JP6407477B1 - 同期制御システムおよび制御装置 - Google Patents

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Abstract

本発明にかかる同期制御システム(100)は、第一スレーブ局(2)と、第二スレーブ局(3)と、第一スレーブ局(2)へ第一モータ(4)および第一機械装置(6)を動作させる第一指令データを送信し、第二スレーブ局(3)へ第二モータ(5)および第二機械装置(7)を動作させる第二指令データを送信するマスタ局(1)と、を備え、マスタ局(1)は、第一指令データを生成する第一指令データ生成部(11)と、フィードバックデータから第一周波数領域の周波数成分を抽出して出力するフィードバックデータフィルタ(22)と、第一指令データから第一周波数領域より高い第二周波数領域の周波数成分を抽出して出力する指令データフィルタ(21)と、フィードバックデータフィルタ(22)から出力されるデータと、指令データフィルタ(21)から出力されるデータとを加算し、加算した結果である加算データを出力する加算部(23)と、加算データに基づき、第二指令データを生成する第二指令データ生成部(13)と、を備える。

Description

本発明は、複数の機械装置の駆動を制御する同期制御システムおよび制御装置に関する。
従来、包装機、ロータリーカッター装置などの産業機械では、サーボモータの駆動により制御されるコンベアー装置の動作に、他のサーボモータの駆動により制御されるカッティング装置の動作を追従させる同期制御が行われている。同期制御を実現するための制御システムとして、データの送受信が可能なネットワークで接続されたマスタ局、2局のスレーブ局、およびセンサで構成される同期制御システムがある。
上述した同期制御システムにおいて、マスタ局は、第一スレーブ局へ指令データを生成して送信する機能である機能Aを持つ制御装置である。第一スレーブ局は、マスタ局から受信した指令データに基づき、サーボモータをはじめとした駆動機器を制御する機能である機能a1を持つ。センサはマスタ局へフィードバックデータを送信する機能である機能bを持つ。フィードバックデータは、例えば、駆動機器により駆動されるコンベアー装置の状態を示すデータである。マスタ局は、さらに、センサから受信したフィードバックデータに基づき第二スレーブ局へ指令データを生成して送信する機能である機能Bを持つ。第二スレーブ局は、マスタ局から受信した指令データに基づき、駆動機器を制御する機能である機能a2を持つ。
上述した同期制御システムにおいて、センサが機能bによりマスタ局へ送信するフィードバックデータには電気的または機械的な要因によるリップルが発生する可能性がある。フィードバックデータに発生したリップルは、マスタ局の機能Bに悪影響を及ぼす。すなわち、機能Bにより送信される指令データの精度が劣化する。
サーボモータを用いた制御システムにおいて、検出された機械端位置におけるリップルの影響を抑制する技術として、例えば特許文献1には、モータ端位置の高周波成分と機械端位置の低周波成分とを合成したものをフィードバックデータとして用いる技術が開示されている。
国際公開第2014/141515号
上記特許文献1に開示された技術を同期制御システムへ適用した場合、機械端位置からはローパスフィルタにより高周波成分が除去されることにより、リップルが除去される。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、モータ端位置の高周波成分を用いる必要があり、モータ端位置の検出が必須となる。すなわち特許文献1に記載の技術では、2か所にセンサを設ける必要がある。しかしながら、2か所にセンサを設けていない同期制御システムも存在する。さらに、2か所にセンサを設けていない同期制御システムにセンサを追加しようとしても、なんらかの制約によりセンサを追加できない場合もある。
