以下、MRI装置及びMRI方法の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。なお、各図において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
<本実施形態の構成>
図1は、本実施形態のMRI装置10の全体構成の一例を示すブロック図である。ここでは一例として、MRI装置10の構成要素を寝台装置20、ガントリ30、制御装置40の3つに分けて説明する。
第1に、寝台装置20は、支持台21と、天板22と、支持台21内に配置される天板移動機構23とを有する。
天板22の上面には、被検体Pが載置される。また、天板22の上面には、被検体Pに装着されるRFコイル装置100が接続される接続ポート25が複数配置される。
支持台21は、天板22を水平方向(装置座標系のZ軸方向)に移動可能に支持する。天板移動機構23は、天板22がガントリ30外に位置する場合に、支持台21の高さを調整することで天板22の鉛直方向の位置を調整する。また、天板移動機構23は、天板22を水平方向に移動させることで天板22をガントリ30内に入れ、撮像後には天板22をガントリ30外に出す。
第2に、ガントリ30は、例えば円筒状に構成され、撮像室に設置される。ガントリ30は、静磁場磁石31と、シムコイルユニット32と、傾斜磁場コイルユニット33と、RFコイルユニット34とを有する。
静磁場磁石31は、例えば超伝導コイルであり、円筒状に構成される。静磁場磁石31は、後述の制御装置40の静磁場電源42から供給される電流により、撮像空間に静磁場を形成する。撮像空間とは例えば、被検体Pが置かれて、静磁場が印加されるガントリ30内の空間を意味する。なお、静磁場電源42を設けずに、静磁場磁石31を永久磁石で構成してもよい。
シムコイルユニット32は、例えば円筒状に構成され、静磁場磁石31の内側において、静磁場磁石31と軸を同じにして配置される。シムコイルユニット32は、後述の制御装置40のシムコイル電源44から供給される電流により、静磁場を均一化するオフセット磁場を形成する。
傾斜磁場コイルユニット33は、例えば円筒状に構成され、シムコイルユニット32の内側に配置される。傾斜磁場コイルユニット33は、X軸傾斜磁場コイル33xと、Y軸傾斜磁場コイル33yと、Z軸傾斜磁場コイル33zとを有する。
本明細書では、特に断りのない限り、X軸、Y軸、Z軸は装置座標系であるものとする。ここでは一例として、装置座標系のX軸、Y軸、Z軸を以下のように定義する。まず、鉛直方向をY軸方向とし、天板22は、その上面の法線方向がY軸方向となるように配置される。天板22の水平移動方向をZ軸方向とし、ガントリ30は、その軸方向がZ軸方向となるように配置される。X軸方向は、これらY軸方向、Z軸方向に直交する方向であり、図1の例では天板22の幅方向である。
X軸傾斜磁場コイル33xは、後述のX軸傾斜磁場電源46xから供給される電流に応じたX軸方向の傾斜磁場Gxを撮像領域に形成する。同様に、Y軸傾斜磁場コイル33yは、後述のY軸傾斜磁場電源46yから供給される電流に応じたY軸方向の傾斜磁場Gyを撮像領域に形成する。同様に、Z軸傾斜磁場コイル33zは、後述のZ軸傾斜磁場電源46zから供給される電流に応じたZ軸方向の傾斜磁場Gzを撮像領域に形成する。
そして、スライス選択方向傾斜磁場Gss、位相エンコード方向傾斜磁場Gpe、及び、読み出し方向(周波数エンコード方向)傾斜磁場Groは、装置座標系の3軸方向の傾斜磁場Gx、Gy、Gzの合成により、任意の方向に設定可能である。
上記撮像領域は、例えば、1画像又は1セットの画像の生成に用いられるMR信号の収集範囲の少なくとも一部であって、画像となる領域である。撮像領域は例えば、撮像空間の一部として装置座標系で3次元的に規定される。例えば折り返しアーチファクトを防止するために、画像化される領域よりも広範囲でMR信号が収集される場合、撮像領域はMR信号の収集範囲の一部である。一方、MR信号の収集範囲の全てが画像となり、MR信号の収集範囲と撮像領域とが合致する場合もある。
RFコイルユニット34は、例えば円筒状に構成され、傾斜磁場コイルユニット33の内側に配置される。RFコイルユニット34は、例えば、RFパルスの送信及びMR信号の受信を兼用する全身用コイルを含む。
第3に、制御装置40は、静磁場電源42と、シムコイル電源44と、傾斜磁場電源46と、RF送信器48と、RF受信器50と、シーケンスコントローラ58と、演算装置60と、入力装置72と、表示装置74と、記憶装置76とを有する。
傾斜磁場電源46は、X軸傾斜磁場電源46xと、Y軸傾斜磁場電源46yと、Z軸傾斜磁場電源46zとを有する。X軸傾斜磁場電源46x、Y軸傾斜磁場電源46y、Z軸傾斜磁場電源46zは、傾斜磁場Gx、Gy、Gzを形成するための各電流を、X軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zにそれぞれ供給する。
RF送信器48は、シーケンスコントローラ58から入力される制御情報に基づいて、核磁気共鳴を起こすラーモア周波数のRF電流パルスを生成し、これをRFコイルユニット34に送信する。このRF電流パルスに応じたRFパルスが、RFコイルユニット34から被検体Pに送信される。
RFコイルユニット34の全身用コイルや、被検体Pに装着されるRFコイル装置100は、被検体P内の原子核スピンがRFパルスによって励起されることで発生したMR信号を検出し、検出されたMR信号は、RF受信器50に入力される。
RF受信器50は、受信したMR信号に所定の信号処理を施した後、A/D(analog to digital)変換を施すことで、デジタル化されたMR信号の複素データである生データを生成する。RF受信器50は、MR信号の生データを演算装置60(の画像再構成部62)に入力する。
