JP6405864B2 - 磁気抵抗効果発振器 - Google Patents

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Description

本発明は、磁気抵抗効果発振器に関する。
磁気抵抗効果発振器は磁気抵抗効果素子に電流を印加することによって生じる磁気抵抗効果素子の磁性層の磁化の歳差運動を利用した発振器である。近年、この磁気抵抗効果発振器に関する研究が盛んに行われている。特許文献1では発振閾値電流密度以下の低い電流密度で磁気抵抗効果発振器を動作させる動作方法が提案されている。
特表2010−519760号公報
しかしながら、磁気抵抗効果発振器を通信に応用する際に、素子の応答速度に問題が生じる場合があった。つまり、発振の立ち上がり、立ち下がりに時間がかかると、高速通信に応用できないという課題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、発振の立ち上がりまたは立ち下がりを高速で行うことができる磁気抵抗効果発振器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る磁気抵抗効果発振器は、第1の磁性層と第2の磁性層と前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の間に挟まれたスペーサ層とを有する磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子に電流を印加して前記磁気抵抗効果素子を所定の発振周波数で発振させる電流印加部とを備え、前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子の発振閾値電流密度より大きな第1の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加し、その後、前記磁気抵抗効果素子が所定の周波数で発振するように、前記第1の電流密度未満かつ前記発振閾値電流密度以上である第2の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加し、前記第2の電流密度を有する電流の方向は前記第1の電流密度を有する電流の方向と同じであることを特徴とする。この第1の態様に係る磁気抵抗効果発振器により、磁気抵抗効果素子の発振の立ち上がりが高速化し、応答速度が改善される。
本発明の第2の態様に係る磁気抵抗効果発振器では、さらに、前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子の動作点が静止状態のみが安定となる領域に位置している状態から、前記第1の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加することを特徴とする。
本発明の第3の態様に係る磁気抵抗効果発振器では、第1の態様において前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子の動作点が発振状態のみが安定となる領域に位置するように前記発振閾値電流密度以上の第3の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加している状態から、前記第1の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加し、前記第3の電流密度を有する電流の方向は前記第1の電流密度を有する電流の方向と同じであり、前記第2の電流密度は前記第3の電流密度よりも大きいことを特徴とする。
本発明の第4の態様に係る磁気抵抗効果発振器では、前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子の動作点が双安定領域に位置するように第3の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加している状態から、前記第1の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加し、前記第3の電流密度を有する電流の方向は前記第1の電流密度を有する電流の方向と同じであることを特徴とする。
本発明の第5の態様に係る磁気抵抗効果発振器は、第1の磁性層と第2の磁性層と前記第1の磁性層と前記第2の磁性層の間に挟まれたスペーサ層とを有する磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子に電流を印加して前記磁気抵抗効果素子を所定の発振周波数で発振させる電流印加部とを備え、前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子に第1の電流密度を有する電流を印加し前記磁気抵抗効果素子が発振している状態から、前記第1の電流密度を有する電流と逆方向の第2の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加して前記磁気抵抗効果素子の発振を消失させることを特徴とする。この第5の態様に係る磁気抵抗効果発振器により、磁気抵抗効果発振器の発振の立ち下がりが高速化し、応答速度が改善される。
本発明の第6の態様に係る磁気抵抗効果発振器では、第1から第4の態様において、前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子に前記第2の電流密度を有する電流を印加し前記磁気抵抗効果素子が発振している状態から、前記第2の電流密度を有する電流と逆方向の第4の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加して前記磁気抵抗効果素子の発振を消失させることを特徴とする。この第6の態様に係る磁気抵抗効果発振器により、磁気抵抗効果発振器の発振の立ち上がりと立ち下がりが高速化し、応答速度が改善される。
本発明は、発振の立ち上がりまたは立ち下がりを高速で行うことができる磁気抵抗効果発振器を提供することができる。
本発明の実施形態1に係る磁気抵抗効果素子の模式図である。 本発明の実施形態1,4に係る磁気抵抗効果発振器の回路図である。 本発明の実施形態1,4,7に係る磁気抵抗効果発振器の回路図である。 本発明の実施形態5,6,7に係る磁気抵抗効果発振器の回路図である。 本発明の実施形態1に係る磁気抵抗効果素子の第2の磁性層の磁化の歳差運動の軌道を表す3次元グラフである。 本発明の実施形態4に係る磁気抵抗効果発振器の模式図である。 本発明の実施形態4に係る磁気抵抗効果発振器の計算モデルを示す図である。 本発明の実施例2に係る発振閾値電流密度の計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例2に係る発振閾値電流密度の計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る発振閾値電流密度の計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る発振閾値電流密度の計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の実施例1に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の比較例1に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の比較例1に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例2に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の実施例2に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の比較例2に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の比較例2に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例2に係る双安定領域近傍における磁化ベクトルの時間変化の計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例2に係る双安定領域近傍における磁化ベクトルの時間変化の計算結果を示すグラフである。 本発明の比較例3に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の比較例3に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例3に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の実施例3に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の比較例4に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の比較例4に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例4に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の実施例4に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の比較例5に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の比較例5に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例5に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の実施例5に係る発振の立ち下がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の比較例6に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の比較例6に係る発振の立ち下がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例6に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の実施例6に係る発振の立ち下がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の比較例7に係る印加電流密度を示すグラフである。 本発明の比較例7に係る発振の立ち下がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例7に係る印加電流を示すグラフである。 本発明の実施例7に係る発振の立ち上がりの計算結果を示すグラフである。 本発明の実施例7に係る発振の立ち下がりの計算結果を示すグラフである。 歳差運動する磁化の状態図を表すグラフである。