また、2か所にセンサを設けずに、単にローパスフィルタによりフィードバックデータを濾波した場合、濾波後のフィードバックデータには遅れ時間が発生する。このため、濾波後のフィードバックデータを用いると同期制御における応答性が低下するという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、フィードバックデータを検出するセンサが1つであったとしても、応答性の低下を抑制しつつフィードバックデータのリップルの影響を抑制することができる同期制御システムおよび制御装置を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる同期制御システムは、第一装置を制御する第一スレーブ局と、第二装置を制御する第二スレーブ局と、第一スレーブ局へ第一装置を動作させる第一指令データを送信し、第二スレーブ局へ第二装置を動作させる第二指令データを送信するマスタ局と、を備える。マスタ局は、さらに、第一指令データを生成する第一指令データ生成部と、第一装置の動作状態の検出結果であるフィードバックデータから第一周波数領域の周波数成分を抽出して出力する第一フィルタと、第一指令データから第一周波数領域より周波数の高い領域である第二周波数領域の周波数成分を抽出して出力する第二フィルタと、を備える。マスタ局は、さらに、第一フィルタから出力されるデータと、第二フィルタから出力されるデータとを加算し、加算した結果である加算データを出力する加算部と、加算データに基づき、第二指令データを生成する第二指令データ生成部と、を備える。第一フィルタはローパスフィルタであり、第二フィルタはハイパスフィルタであり、第一フィルタの時定数と、第二フィルタの時定数とは等しい。
本発明にかかる制御装置は、フィードバックデータを検出するセンサが1つであったとしても、応答性の低下を抑制しつつフィードバックデータのリップルの影響を抑制することができるという効果を奏する。
実施の形態にかかる同期制御システムの構成例を示す図 実施の形態の同期制御システムが適用される機械システムの一例を示す図 実施の形態のマスタ局の構成例を示す図 実施の形態のフィードバックデータ補正部の内部構成例を示す図 制御回路の構成例を示す図 同期制御システムと同期制御システムの制御対象とにおける信号伝達の様子を示すブロック線図 第一機械装置の速度応答Y(s)の一例を示す図 センサにより検出された第一機械装置の速度応答のシミュレーション結果の一例を示す図 フィードバックデータフィルタから出力されるフィードバックデータR1(s)の一例を示す図 指令データフィルタから出力される第一指令データの一例を示す図 補正後フィードバックデータの一例を示す図 第二指令データ生成部が用いるカム形状の一例を示す図 実施の形態において第二指令データ生成部により生成される第二指令データすなわち位置指令データの一例を示す図 比較例において第二指令データ生成部により生成される第二指令データすなわち位置指令データの一例を示す図
以下に、本発明の実施の形態にかかる同期制御システムおよび制御装置を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかる同期制御システムの構成例を示す図である。図1に示すように、本発明の実施の形態にかかる同期制御システム100は、マスタ局1、第一スレーブ局2、第二スレーブ局3およびセンサ8を備える。マスタ局1は、第一スレーブ局2、第二スレーブ局3およびセンサ8と、ネットワークを通して接続される。
同期制御システム100の制御対象は、モータ4,5、第一機械装置6および第二機械装置7であり、同期制御システム100は、第一機械装置6および第二機械装置7が所望の動作を行うようモータ4,5を制御する。
第一スレーブ局2は、マスタ局1から送信される指令データに基づいてモータ4に対するトルク指令を生成し、トルク指令をモータ4へ出力する。モータ4は、トルク指令により駆動される。第一機械装置6は、モータ4の回転トルクによって駆動される。換言すると、第一スレーブ局2は、モータ4とモータ4により駆動される第一機械装置6とで構成される第一装置を制御する。第一機械装置6には第一機械装置6の動作を検出するセンサ8が取り付けられている。センサ8は、第一機械装置6の動作状態を検出し、検出結果をフィードバックデータとしてマスタ局1へ送信する。
第二スレーブ局3は、マスタ局1から送信される指令データに基づいてモータ5に対するトルク指令を生成し、トルク指令をモータ5へ出力する。モータ5は、トルク指令により駆動される。第二機械装置7は、モータ5の回転トルクによって駆動される。換言すると、第二スレーブ局3は、モータ5とモータ5により駆動される第二機械装置7とで構成される第二装置を制御する。
