以下では、本出願の実施形態について図に関して記載される。これらの実施形態の基本的な構成概念を理解し易くするために、有色ミラー(chromatic mirror)の一般的な実施形態についてまず図1に関して論じ、次に、このような有色ミラーを使用するいくつかの応用例及びシステムを提示し、その後、このような有色ミラーを流通させる、又は取り扱うことができる形でそれぞれの製品になるような有色ミラーを製造する例を提示する。その後で、別の有色ミラー即ち有色パネルを、これを使用する実現可能な応用例及びシステムと共に提示する。
図1は、一実施形態による、有色ミラーを示す。有色ミラーは、符号10を用いて示すものとし、ミラー面(mirroring surface)12と、ミラー面12の前の拡散層(diffusing layer)14とを備える。ミラー10のミラー側が向く方向は、符合15で示される。
図1は、有色ミラー10の概略図としてのみ扱われるべきものであり、したがって、図1では有色ミラー10が平らなパネル形状として示されているが、ミラー面12は、図1に示された平面構成の代わりに、例えば、凹面成形等非平坦に形作ることができることに留意されるべきである。同様に、図1ではミラー面12が平坦な加工物、即ち、層16の、拡散層14に面する主面として示されており、加工物、即ち、層16が層14の横周縁を越えて横方向に延びているが、この構成概念は説明の目的のためにのみ選ばれており、図1の実施形態を制限するものと解釈されなくてよい。同様な記述がまた、図1に示された厚さに関しても当てはまる。更に、以下の実施形態で示されるように、ミラー面12は、例えば、コーティング、フィルム、又はパネルによって形成することができ、層14と16は、図2に示されるように互いに直接接触することができ、又は、1個もしくは複数の層をその間に置くことができる。例えば、ミラー面12は、コーティング又はフィルムによって加工物、即ち、層16の上に形成することができ、拡散層14は、ミラー面16の上に直接、又は、1個もしくは複数の別の層を介して堆積したフィルム又はコーティングとすることができる。その場合でも、有色ミラー10は、図1に示された多層構成要素として形成することができ、又は、加工物、即ち、層16は、ミラー面12が形成される外面上の、容積の大きい構造物又は物体として形成することもできる。以下で概説する実施形態からも明らかになるように、有色ミラー10は剛直にも、伸張性があるようにも、柔軟にもすることができる。反射部材16、ミラー面12を形成する拡散層14に向く面、拡散層14又は何らかの、ミラー面12と拡散層14の間に置かれた、もしくは拡散層14のもう一方の面、即ちミラー面12から外向きの拡散層14の主面18に置かれた他の層等の、有色ミラー10のいずれの構成要素も支持部材としての機能を果たすことができる。その場合、この支持部材は有色ミラー10に剛性、伸張性、柔軟性を加えることができる。ミラー面12が実際にどんな形状であろうと、拡散層14は、ミラー面12の形状と実質的に一致する層であり、また上述のように、ミラー面12の横方向延長部分全体にわたって実質的に均一な厚さを有することができる。
さしあたり、拡散層14が前に置かれているミラー面12の複合作用及び機能についてここで説明するが、ミラー10を実施及び実現する可能性についての具体的な記述については後述する。
拡散層14は、当たる光20の短波長成分を、当たる光20の長波長成分に対し優先的に散乱させるように構築される。言い換えると、層14は、当たる光20の長波長成分を、当たる光20の短波長成分と比べて高い確率で散乱させずに通過させる。更に別の言い方をすると、拡散層14は、可視光スペクトル内で長波長から短波長に向けて大きくなる、当たる光20に対する散乱断面を有する。この増加は単調増加であり得る。散乱光の伝わり方は、例えば、実質的に等方性とすることができ、即ち全方向に等しい強度、又は散乱光の方向に対する散乱光強度の弱い依存関係を特徴とし、即ち散乱光は拡散する。結局、これは、図1の符号24で示された、拡散層14の中に通じる光路の部分22の中で拡散層14との何らの散乱相互作用もなくミラー面12で正反射する光20の一部が、可視領域内にあるスペクトルの大部分の中心が長波長の方にシフトしている点で、当たる光20のスペクトルとは異なるスペクトルを有することを意味する。有色ミラー10によって正反射した光24以外に、当たる光20の別の部分は、前述した拡散層14によって散乱され、拡散して拡散層14を出る、即ち方向15が指し示す半球に向かう全方向に沿って実質的に一定の輝度になる、又は、少なくとも、正反射の方向のまわりの少なくとも30°、好ましくは45°、最も好ましくは60°の半値半幅(HWHM)開口の円錐内で3倍を超えて変化しない輝度になる。前述した拡散反射光のスペクトルに関する限り、拡散反射光は、前述の散乱断面であれば、入射光20のスペクトルのスペクトル重み付けに実質的に対応し、又は、言い換えると、散乱拡散光のスペクトルは、入射光20と正反射光24の各スペクトル間の違いに実質的に対応する。
概説したミラー10の挙動の結論として、ミラー10から、その照明の結果として図1の24で示される方向等の特定の方向に放出される光は、1)ミラー10にその反射角で当たり、ミラー10で方向24に正反射した光、即ち、光20と、2)あらゆる方向からミラー10に当たる光による散乱過程によって生じ、偶然に方向24に散乱している拡散光との重ね合わせ又は合計になる、即ち、ミラー10に当たるすべての光が、ミラー10に光が当たる方向にかかわらず、後の方の拡散光に寄与する、ということは注意するだけの価値がある。
図1に関して概説した有色ミラーは、例えば、図2に示されたフレームワーク内で使用することができ、図はまたその端に、有色ミラー10と有色ミラー10を照明するための照明器26との組合せを含む実施形態によるシステムを示す。照明器26は、例えば白色光源である。図2による照明器26は光をミラー10に放出する、即ち放つ。図2で、照明器26から放出された光の光円錐は、ミラー10の延長部分を完全に覆い実質的に合致するように例示的に示されている。即ち、ミラー10が延びる平面における光円錐28の断面積は、例えば、ミラー10の面積の3倍未満とすることができる。更に、照明器26はミラー10を斜めに照明する。即ち、ミラー10は、平坦な形状であるとして例示的に示されており、ミラー10の平面への照明器26の投射は、例えばミラー10の面積の平方根の50%を超えるだけ、ミラー10の中央までオフセットされる。
この構成で、図2は、照明器26に対して反射角においてミラー10を見たときに得られるこの状況を示す。この目的のために、図2は、ミラー10を基準にして照明器26に対する反射角に位置している目又はカメラ13を示す。カメラ/目30(例えば、イメージセンサ又は網膜)に生じる画像が図2に符号32で示されており、ミラー10の輪郭34が見え、また、この輪郭を取り囲んで、ミラー10を取り囲み円錐28で照らされるものと例示的に仮定されている壁の部分26が見られる。ミラー10の中に、スポット38が見え、これは、照明器26から放出された光の正反射した光部分から生じ、照明器26の白色光と比較して暖かい光(低いCCT)を有する。スポット38は、スポット38のCCT(相関色温度)と比較して(また照明器26の光のCCTと比較して)高いCCTの光の均一領域40によって取り囲まれている。取り囲む光40は主として、拡散層14の中の拡散によって生成された拡散光に由来し、この拡散する散乱の依存性は、光38に対しCCTが増大する原因になる。取り囲む光景領域40の光は、例えば青みがかっている。しかし、この光には、照明器26から出力される光と比較していくらか別の角度でミラー10に当たり、ミラー14で正反射された光が重なり合う。このような光は、例えば、部屋の中の別の物体に由来することもあり、この別の光が複数の経路に沿って、例えば照明器26を通り越して進む。例えば、図2は、カメラ30からこの物体42の虚像が見えるように配置された照明器26の近くに置かれた物体42を示す。図2に示されるように、物体42は、例えば、照明器26によって直接照らされない。しかし、必然的に、図2には示されていない他の壁等の別の物体での光反射により、物体42は、光がミラー10に当たるようにし得る。後の方の光は、照明器26による照明に応答する拡散層14によって生成された拡散光の均一性を乱し得る。しかし、好ましくは、拡散光は、物体42が観察者30には見えないように、又は少なくとも観察者の注意がこの物体に引かれないように、物体42からの正反射光を圧倒する。例えば、観察者30が観察者の目を指すと想定し、また観察者が目を、ミラー10の中に見える空−太陽のような光景により、無限遠を見るようにすると想定する。その場合、拡散光が重なり合うせいで、観察者は物体42を「見る」ことがなく、自分があたかも、窓をのぞいて太陽のようなスポット38を取り囲む青みがかった光40を見るかのような感じを、無限奥行きの感じを覚えると共に保持するということが起こり得る。興味深いことに、照明器26もまた、観察者30と同じ部屋の中にある。
