JP6403150B2 - 廃棄物埋設処分場及び廃棄物処理システム - Google Patents
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Description
ところがゴムシートの破損により有害汚染物質を含む浸出水が地下に浸透し、地下水汚染、土壌汚染、下流公共用水域の汚染を引き起こす事例が跡を絶たない。一方、浸出水処理においては、想定される水質項目に応じて処理プロセスを設計し適切な処理が行われるように運転管理がなされているものの、廃棄物の種類、降雨の状況、埋め立て地の経年変化により浸出水中の汚染物質の種類や濃度が変化し、適正な処理が困難となるケースもある。
廃棄物処分場において、陽イオン及び陰イオンを吸着固定化する場合には、2種類のイオン吸着材(陽イオン吸着材、陰イオン吸着材)を同時に使用して、それらを土質遮蔽層等の廃棄物処分場の吸着層に対して混合する必要がある。
陽イオンの吸着材として、例えば特許文献2にはゼオライト系吸着材が開示されており、陰イオンの吸着材として、例えば特許文献3にはハイドロタルサイト様化合物からなる吸着材が開示されている。
しかしながら、土質遮蔽層等の吸着層と、2種類のイオン吸着材を均一に混合することは極めて困難であり、陽イオンと陰イオンの吸着効果に偏りが生じ、期待された効果が得られないことが多い。
しかしながら、当該イオン吸着材は、陽イオン吸着のためのカルシウム化合物と陰イオン吸着のためのアルミニウム化合物を混合し、焼成して合成されている。そのため、混合段階での成分の不均質化が起こりやすく、均質な性能のイオン吸着材を得ることが困難である。
また、吸着した物質を資源として有効利用する場合、特定の条件下において吸着物質を容易に脱離させる必要がある。特許文献4のイオン吸着材は、強酸性とすること吸着物質の脱離すること自体は可能であるが、同時に吸着材の吸着作用も損なわれるため、イオン吸着材を再利用することができないという問題がある。
かかる状況下、本発明の目的は、廃棄物に含まれる有害イオンとして、陽イオン、陰イオンのいずれが含まれている場合であっても、好適に有害イオンを吸着・固定化し、地盤内に拡散させないことが可能な廃棄物埋設処分場を提供することである。また、本発明の他の目的は、前記廃棄物埋設処分場から排出される浸出水に含まれる残存有害イオンを放流基準以下の水質にする廃棄物処理システムを提供することである。
地内中間覆土層により吸着されずに浸出した有害イオンは、処分場底部に移動したのち、集水管によって集水されて排水され、後段の処理施設で処理される。
そのため、前記廃棄物に含まれる有害イオンが、(1)実質的に陽イオンのみである場合、(2)実質的に陰イオンのみである場合、(3)陽イオンと陰イオンの両方を含有する場合のいずれであっても、本発明の廃棄物埋設処分場にて埋設処分が可能である。この中でも、陽イオンと陰イオンの両方を含有する廃棄物が好適な処理対象である。
また、本発明の廃棄物埋設処分場では、廃棄物に含まれる有害イオンが、陽イオン、陰イオンのいずれか(あるいは両方)であるかの事前検査を必ずしも必要としないという利点もある。
本発明の廃棄物埋設処分場が、このような集水管を有することにより、廃棄物埋設処分場の底部まで浸透した汚染水(浸出水)を集水管に集水する際に確実にイオン吸着材に接触するため、地内中間覆土層に含まれるイオン吸着材で捕集できなかった有害イオンが、イオン吸着層に含有されるイオン吸着材で捕集される。
上記有孔集水配管の周囲に設けられるイオン吸着層は、前記陽イオン吸着性及び陰イオン吸着性の両方を有するイオン吸着材のみから形成されていてもよいが、イオン吸着材以外に、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、補強剤としてセメントが挙げられる。なお、上記有孔集水配管に周囲に設けられるイオン吸着層は、必ずしも有孔集水配管の全面に設けられり必要はなく、例えば、有孔集水配管の上部周囲のみ、または有孔集水配管の下部周囲のみに設けてもよい。
浸出水調整池と浸出水処理施設における残存有害イオンの吸着処理により、前記廃棄物埋設処分場から排出される浸出水に含まれる残存有害イオンを、確実に放流基準以下の水質にすることができる。
また、本発明の廃棄物処理システムによれば、最終的に処分場の浸出水中に残った有害イオンを確実に放流基準以下の水質にすることができる。
