以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には、同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1を参照して、実施の形態1に係る義足用板バネ10について説明する。図1は、義足用板バネ10の側面図である。義足用板バネ10の側面とは、義足用板バネ10を着用した着用者を側面視したときに確認される面である。図1において、義足用板バネ10が着用者に着用されたときの進行方向は、たとえば紙面に向かって右方向である。義足用板バネ10は、着用者の足に接続され固定される第1部分1と、着用者による走行時に地面(たとえば水平面)に接触する接地部分を含む第2部分2とを備える。
第1部分1は平板(直方体)状に設けられている。第1部分1の短手方向(図1の紙面に対し垂直な方向)における幅はたとえば一定である。第1部分1の厚みWはたとえば一定である。第1部分1は、長手方向(図1中の中心線Cが延びる方向、以下単に第1部分1の延在方向という)における一方の端部が第2部分2と接続されている。第1部分1は、着用者の足(下腿または大腿)を収容可能なソケット(図示しない)などを組み付け可能に設けられている。このとき、着用者の荷重線(中心軸線A)は、たとえば第1部分1の延在方向に対して進行方向側に垂直な方向(以下、単に垂直な方向ともいう)における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下であり、かつ当該第1部分1の延在方向に沿って延びるように設定される。なお、着用者の荷重線(中心軸線A)は、着用者の下腿または大腿の中心を通るため、着用者の体格(特に下腿または大腿の太さ)および下腿または大腿に接続されるソケットの寸法に応じて変化するものである。つまり、第1部分1の延在方向に対して進行方向側に垂直な方向における第1部分1と着用者の荷重線(中心軸線A)との距離L3は、義足用板バネ10およびソケットなどを含めた義足全体のアライメントに応じて変化するものであり、たとえば義足用板バネ10とソケットとを組み付ける際に行われる一般的な組み付け調整を行ったときには、90mm以上120mm以下の範囲内となる。
第2部分2は、第1部分1の延在方向に対して交差する方向に延びる先端部3と、先端部3よりも後方において先端部3と連なる中間部4と、中間部4と第1部分1とを接続している後方部5とを含む。先端部3は、第1部分1の延在方向に対して交差する方向に延びている。先端部3の一端は、第1部分1を鉛直方向に沿って配置した状態(第1部分1の中心線Cを鉛直方向に沿って配置した状態)から第1部分1から見て先端部3が位置する方向FWと反対方向BK(以下、単に反対方向BKという)に10度傾けたときに水平面に接する接地点G(以下、単に接地点Gという)である。異なる観点から言えば、図1に示されるように、接地点Gは、第1部分1を鉛直方向に沿って配置しかつ水平面S1に接触させた状態において、水平面S1に対し第1部分1から見て先端部3が位置する方向FWに10度傾斜した面S2と第2部分2とが接する点である。先端部3の他端は、接地点Gよりも第2部分2の先端側(前方)に位置する前方端点3Eである。先端部3は、接地点Gから前方端点3Eまで延びるように形成されている。
第1部分1の延在方向に対して進行方向側に垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1は、たとえば90mm以上である。好ましくは、当該距離L1は100mm以上であり、より好ましくは当該距離L1は110mm以上である。
このとき、第1部分1の延在方向に対して垂直な方向における第1部分1の中心線Cから第2部分2の前方端点3Eまでの距離Lfに対する、当該垂直な方向における第2部分2の接地点Gと前方端点3Eとの距離L1の比率は47%以上であり、好ましくは53%以上である。
先端部3は、曲率半径Rが250mm以上である部分を有している。先端部3は、たとえば、図1に示すような側面視において、接地点Gから前方端点3Eまでの全体が曲率半径Rが250mm以上である部分(進行方向に沿った断面が円弧状の部分)として設けられている。先端部3の曲率中心Oは、先端部3よりも鉛直方向の上方に設けられている。なお、先端部3は、その一部が曲率半径Rが250mm以上である部分として設けられていてもよい。先端部3において曲率半径Rが250mm以上である部分は、少なくとも接地点Gから第2部分2の先端側(方向FW側)に位置する1点(第2部分2中の1点)まで連なるように設けられていればよい。