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態の例を説明する。なお、以下の説明は本発明の実施形態の一部を例示するものであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、形態が本発明の技術的思想を有するものである限り、本発明の範囲に含まれ
る。各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
(実施形態1)
図2aに磁気抵抗効果発振器の回路図を示す。磁気抵抗効果発振器100は磁気抵抗効果素子112と電流印加部114を有する。電流印加部114は電流源113と制御部115を有する。電流源113は磁気抵抗効果素子112に電流を供給できるように接続される。制御部115は電流源113の動作を制御する。図1は磁気抵抗効果素子112の構成例を示す図である。磁気抵抗効果素子112は第1の磁性層101と、第2の磁性層102と、その間に配置されたスペーサ層103とを有する。第1の磁性層101は第1の電極110と、第2の磁性層102は第2の電極111と各々電気的に接続している。第1の電極110と第2の電極111間に電流源113を接続する。ここでの第1の磁性層101の磁化方向は固定されており、矢印104は第1の磁性層101の磁化の固定方向を示す。第2の磁性層102の磁化方向は、磁気抵抗効果素子112に電流を印加する前の状態では、有効磁場の方向を向いており、矢印105は有効磁場の方向を示す。有効磁場は、第2の磁性層102内で生じる異方性磁場、交換磁場、外部磁場、反磁場の和である。図1では、第1の磁性層101の磁化の方向と、第2の磁性層102の有効磁場の方向が、互いに反対方向を向いているが、互いの方向はこれに限られない。
各磁性層はFe、Co、Ni、NiとFeの合金、FeとCoの合金、FeとCoとBの合金などを用いることができる。
磁気抵抗効果素子112は特に限定されないが、例えば巨大磁気抵抗効果(GMR)素子、またはトンネル磁気抵抗効果(TMR)素子、またはスペーサ層103の絶縁層中に電流狭窄パスが存在する電流狭窄型磁気抵抗効果(CCP―GMR)素子などを用いることができる。
GMR素子の場合、スペーサ層103として、Cu、Ag、Au、Ruなどの非磁性導電材料を用いることができる。
TMR素子の場合、スペーサ層103として、MgO、AlOxなどの非磁性絶縁材料を用いることができる。
CCP―GMR素子の場合、スペーサ層103の絶縁層としてAlOxやMgOなどを用いることができ、スペーサ層103の電流狭窄パスとしてCu、Ag、Au、Ruなどの非磁性導電材料を用いることができる。
磁気抵抗効果素子112は第1の中間層を含んでもよい。例えば、第1の磁性層101とスペーサ層103の間やスペーサ層103と第2の磁性層102の間に非磁性金属層や磁性層、絶縁層などが含まれていてもよい。
また、各磁性層の磁化方向を固定するために磁気抵抗効果素子112は第1の磁性層101、または第2の磁性層102に接するように反強磁性層を付加したり、第1の磁性層101、または第2の磁性層102と接するように第2の中間層、第3の磁性層、反強磁性層などを付加してもよい。また、磁性層の結晶構造、形状などに起因する磁気異方性などを利用して固定してもよい。
反強磁性層はFeO、CoO、NiO、CuFeS、IrMn、FeMn、PtMn、Cr、Mnなどを用いることができる。
また、各電極と各磁性層間にキャップ層、シード層、バッファ層などを含んでいてもよく、Ru、Ta、Cu、Crなどを用いることができる。
電流印加部114として、電流源113の他に電圧源などを電極間に接続することも可能である。
本明細書において、電流の方向を次のように定義する。正の方向を第2の磁性層102から第1の磁性層101への方向とし、負の方向を第1の磁性層101から第2の磁性層102への方向とする。
本実施形態1に係る磁気抵抗効果素子112の発振について説明する。ここで発振とは、振動的でない直流電流により電気的振動が誘起される現象である。
磁気抵抗効果素子112の発振は磁気抵抗効果素子112の磁性層の磁化のダイナミクスにより生じる。磁化のダイナミクスは以下のLLG(ランダウ−リフシッツ−ギルバート)式(1)として表すことができる。
Figure 0006405864
ここで、vは第2の磁性層102の磁化の単位ベクトル、γはジャイロ磁気因子、Heffは有効磁場、pは第1の磁性層の磁化の単位ベクトル、αは磁気緩和定数、μBはボーア磁子、Pはスピン偏極効率、jは電流密度、eは素電荷、Mは飽和磁化、dは第2の磁性層102の厚み、tは時間である。右辺第1項は歳差運動項、第2項はダンピング項、第3項はスピントランスファ−トルク項である。
第2の磁性層102が概ね単一磁区構造を取りうる場合、第2の磁性層102の磁化の動きはマクロな磁化ベクトルに近似して計算することが可能である。この場合、式(1)を解くことで、磁化のダイナミクスが計算可能である。
有効磁場は異方性磁場H、反磁場Hの和とする。Hは式(2)のように表される。
Figure 0006405864
ここで、Nは反磁場係数である。
磁気抵抗効果素子112の膜面に垂直な方向に正の方向の電流Iを印加すると、伝導電子106が電流Iとその逆方向、すなわち第1の磁性層101からスペーサ層103を介して第2の磁性層102に流れる。矢印104の方向に磁化した第1の磁性層101において、伝導電子106のスピンは矢印104の方向に偏極する。矢印107は伝導電子106のスピンの方向を表す。スピン偏極した電子106はスペーサ層103を介して第2の磁性層102に流れこむことで、第2の磁性層102の磁化と角運動量の受け渡しを行う。これによって、第2の磁性層102の磁化の方向を、有効磁場の方向を示す矢印105の方向から向きを変えようとする作用(式(1)の右辺第3項)が働く。一方で、第2の磁性層102の磁化の方向を、有効磁場の方向を示す矢印105の方向に安定させようとするダンピングの作用(式(1)の右辺第2項)が働く。したがって、これら2つの作用が釣り合って、第2の磁性層102の磁化は有効磁場の方向の周りを歳差運動する。この歳差運動を、第2の磁性層102の磁化方向を示す矢印108の、有効磁場の方向を示す矢印105のまわりの運動として表わし、点線109によって矢印108の歳差運動の軌跡を示す。第2の磁性層102の磁化方向108が第1の磁性層101の磁化方向104に対して高周波で変化するため、第2の磁性層102の磁化方向108と第1の磁性層101の磁化方向104の相対角度に依存して抵抗が変化する磁気抵抗効果によって、磁気抵抗効果素子112の抵抗値も高周波で変化する。電流Iに対して抵抗値が高周波で変化するので、およそ100MHzから数十THzの高周波数で振動する電圧が発生する。また、第1の磁性層の磁化方向104は磁気抵抗効果素子の面内に水平な方向や面に垂直な方向など、任意の方向を有することができる。また、有効磁場の方向は、第1の磁性層101の磁化方向104に対して反対方向に限られず、同じ方向や、その間の任意の方向を有することができるが、第1の磁性層の磁化方向104との相対角度が大きいほうがより好ましい。
磁気抵抗効果素子112に外部磁場、電流を印加していない状態から、必要な場合はある大きさの外部磁場が印加された状態で、ある大きさの電流密度を有する直流電流を印加することによって第2の磁性層102の磁化が歳差運動を開始し、磁気抵抗効果素子112は発振する。この時の最小の電流密度を発振閾値電流密度jと呼び、10A/cm程度であることが知られている。発振閾値電流密度は外部磁場の強さや方向によって変化する。
磁気抵抗効果素子112に、必要な場合は一定の磁場を印加している状態で、発振閾値電流密度以上の電流を印加している状態から印加電流を徐々に減少させていくと、歳差運動が消失する。この時の最大の電流密度を静止閾値電流密度jと呼ぶ。つまり、静止閾値電流密度以下の電流を印加した場合、磁気抵抗効果素子112は発振しない。
また、磁気抵抗効果素子112に印加する電流密度が非常に大きいと、スピントランスファートルクの効果によって第2の磁性層102の磁化が第1の磁性層101の磁化と略同一の方向を向く磁化反転が生じ、歳差運動は消失する。この磁化反転が生じる最小の電流密度を磁化反転閾値電流密度jRと呼ぶ。
図23は磁気抵抗効果素子112の第2の磁性層102の磁化(歳差運動する磁化)の状態図の一例であり、特許文献1に記載のものを簡略化したものである。横軸が磁気抵抗効果素子112に印加した電流密度j、縦軸が印加した磁場HEXTである。
j=j(HEXT)の線はjの磁場依存性を示しており、印加した磁場の強度を大きくすると、jは増加する傾向にある。
j=j(HEXT)の線はjの磁場依存性を示しており、磁場の強度を大きくすると、jは概ね線形に増加する。
