JP6401261B2 - 電気絶縁モジュール支持体を備えたソーラーモジュールおよびこれの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電気絶縁モジュール支持体を備えたソーラーモジュールならびにこれの製造方法に関する。
太陽光を電気エネルギーに直接変換するための光起電層システムが周知である。光起電層システムは普通、「ソーラーセル」と呼ばれ、「薄膜ソーラーセル」という用語は、十分な機械的安定性のための(キャリア)基材を必要とする、厚さがわずか2、3ミクロンの層システムを示す。公知の基材としては、無機ガラス、プラスチック(ポリマー)または金属、特に合金が挙げられ、それぞれの層厚および具体的な材料特性に応じて、剛性板または可撓性膜として実装することができる。
技術的取り扱い品質および効率の観点から、非晶質シリコン、マイクロモルフシリコン、多結晶シリコン、カドミウムテルライド(CdTe)、ガリウムアルセニド(GaAs)または黄銅鉱化合物、特に式Cu(In,Ga)(S,Se)と省略される、銅−インジウム/ガリウム−ジサルファー/ジセレニドの半導体層を備える薄膜ソーラーセルが有利であることが判明している。特に、銅−インジウム−ジセレニド(CuInSeまたはCIS)は、太陽光のスペクトルに適合したこれのバンドギャップのために、特に高い吸収率という点で注目されている。
通例、個々のソーラーセルによって、1ボルト未満の電圧レベルが得られるだけである。技術的に有用な出力電圧を得るために、1個のソーラーモジュール内では、多数のソーラーセルが相互に直列に接続されている。ここで薄膜ソーラーモジュールは、薄層製造中に、ソーラーセルを集積形態ですでに接続できるという利点を提供する。薄膜ソーラーモジュールは、特許文献においてすでに何度も記載されている。単なる一例として、DE 4 324 318 C1およびEP 2 200 097 A1が挙げられる。
実際に、ソーラーモジュールは、建物の屋根上に設置される(「屋根上設置」)か、または屋根仕上材の一部を形成する(「屋根内設置」)。ソーラーモジュールを、特に自立型または自己支持型(無キャリア)ガラス構造体の形態の、ファサード要素または壁要素として使用することも公知である。
ソーラーモジュールの屋根への設置は、通常、屋根と平行に、屋根または屋根下部構造体に固定されたモジュールホルダーに対して行う。このようなモジュールホルダーは通常、タイル屋根に鋼鉄アンカーによって、または波板屋根もしくは台形金属板葺き屋根上にネジによって取り付けられた平行支持レール、例えばアルミニウムレールのレールシステムを含む。
一般的な慣行では、ソーラーモジュールにアルミニウムからなるモジュールフレームが装備され、このモジュールフレームは、一方では機械的補強を行い、他方ではモジュールホルダーへソーラーモジュールを設置するよう作用できる。
近年、モジュール重量が低減され、より低い生産コストで製造可能な、フレームレス型ソーラーモジュールの生産が増加してきた。通常、フレームレス型ソーラーモジュールは、裏面にモジュール支持体が装備され、モジュール支持体は鋼鉄製またはアルミニウム製で、モジュールの裏面に接着接合されている。モジュールフレームと同様に、モジュール支持体は補強作用を行い、ソーラーモジュールをモジュールホルダーに取り付けるように作用できる。どちらの場合でも、モジュール支持体は、補強支柱または「バックレール」と呼ばれることが多い。特許文献において、バックレールは例えば、DE 10 2009057937 A1およびUS 2009/0205703 A1に記載されている。
ソーラーモジュールの近接環境の接地電位と光起電層構造体との間の電位が異なるために、1500Vもの高い電気システム電圧が発生することが公知である。通例、モジュール支持体の接地には、ソーラーモジュールの環境が接地電位にあることが必要である。高いシステム電圧によって、モジュール支持体と光起電層構造体との間に高い電界強度が生じる。高い電界強度の発生によって電気的過渡現象が生じることがある;または、イオン、例えばナトリウムイオンが、ガラスから出て光起電層構造体の薄相中に移動するか、もしくは構造体から出ることがある。光起電セルの腐食または層間剥離によって、ソーラーモジュールの性能の(電位に誘発された)永久劣化または故障が生じる。
光起電システムは、電気エネルギーを公共送電ネットワークに供給するために、ソーラーモジュールの回路および直流電圧を交流電圧に変換するためのインバータを必要とする。