シーケンスコントローラ58は、演算装置60の指令に従って、傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50の駆動に必要な制御情報を記憶する。ここでの制御情報とは、例えば、傾斜磁場電源46に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等の動作制御情報を記述したシーケンス情報である。シーケンスコントローラ58は、記憶した所定のシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、傾斜磁場Gx、Gy、Gz及びRFパルスを発生させる。
演算装置60は、システム制御部61と、システムバスSBと、画像再構成部62と、画像データベース63と、画像処理部64と、判定部65とを有する。
システム制御部61は、撮像条件設定部として機能すると共に、撮像動作及び撮像後の画像表示において、システムバスSB等の配線を介してMRI装置10全体のシステム制御を行う。上記撮像条件とは例えば、どの種類のパルスシーケンスにより、どのような条件でRFパルス等を送信し、どのような条件で被検体PからMR信号を収集するかを意味する。撮像条件の例としては、撮像空間内の位置的情報としての撮像領域、繰り返し時間TR(Repetition Time)、スライス数、撮像部位、スピンエコー法やパラレルイメージング等のパルスシーケンスの種類などが挙げられる。上記撮像部位とは、例えば、頭部、胸部、腹部などの被検体Pのどの部分を撮像領域として画像化するかを意味する。
上記「本スキャン」は、T1強調画像などの目的とする診断画像の撮像のためのスキャンであって、位置決め画像用のMR信号収集のスキャンや、較正スキャンを含まないものとする。スキャンとは、MR信号の収集動作を指し、画像再構成を含まないものとする。
較正スキャンとは例えば、本スキャンの撮像条件の内の未確定のものや、画像再構成処理や画像再構成後の補正処理に用いられる条件やデータを決定するために、本スキャンとは別に行われるスキャンを指す。較正スキャンの例としては、本スキャンでのRFパルスの中心周波数を算出するシーケンス等がある。プレスキャンとは、較正スキャンの内、本スキャン前に行われるものを指す。
また、システム制御部61は、撮像条件の設定画面情報を表示装置74に表示させ、入力装置72からの指示情報に基づいて撮像条件を暫定的に設定し、判定部65の判定結果に基づいて暫定的に設定した撮像条件を補正する。
システム制御部61は、このようにして、本スキャンの撮像条件を最終的に決定し、決定された撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。また、システム制御部61は、撮像後には、生成された表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
入力装置72は、撮像条件や画像処理条件を設定する機能をユーザに提供する。
判定部65は、暫定的に設定されたパルスシーケンスの条件に基づいて、良好な画質を得るために十分な量のMR信号のデータが確保されるか否かを判定し、判定結果をシステム制御部61に入力する。
画像再構成部62は、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数に応じて、RF受信器50から入力されるMR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。k空間とは、周波数空間の意味である。画像再構成部62は、k空間データに2次元又は3次元のフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで、被検体Pの画像データを生成する。画像再構成部62は、生成した画像データを画像データベース63に保存する。
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施し、画像処理後の画像データを記憶装置76に保存する。
記憶装置76は、上記の表示用画像データに対し、その表示用画像データの生成に用いた撮像条件や被検体Pの情報(患者情報)等を付帯情報として付属させて記憶する。
なお、演算装置60、入力装置72、表示装置74、記憶装置76の4つを1つのコンピュータとして構成し、例えば制御室に設置してもよい。
また、上記説明では、MRI装置10の構成要素をガントリ30、寝台装置20、制御装置40の3つに分類したが、これは一解釈例にすぎない。例えば、天板移動機構23は、制御装置40の一部として捉えてもよい。
或いは、RF受信器50は、ガントリ30外ではなく、ガントリ30内に配置されてもよい。この場合、例えばRF受信器50に相当する電子回路基盤がガントリ30内に配設される。そして、RFコイル装置100等によって電磁波からアナログの電気信号に変換されたMR信号は、当該電子回路基盤内のプリアンプで増幅され、デジタル信号としてガントリ30外に出力され、画像再構成部62に入力される。ガントリ30外への出力に際しては、例えば光通信ケーブルを用いて光デジタル信号として送信すれば、外部ノイズの影響が軽減されるので望ましい。
<本実施形態の原理説明>
傾斜磁場の歪が無視できない場合に、良好な画質を得るために十分なMR信号のデータを確実に確保する新手法の説明に先立って、それに関わる実際の傾斜磁場波形、k空間データの生成方法、リグリッディング処理について図2〜図6で説明する。その後、図7〜図10を参照しながら、MR信号のデータを確実に確保する新手法を説明する。
図2は、読み出し方向の傾斜磁場パルスの入力波形と、実際の波形とを対比した模式的波形図である。図2の上段は、読み出し方向の傾斜磁場パルスの入力波形、即ち、理想的な制御波形の一例である。図2の下段は、図2の上段の入力波形に対して想定される渦電流磁場を補償する補正がなされた後の読み出し方向の傾斜磁場パルスの実際の波形の一例である。