この場合、先端部3において接地点Gから当該1点までの間に位置する部分は、先端部3よりも鉛直方向の上方に位置する曲率中心Oを有し、かつ曲率半径Rが250mm以上である。また、先端部3において当該1点から前方端点3Eまでの間に位置する部分は、義足用板バネ10を側面視したときに、上記曲率中心Oを中心とした曲率半径Rの円の内部に位置するように設けられていればよい。前方端点3Eを含む部分は、接地点Gを含み曲率半径Rが250mm以上である部分と異なる曲率半径および曲率中心を有する部分として設けられていてもよい。たとえば、前方端点3Eは、第1部分1を鉛直方向に沿って配置した状態において、接地点Gを含み曲率半径Rが250mm以上である部分(先端部3において接地点Gから上記1点までの間に位置する部分)よりも鉛直方向上方に突出するように設けられていてもよい。このような場合、先端部3において接地点Gを含み曲率半径Rが250mm以上である部分の上記方向FWにおける長さが、上述した距離L3の条件を満足するように設けられていればよい。
中間部4は、接地点Gよりも後方側において先端部3と連なるように設けられている。中間部4は、第2部分2において、接地点Gを通って第1部分1の延在方向に延びる線分Bと重なる部分から第1部分1の中心線Cと重なる部分との間に位置する部分である。つまり、中間部4は、図1に示すような側面視において、接地点Gから第1部分1の中心線Cと重なる部分まで延びる第2部分2の一部である。中間部4は、第1部分1の延在方向に対して交差する方向に延びるように設けられている。中間部4において接地点Gに連なる部分は、先端部3(少なくとも接地点Gを含み曲率半径Rが250mm以上である部分)と曲率中心および曲率半径Rが同一である。すわなち、先端部3および中間部4において接地点Gの近傍に位置して互いに連なる部分は、曲率中心Oに対して曲率半径Rが250mm以上である部分として設けられている。中間部4において中心線Cと重なる部分は、第1部分1を鉛直方向に沿って配置した状態において、先端部3の前方端点3Eよりも鉛直方向上方に位置している。中間部4は、たとえば先端部3よりも大きい曲率半径を有する部分、または第1部分1の延在方向に対して交差する方向に直線状に延びる直線部分を有している。第1部分1の延在方向に対して垂直な方向FWにおける中間部4の長さL2(当該垂直な方向における線分Bと中心線Cとの距離)は、当該垂直な方向FWにおける第1部分1と中心軸線Aとの距離L3よりも長くなるように設けられている。異なる観点から言えば、義足用板バネ10は、接地点Gを通って第1部分1の延在方向に延びる線分Bが、着用者の荷重線Aよりも前方に位置するように形成されている。上記方向FWにおける当該荷重線Aと線分Bとの間隔は、たとえば30mm以下であり、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは、0mmである(つまり上記方向FWにおいて当該荷重線Aと線分Bとは重なっていてもよい)。第1部分1の延在方向に対して進行方向側に垂直な方向FWにおける中間部4の長さL2は、たとえば上記方向FWにおける接地点Gと前方端点3Eとの距離L1よりも長く設けられている。
第2部分2は、第1部分1よりも上記反対方向BK(後方)に最後方頂点を有する後方部5をさらに含む。後方部5は、中間部4において中心線Cと交わる部分よりも後方側において中間部4と連なるように設けられている。さらに、後方部5は、第1部分1よりも後方側において第1部分1と連なるように設けられている。後方部5と第1部分1との境界は、図1に示すような側面視において、後方部5の中心線が第1部分1の中心線Cと重なり始める部分である。上記反対方向BKにおける第1部分1の中心線Cから後方部5の最後方頂点までの距離Lbは、たとえば55mm以上である。このとき、上記垂直な方向FWにおける第1部分1の中心線Cから第2部分2の前方端点3Eまでの距離Lfに対する、上記反対方向BKにおける第1部分1の中心線Cと後方部5の最後方頂点との距離Lbの比率は、40%以下である。
第2部分2の厚みは、第1部分1の厚みW以下となるように設けられている。第2部分2において中間部4および後方部5の厚みは、たとえば第1部分1の厚みWから一定の割合で連続的に薄くなるように設けられている。また、第2部分2において先端部3の厚みは、たとえば接地点Gにおける厚みと一定となるように設けられている。なお、第2部分2において先端部3の厚みは、前方端点3Eから一定の割合で連続的に厚くなるように設けられていてもよい。また、先端部3の厚みは、前方端点3Eから第1部分1の延在方向に対して交差する方向に所定の距離だけ離れた部分までの厚みが一定であるとともに、当該部分から接地点Gまで一定の割合で連続的に厚くなるように設けられていてもよい。一方、第2部分2の幅は、たとえば第1部分1の幅と同等に設けられている。
