以下、MRI装置及びMRI方法の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。図1、図2ではMRI装置のハードウェア的構成について説明し、図3〜図9(特に図5及び図7)で本実施形態の原理を説明し、図10及び図11ではMRI装置の動作例を流れ図で説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
<本実施形態の構成>
図1は、本実施形態のMRI装置10の全体構成の一例を示すブロック図である。ここでは一例として、MRI装置10の構成要素を寝台装置20、ガントリ30、制御装置40の3つに分けて説明する。
第1に、寝台装置20は、支持台21と、天板22と、支持台21内に配置される天板移動機構23とを有する。
天板22の上面には、被検体Pが載置される。また、天板22の上面には、被検体Pに装着されるRFコイル装置が接続される接続ポート25が複数配置される。
ここでは一例として、MR信号を検出する腕用RFコイル装置100が被検体Pに装着されている。
支持台21は、天板22を水平方向(装置座標系のZ軸方向)に移動可能に支持する。
天板移動機構23は、天板22がガントリ30外に位置する場合に、支持台21の高さを調整することで、天板22の鉛直方向の位置を調整する。また、天板移動機構23は、天板22を水平方向に移動させることで天板22をガントリ30内に入れ、撮像後には天板22をガントリ30外に出す。
第2に、ガントリ30は、例えば円筒状に構成され、撮像室に設置される。ガントリ30は、静磁場磁石31と、シムコイルユニット32と、傾斜磁場コイルユニット33と、RFコイルユニット34とを有する。
静磁場磁石31は、例えば超伝導コイルであり、円筒状に構成される。静磁場磁石31は、後述の制御装置40の静磁場電源42から供給される電流により、撮像空間に静磁場を形成する。撮像空間とは例えば、被検体Pが置かれて、静磁場が印加されるガントリ30内の空間を意味する。なお、静磁場電源42を設けずに、静磁場磁石31を永久磁石で構成してもよい。
シムコイルユニット32は、例えば円筒状に構成され、静磁場磁石31の内側において、静磁場磁石31と軸を同じにして配置される。シムコイルユニット32は、後述の制御装置40のシムコイル電源44から供給される電流により、静磁場を均一化するオフセット磁場を形成する。
傾斜磁場コイルユニット33は、例えば円筒状に構成され、シムコイルユニット32の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット33は、X軸傾斜磁場コイル33xと、Y軸傾斜磁場コイル33yと、Z軸傾斜磁場コイル33zとを有する。
本明細書では、特に断りのない限り、X軸、Y軸、Z軸は装置座標系であるものとする。ここでは一例として、装置座標系のX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。
まず、鉛直方向をY軸方向とし、天板22は、その上面の法線方向がY軸方向となるように配置される。
また、天板22の水平移動方向をZ軸方向とし、ガントリ30は、その軸方向がZ軸方向となるように配置される。
X軸方向は、これらY軸方向、Z軸方向に直交する方向であり、図1の例では天板22の幅方向である。
また、ここでは一例として、装置座標系の原点は磁場中心に設定されるものとする。
磁場中心とは、例えば、静磁場磁石31の幾何学的な中心位置である。
X軸傾斜磁場コイル33xは、後述のX軸傾斜磁場電源46xから供給される電流に応じたX軸方向の傾斜磁場Gxを撮像領域に形成する。同様に、Y軸傾斜磁場コイル33yは、後述のY軸傾斜磁場電源46yから供給される電流に応じたY軸方向の傾斜磁場Gyを撮像領域に形成する。同様に、Z軸傾斜磁場コイル33zは、後述のZ軸傾斜磁場電源46zから供給される電流に応じたZ軸方向の傾斜磁場Gzを撮像領域に形成する。
そして、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groは、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzの合成により、任意の方向に設定可能である。
上記撮像領域は、例えば、1画像又は1セットの画像の生成に用いられるMR信号の収集範囲の少なくとも一部であって、画像となる領域である。撮像領域は例えば、撮像空間の一部として装置座標系で3次元的に規定される。例えば折り返しアーチファクトを防止するために、画像化される領域よりも広範囲でMR信号が収集される場合、撮像領域はMR信号の収集範囲の一部である。一方、MR信号の収集範囲の全てが画像となり、MR信号の収集範囲と撮像領域とが合致する場合もある。
また、上記「1セットの画像」は、例えばマルチスライス撮像などのように、1のパルスシーケンスで複数画像のMR信号が一括的に収集される場合の複数画像である。ここでは一例として、撮像領域は、厚さの薄い領域であればスライスと称し、ある程度の厚みのある領域であればスラブと称する。
RFコイルユニット34は、例えば円筒状に構成され、傾斜磁場コイルユニット33の内側に配置される。RFコイルユニット34は、例えば、RFパルスの送信及びMR信号の受信を兼用する全身用コイルを含む。
第3に、制御装置40は、静磁場電源42と、シムコイル電源44と、傾斜磁場電源46と、RF送信器48と、RF受信器50と、シーケンスコントローラ58と、演算装置60と、入力装置72と、表示装置74と、記憶装置76とを有する。
傾斜磁場電源46は、X軸傾斜磁場電源46xと、Y軸傾斜磁場電源46yと、Z軸傾斜磁場電源46zとを有する。X軸傾斜磁場電源46x、Y軸傾斜磁場電源46y、Z軸傾斜磁場電源46zは、傾斜磁場Gx,Gy,Gzを形成するための各電流を、X軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zにそれぞれ供給する。
RF送信器48は、シーケンスコントローラ58から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすラーモア周波数のRF電流パルスを生成し、これをRFコイルユニット34に送信する。このRF電流パルスに応じたRFパルスが、RFコイルユニット34から被検体Pに送信される。
RFコイルユニット34の全身用コイルや、被検体Pに装着される腕用RFコイル装置100は、被検体P内の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を検出し、検出されたMR信号は、RF受信器50に入力される。
RF受信器50は、受信したMR信号に所定の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化されたMR信号の複素データである生データを生成する。RF受信器50は、MR信号の生データを演算装置60(の画像再構成部62)に入力する。
シーケンスコントローラ58は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50の駆動に必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源46に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。
シーケンスコントローラ58は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、傾斜磁場Gx、Gy、Gz及びRFパルスを発生させる。
演算装置60は、システム制御部61と、システムバスSBと、画像再構成部62と、画像データベース63と、画像処理部64と、安全基準判定部65と、通知部66とを有する。
システム制御部61は、本スキャンの撮像条件の設定を行う撮像条件設定部として機能する。また、システム制御部61は、撮像動作及び撮像後の画像表示において、システムバスSB等の配線を介してMRI装置10全体のシステム制御を行う。
上記撮像条件とは例えば、どの種類のパルスシーケンスにより、どのような条件でRFパルス等を送信し、どのような条件で被検体PからMR信号を収集するかを意味する。撮像条件の例としては、撮像空間内の位置的情報としての撮像領域、フリップ角、繰り返し時間TR(Repetition Time)、スライス数、撮像部位、スピンエコー法やパラレルイメージング等のパルスシーケンスの種類などが挙げられる。
