーを重合系(上記溶媒)内に添加して結晶成長を継続させるようにしてもよい。
ポリイミド結晶シートの平均長さは、上記した範囲の平均長さの帯状グラファイトを有するカーボン粒子を得る観点から、0.05〜50μmが好ましく、0.25〜25μmがより好ましい。ポリイミド結晶シートの平均長さが上記範囲内である限り、ポリイミド結晶シートの長さに分布があってもよい。
なお、ポリイミド結晶シートの平均幅、平均厚み及び平均長さは、カーボン粒子の帯状グラファイトと同じ定義である。
上記のように重合条件を制御することによって、種々の平均幅、平均厚み及び平均長さのポリイミド結晶シートを有する結晶性ポリイミド粒子を作製することができる。例えば、ポリイミド結晶シートが放射状に集合した微粒子組織を有する結晶性ポリイミド粒子を得ることができる。
結晶性ポリイミド粒子をグラファイト化した場合、ポリイミド結晶シートの各々のサイズはほぼ維持される。従って、結晶性ポリイミド粒子を作製するにあたっては、目的とするカーボン粒子の形状、サイズに応じて結晶性ポリイミド粒子の合成条件を調節すればよい。
ポリイミド結晶シートが集合した結晶性ポリイミド粒子の直径は、上記した範囲の平均直径のカーボン粒子を得る観点から、0.1〜100μmが好ましく、0.5〜50μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。
なお、合成による結晶性ポリイミドの調製については、その詳細が例えば、特開2008−274103号公報等に記載されており、当該記載は上記結晶性ポリイミド粒子を得る際に参考として援用される。
本発明のカーボン粒子の製造に用いられるポリイミド粒子は結晶性であることが好ましく、高結晶性であることがより好ましい。通常、ポリイミドの結晶性は、示差熱分析(DSC)の融解エンタルピーから算出、又は完全アモルファス状のサンプルを作製してX線回折強度から算出することが行われているが、溶融しないポリイミドはどちらの方法も適用できない。こうしたポリイミドの結晶性を評価する方法として、X線回折におけるピークを用いた結晶子の大きさから評価する方法がある。この方法では、以下の式:
により結晶子の大きさを算出することができる。
この式によると、半値幅が小さい程、結晶子が大きく、結晶性が高いことがわかる。本明細書においては、上記結晶子の大きさを算出する方法により結晶性を評価する方法を採用し、任意の結晶面における回折ピークの半値幅により結晶性を規定する。これは、実際の結晶子の大きさを算出する場合、半値幅は測定装置による誤差を考慮して補正される必要があるためである。以上より、上記カーボン粒子の製造に用いられ得る結晶性ポリイミド粒子は、配向処理をしない場合、任意の回折ピークの半値幅が2°以下が好ましく、1.5°以下がより好ましく、1°以下がさらに好ましい。配向処理をした場合、(00l)面の回折ピークの半値幅が2°以下が好ましく、1.5°以下がより好ましく、1°以下がさらに好ましい。結晶性ポリイミド粒子が上記のような回折ピークの半値幅を有することにより、後述のグラファイト化がより容易となる。
2−2.結晶性ポリイミドのグラファイト化
上記結晶性ポリイミドは、任意の適切な方法によってグラファイト化することで、コアから外方へ伸びる帯状グラファイトを有して形成されるカーボン粒子が得られる。結晶性ポリイミドをグラファイト化する方法は特に制限されないが、例えば、結晶性ポリイミドにレーザー光などの光、X線、電子線、プラズマ、イオンビーム等を照射する方法や、結晶性ポリイミドを加熱処理する方法等が挙げられ、これらの方法を組合せてもよい。特に、結晶性ポリイミドを加熱処理する工程を含む方法によって結晶性ポリイミドをグラファイト化することが好ましく、この場合、結晶性ポリイミドを大量にかつ均一に処理できるという点で有利である。
上記の結晶性ポリイミドを加熱処理する方法では、通常、不活性ガス雰囲気下、0.01〜20MPa程度の減圧〜加圧下、500〜1100℃程度の範囲内で熱処理を行って炭化(カーボン化)することができる。好ましくは0.05〜10MPa程度、より好ましくは0.1〜5MPa程度の圧力下で加熱することである。また、加熱処理の温度は、好ましくは700〜1000℃程度である。例えば10℃/分の速度で昇温した場合は、900〜1000℃の温度領域で1〜30分程度の保持を行って、炭化(カーボン)することが好ましい。
上記のようにカーボン化した結晶性ポリイミドは、超高温炉等の加熱装置を用いてグラファイト化され得る。このグラファイト化は、不活性ガス雰囲気下、0.01〜20MPa程度の減圧〜加圧下において2000℃以上の温度雰囲気で加熱することで行うことができる。好ましくは0.05〜10MPa程度、より好ましくは0.1〜5MPa程度の圧力下で行うことが好ましい。また、好ましい温度雰囲気は、2400℃以上、より好ましくは2700℃以上である。上記不活性ガスとしては、アルゴンが好ましい。