義足用板バネ10は、たとえば第1部分1および第2部分2が同一の材料で構成されている。義足用板バネ10を構成する材料は、たとえば繊維強化樹脂(Fiber Reinforced Plastics)であり、特に、炭素繊維強化樹脂またはガラス繊維強化樹脂等が好適である。
次に、義足用板バネ10を着用した着用者による走行動作(水平面上での着地から蹴り出しまで)について説明する。まず、着地時において、義足用板バネ10は、第1部分1を鉛直方向に沿って配置した状態から上記反対方向に5度以上15度以下傾いた状態で水平面に接地される。この着地時における傾斜角θ(図1参照)は、走行速度に応じても変化し、速度が速いときには15度により近い高角度となり、速度が遅いときには5度により近い低角度となる。つまり、着地時において義足用板バネ10は、上記接地点Gまたは上記接地点Gの近傍であって接地点Gよりも前方または後方に位置する部分が接地される。
その後、義足用板バネ10は、第1部分1を鉛直方向に沿って配置した状態を経て、第1部分1を鉛直方向に沿って配置した状態から前方に10度以上20度以下傾いた状態で接地された時に後方へ蹴り出される。この蹴り出し時における傾き角度Φは、走行速度に応じて変化し、速度が速いときには20度により近い高角度となり、速度が遅いときには10度により近い低角度となる。義足用板バネ10において、着地後蹴り出しまでの間に水平面に接地される部分は、先端部3において着地時に設置される部分(傾斜角θが10度のときは接地点G)と前方端点3Eとの間に位置する部分である。
このとき、義足用板バネ10は、上記接地点Gが、第1部分1の延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下でかつ当該延在方向に沿って延びる領域と第2部分2とが交わる部分に位置するように設けられている。そのため、上記接地点Gの近傍であって接地点Gよりも前方または後方に位置する近傍部分が接地された場合であっても、当該近傍部分は、第1部分1の延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下でかつ当該延在方向に沿って延びる領域と、第2部分2とが交わる部分の近傍に位置している。ここで、着用者の荷重線(中心軸線A)は、上述のように第1部分1の延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下でかつ当該延在方向に沿って延びる領域内に配置される。そのため、義足用板バネ10は、着地時において着用者の荷重線Aが接地点Gを通って第1部分1の延在方向に延びる線分Bよりも後方に位置するように設けられているが、当該荷重線Aと線分Bとの間隔が従来の義足用板バネよりも短い。
本発明者らは、鋭意研究の結果、着地時において着用者の荷重線Aが上記線分Bよりも後方に位置する場合には、着用者には着地後に後転(仰向け回転)させる方向に力が付与される(異なる観点から言えば、着地時に義足用板バネ10に加えられる力の一部が推進力以外の反力として消費される)ため、上記荷重線Aと線分Bとの間隔が長い従来の義足用板バネ(たとえば後述する試料2および試料3)では着地から蹴り出しまでの走行動作を効率的に行うことが困難であることを確認した。また、本発明者らは、実施の形態1に係る義足用板バネ10および従来の義足用板バネから形状モデルを作成して当該形状モデルに基づいてCAE(Computer Aided Engineering)解析を行い、義足用板バネ10が従来の義足用板バネと比べて着地から蹴り出しまでの走行動作を効率的に行い得ることを確認した(詳細は後述する)。
さらに、義足用板バネ10は、上記垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1は90mm以上である。また、先端部3は曲率半径Rが250mm以上である部分を有する。そのため、義足用板バネ10では、先端部3において着地から蹴り出しまでに変形される部分および蹴り出し時に水平面に接地されている部分を従来の義足用板バネ(たとえば後述する試料4)よりもより大きくすることができる。そのため、義足用板バネ10によれば、たとえば義足用板バネ10の構成材料を従来の義足用板バネを構成する材料と同等の材料を用いながらも、第1部分1を鉛直方向に沿って配置した状態から前方に10度以上20度以下傾いた状態における水平方向への剛性の低下を抑制することができる。その結果、義足用板バネ10によれば、蹴り出し時に十分な推進力を得ることができる。本発明者らは、実施の形態1に係る義足用板バネ10および従来の義足用板バネから形状モデルを作成して当該形状モデルに基づいてCAE解析を行った。その結果、義足用板バネ10が、第1部分1を鉛直方向に沿って配置した状態から前方に10度以上20度以下傾いた状態における水平方向への剛性の低下を抑制し得ることを確認した(詳細は後述する)。
