(第1実施形態)
以下図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。なお各図面に共通する要素には同一の符号を付す。図1は本発明第1の実施の形態に係るシート斜行補正装置を備えた画像形成装置の一例であるカラープリンタの概略を示す断面図である。本実施の形態では4色のトナー像を形成する電子写真方式のカラー画像形成装置について説明する。
図1において実施の形態の画像形成装置100は4個の感光体ドラム1a〜1dを備えている。そして、各感光体ドラム1の周囲には、ドラム表面を均一に帯電する帯電手段2a〜2d、画像情報に基づいてレーザービームを照射し感光体ドラム1上に静電潜像を形成する露光手段3a〜3dが設けられている。また、静電潜像にトナーを付着させてトナー像として顕像化する現像手段4a〜4d、感光体ドラム1上のトナー像をシートに転写させる転写部材5a〜5dが配設されている。感光体ドラム1a〜1d、露光手段3a〜3d、現像手段4a〜4d、転写部材5a〜5dによって、シートに画像を形成する画像形成部が構成される。
さらに、転写後の感光体ドラム1表面に残った転写後トナーを除去するクリーニング手段6a〜6d等が配設されている。本実施の形態においては、感光体ドラム1と帯電手段2、現像手段4、トナーを除去するクリーニング手段6は一体的にプロセスカートリッジ7a〜7dを形成している。
像担持体としての感光体ドラム1は、アルミニウム製シリンダの外周面に有機光導電体層(OPC)を塗布して構成したものである。感光体ドラム1は、その両端部をフランジによって回転自在に支持されており、一方の端部に不図示の駆動モータからの駆動力を伝達することにより、図中反時計回り方向に回転駆動される。
各帯電手段2a〜2dはローラ状に形成された導電性ローラで、このローラを感光体ドラム1表面に当接させると共に、不図示の電源によって帯電バイアス電圧を印加することにより、感光体ドラム1表面を一様に帯電させるものである。露光手段3はポリゴンミラーを有し、このポリゴンミラーには不図示のレーザーダイオードから画像信号に対応する画像光が照射される。
各現像手段4a〜4dは、トナー収納部4a1、4b1、4c1、4d1と現像ローラ4a2、4b2、4c2、4d2等から構成される。トナー収納部4a1〜4d1は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色のトナーを収納し、現像ローラ4a2〜4d2は、感光体表面に隣接し、回転駆動されると共に現像バイアス電圧を印加することにより現像を行う。
4個の感光体ドラム1a〜1dの夫々に対向するように配置され、シートを上方に搬送するための転写ベルト9aが設けられている。転写ベルト9aの内側には、4個の感光体ドラム1a〜1dに対向して転写ベルト9aに当接する転写部材5a〜5dがそれぞれ併設されている。転写部材5a〜5dは不図示の転写バイアス用電源で接続されており、転写部材5から正極性の電荷が転写ベルト9aを介してシートSに印加される。そして、この電界により、感光体ドラム1に接触中のシートSに感光体ドラム1上の負極性の各色トナー像が順次転写され、カラー画像が形成される。転写ベルト9aの上方には、シートに転写されたトナー像をシートに定着させるための定着部10が設けられている。定着部10の上方には、画像が形成されたシートを排出部13へ排出するための排出ローラ対11、12とが設けられている。
画像形成装置100における下部には、積載されたシート束から1枚づつシートを給送する給送部8が設けられている。給送部8は、シートを転写ベルト9aの方へ送り出す送り出しローラ対8aを含む。また、シートを搬送する搬送部としての送り出しローラ対8aと、転写ベルト9aとの間には、駆動ローラ19と搬送コロ18とで構成される回転体対である搬送ローラ対91が配置されている。送り出しローラ対8aや搬送ローラ対91はシートの斜行を補正しつつシートを搬送するシート搬送装置の一部を構成する。シート搬送装置の詳細構成については後に述べる。
15は、排出ローラ対11、12と搬送ローラ対91とを繋げる両面搬送路である。両面搬送路15には、斜送ローラ16およびUターンローラ17が配置されている。
給送部8の送り出しローラ対8aによって給送されたシートSは、搬送ローラ対91によって転写ベルト9aへ搬送される。そして、転写ベルト9aによるシートの搬送中に、感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、順次転写部材5a〜5dの作用によってシートに転写される。トナー像が転写されたシートは、定着部10で画像定着されて排出ローラ対11、12によって排出部13へ排出される。