上記撮像部位とは、例えば、頭部、胸部、腹部などの被検体Pのどの部分を撮像領域として画像化するかを意味する。
上記本スキャンは、T1強調画像などの、目的とする診断画像の撮像のためのスキャンであって、位置決め画像用のMR信号収集のスキャンや、較正スキャンを含まないものとする。
スキャンとは、MR信号の収集動作を指し、画像再構成を含まないものとする。
較正スキャンとは例えば、本スキャンの撮像条件の内の未確定のものや、画像再構成処理や画像再構成後の補正処理に用いられる条件やデータを決定するために、本スキャンとは別に行われるスキャンを指す。較正スキャンの例としては、本スキャンでのRFパルスの中心周波数を算出するシーケンスなどがある。プレスキャンとは、較正スキャンの内、本スキャン前に行われるものを指す。
また、システム制御部61は、撮像条件の設定画面情報を表示装置74に表示させ、入力装置72からの指示情報に基づいて撮像条件を設定し、設定した撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。また、システム制御部61は、撮像後には、生成された表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
入力装置72は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
画像再構成部62は、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数に応じて、RF受信器50から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。k空間とは、周波数空間の意味である。
画像再構成部62は、k空間データに2次元又は3次元のフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで、被検体Pの画像データを生成する。画像再構成部62は、生成した画像データを画像データベース63に保存する。
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを表示用画像データとして記憶装置76に保存する。
記憶装置76は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像条件や被検体Pの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
安全基準判定部65は、システム制御部61が本スキャンのパルスシーケンスの全条件を設定する都度、当該パルスシーケンスが安全基準を満たすか否かを判定する。具体的には、安全基準判定部65は、当該パルスシーケンスの磁場時間変化率(以下、dB/dt値という)及びSARを算出する。
なお、上記SARは、生体組織1kgに吸収されるRFパルスのエネルギーとしての比吸収率(Specific Absorption Ratio)の意味である。例えば任意の10秒間、6分間のSARがそれぞれ第1又は第2の上限値を超えないように安全基準が定められており、全身、頭部等の部位によっても上限値は異なる。
通知部66は、本スキャンの撮像領域の設定後、アネファクトアーチファクトが発生する可能性がある旨を本スキャンの実行前に通知する。
なお、演算装置60、入力装置72、表示装置74、記憶装置76の4つを1つのコンピュータとして構成し、例えば制御室に設置してもよい。
また、上記説明では、MRI装置10の構成要素をガントリ30、寝台装置20、制御装置40の3つに分類したが、これは一解釈例にすぎない。
例えば、天板移動機構23は、制御装置40の一部として捉えてもよい。
或いは、RF受信器50は、ガントリ30外ではなく、ガントリ30内に配置されてもよい。この場合、例えばRF受信器50に相当する電子回路基盤がガントリ30内に配設される。そして、RFコイル装置等によって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号は、当該電子回路基盤内のプリアンプで増幅され、デジタル信号としてガントリ30外に出力され、画像再構成部62に入力される。ガントリ30外への出力に際しては、例えば光通信ケーブルを用いて光デジタル信号として送信すれば、外部ノイズの影響が軽減されるので望ましい。
図2は、MR信号を検出する装着型のRFコイル装置の一例として、腕用RFコイル装置100の構成の一例を示す平面模式図である。図2に示すように、腕用RFコイル装置100は、カバー部材110と、ケーブル112と、コネクタ114とを有する。
カバー部材110は、可撓性を有する材料によって折り曲げ等の変形が可能に形成されている。このように変形可能な材料としては、例えば特開2007−229004号公報に記載の可撓性を有する回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)などを用いることができる。
カバー部材110内には、被検体Pの肩から手先まで対応した例えば8個の要素コイル120が配設されている。また、腕用RFコイル装置100は、制御回路(図示せず)と、腕用RFコイル装置100の識別情報を記憶した記憶素子(図示せず)とをカバー部材110内に有する。
コネクタ114が天板22上の接続ポート25に接続された場合、腕用RFコイル装置100の識別情報は、この制御回路からMRI装置10内の配線を介してシステム制御部61に入力される。
<本実施形態の原理>
以下、本実施形態の原理を説明するが、その説明に先立って、本実施形態のパルスシーケンス修正アルゴリズムが適用されるSE(Spin Echo: スピンエコー)法及びFSE(Fast Spin Echo)法のパルスシーケンスについて簡単に説明する。
図3は、SE法のパルスシーケンスの一例を示す模式的タイミング図である。
図3において、各横軸は経過時間tに対応し、上段のRFはRFパルス、その下のGssはスライス選択方向傾斜磁場をそれぞれ示す(後述の図4〜図6も同様)。
また、Gssの下のGpeは位相エンコード方向傾斜磁場、その下のGroは読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場、最下段のSIGNALは発生するMR信号をそれぞれ示す。
図3の縦の2本の破線の間は、位相エンコードステップ1つ分のMR信号の収集(1サイクル)である。各サイクルの始めには、例えば、脂肪抑制プレパルスなどのプレパルスが送信される。
次に、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの印加と同時に、フリップ角が例えば90°の励起RFパルスが撮像領域に送信される。但し、前述のプレパルスは必須ではなく、その場合にはスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの印加と励起RFパルスの送信が始めに実行される。
次に、位相エンコード方向傾斜磁場パルスが印加された後、読み出し方向傾斜磁場パルスが印加される。
次に、励起RFパルスの送信タイミングから、エコー時間TEの半分が経過するタイミングにおいて、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加と同時に、フリップ角が180°の再収束RFパルスが撮像領域に送信される。
この後、励起RFパルスの送信タイミングから、エコー時間TEが経過するタイミングにおいて、読み出し方向傾斜磁場パルスの印加の下でMR信号が検出される。
ここまでが位相エンコードステップ1つ分のMR信号の収集(1サイクル)である。この1サイクルが位相エンコードステップの数と同数だけ繰り返されることで、1画像分のMR信号が収集される。
図4は、FSE法のパルスシーケンスの一例を図3と同様の表記で示す模式的タイミング図である。ここでは一例として、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数が共に256であり、位相エンコードステップ4つ分のMR信号が収集される1セットが64回繰り返されることで、1画像分のMR信号が収集されるものとする。
この場合、各セットの始めには、例えば脂肪抑制プレパルスなどのプレパルスが送信される。