(実施の形態2)
次に、図2を参照して、実施の形態2に係る義足用板バネ11について説明する。義足用板バネ11は、基本的には実施の形態1に係る義足用板バネ10と同様の構成を備えるが、第1部分1の延在方向に対して垂直な方向FWにおける中間部4の長さL2(当該垂直な方向における線分Bと中心線Cとの距離)は、当該垂直な方向FWにおける第1部分1と中心軸線Aとの距離L3よりも短くなるように設けられている点で異なる。異なる観点から言えば、義足用板バネ11は、接地点Gを通って第1部分1の延在方向に延びる線分Bが、着用者の荷重線Aよりも後方に位置するように形成されている。
第1部分1の延在方向に対して進行方向側に垂直な方向FWにおける中間部4の長さL2に対する、上記方向FWにおける接地点Gと前方端点3Eとの距離L1の比率は、100%以上であり、好ましくは110%以上であり、より好ましくは140%以上である。
このようにすれば、義足用板バネ11は接地点G(線分B)が着用者の荷重線Aよりも後方に位置するように設けられているため、着用者には着地後に後転(仰向け回転)させる方向に力が付与されない(異なる観点から言えば、着地時に義足用板バネ10に加えられる力の一部が推進力以外の反力として消費されない)。そのため、上記荷重線Aが線分Bよりも後方に配置されかつこれらの間隔が長い従来の義足用板バネと比べて、義足用板バネ11は着地から蹴り出しまでの走行動作を効率的に行うことができる。また、上記荷重線Aが線分Bよりも後方に配置されている義足用板バネ10と比べても、義足用板バネ11は着地から蹴り出しまでの走行動作をより効率的に行うことができる。
次に、図3〜図13を参照して、義足用板バネ10および義足用板バネ11の変形例について説明する。
まず、図1および図2に示される義足用板バネ10,11の第2部分2は後方部5を含んでいるが、図3〜図5を参照して、義足用板バネ12,13,14における第2部分2は後方部5を含んでいなくてもよい。この場合、中間部4が第1部分1と先端部3とを接続するように設けられている。図3に示されるように、義足用板バネ12は、中間部4の側面形状が先端部3とは異なる曲率半径を有する曲線状に設けられていてもよく、たとえば先端部3よりも曲率半径が大きい。また、図4に示されるように、義足用板バネ13は、中間部4が第1部分1の延在方向に対して交差する方向に延びる直線部4bを有していてもよい。この場合、中間部4は直線部4bのみで構成されていてもよいが、図4に示されるように、中間部4は先端部3と接続されている部分に所定の曲率半径を有する曲線部4aを有していてもよい。このとき、曲線部4aの曲率半径は、任意の長さであればよいが、たとえば先端部3の曲率半径と同等に設けられていてもよい。また、図5に示されるように、義足用板バネ13における中間部4は、第1部分1から見て先端部3が位置する方向(前方)に凸状の曲線部として構成されていてもよい。このようにしても、図3〜図5に示される義足用板バネ12,13,14は、上記延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下でかつ上記延在方向に沿って延びる領域と、先端部3とが交わる部分に、接地点Gが位置している。また、上記垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1は90mm以上である。また、先端部3は曲率半径Rが250mm以上である部分を有している。そのため、図3〜図5に示される義足用板バネ12,13,14は、実施の形態1または実施の形態2に係る義足用板バネ10,11と同様の効果を奏することができる。
また、図1および図2に示される義足用板バネ10,11の中間部4は、先端部3よりも大きい曲率半径を有する部分、または第1部分1の延在方向に対して交差する方向に直線状に延びる直線部分を有しているが、図6を参照して義足用板バネ15の中間部4において下方に位置する面(設置される面)は、側面視したときに先端部3と同一の中心および同一の曲率半径を有していてもよい。このとき先端部3および中間部4の一部の曲率半径は250mm以上である。また、図6に示される義足用板バネ15は、上記延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下でかつ上記延在方向に沿って延びる領域と、先端部3とが交わる部分に、接地点Gが位置している。また、上記垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1は90mm以上である。そのため、図6に示される義足用板バネ15は、実施の形態1または実施の形態2に係る義足用板バネ10,11と同様の効果を奏することができる。