DE 10 2007 050 554 A1により、長期使用中の性能劣化を低減するために、電位を上昇させた光起電システムが公知である。ソーラーモジュールから接地への制御不能な放電が生じないように、ソーラーモジュールの回路の正端子の電位がインバータにおいて接地電位を基準としてシフトされる。
光起電モジュールを接地に対する電位から絶縁トランスにより直流的に分離して、光起電システムから接地への制御不能な放電を防ぐ、光起電システム用インバータも公知である。しかし、このインバータには、ソーラーモジュールに適合した、電気効率の低いインバータを高コストで使用する必要がある。
DE 10 2009 044 142 A1では、導電性保護デバイスを備えたガラス上の薄膜部品および、例えばソーラーモジュールが開示されている。電界により生じる放電および/またはガラス板からのイオンのドリフトは、機能性層構造体から導電性保護デバイスに装置にシフトされる。導電性保護デバイスを追加の電気部品として導入することにより、薄膜部品の製造工程はより困難となる。
独国特許発明第4324318号明細書 欧州特許出願公開第2200097号明細書 独国特許出願公開第10 2009057937号明細書 米国特許出願公開第2009/0205703号明細書 独国特許出願公開第10 2007050554号明細書 独国特許出願公開第10 2009044142号明細書
本発明の目的は、インバータおよび追加の電気部品から独立して、電位に誘発された性能劣化から保護される、モジュール支持体(バックレール)を備えたソーラーモジュールを有利に改良することである。
この目的および他の目的は、本発明の提案に従って、独立請求項の特徴を備えるソーラーモジュールならびにソーラーモジュールの製造方法によって達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴によって指摘されている。
本発明により、基材およびカバー層を有し、これらの間にソーラーセルを形成するための層構造体が位置する、ソーラーモジュールが提供される。基材およびカバー層は、例えば無機ガラス、ポリマーまたは合金よりなり、例えば、いわゆる積層ペイン構造体内に相互に接合された剛性板として実装される。
ソーラーモジュールは、好ましくは集積形態で直列に接続された薄膜ソーラーセルを備える薄膜ソーラーモジュールである。通例、層構造体は、裏電極層、表電極層ならびにアブゾーバを備える。好ましくはアブゾーバは、黄銅鉱化合物よりなる半導体層を備え、黄銅鉱化合物は、例えば銅−インジウム/ガリウムジサルファー/ジセレニド(Cu(In,Ga)(S,Se))族、例えば銅−インジウム−ジセレニド(CuInSeもしくはCIS)または関連化合物からのI−III−VI半導体であることが可能である。
ソーラーモジュールの静止固定モジュールホルダー、例えばレールシステムへの設置を補強および/または支持するための少なくとも1個のモジュール支持体は、基材裏面に接着接合によって、層構造体とは反対側に向けて取り付けられる。モジュール支持体は、好ましくは(上から見て)長方形のソーラーモジュールの縦辺に沿って延在する。
有利な実施形態において、本発明によるソーラーモジュールは、2個または4個のモジュール支持体を有する。このことによって、ソーラーモジュールを良好な荷重分布(例えば風荷重)および低い材料経費で確実に取り付けることが可能となる。
概して、モジュール支持体は、例えばガラス質(支持体)基材とは異なる材料よりなり、通例、金属材料、例えばアルミニウムまたは鋼鉄よりなる。基材へ取り付けるために、モジュール支持体は少なくとも1つの接着面を有し、この接着面は、硬化接着剤よりなる接着層を介して基材裏面に接着接合される。
ここでは、接着層が少なくとも硬化状態において電気絶縁性が高い接着剤を含む、または該接着剤よりなることが必須である。電気絶縁性が高い接着剤の有利な効果は、電気絶縁性が高い接着剤によって、基材から層構造体中への異種原子の拡散が明らかに低減される、または実質的に完全に回避されるという事実により、簡単なモデルで理解することができる。モジュール支持体と層構造体との間に高い電圧差があっても、このことは当てはまる。結果的に、ソーラーモジュールの電位に誘発された性能劣化はごくわずかであるか、または全く発生しない。