本発明にかかる制御装置の一例であるマスタ局1は、モータ4を駆動させることにより第一制御対象である第一機械装置6を動作させるためのデータである第一指令データを生成し、第一指令データを第一スレーブ局2に送信する。マスタ局1は、センサ8から受信したフィードバックデータを用いて、モータ5を駆動させることにより第二制御対象である第二機械装置7を動作させるための第二指令データを生成し、第二指令データを第二スレーブ局3に送信する。すなわち、マスタ局1は、第一スレーブ局2へ第一装置を動作させる第一指令データを送信し、第二スレーブ局3へ第二装置を動作させる第二指令データを送信する。
図2は、本実施の形態の同期制御システムが適用される機械システムの一例を示す図である。図2に示す機械システムは、例えば包装機、またはロータリーカッター装置である。図2に示した例では、第一機械装置6は、コンベアー装置であり、第二機械装置7は、カッティング装置であり、センサ8は、回転速度計である。モータ4、モータ5の例としては回転型サーボモータが挙げられる。モータ4、モータ5は、この例に限定されず、第一機械装置6、第二機械装置7をそれぞれ駆動できるものであればよい。
カッティング装置である第二機械装置7を駆動するモータ5が、第一機械装置6の動作に追従して動作することにより、コンベアー装置である第一機械装置6により搬送されるシートが、カッティング装置である第二機械装置7により、所望のシート長で切断される。このように、第二機械装置7の動作は、第一機械装置6の動作に追従するよう同期制御される。なお、図2に示した構成は一例であり、同期制御システムの適用対象は、第一機械装置6の動作が第二機械装置7の動作に追従するよう制御される機械システムであればよく、図2に示した例に限定されない。
図3は、本実施の形態のマスタ局1の構成例を示す図である。図3に示すように、マスタ局1は、第一指令データ生成部11と、フィードバックデータ補正部12と、第二指令データ生成部13と、通信部14とを備える。
第一指令データ生成部11は、第一スレーブ局2に送信する第一指令データを生成し、第一指令データをフィードバックデータ補正部12および通信部14へ出力する。第一指令データは、第一機械装置6が所望の動作パターンで動作を行うよう生成される。第一機械装置6が図2に示したコンベアー装置である場合、例えば、第一機械装置6がシートを一定速度で送り出すように第一指令データが生成される。第一指令データの例としては、モータ4の回転速度を制御するための回転速度指令データである速度指令データが挙げられる。フィードバックデータ補正部12は、第一指令データ生成部11により生成された第一指令データと、通信部14を介してセンサ8から受信したフィードバックデータとに基づき、補正後フィードバックデータを生成し、補正後フィードバックデータを第二指令データ生成部13へ出力する。
第二指令データ生成部13は、補正後フィードバックデータに基づき、第二機械装置7を動作させるための第二指令データを生成し、第二指令データを通信部14へ出力する。第二指令データの例としては、モータ5の回転位置を制御するための位置指令データなどが挙げられる。第二指令データ生成部13の例としては、信号すなわち入力値を取り込み、予め設定されたカム形状と入力値とに基づいて新たな信号すなわち出力値を生成して出力する電子カム装置が挙げられる。電子カム装置は、電子カム機能を有する装置であり、電子カム機能とは、主軸周りに回転する機械的なカムを用いる代わりに、従軸のモータを主軸位置に同期させて制御する機能である。この例では、本実施の形態では、モータ4が主軸に対応するモータであり、モータ5が従軸に対応するモータである。カム形状とは、従軸の位置、速度といった値を、主軸位置に応じて定めたものである。例えば、第二指令データ生成部13は、第二指令データ生成部13に入力される補正後フィードバックデータを積分して位置データすなわち主軸位置を求め、主軸位置とカム形状とに基づいて従軸のモータ5の位置を示す位置指令データを生成する。
通信部14は、センサ8からセンサ8による検出結果であるフィードバックデータを受信し、フィードバックデータをフィードバックデータ補正部12へ出力する。通信部14は、第一指令データ生成部11から受け取った第一指令データを第一スレーブ局2へ送信し、第二指令データ生成部13から受け取った第二指令データを第二スレーブ局3へ送信する。