以下、廃棄物処理システム100を構成する設備について詳細に説明する。
図2は本実施形態の廃棄物埋設処分場10の構成を示す概略断面図である。
図2に示す廃棄物埋設処分場は、自然の谷部や地面を掘削して形成した地盤1の上に、土質遮蔽層2を設け、その上に遮水シート4a、保護シート4b、上部保護層4cを積層した凹部分を有し、この凹部分に廃棄物5が投棄される。地内中間覆土層3は、所定量の廃棄物5を凹部分に廃棄したのちその上に積層させて形成される。地内中間覆土層3の上に、さらに廃棄物5が投棄され、最終的に土砂6により埋設される。
地内中間覆土層3には、本発明のイオン吸着材が10重量%以上混合されることが好ましく、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上(100重量%含む)である。
地内中間覆土層3を構成するイオン吸着材以外の成分については、イオン吸着材のイオン吸着性を阻害することがなく、かつ、適度な透水性を有する限り限定はなく、例えば、土砂、シラス、軽石等が挙げられる。
なお、浸出水が地盤1へ浸透するリスクをより小さくするために、土質遮蔽層2の下にさらに遮水シートを設けてもよい。
底部遮水構造を構成する遮水シート4aとして、例えば、ゴムシートが用いられる。また、保護シート4bとして、例えば、不職布や粘土の複合シートなどが用いられる。また、上部保護層4cとして、例えば、不職布などが用いられる。
図3に示すように割栗石層7bによって粗大物が除去された浸出水Wは、有孔集水配管7aの細孔から内部に入り、後段の浸出水調整池20に供される。有孔集水配管7aは配管底部においても細孔を有するため、浸出水Wは、配管の外側下半分に接触して設けられた底部集水管根巻き材7cにも接触する。なお、「底部集水管根巻き材」とは、集水管の底部に設けられたイオン吸着層を意味する。
本実施形態の底部集水管根巻き材7cは、上記本発明のイオン吸着材を含むため、廃棄物埋設処分場の底部まで浸透し、集水管7に集水された浸出水は確実にイオン吸着材に接触する。その結果、地内中間覆土層3に含まれるイオン吸着材で捕集できなかった有害イオンが、底部集水管根巻き材7cに含有されるイオン吸着材で捕集され、後段の浸出水調整池20に供される浸出水W中の有害イオン濃度がより低減する。
例えば、遮水シート4a、保護シート4b、上部保護層4cからなる底部遮水構造を省略してもよい。また、地内中間覆土層3を処理場底部に設置してもよい。
また、上記実施の形態では地内中間覆土層3は1層のみであるが、地内中間覆土層が、投棄される廃棄物をサンドイッチ状に挟み込むように複数層設けられている構造であると、より確実に投棄される廃棄物から溶出する有害イオンで汚染された浸出水に含まれる有害イオンを有効に吸着し、固定化することができる。その具体例として、図4に2層の地内中間覆土層3を有する廃棄物埋設処分場を示す。
なお、地内中間覆土層3を複数層設ける場合の地内中間覆土層3の層数や厚みは、廃棄物の種類や量から予測される溶出される有害イオン量を考慮して、適宜決定すればよい。
浸出水調整池20は、集水管7により集められた浸出水Wを一定時間貯留することで、後段の浸出水処理施設30により処理する浸出水Wの流量を調整するものである。
本実施形態の浸出水調整池20は、図5に示すように浸出水Wを濾過するための砂ろ過層21と、砂ろ過層21の下部に設けられたイオン吸着材層22を有する。この構成により、集水管7により集められた浸出水Wは砂ろ過層21で粗大物が除去されたのちに、イオン吸着材層22により残存有害イオンが吸着される。
以下、本発明に係るゼオライトをハイドロタルサイト様化合物で複合化した構造を有し、陽イオン吸着性及び陰イオン吸着性の両方を有するイオン吸着材について詳細に説明する。上述のように当該イオン吸着材を「本発明のイオン吸着材」と称す。
また、このイオン交換反応は可逆性があるため、酸性もしくはアルカリ条件下で吸着物質の脱離が容易であり、吸着材の繰り返し利用が可能となる。更に、脱離された吸着物質のうち有害な物質は廃棄されるものの、有価資源は適正な処理をした後、再利用をすることが可能である。そのため、本発明のイオン吸着材を用いることにより、処理対象の浄化だけでなく資源回収も行うことができる。
以下、本発明のイオン吸着材の構成成分について詳細に説明する。