シートの両面に画像形成を行う場合には、排出ローラ対11、12によるシート搬送中に、排出ローラ対11、12を逆転することにより、排出ローラ対11、12によって両面搬送路15へシートを搬送する。両面搬送路15に搬送されたシートSは、斜送ローラ16を通過し、Uターンローラ17及び搬送ローラ対91によって再び転写ベルト9aに搬送される。そして、シートの2面目に画像が形成される。
画像形成装置100に一体的に組み込まれた本実施の形態に係るシート搬送装置の構成について、まず、図2、図3で示す、シート搬送装置の斜視図を用いて説明を行う。
搬送ローラ対91は、駆動ローラ19と、搬送コロ18とによって構成される。駆動ローラ19は、感光体ドラム1の回転軸方向と平行に延びた駆動軸19aに固着されている。駆動軸19aは給紙フレーム20に回動自在に支持される。駆動軸19aに不図示のモータからの回転駆動が伝達されて駆動ローラ19が回転する。
搬送コロ18は、軸方向に複数並設されている。複数の搬送コロ18の夫々は、給紙フレーム20に回転自在に支持される。複数の搬送コロ18のそれぞれは駆動ローラ19に接してニップ部を形成する。シートは搬送コロ18と駆動ローラ19とで挟まれて搬送される。
図2とは反対側から見た図3の斜視図に示されるように、複数のシャッタ部材23(23E、23F、23G、23H)は、駆動軸19aと平行に延びたシャッタ軸22に同位相(同一の位置関係)で固定されている。シャッタ部材23の回動軸としてのシャッタ軸22は、給紙フレーム20に回転自在に支持される。複数の搬送コロ18の夫々には、内部を軸方向で連通するような連通孔が形成されていて、シャッタ軸22は搬送コロ18の連通孔に挿入されている。よって、搬送コロ18の回動中心とシャッタ軸22の回動中心とは一致している。シャッタ軸22の軸方向の中央には、後で詳述するシャッタカム24がシャッタ軸22に固定されている。シャッタ軸22に固定された複数のシャッタ部材23と、シャッタカム24とは、シャッタ軸22とともに一体的に回動する。
複数の搬送コロ18の夫々は給紙フレーム20に移動可能に支持されており、各搬送コロ18は、給紙フレーム20に固定された搬送コロバネ21により駆動ローラ19に対し付勢されて圧接可能に設けられている。搬送コロ18が駆動ローラ19に付勢された状態で、シャッタ軸22の外周面と、搬送コロ18の連通孔の内周面との間には、隙間が確保されているので、搬送コロバネ21のバネ力はシャッタ軸22には伝わらない。そのため、搬送コロバネ21のバネ力が、シャッタ軸22と一体に固定された複数のシャッタ部材23及びシャッタカム24の回転動作を阻害することはない。
係止部材としてのシャッタ部材23には、駆動ローラ19と搬送コロ18とのニップ部にシートSが進入する寸前にシートS先端に当接してシートSを係止し得る突き当て面23a、23b、23c、23dが4箇所、周方向において等間隔で設けられている。係止面としての突き当て面23a、23b、23c、23dは、シャッタ部材23にシートS先端がそれぞれの突き当て面に接触する以前では、駆動ローラ19と搬送コロ18とのニップ部よりも上流側に配置され、搬送されるシートの先端を係止する。
次に、シャッタカム24について説明する。シャッタカム24はシャッタ部材23の回転方向の位置を決めるものであり、シャッタ部材23の突き当て面23a、23b、23c、23dをシートの先端を係止できる適正な位置に設定する。図4(a)に示されているように、シャッタカム24は、側面視で四角形であり、角部が円弧状となっており、各辺に凹部24a、24b、24c、24dが形成されている。シャッタカム24は押圧部材25により押圧され、押圧部材25は、給紙フレーム20に、揺動軸部を中心にして揺動可能に軸支されている。そして、一端が給紙フレーム20に固定され、他端が押圧部材25に取り付られたシャッタバネ27によって、押圧部材25はシャッタカム24へ付勢される。
図4の断面図に示されるように、押圧部材25の先端には、押圧部材25に対し回転自在に軸支されたカムフォロア26が配置されている。カムフォロア26は、シャッタカム24に常時接触する構成となっている。