本発明によるソーラーモジュールの有利な実施形態において、接着剤は、1500GOhm*cm以上の、好ましくは4000GOhm*cmを超える、特に好ましくは5000GOhm*cmから15000GOhm*cmの比抵抗を有する。ここで、接着剤がこの比抵抗をこれの全使用範囲にわたって、即ち層構造体とモジュール支持体との間の1000Vの電圧差まで、95℃までおよび85%相対湿度まで有する場合、特に有利である。このような電気絶縁性が高い接着剤は、モジュール支持体を基材および光起電層構造体から特に有益に絶縁して、電位に誘発された性能劣化を特に有効に防止する。
本発明による有利な接着剤は、シリコーン接着剤、ポリウレタン、(ポリ)アクリレートまたはエポキシ樹脂を含む。本発明による特に有利な接着剤は、1成分のシリコーン接着剤または2成分のシリコーン接着剤を含む。このような接着剤が特に良好に適しているのは、これらが本発明による高電気絶縁特性と、良好な加工性ならびに十分な強度および耐候性を有するためである。
本発明によるソーラーモジュールの別の有利な実施形態において、接着層の厚さ、特に接着層の最小厚は、0.5mmから10mm、好ましくは1mmから3mm、特に好ましくは1.5mmから2.5mmである。このような厚さdによって、モジュール支持体は層構造体から特に有益に絶縁され、電位に誘発された性能劣化が特に有効に防止される。
本発明によるソーラーモジュールの別の有利な実施形態において、接着面は、基材面の5%から20%、好ましくは5%から10%である。このことは、ナトリウムの移行を引き起こすことができる電流が、小規模な範囲に限定されたままであるという特別な利点を有する。
電位に誘発された性能劣化は、層構造体とモジュール支持体との間の電圧差に特に依存することが示されている。本発明による性能劣化の低減は、最大電圧差が大きくなればなるほど、より有効である。最大電圧差が900V以上、好ましくは900Vから2000V、特に好ましくは1400Vから1600Vである場合に、特に有利である。
本発明によるソーラーモジュールの有利な実施形態において、層構造体は基材上に配置され、中間層を介してカバー層に接合されている。このいわゆる基材構造では、電気絶縁性が高い接着剤を用いない従来技術によるソーラーモジュールでの、電位に誘発された性能劣化が特に高いのは、光起電層構造体がモジュール支持体に空間的に近接しているために、電界強度が上昇するからである。驚くべきことに、電気絶縁性が高い接着剤を使用すると、電位に誘発された性能劣化を、特に有効に低減させることができる。
本発明によるソーラーモジュールの有利な実施形態において、基材は、ガラス、好ましくはソーダ石灰ガラスを含むか、またはソーダ石灰ガラスよりなり、特に好ましくは、該ガラスはNaOの最小含有率は11重量%である。簡単なモデルにおいて、電位に誘発された性能劣化は、基材から光起電層構造体中へのナトリウムイオンの移行によって理解することができる。層構造体のナトリウムドーピングが最適含有率から逸脱して変更された結果として、ソーラーモジュールの性能は低下する。電気絶縁性が高い接着剤によって、電界強度、従って基材から層構造体中へのまたは層構造体内での異種イオン、例えばナトリウムイオンの移行も低減され、ソーラーモジュールの性能が保持される。
本発明によるソーラーモジュールの有利な実施形態において、ソーラーモジュールは、安定化させるためにまたは取り付けるために作用する金属製フレームを有さない。このようなフレームレス型ソーラーモジュールは、積層体とも呼ばれ、モジュール支持体に介してのみ接地が備えられる。モジュール支持体は、光起電層構造体の下に非常に近接して、比較的大規模な範囲に配置されているため、電気絶縁性が高い接着剤を用いない従来技術によるソーラーモジュールでは、電位に誘発された性能劣化が特に大きい。電気絶縁性が高い接着剤の本発明による使用は、特に有効であり、性能劣化の防止または低減に特に良好である。
工業的連続生産における、接着剤の硬化によるモジュール支持体の基材上への接合は、モジュール支持体と基材裏面との間の距離に関するある変数とよく関連付けられることが示されてきた。この理由は、モジュール支持体および基材の接合中の(まだ)未硬化の接着剤の塑性変形性である。本発明によるソーラーモジュールの有利な実施形態において、接着層は1個または複数個のスペーサを含み、スペーサはそれぞれの場合にモジュール支持体の接着面を保持する目的で実装され、この間、接着層を介してモジュール支持体を基材裏面に接合するために、モジュール支持体が基材裏面まで送達されるときに、基材裏面からの事前に定義可能な最小距離にて、接着剤はまだ未硬化である。ここで、スペーサが、電気絶縁性が高い接着剤とほぼ同じ大きさかまたはこれ以上の比電気抵抗を有することが特に有利である。