j=jの線は、jは外部磁場の変化によらず、一定であることを表している。
磁気抵抗効果素子112に印加した電流密度における磁気抵抗効果素子112の磁性層の磁化の状態をある一定の磁場HEXT1を印加した状態を例として説明する。
磁気抵抗効果素子112に印加した電流密度jがj>j≧jの時、磁気抵抗効果素子112の動作点は領域2301に位置する。この時、第2の磁性層102の磁化は歳差運動し、発振状態のみが安定となる。
また、jがj≧jの時、磁気抵抗効果素子112の動作点は領域2303に位置する。この時、第2の磁性層102の磁化の歳差運動は消失し、静止状態(磁気抵抗効果素子が発振していない状態)のみが安定となる。
また、jがj≧jRの時、磁気抵抗効果素子112の動作点は領域2304に位置する。この時、磁気抵抗効果素子112の第2の磁性層102の磁化は反転し、磁気抵抗効果素子112は静止状態のみが安定となる。
また、jがj>j>jの時、磁気抵抗効果素子112の動作点は領域2302に位置する。この時、第2の磁性層102の磁化は前歴によって安定な状態が変化する。つまり領域2301から領域2302に遷移させた場合は歳差運動を生じ、発振状態となる。一方、領域2303から領域2302に状態を遷移させた場合は静止状態となる。このような領域2302を双安定領域とよぶ。
一般的な非線形発振素子の安定した発振状態をモデル化しているAuto−Oscillation modelにおいて、以下の関係式が成立する。
Figure 0006405864
ここで、poutは発振出力である。
発振閾値電流密度を実験的に求める手法を示す。まず、磁気抵抗効果素子112に印加する電流密度を変化させながら定常時における発振出力poutを測定する。測定にはスペクトラムアナライザやオシロスコープなどを利用することができる。次に測定結果を縦軸1/pout、横軸jのグラフにプロットして、1/pout=0になるjを外挿などより求めることで、発振閾値電流密度jを求めることができる。このj以上の電流密度を磁気抵抗効果素子112に印加している電流の範囲において発振状態のみが安定となる。
磁気抵抗効果素子112の動作点における双安定領域と静止状態のみが安定となる領域を実験的に求める手法を説明する。磁気抵抗効果素子112に発振閾値電流密度以上の電流を印加し、定常状態から電流を発振閾値電流密度以下に少しずつ下げ、定常時において発振状態となる場合、磁気抵抗効果素子112の動作点は双安定領域に位置する。一方、静止状態となる場合は磁気抵抗効果素子112の動作点は静止状態のみが安定となる領域に位置する。この試行を磁場を変化させながら行うことで双安定領域と静止状態のみが安定となる領域を実験的に求めることが可能である。
本実施形態1は磁気抵抗効果素子112に電流を印加して、磁気抵抗効果素子112の発振を持続させるための形態である。
本実施形態1における制御部115によって制御される電流源113の動作を以下に示す。第1のステップでは、電流源113は磁気抵抗効果素子112の動作点を静止状態のみが安定となる領域に位置させるように、静止閾値電流密度j以下の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加または電流を印加しない。この時、第2の磁性層102の磁化が有効磁場の方向105を向いている。その後第2のステップでは、電流源113は発振閾値電流密度より大きな第1の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。その後、第3のステップでは電流源113は磁気抵抗効果素子112が所定の周波数で発振するように第1の電流密度未満でかつ発振閾値電流密度以上の第2の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。
上記の電流ステップを生成する手段として電流源113を制御する方法の他に、周辺回路を利用した一例を説明する。図2bは磁気抵抗効果発振器200の回路図である。磁気抵抗効果発振器200は磁気抵抗効果素子112と電流印加部205を有する。電流印加部205はインダクタ201と抵抗202と電流源204を有する。磁気抵抗効果素子112とインダクタ201は並列に接続され、インダクタ201と抵抗202は直列に接続されて、電流源204に接続されている。
電流源204が第1の電流密度を有する電流Iを発生させると、インダクタ201では磁束の変化を打ち消すように起電力が生じ、抵抗202にはほとんど電流は流れず、電流Iのほぼすべてが磁気抵抗効果素子112に流れる。その後、電流Iの時間変動がなくなると、起電力が消え、抵抗202には電流I、磁気抵抗効果素子112には一定の電流I−Iが流れる。ここで、I―Iが第2の電流密度を有する電流となるようにインダクタ201、抵抗202の値を調整する。したがって、磁気抵抗効果発振器200は本実施形態1における駆動電流を生成することができる。
上記電流印加ステップを実験的に求める手段を説明する。電極110、111にプローブを当てて、オシロスコープなどで電極間の電圧を時間領域測定することで磁気抵抗効果素子に印加された電流の時間変化を推測でき、電流パルスの大きさや時間などを実験的に求めることが可能である。
上記の動作方法によって磁気抵抗効果素子112の発振の立ち上がりが高速になるメカニズムは定かではないが、次のように考えられる。
図3は第2の磁性層102の代表的な磁化ベクトルの軌跡を表した3次元グラフである。ここで、各軸は磁気抵抗効果素子112に印加する電流の向きをz軸の負の方向、磁気抵抗効果素子112の第1の磁性層101の磁化の向きを(1,0,0)となるようにxyz直交座標系を定義する。原点O(0,0,0)を中心とする球面300は磁化の向きが取りうる面である。点301は有効磁場の方向を示し、電流を磁気抵抗効果素子112に印加する前において、第2の磁性層102の磁化ベクトルは原点Oから点301を向いて静止している。軌跡302は発振閾値電流密度より大きな第1の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し続け、安定な発振状態となった時の第2の磁性層102の磁化の歳差運動の軌道を表す。軌跡303は第1の電流密度未満でかつ発振閾値電流密度以上の第2の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し続け、発振安定状態になった時の第2の磁性層102の磁化の歳差運動の軌道を表す。
図3を用いて、まず、本実施形態1における第1のステップの後に、第2のステップを省略して第2の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子に印加する場合について説明する。
この場合、第1の磁性層101の磁化が方向104に固定され、第2の磁性層102の磁化の方向が有効磁場の方向105に向いている状態から、所定の周波数で磁気抵抗効果素子112が発振するように第2の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。すると、第2の磁性層102の磁化は式(1)の右辺第3項のスピントランスファートルク項の作用によって有効磁場の方向の点301から回転を伴って向きを変え、スピントランスファートルク項の作用が式(1)の右辺第2項のダンピングの項による作用と釣り合った定常状態において、軌跡303上を歳差運動する。
一方、本実施形態1における動作では、第1の磁性層101の磁化が方向104に固定され、第2の磁性層102の磁化が有効磁場の方向105に向いている状態から、第2のステップにおいて第2の電流密度より大きな第1の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。これによって、スピントランスファートルク項がより大きくなり、第2のステップを省略した場合に比べて第2の磁性層102の磁化は軌跡302の軌道に向かって高速に向きを変え、スピントランスファートルク項の作用が式(1)の右辺第2項のダンピングの項による作用と釣り合った第1の発振状態において、軌跡302上を歳差運動する。
次に本実施形態1の第2のステップにおける第1の発振安定状態から第3のステップにおける第2の発振安定状態に移る際のメカニズムを説明する。
本実施形態1における動作では、第3のステップとして第1の電流密度未満の第2の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。すると、スピントランスファートルクが弱まり、第2の磁性層102の磁化は有効磁場の方向である点301に向かって向きを変える。その磁化ベクトルの移動の過程において、第2の磁性層102の磁化ベクトルは第2の電流密度を有する電流における安定軌道である軌跡303に入り、磁気抵抗効果素子112は第2の発振安定状態(スピントランスファートルク項の作用がダンピングの項による作用と釣り合った状態)に移る。
軌跡302上を歳差運動する第1の発振安定状態から軌跡303上を歳差運動する第2の発振安定状態に移る第1の遷移時間は式(1)の右辺第2項のダンピング項に依存し、さらに磁気緩和係数αに依存する。一般的な磁性体の場合、αはおおよそ0.01以上であることが知られているので、ダンピングの作用は大きく、第1の遷移時間は短い。
第2のステップを省略した場合、第1の遷移時間は存在しないが、発振の立ち上がり時間を総合的に比較すると、本実施形態1は第2のステップにおける高速化の寄与が大きいので、第2のステップを省略した場合よりも立ち上がりが高速である。
第3のステップにおいて、磁気抵抗効果素子112に第2の電流密度を有する電流を印加し続け、第2の電流密度に応じた周波数で発振を持続させる。