ゼオライトは、結晶中に0.4nm〜2nm程度の微細孔を持つ結晶性アルミノケイ酸塩の総称であり、Si−O四面体とAl−O四面体とが頂点のO原子を共有した三次元ネットワーク構造をもつ複合酸化物であり、その内部に含まれる交換性の陽イオン(Na+やK+)とイオン交換することで、除去対象の陽イオンが吸着除去される。
なお、後述する本発明の製造方法にて説明する合成ゼオライトは、本発明のイオン吸着材におけるゼオライトとして好適である。
本発明において、ハイドロタルサイト様化合物は、下記一般式(I)で表される化合物を意味する。
[M2+ 1-xM3+ x(OH)2][An- x/n・mH2O]・・・・・・・(I)
また、[An- x/n・mH2O]におけるmは0以上の数値であり、脱水状態によって大きく変化する。
ハイドロタルサイト様化合物はシートの積み重なり方によって、菱面体晶系と六方晶系のポリタイプがあり、本発明のイオン吸着材ではいずれでもよい。
本発明のイオン吸着材において、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物の割合は、それぞれが均質な組成物を形成できる範囲であればよく、使用目的に応じて選択すればよい。例えば、処理対象における、陽イオン含有量が多い場合はゼオライトの割合を大きくし、陰イオン含有量が多い場合はハイドロタルサイト様化合物の割合を多くすればよい。
本発明のイオン吸着材に含まれるゼオライトの重量割合は、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物の合計を100重量%として、通常、0.01〜99.9重量%であり、好適には10〜90重量%であり、より好適には30〜70重量%である。
本発明のイオン吸着材の除去対象イオンは、特に限定されないが、例えばCd2+、Pb2+、Cs+、NH4 +等の陽イオン、CrO4 2-、B(OH)4 -、F-、PO4 3-等の陰イオンが挙げられる。
本発明のイオン吸着材は、再現性よく製造できる点で、以下に説明する製造方法(以下、「本発明のイオン吸着材の製造方法」又は単に「本発明の製造方法」と称す。)で製造されることが好適である。
本発明のイオン吸着材の製造方法は、下記工程を有することを特徴とする。
工程(1):
ゼオライト及びアルカリ溶液を含有する原料(A)を調製する工程
工程(2):
2価金属(M2+)を含む可溶性塩及び3価金属(M3+)を含む可溶性塩を、水を主体とする溶媒に溶解し、ハイドロタルサイト様化合物の前駆体を含有する原料(B)を調製する工程
工程(3):
前記原料(A)と前記原料(B)とを接触させて、ゼオライト及びハイドロタルサイト様化合物を含むスラリーを得る工程
工程(1)は、ゼオライトとアルカリ溶液を含有する原料(A)を調製する工程である。
ゼオライトの物性等は、本発明の上述のイオン吸着材にて説明した通りであるため、説明を省略する。
原料(A)におけるゼオライトとアルカリ溶液の割合は、本発明のイオン吸着材におけるゼオライトとハイドロタルサイト様化合物の比率を考慮し、かつ、工程(3)において原料(A)と原料(B)とが、短時間に均等にできる範囲で決定される。
ここで、原料(A)の調整方法として、シリカ源、アルミナ源、塩基性塩を含む溶液を加熱処理してゼオライトを合成することによって原料(A)を調製すると、ゼオライトの分散性の高くなることに加え、合成時に使用した塩基性塩によりアルカリ性となるため、別途塩基性塩を添加する必要がないという利点がある。
具体的には、ゼオライト合成に好ましく用いられるシリカ源として、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩等が挙げられる。また、シリカガラスをシリカ源として使用してもよい。アルミナ源として、例えば、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。塩基性塩として、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物が挙げられる。
混合順序も反応や沈殿物が発生するなど特段の問題がない限り任意であり、原料(A)の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め配合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