また、図7を参照して、第2部分2の中間部4において下方に位置する面(設置される面)は、側面視したときに少なくとも中心の異なる2つの円弧が接続されているように設けられていてもよい。言い換えると、第2部分2は、第2部分2は、中間部4において他の部分よりも第1部分1側に向かって凹んでいる凹部6を有していてもよい。凹部6は、中間部4において接地点Gよりも後方に形成されている。また、図8を参照して、第2部分2は、中間部4および後方部5において他の部分よりも第1部分1側に向かって凹んでいる凹部6を有していてもよい。凹部6の側面形状は、中間部4および後方部5に対して第1部分1とは反対側に中心を有する円弧に沿って設けられていてもよい。このようにしても、図7および図8に示される義足用板バネ16,17は、上記延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下でかつ上記延在方向に沿って延びる領域と、先端部3とが交わる部分に、接地点Gが位置している。また、上記垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1は90mm以上である。また、先端部3は曲率半径Rが250mm以上である部分を有している。そのため、図7または図8に示される義足用板バネ16,17は、実施の形態1または実施の形態2に係る義足用板バネ10,11と同様の効果を奏することができる。先端部3は走行時の体勢の変化に伴って水平面に接地される領域が変化するため、滑らかな走行動作を実現するためには曲率が一定であるのが好ましい。これに対し、中間部4は接地されないため、中間部4は異なる曲率を有する複数部分を含んでいてもよい。
また、図9を参照して、第2部分2は、第1部分1の延在方向に対して交差する方向に直線状に延びる直線部4b,5bを有していてもよい。言い換えると、中間部4および後方部5は、それぞれ曲線部4a,5aと直線部4b,5bとを有していてもよい。この場合、中間部4および後方部5は、それぞれの直線部4b,5bが互いに連なるように設けられていてもよい。この場合、図9に示すような側面視において、中心および曲率半径の異なる2つの円弧状に設けられている曲線部4a,5aは、直線部4b,5bを挟んで配置されている。このようにしても、図9に示される義足用板バネ18は、上記延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下でかつ上記延在方向に沿って延びる領域と、先端部3とが交わる部分に、接地点Gが位置している。また、上記垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1は90mm以上である。また、先端部3は曲率半径Rが250mm以上である部分を有している。そのため、図9に示される義足用板バネ18は、実施の形態1または実施の形態2に係る義足用板バネ10,11と同様の効果を奏することができる。
また、図10〜図13を参照して、第2部分2は、第1部分1よりも前方(第1部分1から見て先端部3が位置する方向)に頂部を有する前方凸部7を含んでいてもよい。前方凸部7は、第1部分1と後方部5との間を接続するように設けられている。この場合、第2部分2は、第1部分1の中心線Cに対して前方(進行方向側)に凸状の前方凸部7と後方に凸状の後方部5とが中心線Cが延びる方向に連なるように設けられている。そのため、図10〜図13に示される義足用板バネ19,20,21,22は、第2部分2が後方部5に加えて前方凸部7をさらに有しているため、義足用板バネ10,11と比べてさらに鉛直方向の変形量を大きくできることが期待される。また、図11を参照して、第2部分2は前方凸部7を含み、かつ中間部4および後方部5のそれぞれが中間部4および後方部5における他の部分よりも第1部分1側に向かって凹んでいる凹部6a,6bを有していてもよい。言い換えると、第2部分2は、側面視されたときに少なくとも中心の異なる4つの円弧が接続されているように設けられていてもよい。具体的には、義足用板バネ20を側面視したときに、第2部分2は、中心が第2部分2に対して第1部分1側に位置する3つの円弧に沿って設けられている中間部4および後方部5と、中心が第1部分1に対して上記反対方向に位置する1つの円弧に沿って設けられている前方凸部7とで構成されていてもよい。