特許文献1では磁気抵抗効果素子の動作点を双安定領域に位置させて動作する方法が開示されているが、この場合、発振時に外からのノイズ等によって一時的に外部磁場、印加電流が変動すると、歳差運動が生じない静止状態に遷移し、そのまま発振が消失する恐れがある。つまり、特許文献1に記載の動作方法は、高速な発振の立ち上がりと持続的な発振の両立に問題がある。一方、本実施形態1は発振閾値電流密度以上の第2の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子に印加するので、外からのノイズ等によって先のような磁場、電流の変動が一時的に生じて、仮に一時的に静止状態に遷移しても、元の磁場、元の電流に戻れば発振は元に戻って持続する。したがって、磁気抵抗効果素子がより安定に発振を持続するためには本実施の形態が好ましい。
ここまでは磁気抵抗効果素子112の略面内において第2の磁性層102の磁化が歳差運動する発振の形態を用いてメカニズムを説明したが、発振の形態はこれに限定されず、例えば磁気抵抗効果素子112の略垂直方向に第2の磁性層102の磁化が歳差運動する場合などにおいても同様のことが言える。
第1の電流密度は大きいほうが発振の立ち上がりをより高速化でき、第1の電流密度が第2の電流密度の1.5倍以上であると、第1の遷移時間による発振の立ち上がり時間の増加の影響を、第2のステップにおける高速化の寄与による発振の立ち上がり時間の短縮効果が上回る効果が顕著になる。従って、第1の電流密度は第2の電流密度の1.5倍以上であることが望ましい。
また、磁気抵抗効果素子112の第2の磁性層102の磁化が第1の磁性層の磁化と略同一の方向を向く磁化反転の状態で磁気抵抗効果素子112が安定するならば、第2のステップとして磁気抵抗効果素子112に印加する発振閾値電流密度より大きな第1の電流密度は磁化反転閾値電流密度jより小さい方が望ましい。もしくは第1の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加する時間が磁化反転が生じる時間よりも短ければ、第1の電流密度は磁化反転閾値電流密度j以上でもよい。
(実施形態2)
本実施の形態において、磁気抵抗効果発振器は電流源113の動作以外は実施形態1のものと同一とする。制御部115によって電流源113を制御して電流源113を以下のように動作させ、磁気抵抗効果素子112に電流を印加する。第1のステップとして電流源113は磁気抵抗効果素子112の動作点を発振状態のみが安定となる領域に位置させるように、発振閾値電流密度以上の第3の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し、その後第2のステップでは、電流源113は発振閾値電流密度より大きな第1の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。その後、第3のステップでは電流源113は第1の電流密度未満でかつ発振閾値電流密度以上の第2の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。第2の電流密度は第3の電流密度よりも大きい。この場合、発振の立ち上がりが高速になるメカニズムは実施形態1と同様に以下のように考えられる。
本実施の形態では第2のステップとして第2の電流密度より大きな第1の電流密度を有する電流を印加するので、第2のステップを省略した場合に比べて、スピントランスファートルク項がより大きくなり、第2の磁性層102の磁化はより速く向きを変える。その後、第3のステップとして磁気抵抗効果素子112に第2の電流密度を有する電流を印加すると、第2の電流密度は第1の電流密度よりも小さいので、比較的強いダンピングトルクが働き、発振が安定するまでの遷移時間は短い。したがって、本実施の形態を用いると第2のステップを省略した場合に比べて発振の立ち上がりを高速化することができる。
(実施形態3)
本実施の形態において、磁気抵抗効果発振器は電流源113の動作以外は実施形態1のものと同一とする。制御部115によって電流源113を制御して電流源113を以下のように動作させ、磁気抵抗効果素子112に電流を印加する。第1のステップとして磁気抵抗効果素子112の動作点を双安定領域に位置させるように、発振閾値電流密度より小さな第3の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し、その後第2のステップでは、電流源113は発振閾値電流密度より大きな第1の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。その後、第3のステップでは電流源113は第1の電流密度未満でかつ発振閾値電流密度以上の第2の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。この場合、発振の立ち上がりが高速になるメカニズムは実施形態1や実施形態2と同様である。
第1のステップとして磁気抵抗効果素子112を双安定領域に位置させるように正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し、発振が消失している状態から本実施の形態の第2のステップの電流の印加を行うと、実施形態1と同様に第2の磁性層102の磁化が動き、発振の立ち上がりが高速化する。
一方、第1のステップとして磁気抵抗効果素子112を双安定領域に位置させるように正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し発振している状態から、第2のステップの電流を印加する場合、実施形態2と同様に第2の磁性層102の磁化が動き、発振の立ち上がりが高速化する。
したがって、本実施の形態を用いれば磁気抵抗効果素子112の発振の立ち上がりを高速化することができる。
(実施形態4)
実施形態4の磁気抵抗効果発振器400は、実施形態1の磁気抵抗効果発振器100の磁気抵抗効果素子112にかえて、磁気抵抗効果素子410を用いたものである。その他の構成は実施形態1の磁気抵抗効果発振器100と同じである。図4に磁気抵抗効果素子410の模式図を示す。磁気抵抗効果素子410は、第1の磁性層401と第2の磁性層402とその間に設けられたスペーサ層409を有する。また、第1の磁性層401に接して第1の電極407が設けられ、第2の磁性層402に接して第2の電極408が設けられている。電極407と電極408間に電流源113を接続する。電流源113のかわりに電圧源を接続してもよい。スペーサ層409は絶縁部403と強磁性ナノコンタクト部404からなる。第1の磁性層401、第2の磁性層402、強磁性ナノコンタクト部404は強磁性体で形成され、FeとCoの合金、FeとCoとAlの合金、FeとCoとAlとSiの合金などが望ましい。絶縁部403は電気的に絶縁性がとれたものがよく、AlOx、MgOなどが望ましい。第1の磁性層401と第2の磁性層402の磁化は矢印405、406の方向を各々向いており、強磁性ナノコンタクト部404には磁壁が形成される。このような構造の素子をNCMR(ナノコンタクト磁気抵抗効果)素子と呼ぶ。なお、スペーサ層409は、第1の磁性層401および第2の磁性層402と接しており、強磁性ナノコンタクト部404は第1の磁性層401と第2の磁性層402とを電気的に接続しているが、図4では、スペーサ層409の構造をわかりやすくするために、スペーサ層409は第1の磁性層401および第2の磁性層402と離して描いてある。
矢印406は矢印405に対して反対方向に限られず、同じ方向や、その間の任意の方向を有することができる。
xy平面は磁気抵抗効果素子410の膜面に平行な面とする。また磁気抵抗効果素子410の膜面に垂直な方向をz軸方向と定義する。
磁気抵抗効果素子410の発振現象を計算するために、磁気抵抗効果素子410の1つの強磁性ナノコンタクトに形成される磁壁のダイナミクスを計算する。図5は強磁性ナノコンタクトの計算モデルを示した図である。モデル化において、第1の磁性層401と第2の磁性層402の磁化の方向は固定とする。各磁性層の固定手段としては外部磁場や反強磁性体との交換結合、磁気異方性などを利用することができる。第1の磁性層401と第2の磁性層402の間に形成される磁壁は互いに交換結合した磁化が磁性層401から磁性層402に向かってz軸方向に1次元に連なっているものとする。
計算において、式(1)を少し変更した下式を用いる。
Figure 0006405864
有効磁場は交換磁場のみとし、その強さは交換結合定数によって決まる。
磁気抵抗効果素子410に電極を介して電流Iを各層に垂直な方向に流すと、スピントランスファートルクが磁壁に作用し、磁気抵抗効果素子410は発振する。ここで、説明のために第1の磁性層401の磁化を概ね(1、0、0)の方向に固定し、第2の磁性層402の磁化を概ね(―1、0、0)の方向に固定している場合を考える。強磁性ナノコンタクト内には(1、0、0)の方向から(―1、0、0)の方向に徐々に向きを変える磁化が磁壁を形成する。図6aは磁気抵抗効果素子410に発振閾値電流密度を有する電流を印加した時の、強磁性ナノコンタクト内の磁化ベクトルの各成分の平均値の時間変化の計算結果である。磁化ベクトルのy成分の平均値mがゼロの時強磁性ナノコンタクト内の磁壁はネール磁壁となり、z成分の平均値mがゼロの時、ブロッホ磁壁となる。3ピコ秒以降、mとmが交互にゼロになりながら振動している。つまり、強磁性ナノコンタクト内の磁化は周期的に歳差運動している。このようにネール磁壁とブロッホ磁壁が交互に移り変わる現象が生じ、2つの磁壁は抵抗値が異なるので抵抗が振動し、発振が生じる。
本実施の形態では実施形態1の磁気抵抗効果発振器100と同様に、例えば図2aの回路図で表現された回路で駆動電流を生成することができる。また、本実施の形態では実施形態1の磁気抵抗効果発振器200と同様に、例えば図2bの回路図で表現された回路で駆動電流を生成することができる。
本実施形態4においても実施形態1と類似のメカニズムで磁気抵抗効果素子410の発振の立ち上がりを高速化することが可能である。
本実施形態4において磁気抵抗効果素子410の発振の立ち上がりが高速になるメカニズムを説明する。磁気抵抗効果素子410に発振閾値電流密度以上の第1の電流密度を有する電流を印加すると、強磁性ナノコンタクトに電流が流れ、強磁性ナノコンタクト内の磁化は歳差運動する。