図2の上段、下段において、各横軸は経過時間tを示し、各縦軸は、磁場強度を示す。図2の上段に示すように、理想的な制御波形は台形派(又は矩形波)であるが、実際には渦電流磁場によって波形が歪み、特許文献1や特許文献2の渦電流磁場補償が実行されても、図2の下段のように波形が歪む場合がある。
図2の下段の斜線領域は、読み出し方向傾斜磁場パルスの磁場強度の時間積分値(以下、0次モーメントと称する)が、図2の上段の制御理想波形と比較して不足する領域である。このように0次モーメントが不足すると、後述の図6に示すように、リグリッディング処理後において、MR信号のデータの不足が生じ得る。
なお、例えばEPI(Echo Planar Imaging)法のようなパルスシーケンスでは読み出し方向傾斜磁場パルスの極性が反転するが、上記0次モーメントを計算する場合の磁場強度は、正負に拘らず、絶対値で計算する。
図3は、位相エンコード方向及び周波数エンコード方向のマトリクス要素数が256×256の場合のk空間データの生成方法の一例を示す模式図である。図3の上段は、k空間データの実数部分又は虚数部分を示し、図3の下段は、読み出し方向傾斜磁場パルスの一例を示す。
図3の上段において、TRは繰り返し時間であり、縦軸は、k空間における位相エンコード軸(PHASE ENCODE AXIS)である。縦軸の右側に付した各数字は、位相エンコードステップ番号(Phase Encode Step)である。図3の上段における横方向は、k空間における周波数エンコード軸(FREQUENCY ENCODE AXIS)に相当する。
また、図3において、横方向のTsはサンプリング時間(Sampling Time)である。図3の下段において、横軸は経過時間t、即ち、サンプリング時刻tであり、縦軸は読み出し方向傾斜磁場パルスの磁場強度を示す。
例えばスピンエコー法では、位相エンコードを例えば256回変えて収集した256ラインのMR信号からそれぞれ、搬送周波数の余弦関数を差し引く。この処理後の256のMR信号を、図3の上段のように、位相エンコードステップ順に下から−127,−126,・・・−1,0,1,・・・127,128のように並べる。
さらに、図3の上段の周波数エンコード軸の方向(サンプリング時刻tの方向)に、各MR信号のライン(この例では256ライン)を等間隔に256分割したΔTs毎に、MR信号の強度をマトリクス値にする。これにより、256×256のマトリクス要素からなるマトリクスデータ、即ち、k空間データの実数部分が得られる。
また、搬送周波数の余弦関数の代わりに搬送周波数の正弦関数を引く点を除いて、上記同様に処理することで、256×256のマトリクス要素からなるk空間データの虚数部分が得られる。
図4は、読み出し方向傾斜磁場パルスが非線形な領域において等時間間隔でサンプリングされたMR信号が、k空間上では不等間隔になることを示す概念図である。
図4の上段は、非線形な立ち上がり領域と、平坦な線形領域と、非線形な立ち下がり領域とからなる仮想の読み出し方向傾斜磁場Groのパルス波形である。図4の上段において、横軸は、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの印加開始時刻からの経過時間t(上記サンプリング時刻tと同じ)を示し、縦軸は読み出し方向傾斜磁場Groの磁場強度を示す。
図4の中段は、図4の上段の読み出し方向傾斜磁場Groの磁場強度を時間積分したものである。積分期間の始期は、共通して、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの印加開始時刻である。従って、図4の中段において、横軸は積分期間の終期時刻を示し、縦軸は、0次モーメントを示す。
図4の下段は、時間的に等間隔でサンプリングされる場合における、1つの位相エンコードステップ分のMR信号(1ラインのMR信号)に対する各サンプリング期間の模式図である。
図4の下段において、横軸は、上段と同様に、読み出し方向傾斜磁場Groのパルスの印加開始時刻からの経過時間tを示し、縦軸は、MR信号の強度を示す。この例では、周波数エンコードステップ数が256の例を示し、256のサンプリング期間SP1,SP2,SP3,SP4,…,SP256が設定される。即ち、1ラインのMR信号は、図4の縦方向の一点鎖線で示すように、256のサンプリング期間SP1〜SP256に等間隔に分割される。
図4から分かるように、読み出し方向傾斜磁場Groが非線形な領域を含めてMR信号が等時間間隔でサンプリングされる場合、生成されるk空間データは、k空間上では不等間隔になる。読み出し方向傾斜磁場Groの印加の下でサンプリングされたMR信号は、k空間上では0次モーメントに対応するところ、この0次モーメントは、図4の中段の横方向の複数の一点鎖線で示すように、互いに不等間隔となるからである。
図5は、リグリッディング処理の一例の概念を示す模式図である。図5の上段は、図4の下段のように時間的に等間隔でサンプリングされることで生成されるk空間データの1ライン分の各マトリクス要素のマトリクス値ME1,ME2,ME3,ME4,…,ME256を示す。
ここでは一例として、周波数エンコードステップ数を256で考えるので、1ライン分のマトリクス要素数も256である。各マトリクス値ME1,ME2,ME3,…,ME256は、その上に示すMR信号における各サンプリング期間SP1,SP2,SP3,…,SP256にそれぞれ対応する。
この例では、図5の上段のように、時間的に等間隔でMR信号をサンプリングすることで、一旦k空間データが生成される。この後、k空間データは、各マトリクス要素に対応するサンプリング期間の各代表時刻までの読み出し方向傾斜磁場Groのパルス強度の各時間積分値が等間隔となるように再配列されて、新たなk空間データとなる。上記「代表時刻」とは、例えば、各サンプリング期間の終了時刻でもよいし、中心時刻でもよい。また、再配列に際しては補完等の処理を用いればよい。