上記を要約すると、図2は、図1による有色ミラー10が、有色ミラー10を照明するための照明器、即ち、光源26と一緒に、照明用システムを形成するように組み合わされ得ることを示す。システム10は、例えば、建物の内部の部屋を照明するためのシステムとすることができる。その場合、ミラーは、例えば、図3に説明的に描かれているように、部屋48の壁又は天井46に固定することができる。図2に関してすでに述べたように、照明器26は、同じ部屋の中に、又は部屋の壁、天井46又は床に配置することができる。
照明器26に関する限り、照明器は、照明器26の、何もしなければ発散してしまう生成した光を集束させるための光集束器を、ミラー10を照明するように次にミラー10に向けられる光円錐28を形成するために備えることができることに留意されたい。照明器26によるミラー10の均一な照明を実現するためにいくつかの方策を講じることができ、例として、複合放物集光器(CPS)、光ビームホモジナイザ(フライアイ、タンデムアレイ等)の使用、ならびに、ミラーの形状に合致する光スポットの形成を行うための、例えば長方形又は楕円形の使用がある。
上記では言及していないが、拡散層14は、好ましくは、光を吸収しない、又は実質的に吸収しないように構成できる。その場合、照明器26によって生じた光のすべてが照明のために一定に保たれる。更に、前述していないが、拡散層は、レイリー(Rayleigh)領域、又はそれに類する領域で拡散層が光を散乱させるような波長依存性を散乱断面に有し得る。その場合、空もまたレイリー領域の光を大部分散乱させるので、概説した太陽−空の見かけ効果が増大する。しかし、太陽−空の見かけは、照明器26に対して反射角でミラー10を見ている観察者が無限奥行きの感じを得ることに高い確率で寄与し、そのため観察者の目が、図2の符号42等の照明器26以外の、ミラー10の近辺の物体から生じる空のような領域40の縁部に引き付けられにくくなる。
即ち、観察者30は、ある反射視野角からミラーを見るときには、ミラー10によって形成された窓を通して自分があたかも空40を見ているような感じを、空40で取り囲まれた太陽38をこの窓を通して同時に見ながら得ることができる。ある非反射視野角からミラーを見るときには、観察者には光40だけが見え、そのため観察者は、ミラー10によって形成された窓を通して自分があたかも空を見ているような感じを、その窓を通して太陽を見ることなく得られることに留意されたい。
好ましくは、ミラー面12と拡散層14の複合作用により、波長が450nmの青色光に対し、10%を超える、より好ましくは20%を超える、更に好ましくは30%を超える、反射におけるヘイズを生成する。「反射におけるヘイズ」とは、拡散層14による散乱によってもたらされる光、即ち散乱拡散光のうちの上記で概説した部分を指す。言い換えると、ミラー面12と拡散層14の複合作用は、波長が650nmの赤色光に対し、波長が450nmの青色光の大きくても2分の1の小さい、反射におけるヘイズを複合作用が生じさせるように設定することができる。上記で概説したように、これは拡散層14の散乱断面のスペクトル依存性による。
図2に関して概説した実施形態では、無限遠に照明器26の虚像を見る観察者に得られる概説した無限奥行きの感じは、照明器26が実際にはミラー10まで有限の距離に配置されていることによって妨げられる。例えば、目の両眼輻輳等の光学キュー、照明器26の視差、及び観察者の目の例えば照明器26の構造的細部に対する遠近調節が、観察者30がこの無限奥行きの感じを持つことを妨げ得る。この問題を緩和するために、図4は、前に示した実施形態とは異なり、ミラー10のミラー面は、凹面放物形状を有する等凹面に成形できることを示す。特に、図4は図2の実施形態をこの点について修正しており、したがって、結局のところ、有色ミラー10で正反射される照明器26からの光が平行化されるように、また光円錐28がその正反射された部分に関する限り平行光流50又は低発散光流50になるように、照明器26が例えば有色ミラーの焦点に位置している照明用システムになる。ミラー10に対して照明器26が斜めになっていることは、維持されると共に、例えば有色ミラー10が、頂点さえ含まない回転放物面の一部等の回転放物面の軸外れ区域として、光源26を焦点又はその近くに維持しながら形成されるということになる。その際、正反射光線の平行ビームは、軸上配置の場合のようにビーム路中に光源がなくても得ることができる。しかし、特定の用途では、軸上構成もまた使用することができる。
図4に関し上記で概説したようにしてミラー10のミラー面を形成することが、ミラー10の方向にのぞき、ミラー10を介して照明器26を見ている、即ち太陽38及び空40を見る観察者が、概説した無限奥行きの感じを得ると共に、あたかも自分が、無限遠において空のような雰囲気40に囲まれた低CCTの明るい物体38、例えば太陽を見たように感じる可能性が増すことに寄与する。この理由は、ミラー0を通して見える照明器26の虚像がここでは実際に無限遠にあり、そのため両眼キューならびに適応キューが空−太陽の見かけにぴったり合い、無限遠奥行きの感じから起こり得る注意をそらすものが、周囲の空領域40と共に観察者の視野に映される物体の可視縁部からのみ生じ得るからである。
有色ミラー10が十分に幅広に作られるならば好ましいと言える。例えば、ミラー面は、その焦点距離がミラー面12の面積の平方根よりも小さくなるように、更にはミラー面の面積の前述した平方根の1.5分の1よりも小さくなるように構築することができる。
以下で更に説明する実施形態から明らかになるように、図4のミラー10の凹面形状が回転対称を有すること、又は回転対称面の一部であること、即ち、すべての並進方向に対して等しい焦点距離を有することは不要である。むしろ、ミラー10は、放物凹面円筒形ミラーのように形成すること、又は、1個の横方向又は並進方向(以下y方向と呼ぶ)に沿って別の凹面形状を有することができ、また平坦又は平面とすること、即ち、別の直交する横方向又は並進方向(以下x方向と呼ぶ)に沿って無限焦点距離を有することができる。以下で明らかになるように、円筒形ミラーが照明器26の光線をx方向に直交する平面内でしか平行にできないにもかかわらず、観察者から無限の距離に照明器を知覚することを保証する解決策が存在する。
このような構成が図5Aに関して示されている。図5Aはミラー10を示し、そのミラー面12は、x方向に直角の平面に、即ちzy面への投影内に凹面又は放物形状を有し、x軸に沿って直線形状即ちまっすぐになっている。言い換えると、前記円筒形ミラー面は、zy面にある凹曲線又は放物曲線をx方向に沿って並進させることによって得られる。したがって、ミラー10は、焦線がx軸に平行に延びている凹面円筒形ミラーとして示される。直線照明器26は、ある程度完全にミラー10を照明するために、ミラー10の焦線に、x軸と平行に位置している。率直に言えば、図5A〜5Dは、例えば、照明器26の光の正反射部分によって直接照明される部屋の部分が、図5Aに示された長方形52等の細長い形状を有する、図4のシステムの修正形態を表している。zy面に関する限り、図5Aにおける状況は、図4に関して概説したものと全く同じである。即ち、照明器26から放出された光は発散するが、照明器26からミラー10に当たる光の正反射部分に少なくとも関する限り、まっすぐな光方向に沿ってミラー10によって平行化される。