工程(2)は、ハイドロタルサイト様化合物の前駆体として、2価金属(M2+)を含む可溶性塩及び3価金属(M3+)を含む可溶性塩を、水を主体とする溶媒に溶解した原料(B)を調製する工程である。
原料(B)を調整するときの温度は、通常は室温であるが、性能を損なわない範囲で、室温以下に冷却したり、30〜70℃程度に加温してもよい。
混合順序も反応や沈殿物が発生するなど特段の問題がない限り任意であり、原料(B)の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め配合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
工程(3)は、工程(1)及び工程(2)で調製した、原料(A)と原料(B)とを接触させて、ゼオライト及びハイドロタルサイト様化合物が複合化したイオン吸着材を含むスラリーを得る工程である。
工程(3)では、原料(B)に含まれるハイドロタルサイト様化合物の前駆体は、pH6.0以上となることによって、ハイドロタルサイト様化合物を形成する。
本発明の製造方法の特徴は、そのアルカリ源として原料(A)を用いることにあり、ゼオライトを含む原料(A)と原料(B)との接触により、ゼオライト存在下でハイドロタルサイト様化合物が合成されるので、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物とが均一に結合し、複合化したイオン吸着材を得ることができる。
工程(3)で得られるスラリーには、本発明のイオン吸着材が含まれる。スラリーをこのまま用いることもできるが、
本発明の製造方法では、さらに、工程(4)として、工程(3)で得られたイオン吸着材を含むスラリーへ炭酸塩、硝酸塩及び硫酸塩から選ばれる1種の化合物を溶解させた溶液(C)を添加する、又は当該スラリーを固液分離して得られたイオン吸着材を溶液(C)に添加することにより、イオン吸着材に含まれる交換性陰イオンを置換させる工程を有していてもよい。
例えば、原料に塩化物を使用した場合、層間陰イオンとしてCl-が入った、Cl型ハイドロタルサイト様化合物が合成されるが、用途に応じて、炭酸イオン(CO3 2-)、硫酸イオン(SO4 2-)、硝酸イオン(NO3 -)等に置換してもよい。
工程(3)で得られるスラリーには、本発明のイオン吸着材が含まれる。スラリーをこのまま用いることもできるが、通常、脱水工程により、溶媒を除去して用いられる。脱水方法は公知の方法を用いて行えばよく、例えば、濾過、遠心分離、加圧脱水、減圧脱水等による固液分離方法が挙げられる。
また、脱水工程の前段に、洗浄工程により不純物を除去してもよい。また、より不純物を除去するために、洗浄と脱水を2回以上繰り返し行ってもよい。洗浄に用いる溶媒は水であることが好ましく、より好ましくは純水および/またはイオン交換水である。
乾燥方法については、特に限定されず、公知の熱風乾燥、真空乾燥等を使用することができる。また、乾燥時の雰囲気は特に限定されるものではないが、通常、大気雰囲気である。減圧雰囲気中で行うこともできる。
乾燥温度は、イオン吸着材の物性が変化して、イオン吸着性が低下しない範囲で選択され、通常、100℃以下である。
「原料」
・塩化マグネシウム六水和物(WAKO)
・塩化アルミニウム六水和物(WAKO)
・水酸化ナトリウム(WAKO)
・炭酸ナトリウム(WAKO)
・蒸留水(WAKO)
・発泡ガラス(粒径30〜100μm)
・アルミン酸ナトリウム(朝日化学工業株式会社)
工程(1):原料(A)の調整
原料(A)としてのゼオライト含有アルカリ溶液は、以下の手順で調整した。
まず、シリカ源として粒径30〜100μmの発泡ガラス1000gを使用し、該発泡ガラスに対し、アルカリ源の水酸化ナトリウム2300gを混合し、常圧85〜95℃で、8時間加熱して発泡ガラスの溶解液(ガラス溶解液)を得た。次いで、ガラス溶解液に対してアルミナ源のアルミン酸ナトリウム3100gを混合し、攪拌しながら常圧85〜95℃で、8時間加熱してゼオライトを合成し、ゼオライトとアルカリ溶液を含有する溶液である原料(A)を得た。
原料(A)中のゼオライト濃度は、10〜12重量%、pHは14であった。