また、図12を参照して、第2部分2は前方凸部7を含み、かつ中間部4および後方部5はそれぞれ曲線部4a,5aと直線部4b,5bとを有していてもよい。この場合、中間部4および後方部5は、それぞれの直線部4b,5bが互いに連なるように設けられていてもよい。この場合、義足用板バネ21を側面視したときに、中心および曲率半径の異なる2つの円弧状に設けられている曲線部4a,5aは、直線部4b,5bを挟んで配置されている。また、図13を参照して、第2部分2は、前方凸部7と、義足用板バネ22を側面視したときに中間部4および後方部5において他の部分よりも第1部分1側に向かって凹んでいる凹部6とを含んでいてもよい。凹部6の側面形状は、中間部4および後方部5に対して第1部分1とは反対側に中心を有する円弧に沿って設けられていてもよい。このようにしても、図10〜図13に示される義足用板バネ19,20,21,22は、上記延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm以上120mm以下でかつ上記延在方向に沿って延びる領域と、先端部3とが交わる部分に、接地点Gが位置している。また、上記垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1は90mm以上である。また、先端部3は曲率半径Rが250mm以上である部分を有している。そのため、図10〜図13に示される義足用板バネ19,20,21,22は、実施の形態1または実施の形態2に係る義足用板バネ10,11と同様の効果を奏することができる。
次に、図14〜図20を参照して、上述した義足用板バネ10および従来の義足用板バネについて、本願発明者が行ったCAE解析結果について説明する。本解析に使用したソフトは、PTC社製「Creo Elements/Pro Mechanica 5.0」である。
実施例に係る試料1として図14(a)に示す義足用板バネを、比較例として図14(b)〜(d)に示す従来の義足用板バネをそれぞれ解析対象とした。なお、図14(a)に示す義足用板バネは、実施の形態1に係る義足用板バネ10と同様の構成を備え、より具体的には図8に示される義足用板バネ17に相当するものである。図14(b)は比較例に係る試料2の義足用板バネの側面図、図14(c)は比較例に係る試料3の義足用板バネの側面図、図14(d)は比較例に係る試料4の義足用板バネの側面図である。
図14(a)〜(d)に示される各義足用板バネから形状モデルを作成した。試料1では、実施の形態1に係る義足用板バネ10に基づいて、第1部分1の延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3を105mmとしかつ当該延在方向に沿って延びる領域と先端部3とが交わる部分に、傾斜角θが−10度のときの接地点Gが位置するように、形状モデルを作成した。また、試料1〜4に係る形状モデルは、いずれも全高Ht(図1参照)を500mm、幅を60mmとした。また、試料1〜4に係る形状モデルは、義足用板バネの厚みW(図1参照)について、いずれも大きく3つの領域を有するものとした。具体的には、第1の領域は、義足用板バネの延在方向においてその外形に沿った距離が前方端部から20mm離れた位置までを含み、義足用板バネの厚みW(図1参照)が4.04mmで一定の領域とした。第2の領域は、義足用板バネの延在方向においてその外形に沿った距離が前方端部から400mm以上離れた位置にある部分であり、義足用板バネの厚みW(図1参照)が9.0mmで一定の領域とした。第3の領域は、義足用板バネの延在方向においてその外形に沿った距離が前方端部から20mm超え400mm未満の位置にある部分であり、義足用板バネの厚みW(図1参照)が4.04mmから9.0mmまで一定の割合で変化している領域とした。
また、試料1の形状モデルは、上記垂直な方向における第1部分1の中心線Cから第2部分2の前方端点3Eまでの距離Lfを245mmとし、上記垂直な方向における第1部分1の中心線Cと後方部5の頂部との距離Lbを60mmとした。また、試料1の形状モデルは、上記垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1を135mmとし、先端部3の曲率半径を600mmとした。
図14(a)に示される試料2の形状モデルは、上記距離Lfが300mm、上記距離Lbが0mmである。図14(b)に示される試料3の形状モデルは、上記距離Lfが250mmであり、上記距離Lbが48mmである。図14(c)に示される試料4の形状モデルは、上記距離Lfが219mmであり、上記距離Lbが51mmである。また、試料2〜4の形状モデルの接地部の曲率半径は、それぞれ202mm、175mm、167mmである。