より具体的には、基礎光学から、正反射光部分L
Rの輝度角プロファイルは、角度θ
yに対する依存関係に関する限り、下記の式を満たすことができ、この式は、任意の位置x,yについて有効であり、また、輝度L
R(x,y,θ
x,θ
y)が最大輝度値の10%よりも大きいxz面θ
xの任意の角度方向について有効であることになる。要約すると、上の式はただ単に、照明用システムが、幅W
yのランバート発光体の場合で、光をyz面に、光学限界から好ましくはわずか3、より好ましくは2、更に好ましくは1.5の精度で平行にするように配置されることを言っている。
・Wyは、y軸に沿った照明器26の幅であり、
・fは、zy面におけるミラー曲率に対するミラー10の焦点距離であり、θ
yは、まっすぐな光方向、即ちzを基準にしたzy面内の方向の角度であり、
・qは品質因子であり、理想システムで値d=1を有し、ここでは、好ましくは1≦d≦3、より好ましくは1≦d≦2、更に好ましくは1≦d≦1.5を満たすと仮定されている。
しかし、xz面に関する限り状況が異なる。この面内で、照明器26から放出され、ミラー10で正反射される光は、照明器26に由来する発散を保持する。したがって、図5Aに示される照明器26は特に、1)xz面で示す発散が非常に小さくなるように構成される。より正確には、z軸を基準にしたzx面の方向の角度としてθ
xを与えると、照明器26は輝度角プロファイルL(θ
x)を生成するように構成されて、直交方向に反射輝度の幅L
R(θ
y)に合致する幅が得られる。前記輝度角プロファイルのFWHMに関して、構成概念は次の式になり、ここで、その式は任意の位置x,yについて、また、輝度輝度L(x,y,θ
x,θ
y)が最大輝度値の10%よりも大きいyz面内の任意の角度方向θ
yについて有効である。
この結果を得るために、xz面内の照明器発散は、照明器幅W
y、ミラー10焦点距離f、及び品質因子qの実際の値に応じて調整しなければならない。それ以外に、輝度プロファイルは、2)x座標に対する依存関係に関する限り、実質的に独立している、即ち均一でなければならず、即ち、軸xに沿った任意の対の異なる点に対し、例えば次の式でなければならない。
しかし、均一性は単に、観察者の目の角度解像度に対応する細かさで、即ち、例えば10mm2の2個の異なる領域内のxにわたる輝度の任意の積分について満たすことができるにすぎない。どのようにしてこれを実現できるかについて、図6A及び図6Bに関して後で説明する。しかし、この前に、第1に、ミラー10の円筒形状に対処するための図5Aの照明器26の輝度プロファイルに関連する特別な考えについてより詳細に説明し、第2に、図5Aのシステムによって生成される照明の機能性及び見かけについて説明しなければならない。
直線照明器26は、その輝度プロファイルL(x,y,θx,θy)を特徴とし、この輝度は、ある面から所与の方向に出るビーム中の、単位立体角当たり、その方向から見たときの単位投影表面積当たりの光束として定義され(ASTM、E284−09a、Standard Terminology of Appearance)、θx,θyは、それぞれzx面及びzy面で測定される方向である。これに関して、直線照明器26は、x座標に実質的に依存しない、即ちx方向に沿って均一である輝度を有するように構成され、この輝度は、前記輝度が一般にθyに弱く依存する一方で、θxに対するその依存関係に関して狭いピークを示すという意味で、角度依存性に関しては通常は等方性ではない(何か例外的な場合では等方性になり得る)。例えば、前記輝度角プロファイルは、図5Bに概略的に描かれているように、θ,L(θy)に対する依存関係に関して、60°より大きい、好ましくは90°より大きい、最も好ましくは120°より大きいFWHM(半値半幅)を有し、また、θx,L(θx)に対する依存関係に関して45°より小さい、好ましくは30°より小さい、最も好ましくは15°より小さいFWHMを有する。
簡単に想像すると、観察者は照明器26を直接見ていた(即ち、図5Aでミラーの視点から下方に)。即ち、観察者は、直線照明器26の前の、照明器からある距離例えば1mのところに位置して、方向θ
x=θ
y=0°から直線照明器26の中心を直接見ているのであろう。この状況では、観察者は、開口角△θ
yで明るいスポットを見ることになり、この開口角は、y方向に、照明器の角度幅によって制限され(例えば、所与の1mの距離で約5cmの照明器の幅では△θ
y=3°)、また、直線照明器がx方向にかなり長い(例えば数m)と仮定して、x方向にL(θ
x)のFWHM輝度角プロファイル、例えば、次の式によって制限される。
言い換えると、光源をそれがオンのときに直接見ている観察者は、典型的な観察距離ではx方向に強く引き伸ばされている、光った領域又は輝度スポットを知覚することができる。例えば、観察者は、光源の光った領域を角度△θ
x=10°以下で知覚することができる。光源を直接見る観察者から見た直線照明器26及び光った領域の見かけの一例が図5Cに示されている。以下では、直線照明器は、光源を見ている観察者によって光った領域だけが知覚されるように構成されていると仮定される。
図5Dは、円筒形放物面有色ミラー10の反射を介して前記照明器26を見る観察者が見た、即ち正反射光ビームの中に位置する観察者が見た、直線照明器26及びその光った領域の見かけを示す。直線照明器26が放物面ミラー10の焦線に位置していることにより、直線照明器の像がy方向に沿って拡大され得る。より正確には、観察者が光った領域を見る角度幅△θy´は、図5Cに関して説明したように、観察者−光源距離にもはや依存せず、y方向の光源の幅、及び放物面ミラーの焦点距離のみに依存する。例えば、約30cmの焦点距離では、理想的な状態で、観察者が光った領域を約5cm幅直線照明器に対し、角度△θy´〜10°で知覚することになる。対照的に、観察者が直交zx面で光った領域を知覚する場合の角度幅は、ミラーがzx面に無限焦点距離を有するので、円筒形放物面有色ミラー10が存在することによっては修正されず、したがって、△θx´=△θx=10°になる。これは、任意の観測所−光源距離で、また所与のy方向の光源幅及び光源輝度プロファイルで、実質的に等方性の条件、又は光源の光った領域の少なくとも細長くない見かけの条件、即ち、条件△θx´=△θy´が、放物面ミラー焦点距離を適切に選択することによって満たされ得ることを意味する。したがって、本発明は、x方向に任意に長くなり得る照明デバイスを有して、y及びx方向に沿って幅が等しい太陽像の見かけを生じさせることができるようにする。
円筒形放物面有色ミラー10の反射を介して直線照明器26を見ている観察者が、光った領域又は光源、即ち光ったスポットを実質上無限の距離において知覚することは注意するだけの価値がある。実際、yz面の光線分布に関連した知覚に関しては、光源が焦点位置にあることが、無限遠の光源仮想位置を知覚することを自動的に保証する。直交するxz面の光線分布に関連した感覚に関しては、本出願の発明者らは、観察者が光ったスポットを同様に無限の距離において知覚することに注目した。この根拠は、選択された有色光源プロファイルによって、具体的には前記輝度がx座標に依存しない、即ちそれがx方向に沿って均一であることによって得られる。結果として、観察者の目キュー、例えば、両眼視差、移動体視差、及び遠近調節キューは、観察者が自分の目を照明器が位置する物理面に収束又は調節するための何らの支持物も見出さず、この作用は、直交面で知覚される光ったスポットの虚像によって支持された、無限遠での目の輻輳/遠近調節と対立している。加えて、有色放物ミラー10によって散乱した光、例えばレイリー領域で散乱した光の寄与によって作り出される均一な、青色の明るい光背景が存在することは、いわゆる「アエレル(aerel)感覚」キュー、即ち、観察者からの物体の距離が、青みがかったヘイズの増加と共に増加すると知覚される目キューにより、観察者が自分の視覚を無限遠に合わせることに寄与し、この青みがかったヘイズは通常、物体と観察者の間に介在する、物体−観察者距離に比例する量の空気によるものである。