次に、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの印加と同時に、フリップ角が例えば90°の励起RFパルスが撮像領域に送信される。但し、プレパルスは必須ではなく、その場合にはスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの印加と励起RFパルスの送信が始めに実行される。
次に、MR信号の検出時に印加される読み出し方向傾斜磁場パルスの半分の印加時間幅で、読み出し方向傾斜磁場パルスが印加される。
次に、励起RFパルスの送信タイミングから、エコー時間TEの半分が経過するタイミングにおいて、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加と同時に、フリップ角が180°の再収束RFパルスが撮像領域に送信される。
次に、位相エンコード方向傾斜磁場パルスが印加される。
次に、読み出し方向傾斜磁場パルスの印加の下で、MR信号が検出される。
そして、各サイクルの終わりには、各サイクルで先に印加された位相エンコード方向傾斜磁場パルスとは極性が反転された補償傾斜磁場が位相エンコード方向に印加される。
これにより、位相エンコード方向傾斜磁場の影響が、次のMR信号の収集サイクルの前に消去される。
ここまでが位相エンコードステップ1つ分のMR信号の収集である。
この後、プレパルス及び励起RFパルスが印加されない点を除いて、同様の動作が3回繰り返され、さらに位相エンコードステップ3つ分のMR信号が収集される。
ここまでが1セットのMR信号の収集であり、プレパルス及び励起RFパルスは、各セットの始めのみ印加される。
図5は、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅が異なる場合に、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅を上げることで両者の振幅を揃える方法の一例を示す模式的タイミング図である。
図5の上段は波形の変形前を示し、図5の下段は波形の変形後を示す。
後述の図7でより詳細に説明するが、オフセンターでの撮像では、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を等しくすることが望ましい。オフセンターでは、傾斜磁場の線形性が劣化するところ、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えることで両者の非線形性な傾斜磁場強度分布を互いに近づける方が、画質が劣化しにくいからである。
そこで、本実施形態では、撮像領域の少なくとも一部がDSV外となる場合、再収束RFパルス及びこれと同時に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの波形を変形することで、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える。
なお、両者の振幅を揃えるためには、励起RFパルス及びこれと同時に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの波形を変形することも考えられる。しかし、原則的には、再収束RFパルス及びこれと同時に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの波形を変形する方が望ましい。
より詳細には、最初の励起RFパルスにより、ケミカルシフトなどの諸特性が決まってくるので、パルスシーケンスは、最初の励起RFパルスを基準に設定されている場合が多い。従って、最初の励起RFパルスの波形を変更すると、パルスシーケンスそのものを全て再設定することになり、煩雑となるからである。
但し、再収束RFパルス及びスライス選択向傾斜磁場パルスGssrの条件を変えずに、励起RFパルス及びスライス選択向傾斜磁場パルスGsseの波形を変えることで、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える場合も、本実施形態の技術思想の範囲内である。
図5は、SE法やFSE法において、励起RFパルスと同時に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅の方が、再収束RFパルスと同時に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅よりも高い場合である。
この場合、システム制御部61は、傾斜磁場強度の絶対値の時間積分値が変わらないように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅をスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅まで上げる。傾斜磁場強度の絶対値の時間積分値が変わらないようにすることは、図5の上段と下段とで、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの各斜線領域の面積が等しいことを意味する。
傾斜磁場強度の時間積分値が変わらないように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅を上げると、その印加時間幅は短くなる。従って、システム制御部61は、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時間幅に適合するように、これと同時に送信される再収束RFパルスの送信時間幅は短くする。
但し、再収束RFパルスの変形も、パルス強度の絶対値の時間積分値が変わらないように実行される。従って、再収束RFパルスは、印加時間幅が短くなる分、振幅が大きくなる。なお、以下の説明で「傾斜磁場の強度」、「パルス強度」と言う場合には、「傾斜磁場の強度の絶対値」、「パルス強度の絶対値」を指し、強度は全てプラスの値で考えるものとする。
図5のように、再収束RFパルスと同時のスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅を上げる場合、その印加時間幅が短くなるので、エコー時間TEは波形の変形前後で変わらない。
しかし、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅が上がることで、その立ち上がり傾き(Rising Gradient)及び立ち下がりの勾配(Falling Gradient)が大きくなるので、dB/dt値は大きくなる。また、再収束RFパルスの振幅が大きくなるので、SARは大きくなる。
従って、波形の変形後において、SAR,dB/dt値の2つの観点から安全基準を満たさなくなる可能性がある。その場合には、安全基準を満たすようにパルスシーケンスが再設定される(後述の図10のステップS9〜S11、図11のステップS29、S30参照)
図6は、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅が異なる場合に、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅を下げることで両者の振幅を揃える方法の一例を示す模式的タイミング図である。
図6の上段は波形の変形前を示し、図6の下段は波形の変形後を示す。
図6は、SE法やFSE法において、励起RFパルスと同時に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅の方が、再収束RFパルスと同時に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅よりも低い場合である。
この場合、傾斜磁場強度の時間積分値が変わらないように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅をスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅まで下げる処理が考えられる。これにより、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時間幅は長くなる。
