JP6404034B2 - 核酸を内封してなる中性又はアニオン性リポソーム及びその製造方法。 - Google Patents

核酸を内封してなる中性又はアニオン性リポソーム及びその製造方法。 Download PDF

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Description

本発明は核酸を内封してなる中性又はアニオン性リポソームに関する。
遺伝子治療を行うために、生体内に特定の核酸を導入する際には、キャリアーとしてリポソームを採用した製剤が使用される。特に、カチオン性リポソームがキャリアーとして多用され、国内外の製薬会社が進めている核酸医薬のほとんどがこれに相当する。このようなカチオン性リポソームは体内に投与されると、免疫応答を惹起して炎症を引き起こす(非特許文献1、2)。
リポソームの形成方法は多岐にわたり、脂質膜水和法、逆相蒸発法、有機溶媒注入法等が存在し、リポソームに核酸を含む様々な物質を導入する方法として、パッシブローディング法、リモートローディング法等の手段がある(非特許文献3、4)。
また、一旦内封させた物質がリポソームから漏出しないようにするために、リポソームの相転移温度を高くする技術も知られている。
そして、リポソームに核酸を内封する際に、カルシウムイオン等を用いる手段も開発されている(非特許文献5)。
AAPS J.7,E61-77(2005). Pharm.Res.19,1599-605(2002). J. Pharm.Sci.19,65-77(1996). Advanced Drug Delivery Reviews,3,267-282(1989). Biochim.Biophys.Acta 1468,239-52(2000).
上述のようなカチオン性リポソームは核酸が有する負電荷と静電相互作用を生じやすいために、製剤化するには好都合ではある。ところが、生体内の細胞やオプソニンをはじめとする血中タンパク質とも非特異的に相互作用を起こしやすいことから、臓器特異的に核酸を送達することは困難である。
また、核酸を有効成分とし、カチオン性リポソームを用いて製剤化しても、核酸はリポソーム表面に結合した状態となり、生体内でのヌクレアーゼ等の酵素によって分解されやすいことも問題である。
そして、カチオン性リポソーム自体、免疫細胞に認識されやすいといった性質を有していることから、生体内に投与しても短時間で排出経路に導かれてしまい、核酸を所定の臓器に送達するといった目的を果たすのは困難である。
更にカチオン性リポソームは細胞毒性を有するため、細胞内に核酸が送達できたとしても斯かる細胞は損傷してしまうか死滅してしまう可能性もある。また、非特許文献2に記載のようにカチオン性リポソームは体内に投与されると、免疫応答を惹起して炎症を引き起こし、副作用となる事も問題である。
一方で非カチオン性リポソームは核酸と静電相互作用しにくいため、斯かるリポソームをキャリアーとして核酸を製剤化する際には、リポソームと核酸をカチオン性の物質を介して複合体化するか、もしくは核酸をリポソーム内に内封する必要がある。前者の場合には核酸がリポソーム表面に曝露された状態となるためヌクレアーゼからの分解を完全に防ぐことができず、また後者の場合は封入率の低さが問題となり、非特許文献1、2に記載されるカチオン性リポソームを用いた核酸の送達技術は、実用化できるレベルに至っていない。また、リモートローディング法にて核酸の内封を試みても、リポソーム製剤としての使用に耐えられる程度の内封量とはならない。
そこで、非特許文献5に記載のように、リモートローディング法にカルシウム塩及びアルコールを採用した変法方法によって核酸を非カチオン性リポソーム内に封入する技術が開発されたが、相転移温度を高く設定したリポソームには一切物質が内包されないという問題点も生じている。
本発明の課題は、核酸を内封する非カチオン性リポソームを提供することである。
本願発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、リポソーム製造方法の一つであるエタノール希釈法に改変を加えることによって、核酸を非カチオン性リポソーム、すなわち中性又はアニオン性リポソームに高効率に内封させることができることを見出した。また、相転移温度の高い非カチオン性リポソームへの核酸の内封にも成功した。
本発明は斯かる知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す広い態様の発明を包含する。
項1 核酸を内封してなる中性又はアニオン性リポソームであって、該核酸の内封量が中性又はアニオン性リポソームの総脂質量100重量部に対して2重量部以上である、リポソーム。
項2 核酸の内封量が、中性又はアニオン性リポソームの総脂質量100重量部に対して15重量部以上である、上記項1に記載のリポソーム。
項3 中性又はアニオン性リポソームの相転移温度が、35℃以上である、上記項1又は上記項2に記載のリポソーム。
項4 中性又はアニオン性リポソームの平均粒子径が、50〜1000nmである、上記項1〜項3の何れか1項に記載のリポソーム。
項5 中性又はアニオン性リポソームのZ電位が、−80〜0mVである、上記項1〜項4の何れか1項に記載のリポソーム。
項6 核酸の塩基長が、20nt以上である、上記項1〜項5の何れか1項に記載のリポソーム。
項7 核酸が、DNA、RNA、又は核酸アナログである、上記項1〜項6の何れか1項に記載のリポソーム。
項8 核酸アナログが、GNA、LNA、PNA、TNA、及びモルホリノからなる群より選択される少なくとも1種である、上記項7に記載のリポソーム。