図4は、本実施の形態のフィードバックデータ補正部12の内部構成例を示す図である。図4に示すように、フィードバックデータ補正部12は、指令データフィルタ21、フィードバックデータフィルタ22および加算部23を備える。フィードバックデータフィルタ22は、フィードバックデータから第一周波数領域の周波数成分を抽出して出力する第一フィルタである。指令データフィルタ21は、第一指令データから第一周波数領域より周波数の高い領域である第二周波数領域の周波数成分を抽出して出力する第二フィルタである。
指令データフィルタ21には、第一指令データ生成部11から出力された第一指令データが入力され、フィードバックデータフィルタ22には、通信部14から出力されたフィードバックデータが入力される。
フィードバックデータフィルタ22は、フィードバックデータのうち、あらかじめ定められた第一周波数領域の周波数成分を通過させて出力するフィルタである。第一周波数領域の周波数成分の一例は、あらかじめ定められた周波数以下の周波数の成分である低周波成分である。具体的には、フィードバックデータフィルタ22は、例えば一次遅れローパスフィルタである。フィードバックデータフィルタ22が一次遅れローパスフィルタである場合、フィードバックデータフィルタ22の時定数をTfbとすると、フィードバックデータフィルタ22の伝達関数Gfb(s)は次の式(1)で表される。なお、sは複素数を示す。
Gfb(s)=1/(1+Tfb*s) …(1)
また、指令データフィルタ21は、第一指令データのうち第一周波数領域より周波数の高い領域である第二周波数領域の周波数成分を抽出して出力するフィルタである。第二周波数領域の周波数成分の一例は、あらかじめ定められた周波数以上の周波数の成分である高周波成分である。具体的には、指令データフィルタ21は、例えば一次のハイパスフィルタである。指令データフィルタ21が一次のハイパスフィルタである場合、指令データフィルタ21の時定数をTcmdとすると、指令データフィルタ21の伝達関数Gcmd(s)は次の式(2)で表される。
Gcmd(s)=Tcmd*s/(1+Tcmd*s) …(2)
加算部23は、フィードバックデータフィルタ22から出力されるデータであるフィードバックデータと指令データフィルタ21から出力されるデータである第一指令データとを加算し、加算した結果である加算データを補正後フィードバックデータとして出力する。
次に、本実施の形態のマスタ局1のハードウェア構成について説明する。図3に示した通信部14は通信回路であり、送信機および受信機である。図3に示した第一指令データ生成部11、フィードバックデータ補正部12および第二指令データ生成部13は、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアとして実装される処理回路であってもよいし、プロセッサを備える制御回路であってもよい。専用のハードウェアとして実装される処理回路は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などであり、またはこれらを組み合わせたものであってもよい。
上記の処理回路が制御回路である場合、この制御回路は例えば図5に示す制御回路200である。図5は、制御回路200の構成例を示す図である。制御回路200は、CPU(Central Processing Unit)などであるプロセッサ201およびメモリ202を備える。プロセッサ201は、CPU、マイクロプロセッサ等である。メモリ202は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク等が該当する。
第一指令データ生成部11、フィードバックデータ補正部12および第二指令データ生成部13が、図5に示した制御回路200により実現される場合、第一指令データ生成部11、フィードバックデータ補正部12および第二指令データ生成部13の各機能は、メモリ202に格納された、第一指令データ生成部11、フィードバックデータ補正部12および第二指令データ生成部13の機能が実現されるためのプログラムが、プロセッサ201により実行されることにより実現される。メモリ202は、プロセッサ201によりプログラムが実行される際の記憶領域としても用いられる。また、第一指令データ生成部11、フィードバックデータ補正部12および第二指令データ生成部13は、一部が専用のハードウェアである処理回路により実現され、残部が上述した制御回路200により実現されてもよい。
次に、本実施の形態の効果、すなわち、本実施の形態のマスタ局1により、フィードバックデータのリップルの影響が抑制されかつ応答性の高い同期制御ができる理由について説明する。