上記グラファイト化における加熱時間は、上述のカーボン粒子が生成する限りは特に限定されず、加熱温度等に応じて適切に設定することができる。例えば、加熱時間は、所定の加熱条件に達してから、通常1秒〜100時間程度が好ましく、1分〜200分程度がより好ましい。特に、超高温炉を用いてグラファイト化する場合は、上記の加熱時間の範囲内で加熱することが好ましい。
結晶性ポリイミドをグラファイト化するにあたっては、上記例示列挙した照射処理の少なくとも1つと上記加熱処理とを併用してもよい。照射処理と加熱処理とを併用する場合の処理時間は、上述のカーボン粒子が生成する限り特に限定されず、照射手段、加熱温度等に応じて適切に設定することができる。例えば、処理時間は、温度や照射等が所望の条件に達してから、通常1秒〜100時間程度が好ましく、1分〜200分程度がより好ましい。
以上のように結晶性ポリイミドをグラファイト化することによって、結晶性ポリイミドのサイズに対応したサイズを有するカーボン粒子を得ることができる。そのカーボン粒子の特徴は、上記したとおりである。
上記方法により得られるカーボン粒子は、コアと、該コアから伸びる帯状グラファイトとを有して形成され、複数の帯状グラファイトが一方の端部で融合し、他方の端部が3次元方向に放射状に広がる構造を有し得る。このような構造を有するカーボン粒子を製造する場合、通常であれば粒子どうしの凝集を防ぐために通常超音波分散等の処理を施す。しかし、上記カーボン粒子の製造方法では、通常超音波分散等の処理を施さずともカーボン粒子を凝集させることなく製造することができる。なお、帯状グラファイトが1枚ずつ解砕されてシート状のカーボンにならない程度であれば、超音波分散等の処理を施してもよい。
3.振動吸収材
振動吸収材は、上記したカーボン粒子と樹脂とを少なくとも含んで構成される。上記振動吸収材は、カーボン粒子と樹脂との複合体、いわゆるコンポジットの形態であることが好ましい。この場合、カーボン粒子は樹脂のフィラーとして機能しやすく、特にカーボン粒子は樹脂に粘弾性を付与することが可能であるので、粘弾性フィラーとしての役割を果たす。通常、粘弾性フィラーは、樹脂との親和性が重要となるので、フィラーの表面処理等を施さなければならない場合があるが、上記のカーボン粒子は、樹脂との親和性に優れるので、そのまま樹脂との複合体を形成することができる。
上記樹脂としては、用途や求められる性能に応じて適宜選択することができ、特に制限はない。例えば、公知のウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、その他、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
振動吸収材において、カーボン粒子の含有量が少量であっても従来の粘弾性フィラーよりも優れた粘弾性を樹脂に付与することができる。そのため、樹脂本来の軽量性や加工性等の特徴を維持できるという利点を有する。具体的なカーボン粒子の含有量は、樹脂中にカーボン粒子を含む限りは特に限定的ではないが、例えば、振動吸収材の全量に対し、0.05〜15重量%の範囲とすることができる。より好ましいカーボン粒子の上記含有量は、0.1〜10重量%である。
上記のように形成される振動吸収材は、カーボン粒子を含むことで高い損失正接を有する。振動吸収材の損失正接は0.2以上であることが好ましく、この場合、より高い粘弾性を有する振動吸収材となる。振動吸収材の損失正接の上限値は特に制限はないが、通常1程度である。
4.振動吸収材の製造方法
上記振動吸収材を製造する方法は特に制限されない。例えば、カーボン粒子と樹脂とを混合して混合物を得る工程を含む方法により、振動吸収材を製造することができる。この方法では、振動吸収材がカーボン粒子と樹脂との複合体(コンポジット)である場合に特に有利である。以下、この製造方法について詳述する。
混合物を得る方法は、使用する樹脂によって選択することができる。例えば、室温で液状のウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイソシアネート等を使用する場合、カーボン粒子に樹脂及び適切な硬化剤並びに必要に応じて添加される硬化触媒を所定の量で配合して混合物を調製して硬化させる方法、あるいは混合機を用いてカーボン粒子、樹脂及び上記硬化剤並びに必要に応じて添加される硬化触媒を所定の量で配合して混合物を調製して硬化させる方法等を採用することができる。なお、上記硬化剤及び硬化触媒の種類にいずれも特に制限はなく、用いる樹脂に対して一般的に推奨される硬化剤及び硬化触媒を使用することができる。硬化剤及び硬化触媒の混合量も特に制限はなく、用いる樹脂に対して一般的に推奨される量にできる。
上記硬化させる際の条件としては、特に制限はなく、用いる樹脂に対して一般的に推奨される条件を採用することができる。