この構成により、シャッタバネ27のバネ力によってカムフォロア26がシャッタカム24を付勢すると、図4(a)に示すような、回転方向における待機位置(待機状態)にシャッタ部材23が保持される。この待機位置にシャッタ部材23があるときには、シャッタカム24の凹部24aにカムフォロア26が対向する。つまり、シャッタバネ27のバネ力で付勢されたカムフォロア26がシャッタカム24の凹部24aに接触しているので、シャッタバネ27のバネ力によってシャッタ部材23が待機位置に保持される。即ち、シャッタバネ27で付勢されたカムフォロア26やシャッタカム24の24a、24b、24c、24dなどによってシャッタ部材23を定常位置に位置決めする位置決め手段が構成される。図4(a)で示したシート先端係止姿勢である待機位置にシャッタ部材23あるとき、シャッタ部材23の突き当て面23a、23b、23c、23dのいずれかが、駆動ローラ19と搬送コロ18とのニップ部よりも搬送方向の上流側となる。
ところで、図4の断面図において、28は、搬送ローラ対91へ搬送されてくるシートの右側の面を案内する右側搬送ガイドであり、20はシートの左側面の面を案内する左側搬送ガイドである。
尚、本実施形態では、シャッタ軸22と、シャッタ部材23と、シャッタカムとをそれぞれ別部材と成形し、シャッタ軸22に、複数のシャッタ部材23及びシャッタカム24を固定するように構成した。しかし、複数のシャッタ部材とシャッタカム及びシャッタ軸とを一体的な樹脂成形品としても構成してもよい。
続いて図4乃至図7を用いて、シート搬送装置の動作の説明を行う。
図4、図5は、シート搬送装置の断面を示しており、シートの斜行が補正されながらシートが搬送されていく過程を示している。また、図6は、図4、図5で示したそれぞれの状態におけるシャッタカム24のカム線図を示したものである。図7はシートSが搬送ローラ対91に対して斜行して進入する状態を示した図である。
ここで、シートSが給送部8により搬送され、例えば、図7に示すように、シートSが搬送ローラ対91に対して斜行した状態で進入してくる。シートSが斜行した姿勢のまま搬送されて画像形成部に到達すると、シートSに転写される画像はシートSに対して傾斜して形成されることになる。そこで、本実施形態では、シートに画像を形成する前に、駆動ローラ19及び搬送コロ18の近傍に配置された複数のシャッタ部材23によってシートの斜行を補正する。
図4(a)はシャッタ部材23の突き当て面23aにシート先端が接触する直前を示した図である。この時、シャッタカム24は、シャッタバネ27の付勢力によりシート先端を揃えるための待機位置で待機している。この状態ではシートSは突き当て面23aに接触していないので、既述のようにシャッタ部材の突き当て面23aが搬送ローラ対91のニップ部よりも上流側となっている。
続いて、シート先端が突き当て面23aと接触すると、シートSはシャッタバネ27にて付勢されたシャッタカム24の保持力の反力、及びシャッタ軸22、該シャッタ軸22上に固定された複数のシャッタ部材23やシャッタカム24の慣性力を反力として受ける。本実施形態では、シートの先端が当接したばかりの図4(b)に示した状態では、上記反力に抗してシートSの先端がシャッタ部材23を押して回動することがない。
そして、給送部8の送り出しローラ対8aが更にシートSを搬送すると、図4(c)に示されているようにシートの先端側にループが形成されることで、シートの先端が複数のシャッタ部材23の突き当て面23aに倣う。
シート先端がシャッタ部材23の突き当て面23aに倣うときの動作について詳述する。即ち、シートSの先端部のうちの、シート幅方向における先行する側の部分はシャッタ部材23の突き当て面23aに当接した状態で係止される。そして、シートSの先端部のうちの、シート幅方向における後行側の部分がシャッタ部材23の突き当て面23aに順次当接して係止されていく。つまり、図7の上視図で示した例では、シートSの先端部において右側が先行している。この場合では、シートの搬送に伴って、シートの先端部は、複数のシャッタ部材23の23H、23G、23F、23Eの順に順次当接していく。この過程で、該シートSは図4(c)に示すように矢印y方向に湾曲したループを形成して行く。なお、この時シートSの湾曲したループは、図7の右側の方が左側より大きくなる。
そして、これらの一連の動きにより、シートSの先端部が複数のシャッタ部材23の突き当て面23aに倣うことで、シートの先端部が搬送ローラ対91の回転軸方向に平行になる。そして、右側搬送ガイド28および左側搬送ガイド20bにより形成されたシート搬送路内で、シートSが所定のループを形成してから、シートSの剛度(剛性)の強さにより、シャッタ軸22を中心に図4(c)の矢印z方向に複数のシャッタ部材23が回動する。それにより、図4(d)及び図6に示すように、複数のシャッタ部材23及びシャッタカム24はさらに回動し、シートSの先端は駆動ローラ19と搬送コロ18とのニップ部で挟持されて搬送される。この時、シートのループ部分が右側搬送ガイド28と、給紙フレーム20の一部である左側搬送ガイド20bにより形成されたシート搬送路内で、より大きくループをつくる方が斜行補正能力は高くなる。すなわち、図4(d)に示すようにループ形成スペース32を広く設けることが望ましい。また、本実施形態では、右側搬送ガイド28に、ループ形成スペース32内で形成されたシートのループが接触することで、シートSの剛度が見かけ上強くなり、シートSが突き当て面23aを押圧する力が強くなり、シャッタバネ27の付勢力に抗してシャッタ部材23を確実に移動させる。