項9 構成脂質としてホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、及びホスファチジルエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも一つを含む、上記項1〜項8の何れか1項に記載のリポソーム。
項10 構成脂質としてコレステロール類を含む、上記項1〜9の何れか1項に記載のリポソーム。
項11 上記項1〜項10の何れか1項に記載のリポソームが、ポリアルキレングリコールにより表面修飾されてなるリポソーム。
項12 上記項1〜項11の何れか1項に記載のリポソームとバイオナノカプセルを含む複合体。
項13 バイオナノカプセルが、脂質及び自己組織化能を有するタンパク質を含む、上記項12に記載の複合体。
項14 バイオナノカプセルが、組織特異的結合分子を有する、上記項12又は項13に記載の複合体。
項15 自己組織化能を有するタンパク質が、B型肝炎表面抗原タンパク質である、上記項12〜項14の何れか1項に記載の複合体。
項16 上記項1〜項11の何れか1項に記載の中性又はアニオン性リポソーム、又は上記項12〜項14の何れか1項に記載の複合体を含む医薬組成物。
項17 上記項1〜11の何れか1項に記載の核酸を内封してなる中性又はアニオン性リポソームの製造方法であって、
(A)中性又はアニオン性リポソームを構成する脂質
(B)核酸
(C)カルシウム塩、及び
(D)炭素数1〜4の低級アルコール
を含む水又は緩衝液を撹拌する工程を含む、製造方法。
本発明に係るリポソームは、リポソーム製剤とした際に核酸の送達に関して、実用するのに十分な効果を発揮する。
比較試験例1(界面活性剤処理)に示す実験結果を示すアガロース電気泳動の写真像。 比較試験例2(血清処理)に示す実験結果を示すアガロース電気泳動の写真像。 試験例(界面活性剤処理)に示す実験結果を示すアガロース電気泳動の写真像。 試験例(血清処理)に示す実験結果を示すアガロース電気泳動の写真像。
<中性又はアニオン性リポソーム>
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームは、核酸を内封する。内封とは、リポソーム内部に核酸分子の一部さえ存在していればよく、核酸分子全体がリポソーム内部に存在していなくともよい。すなわち、核酸分子がリポソームを構成する脂質二重膜に貫通した態様も、本発明に係る中性又はアニオン性リポソームに包含される。ただし、静電相互作用等によってリポソーム表面において核酸が結合している態様は、本発明に係る中性又はアニオン性リポソームには包含されない。
上述のように核酸がリポソーム内に内封されているかを確認する手段としては、後述する実施例に示すように、リポソームを構成する脂質二重膜を溶解させ得る界面活性剤、ヌクレアーゼ等の核酸分解剤を組み合わせて確認できる。
なお本明細書では、用語「内封」と同義で「内包」との文言を用いることがある。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームに内包される核酸の量は、リポソームを構成するの総脂質量100重量部に対して、2重量部以上である。より好ましくは5重量部以上、さらに好ましくは10重量部以上、さらに好ましくは15重量部以上であり、20重量部以上が最も好ましい。
後述するように、本発明に係る中性又はアニオン性リポソームをDDS等の製剤とした際に、核酸の内封量が上昇するにつれて、投与する単位リポソーム量あたりの核酸による効果が増強されより優れた効果を発揮すると同時に、所要量の核酸を体内に投与する際に必要なリポソームの量、すなわち製剤として投与する量を低減させることが出来るため、リポソーム投与に伴う副作用が軽減される。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームの相転移温度は、特に限定はされないが、通常は35℃程度以上とすればよく、より好ましくは45℃以上、さらに好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上、更に好ましくは65℃以上、更に好ましくは70℃以上であり、75℃以上が最も好ましい。
後述するように、本発明に係る中性又はアニオン性リポソームをDDS等の製剤とした際に、リポソームの相転移温度が上昇するにつれて、生体投与時に体内の温度条件における安定性が増加し、内封した核酸の漏出が低減する事によって生体内での半減期の延長効果が得られる。
また、保存時においてはリポソーム内からの核酸の漏出が長期間にわたって抑制され、生体内投与時においても核酸の漏出が抑制されることから、結果として血中滞留性の面でより優れた効果を発揮する。
リポソームの相転移温度の測定方法は、特に限定はされないが、例えば示差走査熱量測定(DSC)等を用いて測定すればよい。より具体的に、DSCを用いた測定であれば、DSC 204 F1 Phoenix(登録商標;NETZSCH社)又はその同等品を使用し、超純水で希釈したリポソーム溶液に対して、超純水を標準試料とし、室温・常圧下で温度勾配1℃/分等の条件で測定すればよい。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームの平均粒子径は、特に限定はされないが、通常は50〜1000nm程度とすればよい。より好ましくは50〜200nm程度であり、50〜100nm程度が最も好ましい。