その場合、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時間幅に適合するように、これと同時に送信される再収束RFパルスの送信時間幅は長くされる。再収束RFパルスの変形も、パルス強度の時間積分値が変わらないように実行されるので、印加時間幅が長くなる分、振幅が小さくなる。
図6のように、再収束RFパルスと同時のスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅を下げる場合、その立ち上がり及び立ち下がりの勾配が緩やかになるので、dB/dt値が小さくなる。また、再収束RFパルスの振幅が小さくなるのでSARが小さくなる。従って、波形の変形後において、SAR及びdB/dt値の2つの観点から安全基準を満たさなくなるおそれはない。
しかし、再収束RFパルス及びスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時間幅が長くなる分だけ(図6の例では2α)、波形の変形後のエコー時間は、図6に示すように長くなる。
これは、励起RFパルスの振幅がピークのタイミングと、再収束RFパルスの振幅がピークのタイミングとの間隔がエコー時間の半分に該当するところ、励起RFパルスの送信終了後、再収束RFパルスの送信開始前の時間幅(図中のTune Time)は、原則的には固定されるからである。また、波形の変形後にエコー時間が長くなることは、原則的には望ましくない。所望のコントラストが変わる事や、パルスシーケンスの実行に要する時間が長くなる等の問題が生じるからである。
従って、本実施形態では一例として、先に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅の方が、その後のスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅よりも低い場合、システム制御部61は、図6のような波形変形を実行せずに、励起RFパルスの振幅を上げる。
即ち、励起RFパルスの強度の時間積分値が変わらないように、印加時間幅を短くする。具体的には例えば、システム制御部61は、振幅がピーク時の時刻を基準に非対称な波形のRFパルスなどを使うことができる。この場合、基準となる励起RFパルスの条件が変わるので、システム制御部61は、本スキャンのパルスシーケンス全体を再設定することになる。
図7は、Z軸方向をスライス選択方向と仮定した場合に、図5のようにスライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える効果を概念的に示す模式図である。
図7の上段は、ガントリ30における磁場中心MFC及びDSVの位置を示す模式図である。図7の中段は、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅が異なる場合の磁場強度分布の一例である。図7の下段は、本実施形態のようにスライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える場合の磁場強度分布の一例である。
図7の上段に示すように、ガントリ30内(静磁場磁石31内)において、磁場中心MFCは、幾何学的中心に位置する。即ち、Z軸方向のガントリ長をGLとすれば、ガントリ30内の円筒状のボアの軸上において、ガントリの30の入口側からも奥側からもGL/2の位置に磁場中心MFCが位置する。そして、磁場中心MFCを中心とする所定半径の球状の領域がDSVとなる。
図7の中段及び下段では、縦軸は磁場強度をそれぞれ示し、横軸はZ軸方向の位置をそれぞれ示し、図7の上段から下段まで縦に引かれた2本の破線の間は、DSVの領域の磁場強度分布をそれぞれ示す。
図7の中段及び下段に示すように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えるか否かに拘らず、DSV内では傾斜磁場印加時の磁場強度分布の線形性がほぼ確保される。
ここでは一例として、図7の中段は、図5の上段のように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの方がスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrよりも振幅が大きい場合を示し、DSV内においてスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの方が直線の傾きが急峻となる。
しかし、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えるか否かに拘らず、オフセンターでは、傾斜磁場印加時の磁場強度分布は非線形となる。
ここで、図7の中段のように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅が異なる場合、DSV外の領域の磁場強度分布は、両パルスの各印加時で互いに異なる非線形性を示す。
より詳細には、例えばDSV内の撮像では、励起RFパルスも再収束RFパルスも、中心周波数が例えば磁場中心のラーモア周波数になるように、プレスキャン後に共通に設定される。このラーモア周波数は磁場強度に比例するので、Z軸方向に直線変化する傾斜磁場を静磁場に重畳印加すると、Z軸方向に沿ってラーモア周波数が直線変化する。
図7の中段の磁場強度Lahは、RFパルスの中心周波数をラーモア周波数にする磁場強度を意味する。従って、磁場強度Lahとなる位置は、撮像領域(スライス又はスラブ)の厚さ方向の中心に位置する。ここでは一例として、磁場強度Lah−βから、磁場強度Lah+βの範囲がRFパルスにより励起(選択)されるものとする。
図7の中段のように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各印加時において、オフセンターの傾斜磁場分布が互いに異なる非線形性を示す場合、次の問題が生じる。
即ち、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの印加時に励起RFパルスにより励起される領域(図7の中段の縦の2本の一点鎖線間の領域)と、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時に再収束RFパルスにより励起される領域(図7の中段の縦の2本の破線間の領域)とが、傾斜磁場の線形性の良くない領域では磁場モーメント上の不整合を生じる。この磁場モーメントズレが、オフセンターでの画質劣化の主な要因となる。
これに対し本実施形態では、図7の下段のように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えるので、オフセンターの磁場強度分布は、両パルスの各印加時でほぼ同じ非線形性を示す。従って、励起RFパルスの送信時と、再収束RFパルスの送信時とで、励起される領域はほぼ同じとなるので、上記の画質劣化の問題が生じにくくなる。
図8は、撮像領域との位置関係でアネファクトアーチファクトの要因の一例を示すガントリ30内の平面模式図である。図8は、腕用RFコイル装置100の装着により、被検体Pの右手が撮像領域(平面的にはFOV:Field Of View)として選択されている例を示す。
図9は、アネファクトアーチファクトの発生の可能性がある場合に、通知部66及び表示装置74によって実行される警告表示の一例を示す模式図である。
以下、図8及び図9を参照しながら、アネファクトアーチファクトに対する本実施形態の対処方法について説明する。
アネファクトアーチファクトは、撮像領域と磁場中心との位置関係、要素コイルの配置などの諸条件に依存して、撮像領域外において磁気共鳴した物体からのMR信号が画像に混入するものである。
より詳細には、スライス選択方向傾斜磁場の強度は、スライス選択方向に沿って直線的に上昇し、スライス選択方向では同じ磁場強度の領域が存在しないのが理想である。しかし、オフセンターでは前述のように磁場強度分布が非線形となる。そうすると、スライス選択方向に磁場中心から位置Ss1までは非線形ながらも磁場強度が上昇しても、位置Ss1よりもさらに磁場中心から離れるほど、磁場強度が下がる。
従って、例えばZ軸方向がスライス選択方向の場合、ガントリ30の端などの磁場中心から相当離れた位置Ss2において、撮像領域と同じ磁場強度との領域が存在しうる。オフされていない要素コイルが当該位置Ss2に存在すると、それがラーモア周波数で共鳴してMR信号を発生し、このMR信号がアネファクトアーチファクトとして画像に混入しうる。