なお、試料1〜4に係る義足用板バネは、これらの構成材料をFRPとし、積層シェル要素を用いてモデル化した。モデル化において、積層シェル要素の断面情報として各層の厚みを0.11mmとし、繊維の配向角度を45度、積層数を1層とした。また、試料1〜4に係る義足用板バネの材料特性を以下のように定義した。試料1〜4に係る義足用板バネの材料特性はいずれも同等とした。具体的には、第1部分(直線部分)を鉛直方向に沿って配置した状態における水平方向の弾性率E1は、上記第1の領域において9481kgf/mm2、上記第2領域において11244kgf/mm2、上記第3の領域において第1の領域の弾性率および第2領域の弾性率の間を一定割合で変化するモデルとした。また、試料1〜4に係る義足用板バネについて、第1部分(直線部分)を鉛直方向に沿って配置した状態における鉛直方向の弾性率E2はいずれも758kgf/mm2とし、せん断弾性率G12はいずれも410kgf/mm2とした。また、試料1〜4について、ポアソン比はいずれも0.339とした。
図15に示されるように、本CAE解析は、各義足用板バネをその延在方向において複数の領域(39領域)に分割した解析モデルを作成して行った。さらに図16を参照して、試料1〜4の解析モデルは、上述のようにモデル化した義足用板バネ100に対し、その各直線部(第1部分)に当該直線部の延在方向に垂直な方向に延びる剛体30がねじ40により固定されたものとした。剛体30は、義足用板バネ100の当該直線部の延在方向に垂直な方向における長さ(図1における距離L3に相当)が105mmとした。本CAE解析では、義足用板バネ100とねじ40により固定されていない側の剛体30の端部31において、第1部分(直線部分)の端部から上記垂直な方向において105mm離れており、かつ鉛直方向における水平面50からの距離が440mmである点Pを荷重を加える点とした。なお、図16において義足用板バネ100はJ字形状として示しているが、実際に用いた解析モデルは上述した試料1〜4の各形状モデルに基づいている。
図16を参照して、CAE解析における境界条件(荷重条件および拘束条件)について説明する。図16に示される傾き角度Φは、水平面50に対し垂直な線分Dに対し、各試料の解析モデルにおける直線部と平行な線分Eとの成す角度である。CAE解析の境界条件は、図16に示される所定の傾き角度Φが−10度〜+20度の間を10度刻みで変形された状態の各義足用板バネ100に対してそれぞれ以下のように定義した。なお、当該傾き角度は、図16に示されている変形状態のように義足用板バネ100が図16中のy方向に向かって傾いているときをプラスとし、y方向と反対方向に向かって傾いているときをマイナスとしている。つまり、図16に示される傾き角度Φがマイナスの状態とは走行動作における着地時の状態を想定したものであり、図16に示される傾き角度Φがプラスの状態とは走行動作における蹴り出し時の状態を想定したものである。
荷重条件は、水平面50に垂直なz方向に、剛体30の端部31の上記点に対し−200kgfの荷重を印可(言い換えると、水平面50に垂直な方向において上方から下方に向かって端部31の上記点に対し200kgfの荷重を印加)する第1の荷重条件と、水平面50に平行なy方向(第1部分(直線部)から見て先端部が位置する方向)に上記端部31の上記点に対し10kgfの荷重を印可する第2の荷重条件の2条件とした。
拘束条件は、荷重条件を上記第1の荷重条件とするときには、義足用板バネ100を上記傾き角度Φのいずれかを示すように配置した状態において水平面50に接地される部分が固定部60により5自由度(x軸、y軸、z軸に沿った並進方向の3自由度およびy軸、z軸周りの回転方向の2自由度)を完全に拘束され、x軸周りの回転方向の自由度のみをフリーとする条件とした。また、拘束条件は、荷重条件を上記第2の荷重条件とするときには、義足用板バネ100を上記傾き角度Φのいずれかを示すように配置した状態において水平面50に接地される部分が固定部60により6自由度(x軸、y軸、z軸に沿った並進方向の3自由度およびx軸、y軸、z軸周りの回転方向の3自由度)を完全に拘束される条件とした。すなわち、試料1においては、傾き角度Φが−10度であるときに固定部60により固定されている部分は上記接地点G(図1参照)を含んでいる。