第2のステップにおいて、電流源113は磁気抵抗効果素子410に発振閾値電流密度以上の第1の電流密度を有する電流を印加する。この時、第2のステップを省略した場合に比べてより大きい電流が流れるので、式(4)の右辺第3項のスピントランスファートルクの項の作用が大きくなり、強磁性ナノコンタクト内の磁化は高速に応答してその向きが変化する。そして、スピントランスファートルクの項の作用が式(4)の右辺第2項のダンピングの項による作用と釣り合った所で、強磁性ナノコンタクト内の磁化は第1の歳差運動を始める。
その後、第3のステップにおいて、電流源113は第1の電流密度よりも小さい第2の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子410に印加する。これによって強磁性ナノコンタクト内の磁化はスピントランスファートルクによる作用が小さくなり、ダンピングの項の作用と釣り合った所で第2の歳差運動をする。第1の歳差運動から第2の歳差運動への遷移時間はダンピングの項に依存し、実施形態1と同様にこの遷移時間は短い。第2のステップを省略した場合、この遷移時間は存在しないが、発振の立ち上がり時間を総合的に比較すると、本実施形態4は第2のステップにおける高速化の寄与が大きいので、第2のステップを省略した場合よりも立ち上がりが高速である。
第1の電流密度は大きいほうが発振の立ち上がりをより高速化でき、第1の電流密度が第2の電流密度の1.5倍以上であると、第1の遷移時間による発振の立ち上がり時間の増加の影響を、第2のステップにおける高速化の寄与による発振の立ち上がり時間の短縮効果が上回る効果が顕著になる。従って、第1の電流密度は第2の電流密度の1.5倍以上である方が望ましい。
また、本実施形態4では第1の磁性層401と第2の磁性層402の磁化の方向を固定としたが、例えば第2の磁性層が、磁化の方向が固定されない磁化自由層である場合においても立ち上がりを高速化することが可能である。
(実施形態5)
本実施の形態において、磁気抵抗効果発振器100は実施形態1のものと電流源113の動作以外は同一とし、磁気抵抗効果発振器200は実施形態1のものと電流源204の動作以外は同一とする。
本実施形態5は磁気抵抗効果素子112が発振している状態から、発振を消失させるための形態である。
本実施形態5の制御部115によって制御された電流源113の動作を以下に示す。電流源113は第1の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し、磁気抵抗効果素子112が発振している状態から、電流源113は第1の電流密度を有する電流と逆方向、つまり第2の電流密度を有する負の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加して磁気抵抗効果素子112の発振を消失させる。
また、上記の電流ステップを回路を用いて生成する電流印加部の一例を説明する。図2cは磁気抵抗効果発振器200の回路図である。磁気抵抗効果発振器200は磁気抵抗効果素子112と電流印加部205を有する。電流印加部205はインダクタ201と抵抗202と電流源204を有する。磁気抵抗効果素子203とインダクタ201は並列に接続され、インダクタ201と抵抗202は直列に接続される。
磁気抵抗効果素子112に第1の電流密度を有する電流を印加している状態から、電流源204からの電流の印加を止めると、インダクタ201では磁束の変化を打ち消すように起電力が生じ、印加されていた第1の電流密度を有する電流と同じ向きの電流Iがインダクタ201に流れ、磁気抵抗効果素子112には印加されていた第1の電流密度を有する電流とは逆向きの負の方向の電流Iが流れる。Iを第2の電流密度を有する電流となるようにインダクタ201、抵抗202の値を調整する。その後、電流の変化が止まると、起電力が消え、磁気抵抗効果素子112には電流が流れなくなる。したがって、磁気抵抗効果発振器200は発振の立ち下がりにおける駆動電流を生成することができる。
本実施形態5によって磁気抵抗効果素子112の発振が高速に立ち下がるメカニズムは以下のように考えられる。
磁気抵抗効果素子112が発振している状態において、式(1)の第2項と第3項は概ね釣り合った状態である。この時に第1の電流密度を有する電流の方向とは逆方向の第2の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加すると、第3項のスピントランスファートルクの項は符号が逆になり、第2項のダンピング項を強めるように作用する。これによって、磁気抵抗効果素子112の第2の磁性層102の磁化は高速に有効磁場の方向に向いて発振は消失する。磁気抵抗効果素子112の発振が消失した後、磁気抵抗効果素子112に対する電流の印加を止めることで磁気抵抗効果素子112の発振の消失状態が持続する。第2の電流密度が発振閾値電流密度より小さい場合は、第2の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加し続けても磁気抵抗効果素子112の発振の消失状態は持続する。第2の電流密度が発振閾値電流密度以上の場合は、磁気抵抗効果素子112の発振が消失した後、第2の電流密度を有する電流にかえて発振閾値電流密度より小さい第3の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加することで磁気抵抗効果素子112の発振の消失状態が持続する。つまり、磁気抵抗効果素子112の発振が消失した後、発振閾値電流密度より小さい電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加、または電流の印加を止めることで磁気抵抗効果素子112の発振の消失状態が持続する。磁気抵抗効果素子112の発振が消失した後に磁気抵抗効果素子112に印加される、発振閾値電流密度より小さい電流密度を有する電流の方向は正負のどちらでも構わない。したがって、本実施形態5の磁気抵抗効果発振器100、200を用いると磁気抵抗効果素子112の発振の立ち下がりを高速化できる。
(実施形態6)
以下、本実施の形態を説明する。実施形態6の磁気抵抗効果発振器400は、実施形態5の磁気抵抗効果発振器100の磁気抵抗効果素子112にかえて、実施形態4で示した磁気抵抗効果素子410を用いたものである。その他の構成は実施形態5の磁気抵抗効果発振器100と同じである。
磁気抵抗効果素子410の発振を止める典型的な手段として、例えば発振時に磁気抵抗効果素子410に印加していた電流を止める方法が考えられる。この時、強磁性ナノコンタクト内の各局所磁化は磁気抵抗効果素子410への電流の印加を止めることでスピントランスファートルクが働かなくなり、ダンピング項によって安定な静止状態に移り変わろうとするが、各局所磁化は隣り合う磁化と互いに同じ方向を向こうとする交換結合による力が生じるので静止状態への瞬時の遷移を妨げる。
本実施形態6では磁気抵抗効果発素子410の発振を瞬時に止めるために、以下のように磁気抵抗効果素子410に印加する電流を変化させる。磁気抵抗効果素子410に第1の電流密度を有する正の方向の電流を印加して発振している状態から、第1の電流密度を有する電流と逆方向の第2の電流密度を有する負の方向の電流を磁気抵抗効果素子410に印加して磁気抵抗効果素子の発振を消失させる。その後、発振閾値電流密度jより小さい電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加、または電流の印加を止めることで磁気抵抗効果素子410の発振の消失状態が持続する。
上記の電流ステップを生成する電流印加部として、実施形態5と同じ周辺回路を利用して本実施形態6の電流ステップを生成することができる。
本実施形態6における磁気抵抗効果素子410の強磁性ナノコンタクト内の磁化は、実施形態5の磁気抵抗効果素子112の第2の磁性層102の磁化とほぼ同じ動作をする。第1の電流密度を有する電流の方向とは逆方向の第2の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子410に印加すると、強磁性ナノコンタクト内の磁化は高速に有効磁場の方向に向いて磁壁の回転は止まり、発振は消失する。従って、本実施形態6は発振の立ち下がりを高速化できる。
(実施形態7)
本実施の形態において、磁気抵抗効果発振器は電流源113の動作以外は実施形態1のものと同一とする。
本実施形態7における制御部115によって制御された電流源113の動作を以下に示す。電流源113は、発振の立ち上がり時における動作として、実施形態1と同様に、第1〜第3のステップの動作を行う。第1のステップでは磁気抵抗効果素子112の動作点を静止状態のみが安定となる領域に位置させるように、電流源113は静止閾値電流密度j以下の電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加するまたは電流を印加しない。第2のステップでは電流源113は発振閾値電流密度より大きな第1の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し、第3のステップでは電流源113は第1の電流密度未満でかつ発振閾値電流密度以上の第2の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加する。
次に発振の立ち下がり時における電流源113の動作として、実施形態5と同様に、電流源113は、第2の電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加し、磁気抵抗効果素子112が発振している状態から、第2の電流密度を有する電流とは逆方向の負の方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加して磁気抵抗効果素子112の発振を消失させる。その後、電流源113は発振閾値電流密度jより小さい電流密度を有する電流を磁気抵抗効果素子112に印加、または電流の印加を止めることで磁気抵抗効果素子112の発振の消失状態が持続する。