ここで、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えずにオフセンターを撮像する場合のアネファクトアーチファクトを考える。この場合、前述のように、励起RFパルスの送信時と再収束RFパルスの送信時とで、オフセンターの傾斜磁場分布が互いに異なるので、励起RFパルスで励起される領域と、再収束RFパルスで励起される領域とがずれる結果、アネファクトアーチファクトも劣化する。
しかし、本実施形態のように、オフセンターの撮像においてスライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える場合、励起RFパルスの送信時と再収束RFパルスの送信時とで、オフセンターの傾斜磁場分布がほぼ同じになる。そうすると、励起RFパルスで励起される領域と、再収束RFパルスで励起される領域とがずれないので、アネファクトアーチファクトも劣化することなく、大きく表れてしまう。
対処方法としては、撮像領域からのMR信号の検出に不要な要素コイル120をオフにすれば、オフにされた要素コイル120は、MR信号の検出時に共振することはなく、アネファクトアーチファクトの要因とはならない。ここでの「オフにする」とは、例えば、要素コイル120の電流経路のループを遮断することで、MR信号を検出する機能をオフにすることである。
図8のケースでは、例えば、FOV外の破線で示す6つの要素コイル120をオフにし、FOV内の要素コイル120のみでMR信号を検出することで、アネファクトアーチファクトを回避できる。
本スキャンとして設定された多数の撮像領域の中に、DSV外の領域が含まれると共に当該撮像領域外の要素コイルが選択されているスライス又はスラブが存在する場合、通知部66は、例えば図9のような警告表示(通知)を実行する。本実施形態では、DSV外の領域を含むスライス又はスラブの撮像では、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えるので、前述のようにアネファクトアーチファクトが大きく表れやすいからである。
警告表示は、例えば表示装置74にその旨を文字情報的に表示するなどの手法で行われる。図9の例では、手の撮像においてFOVがDSV外の領域を含むので、FOV外の要素コイルのMR信号の検出機能をオフする旨が表示される。
<本実施形態の動作説明>
例えば脊椎用RFコイル装置を用いた検査の場合、天板22をずらしながら、頭部、胸部、腹部の各位置決め画像を順次撮像し、頭部、胸部、腹部の各撮像領域(平面的にはFOV)を先に決定してもよい。
この場合、頭部、胸部、腹部の各撮像領域の決定後、SAR及びdB/dt値の安全基準が満たされるように、全本スキャンのパルスシーケンスが上記本実施形態のアルゴリズムで決定される。その後、頭部撮像用の位置に天板を戻してから、頭部の本スキャン、胸部の本スキャン、腹部の本スキャンが順次実行される。
上記のように、位置決め画像の撮像及び撮像領域の決定を本スキャン前に一括して実行する順序でもよいが、頭部、胸部、腹部の撮像領域毎に、位置決め画像の撮像から本スキャンの実行までの一連の撮像動作を実行してもよい。
即ち、MRI装置10は、頭部の位置決め画像を撮像して頭部の撮像領域を決定してから、SAR等の安全基準を満たすように頭部の本スキャンのパルスシーケンスを本実施形態のアルゴリズムで決定後、頭部の本スキャンを実行する。次に、MRI装置10は、胸部について位置決め画像の撮像から本スキャンまでの一連の動作を実行後、腹部について位置決め画像の撮像から本スキャンまでの一連の動作を実行する。
脊椎用RFコイル装置を用いたほぼ体軸上の撮像の場合、前述のように、天板22の移動によってDSV内に撮像領域を収め易い。その場合、励起RFパルスの送信時と、再収束RFパルスの送信時とでスライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える上記アルゴリズムを適用しなくとも良好な画質が得られるので、上記アルゴリズムを適用する必要はない。
そこで、以下の図10及び図11のフローチャートでは一例として、片腕の検査の場合について説明する。この場合、例えば手が体軸から離れ、X軸方向にDSV外となり易いので、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える本実施形態のアルゴリズムが適用される可能性が高い。
なお、全スライス又はスラブの内、一部のスライス又はスラブのみがDSV外となる領域を含む場合、本実施形態では、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えるシーケンス変更を全スライス共通に実行する。この方が望ましい理由は、以下の通りである。
即ち、スライス1枚だけスライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えると、他のスライスのMR信号の収集時とは、渦電流による磁場の発生の仕方が異なる。そうすると、例えば渦電流による磁場を補償する補正がスライス1枚だけ異なり、画質が他のスライスと揃わないといった問題が生じるからである。
但し、本実施形態は、上記態様に限定されるものではない。全スライス又はスラブの内、一部のスライス(スラブ)の少なくとも一部がDSV外となる場合、DSV外の領域を含むスライス(スラブ)に対してのみ、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃え、DSV内のスライス(スラブ)のMR信号の収集では両パルスの各振幅を揃えなくてもよい。
図10は、SE法のパルスシーケンスを設定する場合のMRI装置10の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、前述した各図を適宜参照しながら、図10に示すステップ番号に従って、SE法を実行する場合のMRI装置10の動作を説明する。
[ステップS1]システム制御部61(図1参照)は、入力装置72を介してMRI装置10に対して入力された撮像条件を取得し、取得した撮像条件に基づいて、本スキャンの撮像条件(片腕に対するSE法のパルスシーケンスの条件を含む)の一部を設定する。また、プレスキャンなどによってRFパルスの中心周波数等が設定される。この後、ステップS2に進む。
[ステップS2]MRI装置10は、位置決め画像を撮像する。具体的には、天板22に被検体Pが載置され、静磁場電源42により励磁された静磁場磁石31によって撮像空間に静磁場が形成される。また、シムコイル電源44からシムコイルユニット32に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
そして、入力装置72からシステム制御部61に撮像開始指示が入力されると、システム制御部61は、パルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。シーケンスコントローラ58は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、被検体Pの撮像部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイルユニット34からRFパルスを発生させる。
このため、被検体P内の核磁気共鳴により生じたMR信号が腕用RFコイル装置100(図2参照)により検出されて、RF受信器50に入力される。RF受信器50は、MR信号に前述の処理を施すことでMR信号の生データを生成し、これら生データを画像再構成部62に入力する。
画像再構成部62は、MR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。
画像再構成部62は、k空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース63に保存する。
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで、位置決め画像の表示用画像データを生成し、この表示用画像データを記憶装置76に保存する。システム制御部61は、表示用画像データが示す位置決め画像を表示装置74に表示させる。