なお、シート先端における右端側がシャッタ部材23に当接した時点ではシャッタ部材23が揺動せず、シート先端の左端側もシャッタ部材23に当接してからシャッタ部材23の揺動が始まる形態を例示した。しかし、先端がシャッタ部材23に接しているシートがシャッタ部材23を揺動させている途中で、シートの先端が複数のシャッタ部材23の突き当て面に順次突き当ることでシート先端が突き当て面に倣っていくようにしてもよい。このようにしてもシャッタバネ27のバネ力を設定しても斜行の補正は可能である。
続いて、複数のシャッタ部材23及びシャッタカム24は、駆動ローラ19と搬送コロ18とによって搬送されているシートSの先端により、さらに回動する。そして、複数のシャッタ部材23及びシャッタカム24が回動することによって、図5(a)に示すように、シャッタカム24におけるカムフォロア26と対向部がシャッタカム24の最頂点(角部)を超える(図6参照)。シャッタカム24の最頂点を越えると、複数のシャッタ部材23には、シャッタカム24及びシャッタバネ27によって発生する回転力によって、さらに、シートによって押されて回動したときと同じ方向である矢印z方向に回転する力が作用する。つまり、駆動ローラ19と搬送コロ18とによって搬送されているシートSの先端で押されている途中で、シャッタバネ27の付勢力がシャッタ部材23に働く力の方向がシャッタカム24の作用によって切り替わる。
そして、シャッタバネ27の付勢力によって、シャッタ部材23は、図5(a)から、シート通過姿勢である図5(b)の状態となる。図5(b)は、搬送コロ18と駆動ローラ19によりシートSが搬送されていく状態を示している。この時、シャッタ部材23には、シャッタカム24及びシャッタバネ27によってz方向への回転力が発生しているが、シャッタ部材23における突き当て面23bが形成されている凸部が搬送されているシートSに当接して、シャッタ部材23が保持されている。このとき、シートSは、上流側の送り出しローラ対8aと搬送コロ18及び駆動ローラ19のニップ部とで張った状態で搬送されているため、シートSの見かけ上の剛度が高い状態で搬送されている。
なお、シートSの後端が上流側の送り出しローラ対8aを通過した後は、シートSの見かけ上の剛度は弱くなる。よってシートSの後端が送り出しローラ対8aを通過した後、シャッタバネ27の付勢力でシャッタ部材23を回動させる力とシートの剛度とがつり合った状態(図5(b))が徐々にくずれていく。そして、複数のシャッタ部材23はシャッタカム24及びシャッタ軸22と共に矢印z方向に徐々に回転するようになる。
図5(c)は、シートSの後端がシャッタ部材23から離接していくときの状態を示している。シートSの後端がシャッタ部材23から離れると、シャッタ部材23は、シートが搬送される搬送方向と同じ方向に回転して、図5(d)に示したような、突き当て面23bが次のシートSの先端を揃えるための待機位置で待機した状態となる。このように、突き当て面23bは、シートSの後端に伴って移動して待機位置に移動するため、シートの紙間を従来よりも大幅に短くすることが可能となる。
このように図4と図5で示した状態を繰り返すことで、シャッタ軸22上に固定された複数のシャッタ部材23とシャッタカム24がシャッタ軸22と共に回転していく。そして、シートSが順次搬送されていく毎に、搬送ローラ対91のニップ部の近傍で待機する突き当て面が23a、23b、23c、23d、23aの順で変わっていく。それぞれの突き当て面が、新たにされてきたシートS先端の係止を行うことで、シートSの斜行を補正していく。
本実施形態では、シートの後端がシャッタ部材23から離れてから、シャッタ部材23が、次の突き当て面にてシート先端を揃えるための待機位置に移動するまでの時間を短くすることができる。シートの表面がシャッタ部材23と接触しながらシートが搬送されている状態(図5(b))から待機位置(図5(d))へ、シャッタ部材23がシートの搬送方向に回転するためである。これにより、シート搬送速度の高速化や、短いシート間隔に対応できるように、シャッタ部材の突き当て面が、次シートの先端を揃えるためのホーム位置に早く戻ることが可能となる。よって、ユーザからのさらなるシート搬送の生産性向上の要求に応えることができる。