平均粒子径が50〜1000nm程度であれば体内の多くの血管を通過できるサイズであるため血管からの全身投与が可能となり、全身の各種組織へ移行できるといった効果を発揮し得る。また、50〜200nm程度であれば細網内皮系等の生体の異物排除機構に認識されにくくなり、血中滞留性が長くなるといった効果を発揮し得る。更に、50〜100nm程度であれば特に血管透過性の増加した腫瘍・炎症組織への移行や蓄積が顕著となり、内封核酸の腫瘍・炎症部位への送達がより効果的となるといった効果を発揮し得る。
リポソームの平均粒子径の測定方法は、特に限定はされないが、例えば動的光散乱法の原理等に基づいた機器を用いて測定し、Z−平均粒子径を算出すればよい。より具体的に、動的光散乱法を用いた測定であれば、Malvern Instruments社のZetasizer Nano ZS又はその同等品を用い、溶媒としてPBS等の緩衝液又は超純水を用い、室温・常圧下の条件で測定し得られた光散乱強度の分布からキュムラント解析によって算出すればよい。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームのZ電位は、特に限定はされないが、通常は−80〜0mV程度とすればよく−80〜−20mV程度が好ましい。
Z電位が−80〜0mV程度であれば生体内に投与した際に非特異的な細胞やその他の生体成分と吸着しにくいため、生体内で長期間安定な状態で保持されるといった効果を発揮し得る。また、−80〜−20mV程度であればリポソーム同士の電荷的な反発によって、保存時の溶液中での分散状態が良好となり、長期間における保存性の向上といった効果を発揮し得る。
リポソームのZ電位の測定方法は、特に限定はされないが、例えばレーザードップラー式電気泳動法の原理等に基づいた機器を用いて測定し、Henryの式によりゼータ電位を算出すればよい。より具体的に、レーザードップラー式電気泳動法の原理を用いた測定であれば、実施例に示すように、Malvern Instruments社のZetasizer Nano ZS又はその同等品を用い、純水中で、室温・常圧下の条件で測定し、算出すればよい。
本発明に係るリポソームに内封される核酸は一本鎖であっても二本鎖であってもよい。また核酸のサイズは、特に限定はされないが通常は20nt程度以上(10bp程度以上)であればよい。なお、上限値として6000以下の核酸となるサイズが好ましい。
上記核酸とは、具体的にはDNA、RNA、核酸アナログ等が挙げられ、特に限定はされない。
核酸アナログは、特に限定はされないが、例えばGNA、LNA、PNA、TNA、モルホリノ等が挙げられる。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームは、その表面がアルキレングリコールによって表面修飾されていてもよい。アルキレングリコールは特に限定はされないが、例えば、エチレングリコール、メチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシドをモノマー単位として重合したポリアルキレングリコール等が挙げられる。
ポリアルキレングリコールはランダム重合体であってもブロック重合体であってもよく、分子量としては通常は1000〜8000程度であればよい。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等が挙げられる。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームとアルキレングリコールの結合態様は特に限定はされないが、リポソームを構成する脂質とアルキレングリコールが化学結合されてなる態様が好ましい。中でも、後述する具体的なリポソームを構成する脂質の中でも親水性基を有する脂質の親水性基とアルキレングリコールが結合していることが好ましい。
なお、斯かる結合はNHSエステルと上記親水性基に含まれるアミド基の結合、マレイイミド基と上記親水性基に含まれるスルフヒドリル基(チオール基)の結合等を介していることが好ましく、更に架橋剤によって結合が強固となるような処理が施されていてもよい。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームは、その内部に水又は緩衝液を含んでいてもよく、これらで満たされていてもよい。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソーム構成脂質は、特に限定はされないが、リン脂質、コレステロール類、脂肪酸等が挙げられる。
リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジン酸、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン、リゾレシチン、これらを常法によって水素添加したもの等の天然リン脂質;ジステアロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジチオピリジン−ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DTP−DPPE)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、エレオステアロイルホスファチジルコリン、エレオステアロイルホスファチジルエタノールアミン、エレオステアロイルホスファチジルセリン等の合成リン脂質;又はこれらの塩等が挙げられる。
これらのリン脂質の中でも、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン等を構成脂質として多く含むリポソームは、そのZ電位が低くなる傾向となり、上述のような中性、アニオン性の性質を発揮しやすくなる。