本発明によるソーラーモジュールの特に有利な実施形態において、ソーラーモジュールは、これの外縁にフレームを有さないが、代わりにモジュール裏側のモジュール支持体によってのみ補強、安定化および取り付けされる。このようなフレームレス型ソーラーモジュールは、製造が特に簡単であり、低コストである。
長方形形状に実装される、本発明によるソーラーモジュールの別の有利な実施形態において、少なくとも1個のモジュール支持体が(モジュール)縦辺に沿って、例えば細長補強支柱の形態で延在し、少なくとも1つの接着層が、(モジュール)縦辺に沿ってまた延在する接着層(接着ビーズ)の形態で実装されている。ソーラーモジュールは、通例、縦辺に沿った工業的連続生産の組立てラインにて移動されるため、(モジュール横断方向の)スペーサの横方向の移動は、この手段によって有利に回避することができる。ソーラーモジュールの移動に起因する、接着層からのスペーサの移動はゆえに、高い信頼性で確実に回避することができる。
本発明はさらに、以下の工程を含む、ソーラーモジュール、特に薄膜ソーラーモジュールを製造する方法にまで拡張される:
−基材およびカバー層を準備して、これらの間にソーラーセルを形成するための層構造体を位置させる工程、
−ソーラーモジュールの設置を補強および/または支持するための、少なくとも1個のモジュール支持体を準備する工程、
−硬化可能な電気絶縁性が高い接着剤よりなる接着層を、モジュール支持体の少なくとも1つの接着面上におよび/または層構造体と反対側に向けられた基材面上に、適用する工程、
−モジュール支持体を基材面に少なくとも1つの接着層を介して接合する工程、
−モジュール支持体を基材に接着取り付けするために、接着層の接着剤を硬化する(させる)工程。
本発明による方法によって、ソーラーモジュールを技術的に簡単におよび経済的に製造することが可能であり、同時に電位に誘発された性能劣化が、高い信頼性で確実に低減または回避される。
本発明による好ましい実施形態において、1個または複数個のスペーサがまだ未硬化である接着剤中に導入される。スペーサは、それぞれの場合において、接着層の接着剤が未硬化である間に、基材面から事前に定義可能な最小距離に接着面を保持する目的で実装されている。この手段によって、ソーラーモジュールは技術的に簡単におよび経済的に製造することが可能であり、同時にモジュール支持体は、基材裏面に、スペーサによって事前に定義された距離に確実に配置される。
生産工学上の観点から、スペーサを、モジュール支持体のおよび/または基材裏面の接着面にすでに適用された少なくとも1つの接着層中に導入することが有利であり得る。この手段によって、ノズルをスペーサの寸法に適合させる必要なしに、接着剤を従来のノズルから簡単に噴霧することができる。好ましくは、接着層中へのスペーサの導入は、圧力サージによってスペーサを空気圧で吹き込むことによって行われ、このことは技術的に特に簡単で経済的な方法で実現することができる。さらに、スペーサは、接着層内部の事前に定義した位置に選択的に位置決めすることができる。
本発明はさらに、ソーラーモジュール、特に薄膜ソーラーモジュールの基材裏面にモジュール支持体を取り付けるための、硬化可能な、硬化状態にある電気絶縁性が高い接着剤よりなる少なくとも1つの接着層の使用であって、電気絶縁性が高い接着剤が高い信頼性でソーラーモジュールの電位に誘発された性能劣化を低減または防止する、使用に拡張される。
本発明をここで、例示的な実施形態に関して、添付図面を参照して詳細に説明する。
モジュール支持体の、ソーラーモジュールの基材裏面への接合の、概略(部分)断面図である。 図1のソーラーモジュールの裏側の概略平面図である。 図1のソーラーモジュールの概略断面図である。 図1のソーラーモジュールのモジュール支持体の概略透視図である。 図1のソーラーモジュールのモジュール支持体の概略透視図である。 別のソーラーモジュールの裏側の概略平面図である。 本発明による方法のフローチャートである。 接着剤の比電気抵抗の関数としての電位に誘発された性能劣化のグラフである。