樹脂として、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を使用する場合、それらの溶液(樹脂溶液)をカーボン粒子に含浸させた後に溶剤を除いて熱硬化させる方法、混合機を用いてカーボン粒子と樹脂溶液を混合した後に溶剤を除いて熱硬化させる方法等を採用することができる。樹脂溶液に使用できる溶媒としては特に制限はなく、水、アルコール系溶媒、アセトン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン等を使用することができる。熱硬化させる際の条件も特に制限はなく、温度は室温〜300℃、好ましくは40〜250℃とすることができる。熱硬化で加熱する時間は、1分間〜24時間、好ましくは30分〜8時間とすることができる。また、熱硬化の際の雰囲気も特に制限されないが、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性雰囲気下とすることができる。熱硬化の際の圧力も特に制限はなく、例えば、常圧〜加圧下、好ましくは0.1MPa〜20MPa程度とすることができる。
樹脂として、熱可塑性樹脂を使用する場合は、それらの溶液(樹脂溶液)をカーボン粒子に含浸させた後に溶剤を除く方法、混合機を用いてカーボン粒子と樹脂溶液を混合した後に溶剤を除く方法等を採用することができる。この際、樹脂溶液に使用できる溶媒は特に制限はなく、芳香族系溶剤、アルコール系溶剤、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ケトン系溶剤、直鎖又は環状脂肪族炭化水素、エステル系溶剤、セロソルブ系溶剤等を使用することができる。
なお、上記のいずれの方法を採用する場合においても、液状樹脂又は樹脂溶液とカーボン粒子を混合したときの粘度が2000cP以下になるように調整することが好ましい。この場合、混合時にカーボン粒子に大きな負荷がかかったとしてもその形状が損なわれにくく、樹脂に対してより大きな粘弾性を付与することが可能となる。上記粘度は1500cP以下であることがより好ましい。
また、使用する樹脂の溶融時の粘度は2000cP以下であることが好ましい。この場合、上記混合物を調製するにあたってニーダーのようなシェアのかかる混合機を用いたとしても、カーボン粒子の形状を維持しやすいという点で有利である。より好ましい樹脂の溶融時の粘度は1500cP以下である。
なお、本発明の効果が阻害されない程度であれば、上記振動吸収材は他の添加剤が含まれていてもよい。振動吸収材に他の添加剤を含ませるには、例えば、液状樹脂又は樹脂溶液とカーボン粒子とを混合する際に、添加剤を投入すればよい。
上記のようにして得られる振動吸収材は、カーボン粒子と樹脂とを少なくとも含んで構成される。振動吸収材に含まれるカーボン粒子は、樹脂の粘弾性能を向上させるので、その結果として振動吸収材は優れたエネルギー吸収性を有する。しかも、本実施形態の振動吸収材では、樹脂が有する軽量性、加工性等の特徴も維持されやすいので、粘段性能以外の樹脂の性能(例えば、機械的特性)も十分に活かされる。特に、振動吸収材を構成する樹脂がポリウレタンである場合は、ポリウレタン―炭素コンポジットとして形成されており、より優れたエネルギー吸収性が発揮される材料となる。
以上より、上記振動吸収材は、緩衝作用(cushioning)が求められる多様な用途、例えば、枕、車椅子シート、マットレス等の用途や、衝撃保護等を与えるための音響及び振動減衰性物質として好適に用いることができ、その他、種々の用途に使用することができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
[合成例1:結晶性ポリイミドの調製]
特開2008−274103号公報の実施例及び当該公報の図9の実験番号2の手順にしたがって、結晶性ポリイミドを調製した。
得られたポリイミドに対して透過型電子顕微鏡(TEM)観察及びX線回折分析を行ったところ、細長い帯状体が集合した微粒子状の結晶性ポリイミドが得られていることがわかった。また、TEM観察より、帯状体の最大幅の平均値は110nm、最大厚みの平均値は8nm、平均長さは3μmであった。
[実施例1:カーボン粒子の製造]
合成例1で得られた結晶性ポリイミドを炭化炉にてアルゴン雰囲気下、常圧にて1000℃で1分間炭化した後、アルゴン雰囲気下、常圧にて2800℃で、1分間グラファイト化(黒鉛化)を行った。
図1には、実施例1で得られたカーボン粒子のTEM観察の結果を示している。このTEM観察の結果から、以下に示す構造を有するカーボン粒子(コアの粒子径1−2μm)が得られていることがわかった。
<帯状グラファイト>
数:40〜70本
平均幅:210nm
平均厚み:7nm(グラフェン層積層数換算約20層)
平均長さ:2.7μm
<カーボン粒子全体>
平均直径:5.8μm