コレステロール類としては、例えばコレステロール、フィトステロール(シトステロール、スチグマステロール、フコステロール、スピナステロール、ブラシカステロール)、ラノステロール、エルゴステロール、これらの脂肪酸エステル等が挙げられる。このようなコレステロール類を構成脂質として多く含むリポソームは、その相転移温度が上述のように高くなる傾向となる。
脂肪酸としては、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、或いはこれら不飽和脂肪酸を含む脂肪酸混合物等が挙げられる。中でも、側鎖の小さい不飽和脂肪酸を構成脂質として多く含むリポソームは、曲率の関係から粒子径が小さくなる傾向となる。
本発明に係る中性又はアニオン性リポソームの中でも、DPPC、DPPE、DPPG、及びコレステロールを構成脂質として含むリポソームが、そのZ電位及び相転移温度の観点から好ましい。なお、DPPC、DPPE、及びDPPGはその塩であってもよい。
また、上述のように本発明に係るリポソームの表面がアルキレングリコールによって表面修飾される場合、上述の構成脂質として予めポリアルキレングリコールを有する化合物を用いてもよい。
<本発明に係るリポソームの製造方法>
上述の本発明に係る中性又はカチオン性リポソームの製造方法は、
(A)中性又はアニオン性リポソームを構成する脂質
(B)核酸
(C)カルシウム塩、及び
(D)炭素数1〜4の低級アルコール
を含む水又は緩衝液を撹拌する工程を含む。
(A)中性又はアニオン性リポソームを構成する脂質、及び(B)核酸は、<中性又はアニオン性リポソーム>に記載したものと同様とすることができる。
(C)カルシウム塩は、特に限定はされないが、例えば塩化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
(D)炭素数1〜4の低級アルコールは、特に限定はされないが、例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、特に限定はされない。
緩衝液は、特に限定はされないが、通常は医学・生物学的手段にて用いられる中性領域で緩衝能を発揮する緩衝液であればよく、例えばPBS、TBS、HEPES等が挙げられる。
水又は緩衝液中のカルシウム塩の最終濃度は、特に限定はされないが、通常は1〜100mM程度とすればよい。
水又は緩衝液中の炭素数1〜4の低級アルコールの量は、特に限定はされないが、水又は緩衝液に炭素数1〜4の低級アルコールを合わせた全量を100容量部とした際、通常は10〜50容量部程度とすればよい。
水又は緩衝液に、(A)〜(D)の成分を混合する際の順序は、特に限定はされないが、例えば、(D)炭素数1〜4の低級アルコールに(A)中性又はアニオン性リポソームを構成する脂質を混合し、これと共に(C)カルシウム塩及び(B)核酸を水又は緩衝液に混合する手段が挙げられる。
なお、水又は緩衝液への(C)カルシウム塩及び/又は(B)核酸の混合は、(A)中性又はアニオン性リポソームを構成する脂質を混合した(D)炭素数1〜4の低級アルコールの混合の前に予め終了していてもよい。
更に、水又は緩衝液への(A)中性又はアニオン性リポソームを構成する脂質を混合した(D)炭素数1〜4の低級アルコール、(B)核酸、及び(C)カルシウム塩の混合と同時に、撹拌処理を行ってもよい。
撹拌処理は、特に限定はされないが、例えばボルテックスミキサー、マグネティックスターラー等の公知の方法、機器等を用いて行うことができる。
本発明の製造方法には、撹拌工程の後に、透析工程に供して、カルシウム塩又は炭素数1〜4の低級アルコールを除去する工程が含まれていてもよい。
<複合体>
本発明に係る複合体は、上述の本発明に係る中性又はアニオン性リポソームとバイオナノカプセルを含む。
本発明に係る複合体におけるリポソームとバイオナノカプセルの重量比は、特に限定はされないが、通常はリポソーム100重量部に対してバイオナノカプセルが5〜100程度とすることができる。粒子数比では、リポソーム10粒子あたり、バイオナノカプセルが4〜50程度とすればよい。
バイオナノカプセルの構成成分は特に限定はされないが、例えば脂質及び自己組織化能を有するタンパク質を含んでいればよい。
自己組織化能を有するタンパク質は、生体内、特に細胞内で小胞体ルーメン、細胞膜、核膜等の脂質二重膜を巻き込んでウイルス様粒子を形成し得るタンパク質である範囲において特に限定はされないが、例えば、エンベローブを有するウイルスの出芽機能に関連するタンパク質、エンベローブタンパク質、又はこれらの変異体等が挙げられる。
エンベローブを有するウイルスは、特に限定はされないが、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)等のヘパドナウイルス科に属するウイルス;センダイウイルス(HVJ)等のパラミクソウイルス科に属するウイルス;単純ヘルペスウイルス等のヘルペスウイルス科に属するウイルス;インフルエンザウイルス等のオルトミクソウイルス科に属するウイルス;ヒト免疫不全ウイルス等のレトロウイルス科に属するウイルス等が挙げられる。
自己組織化能を有するタンパク質は特に限定はされないが、例えば、HVBの出芽機能に関連するタンパク質であるB型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg)タンパク質;HVJの出芽機能に関連するタンパク質であるFプロテイン、ヘマグルチニンーノイラミニダーゼタンパク質、又はこれらの変異体が挙げられる。中でもHBsAgタンパク質、HBsAgタンパク質の変異体等が好ましい。