図6は、同期制御システム100と同期制御システム100の制御対象とにおける信号伝達の様子を示すブロック線図である。図6において、第一指令データ生成部11から出力される第一指令データをU(s)とし、第一機械装置6の速度応答をY(s)とし、第一指令データから第一機械装置6の速度応答Y(s)までの伝達関数をP(s)と記載する。また、図6において、フィードバックデータフィルタ22に入力されるフィードバックデータをR0(s)とし、フィードバックデータフィルタ22から出力されるフィードバックデータをR1(s)とし、指令データフィルタ21から出力される第一指令データをR2(s)と記載する。また、図6において、センサ8に印加されるノイズをN(s)とし、指令データフィルタ21の伝達関数をGcmd(s)とし、フィードバックデータフィルタ22の伝達関数をGfb(s)と記載する。この時、第一機械装置6における速度応答Y(s)は、次の式(3)で表される。
Y(s)=U(s)P(s) …(3)
またフィードバックデータフィルタ22に入力されるフィードバックデータR0(s)は次の式(4)で表される。なお、センサ8は、第一機械装置6の速度を検出するとする。
R0(s)=U(s)P(s)+N(s) …(4)
本実施の形態における、各信号の様子を把握するため、シミュレーションを行った。以下では、シミュレーションに得られた各信号の例を示す。まず、第一指令データU(s)を単位ステップ関数とし、P(s)=1を上述した式(3)に代入し、第一機械装置6の速度応答Y(s)をシミュレーションにより求めた。図7は、第一機械装置6の速度応答Y(s)の一例を示す図である。
センサ8からマスタ局1に送信されてフィードバックデータフィルタ22に入力されるフィードバックデータR0(s)はセンサ8により検出された第一機械装置6の速度応答である。図8は、センサ8により検出された第一機械装置6の速度応答のシミュレーション結果の一例を示す図である。図8に示した例では、ノイズN(s)を、平均を0とし分散を0.1としたガウス乱数生成器を用いて生成し、図7と同様に、第一指令データU(s)を単位ステップ関数とし、P(s)=1としている。
センサ8を用いて本来検出したい速度応答の波形は図7に示した波形であるのに対し、マスタ局1には、図8に示した波形すなわちフィードバックデータR0(s)の波形が入力される。このフィードバックデータR0(s)には、図8に示すようにノイズが含まれている。
本実施の形態では、フィードバックデータR0(s)は、上述した式(1)で表される伝達関数Gfb(s)を持つフィードバックデータフィルタ22に入力されて濾波される。図9は、フィードバックデータフィルタ22から出力されるフィードバックデータR1(s)の一例を示す図である。図9に示した例では、図8に示したフィードバックデータR0(s)がフィードバックデータフィルタ22に入力された場合にフィードバックデータフィルタ22から出力されたフィードバックデータR1(s)を示している。また、図9では、フィードバックデータフィルタ22として、上述した式(1)にTfb=0.1[s]を代入して得られる伝達関数を有するローパスフィルタを用いた例を示している。図8および図9からわかるように、フィードバックデータフィルタ22を用いることでノイズが除去されたなめらかな速度応答波形が得られる一方で、フィードバックデータR1(s)は、一次遅れ系のステップ応答となっており、位相遅れが生じていることがわかる。
本実施の形態では、第一指令データは、上述した式(2)で表される伝達関数Gcmd(s)をもつ指令データフィルタ21に入力されて濾波される。図10は、指令データフィルタ21から出力される第一指令データの一例を示す図である。図10では、指令データフィルタ21として、上述した式(2)にTcmd=0.1[s]を代入して得られる伝達関数を有するハイパスフィルタを用いた例を示している。なお、フィードバックデータフィルタ22の時定数と指令データフィルタ21の時定数とを等しい値とすることができる。フィードバックデータフィルタ22の時定数と指令データフィルタ21の時定数とを一致させることにより、ローパスフィルタであるフィードバックデータフィルタ22による遅れが過不足なく補正される。指令データフィルタ21の時定数がフィードバックデータフィルタ22の時定数より大きい場合、遅れが残り、指令データフィルタ21の時定数がフィードバックデータフィルタ22の時定数より小さい場合、遅れを過度に補正することになる。フィードバックデータフィルタ22の時定数と指令データフィルタ21の時定数とを一致させた過不足ない補正を行うことにより、理想的な本来の速度応答Y(s)と同等の応答性の高いフィードバックデータが、補正後フィードバックデータとして得られる。