図1から、カーボン粒子は、帯状グラファイト(ナノリボン)どうしが複雑に絡み合って毛玉状の凝集体を形成し、凝集体の中心よりナノリボンが放射状に伸びた形状、いわゆるグラファイトナノリボン(GNR)として形成されていることがわかった。
[実施例2:振動吸収材の作製]
硬化性の液状ウレタン樹脂(株式会社エクシールコーポレーション製「超軟質ウレタン樹脂(主剤:ポリオールブレンド/硬化剤:イソシアネート(配合比=3:1))及び実施例で製造したカーボン粒子を用いて、振動吸収材の作製を行った。
まず、上記ウレタン樹脂100gに対して、カーボン粒子の濃度が5wt%となるようにウレタン樹脂及びカーボン粒子を混合して混合物を調製した。この混合物を54×54×4mmの成型枠を用いて真空プレスした後、60℃で硬化させることで、ウレタン樹脂とカーボン粒子とを含むコンポジット材料(GNR/Urethan)で形成される樹脂板を作製した。この樹脂板を振動吸収材とし、これを切削加工することで評価用材料を得た。
[比較例1]
カーボン粒子を使用しなかったこと以外は実施例2と同様にして樹脂板(Urethan)を作製し、評価用材料を得た。
表1には、実施例2及び比較例1で得られた樹脂板の製造時の配合条件(カーボン粒子量、ポリオール量、イソシアネート量)及び得られた樹脂板の密度を示している。
実施例1で得られた樹脂板は、カーボン粒子を含有しているものの、コンポジット板の密度はカーボン粒子を含有していない比較例1の樹脂板(Urethan)に比べてほとんど変化しておらず、また、外観上も均一な樹脂板であった。従って、実施例2の樹脂板は、ウレタン樹脂が有する軽量性及び加工性が維持されたものであった。
[試験例1:粘弾性の評価]
粘弾性の評価は、上記実施例2及び比較例1で作製した樹脂板の損失正接を、動的粘弾性測定法により測定することで評価した。動的粘弾性測定には、TAインスツルメント社製「粘弾性測定装置DMAQ−800」を用い、測定は30℃の条件下にて、測定周波数を0.1,1,10及び100Hzとして行った。
表2には、動的粘弾性測定の結果を示している。
この表2から、実施例2の樹脂板(GNR/Urethan)は、広い周波数範囲(0.1〜100Hz)において比較例2(Urethan)よりも損失正接が高いことがわかり、また、いずれの周波数においても0.2以上の損失正接を示していることがわかる。この結果から、実施例2の樹脂板(GNR/Urethan)は、0.1〜100Hz領域においてカーボン粒子を含まないウレタン樹脂よりも振動吸収性に優れることが示された。
以上の結果から、カーボン粒子及び樹脂を含む振動吸収材は、優れたエネルギー吸収性を有していることが示された。このようなナノリボンネットワークを形成したカーボン粒子は、樹脂に含有されることで三次元的なネットワーク構造が形成され、様々な等方的物性を示す可能性を有していることがわかる。

Claims (10)

  1. カーボン粒子及び樹脂を少なくとも含み、
    前記カーボン粒子は、コアと、該コアから伸びる帯状グラファイトとを有する、振動吸収材。
  2. 前記帯状グラファイトが、幅20〜600nm、長さ0.1〜20μmの帯状に形成されている、請求項1に記載の振動吸収材。
  3. 前記帯状グラファイトが、1〜50層のグラフェン層を有する、請求項1又は2に記載の振動吸収材。
  4. 前記カーボン粒子の1個あたり、2〜200本の帯状グラファイトを有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動吸収材。
  5. 前記コアがグラファイト構造を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動吸収材。
  6. 前記コアの平均直径が、前記カーボン粒子の平均粒子径の99%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の振動吸収材。
  7. 前記コアの平均アスペクト比が10以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の振動吸収材。
  8. 前記カーボン粒子の平均粒子径が1〜40μmである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の振動吸収材。
  9. 前記カーボン粒子の含有量が0.05〜15重量%である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の振動吸収材。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の振動吸収材の製造方法であって、
    前記カーボン粒子と前記樹脂とを混合して混合物を得る工程を少なくとも備える、振動吸収材の製造方法。
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