上記変異体とは、上述のようなウイルス様粒子を形成し得る作用を発揮する範囲に限りにおいて特に限定はされることはなく、具体的な変異導入数も同様の範囲において特に限定はされないが、通常は変異導入前のアミノ酸配列と85%程度以上、好ましくは90%程度以上、より好ましくは95%程度以上、最も好ましくは99%程度以上の同一性を有する変異体となるような変異導入数とすればよい。
なお、ここでいう変異導入とは、置換、欠失、挿入等を包含する。具体的な変異導入方法は、公知の方法を用いて実施することができ、特に限定はされないが、例えば置換であれば保存的な置換技術を採用すればよい。
用語「保存的な置換技術」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味する。
例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン等といった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることは保存的な置換技術にあたる。その他、アスパラギン酸、グルタミン酸等といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基同士;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン等といった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基同士;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン等といった非極性側鎖を有するアミノ酸残基同士;スレオニン、バリン、イソロイシン等といったβ−分枝側鎖を有するアミノ酸残基同士、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン等といった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に保存的な置換にあたる。
用語「同一性」とは、2以上の対比可能なアミノ酸配列の、お互いに対する同一のアミノ酸配列の程度をいう。アミノ酸配列の同一性のレベルは、例えば、配列分析用ツールであるFASTAを用い、デフォルトパラメータを用いて決定される。これらの解析方法の具体的な手法は公知であり、National Center of Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照すればよい。
HBsAgタンパク質は、特に限定はされないが、例えば特許第4085231号に示すアミノ酸配列を含むタンパク質等が挙げられ、そのHBsAgの変異体とは、例えば特許4085231号に記載の低抗原性粒子に含まれるHBsAg変異体、特開2004−081210号公報に記載のシステイン残基を改変したHBsAgタンパク質、特開2013−021999号公報に記載の大腸菌発現用HBsAgタンパク質等が挙げられる。
上記自己組織化能を有するタンパク質には、組織特異的結合分子が含まれていてもよい。組織特異的結合分子とは、特に限定はされないが、タンパク質、ペプチド、糖鎖等が挙げられる。タンパク質又はペプチドとしては、例えば抗体、レクチン、これらの断片等が挙げられる。
中でも、組織特異的結合分子が抗体である場合、上記自己組織化能を有するタンパク質中に抗体結合ドメインを保持していてもよい。抗体結合ドメインとしては、抗体のFcドメインに結合するドメインであることが好ましい。具体的な抗体結合ドメインは、特に限定はされないが、例えばプロテインAに含まれる抗体結合ドメイン、プロテインGに含まれる抗体結合ドメイン、プロテインLに含まれる抗体結合ドメイン等が挙げられる。
例えば、自己組織化能を有するタンパク質がHBsAgタンパク質であり、プロテインAに含まれる抗体結合ドメインであるZドメインをタンデムで、これをHBsAgタンパク質のN末端に有する態様として、特許第4212921号に記載されたHBsAgタンパク質の変異体が挙げられる。
上述のようなバイオナノカプセルの製造方法は、特に限定されることはなく、公知の方法を採用して得ることができる。具体的には、酵母などの真核細胞に、自己組織化能を有するタンパク質又はその変異体のアミノ酸配列をコードする遺伝子を導入し、斯かる細胞を培養の後細胞内からバイオナノカプセルを精製することができる。精製工程には適当なカラムクロマトグラフィー採用すればよいが、更に、熱処理工程が含まれていると精製効率が上昇するので好ましい。
本発明に係る複合体は、上述の本発明に係る中性又はアニオン性リポソームと上述のバイオナノカプセルとを混合しさえすればよい。混合時の条件は公知の方法を採用すればよいが、例えば特開2012−67040号公報に記載のように、通常、医学・生物学的実験等にて多用される中性領域のpH環境下ではなく、pH5以下又は10以上の環境下で混合することが好ましい。
本発明の中性又はアニオン性リポソームには、上記核酸に代えて又は同時に薬剤も封入することもできる。とは特に限定はされないが、例えば公知の医薬組成物の有効成分であればよく、特にカチオン性を有する有効成分であることが好ましい。
<医薬組成物>
本発明に係る医薬組成物は、上述の中性若しくはアニオン性リポソーム、又は上述の複合体を含む。医薬組成物中の中性又はアニオン性リポソームの含有量は、特に限定はされないが、通常は医薬組成物100重量部あたり、0.001〜100重量部程度とすればよい。すなわち、本発明に係る中性又はアニオン性リポソームそのものを本発明に係る医薬組成物としてもよい。