図5の中段は、再配列後のk空間データの各マトリクス値ME1’,ME2’,ME3’,…,ME256’を上側に示し、下側に元のMR信号(図5の上段と同じ)を示す。これらマトリクス値ME1’〜ME256’は、元のMR信号における各サンプリング期間SP1’〜SP256’の各信号強度からそれぞれ生成されたはずの値である。
図5の下段は、0次モーメントを図4の中段と同様に示す。図5の下段の縦軸である0次モーメントを等間隔で分割する横方向の複数の一点鎖線に示すように、再配列後のk空間データの各マトリクス要素に対応する0次モーメントは、等間隔となる。このように、MR信号における、各マトリクス要素に対応する部分の各収集時刻(受信時刻)での各0次モーメントが等間隔になるように、k空間データは再配列される。
図6は、図2の下段のように、読み出し方向傾斜磁場パルスの0次モーメントが制御理想波形よりも不足する場合における、リグリッディング処理の前後のk空間データの一例を示す模式図である。図6の上段はリグリッディング処理前であり、図6の下段はリグリッディング処理後である。図6の上段、下段において、各縦軸は位相エンコード軸であり、各横方向は周波数エンコード軸に対応する。また、ここでは一例として、位相エンコードステップ数及び周波数エンコードステップ数は256×256とする。
図6の上段、下段における1つ1つの丸印は、1ポイントのデータを示す(図7〜図9も同様)。ここでの「1ポイント」とは、k空間データを256×256のマトリクスと捉えた場合の一のマトリクス要素である。
図6の上段に示すように、等時間間隔のサンプリングによって一旦生成されるk空間データは、256×256のマトリクス要素が足りている。しかし、図5のように、リグリッディング処理が施されると、0次モーメントの不足分(図2の下段の斜線領域)によってk空間においてMR信号のデータが減少する。これにより、図6の下段のように、例えば周波数エンコードステップが−127や−126の高周波領域において、MR信号のデータが不足する。
なお、図6に示すk空間データの例は、スピンエコー法のように、全位相エンコードステップ及び全周波数エンコードステップ分のMR信号が収集される場合である。
一方、ハーフフーリエ法では、エコー時間TEを短縮するため、全周波数エンコードステップの一部のみのMR信号を収集する場合がある。
より詳細には、ハーフフーリエ法では、収集されなかったMR信号のデータは、収集されたMR信号のデータと、共役複素性とに基づいて、2つのウィンドウ関数を乗じることで補完され、k空間データが生成される。上記ウィンドウ関数の値が上がり始める所からMR信号を収集しないと、画像再構成をしても良好な画質とはならない。
さらに、低周波領域のMR信号は信号レベルが高くデータ量が多いので、読み出し方向傾斜磁場パルスのオン期間の前半においても、周波数エンコードステップが0の近辺ではデータの収集が望まれる。以上の理由から、ハーフフーリエ法の収集割合は、一般には50%を超え、例えば55%、60%といった値を用いることができる。
本実施形態のハーフフーリエ法のように、被検体PからMR信号が放射される期間の一部のみでMR信号を収集するパルスシーケンスでは、図6の下段のようなデータ不足がリグリッディング処理後において低周波領域で生じ得る。その場合、補完処理によって全位相エンコードステップ及び全周波数エンコードステップ分のk空間データを埋めても、当該補完処理後のk空間データには十分な画像情報が含まれないので、良好な画質が得られない。
そこで、本実施形態では一例として、ハーフフーリエ法において0次モーメントの不足の程度を3段階に分け、良好な画質を得るために十分な量のMR信号のデータが確実に確保されるように、パルスシーケンスに対して3通りの補正方法のいずれかを適用する。
図7は、ハーフフーリエ法において0次モーメントの不足が少量の場合のパルスシーケンスの補正前後におけるk空間データの例を示す模式図である。0次モーメントの不足が少量の場合、ランプサンプリング(Ramp Sampling)が実行されるようにパルスシーケンスが補正される。
ランプサンプリングは、読み出し方向傾斜磁場パルスの磁場強度が略平坦な期間のみならず、立ち上り期間及び立ち下り期間においてもMR信号の検出及びデータのサンプリングを実行する手法である。ランプサンプリングでは、立ち上り期間及び立ち下り期間の読み出し方向傾斜磁場パルスも利用される分だけ、0次モーメントを増加させることができる。
図7の上段は、パルスシーケンスの補正前におけるk空間データを図6と同様に示し、上側はリグリッディング処理前のk空間データに対応し、下側はリグリッディング処理後に対応する。ここでは一例として、周波数エンコードステップ−4〜+128までのMR信号が収集される場合、即ち、データ収集割合が132/256の場合を示す。
図7の下段は、上記パルスシーケンスの補正後におけるk空間データを図6と同様に示し、上側はリグリッディング処理前に対応し、下側はリグリッディング処理後に対応する。
ここでは一例として、良好な画質が得られるためには、リグリッディング処理後、共役複素性に基づく補完前において、周波数エンコードステップ−4〜+128までのk空間データが残るべきであると仮定する(図8、図9も同様)。
図7の上段に示すように、補正前のパルスシーケンスでは、0次モーメントが不足するため、リグリッディング処理後において周波数エンコードステップ−4に対応する低周波領域の1ポイントのデータが不足する。
一方、図7の下段に示すように、ランプサンプリングが実行されるように補正後のパルスシーケンスでは、0次モーメントが十分となるため、リグリッディング処理後において、周波数空間でのMR信号のデータ(k空間データ)は減らない。