要約すると、上述のすべての要素、即ち、yz面の焦点収束能力、照明器の異方性角輝度プロファイル、前記角度プロファイルのx方向の均一性、有色ミラー10が円筒形放物面形状を有し、直線照明器26がミラー焦線に位置すること、最後に、当たる短波長の光を散乱させる有色ミラー10の能力は、無限遠の距離に青空及び明るい太陽スポットの見かけを作り出すことに同時に寄与し、生じる空の窓のx方向に沿ったサイズは、複数の回転対称ミラーから別々に、任意に大きく作ることができ、これらのミラーでは、生じる空のサイズは、いくつかの焦点距離よりも大きくすることができない。
したがって、図5Aのシステムは、例えば部屋の天井に取り付けて、床の長方形領域52を、照明器26で生成された光のうち正反射した低発散直接光部分によって照明することができる一方で、部屋の他の部分もまた、ミラー10の拡散層内での散乱によって生じた拡散光によって照明される。図4に関して説明したように、部屋を直接照明することもできる、即ちミラー10に向けられないいかなる光も、任意選択で、光阻止器又は集光器によって阻止することができ、この光阻止器又は集光器は、ミラー10に向けられない、即ち下方に向かう照明器26のいかなる光も阻止して部屋を直接照明しないようにミラー10に対して照明器26の別の側に配置された凹面成形円筒として、符号54を用いて図5Aに概略的に示されている。
図5Aは、上記の効果を保証する構成を示す。概略的に示されたカメラ又は観察者の目30によって、図5Aは、観察者がミラー10を、自分の目30に照明器26の正反射光が直接当たるように、しかし観察者の目30がzx面からオフセットされるように、即ち目は、直接照らされる部分52へのミラー10の投映の下にあるが、その一部分で、領域52への照明器26の投映からオフセットされるようにして観察者がミラー10見るときの、図5Aの照明システムの見かけを示す。即ち、x及びy座標に関する限り、明るいディスク38が動く、即ち直接光の方向に垂直な面が、観察者の目30と共に、後者と同じ速度で、太陽が、窓を通して見たときに窓のフレームに対して動くように動く。即ち、観察者は、例えば、ミラー10及び照明器26がある天井を領域52の中に立って見上げることになる。ミラー10の細長い形状により、観察者は、細長い、青みがかった、即ちより高いCCTの背景光部分40を見ることになり、この背景光部分の中に、伸長方向に沿って、光阻止器54の背面が破線部分56で示されたように見える。しかし、観察者のすぐ上に(直接光の方向、ここではzに平行、即ち角度θy及びθxにおいて)、観察者は、低発散正反射光から生じる明るいより低いCCTスポット38を見、x軸に沿った低発散は、前述した照明器26の特殊な設計から起きるが、y軸に沿った低発散は、ミラー10の凹形/放物面形状から起きる。
要約すると、図5Aで、照明器26及び有色ミラー10は、伸長軸xに沿って引き伸ばされて形成され、ミラー10は、伸長軸xに垂直な面に凹面に成形され、照明器26は、照明器26から見たときに、第1の角度θyに対する輝度プロファイルの依存関係に関する限り、ミラー10の角度幅ほどに大きい、更にはそれよりも大きいFWHMを有する等、相違する、即ち広い輝度プロファイルを有し、更に、xに対する輝度プロファイルの依存関係に関する限り実質的に均一な、また、θxに対する輝度プロファイルの依存関係に関する限り、θyに関するFWHMの3分の1未満のFWHMを有する等、実質的に平行な、即ち狭い輝度プロファイルを有する。θxに関するFWHMは、a×2×tan−1(1/2・Wy/f)からb×2×tan−1(1/2・Wy/f)の範囲内とすることができ、両方含めて、例えば、好ましくはa=0.5及びb=6、又はより好ましくはa=0.7及びb=3、又は、更に好ましくは、a=0.8及びb=1.5である。
図6A及び図6Bは、図5に示す照明器26の構築物の例を示す。図6Aは、伸長方向即ちx軸に沿って照明器26の小部分を示す。詳細には、図6Aの照明器26は、異方性発光体58とCPC反射器60の対からなる直線アレイを備え、各異方性発光体58は、例えば、長方形白色光LED等のLEDを含み、例えば、長方形CPC(複合放物面集光器(compound parabolic concentrator))反射器等の各CPC反射器60は、それぞれの対のLEDと光学的に結合されると共に、その下流に配置され、即ち、LEDの発光面と合致する入力開口を有する。各CPC反射器60は、一方が他方に面する2個の第1の放物面反射ファセット62を含み、これらは、xz面におけるLED発散を低減させるように、例えば、発散を例えば10°以下にまで低減させるように設計されている曲率を有する。各CPC反射器60は任意選択で更に、一方が他方に面する2個の第2の放物面反射ファセット64を含み、これらは、yz面におけるLED発散を低減させるように、例えば、発散を例えば90°まで低減させるように設計されている曲率を有する。
したがって、図6Aによれば、照明器26は、個別発光体58の一次元アレイからなる細長い線状光源58を含み、これら個別発光体は、x軸に沿って一直線に配置され、例えば光をミラー10に向けて異方的に放出する。各発光体58の下流に、x軸に垂直な発光体の発散を低減させるCPC反射器60が配置される。各CPC反射器60は、発光体58からの光を受けるための、発光体に面する入力開口と、入力開口を介してその発光体58から受けた、かつそれぞれのCPC反射器60の中にその反射性内面62及び64によって案内された光を放出して、ミラー10のそれぞれの部分を照明するための出力開口とを含む。好ましくは、すべてのCPC反射器60の出力開口は、ミラー10に面するCPC反射器60の連続面を形成するように、互いに継ぎ目なしに隣接する。
各CPC反射器60は、入力開口から出力開口に向かって連続して広がる断面を有する。x軸に平行な広がりは、放物面又は同様の、光が集中する広がりに対応する。特に、各CPC反射器60は、4つの内部反射ファセット62及び64、即ち、x軸に平行に延びる、互いに向かい合う2個のファセット64と、対向して配置され互いに向かい合う2個のファセット62とを含むことができ、ファセット62は、x軸に垂直な面内の完全に平坦な延長部に対して、出力開口から入力開口に向かう方向に、例えば放物線の形で互いに曲げられ、その結果、各CPC反射器60は、反射ファセット62の凹形又は放物面形状により、xz面において、光の発散性を低発散に至るまで低減させることになり、この低発散性は、前述したミラー10によってzy面内に得られる低発散性に合致する。ファセット64の凹形又は放物面の曲率、又はその存在すらも、単なる任意選択であり、即ち、使用するのをやめることもできる。
図6Bは、例えば、前記第2の放物面ファセット64が平坦な反射器に置き換えられる場合を示し、この場合、xz面における発散は、発光体58の固有の発散を維持する。
特定の実施形態では、各発光体58は、例えば、xz面における発散を低減させる円柱レンズ等のドームレンズを装備できるLEDを含む。特定の実施形態では、各発光体58は、LED、及びCPCの代わりの全内部反射器(TIR)(total-internal-reflector)レンズ、又はTIRレンズとCPCの組合せを含む。
異なる実施形態では、ビームホモジナイザが、x方向の直線照明器26の均一性を改善する目的のために、発光体58のアレイの下流に配置される。例えば、ビームホモジナイザは、xz面及びyz面それぞれにおいて所望の光源発散を生じるように構成されたフライアイ・マイクロレンズ・タンデムアレイを備える。
直線照明器のための前述の構成の一部が、観察者が有色ミラー10で反射された光源の像を見るときに、希望通りに、長方形(又は正方形)のディスク38を円形のものの代わりに観察者に知覚させることができる長方形角発散を生じさせ得ることは、注目するだけの価値がある。この点に関して、図6Bの構成は、それが少なくともxz面において光源角度プロファイルに鋭いカットオフを生じさせないことにより、図6Aの構成よりも良好に実施することができる。
特定の実施形態では、有色ミラーで反射された光の円形対称角発散の生成に関する改善が、有色ミラーに低角度白色光拡散層を実施することによって得られ、この拡散層は、低帯域通過フィルタとして機能し、したがって、光源の像を含むあらゆる像を、円形対称関数で畳み込むことによって曇らせるが、この実現可能性については図8及び図9に関して更に概説する。