同様に医薬組成物中の複合体の含有量も、特に限定はされることはなく、通常は医薬組成物100重量部あたり、0.001〜100重量部程度とすればよい。すなわち、本発明に係る複合体そのものを本発明に係る医薬組成物としてもよい。
本発明に係る医薬組成物には、上述の中性若しくはアニオン性リポソーム又は上述の複合体を含むが、中でも中性又はアニオン性リポソームに内包される核酸が有効成分として働く。従って、本発明に斯かる医薬組成物は、核酸が発揮する機能に従って、種々の患者に投与することが可能である。例えば、核酸が肝細胞にて疾患の作用機序として働く遺伝子の発現を抑制する効果を発揮するものであれば、斯かる作用機序によって発症する肝疾患の治療に有用と考えられる。
用語『治療』とは、所望の薬理学的効果及び/又は生理学的効果を得ることを意味する。この効果は、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態、症状等)を、部分的又は完全に治癒することを含む。また、上記効果には、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態、症状等)の進行を阻止又は遅延する効果、病態や症状を緩和する(疾病、症状等の後退、又は進行の逆転を引き起こす)効果、再発を阻止する効果等が含まれる。
また、上記効果には、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態、症状等)の素因を持ち得るが、まだ持っていると診断されていない個体において、疾病及び/又は疾病に起因する悪影響(病態、症状等)が起こることを部分的又は完全に防止する効果が含まれる。従って、『治療』なる用語には、『緩解』、『再発防止』、『予防』等の意味も含まれる。
本発明に係る医薬組成物の投与方法は、投与対象、後述する医薬組成物の剤形等に応じて適宜選択すればよいが、例えば経口投与、筋肉内投与、静脈内投与、動脈内投与、くも膜下腔内投与、皮内投与、腹腔内投与、鼻腔内投与、肺内投与、眼内投与、腟内投与、頸部内投与、直腸内投与、皮下投与等が挙げられる。
本発明に係る医薬組成物の投与量は、上述のように有効成分となる核酸の量に換算し、その効果を発揮し得る範囲において適宜設定すればよい。
本発明に係る医薬組成物の剤形は、特に限定はされないが、例えばDDS製剤、輸液剤、埋め込み注射剤、持続性注射剤等の注射剤;腹膜透析用剤、血液透析用剤等を含む透析用剤;口腔内崩壊錠、チュアブル錠、発泡錠、分散錠、溶解錠等等の錠剤;硬カプセル錠、軟カプセル錠等のカプセル剤;発泡顆粒剤、徐放性顆粒剤、腸溶性顆粒剤等を含む顆粒剤;散剤;エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、リモナーデ剤等の経口液剤;シロップ用剤等のシロップ剤;経口ゼリー剤;トローチ剤、舌下錠、バッカル錠、付着錠、ガム剤等の口腔用錠剤;口腔用スプレー剤;口腔用半固形剤;含嗽剤;吸入粉末剤、吸入液剤、吸入エアゾール剤等の吸入剤;眼軟膏剤等の点眼剤;点耳剤;点鼻粉末剤、点鼻液剤等の点鼻剤;坐剤;直腸用半固形剤;注腸剤;膣錠;膣用坐剤;外用散剤等の外用固形剤;リニメント剤、ローション剤等の外用液剤;外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等のスプレー剤;軟膏剤;クリーム剤;ゲル剤;テープ剤、パップ剤等の貼付剤等が挙げられる。
本発明に係る医薬組成物には、本発明に係る中性又はアニオン性リポソーム又は本発明に係る複合体と共に、これらの効果を損なわない範囲に限り、薬学的に許容可能な公知の担体又は添加物を配合し、公知の方法を採用して上述の剤形とすることができる。
具体的な担体又は添加物は、特に限定はされないが、例えば希釈剤、賦形剤、懸濁剤、潤滑剤、アジュバント、媒体、送達システム、乳化剤、錠剤分解物質、吸収剤、保存剤、界面活性剤、着色剤、香料、甘味料等等が挙げられる。
本発明に係る医薬組成物は、上述のような核酸を内封した中性又はアニオン性リポソーム(非カチオン性リポソーム)を含有する。このような非カチオン性リポソームは、生体内に投与しても、免疫システムに感知され難く、排出経路に導かれない傾向となる。更に、生体内の臓器に非特異的に捕捉されにくい。
以上、本発明に係る医薬組成物は優れた臓器ターゲティング効果を発揮するのでDDS製剤とすることが好ましい。
また、本発明に係る中性又はアニオン性リポソームには有効成分となり得る核酸を内封しているため、生体に投与してもヌクレアーゼ等の酵素からの攻撃に耐えうるため、特定の臓器に有効成分を安全に送達できるといった効果も発揮する。このことからも、本発明に係る医薬組成物はDDS製剤とすることが好ましい。
そして、本発明に係る医薬組成物が複合体を含むものである場合であって、例えばバイオナノカプセルに含まれる自己組織化能を有するタンパク質としてHBsAgタンパク質を含むものである場合、斯かるタンパク質のN末端領域(バイオナノカプセル表層提示領域)に存在するアミノ酸配列による肝細胞認識機能に基づいて、肝臓組織へ有効成分である核酸を安全に、且つ特異的に送達することが可能である。
更に、上述のように自己組織化能を有するタンパク質が組織特異的結合分子を有する場合、斯かる結合分子の働きによって生体内の所望の部位に有効成分である核酸を安全に、且つ特異的に送達することが可能となる。
以上のことからも、本発明に係る医薬組成物には、DDS製剤として特に有効に用いることができる態様の発明も包含する。
以下に本発明をより詳細に説明するための実施例を示す。ただし、本発明が以下に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。