図8は、ハーフフーリエ法において0次モーメントの不足が中程度の場合のパルスシーケンスの補正前後におけるk空間データの例を示す模式図である。0次モーメントの不足量が中程度の場合、ランプサンプリングが実行されるように、且つ、ハーフフーリエ法のデータ収集割合が上がるように、パルスシーケンスが補正される。
図8の上段は、パルスシーケンスの補正前におけるk空間データを図7と同様に示し、上側はリグリッディング処理前のk空間データに対応し、下側はリグリッディング処理後に対応する。ここでは一例として、パルスシーケンスの補正前では、周波数エンコードステップ−4〜+128までのMR信号が収集される場合、即ち、データ収集割合が132/256の場合を示す。
図8の下段は、上記のパルスシーケンスの補正後におけるk空間データを図7と同様に示し、上側はリグリッディング処理前に対応し、下側はリグリッディング処理後に対応する。ここでは一例として、パルスシーケンスの補正後では、周波数エンコードステップ−6〜+128までのMR信号が収集される場合、即ち、データ収集割合が134/256の場合を示す。
図8の上段に示すように、補正前のパルスシーケンスでは、0次モーメントが不足するため、リグリッディング処理後において、データのポイント数が2つ減り、周波数エンコードステップ−4、−3に対応する低周波領域のデータが不足する。
一方、図8の下段に示すように、補正後のパルスシーケンスでは、データ収集割合の引き上げ及びランプサンプリングによって0次モーメントが十分となるため、リグリッディング処理後において、データのポイント数が2つ減っても、周波数エンコードステップ−4〜+128までのk空間データが残る。
図9は、ハーフフーリエ法において0次モーメントの不足が大きい場合のパルスシーケンスの補正前後におけるk空間データの例を示す模式図である。0次モーメントの不足量が大きい場合、ランプサンプリングが実行されるように、且つ、読み出し方向傾斜磁場パルスの振幅(強度)が上がるように、パルスシーケンスが補正される。これは、データ収集割合を大きくすることのみで0次モーメントの不足を補うと、エコー時間TEが大きく変わってしまうからである。
図9の上段は、パルスシーケンスの補正前におけるk空間データを図7と同様に示し、上側はリグリッディング処理前に対応し、下側はリグリッディング処理後に対応する。図9の下段は、上記のパルスシーケンスの補正後におけるk空間データを同様に示し、上側はリグリッディング処理前に対応し、下側はリグリッディング処理後に対応する。
ここでは一例として、パルスシーケンスの補正前、補正後において、周波数エンコードステップ−4〜+128までのMR信号が収集される場合、即ち、データ収集割合が132/256の場合を示す。
図9の上段に示すように、補正前のパルスシーケンスでは、0次モーメントが不足するため、リグリッディング処理後において、データのポイント数が4つ減り、周波数エンコードステップ−4から−1までに対応する低周波領域のデータが不足する。
一方、図9の下段に示すように、補正後のパルスシーケンスでは、リグリッディング処理後において、データのポイント数が減らず、周波数エンコードステップ−4〜+128までのk空間データが残る。これは、読み出し方向傾斜磁場パルスの振幅の引き上げ及びランプサンプリングによって、0次モーメントが十分となるからである。この原理について、図10を参照しながら補足する。
図10は、ハーフフーリエ法において0次モーメントの不足が大きく、読み出し方向傾斜磁場パルスの振幅を上げる場合の補正の原理を示す模式図である。図10の上段は、読み出し方向傾斜磁場パルスの波形を示し、図10の下段は、上記のパルスシーケンスの補正後におけるk空間データを示す。
図10の上段では、読み出し方向傾斜磁場パルスについて、上から順に、入力波形(制御理想波形)、渦電流磁場を補償する補正後の波形、さらに振幅引き上げ補正後の波形をそれぞれ太線で示す。図10の上段において、各横軸は経過時間tであり、各縦軸は、入力波形の平坦部分の振幅(最大振幅)を基準とした振幅(%)を示す。ここでは一例として、振幅を10%上げる例を示す。
図10の上段の下側に示す振幅引き上げの補正後の波形では、対比のため、渦電流磁場を補償する補正後の波形を破線で示す。この対比で分かるように、振幅を上げれば、0次モーメント(読み出し方向傾斜磁場パルスの強度の時間積分値)も当然増加する。
ここで、振幅引き上げの補正後の波形において、補正前の最大振幅(100%)よりも振幅が大きい期間をアンダーサンプリング(Under-Sampling)、補正前の最大振幅(100%)よりも振幅が小さい期間をオーバーサンプリング(Over-Sampling)と定義する。立ち上がりの期間、及び、立ち下がりの期間はオーバーサンプリングとなる。図10の下段において、オーバーサンプリングの期間に検出されたデータのポイントは白丸で示し、アンダーサンプリングの期間に検出されたデータのポイントは黒丸で示す。
より詳細には、リグリッディング処理前のk空間データを等時間間隔のサンプリングで生成する場合、オーバーサンプリングの期間では、リグリッディング処理後にデータのポイント数は減り、アンダーサンプリングの期間では、リグリッディング処理後にデータのポイント数は増える。
即ち、オーバーサンプリングの期間では、読み出し方向傾斜磁場パルスの強度が相対的に弱いので、0次モーメントが相対的に小さいため、0次モーメントが等間隔で上昇するように再配列(リグリッディング)すると、データのポイント数が減る。一方、アンダーサンプリングの期間では、読み出し方向傾斜磁場パルスの強度が相対的に強いので、0次モーメントが相対的に強いため、0次モーメントが等間隔で上昇するように再配列すると、データのポイント数が増える。
しかし、オーバーサンプリングの期間、アンダーサンプリングの期間を含めて、MR信号の検出期間を平均すると、0次モーメントの量が十分であるので、図10の下段に示すように、リグリッディング処理後においてデータのポイント数は減らない。