最初に図2および図3を参照する。図2は、薄膜ソーラーモジュールの例を使用して、全体として参照番号1で呼ばれる、ソーラーモジュール1の裏側(「側面IV」)の概略図を示す。慣例により、ソーラーモジュール1は、2つの平行な縦辺5と、縦辺に対して垂直な横辺6を備えた、(上部から見て)長方形平面体の形態で実装される。図3は、ソーラーモジュール1の断面図を示す。
図3で認められるように、ソーラーモジュール1は、いわゆる基材構造に相当する構造体を有する。即ち、ソーラーモジュール1は、電気絶縁(キャリア)基材2と、これの上に適用された薄層よりなる層構造体23を有し、層構造体23は、基材2の入光面または基材前面24(「側面III」)の上に配置されている。基材2はここで例えばガラス、特にソーダ石灰ガラスよりなり、比較的低い光透過率を有し、十分な強度の他の絶縁材料を使用するのと同様の潜在能力ならびに行われる加工工程に対して不活性挙動を有する。
具体的には、層構造体23は、基材前面24に配置された裏電極層25を備え、層25は、例えばモリブデン(Mo)などの不透明金属よりなり、例えば基材2に蒸着によって適用することができる。裏電極層25は、例えば約1μmの層厚を有する。バンドギャップが好ましくは、考えられる最大の割合で太陽光を吸収できる半導体を含む半導体層26は、裏電極層25に堆積される。半導体層26は、例えばp−導電性黄銅鉱半導体、例えばCu(In,Ga)(S,Se)族、特にナトリウム(Na)ドープ銅−インジウム−ジセレニド(CInSe)の化合物よりなる。半導体層26は、例えば1から5μmの範囲内である、例えば約2μmである層厚を有する。バッファ層27は、半導体層26に堆積されている;バッファ層27はここでは、例えばカドミウムスルフィド(CdS)の単層および真性酸化亜鉛(i−ZnO)の単層(図には詳細に示していない。)よりなる。バッファ層27は、例えば半導体層26よりも層厚が薄い。表電極層28は、例えば蒸着によってバッファ層27に適用される。表電極層28は、可視スペクトル領域での放射に対して透過性であり(「ウィンドウ層」)、入射太陽光をごくわずかに弱める。一般にTCO層(TCO=透明導電性電極)と呼ばれる透明表電極層28は、金属酸化物、例えばn−導電性のアルミニウム(Al)ドープ酸化亜鉛(ZnO)をベースとしている。表電極層28は、バッファ層27および半導体層26と共に、ヘテロ接合(即ち対向導体型の一連の層)を形成する。表電極層28の厚さは、例えば約300nmである。
環境上の影響から保護するために、例えばポリビニルブチラール(PVB)またはエチレンビニルアセテート(EVA)よりなり、例えば低鉄エクストラホワイトガラスよりなる、太陽光に対して透過性であるカバー層30に接着接合された中間層29が、表電極層28に適用される。
全体のモジュール電圧を上昇させるために、薄膜ソーラーモジュール1のモジュール表面を多数の個々のソーラーセル31に分割して、これを直列接続で相互に接続する。この目的のために、層構造体23は、好適なパターニング技術、例えばレーザー書き込みまたは機械加工(例えばドロッシングもしくはスクラッチング)を使用してパターニングされる。各ソーラーセル31では、このようなパターニングは、通例、頭字語P1、P2、P3によって省略された、3つのパターニング工程を含む。第1のパターニング工程P1において、裏電極層25は、半導体層26の適用前に行われる第1のトレンチ32の形成によって、第1のトレンチ32にこの工程の半導体材料が充填されるように遮断される。第2のパターニング工程P2において、半導体層26およびバッファ層27は、表電極層28の適用前に行われる第2のトレンチ33の形成によって、第2のトレンチ33がこの層の導電性材料によって充填されるように遮断される。第3のパターニング工程P3において、表電極層28、バッファ層27および半導体層26は、プラスチック層29の適用前に行われる第3のトレンチ34の形成によって、第3のトレンチ34がこの層の絶縁材料によって充填されるように遮断される。または、第3のトレンチ34が下方の基材2まで到達することが考えられる。記載したパターニング工程P1、P2、P3によって、ソーラーセル31は相互に直列接続されて形成される。ソーラーモジュール1は、例えば通例60Vの端子電圧を有する。光起電システムにおける複数個のソーラーモジュール1の直列接続により、直列接続内の位置に応じて、個々のソーラーモジュールの層構造体と接地電位との間に1000Vを超える電圧が生じる。