この後、表示装置74に表示される位置決め画像を参照しながら、ユーザにより本スキャンの撮像領域(平面的にはFOV)が決定される。
本スキャンの撮像領域が決定された後、ステップS3に進む。なお、ここでは説明の簡単化のため、ステップS2で決定された本スキャンの撮像領域は、以降のステップにおいて変更されないものとする。
[ステップS3]システム制御部61は、ステップS2で決定された本スキャンの撮像領域に基づいて、SARやdB/dt値などの安全基準を満たすように、SE法のパルスシーケンスの全条件を暫定的に設定する。
なお、システム制御部61は、決定された本スキャンの全撮像領域がDSV内であるか否かを判定後、判定結果が肯定的である場合には以下のようにパルスシーケンスを設定してもよい。
具体的には、DSV内の撮像なら、再収束RFパルスの送信時のスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅と、励起RFパルスの送信時のスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅とが離れていても、十分良好な画質が得られる。さらに、両パルスの振幅が離れている方が、アネファクトアーチファクトが生じにくい。
従って、システム制御部61は、DSV内の撮像でもアネファクトアーチファクトが出易いと推定される場合、励起RFパルスの振幅と、再収束RFパルスの振幅との差を意図的に大きくすることで、アネファクトアーチファクトを防止する。
DSV内であって、アネファクトアーチファクトが出易いと推定される場合としては、以下のような状況が考えられる。
例えば被検体Pの全身にRFコイル装置を装着し、天板22を移動しながら、被検体Pの体軸上の領域(両腕を含まない)を頭部から足まで順次撮像する場合を考える。この場合、全要素コイルがオン状態に設定されていると、例えば腹部や胸部の撮像において、足の近辺のMR信号がアネファクトアーチファクトとして混入しうる。
なお、全撮像領域がDSV内の場合に上記のようにアネファクトアーチファクトを回避するシーケンス設定方法は、あくまでオプションであり、必須ではない。
この後、ステップS4に進む。
[ステップS4]システム制御部61は、ステップS3までに決定された本スキャンの撮像領域の中に、DSV外の領域を含むスライス又はスラブがあるか否かを判定する。
DSV外の領域を含むスライス又はスラブが存在する場合、ステップS5に進む。
DSV外の領域を含むスライス又はスラブがない場合、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えなくとも良好な画質が得られるので、ステップS13に進む。
[ステップS5]システム制御部61は、再収束RFパルスの送信時のスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅を励起RFパルスの送信時のスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅に等しくしても、変更前後でエコー時間を維持できるか否かを判定する。
即ち、図5のように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅の方が、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅よりも低い場合、変更前後においてエコー時間を等しくできるので、ステップS8に進む。
一方、図6のように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅の方が、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅よりも高い場合、ステップS6に進む。この場合、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅をスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseまで下げると、エコー時間が長くなってしまうからである。
なお、ステップS3で設定されたパルスシーケンスの条件において、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅が既に同じになっている場合、ステップS8に進み、ステップS8ではパルスシーケンスの実質的な変更が実行されずに、ステップS9に進むものとする。
[ステップS6]システム制御部61は、励起RFパルスの強度の時間積分値が変わらないように、励起RFパルスの送信時間幅を短くすると共に振幅を上げることで、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える。
この場合、システム制御部61は例えば、強度がピーク時の時刻を基準に非対称の波形のRFパルスなどを使うことで、強度の時間積分値を維持しつつ、振幅を上げることができる。
この後、ステップS7に進む。
[ステップS7]システム制御部61は、ステップS6で変更した励起RFパルスの条件と、ステップS2で決定された撮像領域とに基づいて、本スキャンのSE法のパルスシーケンス全体を再設定する。
この後、ステップS9に進む。
[ステップS8]システム制御部61は、傾斜磁場強度の時間積分値が変わらないように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅をスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅まで上げる。これにより、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時間幅は短くなる(図5参照)。
従って、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時間幅に適合するように、これと同時に送信される再収束RFパルスの送信時間幅は短くされる。このとき、パルス強度の時間積分値が変わらないよう、システム制御部61は、再収束RFパルスの振幅を上げる。
システム制御部61は、以上のようにパルスシーケンスにおける再収束RFパルス及びスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの条件のみを変更後、ステップS9に進む。
[ステップS9]安全基準判定部65は、ステップS8又はステップS7で変更後の本スキャンのパルスシーケンスの条件に基づいてSAR推定値を算出することで、変更後の本スキャンのパルスシーケンスがSARの安全基準を満たすか否かを判定する。
同様に、安全基準判定部65は、変更後の本スキャンのパルスシーケンスの条件に基づいてdB/dt値の推定値を算出することで、変更後の本スキャンのパルスシーケンスがdB/dt値の安全基準を満たすか否かを判定する。
変更後の本スキャンのパルスシーケンスがSAR及びdB/dt値の双方において安全基準を満たす場合、ステップS12に進む。
それ以外の場合、安全基準を満たすようにパルスシーケンスの条件を変更するため、ステップS10に進む。
[ステップS10]システム制御部61は、励起RFパルスの強度の時間積分値が変わらないように励起RFパルスの送信時間幅を長くし、その振幅を下げる事で、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える。
この後、ステップS11に進む。
[ステップS11]システム制御部61は、ステップS10で変更した励起RFパルスの条件と、ステップS2で決定された撮像領域とに基づいて、本スキャンのSE法のパルスシーケンス全体を再設定する。
この再設定に際して、システム制御部61は、特にオフセンターのスライス又はスラブに対するMR信号の収集において撮像領域から離れた要素コイル120をオフにすることで、アネファクトアーチファクトを抑制する(図8及び図9参照)。
具体的には、システム制御部61は、当該撮像領域から離れた要素コイル120によるMR信号の検出機能をオフさせる制御信号を、シーケンスコントローラ58から接続ポート25経由で腕用RFコイル装置に入力させる。
この後、ステップS5に戻る。