ここで、上記図9、図10では、読み出し方向傾斜磁場パルスの振幅を上げる場合にデータ収集割合を変えない例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。
エコー時間TEの変化が支障のない範囲で収まる程度に、データ収集割合を上げつつ、読み出し方向傾斜磁場パルスの振幅を上げてもよい。その場合、データ収集割合を上げる分、振幅の上げ幅は小さくなり、0次モーメントの増分の小さくなるので、リグリッディング処理後においてデータのポイント数は減る。しかし、データ収集割合を上げているので、リグリッディング処理後においてデータのポイント数は減っても、十分な量のMR信号のデータ(k空間データ)が残る。
次に、上記のように読み出し方向傾斜磁場パルスの振幅を上げる場合のFOV(Field Of view: 撮像視野)を考える。FOVの設定可能範囲は、例えば、読み出し方向傾斜磁場パルスの入力波形の最大強度を100%として暫定的に算出される。従って、読み出し方向傾斜磁場の強度の最大値を上げる場合、FOVの設定可能範囲を修正(制約)することが望ましい。
より詳細には、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度(理想的な台形波である場合、平坦領域の振幅)は、以下の3要素によって決定される。
第1には、一サンプリングに割り当てる時間(例えばランプサンプリングが実行されず、読み出し方向傾斜磁場パルスが理想的な台形波である場合、読み出し方向傾斜磁場パルスにおける、平坦な部分の長さ)である。
第2には、読み出し方向分解能、即ち、周波数エンコードステップ数である。
第3には、FOVである。読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度が大きいほど、設定可能なFOVの最小幅は小さくなる。
例えば、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度が100%である条件において、FOVの読み出し方向の幅は、1cm〜40cmで設定可能である場合を考える。その場合、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度を110%に上げると、FOVの読み出し方向の設定可能な幅が例えば1.2cm〜40cmに制約される。この場合、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度(波高)の上げ幅が小さければ、取得するMR信号に対して適用するデジタルの低域通過フィルタの設定変更は不要である。なお、上記した1cm等の数値は、説明を分かり易くするための一例にすぎない。
<本実施形態の動作説明>
図11は、本実施形態のMRI装置10の動作の流れの一例を示すフローチャートである。以下、前述した各図を適宜参照しながら、図11に示すステップ番号に従って、MRI装置10の動作を説明する。
[ステップS1]システム制御部61(図1参照)は、入力装置72を介してMRI装置10に対して入力された撮像条件に基づいて、MRI装置10の初期設定を行う。ここでは一例として、本スキャンのパルスシーケンスとしてハーフフーリエ法が選択され、ハーフフーリエ法のパルスシーケンスの各条件が暫定的に設定されるものとする。また、ステップS1の段階では、ランプサンプリングが実行されないようにパルスシーケンスが設定されるものとする。この後、ステップS2に進む。
[ステップS2]システム制御部61は、ステップS1で暫定的に設定したパルスシーケンスの各条件に基づいて、X軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zに対する各供給電流によって生じる渦電流磁場を算出する。システム制御部61は、渦電流磁場の傾斜磁場に対する影響が相殺されるように、パルスシーケンスの条件を補正する(図2参照)。
このように、渦電流磁場を補償することで、傾斜磁場分布を線形に近づける補正方法は、特許文献1や特許文献2に記載の公知技術を用いればよいので、ここでは詳細な説明を省略する。この後、ステップS3に進む。
[ステップS3]X軸傾斜磁場コイル33x、Y軸傾斜磁場コイル33y、Z軸傾斜磁場コイル33zの各電気的特性、即ち、傾斜磁場Gx,Gy,Gzの諸特性(立ち上がりのなまり方等)は、例えばMRI装置10の製造直後に測定により取得され、判定部65に例えば近似曲線の数式として記憶されている。
判定部65は、ステップS2で補正されたパルスシーケンスの条件(データ収集割合、読み出し方向傾斜磁場パルスの強度、波形、印加タイミング等)と、傾斜磁場Gx,Gy,Gzの特性とに基づいて、MR信号のデータ不足量を算出する。上記「MR信号のデータ不足量」は、良好な画質を得るために十分な量のMR信号と対比した不足量であり、リグリッディング処理後、共役複素性に基づく補完前のk空間データの不足量である。図7の例では、リグリッディング処理後、共役複素性に基づく補完前に、周波数エンコードステップ−4〜+128までのk空間データが残るべきところ、1ポイントのデータが不足する。図8の例では2ポイント、図9の例では4ポイントのデータが不足する。
判定部65は、MR信号のデータの不足量に基づいて、0次モーメントの不足量を算出する。例えば図8のケースでは、リグリッディング処理後、共役複素性に基づく補完前に、さらに2ポイントのデータが増えるには、0次モーメントをどの程度増加させればよいかが算出される。判定部65は、MR信号のデータ不足量、及び、0次モーメントの不足量の算出結果(判定結果)をシステム制御部61に入力する。
この後、ステップS4に進む。
[ステップS4]ステップS3の判定部65の判定結果において、MR信号のデータ不足がない場合、システム制御部61は、ステップS2で補正したパルスシーケンスを決定後の本スキャンのパルスシーケンスとし、その後、ステップS11に進む。そうではない場合、ステップS5に進む。