また、シートの通紙枚数によっては、突き当て面にシートの先端が突き当ることに起因してシャッタ部材の突き当て面に削れが発生する虞がある。本実施形態のように1つのシャッタ部材に複数の突き当て面を設けることで、突き当て面の削れを軽減することができる。
尚、上記の本実施形態では、シャッタ部材23の突き当て面を4箇所設けたが、シート搬送装置に必要とされる通紙耐久枚数に応じて、突き当て面を1〜3箇所とする構成をとっても、同様の効果は得られる。この場合のシャッタ部材23とシャッタカム24の形状を図9に示す。図9(a)、(b)、(c)のそれぞれは、1〜3箇所の突き当て面を持ったシャッタ部材23と、シャッタ部材に対応するシャッタカム24及び、それぞれの構成におけるカム線図を示している。
図9(a)において、シャッタカムの外周におけるsa、sbおよびscで示した位置でカムフォロアが接した状態がシャッタ部材23の待機位置である。sam、sbm、scmは回転カムの半径が最も大きい頂部の位置である。カム部材の外周面における、samからsbに至るまで、およびsbmからscに至るまで、およびscmからsaに至るまでは、なだらかに回転カムの半径が小さくなる。図9(b))において、シャッタカムの外周におけるsd、seで示した位置でカムフォロアが接した状態がシャッタ部材23の待機位置である。sdm、semは回転カムの半径が最も大きい最頂の位置である。カム部材の外周面における、sdmからseに至るまで、およびsemからsdに至るまでは、なだらかに回転カムの半径が小さくなる。図9(c)において、シャッタカムの外周におけるsfで示した位置でカムフォロアが接した状態がシャッタ部材23の待機位置である。sfmは回転カムの半径が最も大きい最頂の位置である。カム部材の外周面における、sfmからsfに至るまでに至るまでは、なだらかに回転カムの半径が小さくなる。これら変形例におけるシート搬送に伴う動作は、既述した突き当て面が4箇所の場合と同じとなるので省略する。
ここで、図8に示すように、搬送されるシートSのシート搬送方向と直交する幅方向の長さが比較的大きい場合(図8の実線で示すシートS)、主としてシートの両側端部近傍に配置される二つのシャッタ部材23E、23Hがシートの先端に作用する。
また、使用されるシートの幅が、前記シャッタ部材23E、23Hにかからないような比較的小さい場合(図8の点線で示すシートS2)、シャッタ部材23E、23Hよりも中央部に配置されたシャッタ部材23F、23GによってシートSの斜行が補正される。
また、シャッタ部材23F、23Gを設けることで、シート先端のシャッタ部材に当接する突き当て面での接触圧を、和らげることができ、シートSの幅が比較的大きい場合のシート先端シャッタ部材に接触した跡が局部的に発生することを防止することができる。
ここで、より精度良いシートSの斜行補正能力を得るためには、シートSの幅に対応する複数のシャッタ部材23の間隔が出来るだけ広く、かつシートSの幅の中央に略対称に配置した方が良い。これは、駆動ローラ19の回転軸方向に対するシートSの先端の補正角度誤差が小さくするためである。
このことからシャッタ部材23を搬送されるシートSの両側端部近傍に配置すれば好ましい。そして、比較的小さな幅のシートSでも斜行の補正を出来るようにシートSの幅方向中央部Cの近傍にもシャッタ部材23を配置して、幅方向に複数のシャッタ部材23を備えた構成すると良い。この時、幅方向中央部Cに最も近い両側の二つのシャッタ部材23F、23Gの間隔を、その画像形成装置に使用されるシートSの最小の幅よりも小さくする。また、この場合、幅方向の中央側に配置されたシャッタ部材23F、23Gの突き当て面は、幅方向の端部側に配置されたシャッタ部材23E、23Hよりもシート搬送方向の下流側に配置すると良い。
また、待機位置にあるシャッタ部材23の突き当て面23a〜23dと、駆動ローラ19と搬送コロ18とのニップ部との間の距離を、本実施形態のように極力小さくなるように構成するのが好ましい。そして、シートSの先端が駆動ローラ19と搬送コロ18とのニップ部に入り込み、ニップ部に挟み込まれる寸前で突き当て面23a〜23dによりシートSの先端を突き当てて係止し、シートSの斜行を補正するように構成する。このように構成すると、シャッタ部材23によりシートSの斜行補正が行われた後、直ぐに駆動ローラ19と搬送コロ18とのニップ部に挟持されて搬送される。したがって、より確実に、シャッタ部材23にシートの先端が突き当ることによるシャッタ部材23のシート斜行補正効果を維持した状態で、シートの先端が駆動ローラ19と搬送コロ18に挟持されるようにできる。