図17〜図19にCAE解析結果を示す。図17は、義足用板バネ100に上記第1の荷重条件を与えたときの義足用板バネ100に固定された剛体30の端部31に位置する上記点のy方向の変位量を示す(図16参照)。図17の縦軸は義足用板バネ100に固定された剛体30の端部31に位置する上記点のy方向の変位量(単位:mm)であり、図17の横軸は図16に示される傾き角度Φ(単位:°)である。なお、図17の縦軸においてy方向の変位量がプラスの状態は図16中のy方向に向かって変位している状態であり、y方向の変位量がマイナスの状態は図16中のy方向と反対方向に変位している状態である。図18は、義足用板バネ100に上記第1の荷重条件を与えたときの義足用板バネ100に固定された剛体30の端部31に位置する上記点のz方向の変位量を示す(図16参照)。図18の縦軸は義足用板バネ100に固定された剛体30の端部31に位置する上記点のz方向の変位量(単位:mm)であり、図18の横軸は図16に示される傾き角度Φ(単位:°)である。図19は、義足用板バネ100に上記第2の荷重条件を与えたときの義足用板バネ100に固定された剛体30の端部31に位置する上記点のy方向およびz方向の変位絶対量を示す(図16参照)。上記点のy方向およびz方向の変位絶対量とは、上記点のy方向の変位量の2乗とz方向の変位量の2乗との和の平方根をいう。図19の縦軸は義足用板バネ100に固定された剛体30の端部31に位置する上記点のy方向およびz方向の変位絶対量(単位:mm)であり、図19の横軸は図16に示される傾き角度Φ(単位:°)である。
図17を参照して、上記第1の荷重条件が与えられたときに、試料1では傾き角度Φが−10度のときにy方向の変位量がプラスの状態となった。これに対し、試料2および試料3では、傾き角度Φが−10度のときにy方向の変位量がマイナスの状態となった。これは、図16を参照して、試料2および試料3では、傾き角度Φが−10度のときの接地点がy方向において端部31よりも前方に距離を隔てて配置されているため、接地点に対してy方向とは反対方向(後方)に距離を隔てた位置に荷重が印加される。そのため、試料2および試料3に係る義足用板バネ100に荷重が印加されると、y方向とは反対方向に向かって端部31が変形する。つまり、試料2および試料3では、着地時に義足用板バネに印加される床反力がy方向(前方)に逃げ、着地時に後転(仰向け回転)方向に力を生じさせることが確認された。一方、試料1では、上述のように、傾斜角θが−10度のときの接地点Gが、第1部分1の延在方向に対して垂直な方向における第1部分1からの距離L3が90mm超え120mm以下でかつ当該延在方向に沿って延びる領域と、先端部3とが交わる部分に位置する。そのため、試料1では、傾斜角θが−10度のときの接地点がy方向において端部31よりも前方に配置されている点で試料2〜4と同様であるが、試料2および試料3と比べてy方向における接地点と端部31との距離が短い。そのため、試料1では、着地時に義足用板バネに印加される床反力がy方向(前方)に逃げることが抑制されており、着地時に後転(仰向け回転)方向への力の発生が抑制され得ることが確認された。
図18を参照して、上記第1の荷重条件が与えられたときに、試料1では、傾き角度Φが−10度と0度との間および0度から+20度との間でz方向の変位量の増加量が試料2と比べて大きいことが確認された。試料1は試料2と比べてz方向の剛性が高すぎず、高い衝撃吸収性を有している。
図19を参照して、上記第2の荷重条件が与えられたときに、試料1では傾き角度Φが+20度のときの変位絶対量が傾き角度Φが+10度のときの変位絶対量よりも小さいことが確認された。同様の傾向は、試料3でも確認されたが、試料2および試料4では傾き角度Φが+20度のときの変位絶対量が傾き角度Φが+10度のときの変位絶対量よりも大きかった。つまり、試料2および試料4は、y方向(前方)への傾き角度Φが大きくなるとy方向における剛性が低下していることが確認され、蹴り出し方向への力が小さいと予想された。これに対し、試料1は、y方向(前方)への傾き角度Φが大きくなってもy方向における剛性の低下が抑制されていることが確認され、蹴り出し方向への力が大きいと予想された。図1を参照して、試料1では、上述のように上記垂直な方向における接地点Gと前方端点3Eとの距離L1は135mmであり、たとえば図14に示される試料4での103mmよりも長い。さらに試料1では、上述のように先端部3の曲率半径Rが600mmであり、たとえば図14に示される試料4での200mmよりも大きい。そのため、試料1では、着地時から蹴り出し時までに水平面に接地される部分が試料4よりも大きく、かつ蹴り出し時において水平面に設置されている部分が試料4よりも大きい。そのため、試料1では、試料4と比べてより大きな推進力を得ることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。