<比較例>
核酸を内封するリポソーム作製の従来法
〔リポソームの調製〕
ナスフラスコ内で以下に示す任意の脂質を所望のモル比で混合し、クロロホルム:メタノール=2:1の混合溶媒に溶解させた。次いでこれを真空減圧して溶媒を除去し、脂質フィルムを形成させた。ここに、超純水又は10mMのTris−HClバッファーを加えてバッファー中にてリポソームを形成させた。得られたリポソームは適宜エクストルーダーを用いて所定の粒子径となるように調製した。
〔核酸の内封〕
内封する核酸として、配列番号1〜4の何れかに示す塩基配列からなるsiRNAを必要に応じて組み合わせて用いた。なお、配列番号1及び2に示す塩基配列からなるsiRNAはホタル由来のルシフェラーゼの遺伝子の発現を抑制することを目的に設計された塩基配列を有するものであり、配列番号3及び4に示す塩基配列からなるsiRNAは、細胞への導入実験時にコントロールとして多用されるスクランブル配列を有するものである。
上述のように調製したリポソームを含む溶液に、重量比でsiRNA:リポソーム=1〜10:100となるようにsiRNAを加えた。また、斯かる溶液に塩化カルシウムを加えた。斯かる溶液をヴォルテックスで撹拌しながら、溶液全体に対する終濃度が40%(v/v)エタノールとなるように添加した。なお、エタノール添加後の塩化カルシウムの濃度は1〜10mM程度であった。
次いで、斯かる溶液をPBSで透析し、エタノールとカルシウムイオンを除いてsiRNAを内封するリポソームを作製した。
(比較製造例1)
下記表1に示す脂質組成(組成比;mol比)及びInput(重量比;siRNA/リポソーム)でsiRNA内封リポソームを製造した。各種測定結果も表1に示す。
表中の内封率(%)は、(リポソームに内封されているsiRNA量)/(未封入siRNAを含む溶液全体に含まれるsiRNA量)×100(%)で算出した。
未封入siRNAを含む溶液全体に含まれるsiRNA量は、Quant―iT(登録商標) RiboGreen RNA Assay Kit(Life Technologies社)を使用し、0.1%のTriton−X100溶液をリポソーム溶液に終濃度16.7%で添加する事でリポソームを破壊し、内封siRNAを漏出させて測定した。また、リポソームに内封されていないsiRNA量は、Triton−X100を使用せずリポソームを破壊しない条件で同様の測定を行った。
また、リポソームに内封されているsiRNA量は、(未封入siRNAを含む溶液全体に含まれるsiRNA量)-(リポソームに内封されていないsiRNA量)より算出した。
表中の対脂質核酸量(核酸はsiRNA;重量%)は、(リポソームに内封されたsiRNA量)/(リポソーム量)×100(%)で算出した。溶液中のリポソーム量は、コレステロールE−テストワコー(和光純薬工業株式会社)、もしくはリン脂質C−テストワコー(和光純薬工業株式会社)によって測定した。
表中の粒子径(Z−average;nm)は、動的光散乱法の原理に基づいた装置であるMalvern Instruments社のZetasizer Nano ZSを用いて測定した。
表中の電荷(Z−potential;mV)は、レーザードップラー式電気泳動法に基づいた装置であるMalvern Instruments社のZetasizer Nano ZSを用いて測定した。なお、測定したリポソームは超純水を溶媒とするものであるため、測定値はマイナス側にシフトする傾向となる。
Figure 0006404034
上述のように、DOPCやこれとDOPEを構成脂質とする中性リポソームへの核酸の内封量は、インプットとして核酸量を増やすほど、内封率及び対脂質核酸量が増えることが明らかとなったが、同時に得られる核酸が内封されたリポソームの粒子径が増大する傾向となることが明らかとなり、インプットを20/100とした場合には、500〜1000nmとなった(データ示さず)。従って、比較例に示す方法にてリポソームに核酸を内封するためのインプットは、10/100が限度であると考えられる。
また、カルシウムイオン及び/又はエタノールが本製法によるリポソームへの核酸の内封が必須であることも明らかとなった(データ示さず。)
(比較試験例1)
得られた核酸内封リポソームをアガロースゲル電気泳動法に供し、リポソーム内に核酸が封じ込められているかどうかを確認する実験を行った。
比較製造例1にて得られた、核酸を内封させた2種の脂質組成からなるリポソームをそのままか、又は1%のTriton X−100で処理して脂質膜の破壊処理を施したサンプル調製し、アガロースゲル電気泳動法に供した。また、コントロールとして、核酸そのもの(上述の配列番号1〜4の何れかに示す塩基配列からなるsiRNA)を用いた。結果を図1に示す。
図1から明らかなように、1%のTriton X−100処理を施すことによって、核酸(siRNA)のバンドが検出された。従って、上述の方法によって得られるリポソームには、核酸が内包されていることが明らかとなった。
(比較試験例2)
比較製造例1にて得られた、核酸を内封させた2種の脂質組成からなるリポソームを上述の(比較試験例1)におけるTriton X−100処理に代えて、血清(FBS)処理に供し、血清中のヌクレアーゼによる核酸の分解に耐えるかどうかを確認する実験を行った。血清処理は、50%FBS中で30分、37℃での処理とした。斯かる処理後のサンプルを(比較試験例1)と同様にアガロースゲル電気移動法に供した。また、コントロールとして、核酸そのもの(封入に用いたsiRNAそのもの)を用いた。結果を図2に示す。