また、シャッタ部材のシートの先端に当接する突き当て面をシート搬送方向と直交する方向において、シート幅の中央に対し、略対称に複数設けることが好ましい。この場合では、より精度良いシートSの斜行補正能力を得ることができる。さらにシートがシャッタ部材23に接触した跡を局部的に形成することを防ぐこともできる。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係るシート搬送装置およびこれを備えた画像形成装置の第2の実施形態について図10乃至図12を用いて説明する。なお、第1の実施形態と異なる部分のみ説明し、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付することで説明を省略する。
図10は第2の実施形態の構成を示す斜視図である。第1の実施形態では、シャッタ軸22の保持力及び回転力を該シャッタ軸22に対しラジアル方向に形成したカムを使って発生させた。このような第1の実施形態の構成に対して、本第2実施形態では、図10に示すように、シャッタ軸22の保持力及び回転力を該シャッタ軸22に対しスラスト方向に形成したカムを使って発生させている点が第1実施形態と異なる。
まず、第2の実施形態の構成について斜視図である図10、断面図である図11(a)、回転カムの拡大斜視図である図11(b)を用いて説明する。回転カム29はシャッタ軸22の端部にスプリングピン等で固定されている。回転カム29は、シャッタ軸22及びシャッタ部材23と共に一体的に回転する。
一方、図11(b)に示されているように、スライドカム30は、給紙フレーム20に形成された小判形状のカム軸20aにより、軸方向にスライド可能かつ回転規制された状態で取り付けられる。押圧バネ31は、カム軸20a上であって、給紙フレーム20とスライドカム30との間に配置されている。押圧バネ31は、軸方向においてスライドカム30を、回転カム29の方に付勢する。なお、スライドカム30は、カム軸20aに形成された不図示のストッパにより、軸方向における移動が所定範囲内となるように規制されている。
続いて、第2の実施形態の動作を図11および図12を用いて説明する。図11はシートSの先端がシャッタ部材23の係止面23aに接触し、シートSがy方向にループを形成されながら、搬送ローラ対91の軸方向に対して、シートSの先端を平行にしていく状態を示している。この時、複数のシャッタ部材23は、シャッタ部材23と同軸上に固定された回転カム29及びスライドカム30のスラスト方向に形成されたカム面を付勢する押圧バネ31の付勢力によって、保持されている。そして、第1の実施形態と同様に、搬送ローラ対91の近傍上流側の右側搬送ガイド28および左側搬送ガイド20bにより形成されたシート搬送路内で、シートSにループが形成される。
そして、複数のシャッタ部材23及び回転カム29を、シャッタ軸22を中心にして図12(a)の矢印z方向に回動させる力がシートSの剛度の強さにより発生する。回転カム29がシートSの剛度で回転すると、図12(b)に示すように、スライドカム30が矢印x方向に押圧バネ31を圧縮しながらスライドする。
そして、複数のシャッタ部材23及び回転カム29が、さらに回動すると、シートSの先端は駆動ローラ19と搬送コロ18とのニップ部に挟持され搬送される。搬送コロ18と駆動ローラ19の搬送力にて搬送されたシートSにより、シャッタ部材23及び回転カム29は更に回転する。そして、図12に示すように、回転カム29とスライドカム30との接触部が、回転カム29およびスライドカム30の最頂部を越える。回転カム29とスライドカム30との接触部が、回転カム29およびスライドカム30の最頂部を越えると、複数のシャッタ部材23は、回転カム29、スライドカム30及び押圧バネ31によって発生する回転力でさらに矢印z方向に回転する。そして、スライドカム30は図12(b)の矢印x方向とは逆にスライドする。シートが駆動ローラ19と搬送コロ18によって搬送されているシートの表面がシャッタ部材23に接触しながら、シートは搬送されていく。
シートSの後端がシャッタ部材23から離れると、複数のシャッタ部材23は、第1の実施形態と同様に再び次シート先端を揃える待機位置(次シート先端が突き当る突き当て面は23b)に回転する。この時、回転カム29、スライドカム30及び押圧バネ31は図11(b)に示す状態に再びなっている。