[ステップS12]ステップS6又はステップS8においてスライス選択方向傾斜磁場パルスGssr,Gsseの各振幅を揃える変更処理が実行され、ステップS9において安全基準を満たすと判定された場合のみ、このステップS12に到達する。
換言すれば、このステップS12に到達する場合、撮像領域にDSV外の領域が含まれ、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える補正も実行されているので、アネファクトアーチファクトが発生し易い。従って、ステップS11において、オフセンターのスライス又はスラブに対しては、撮像領域から離れた要素コイル120がオフにされている。
このため、通知部66は、図9で述べたように、警告表示を実行する。即ち、通知部66は、アネファクトアーチファクトが発生し易いので、DSV外の領域が含まれるスライス又はスラブに対して、その要因となりうる要素コイルをオフにした旨を表示装置74に表示させる。
そして、システム制御部61は、現在暫定的に設定されている条件(ステップS8で変更された最新の条件)で、本スキャンのパルスシーケンスの条件を決定(確定)する。
この後、ステップS14に進む。
[ステップS13]撮像領域にDSV外の領域が含まれない場合のみ、このステップS13に到達する。この場合、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える補正をしなくとも良好な画質が得られる。従って、システム制御部61は、ステップS3で設定された条件で、本スキャンのパルスシーケンスを決定(確定)する。
この後、ステップS14に進む。
[ステップS14]決定された本スキャンのパルスシーケンスの条件に従って、撮像領域からのMR信号の収集が実行される。MR信号の収集動作は、位置決め画像の場合と同様である。この後、位置決め画像の場合と同様に、本スキャンで収集されたMR信号に基づいて画像再構成処理が実行されて本スキャンの画像データが生成され、かかる画像データに基づいて本スキャンの画像が表示装置74に表示される。
以上がSE法の場合のフローの一例の説明である。
図11は、FSE法のパルスシーケンスを設定する場合のMRI装置10の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、前述した各図を適宜参照しながら、図11に示すステップ番号に従って、FSE法を実行する場合のMRI装置10の動作を説明する。
[ステップS21〜S24]パルスシーケンスの条件としてFSE法の条件が入力される点を除き、図10のステップS1〜S4の処理と同様である。この後、ステップS25に進む。
[ステップS25]システム制御部61は、再収束RFパルスの送信時のスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅を励起RFパルスの送信時のスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅に等しくしても、エコートレイン間隔を維持できるか否かを判定する。
なお、FSE法のエコートレイン間隔は、例えば、図4の1セットのMR信号の収集内において、再収束RFパルスの強度がピークのタイミングと、次の再収束RFパルスの強度がピークのタイミングとの時間間隔である。
図5のように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅の方が、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅よりも低い場合、変更前後でエコー時間を等しくできるので、変更前後でエコートレイン間隔も等しくできる(図4のFSE法のパルスシーケンス参照)。この場合、ステップS28に進む。
一方、図6のように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅の方が、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅よりも高い場合、変更後にエコー時間が長くなるので、変更後にエコートレイン間隔も長くなってしまう。この場合、ステップS26に進む。
なお、ステップS23で設定されたパルスシーケンスの条件において、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅が既に同じになっている場合、ステップS28に進み、ステップS28ではパルスシーケンスの変更が実行されずに、ステップS29に進むものとする。
[ステップS26]システム制御部61は、前述同様に、励起RFパルスの強度の時間積分値が変わらないように、励起RFパルスの送信時間幅を短くすることで、その振幅を少しだけ上げる。この後、ステップS27に進む。
[ステップS27]システム制御部61は、ステップS26で変更した励起RFパルスの条件と、ステップS22で決定された撮像領域とに基づいて、本スキャンのFSE法のパルスシーケンス全体を再設定する。
ここでは一例として、システム制御部61は、エコートレイン間隔を変えずにパルスシーケンスを再設定する。ここで、再収束RFパルスと、次の再収束RFパルスとの間に挿入される位相エンコード傾斜磁場パルス、及び、これとは極性が反転された位相エンコード方向の補償傾斜磁場パルスの各印加時間幅は、ほぼ決まっている。
このため、再収束RFパルスの送信終了後、次の再収束RFパルスの送信開始までの時間間隔から、上記2つの位相エンコード方向の傾斜磁場パルスの印加時間を差し引くと、残りがMR信号を検出可能な時間幅となる。
従って、エコートレイン間隔により、サンプリング時間の上限値(MR信号検出時の読み出し方向傾斜磁場パルスの印加時間幅の上限値)と、再収束RFパルスの送信時間幅の上限値との組み合わせのパターン(トレードオフ条件)が決まる。サンプリング時間の上限値と、再収束RFパルスの送信時間幅の上限値とは、トレードオフの関係となるからである。即ち、サンプリング時間を長くすると、再収束RFパルスの送信時間幅及びスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時間幅は短くなる。
システム制御部61は、エコートレイン間隔により決まるサンプリング時間の上限値と、再収束RFパルスの送信時間幅の上限値とのトレードオフ条件を満たすように、パルスシーケンスを再設定する。
この後、ステップS25に戻る。
[ステップS28]システム制御部61は、傾斜磁場強度の時間積分値が変わらないように、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの振幅をスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの振幅まで上げる。システム制御部61は、これにより短くなるスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時間幅に適合するように、同時に送信される再収束RFパルスの送信時間幅を短くする。このとき、システム制御部61は、パルス強度の時間積分値が変わらないよう、再収束RFパルスの振幅を増加する。
システム制御部61は、以上のようにパルスシーケンスにおける再収束RFパルス及びスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの条件のみを変更してから、ステップS29に進む。
[ステップS29]安全基準判定部65は、ステップS28で変更後の本スキャンのパルスシーケンスが、SAR,dB/dt値の安全基準を全て満たすか否かを図10のステップS9と同様に判定する。
変更後の本スキャンのパルスシーケンスがSAR及びdB/dt値の双方において安全基準を満たす場合、ステップS31に進み、それ以外の場合、ステップS30に進む。
[ステップS30]システム制御部61は、まず、以下の第1変更処理、第2変更処理いずれか1つを実行する。
第1変更処理では、図10のステップS10と同様に、励起RFパルスの強度の時間積分値が変わらないように励起RFパルスの送信時間幅を長くすることで、その振幅を少しだけ下げる。
ここでは一例として、ステップS29の判定において、dB/dt値が安全基準を満たさない場合、第1変更処理が選択されるものとする。励起RFパルスの送信時間幅を長くすれば、同時に印加されるスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの印加時間幅が長くなる分、その立ち上がり及び立ち下がりの勾配が緩やかになり、dB/dt値が下がるからである。