[ステップS5]ステップS3の判定部65の判定結果において、0次モーメントの不足量が第1所定値以下である場合、システム制御部61は、ステップS6にMRI装置10の処理を移行させる。そうではない場合、ステップS7に進む。
上記第1所定値とは、ランプサンプリングの実行によって増加する0次モーメントの量に相当する値である。第1所定値は、例えばMRI装置10の据え付け調整時に種々の条件を変えたパルスシーケンスを実行して、リグリッディング後に残るk空間データ量を測定することで、システム制御部61及び判定部65に記憶させておけばよい。
[ステップS6]システム制御部61は、ステップS2で補正された本スキャンのパルスシーケンスの条件を、ランプサンプリングが実行されるように再補正し(図7参照)、再補正後のパルスシーケンスを本スキャンのパルスシーケンスとして決定する。この後、ステップS11に進む。
[ステップS7]このステップS7に移行する場合、ステップS3の判定部65の判定結果において、0次モーメントの不足量が第1所定値を超え、ランプサンプリングのみでは、MR信号のデータ不足量を補えない。
ステップS3の判定部65の判定結果において、0次モーメントの不足量が第1所定値よりも大きく、且つ、第2所定値以下である場合、システム制御部61は、ステップS8にMRI装置10の処理を移行させる。そうではない場合、ステップS9に進む。
上記第2所定値とは例えば、エコー時間TE等の撮像条件に支障がない範囲でデータ収集割合を上げると共にランプサンプリングを実行することで、増加する0次モーメントの量に相当する値である。第2所定値は、例えばMRI装置10の据え付け調整時に種々の条件を変えたパルスシーケンスを実行して、リグリッディング後に残るk空間データ量を測定することで、システム制御部61及び判定部65に記憶させておけばよい。
[ステップS8]システム制御部61は、ステップS2で補正されたパルスシーケンスの条件を、ランプサンプリングが実行されるように、且つ、データ収集割合が上がるように再補正する(図8参照)。システム制御部61は、再補正後のパルスシーケンスを本スキャンのパルスシーケンスとして決定する。ここでのデータ収集割合の引き上げの程度は、0次モーメントの不足量が解消される程度であって、最小量にされる。この後、ステップS11に進む。
[ステップS9]システム制御部61は、ステップS2で補正されたパルスシーケンスの条件を、ランプサンプリングが実行されるように、且つ、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度が上がるように、再補正する(図9、図10参照)。システム制御部61は、再補正後のパルスシーケンスを本スキャンのパルスシーケンスとして決定する。ここでの読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度の引き上げの程度は、0次モーメントの不足量が解消される程度であって、最小量にされる。
なお、設定可能なFOVの最小幅が大きくなっても問題なく、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度の可能な上げ幅の余裕がある場合、ランプサンプリングをしないで済む程度まで、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度を上げてもよい。この後、ステップS10に進む。
[ステップS10]システム制御部61は、ステップS9での読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度の上げ幅に応じて、FOVの読み出し方向の幅の設定可能範囲を修正する。この修正方法は、前述の通りである。この後、ステップS11に進む。
[ステップS11]位置決め画像が撮像される。具体的には、天板22には被検体Pが載置されており、静磁場電源42により励磁された静磁場磁石31によって撮像空間に静磁場が形成されている。また、シムコイル電源44からシムコイルユニット32に電流が供給されて、撮像空間に形成された静磁場が均一化される。
そして、入力装置72からシステム制御部61に撮像開始指示が入力されると、システム制御部61は、位置決め画像用のパルスシーケンスを含む撮像条件をシーケンスコントローラ58に入力する。シーケンスコントローラ58は、入力されたパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源46、RF送信器48及びRF受信器50を駆動させることで、被検体Pの撮像部位が含まれる撮像領域に傾斜磁場を形成させると共に、RFコイルユニット34からRFパルスを発生させる。
このため、被検体P内の核磁気共鳴により生じたMR信号がRFコイル装置100により検出されて、RF受信器50に入力される。RF受信器50は、MR信号に前述の処理を施すことでMR信号の生データを生成し、これら生データを画像再構成部62に入力する。画像再構成部62は、MR信号の生データをk空間データとして配置及び保存する。画像再構成部62は、k空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで画像データを再構成し、得られた画像データを画像データベース63に保存する。
画像処理部64は、画像データベース63から画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の位置決め画像データを生成し、位置決め画像データを記憶装置76に保存する。この後、システム制御部61は、位置決め画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