上述した状態を繰り返すことで、シャッタ軸22上に固定された複数のシャッタ部材23と回転カム29がシャッタ軸22と共に回転していく。そして、シートSが順次搬送されていくと、第1の実施形態と同様に、搬送ローラ対91のニップ部に近傍に位置する突き当て面は23a、23b、23c、23d、23aと順次に変わっていく。そして、それぞれの突き当て面に、新たに搬送されてきたシートS先端が突き当ることで、シートSの斜行を補正していく。
第1実施形態および第2実施形態における作用・効果を以下にまとめて述べる。
シートの先端がシャッタ部材23に倣うために必要な、シャッタ部材23を待機位置に保持しようとする保持力を、付勢手段としてのシャッタバネ27や押圧バネ31が、シャッタカム24や回転カム29を介して発揮する。これにより、シートの先端がシャッタ部材23に係止され、該シートにループが形成される。シートにループが形成されることで、シートの先端はシャッタ部材23に倣う。
シートの剛度の強さがシャッタ部材を待機位置に保持しようとするシャッタバネ27や押圧バネ31の保持力に勝ると、シートがシャッタ部材23を回動させる。シートの先端がシャッタ部材23に当接した状態を保ちながら該シートの先端が、搬送ローラ対91に挟持される。シートの先端がシャッタ部材23に当接した状態を保ちながら搬送ローラ対91に挟持されるので、搬送ローラ対91に挟持されたシートは斜行が補正された状態となる。
シャッタ部材23よりも搬送方向の上流側には、右側搬送ガイド28と左側搬送ガイド20bにより形成されたループ形成スペース32が設けられている。このループ形成スペース32が確保されていることにより、シートの先端がシャッタ部材23に係止されてからシートにループが形成されやすくなっている。シャッタ部材23よりも上流側では、搬送されるシートに対する搬送ガイドによる接触抵抗や送り出しローラ対8aの部品公差等に起因して、シート搬送速度にばらつきが生じる。このようなシート搬送速度にばらつきがある場合でも、ループ形成スペース32でシートにループが形成やすくすることで、シャッタ部材23よりもシート搬送方向の上流側におけるシート搬送速度差を吸収して、斜行補正に必要なループがシートに形成される。また、シートのループ部分が、ループ形成スペース32を形成している右側搬送ガイド28に接することで、シートの先端がシャッタ部材23を回動させるのに必要なシートの腰の強さを発揮できるようにしている。したがって、シートに充分なループを形成してない状態でシャッタ部材23をシートが回転させたり、シートの剛度でシャッタ部材23を回転させることができずにジャムが発生してしまったりする不具合が防がれる。
また、シャッタ部材23は、シート搬送姿勢(図5(b)参照)から、シート後端がシャッタ部材23を通過すると、シート搬送方向に回転して待機位置であるシート先端係止姿勢(図5(d)参照)へと復帰する。したがって、シート後端がシャッタ部材23を通過してから待機位置へ復帰するまでの時間が短い。よってシート搬送の生産性(単位時間あたりのシートの搬送枚数)を増やすことができる。
シート先端がシャッタ部材23と当接した状態(図5(a))からシートの表面にシャッタ部材23が接するシート通過姿勢(図5(b))へシャッタ部材23を回転させるために、シャッタバネ27や押圧バネ31のバネ力を用いている。また、搬送ローラ対91によって搬送されるシートの表面と接しているシート通過姿勢(図5(b))から待機位置(図5(d))へシャッタ部材23を回転させるためにも同様にシャッタバネ27や押圧バネ31のバネ力を使っている。したがって、構成が簡単でリーズナブルである。
シャッタ部材23のシャッタ軸22の外周面と、搬送コロ18の連通孔の内周面との間には、隙間が確保されているので、搬送コロバネ21のバネ力はシャッタ軸22には伝わらない。そのため、搬送コロバネ21のバネ力が、シャッタ軸22と一体に固定された複数のシャッタ部材23の回転動作を阻害することはない。したがって、シートの先端がシャッタ部材23に倣うために必要な、シャッタ部材23を待機位置に保持しようとする保持力を安定して確保できる。また、シートの後端がシャッタ部材を通過してから速やかにシート搬送方向と同方向に回転させて待機位置に復帰させる回転力を安定して確保することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係るシート搬送装置およびこれを備えた画像形成装置の第3実施形態について図13乃至16を用いて説明する。なお、第1の実施形態と異なる部分のみ説明し、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付することで説明を省略する。