図2で認められるように、2個の細長モジュール支持体4は、モジュールの裏側に、即ち基材2の基材裏面3に取り付けられ、ソーラーセルを形成するための層構造体23と反対側に向けられている。モジュール支持体4は、それぞれの場合においてソーラーモジュール1の縦辺5に沿って延在し、例えば縦中心面7の両側に、ソーラーモジュール1の中心横断面8について対称に、モジュール縦縁9付近に配置されている。モジュール支持体4は、それぞれの場合において、横縁10手前の短距離で終端している。
ソーラーモジュール1の機械的補強は、2個の細長モジュール支持体4によって達成することができる。他方、モジュール支持体4は、静止固定モジュールホルダーへの取り付けによって、通例、例えばアルミニウムよりなる複数個の支持レールを含むソーラーモジュール1を設置するように作用する。2個のモジュール支持体4は、金属材料、例えばアルミニウムまたは鋼鉄よりなる。2個のモジュール支持体4が図2に示されているが、ソーラーモジュール1がより多数のまたはより少数のモジュール支持体4を等しく所有可能であることが理解される。
図4Aおよび4Bは、個々のモジュール支持体4を詳細に示し、図4Aは、基材裏面3に接合されるモジュール支持体4の表側11の透視平面図を示し、図4Bは、モジュール支持体4の面13および裏面12の透視図を示す。
これらの図によると、モジュール支持体4は、外形部として実装され、例えば金属形成方法によって金属板から製造されている。モジュール支持体4は、少なくとも理論的に、V字形外形を有する2個の部分14、16に分解することができる。このため、モジュール支持体4は、裏帯状部17によって相互に連結された、相互に対して鋭角に位置決めされた2個の脚部15,15’を備える、第1のV字形部14を含む。2個の脚部15、15’は、それぞれの場合において、脚部15、15’から側方に曲がって、縦辺5に沿って延在する表帯状部18に連結されている。2個の表帯状部18は、基材2へモジュール支持体4を取り付けるための接着面19を備えている。2個の表帯状部18の一方は、隣接する脚部15’に対して鋭角に位置決めされた別の脚部15’’に連結され、隣接する脚部15’と共に、この手段によって第2のV字形部16が形成され、第1のV字形部14から対向方向に向けられている。別の裏帯状部17は、この脚部15’’上に位置する。傾斜した外形を有するモジュール支持体4の構造体によって、ソーラーモジュール1を非常に効果的に硬化させることができる。
図4Aおよび4Bに示すように、接着ビーズ20はそれぞれの場合において、モジュール支持体4の2つの接着面19に適用され、接着ビーズ20は、モジュール支持体4を基材裏面3に接着接合させるように作用する。接着ビーズ20は、接着面19の実質的に全長にわたって延在する。通例、接着剤35は、未硬化状態では、軟質であるまたは塑性的に延展可能であり、硬化によって、場合によりある程度まで弾性的に延展可能な硬質状態に変換され、モジュール支持体4は、基材2に固定して接合される。
ここで図1を参照すると、ソーラーモジュール1の基材裏面3へのモジュール支持体4の接着接合が、ソーラーモジュール1の縦辺5に沿った概略(部分)断面図を使用して示されている。断面は、接着剤35の接着ビーズ20を通過している。
接着層20は、硬化可能な、または接合状態にある、硬化された電気絶縁性が高い接着剤35よりなり、接着剤35は、例えば6000GOhm*cmの高い比電気抵抗を有する。接着層20の厚さは、モジュール支持体4と基材2との間の距離に相当して、例えば2mmである。
図1は、接着層20の任意の実施形態における、球形状のスペーサ21を示している。接着層20は、複数個のスペーサ21も有することができ、スペーサ21は各種の、例えば棒形状、立方体形状または台形形状を所有可能であることが理解される。スペーサ21の直径が等しいことによって、モジュール支持体4を接着接合するために基材2に押し付ける場合の、モジュール支持体4の2つの接着面19と基材裏面3との間の最小距離を事前に定義することができる。スペーサ21はここでは、例えば弾性的に延展可能なプラスチック、例えばショア硬度が85のEPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)またはショア硬度が80のPOM(ポリオキシメチレン)よりなる。スペーサを流れる局所電流を回避するために、スペーサが、電気絶縁性が高い接着剤35程度のまたはこれより大きい比電気抵抗を有することが特に有利である。スペーサ21は、スペーサ機能を満足するために、非硬化接着35よりも硬いことが好ましい。しかしスペーサ21は、「硬すぎる」ことはないので、局所的な点負荷によるガラス状基材2に対する損傷を回避できる。一般に、ここでは、スペーサ21の硬度は、基材2の硬度より低い。さらに、例えば雪圧または風圧負荷からの、実際に強い力効果の際の、スペーサ21からの点負荷を回避するために、スペーサ21の硬度は最大値が、硬化した接着剤の硬度に相当する。