したがって、言い換えると、図5から図6Bは、図4の構成概念、即ち照明用システムが、照明器26及び有色ミラー10が伸長軸xに沿って細長く形成されるシステムが得られるように修正され得ることを示す。ここで、照明器10は、伸長軸xに垂直に発散し伸長軸xに平行に平行化される放射特性、即ち輝度プロファイルを有する。
伸長軸xは、必ずしも図5A〜図6Bに示された直線に対応しないことに留意されたい。むしろ、伸長軸xは、例えば、z軸に垂直な面において曲げられ得る。例えば、図5の全設定は、上面視で見ているときに円形になるように曲げることができ、その結果、ミラー10のミラー面12は、水平面に沿って照明器26と共にドーナツカットの形状を呈し、次に、ミラー10によって画定された円形焦線に沿って配置されることになる。しかし、上記で与えた説明は、次に、上面視で見たときのドーナツ形の円形延長部の接線方向を規定するx軸と、その半径方向に対応するy軸とを置き換えることによって、同じままとなる。このような上面図が図7に示されている。
上述のように、ミラー10のミラー面12を凹面又は放物線形状の形で形成するという構成概念は、ミラー10で後方放出された正反射直接光部分の発散を小さくすることによって、太陽−空の見かけを実現することの安定性を観察者の目の中に付随する無限遠奥行きの感じと共に増すことの助けになる。しかし、上記のように、この凹面/放物線形状構成概念を使用することに関係なく、観察者が正反射直接光部分を直接のぞいたときに観察者の注意を引き、それによって観察者が無限遠奥行きの感じを覚えることから気をそらし得る態様がなおある。例えば、図2の物体42等、その像がミラー10での反射を経由して観察者の目の視野内にある物体のすべての縁部で、空のような背景部分40において空間輝度傾斜を生じさせ、また観察者の目にこのような不規則なものが特に生じやすいとき、以下の実施形態は、上述の気をそらすものを回避する方策を提供しようとするものである。
第1の実現可能性を図8に関して説明する。図8は、図1の要素に加えて別の層76を備えるミラー10を示す。層76は、拡散層14と比較して、可視スペクトル範囲に関する限り、入射光20の波長に対して実質的に均一な相互作用断面を、入射光線との各相互作用イベントがその相互作用の前から後までの光線の比較的小さい伝搬方向変化を単にまねくだけの相互作用特性を除いて、示すように設計される。したがって、図8の実施形態では、正反射光24は、図1の場合と同じスペクトルを実質的に有するが、そのエネルギーの一部は、点描円78によって図8に例示的に示されたような反射角方向まわりのスミア(smeared-out)になる。
図8は、拡散層14の側面18に配置された層18を示すが、一代替形態によれば、層18は、例えば拡散層14とミラー面12の間に位置してもよい。ミラー10を実施及び製作するための実現可能な実施態様を論じるときに更に以下で説明するように、スペクトル依存散乱断面を有する能力がある拡散層14を設けること、及び正反射光線をスミアにする特性を持つぼかし層76を設けるために実現可能なことは、拡散層14に250nm未満の平均サイズの光散乱中心からなる第1の分散部を使用し、平均サイズの層76に光散乱中心からなる第2の分散部を使用することであり、この平均サイズは、例えば、第1の分散部を形成する光散乱中心の平均サイズの正確に5倍又はそれ以上、好ましくは正確に10倍又はそれ以上、より好ましくは正確に15倍又はそれ以上、更には正確に50倍又はそれ以上になる。特定の実施形態では、層76に第2の分散部を形成する光散乱中心のサイズは、1ミクロンより大きく、好ましくは2ミクロンより大きく、より好ましくは3ミクロンより大きく、更には10ミクロンより大きくなるように設計される。層18でも76でも、分散部のための母材として透明ポリマー層を使用することができる。この点で、両方の分散部を同じ母材層、例えば透明ポリマー層の中に得ることができ、そのため、層76に関して上述したぼかし特性は、一代替実施形態によれば層14自体に含めることができ、即ち、層14自体がこの特性を、拡散分散をもたらすその波長依存散乱断面に加えて有することができる。
図2〜図7に示された実施形態において図8のミラーを使用する場合、その効果は、観察者の目30において、得られる感覚光景、即ち、画像がぼかされ、即ち効果的に低域通過フィルタリングされる結果、画像の空のような領域40内の、観察者が無限遠奥行きの感じを覚えることから気をそらせ得る前述の急峻な輝度勾配が効果的に低減されることである。例えば、第2の分散部76を形成する光散乱中心のサイズと、有色ミラー10の表面の単位当たり前記散乱中心の数とは、ぼかし角度(blurring angle)が約30°、好適には20°、より好適には10°、より好適には僅か3°であり、当たる光線の少なくとも50%、70%又は90%が特定のぼかし角度内で偏移を経験するという意味で、ぼかし効果(blurring efficacy)が50%を超え(>50%)、好適には70%を超え(>70%)、より好適には90%を超える(>90%)ように構成することができる。
前述したぼかし効果を実現する別の可能性を図9に関して論じる。図9によれば、図1のミラーは、横方向に変化する物理的及び/又は光学的厚さを拡散層14が備えるという点で、修正されている。前記厚さ変化の効果は、屈折及び/又は回折の効果により、当たる光線を効率的に曲げることができる分散中心が得られるということである。生じた角度偏移の量、即ちぼかし角度に関しては、横サイズと厚さ変調の深度との関数としてこれをどのように計算できるかが、基本散乱理論によってよく知られている(直感的には、サイズが小さいほど、また深度が大きいほど、大きい角度偏移が生じる)。ぼかし効率に関しては、厚さ変調に基づく本手法は、散乱中心からなる第2の分散部の使用に基づく以前の手法よりも大きい数値をより容易に得ることを可能にする。その理由は、前記厚さ変調が、平坦なプロファイルの存在、即ち拡散層14の光学厚さの非変調部分の存在を最小限にするように、又はほとんど回避するように容易に構成され得るからである。しかし、厚さ変調手法がぼかしフィルタ製造のために産業レベルで日常的に使用されていることにもかかわらず、この技術のコストは、第2の分散部に基づく以前の場合よりも高くなり得る。したがって、当業者に知られている方法では、厚さ変調のプロファイルは、ぼかし角度が約30°、好適には20°、より好適には10°、より好適には僅か3°であり、ぼかし効果が50%を超え(>50%)、好適には70%を超え(>70%)、より好適には90%を超え(>90%)、より好適には97%以上となるように構成することができる。例えば、厚さ変調は、10〜200、好適には20〜1000、より好適には40〜500変調/mmの範囲の平均空間周波数と、0.05〜2、好適には0.1〜1の範囲の厚さ変調の深度と横サイズの間の比を有することができる。しかし、変調深度及び空間周波数に関して異なる例もまた可能であり、引用した値は単に、ぼかしフィルタ技術において現在使用されている最もよくある数値を示すにすぎない。
当たる光線の曲げを厚さ変調により図9に概略的に示されたように生じさせるための機構は、例示的に屈折の効果に限定されており、この効果は、厚さ変化の横幅が10分の数ミクロンを超えたときに支配的なものになる。しかし、回折効果もまた、上述のように利用することができる。光学厚さ変化により、入射光20が、拡散層14に入るとき、及び出ていくときに別々の小さい方向変化80及び82を受け、このことは、正反射光部分24に、即ち拡散層14において第1の分散部と散乱相互作用しないものに、ならびに、あまり顕著ではない拡散、散乱光部分に当てはまる。それと比較して、完全に均一な厚さの層14の場合には、入ってくる、及び出ていく層14における方向変化は互いに打ち消し合い、そのため正反射光路は、入射光20の光路に対して反射角にあることになる。しかし、ミラー面12から外向きの拡散層14の変化する勾配により、方向変化80と82は互いに打ち消し合わない。むしろ、光線20が拡散層14に当たる厳密な位置に応じて、正反射した非散乱光が層14を離れる方向は、拡散層14が図1に示された平坦な場合に生じるはずの反射角方向から多少逸脱するか、又は単なる偶然でそれと等しくなる。即ち、図9に表された変化する厚さが、図8に関して前述したぼかし効果を生み出すことができ、したがって、無限遠奥行き感じに対し気をそらす問題を緩和するのに、同様に使用することができる。