本実施形態7を用いると、実施形態1、実施形態5と同様のメカニズムで発振の立ち上がり、立ち下がりを高速化することができる。
実施形態7では、実施形態1と実施形態5を組み合わせた形態を説明したが、実施形態2または実施形態3と実施形態5を組み合わせても良く、実施形態4と実施形態6を組み合わせても良い。
(実施例1)
図1は本実施例1に係る磁気抵抗効果素子の模式図である。磁気抵抗効果素子112は第1の磁性層101とスペーサ層103と第2の磁性層102を有する。また、第1の磁性層に電気的に接続する第1の電極110と第2の磁性層102に電気的に接続する第2の電極111とを設けた。第2の磁性層102は長径135×短径65×厚さ2.5nmの楕円形状とした。ここでx軸方向を長径方向、y軸方向を短径方向、z軸方向を厚み方向とする。第1の磁性層101、第2の磁性層102はNi80Fe20とした。第1の磁性層101の磁化は第1の磁性層101の直下の、図示しない反強磁性体FeMnとの交換結合によって固定されており、その磁化は矢印104の方向に固定されている。スペーサ層は非磁性金属のCuとした。第1の電極110と第2の電極111間に電流源113を接続し、磁気抵抗効果素子112の膜面に垂直な方向に正の方向の電流Iを印加した。
磁気抵抗効果素子112はx軸方向に形状磁気異方性を持ち、その異方性磁場を29.05×10A/mとした。また、膜厚は十分薄いとみなせるので、反磁場係数Nx=0、Ny=0、Nz=1とした。
本実施例1で使用したパラメタを表1に示す。
Figure 0006405864
ダイナミクスMR比MRは第1の磁性層101の磁化と第2の磁性層102の磁化の方向が平行の時と反平行の時の静止状態における抵抗変化値に対する動的な抵抗変化値の割合を表し、以下の式を用いて計算する。
Figure 0006405864
ここで、ROSCは動的な抵抗変化値、Rmaxは第1の磁性層101の磁化と第2の磁性層102の磁化の方向が反平行の時の抵抗値、Rminは第1の磁性層101の磁化と第2の磁性層102の磁化の方向が平行の時の抵抗値、θは第2の磁性層102の有効磁場の方向と、電流印加時における第2の磁性層102の磁化の方向のなす角である。
定常時において、ダイナミクスMR比が0.1%以上の状態を発振状態とする。
定常時において、ダイナミクスMR比が0.1%未満の状態を静止状態とする。
発振の立ち上がり時間は、磁気抵抗効果素子112に発振の立ち上がりに対する電流の印加を開始する時点から発振周波数が定常時の発振周波数の1%以下の変動となるまでの時間とする。本実施例1、後述する実施例2−4、7および比較例1−5においては磁気抵抗効果素子に発振の立ち上がりに対する電流の印加を開始する時点を0秒としている。
図7aおよび図7bは本実施例1の磁気抵抗効果素子112に電流を印加せず、第2の磁性層102の磁化が有効磁場の方向を向いている状態から、一定の正の方向の電流を印加した場合のダイナミクスMR比MRの時間変化である。図7aは電流密度が1.1×1011A/mの時の結果であり、MRの振幅が徐々に大きくなり発振状態であった。一方、図7bは電流密度が1.0×1011A/mの時の結果であり、MRが徐々に小さくなっており、静止状態であった。したがって、発振閾値電流密度はおおよそ1.1×1011A/mであった。
発振の立ち上がりに対して、本実施例1では以下のステップで電流源113を制御して磁気抵抗効果発振器100を駆動させた。図8aは本実施例1の印加電流の時間変化を表したものである。第1のステップでは磁気抵抗効果素子112に電流を印加せず、第2の磁性層102の磁化は有効磁場の方向を向いている状態から、第2のステップでは発振閾値電流密度より大きい8.8×1011A/mを有する正の方向の電流を0.5ナノ秒間印加し、その後、第3のステップでは発振閾値電流密度1.1×1011A/mを有する正の方向の電流を印加した。
図8bは上記の動作での磁気抵抗効果素子112の発振周波数の時間変化を示した計算結果である。電流印加開始時の発振周波数は3.5GHzで、比較的低周波で発振した。これは第1のステップで比較的大きな電流を印加したことでスピントランスファートルクが強く作用し、大きな振幅の振動が生じ、低周波で発振していると考えられる。その後、第3ステップに移ると、トルクが弱まることで磁化の歳差運動の振幅が小さくなり、高周波に変化し、4.7GHzの周波数で発振が安定した。立ち上がり時間は17ナノ秒であった。
(比較例1)
比較例として、実施例1の第2のステップを省略した場合の結果を示す。図9aは印加する電流密度の時間変化、図9bは本比較例1における発振周波数の時間変化の計算結果である。ゼロ秒以降、磁気抵抗効果素子に発振閾値電流密度1.1×1011A/mを有する正の方向の一定の電流を印加した。発振閾値電流密度において、スピントランスファートルクはちょうどダンピングと釣り合うので、安定した発振が得られるまで時間がかかり、立ち上がり時間は98ナノ秒であった。
実施例1と比較例1の立ち上がり時間を比較すると、比較例1は98ナノ秒だが、実施例1では17ナノ秒である。したがって実施例1の磁気抵抗効果発振器100は比較例1のものに比べて約5倍立ち上がりが高速である。
(実施例2)
磁気抵抗効果素子がNCMR素子で構成される場合の具体例を示す。本実施例2の磁気抵抗効果発振器400は第1の磁性層401と第2の磁性層402とその間に設けられたスペーサ層409を有する磁気抵抗効果素子410と、第1の磁性層401に接する第1の電極407と第2の磁性層402に接する第2の電極408とを有する。第1の電極407と第2の電極408間に電流源411を接続した。スペーサ層409は絶縁部403と強磁性ナノコンタクト部404からなる。第1の磁性層401、第2の磁性層402、強磁性ナノコンタクト部404はFe50Co50で構成した。強磁性ナノコンタクト部404は長さが1.3nm、面積が1nmとした。絶縁部403は主成分がAlで構成した。第1の磁性層401の直下にはIr20Mn80で構成される反強磁性体層が接しており、第1の磁性層401と交換結合している。これによって第1の磁性層401の磁化の方向は固定され、矢印405の方向を向いている。第2の磁性層402の磁化の方向は外部印加磁場によって矢印406の方向を向いて固定されている。矢印405と矢印406は平行を向いていないので、強磁性ナノコンタクト部404には磁壁が形成される。磁気抵抗効果素子410に電極を介して電流Iを各層に垂直な方向に流すとスピントランスファートルクが磁壁に作用し、マイクロ波が発生する。
磁気抵抗効果素子410の発振現象を計算するために、実施形態4と同様のモデル化を行った。
計算で使用したパラメタを表2に示す。
Figure 0006405864
本実施例2において、印加電流密度は1つの強磁性ナノコンタクト内における値とする。
印加電流密度は以下の方法で見積もることができる。磁気抵抗効果素子410のスペーサ層409を露出させ、その露出表面を導電性原子間力顕微鏡(c−AFM)で観察し、導電領域から露出表面内のナノコンタクトの総面積を評価する。磁気抵抗効果素子410に印加した電流値をナノコンタクトの総面積で割ることでナノコンタクト内の電流密度を見積もることができる。
図6aおよび図6bは磁気抵抗効果素子410に電流を印加していない状態から、正の方向の一定の電流を印加した場合の強磁性ナノコンタクト内の磁化ベクトルの平均値の時間変化の計算結果である。図6aは電流密度が2.66×1012A/mの時の結果であり、6ピコ秒以降でネール磁壁とブロッホ磁壁が一定の周期で移り変わっており、安定した歳差運動が生じた。一方、図6bは電流密度が2.65×1012A/mの時の結果であり、安定した歳差運動が生じなかった。したがって、発振閾値電流密度はおおよそ2.66×1012A/mであった。
以下に発振の立ち上がりに対する本実施例2の制御部によって制御した電流源の動作を示す。図10aは本実施例2における印加電流の時間変化を示したものである。第1のステップでは電流を印加せず、
その後、第2のステップでは磁気抵抗効果素子410に電流密度13.3×1012A/mを有する正の方向の電流を0.35ピコ秒間、印加した。その後、第3のステップでは
発振閾値電流密度の2.66×1012A/mを有する正の方向の電流を印加した。
図10bは本実施例2によって得られた発振周波数の時間変化を示したグラフである。定常時は6.2THzの一定の周波数で発振し、立ち上がり時間は0.5ピコ秒であった。
(比較例2)
比較として実施例2の第2のステップを省略した場合の例を示す。図11aは本比較例2において磁気抵抗効果素子410に印加する任意の時点における印加電流密度を示しており、発振閾値電流密度の2.66×1012A/mを有する正の方向の電流を印加し続けた。
図11bは本比較例2の動作によって発振した磁気抵抗効果素子410の発振周波数の時間変化を示したものである。徐々に周波数が高くなり、最終的に6.2THzの一定の周波数で安定して発振した。立ち上がり時間は8.8ピコ秒であった。
実施例2と比較例2の発振の立ち上がり時間を比較すると、実施例2では0.5ピコ秒に対して比較例2では8.8ピコ秒である。したがって、実施例2の磁気抵抗効果発振器を用いれば一定電流を磁気抵抗効果素子410に印加する手法よりも約16倍、発振の立ち上がりを高速化できる。
(比較例3)
比較例3として、特許文献1で開示されている動作法による例を示す。特許文献1では磁気抵抗効果素子の動作点を双安定領域内に位置させる第1のステップ、その後、磁気抵抗効果素子に印加する電流を発振閾値電流密度より上に増大させる第2のステップ、その後、磁気抵抗効果素子に印加する電流を発振閾値電流密度より下に減少させる第3のステップで磁気抵抗効果素子を動作させる方法が開示されている。