2価金属(M2+)を含む可溶性塩である塩化マグネシウム六水和物17.31g、3価金属(M3+)を含む可溶性塩である塩化アルミニウム六水和物10.30gを蒸留水27.61gに添加して溶解させることで、ハイドロタルサイト様化合物の前駆体を含有する原料(B)を得た。
原料(B)55.22gに対し、原料(A)55.22gを添加し、撹拌して十分に混合した後、3倍希釈用に蒸留水331.32gを添加し、混合してスラリーを得た。得られたスラリーをろ過により固液分離して得た固形分を100℃、10時間乾燥することで、試験例1のイオン吸着材を得た。表1に使用した原料及び溶媒(水)の重量をまとめて示す。
なお、原料(A)55.22gにはゼオライト成分6.64mg、原料(B)55.22gにはハイドロタルサイト様化合物成分が10mg含まれる。そのため、得られたイオン吸着材中のゼオライトの割合は、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物の合計を100重量%として、40重量%である。
試験例1と同様の原料(A)と原料(B)を使用した。
原料(B)55.22gに対し、原料(A)110.44gを添加し、撹拌して十分に混合した後、3倍希釈用に蒸留水496.98gを添加し、混合してスラリーを得た。得られたスラリーをろ過により固液分離して得た固形分を100℃、10時間乾燥することで、試験例2のイオン吸着材を得た。表1に使用した原料及び溶媒(水)の重量をまとめて示す。
なお、原料(A)110.44gにはゼオライト成分13.3mg、原料(B)55.22gにはハイドロタルサイト様化合物成分が10mg含まれる。そのため、得られたイオン吸着材中のゼオライトの割合は、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物の合計を100重量%として、57重量%である。
試験例1と同様の原料(A)と原料(B)を使用した。
原料(B)55.22gに対し、原料(A)165.66gを添加し、撹拌して十分に混合した後、3倍希釈用に蒸留水662.64gを添加し、混合してスラリーを得た。得られたスラリーをろ過により固液分離して得た固形分を100℃、10時間乾燥することで、試験例3のイオン吸着材を得た。表1に使用した原料及び溶媒(水)の重量をまとめて示す。
なお、原料(A)165.66gにはゼオライト成分19.9mg、原料(B)55.22gにはハイドロタルサイト様化合物成分が10mg含まれる。そのため、得られたイオン吸着材中のゼオライトの割合は、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物の合計を100重量%として、67重量%である。
試験例1と同様の原料(A)と原料(B)を使用した。
原料(B)55.22gに対し、原料(A)94.76gを添加し、撹拌して十分に混合した後、3倍希釈用に蒸留水449.89gを添加し、混合してスラリーを得た。得られたスラリーをろ過により固液分離して得た固形分を100℃、10時間乾燥することで、試験例4のイオン吸着材を得た。表1に使用した原料及び溶媒(水)の重量をまとめて示す。
なお、原料(A)94.76gにはゼオライト成分11.4mg、原料(B)55.22gにはハイドロタルサイト様化合物成分が10mg含まれる。そのため、得られたイオン吸着材中のゼオライトの割合は、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物の合計を100重量%として、53重量%である。
まず、試験例1と同様の原料(A)55.22gを、遠心分離機(4000rpm、8分)で固液分離し、固形分(ゼオライト)を分離した。分離した固形分に対し、蒸留水200gを加え、遠心分離機で固液分離を行った。この操作を3回繰り返した後に、固形分を00℃、10時間乾燥することで、参考用試料1のゼオライトを得た。
まず、試験例1と同様の原料(B)を使用し、原料(B)55.22gに対し、18.5重量%水酸化ナトリウム溶液55.22gを添加し、撹拌して十分に混合した後、3倍希釈用に蒸留水331.32gを添加し、混合してスラリーを得た。得られたスラリーをろ過により固液分離して得た固形分を100℃、10時間乾燥することで、参考用試料2のハイドロタルサイト様化合物を得た。