図8及び図9に関して上記で論じた、概説したぼかし効果を利用することのいくつか別の利点もまたあることに留意されたい。
1)物体42等の物体の物体輪郭を低角度の広い散乱を使用して隠す、という狙いに加えて、
別の利点がある。例えば、
2)スポット38の内部のより均一な見かけ、
3)上記で論じたように、円形の見かけからの逸脱が見えにくくなり得るようにスポット38の輪郭を滑らかにすること、
4)太陽のようなディスク38の見かけが拡大され、したがって、そのまぶしさが低減される、
5)例えば、ミラー面の凹面形状の不完全性による、照明される部屋の直接照らされる部分の輝度の不均一さ(例えば、図5Aの52を比較)が補償される。
特に、横方向変化は、層14を外向きに横切る光が低角度拡散をするように、内向きに層14を横切り、ミラー面12で反射され、外向きに再び層14を横切る波長650nmの赤色光線が、入射確率が均一な空間、即ち等方性輝度である仮定すると、正反射の方向から0.1°から15°、優先的には0.1°から10°、より優先的には0.1°から5°、更には0.1°から1.5°の範囲で、少なくとも50%、好ましくは70%、より好ましくは90%、更には97%の角度偏移をする確率を有するようなものとすることができる。
更に、別の言い方をすると、厚さが変化する層の物理的及び/又は光学的厚さの変化は、有色ミラー10が最終的に、第1のナノ粒子分散だけを含む平坦な拡散層14の場合に関して、50%未満、好ましくは30%未満、更に好ましくは10%未満、更には3%未満の正反射、即ち反射角での反射を有するように構成することができる。
また更に、図9の説明の別法として、拡散層14のみを使用する代わりに、透明で、物理的及び/又は光学的厚さ変化について前述の変動性を有する別の層を、層14に加えて設けることもできることに留意されたい。それに応じて、厚さが変化するこのような透明層は、拡散層14の面18に、図8の層76が拡散層14に付加されたのと同じように配置することができる。
気をそらす確率の低減を実現する別の可能性が、図10に関して以下に提示される。図10は、図5の修正形態を単に例示的に形成するが、図10に関して概説される半透明層の使用は別法としても、照明器とミラー10の組合せからなる他のシステムのいずれかと一緒に用いることができる。本出願の明細書では、「半透明層」とは、
(i)当たる光の一部を妨害することなく透過させ、例えば、好ましくは5〜50%、より好ましくは10〜40%、更に好ましくは15〜30%の範囲の一定の透過率を有する、
(ii)残りの光を任意の方向にわたって優先的に等方性的に散乱させる、又は散乱光の少なくとも30%超、優先的には50%、より優先的には70%が、当たる光の方向から5°を超えて、好ましくは10°を超えて、より好ましくは15°を超えて逸脱することを確実にして散乱させる、
何かを指すものである。
加えて、特定の実施形態では、散乱が優先的に順方向に起こることが有利であり、例えば、半透明層が示す順方向と逆方向の拡散効率の比が1.1を超え、好適には1.5を超え、より好適には2を超え、より好適には5を超えることが好ましい。
図10は、ミラー10の下流に位置する、即ち、観察者の目があることが予測される正反射光で照らされた領域52の間の、半透明層84を示す。言い換えると、半透明層84は、一方の観察者ともう一方のミラー10との間の位置に配置され、保持される。半透明層は布地テント(ファブリック性のテント,ファブリックテント)とすることができる。ミラー10が照明器26と共に部屋の天井に配置される場合には、半透明層84は照明器26の下につり下げることができる。部屋内部のミラー10及び照明器26の位置とは関係なく、半透明層84の効果は、例えば、以下のスクリーンを生成する効果と同様に、窓の前のテントの典型的な効果になり得る。このスクリーンは、
(i)太陽の直接の暖かい光によって照明され、この光は、明るい、はっきりと画定された暖かい光のスポットをテントの上に投映し、そのスポットが拡散光によって部屋を照明する、
(ii)空からの青みがかった拡散光によって照明され、この光は、青みがかった色をテントの上に、特に、投射された暖かい太陽のスポットの周囲に生じさせ、それによって、太陽及び空からの光の美しい複合作用の安楽な感覚をもたらす。
特定の実施形態では、半透明層84の半透明性とは、層84を横切る光に対し完全に透明な部分と、そうではない、即ち層84を横切ろうとする光をそらす他の部分とに、微粒子的に仕切られているのが特徴である半透明層84について述べるものである。例えば、層84に開口があることがあり、層84の材料は開口がなければ、白い布地と同様に白色光拡散体として機能する。特定の実施形態では、半透明拡散体は、家庭用布地テントの場合によくあるように、有色又は部分的な有色とすることもできる。異なる実施形態では、半透明拡散体は、1個の点から別の点まで変化する規則的な透過率を、それが美的形象効果を呈示する目的に適しているので、有し得る。すべての実施形態で、半透明拡散体が非ゼロの規則的な透過率を有することは、観察者にいつも、光源の光った部分を半透明拡散体の向こう側に知覚する可能性があることを確実にし、観察者と光発生器の実/仮想像との間の構成距離によって観察者が、半透明拡散体が存在しない場合について上記で概説したのと同じ理由で、また同じ機構によって、無限遠奥行きのある空間が半透明拡散体の向こう側に存在する感覚を得ることができる。
特定の実施形態では、半透明層84は、以下の効果を生み出すことができる。即ち、直接光部分52の中でミラー10を見ている観察者に、無限遠奥行きのある感覚を覚えることを損ないかねない反射光発生器の細部のすべてを見せない、又はより適切には、映った部屋の細部のすべてを見せないようにする。実際、観察者の視覚的注意がここでは、半透明層、例えばテントの上の明るいスポットと、同じ拡散体の上の暖かい光と青みがかった光の間の前述の対比とに引き寄せられ得る。即ち注意は、非自然効果をもたらすミラーへの部屋の反射像により引き寄せられるのではなく、観察者から無限の距離に自然に生じる効果に引き寄せられる。その結果、観察者は、無限遠奥行きの感じを覚えることから気をそらされにくい。
上記の実施形態のいずれかによる有色ミラー10を実現及び製作するいくつかの実施形態について説明する前に、図2から図7及び図10に関して、上述の照明用システムは、このようなシステムのアレイの形で、これらのシステムの有色ミラーによって正反射された光が、同じ方向に向いている光ビームのアレイを形成するように使用できることに留意されたい。例えば、図5の照明システムは、例えば、部屋の一部だけではなく、部屋の天井全体を覆うように並べて配置することができる。
それ以外に、上述の照明システムのすべてが、壁、天井等の任意選択の周辺の建物要素と共に、建築物、即ち、上記で概説した実施形態の利点に関係する家等の建物を形成することに留意されたい。