比較例3は、実施例2に対して電流源の動作が異なり、その他の構成は実施例2と同じである。磁気抵抗効果素子410の動作点を双安定領域に位置させるような電流密度の範囲を以下の方法で計算した。まず、第1のステップとして発振閾値電流密度の2.66×1012A/mを有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子410の発振が定常状態になるまで磁気抵抗効果素子410に印加し、その後、徐々に印加する電流密度を下げ、定常時において静止状態となる電流密度をシミュレーションによって求めた。図12aは5.80×1011A/mの電流密度を有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子410に印加した時の磁化ベクトルの時間変化であり、発振が持続していることが確認できる。一方、図12bは5.70×1011A/mの電流密度を有する正の方向の電流を印加した時の磁化ベクトルの時間変化である。20ピコ秒以降は磁壁の回転が止まり、発振が消失した。したがって、静止閾値電流密度は概ね5.70×1011A/mであり、5.80×1011A/m以上、2.66×1012A/m未満の電流密度を有する正の方向の電流を印加している時、磁気抵抗効果素子410の動作点は双安定領域に位置する。
図13aは本比較例3の動作方法における磁気抵抗効果素子410への印加電流の時間変化を示したものである。第1のステップとして磁気抵抗効果素子410の動作点を双安定領域に位置させるように電流密度1.99×1012A/mを有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子410に印加し、その後、第2のステップでは電流密度13.3×1012A/mを有する正の方向の電流を0.35ピコ秒印加した。その後、第3のステップでは磁気抵抗効果素子410の動作点を双安定領域に位置させるように発振閾値電流密度より低い1.99×1012A/mを有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子410に印加した。
図13bは本比較例3の動作方法によって得られた発振周波数の時間変化を示したグラフである。定常時は4THzで発振し、立ち上がり時間は6ピコ秒であった。
実施例2と比較例3の発振の立ち上がり時間を比較すると、実施例2では0.5ピコ秒に対して、比較例3では4ピコ秒である。したがって、実施例2の磁気抵抗効果発振器を用いると、特許文献1の動作方法よりも約8倍発振の立ち上がりを高速化できる。これは第2のステップにおいて磁気抵抗効果素子410に印加する電流密度と第3のステップにおいて印加する電流密度の差が実施例2のほうが比較例3よりも小さく、第1の遷移時間が短かったためと考えられる。
(実施例3)
第1のステップとして磁気抵抗効果素子の動作点を発振状態のみが安定となりうる領域内に位置させるように電流を磁気抵抗効果素子に印加している場合の実施例を示す。磁気抵抗効果素子は実施例2と同一とした。
図14aは本実施例3における磁気抵抗効果素子410に印加する電流のステップを示している。第1のステップとして発振閾値電流密度の2.66×1012A/mを有する正の方向の電流を印加した。その後、第2のステップとして、12.0×1012A/mを有する正の方向の電流を0.3ピコ秒間印加した。その後、第3のステップとして6.0×1012A/mを有する正の方向の電流を0.3ピコ秒以降印加した。
図14bは上記の電流ステップで磁気抵抗効果発振器を駆動させた場合における発振周波数の時間変化のシミュレーション結果である。定常時は約30THzで発振し、立ち上がり時間は1.6ピコ秒であった。
(比較例4)
実施例3に対する比較として、実施例3と同一の磁気抵抗効果素子410に実施例3の第2のステップを省略した場合の例を示す。図15aは本比較例4における磁気抵抗効果素子410に印加する電流を示している。磁気抵抗効果素子410に第1のステップとして発振閾値電流密度の2.66×1012A/mを有する正の方向の電流を印加し、その後、一定の電流密度である6.0×1012A/mを有する正の方向の電流を印加した。
図15bは上記の電流ステップで磁気抵抗効果発振器を駆動させた場合における発振周波数の時間変化のシミュレーション結果である。定常時は約30THzで発振し、立ち上がり時間は2.6ピコ秒であった。
実施例3と比較例4の発振の立ち上がり時間を比較すると、実施例3の方が、1ピコ秒程度立ち上がり時間が短く、高速通信に好適である。これは実施例3において、第2のステップとして比較的大きな電流を磁気抵抗効果素子410に印加したことによって、ナノコンタクト内の各局所磁化が大きく揺らぎ、第2の電流を印加した場合の発振軌道に高速に移ったためであると考えられる。一方、比較例4では第2のステップの発振軌道から徐々に6.0×1012A/mの電流密度を有する電流を印加した場合の発振軌道に遷移しており、発振の立ち上がりに時間を要している。
(実施例4)
第1のステップとして磁気抵抗効果素子410の動作点を双安定領域に位置させるように磁気抵抗効果素子410に電流を印加した時の実施例を示す。磁気抵抗効果素子は実施例2と同一とした。図16aは本実施例4における磁気抵抗効果素子410に印加する電流密度の時間変化を示したものである。第1のステップとして磁気抵抗効果素子410の動作点を双安定領域に位置させるように電流密度1.99×1012A/mを有する正の方向の電流を印加した。その後、第2のステップとして電流密度13.3×1012A/mを有する正の方向の電流を0.35ピコ秒印加した。その後、第3のステップとして発振閾値電流密度の3.50×1012A/mを有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子410に印加した。
図16bは本実施例4における発振周波数の時間変化のシミュレーション結果である。定常時は約10THzで発振しており、立ち上がり時間は4.8ピコ秒であった。
(比較例5)
実施例4に対する比較として、実施例4の第2のステップを省略した場合を示す。本比較例5において、磁気抵抗効果素子は実施例4と同一とした。図17aは磁気抵抗効果素子410に印加する電流密度の時間変化である。第1のステップとして磁気抵抗効果素子410の動作点を双安定領域に位置させるように電流密度1.99×1012A/mを有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子410に印加し、その後、発振閾値電流密度以上の3.50×1012A/mを有する正の方向の電流を印加した。
図17bは本比較例5における発振周波数の時間変化のシミュレーション結果である。定常時は約10THzで発振しており、立ち上がり時間は7ピコ秒であった。
実施例4と比較例5の立ち上がり時間を比較すると、実施例4では4.8ピコ秒であるのに対して比較例5では7ピコ秒であり、実施例4のほうが立ち上がりが速い。
また、第1のステップとして磁気抵抗効果素子410の動作点を双安定領域に位置させるように磁気抵抗効果素子410に電流を印加している点で共通な比較例3と実施例4の立ち上がり時間を比較すると、比較例3では6ピコ秒程度であり、実施例4は比較例3に対しても立ち上がりが高速である。
(実施例5)
以下に本発明の実施形態に係る発振の立ち下がりに関する実施例を説明する。本実施例において、磁気抵抗効果素子は実施例1と同一とした。
磁気抵抗効果発振器が発振の立ち下がりに対する動作を開始してから静止状態になるまでの時間を立ち下がり時間とする。本実施例5、後述する実施例6、7および比較例6、7では立ち下がりに対する動作を開始する時点を0秒としている。
図18aは本実施例5において磁気抵抗効果素子112に印加する電流密度の時間変化を示している。第1のステップでは1.1×1011A/mを有する正の方向の電流を印加し、その後第2のステップの0ナノ秒から0.5ナノ秒までの間、8.8×1011A/mを有する負の方向の電流を印加した。第3のステップの0.5ナノ秒以降は電流の印加を止めた。
図18bは本実施例5における磁気抵抗効果素子112のダイナミクスMR比の時間変化を示している。第1のステップにおいてはダイナミクスMR比が10%以上で発振状態であった。0ナノ秒以降、ダイナミクスMR比は急激に下がり、静止状態になるまでの立ち下がり時間は0.5ナノ秒であった。
(比較例6)
比較例として、実施例5の磁気抵抗効果素子に印加する電流の第2のステップを省略した場合の磁気抵抗効果素子の発振の立ち下がりのダイナミクスを示す。磁気抵抗効果素子は実施例5と同一とした。図19aは本比較例6における磁気抵抗効果素子112に印加する電流密度の時間変化を示している。第1のステップとして実施例5と同様に1.1×1011A/mを有する正の方向の電流を印加し、その後、電流の印加を止めた。
図19bは本比較例6における磁気抵抗効果素子112のダイナミクスMR比の時間変化を示している。0ナノ秒まではダイナミクスMR比が10%以上で発振状態であった。その後、徐々にMR比が下がった。静止状態になるまでの立ち下がり時間は4ナノ秒であった。
実施例5と比較例6の発振の立ち下がり時間を比較すると、実施例5では0.5ナノ秒であったのに対して、比較例6では4ナノ秒であった。これは実施例5では比較的大きな逆方向の電流を磁気抵抗効果素子112に印加したことで発振を止める強いスピントランスファートルクがかかり、発振が高速に立ち下がっているのに対して、比較例6ではダンピング項の作用で発振が徐々に小さくなり、静止状態になるまでに時間を要している。したがって実施例5の磁気抵抗効果発振器を用いれば、第2のステップを省略した場合よりも発振の立ち下がりを8倍程度高速化することが可能である。
(実施例6)
以下に本発明の実施形態に係る発振の立ち下がりに関する実施例を説明する。本実施例6において、磁気抵抗効果素子は実施例2と同一のNCMR素子とした。