試験例1〜4のスラリー及び参考用試料のハイドロタルサイト様化合物を含むスラリーのpHをpHメーター(東亜DKK株式会社、型番:HM−30P)で測定した。結果を表2にまとめて示す。なお、これらの結果は、試験例1はアルカリ分不足、試験例2及び試験例4は参考用試料2とほぼ同程度のアルカリ量、試験例3はアルカリ分過剰ということを示している。
試験例1〜3のイオン吸着材、参考用試料1(ゼオライト)及び参考用試料2(ハイドロタルサイト様化合物)について、X線回折法による評価を行った。X線回折装置には、株式会社リガク製、型番:MiniFlexを使用した。
図7に参考用試料1(ゼオライト)、図2に参考用試料2(ハイドロタルサイト様化合物)、図9〜11に試験例1〜3のイオン吸着材のXRD分析の結果を示す。
図9に示すように試験例1では、ゼオライト由来のシグナルは明確に観察されたが、ハイドロタルサイト様化合物由来のシグナルが観察されなかった。
図10、図11に示すように、試験例2,3では、ゼオライト由来のシグナルとハイドロタルサイト様化合物由来のシグナルが混在していた。この結果は、ゼオライト合成時に発生するアルカリ溶液である原料(A)を適量、原料(B)に添加することにより、ハイドロタルサイト様化合物とゼオライトが複合化したイオン吸着材が合成可能であることを示している。
吸着材として、試験例2,3のイオン吸着材、参考用試料1(ゼオライト)及び参考用試料2(ハイドロタルサイト様化合物)を用いて、イオン吸着除去試験を行った。
試験溶液A:
フッ化ナトリウムを用いて、フッ素イオン濃度を100mg/L調整した溶液
試験溶液B:
臭化カリウムを用いて、カリウムイオン濃度を100mg/L、臭化物イオン濃度を200mg/Lで調整した溶液
試験例4のイオン吸着材を用いてリン酸およびアンモニアの飽和吸着量の評価を行った。まず、リン酸およびアンモニアに対する試験例4のイオン吸着材の吸着等温線を作成し、この吸着等温線に基づいて、リン酸とアンモニアの理論的な飽和吸着量を求めた。また、比較として、参考用試料1(ゼオライト)及び参考用試料2(ハイドロタルサイト様化合物)についてもリン酸およびアンモニアに対する吸着等温線を作成し、リン酸とアンモニアの理論的な飽和吸着量を求めた。結果を表5に示す。なお、表5において、試験例4のイオン吸着材の飽和吸着量は、イオン吸着材に含まれるゼオライト成分1gあたりのアンモニア吸着量、ハイドロタルサイト様化合物成分1gあたりのリン酸吸着量に換算した値を示している。
すなわち、試験例4のイオン吸着材では、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物とが複合化して、陽イオン及び陰イオンの両方の吸着量が増加するシナジー効果が得られたことが示されたといえる。
図12にゼオライト(参考用試料1)、図13にハイドロタルサイト様化合物(参考用試料2)、図14に及び試験例4のイオン吸着材のSEM像をそれぞれ示す。
図12に示されるように、参考用試料1のゼオライトは、〜数μm程度の大きさの結晶であることがわかる。また、図13に示されるように参考用試料2のハイドロタルサイト様化合物は、ゼオライトと比較してより微粒の粒子が集合した構造であった。
図14に示すように試験例4のイオン吸着材は、ゼオライトの結晶をハイドロタルサイト様化合物が被覆して、ゼオライトをハイドロタルサイト様化合物で複合化した構造を有していることがわかる。また、試験例4のイオン吸着材におけるゼオライトやハイドロタルサイト様化合物は、図12及び図13に示す単体の状態よりも分散された状態になっている。そのため、吸着対象の陽イオン、陰イオンを含む液相との接触面積が増加し、ゼオライト単体やハイドロタルサイト様化合物単体の場合と比較して吸着効率が向上したものと考えられる。
ミクロキスチンは湖沼などに発生するアオコの一部である藍藻類から放出される有毒性の化合物である。
本試験ではミクロキスチン-LR標準品を用いて、ミクロキスチン-LR濃度を0.1mg/Lに調製した100mLの水溶液へ1.0gの試験例4のイオン吸着材およびハイドロタルサイト様化合物(参考用試料2)を添加して吸着試験を行った。結果を図15に示す。
雑多に陽・陰イオンを含む最終処分場の浸出水を模した人工廃水を調製し、そこへ試験例4のイオン吸着材を浸して各種イオンの除去率を求めた。
また、試験例4のイオン吸着材の他に、ゼオライト(参考用試料1)、ハイドロタルサイト様化合物(参考用試料2)も添加して、除去率を比較した。表6に人工廃水の組成を示す。