更に、この点に関して、凹面更には放物線形状のミラー面を使用する実施形態によって得られた利点が、必ずしも使用されなくてよいことにも留意されたい。いくつかの応用例では、例えば、光発生器が有色ミラーにあまりに接近して配置されるので、観察者は不可避的に光発生器を有限距離に知覚することになる状態でも、ならびに、複数の照明デバイスを使用することにより観察者が同時に、即ち単一の観察位置から、2個以上の光発生器の存在、即ち2個以上の太陽の存在を知覚することになり得る状態でも。こうした場合でも、ミラー10からの正反射光によって形成された直接光ビームを人が直接のぞかないようにするための建築学の方策を講じることができる。図11は、このような建築物の例を示す。図11は、建築物の部屋の2個の壁86a及び86bを示し、ミラー10が、説明の目的で壁86aに掛けられている。ミラー10は、照明器26によって照明され、この照明器は、例えば部屋の天井につり下げられている。ミラー10で正反射された直接光は、説明の目的で彫像が置かれて示されている部屋の特定の領域を例示的に照らしているように示されている。人がミラー10を介して照明器26を誤って直接のぞくことを防止するために、直接光によって直接照らされた領域88は、阻止領域に入ろうとする人間の来場者が阻止される阻止領域の中に含まれて示されている。図11では、阻止領域は例示的に、直接光によって照らされた領域88を取り囲むフェンス90によって画定されている。したがって、フェンス90によって画定された阻止領域の外側のいかなる来場者又は観察者92も、ミラー10を介して照明器26を直接のぞくことが防止され、単に、空のような拡散光、及び現場を照明する直接の太陽のような光線を見るだけであり、したがって、あたかもミラー10が、空を眺めることを可能にする窓であるかのように感じ、これらのすべての効果が、太陽を直接見なくても知覚される。とりわけ、この設定は、光発生器又はその光った領域の知覚可能形状についての制約を解除するために使用することができ、この形状は、この場合には任意の形状とすることができる。
有色ミラーと、これを有利に使用する構成概念及びシステムとのいくつかの実施形態について説明してきた後に、いくつかの特殊な実施例、及びこのような有色ミラーを製作する例について以下で説明する。
すでに上で述べたように、拡散層14は、例えばミラー面12に堆積された、好ましくは厚さが<0.2mm、より好ましくは<0.1mm、更に好ましくは0.05mm、更には、いくつかの実施形態では、<0.01mmである層、コーティング又はフィルムとすることができる。図12は、拡散層14がその波長依存散乱断面を、250nm未満の平均サイズの光散乱中心即ちナノ粒子の分散部が埋め込まれた透明ポリマー層として拡散層14を形成することによって、備え得ることを示す。光散乱中心即ちナノ粒子は、符号94を用いて示される。図12はまた、拡散層14の透明層がまた、任意選択で、そこに埋め込まれた別の光散乱中心96からなる第2の分散部を有し得ることを示し、この光散乱中心96の平均サイズは、例えば5ミクロンよりも大きい。第1及び第2の分散部の光散乱中心の平均サイズと、絶対最小平均サイズの別の例との間の関係に関する上の留意点もまた参照されたい。光散乱中心94の分散部は、上記で概説した波長依存拡散散乱を引き起こし、光散乱中心96からなる第2の分散部は、図8及び層76それぞれに関して概説したぼかし効果を引き起こす。図12が図8の上述の代替形態の例である限り、それにより両特性、即ち波長依存拡散散乱と低角度白色光ぼやけが同じ層14の中で統一される。
ミラー10を構築する際、分散部94と、任意選択で分散部96とを持つ透明ポリマー層14は、まずフィルムが得られるように製作することができ、次に、フィルムがミラー面12に付けられ、又はフィルム上にミラー面12が形成され、又は別法として、分散部94と、任意選択で分散部96とが、層14の透明ポリマー材料と共に、例えば、吹付け、インクジェット法、フィルムスピニング、ディープコーティング、コイルコーティング、金属真空堆積、分子ビームエピタキシ、プラズマコーティング等によって、ミラー面12の上に直接堆積される。
第1及び第2の分散部の密度は、有色ミラーの拡散反射率が例えば50%超、80%超、更には90%超になるように選択することができる。即ち、第2の分散部の低角度、又は第1の分散部の大きい角度のいずれかで、無視できる正反射光部分を残して、事実上すべての光を散乱させることができる。
図13は、ミラー10を実現する別の実施形態を示す。図13によれば、透明パネル98が、ミラー面12を形成するコーティング又はフィルム100と、拡散層14を形成する別のコーティング又はフィルム102との間に位置する。コーティング又はフィルム100及び102は、図12に関して概説した分散部を含むことができる。言い換えると、例えばアクリル、ポリカーボネート、マイラー、PVC等のポリマーのパネル、又はガラスもしくは層状ガラスのパネルとすることができる透明パネルは、2個の主面又はファセットを有し、コーティング又はフィルム100が一方のファセット上に配置され、コーティング又はフィルム102がもう一方のファセット上に堆積される。
したがって、図13の場合、ミラー10は、透明パネル98によって得られる剛性/柔軟性/伸張性によって、剛直にも柔軟にも、更には伸張性のあるものにもすることができる。本発明の文脈では、パネルという用語は、任意の可能な厚さの層を意味するために使用されるだけであり、したがって、フィルム又はコーティングでもよく、また必ずしも剛直でなくてよいことに留意されたい。
図14は、図13の実施形態の一変形形態を示し、両方のコーティング又はフィルム100及び102が、透明パネル98の同じ面又はファセットに配置されている。例えば、コーティング又はフィルム102が、コーティング又はフィルム100と透明層98の間に配置され、拡散層14に面するコーティング又はフィルム100又はその面がミラー面12を形成する。
興味深いことに、図14の実施形態では、このようなフロートガラスを透明パネル98として使用する場合、ガラスパネルのスズ面を使用しないようにすることができる。言い換えると、図14の場合、透明パネル98はフロートガラスパネルとして具現化することができ、その場合、スズ面は、コーティング又はフィルム100及び102から外向きの面として使用できるのに対し、フロートガラスパネル98の空気面はコーティング又はフィルム102に接触する。この方策によって、フロートガラスパネルの製造用のスズに起因する作用が、フィルム又はコーティング102及び100に悪影響を及ぼすことが防止される。
説明の目的で、スズ面はハッチングを用いて図14に示され、符号104を用いて示される。
図15は、図13の実施形態をフロートガラスシートによってどのように解釈して、フィルム又はコーティング100及び102のいずれもフロートガラスシートのどのスズ面にも堆積しないようにすることができるかを説明する。特に、図15によれば、有色ミラー10は、接着性透明ポリマーフィルム108、例えばEVA又はPVBフィルムを互いに挟み固定された2個のフロートガラスシート104及び106からなる層状ガラスパネルを含み、接着性透明ポリマーフィルム108を介して互いに向かい合い貼り付けられた2個のガラスシート104及び106のファセットは、フロートガラスシート104及び106のガラススズ面になり、ミラー面12を形成するコーティング又はフィルム100は、フロートガラスシート104の空気面に堆積されるのに対し、拡散層14を形成するコーティング又はフィルム102は、フロートガラスシート106の空気面に堆積される。この方策によって、図15のミラー10はまた、「安全ガラスパネル」としても機能し、また耐衝撃性(例えば、最終的に破壊されたときにパネルが多くの部分に分離しないこと)、耐火性等の、諸要素を建物内で使用することに課せられる多くの要件を満たす。
別の実施形態が図16に示されている。ここでは、拡散層の拡散特性が図15の単独のフィルム又はコーティング102から、フロートガラスシート104と106の間の透明層108へ移されているという点で、図15の実施形態が修正されており、それに応じて透明層108は、接着性透明ポリマーフィルムとしてだけでなく拡散層としても機能する。例えば、接着性透明ポリマーフィルムは同時に、図12に描かれた光散乱中心96の分散部用母材としての役割を果たすことができる。したがって、図16のミラーは、2シート層状ガラスパネルを製作する場合にいずれにしても行われる処理によって非常に容易に製作することができ、単にフィルム又はコーティング100だけが、フロートガラスシート104又は106(図16の場合では104)の一方の空気面に堆積させる必要がある。
図13から図16の実施形態の場合、透明パネル及びガラスシートそれぞれは、支持部材又は支持層の役割を負った。ガラスシート及びガラスパネルの例の場合では、これらは、このように解釈されたミラー10に剛性を与える。