図5は、別のソーラーモジュール1の基材裏面3の例示的な実施形態を示す。図5で認められるように、4個のモジュール支持体4.1、4.2、4.3、4.4は、モジュールの裏に、即ち基材2の基材裏面3に取り付けられ、基材2はソーラーセルを形成するための層構造体23と反対側に向けられている。モジュール支持体4.1、4.2、4.3、4.4の使用により、図2の例と比較して、良好な負荷分布およびより低い材料経費によって、取り付けを確実に達成することができる。
図6は、電気絶縁性が高いモジュール支持体4を備えたソーラーモジュール1を製造するための本発明による方法のフローチャートを示す。
実験において、電位に誘発された劣化を、標準化した試験条件下で測定した。試験は、人工気候室で500時間の期間にわたって行い、ソーラーモジュール1を85%相対湿度にて95℃の温度に暴露して、ソーラーモジュール1を1日1回、−40℃まで冷却した。
ソーラーモジュール1は、人工気候室に電気的に絶縁して配置した。ソーラーモジュール1は、設けられたすべての箇所で、基材2の基材裏側3のモジュール支持体4上のソーラーモジュールM3−M6の場合で接地した。ソーラーモジュールM1およびM2は、基準として作用し、接合されたモジュール支持体4を有していなかった。ソーラーモジュールM1−M6は、30cm×30cmの面積を有していた。ソーラーモジュール1の内部層構造体23は、図3に記載されたものに相当し、薄膜ソーラーモジュールの上記の構造体は、黄銅鉱半導体をベースとしていた。
ソーラーモジュールM3−M6では試験中に、−1000Vの電圧が、短絡したモジュール接続と接地との間に印加された。ソーラーモジュールM1およびM2は、基材裏面3上のモジュール支持体4なしで、人工気候室内で500時間にわたって電圧を印加せずに放置して、基準として作用させた。
接着剤AおよびBは、6000GOhm*cmまたは1500GOhm*cmの比抵抗を有する、1成分のアルコキシ基硬化シリコーン接着剤である。接着剤Cは、シラン修飾ポリマーをベースとするスプレー式1成分接着剤およびシーラントであり、水分との反応によって架橋(硬化)して、比電気抵抗が5GOhm*cmの弾性生成物を形成する。
実験の結果を表1および図7に示す。示した性能劣化は、試験前の性能に基づく、試験の前後のライトソーキング後に太陽光シミュレータで測定した性能の差である。
性能劣化の明らかな低減を、モジュール支持体4をソーラーモジュールM3−M6の基材裏面3に取り付けるための接着剤35の比電気抵抗の関数として示す。比抵抗が6000GOhm*cmである接着剤Aの場合、性能劣化は4.4%および7.8%である。比抵抗が1500GOhm*cmである接着剤Bの場合、性能劣化は14.0%である。比抵抗が5GOhm*cmである従来技術による接着剤Cの場合、性能劣化は32.3%である。このため、比抵抗が5GOhm*cmの従来技術による接着剤Cと比較して、比抵抗が1500GOhm*cm以上の本発明による接着剤A、Bの性能劣化の予想外で劇的な低減が示されている。
Figure 0006401261
上記の説明から明らかであるように、本発明によってソーラーモジュール1が利用可能となり、ソーラーモジュール1により、モジュールホルダーへの取り付けを安定化または支持するためのモジュール支持体4を簡単に、高い信頼性で、経済的に接着結合することができる。電気絶縁性が高い接着剤35の本発明による使用により、電位に誘発されたモジュール性能の劣化は明らかに低減される。このことは当業者にとって予想外であり、驚くべきであった。
1 ソーラーモジュール
2 基材
3 基材裏面
4,4.1,4.2,4.3,4.4 モジュール支持体
5 縦辺
6 横辺
7 中心縦面
8 中心横断面
9 モジュール縦縁
10 モジュール横縁
11 表側
12 裏側
13 表面
14 第1のV字形部分
15,15’,15’’ 脚部
16 第2のV字形部分
17 裏帯状部
18 表帯状部
19 接着面
20 接着層
21 スペーサ
23 層構造体
24 基材前面
25 裏電極層
26 半導体層