試験例4のイオン吸着材及び単体のゼオライト(参考用試料1)のCdイオン、Pbイオンの吸着量を評価した結果を表7に示す。
このことから、試験例4のイオン吸着材中のゼオライト成分は、ハイドロタルサイト様化合物成分と複合化したことにより、陽イオンの吸着量が増加する効果が得られているといえる。
試験例4のイオン吸着材及び単体のハイドロタルサイト様化合物(参考用試料2)のCrイオン、Asイオンの吸着量、Fイオン、Pイオン、Bイオンの吸着量、硝酸イオン吸着量、を評価した結果を、それぞれ表8、表9および表10に示す。
ここで、1gの試験例4のイオン吸着材には0.47gのハイドロタルサイト様化合物成分が含まれていることを考慮すると、1gの試験例4のイオン吸着材を吸着試験に用いたならば、試験例4のイオン吸着材のイオン吸着量はハイドロタルサイト様化合物1gを用いた場合の半分程度になるはずである。
しかし、前述した様に試験例4のイオン吸着材の方が単体のハイドロタルサイト様化合物よりも吸着量が多くなった。
このことから、試験例4のイオン吸着材中のハイドロタルサイト様化合物成分は、ゼオライト成分と複合化したことにより、陰イオンの吸着量が増加する効果が得られているといえる。
塩化セシウムを溶解させて1〜50mg/Lの濃度に調整した5種類の水溶液(1L)へ、試験例4のイオン吸着材(10g)を添加して吸着試験を行った。
吸着平衡後、平衡濃度Ceを測定し、初期濃度との差から試験例4のイオン吸着材中のゼオライト成分あたりのCs吸着量qe_Zeを求め、Ceとqe_Zeから等温吸着線を作成した。図16に試験例4のイオン吸着材と単体のゼオライトの等温吸着線を示す。
また、得られた等温吸着線から、フロイントリッヒの吸着式に基づき、求められた傾きを図16中に併せて示す。この傾き分配係数といい、値が大きいほど低濃度条件下でも高い吸着能を有していることを意味する。
2 土質遮蔽層
3 地内中間覆土層
4a 遮水シート
4b 保護シート
4c 上部保護層
5 廃棄物
6 土砂
7 集水管
7a 有孔集水配管
7b 割栗石層
7c 底部集水管根巻き材(イオン吸着層)
10 廃棄物埋設処分場
20 浸出水調整池
21 砂ろ過層
22 イオン吸着材層
30 浸出水処理施設
100 廃棄物処理システム
W 浸出水
Claims (7)
- 有害イオンを含有する廃棄物を投棄し、埋め立て処分するための廃棄物埋設処分場であって、
地盤上に設けられた吸着材を含有する粘土質の土質遮蔽層と、前記土質遮蔽層上に設けられ、吸着材を含有する地内中間覆土層と、埋め立てられた廃棄物の底部に溜まる浸出水を排出するための集水管と、を有し、
前記吸着材が、ゼオライトをハイドロタルサイト様化合物で複合化した構造を有し、陽イオン吸着性及び陰イオン吸着性の両方を有するイオン吸着材であり、
前記地内中間覆土層は透水性を有することを特徴とする廃棄物埋設処分場。 - 前記廃棄物が、有害イオンとして陽イオン及び陰イオンの両方を含有する請求項1に記載の廃棄物埋設処分場。
- 前記陽イオン吸着性及び陰イオン吸着性の両方を有するイオン吸着材に含まれるゼオライトの割合が、ゼオライトとハイドロタルサイト様化合物の合計を100重量%として、10〜90重量%である請求項1または2に記載の廃棄物埋設処分場。
- 前記地内中間覆土層が、投棄される廃棄物をサンドイッチ状に挟み込むように複数層設けられている請求項1から3のいずれかに記載の廃棄物埋設処分場。
- 前記集水管が、有孔集水配管と、当該有孔集水配管の周囲に前記陽イオン吸着性及び陰イオン吸着性の両方を有するイオン吸着材を含有するイオン吸着層を有する集水管である請求項1から4のいずれかに記載の廃棄物埋設処分場。
- 請求項1から5のいずれかに記載の廃棄物埋設処分場と、前記集水管で集水され、当該廃棄物埋設処分場から排出される浸出水を一時貯留する浸出水調整池と、浸出水調整池から排出される排水にふくまれる残存有害イオンを吸着材で吸着処理する浸出水処理施設と、を備えることを特徴とする廃棄物処理システム。
- 前記浸出水調整池及び浸出水処理施設のいずれか又は両方において、前記陽イオン吸着性及び陰イオン吸着性の両方を有するイオン吸着材によって残存有害イオンの吸着除去を行う請求項6に記載の廃棄物処理システム。
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