図17の実施形態は、ミラー面が、例えば蛍光管光反射器、又は屋外の太陽光反射用に現在使用されているもののような、例えば非常に高い反射率を有する(例えば、反射率が>95%、更には>98%)アルミニウム金属ミラー箔によって形成されて、また、例えば電気泳動、金属真空蒸着、有機及び/又は、適宜にマイクロ粒子及びナノ粒子の使用を含む無機材料コーティング等のいくつかの工業プロセスによって製造されて、例えば屈折率不整合を抑制し、そうして反射率を高め、又は、屋外用途の場合に大気中の作用物等の外部作用物に対するミラーの機械的及び化学的耐性を強化するという例を示す。特定の実施形態では、拡散層14は、図17の符号110を用いて示された仕上がりアルミニウムミラー箔の上に直接堆積されるコーティング102によって形成することができる。又は、拡散層14は、Alミラー箔製造に適した工業プロセスの過程で堆積させることができる。この第2の解決策は、より複雑でコストのかかるプロセスを暗示するが、特に屋外用途の有色ミラー10の仕上がりがより良好になり得る。
したがって、両方の場合で、アルミニウム金属ミラー箔110は、コイルコーティング技法によるプロセスのために必要な、またコイルの形で保存されるのに必要な適切な柔軟性を持つミラー10を結果として提供することができる。説明の目的で、図17は、例えば配送又は輸送のためにコイル112になるように巻かれるミラー10を示している。
上記で概説した実施形態のいずれでも、拡散層を形成する拡散する層又はフィルム又はコーティング102は、前述の光散乱中心96の分散部がある透明ポリマー層とすることができる。後者の光散乱中心は、例えば、有機ナノ粒子とすることができ、又は、散乱層14の最大の散乱効率及び最小の実現可能厚さを得る目的で、TiO2、ZnOナノ粒子等の無機ナノ粒子とすることもでき、これらは、有機母材に対してより大きい屈折率不整合を特徴とし、250nm未満の平均直径を有する。これらの無機ナノ粒子は、工業用ナノ粒子供給者によって現在行われているように、近UV及び/又は可視光放射によってもたらされる光触媒作用に対して保護することができる。
異なる実施形態では、拡散層14は、無機母材の中に分散したナノ粒子、例えば無機ナノ粒子を、ゾル−ゲルベースの材料等のシリカベースの材料のガラスの中に分散したものを、含むことができる。この選択肢は、ガラス製造業界では典型的にそうであるように、大規模の工業プラントの使用を暗示し得るが、ステップ数の低減という利点を有し、それによって、工業プロセスが簡単になり、コストが低減して、新しいプロセスが、ガラス、強化ガラス、層状ガラス及びガラスミラーの製造の標準的工業プロセスとほんのわずかだけ異なるものになる。
更に、図17はむしろ、透明材料で作られた、大気中の作用物に耐性がある保護層112が拡散層14を保護することができるという、上記で概説したミラー10の実施形態のすべてを代表的に示す。図17の場合では、例えば拡散層14、即ちフィルム又はコーティング102が、アルミニウム金属ミラー箔110と保護層112の間に挟まれている。保護層112は、例えば、無機フィルム、又はシリカゾル−ゲルフィルム等のゾル−ゲルフィルム、又はシリカマイクロ粒子もしくはナノ粒子を含むフィルムとすることができる。
図17に関してすでに上記で述べたように、図17によるミラー10には柔軟性がある。図18に示された実施形態によれば、ミラー10は、図17の実施形態による箔のような柔軟性を処理するミラー10の外周を取り囲むフレーム114によって、固定位置に保持される。
フレーム114によって、ミラー10は、例えば壁又は同様なものに対して固定位置に保持することができる。特定の実施形態では、Alミラー箔支持体に基礎をおいた有色ミラー10は、有色換気正面として機能する建物外被の構築のために有色ミラー10を利用するのが便利であるので複数の穴を、例えば1〜100mmの範囲、好ましくは5〜50mmの範囲の寸法を有する穴を、特徴として備えることができる。しかし、換気正面用、更には美的な建物正面用の有色ミラー10の一部の応用例では、穴開けが行われる必要は必ずしもない。
図13及び図14に関して、そこに示された透明パネル98は、透明可撓性ポリマーフィルム等の可撓性部材に置き換えることができ、その結果、得られるミラー10は伸張性を備え、即ちミラーは、適切なフレームによって、例えば屋外で日陰を作るテントに使用されるもののような張力構造体によって、緊張状態に保つことができるようになることに留意されたい。したがって、図14及び図13の可撓性ポリマーフィルム98を使用すると、得られた有色ミラー10は、例えば上記で論じた凹面更には放物線形状等の様々な形状に曲げることができる張力構造体を形成する。この機能は、例えば、スポーツホール、衣料品製造販売専門店(SPA)、エンターテイメントパーク等において広い空のような天井を構築するのに使用することができ、空の視覚だけでなく太陽の視覚も確保される。
ミラー面を形成するのに金属箔を使用する代わりに、別法として、反射性コーティングで覆われた布地を使用することもできる。この選択肢は、例えばファッション業界において、照明の種類によって、特に照明の方向性の種類によって変化する見かけを特徴とする空−太陽の衣類を生成するために使用することができ、この見かけはひいては、方向性の強い光が確保されるすがすがしい日と、すべての光が拡散している曇った日との場合の大気の状態の変化によるものである。
最後に、図19は、ここでは例示的に超高層ビル116の正面である建物正面が1個又は複数の有色ミラー10を備える実施形態を示し、ここで図19は単に、ミラー10を備える正面の一部、即ち部分118を説明的に示すにすぎない。この応用例によれば、建物正面は、すがすがしい日更には部分的に曇った日の太陽からの光のような、いくらか方向性の光で建物正面が照らされたときに空の一片として機能するように作ることができ、それによって、建物の見かけ、ならびに周辺の自然及び空とのその美的相互作用を実質的に修正することが可能になる。ミラー10の上記の例のいずれも、少なくとも部分的に正面を形成するように使用することができるが(外向きのミラー面によって)、図19は、部分118が図18のタイプのミラーのアレイで埋められている場合を示す。しかし、この状況は、正面の部分118にミラー効果を与えるために使用されるミラー10の他の実施形態のいずれかを除外するものと解釈されるべきではない。
超高層ビル116の部分118にミラー10を備えることの効果は更に、次のように説明することもできる。即ち、いつも日光が超高層ビル116の正面を照明する。しかし、ミラー10の拡散層の拡散特性により、超高層ビル116を見ている観察者は、あたかも超高層ビル116の背後の空が、ミラー10で覆われた部分118のところに見えているかのように感じる。したがって、この方策によって、超高層ビル116は、少なくとも部分118に関する限りは、ほとんど見えなくなるようにすることができ、この方策は、例えば美的側面等の多くの目的のために使用することができる。
最後に、図20は、層状ガラスパネルとして形成された有色パネルの一例を示す。これは、コーティング又はフィルム100が除かれている点だけ図16と異なっている。即ち、図20は、図16による有色ミラーが得られるように容易に拡張可能である、かつ、建築及び建設の環境の中でのその使用に関しては同じ利点を有する、有色パネルを示す。これは、ガラスシート104と106の互いの貼付け、波長依存拡散散乱機能を同時に負う層100を用いて層状ガラスパネルを形成するために必要な追加の構築ステップが原則的にないので、容易に製作される。ガラスシートは、フロートガラス又は強化ガラスとすることができる。興味深いことに、建物内で、図20の有色パネルは、有色要素から入射光と同じ側において出ていく拡散光の半分に関する限り、透過にも「反射にも」使用することができる。したがって、例えば、図3の側壁のミラー10を図20の有色パネルに置き換え、有色パネルを部屋48の左側に隣接する部屋から照明すると、部屋48の中に立っている観察者は、図2に関して概説したものと類似しているが隣接する部屋に照明器が配置されているという違いのある、太陽−空の見かけを得ることができることになる。そうして、図3に破線で示した隣接する部屋の中にいる観察者は、太陽がない平坦な空を見ることになる。これら2個の部屋を備える建物の中で有色要素を使用することは、層状平面パネル構造により問題がないものになる。
拡散層を構築/製作する可能性については、上記の実施形態、特に図12に関して述べた。