第2変更処理は、エコートレイン間隔を長くする処理である。ここでは一例として、dB/dt値が安全基準を満たす一方でSARが安全基準を満たさず、且つ、パルスシーケンス全体の実行時間を延長可能な場合のみ、第2変更処理が選択されうるものとする。FSE法では、エコートレイン間隔を延ばすことでSARが下がるからである。
次に、システム制御部61は、第1又は第2変更処理で変更された励起RFパルスの条件又はエコートレイン間隔と、ステップS22で決定された撮像領域とに基づいて、本スキャンのFSE法のパルスシーケンス全体を再設定する。
この再設定に際して、システム制御部61は、図10のステップS11と同様に、特にオフセンターのスライス又はスラブに対するMR信号の収集において撮像領域から離れた要素コイル120をオフにすることで、アネファクトアーチファクトを抑制する(図8及び図9参照)。
また、この再設定に際して、システム制御部61は、エコートレイン間隔によって決まるサンプリング時間の上限値と、再収束RFパルスの送信時間幅の上限値との組み合わせのパターン(トレードオフ条件)を満たすように、パルスシーケンスを再設定する。
この後、ステップS25に戻る。
[ステップS31]ステップS31に到達する場合、撮像領域にDSV外の領域が含まれ、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える補正が実行されているので、アネファクトアーチファクトが発生し易い。
このため、通知部66は、図10のステップS12と同様に、警告表示を実行する。
また、システム制御部61は、現在暫定的に設定されている条件(ステップS29で変安全と判定された最新の条件)で、本スキャンのパルスシーケンスの条件を決定(確定)する。
この後、ステップS33に進む。
[ステップS32]ステップS32に到達する場合、撮像領域にDSV外の領域が含まれないので、システム制御部61は、ステップS23で設定された条件で本スキャンのパルスシーケンスを決定(確定)する。この後、ステップS33に進む。
[ステップS33]決定された本スキャンのパルスシーケンスの条件に従って、前述のように本スキャンが実行された後、画像再構成処理及び本スキャンの画像表示が実行される。
以上が本実施形態のMRI装置10の動作説明である。
<本実施形態の効果>
本実施形態は、撮像領域の少なくとも一部がDSV外となる場合に、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えることで、両パルスの各印加時にオフセンターの磁場強度分布をほぼ同様にするという、極めて画期的な技術思想に基づく(図5、図7参照)。
このため、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsseの印加時に励起RFパルスで励起される領域と、スライス選択方向傾斜磁場パルスGssrの印加時に再収束RFパルスで励起される領域とは、殆どずれない。従って、オフセンターの撮像において、スライス選択が良好に実行されるので、従来よりも画質を向上できる。
この結果、オフセンターの撮像後に画像品質が悪く、ユーザが手動で撮像条件を変更して撮像し直すといった時間のロスがなくなる。
ここで、励起RFパルスで励起される領域と、再収束RFパルスで励起される領域とがオフセンターにおいてあまりズレなくなる本実施形態の効果の反面、アネファクトアーチファクトが発生し易くなる。
そこで、本実施形態では、アネファクトアーチファクトが発生し易い場合には、図9のように警告表示が実行される。さらに、本実施形態では、FOVの外に位置すると共にアネファクトアーチファクトの要因となりうる要素コイル120をオフにするので、アネファクトアーチファクトを回避できる。
このように本実施形態では、MRI装置10により撮像条件が自動的に最適化されるので、アネファクトアーチファクトを抑制しつつ、オフセンターでも十分が画質が得られる。この結果、ユーザ自身が手動で最適な撮像条件を模索する必要はなくなり、ユーザの利便性が大いに向上する
以上説明した実施形態によれば、従来とは異なるMRIの技術により、磁場中心から離れた撮像領域において画質を向上できる。
<本実施形態の補足事項>
以下、上記実施形態の変形例及び補足点を説明する。
[1]上記実施形態では、SE法及びFSE法において、励起RFパルスの送信時と再収束RFパルスの送信時とでスライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
上記のパルスシーケンス変更アルゴリズムは、スピンエコー系のシングルショットのEPI(Echo Planar Imaging)や、スピンエコー系のマルチショットEPIなどのスピンエコー系の他のパルスシーケンスにも適用可能である。
[2]上記実施形態では、励起RFパルスの送信時と再収束RFパルスの送信時とで、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を完全に等しくする例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。両パルスの振幅を完全に等しくしなくてもよい。
効果的に言及すれば、従来よりも画質が向上する程度に、オフセンターの撮像領域近辺において、励起RFパルスの送信時のスライス選択方向傾斜磁場分布と、再収束RFパルスの送信時のスライス選択方向傾斜磁場分布とを互いに近づければよい。即ち、従来よりも画質が向上する程度に、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を互いに近づけるシーケンス変更を実行する場合も、本実施形態の技術思想の範囲内である。
[3]1つのスライス又は1つのスラブの少なくとも一部がDSV外となる場合に、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
一部がDSV外となるスライス又はスラブが存在しても、それが診断上問題とはならない領域であれば、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えることで画質を向上させなくてもよいからである。
従って、例えば、撮像領域としての多数のスライス又はスラブの内、全体がDSV外となるスライス又はスラブが1つでも含まれる場合に、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃えてもよい。
或いは、図10のステップS4、図11のS24の各判定後、YESとしてステップS5、ステップS25に進む条件として、以下のように入力装置72、表示装置74、システム制御部61を構成してもよい。
即ち、表示装置74は、DSV外の領域を含むスライス又はスラブの画像外縁を位置決め画像上に重畳表示する。この後、スライス選択方向傾斜磁場パルスGsse,Gssrの各振幅を揃える処理をユーザが入力装置72を介して選択した場合に、システム制御部61はステップS5、ステップS25に処理を進める。
以上説明した少なくとも一つの実施形態のMRI装置及びMRI方法によれば、磁場中心から離れた撮像領域において画質を向上させることができる。
[4]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
ガントリ30内の各構成要素、及び、制御装置40の全体(図1参照)が、傾斜磁場及びRFパルスの印加を伴った撮像により被検体PからMR信号を収集する機能は、請求項記載の信号収集部の一例である。
パルスシーケンスの条件を設定するシステム制御部61は、請求項記載の撮像条件設定部の一例である。
パルスシーケンスの条件の入力を受け付け、入力された条件をシステム制御部61に伝達する入力装置72は、請求項記載の入力部の一例である。
図5、図6におけるスライス選択方向傾斜磁場パルスGsseは、請求項記載の第1傾斜磁場パルスの一例である。
図5、図6におけるスライス選択方向傾斜磁場パルスGssrは、請求項記載の第2傾斜磁場パルスの一例である。
DSVは、請求項記載の磁場中心から所定の半径の領域の一例である。
[5]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。