この後、位置決め画像に基づいて、ユーザは、FOVを選択する。ステップS10の処理が実行された場合、ここでユーザが設定可能なFOVの範囲は、ステップS10で制約されたものとなる。システム制御部61は、ユーザにより選択されたFOVを撮像条件として決定する。この後、ステップS12に進む。
[ステップS12]プレスキャンによってRFパルスの中心周波数が本スキャン直前に補正された後、ステップS11までに設定された最終的なパルスシーケンスに従って、本スキャンのデータ収集が行われる。即ち、ステップS3の判定結果においてMR信号のデータ不足がなければ、ステップS2で補正されたパルスシーケンスが用いられる。
一方、判定結果においてMR信号のデータ不足が少量の場合、ステップS6で補正されたパルスシーケンスが用いられ、MR信号のデータ不足が中程度の場合、ステップS8で補正されたパルスシーケンスが用いられ、MR信号のデータ不足が大きい場合、ステップS9で補正されたパルスシーケンスが用いられる。即ち、良好な画質を得るために十分な量のMR信号がリグリッディング処理後に残るように補正済みのパルスシーケンスが本スキャンとして実行される。
MRI装置10の各部は、パルスシーケンスの違いを除いて位置決め画像の撮像時と同様に動作し、これによりMR信号がデータ収集割合に応じて部分的に収集され、画像再構成部62にk空間データとして保存される。そして、画像再構成部62は、k空間データにリグリッディング処理を施した後、共役複素性に基づく補完処理を実行する。これにより、k空間データは、全ての位相エンコードステップ及び全ての周波数エンコードステップのマトリクス要素がデータで埋まる。この後、ステップS13に進む。
[ステップS13]画像再構成部62は、補完処理後のk空間データにフーリエ変換を含む画像再構成処理を施すことで本スキャンの画像データを再構成し、本スキャンの画像データを画像データベース63に保存する。
画像処理部64は、画像データベース63から本スキャンの画像データを取り込み、これに所定の画像処理を施すことで2次元の表示用画像データを生成し、表示用画像データを記憶装置76に保存する。この後、システム制御部61は、表示用画像データが示す画像を表示装置74に表示させる。
以上が本実施形態のMRI装置10の動作説明である。
<本実施形態の効果>
従来技術では、リグリッディング処理後におけるMR信号のデータの不足量が算出されないが、本実施形態では、上記不足量が算出される。そして、MR信号のデータの不足量(0次モーメントの不足量)に応じて、段階的なパルスシーケンスの補正が実行される。
上記不足量が少量の場合、ランプサンプリングが実行されるようにパルスシーケンスが補正され、上記不足量が中程度の場合、データ収集割合が引き上げられ、上記不足量が大きい場合、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度が引き上げられる。このように、0次モーメントの不足量に応じた段階的な補正により、良好な画質を得るために十分な量のMR信号がリグリッディング処理後に残るように補正されたパルスシーケンスが本スキャンとして実行される。
従って、本実施形態では、MRIにおいて渦電流磁場補償の実行後においても、なお読み出し方向傾斜磁場の歪が無視できない場合に、良好な画質を得るために十分な量のMR信号のデータを確実に確保できる。これにより、従来よりも良好な画質の画像が得られる。
なお、0次モーメントの不足量に応じて、パルスシーケンスの補正を段階的且つ最小限度に留める本実施形態の技術思想は、従来技術には全く存在しない。また、ハーフフーリエ法においてデータ収集割合を上げる、又は、読み出し方向傾斜磁場パルスの最大強度を引き上げることでMR信号のデータ不足を補う技術思想も、従来技術には全く存在しない。
本実施形態では、傾斜磁場波形の歪が大きい場合にも、撮像条件の制約を最小限度に留めるので、良好な画質を維持しつつ、撮像条件の設定の自由度が高くなる。また、傾斜磁場波形の歪が大きい場合にも、撮像条件を不必要に制約することはないため、大電流の供給によって傾斜磁場が形成されるワイドボア型のMRI装置に有用である。
<実施形態の補足事項>
[1]上記実施形態では、図11のステップS2において渦電流磁場が補償されるようにパルスシーケンスの条件を補正することで、傾斜磁場パルスの波形を理想的な矩形波に近づける例を述べた。本発明の実施形態は、かかる態様に限定されるものではない。上記ステップS2の渦電流磁場を補償する処理は必須ではなく、省いてもよい。
[2]本実施形態は、ハーフフーリエ法のように、MR信号の一部のみをサンプリングするパルスシーケンスにおいて大きな効果を奏するが、かかる態様に限定されるものではない。本実施形態は、FSE(Fast Spin Echo)法やEPI(Echo Planar Imaging)法などの他のパルスシーケンスにも適用可能である。
[3]上記実施形態のリグリッディング処理では、等時間間隔のサンプリングによってk空間データを一旦生成後、0次モーメントが等間隔となるように当該k空間データを再配列する例を述べた。本発明は、かかる実施形態に限定されるものではない。
特許文献3に記載のように、0次モーメントが等間隔となるような不等時間間隔のサンプリングによってMR信号の生データからk空間データを生成することで、図5で説明した再配列処理を省いてもよい。
[4]請求項の用語と実施形態との対応関係を説明する。なお、以下に示す対応関係は、参考のために示した一解釈であり、本発明を限定するものではない。
渦電流磁場の傾斜磁場に対する影響が補償されるようにパルスシーケンスの条件を補正し、判定部65の判定結果に応じて、k空間データの不足が解消されるようにパルスシーケンスの条件を再補正するシステム制御部61の機能は、請求項記載の撮像条件設定部の一例である。
[5]本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。