図2に示す結果から、コントロールとして用いた核酸そのものをFBS処理に供した場合、核酸が完全に分解されているのに対して、核酸を封入したリポソームをFBS処理に供しても、分解されにくくなっていることが明らかとなった。以上のことから、(比較製造例1)にて作製した2種類のリポソーム中には、核酸が内封されていることが明らかになった。
(比較製造例2)
上述の比較製造例1と同様の方法で、各種脂質組成のリポソームに核酸を内包させる実験を行った。Inputは、全て重量比でsiRNA/リポソーム=10/100とした。下記表2に表1と同様に脂質組成(組成比はモル比)、対脂質核酸量、粒子径、及び電荷と共に、相転移温度(℃)を示す。なお、相転移温度が高いと、リポソームの性状が硬くなる傾向であることが知られている。なお、siRNAは比較製造例1と同じものを用いた。
Figure 0006404034
表2に示すように、比較製造例1及び2に示す方法では、相転移温度が高く、固い性状を有するリポソームに対して核酸を封入させることは非常に困難であることが明らかとなった。そして、相転移温度が60℃を超えるDPPC:DPPE:DPPG−Na:Chol=15:15:30:40となる脂質組成からなるリポソームに対して、核酸を内封させることすらできなかった。
<実施例>
本発明の核酸を内封するリポソームの製造方法
本発明では、上述の<比較例>にて示す2段階の製造例とは異なる方法で、核酸を内封するリポソームを製造した。
エタノール中で任意の脂質を所望のモル比で混合した。ここに、上述のsiRNAを脂質との質量比が、siRNA:脂質=10:100又は20:100となるように、超純水又はバッファーと共にヴォルテックスで撹拌しながら混合し、溶液全体に対するエタノールの量が、40%(v/v)となるように調製した。なお、エタノールへの各種成分の添加後の塩化カルシウムの濃度は1〜10mM程度であった。
次いで、斯かる溶液をPBSで透析し、エタノールとカルシウムイオンを除いてsiRNAを内封するリポソームを作製した。
<製造例1>
下記表3に示す脂質組成(組成比はmol比)及びInput(重量比;siRNA/リポソーム)でsiRNA内封リポソームを製造した。各種測定結果も表3に示す。
表中の内封率、対脂質核酸量、及び粒子径は、上記(比較製造例1)の表1にて説明したとおりである。
Figure 0006404034
上述のように、DOPCやこれとDOPEを構成脂質とする中性リポソームへの核酸の内封量は、インプットとして核酸量を増やすほど、内封率及び対脂質核酸量が増えることが明らかとなった。
上記表3に示すDPPC/DPPE/DPPG−Na/Chol(15/15/30/40)の核酸(siRNA)を内封する非カチオン性リポソームを、比較実験例1及び2と同様の処理に供し、核酸がリポソーム内に内封されているかどうかを確認する実験を行った。図3に比較実験例1と同様に、界面活性剤処理に供した実験結果、図4に血清処理に供した実験結果を示す。
図3及び4から明らかなように、界面活性剤処理に供した実験結果から核酸が分解されることは無く、、血清処理に供しても核酸が分解されることはなかったことから、DPPC/DPPE/DPPG−Na/Chol内には確かに核酸が内封されていることが明らかとなった。

Claims (14)

  1. 核酸を内封してなる中性又はアニオン性リポソームであって、該核酸の内封量が中性又はアニオン性リポソームの総脂質量100重量部に対して2重量部以上である、リポソームであって、前記中性又はアニオン性リポソームの相転移温度が、35℃以上である、リポソーム
  2. 核酸の内封量が、中性又はアニオン性リポソームの総脂質量100重量部に対して15重量部以上である、請求項1に記載のリポソーム。
  3. 中性又はアニオン性リポソームの平均粒子径が、50〜1000nmである、請求項1又は2に記載のリポソーム。
  4. 中性又はアニオン性リポソームのZ電位が、−80〜0mVである、請求項1〜の何れか1項に記載のリポソーム。
  5. 核酸の塩基長が、20nt以上である、請求項1〜の何れか1項に記載のリポソーム。
  6. 核酸が、DNA、RNA、又は核酸アナログである、請求項1〜の何れか1項に記載のリポソーム。
  7. 核酸アナログが、GNA、LNA、PNA、TNA、及びモルホリノからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項に記載のリポソーム。
  8. 請求項1〜の何れか1項に記載のリポソームが、ポリアルキレングリコールにより表面修飾されてなるリポソーム。
  9. 請求項1〜の何れか1項に記載のリポソーム及びバイオナノカプセルを含む複合体。
  10. バイオナノカプセルが、脂質及び自己組織化能を有するタンパク質を含む、請求項に記載の複合体。
  11. バイオナノカプセルが、組織特異的結合分子を有する、請求項又は10に記載の複合体。
  12. 自己組織化能を有するタンパク質が、B型肝炎表面抗原タンパク質である、請求項11の何れか1項に記載の複合体。
  13. 請求項1〜の何れか1項に記載の中性又はアニオン性リポソーム、又は請求項12の何れか1項に記載の複合体を含む医薬組成物。
  14. 請求項1〜の何れか1項に記載の核酸を内封してなる中性又はアニオン性リポソームの製造方法であって、
    (A)中性又はアニオン性リポソームを構成する脂質
    (B)核酸
    (C)カルシウム塩、及び
    (D)炭素数1〜4の低級アルコール
    を含む水又は緩衝液
    同時に撹拌する工程を含む、製造方法。
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