本実施の形態では、加算部23が、指令データフィルタ21から出力される第一指令データR2(s)とフィードバックデータフィルタ22から出力されるフィードバックデータR1(s)とを加算し、加算した結果を補正後フィードバックデータとして第二指令データ生成部13へ出力する。図11は、補正後フィードバックデータの一例を示す図である。図11では、図9に示したフィードバックデータR1(s)と図10に示した第一指令データR2(s)とが加算された結果を示している。
図8に示したように、フィードバックデータR0(s)にはノイズが含まれているため、マスタ局1が、フィードバックデータR0(s)をそのまま用いて制御を行うと正しい第二指令データが生成できない可能性がある。一方、図9に示したように、フィードバックデータフィルタ22から出力されたフィードバックデータR1(s)では、ノイズが抑制されているが位相遅れが生じている。このため、マスタ局1が、フィードバックデータR1(s)を用いて制御を行うと応答性が低下する。これに対し、本実施の形態では、マスタ局1は、第一指令データR2(s)とフィードバックデータR1(s)とを加算した結果である補正後フィードバックデータを用いて制御を行う。補正後フィードバックデータは、図11に示すように、図9に示したフィードバックデータR1(s)と同様にノイズすなわちリップルが抑制されるとともに、図9に示したフィードバックデータR1(s)における位相遅れが補正されている。したがって、理想的な本来の速度応答Y(s)と同等の応答性の高いフィードバックデータが、補正後フィードバックデータとして得られることがわかる。
次に、上述した補正後フィードバックデータを用いて第二指令データを生成することにより、同期制御における応答性を高められる理由について、例を挙げて説明する。ここでは、本実施の形態の同期制御システムが図2に示した機械システムに適用されるとする。また、第二指令データ生成部13は、補正後フィードバックデータを積分して第一機械装置6の位置データを算出し、位置データと予め設定されたカム形状とに基づき、第二指令データを生成する電子カム装置であるとする。また、第二指令データは、モータ5の位置指令データであるとする。
図12は、第二指令データ生成部13が用いるカム形状の一例を示す図である。図12に示した例では、カム形状は、入力値の増加に伴って、出力値が増加した後に減少することを繰り返す形状である。入力値は、補正後フィードバックデータであり、出力値は、第二指令データすなわちモータ5の位置指令データである。図12に示すように、入力値の増加に伴って、モータ5の位置が増加した後に減少することは、シートが第一機械装置6により送り出されるに伴って、図2に示した第二機械装置7の回転位置が、最大値と最小値の間を往復することを繰り返すことを意味する。第二機械装置7であるカッティング装置は、第二指令データが最大値をとるタイミングで、カッティング動作を行う。
図13は、本実施の形態において第二指令データ生成部13により生成される第二指令データすなわち位置指令データの一例を示す図である。図14は、比較例において第二指令データ生成部により生成される第二指令データすなわち位置指令データの一例を示す図である。図14に示した比較例は、補正後フィードバックデータの代わりにフィードバックデータR1(s)が第二指令データ生成部13に入力される例である。図13および図14ともに、図12に示したカム形状を前提として第二指令データ生成部13により生成される第二指令データをシミュレーションにより求めたものである。また、第一指令データについては、シミュレーションにおける各パラメータの値は図7から図12に示したシミュレーションと同一であるとする。
図13に示した例では、補正後フィードバックデータが第二指令データ生成部13へ入力されるため、図13に示した例では、比較例である図14に示した例に比べてシミュレーションの開始から第二指令データが最大値に至るまでの時間が短い。すなわち、比較例である図14に示した例に比べて第二指令データの立ち上がりが早く、同期制御における応答性すなわち第二機械装置7の動作に対する応答性を高めることができる。