本実施例6において、立ち下がり時間を以下のように定義する。磁気抵抗効果発振器に対して立ち下がりに対する動作を開始する時点から強磁性ナノコンタクト内の磁化ベクトルの平均値のz成分がゼロで交差した最大の時点までを立ち下がり時間とする。
磁気抵抗効果素子410の発振を止めるための電流源の動作を説明する。図20aは磁気抵抗効果素子410に印加する電流密度の時間変化を表したグラフである。第1のステップとして発振閾値電流密度2.66×1012A/mを有する正の方向の電流を印加し、一定の周波数で発振している状態から、第2のステップとして0.5ピコ秒間10.6×1012A/mを有する負の方向の電流を印加し、その後、第3のステップとして電流の印加を止めた。
図20bは強磁性ナノコンタクト内の磁化ベクトルの平均値の時間変化の計算結果である。0秒以降、磁化ベクトルの平均値のz成分mがゼロで交差しておらず、概ねネール磁壁を維持しているので、抵抗変化が生じていない。これは負の方向の電流を磁気抵抗効果素子410に印加し、逆向きのスピントランスファートルクを磁気抵抗効果素子410に作用させることで、磁壁が逆方向に回ろうとする力がかかり、回転が急速に止まったためであると考えられる。
(比較例7)
比較のために、実施例6の第2のステップを省略した例を示す。磁気抵抗効果素子は実施例6と同一のものとした。図21aは本比較例7における印加電流密度の時間変化である。第1のステップでは実施例6と同様に発振閾値電流密度2.66×1012A/mを有する正の方向の電流を磁気抵抗効果素子410に印加し、その後、電流の印加を止めた。
図21bは本比較例7における磁気抵抗効果素子410の強磁性ナノコンタクト内の磁化ベクトルの平均値の時間変化の計算結果である。0秒以降、3ピコ秒程度まで磁化ベクトルのz成分の平均値mと磁化ベクトルのy成分の平均値mが互いにゼロを交差しており、ネール磁壁とブロッホ磁壁に交互に移り変わっていた、つまり発振が持続していた。3ピコ秒以降はmがゼロで交差しておらず、概ねネール磁壁を維持しており、発振が消失していた。したがって本比較例7における発振の立ち下がり時間は3ピコ秒であった。
実施例6と比較例7の立ち下がり時間を比較すると、実施例6では0秒であるのに対して、比較例7では3ピコ秒である。したがって、実施例6の磁気抵抗発振器を用いれば、発振の立ち下がりを高速化する効果が期待できる。
(実施例7)
以下に本発明の実施形態に係る発振の立ち上がりと立ち下がりに関する実施例をパルス電流生成手段をより具体化して示す。図2bに示すように、磁気抵抗効果発振器200は磁気抵抗効果素子112と電流印加部205を有する。電流印加部205はインダクタ201と抵抗202と電流源204を有する。磁気抵抗効果素子112とインダクタ201は並列に接続され、インダクタ201と抵抗202は直列に接続される。磁気抵抗効果素子112は実施例1と同一とした。磁気抵抗効果素子112の抵抗値を50Ω、インダクタ201のインダクタンスを30nH、抵抗202を7.143Ωとした。
第1の電極110と第2の電極111間に電流源204を接続し、磁気抵抗効果素子112の膜面に垂直な方向に電流を印加した。図22aは電流源204が発生した電流の時間変化を表しており、40ナノ秒間6mAの電流を印加し、その後40ナノ秒間電流の印加を止めるといった動作でパルス電流を発生させた。このように変動する電流は高速通信に利用されており、例えば電流印加時に1、そうでない時は0の情報を表すNRZ(Non Return To Zero)方式の信号に該当する。
図22bは本実施例7における磁気抵抗効果素子112に印加した電流の時間変化を表している。インダクタ201の起電力によって電流の印加を開始したタイミングで6mAほどのパルスが数ナノ秒間印加され、その後は起電力が消え、電流は0.7mAに減少して安定した。電流の印加を止めるタイミングにおいてはインダクタ201の起電力によって−6mA程度の電流が数ナノ秒間磁気抵抗効果素子に流れ、その後、電流はゼロになった。このような回路の動作によって実施例1における磁気抵抗効果素子112の発振の立ち上がりの動作をするための電流と実施例5における磁気抵抗効果素子112の発振の立ち下がりの動作をするための電流を共に生成することが可能である。
さらに本実施例7の磁気抵抗効果発振器は高速無線通信に利用することが可能である。図22cは図22bの電流を磁気抵抗効果素子112に印加した時のダイナミクスMR比の時間変化を表したものである。電流が印加されている時には抵抗が振動、つまりRF信号が生じている。一方、電流が印加されていない時には抵抗変化が生じず、RF信号は発生しない。したがって、NRZ方式の信号を磁気抵抗効果素子112に入力することでRF信号に変調でき、本実施例7においては数十MbpsのNRZ信号の変調が可能である。
このように本発明の磁気抵抗効果発振器は、磁気抵抗効果素子が高速通信の信号の立ち上がりと立ち下がりに追従して発振の動作をすることを可能にし、高速無線通信に利用することができる。
本発明に係る磁気抵抗効果発振器は、高速無線通信などに利用可能である。
100、200、400・・・磁気抵抗効果発振器、101、102、401、402・・・磁性層、103・・・スペーサ層、112、410・・・磁気抵抗効果素子、106・・・伝導電子、110、111、407、408・・・電極、114、205・・・電流印加部、115・・・制御部、113、204・・・電流源、201・・・インダクタ、202・・・抵抗、403・・・絶縁部、404・・・強磁性ナノコンタクト部、500・・・強磁性ナノコンタクトの計算モデル、2301・・・発振状態のみが安定な領域、2302・・・双安定領域、2303、2304・・・静止状態のみが安定な領域

Claims (6)

  1. 第1の磁性層と、第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層に挟まれたスペーサ層とを有する磁気抵抗効果素子と、
    前記磁気抵抗効果素子に電流を印加して前記磁気抵抗効果素子を所定の発振周波数で発振させる電流印加部とを備え、
    前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子の発振閾値電流密度より大きな第1の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加し、
    その後、前記磁気抵抗効果素子が所定の周波数で発振するように、前記第1の電流密度未満かつ前記発振閾値電流密度以上である第2の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加し、前記第2の電流密度を有する電流の方向は前記第1の電流密度を有する電流の方向と同じであることを特徴とする磁気抵抗効果発振器。
  2. 前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子の動作点が静止状態のみが安定となる領域に位置している状態から、前記第1の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加することを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗効果発振器。
  3. 前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子の動作点が発振状態のみが安定となる領域に位置するように前記発振閾値電流密度以上の第3の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加している状態から、前記第1の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加し、
    前記第3の電流密度を有する電流の方向は前記第1の電流密度を有する電流の方向と同じで、前記第2の電流密度は前記第3の電流密度よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗効果発振器。
  4. 前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子の動作点が双安定領域に位置するように第3の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加している状態から、前記第1の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加し、前記第3の電流密度を有する電流の方向は前記第1の電流密度を有する電流の方向と同じであることを特徴とする、請求項1に記載の磁気抵抗効果発振器。
  5. 第1の磁性層と、第2の磁性層と、前記第1の磁性層と前記第2の磁性層に挟まれたスペーサ層とを有する磁気抵抗効果素子と、
    前記磁気抵抗効果素子に電流を印加して前記磁気抵抗効果素子を所定の発振周波数で発振させる電流印加部とを備え、
    前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子に第1の電流密度を有する電流を印加し前記磁気抵抗効果素子が発振している状態から、前記第1の電流密度を有する電流と逆方向の第2の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加して前記磁気抵抗効果素子の発振を消失させることを特徴とする磁気抵抗効果発振器。
  6. 前記電流印加部は、前記磁気抵抗効果素子に前記第2の電流密度を有する電流を印加し前記磁気抵抗効果素子が発振している状態から、前記第2の電流密度を有する電流と逆方向の第4の電流密度を有する電流を前記磁気抵抗効果素子に印加して前記磁気抵抗効果素子の発振を消失させることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気抵抗効果発振器。
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