27 バッファ層
28 表電極層
29 中間層
30 カバー層
31 ソーラーセル
32 第1のトレンチ
33 第2のトレンチ
34 第3のトレンチ
35 接着剤
d 接着層20の厚さ

Claims (11)

  1. 少なくとも基材(2)およびカバー層(30)、これらの間に配置されたソーラーセル(31)を形成するための層構造体(23)、ここで前記基材(2)は、ソーダ石灰ガラスを含む、ならびに
    前記層構造体(23)と反対側に向けられた基材面(3)上に、前記ソーラーモジュール(1)の設置を補強および/または支持するための少なくとも1個のモジュール支持体(4)を含む、フレームレスソーラーモジュール(1)であって、
    前記モジュール支持体(4)は、V字形外形を有する2個の部分(14、16)を含み、
    前記モジュール支持体(4)は、金属材料で形成され、少なくとも1つの接着層(20)を介して前記基材面(3)に接合された、少なくとも1つの接着面(19)を有し、
    前記接着層(20)が、硬化した、電気絶縁性が高い接着剤(35)を含み、前記接着剤(35)が、1500GOhm*cm以上の比抵抗を有する、
    フレームレスソーラーモジュール(1)。
  2. 前記接着剤(35)が、シリコーン接着剤を含む、請求項1に記載のソーラーモジュール(1)。
  3. 前記接着層(20)の厚さdが、0.5mmから10mmである、請求項1または2に記載のソーラーモジュール(1)。
  4. 前記接着面(19)が、前記基材面(3)の5%から20%である、請求項1から3のいずれか一項に記載のソーラーモジュール(1)。
  5. ソーラーモジュール(1)の発電動作に伴う、前記層構造体(23)と前記モジュール支持体(4)との間の最大電圧差が、900V以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載のソーラーモジュール(1)。
  6. ソーダ石灰ガラスが11重量%のNaOの最小含有率を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のソーラーモジュール(1)。
  7. 前記層構造体(23)が、前記基材(2)上に配置され、中間層(29)を介して前記カバー層(30)に接合されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のソーラーモジュール(1)。
  8. 前記接着層(20)が、1個または複数個のスペーサ(21)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のソーラーモジュール(1)。
  9. 請求項1から8のいずれか一項に記載のソーラーモジュール(1)を製造する方法であって、
    基材(2)およびカバー層(30)を準備して、これらの間にソーラーセル(31)を形成するための層構造体(23)を位置させる工程、
    前記ソーラーモジュール(1)の設置を補強および/または支持するための、少なくとも1個のモジュール支持体(4)を準備する工程、
    硬化可能な接着剤よりなる接着層(20)を前記モジュール支持体(4)の少なくとも1つの接着面(19)上におよび/または前記層構造体(23)と反対側に向けられた基材面(3)上に、適用する工程、
    前記モジュール支持体(4)を前記基材面(3)に前記少なくとも1つの接着層(20)を介して接合する工程、
    前記モジュール支持体(4)を前記基材(2)に接着取り付けするための、前記接着層(20)の接着剤を硬化する工程;
    によって、ソーラーモジュール(1)を製造する方法。
  10. 1個または複数個のスペーサ(21)が、まだ未硬化である接着剤中に導入され、前記スペーサ(21)がそれぞれの場合において、前記接着層(20)の接着剤が未硬化である間に、前記基材面(3)から事前に定義可能な最小距離に前記接着面(19)を保持する目的で実装されている、請求項9に記載の方法。
  11. ソーラーモジュール(1)の電位に誘発された性能劣化を低減するための、請求項1から8のいずれか一項に記載のソーラーモジュール(1)の基材裏面(3)上にモジュール支持体(4)を取り付けるための、硬化状態にある電気絶縁性が高い接着剤(35)からなる少なくとも1つの接着層(20)の使用。
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