以上のことから、本実施の形態によれば、指令データフィルタ21により第一指令データから抽出された高周波成分とフィードバックデータフィルタ22によりフィードバックデータから抽出された低周波成分とが加算された結果を補正後フィードバックデータとして制御すなわち第二指令データの生成に用いるようにした。このため、センサ8からのフィードバックデータへのリップルの影響と、応答性を改善した、理想的な速度応答Y(s)と同等なデータが得られる。
なお、以上説明した例では、第一指令データが単位ステップ関数であるとして説明したが、第一指令データの波形はこれに限定されず、例えばランプ関数をはじめとした他の波形であっても上記の例と同様の効果が得られる。また、以上説明した例では、第一機械装置6の伝達関数P(s)がP(s)=1としたモデルで示される例について説明したが、これに限定されず、第一機械装置6が、他のモデルで示されるものであっても同様な効果が得られる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
1 マスタ局、2 第一スレーブ局、3 第二スレーブ局、4,5 モータ、6 第一機械装置、7 第二機械装置、8 センサ、11 第一指令データ生成部、12 フィードバックデータ補正部、13 第二指令データ生成部、14 通信部、21 指令データフィルタ、22 フィードバックデータフィルタ、23 加算部、100 同期制御システム。

Claims (3)

  1. 第一装置を制御する第一スレーブ局と、
    第二装置を制御する第二スレーブ局と、
    前記第一スレーブ局へ前記第一装置を動作させる第一指令データを送信し、前記第二スレーブ局へ前記第二装置を動作させる第二指令データを送信するマスタ局と、
    を備え、
    前記マスタ局は、
    前記第一指令データを生成する第一指令データ生成部と、
    前記第一装置の動作状態の検出結果であるフィードバックデータから第一周波数領域の周波数成分を抽出して出力する第一フィルタと、
    前記第一指令データから前記第一周波数領域より周波数の高い領域である第二周波数領域の周波数成分を抽出して出力する第二フィルタと、
    前記第一フィルタから出力されるデータと、前記第二フィルタから出力されるデータとを加算し、加算した結果である加算データを出力する加算部と、
    前記加算データに基づき、前記第二指令データを生成する第二指令データ生成部と、
    を備え
    前記第一フィルタはローパスフィルタであり、
    前記第二フィルタはハイパスフィルタであり、
    前記第一フィルタの時定数と、前記第二フィルタの時定数とは等しいことを特徴とする同期制御システム。
  2. 前記第一装置は、第一モータと前記第一モータにより駆動される第一機械装置で構成され、
    前記第二装置は、第二モータと前記第二モータにより駆動される第二機械装置で構成され、
    前記フィードバックデータは、前記第一機械装置の動作状態の検出結果であることを特徴とする請求項1に記載の同期制御システム。
  3. 第一装置を動作させる指令データであり前記第一装置を制御する第一スレーブ局へ送信される第一指令データを生成する第一指令データ生成部と、
    前記第一装置の動作状態の検出結果であるフィードバックデータから第一周波数領域の周波数成分を抽出して出力する第一フィルタと、
    前記第一指令データから前記第一周波数領域より周波数の高い領域である第二周波数領域の周波数成分を抽出して出力する第二フィルタと、
    前記第一フィルタから出力されるデータと、前記第二フィルタから出力されるデータとを加算し、加算した結果である加算データを出力する加算部と、
    前記加算データに基づき、第二スレーブ局により制御される第二装置を動作させる指令データであり前記第二スレーブ局へ送信される第二指令データを生成する第二指令データ生成部と、
    を備え
    前記第一フィルタはローパスフィルタであり、
    前記第二フィルタはハイパスフィルタであり、
    前記第一フィルタの時定数と、前記第二フィルタの時定数とは等しいことを特徴とする制御装置。
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