第3の実施形態は、第1の実施形態のシャッタ軸22上に検知部材34を配し、検知部材34の動作を検知する検知センサ33を追加した点が第1の実施形態と異なる。
図13の斜視図で示したように検知部材34はシャッタ軸22にスプリングピン等で固定されている。検知部材34は、シャッタ軸22及びシャッタ部材23、シャッタカム24と一体的に回転する。一方、検知センサ33は、発光及び受光素子による光路を形成した光学センサであり、給紙フレーム20に取り付けられている。検知センサ33は、検知部材34で光路を遮断されるかどうかでON/OFF信号のいずれかを発する。
図14は、シャッタ部材23が待機位置にある状態の断面図である。図14(a)では、シャッタカム24の状態を示しており、図14(b)は検知部材34の構成を示している。検知部材は周方向に複数設けられているシャッタ部材23の突き当て面23a、23b、23c、23dに応じた数だけ切り欠きが形成されている。この切り欠きは検知センサ33に対応するようになっている。
続いて図14、図15を用いて、第3の実施形態の動作について説明する。
図14は、シャッタ部材23の突き当て面23aにシート先端が接触する直前を示した図である。シャッタ部材23と共に検知部材34は、シャッタカム24、押圧部材25及びシャッタバネ27により付勢された状態で、待機位置で待機している。図14(b)に示すように、検知部材34の切り欠きに検知センサ33が対向しているので、検知センサ33の光路は検知部材34によって遮蔽されておらず、透過状態である。
続いて、搬送されてきたシートS先端が突き当て面23aに接触した後、搬送ローラ対91に狭持され、搬送ローラ対91によってシートSが搬送される図15(a―1)および図15(b−1)の状態となる。この時、図15(b−1)に示すように、検知部材34は、検知センサ33の光路を遮蔽する。ここで、シャッタ部材23とともに回転する検知部材34の検知面34aが検知センサ33の光路を遮蔽する。光路が検知部材34で遮蔽されることで検知センサ33のON/OFF状態が変更され、検知センサ33からのON/OFF信号が切り替わることで、シートS先端の到達を検知する。ここでシートの先端の位置に関する情報に基づいたタイミングで、画像形成部は、シートに形成する画像の形成を開始する。
その後、第1の実施形態と同様に、シートS後端がシャッタ部材23から離接すると、シャッタ部材23は、待機位置へと回動する。シャッタ部材23とともに検知部材34は、図15(a―2)、図15(b−2)に示すように、検知面34bが次のシートS先端を検知するための待機位置で再び待機した状態となる。そして、シートSが順次搬送されていくと、検知面は34a、34b、34c、34dと順次に変わっていき、それぞれの検知面が、新たに給紙されたシートS先端の検知を行い、その信号をもとに順次画像形成が行なわれていく。
上述したように、検知部材34は、第1の実施形態のシャッタ部材23と同様の動作を行なうので、シートS後端がシャッタ部材23と離接するのとほぼ同時に検知部材34は、次シートSの先端を検知するための待機位置で待機することができる。これにより、シート搬送速度の速い条件のもと、短い紙間の中でも、次シートの先端を検知するためのホーム位置に戻ることが可能となり、ユーザからのさらなる画像形成装置の生産性向上の要求に応えることができる。
なお、本第3実施形態で説明したシャッタ部材の位置を検知センサで検知して搬送されるシートを検知するの構成については、第2実施形態にも適用可能である。つまり、第2実施形態において、シャッタ部材23に検知センサの光路を遮蔽する遮蔽部材を設ける。そして、シャッタ部材23が待機位置にあるときにはシャッタ部材23の検知部材が検知センサの光路を遮蔽しないようにする。そして、搬送ローラ対91によって搬送されているシートに押されてシャッタ部材が回動しているときに、シャッタ部材23に設けられた検知部材で検知センサ33の光路を遮蔽するようにする。
本実施形態でも既述の第1、第2実施形形態と同様な作用効果を発揮する。本実施形態では、さらに以下の効果を奏する。即ち、シートを検知するために、検知センサ33をON/OFFさせるための検知部材がシャッタ部材23と連動する部材であるので、検知部材が次シートの検知するための待機位置に速やかに位置させることができる。
(第4の実施形態)
次に、本発明に係るシート搬送装置およびこれを備えた画像形成装置の第4実施形態について図16を用いて説明する。なお、第1の実施形態と異なる部分のみ説明し、第1の実施形態と同じ構成については同じ符号を付することで説明を省略する。
図16は第4の実施形態の構成を示す断面図である。第4の実施形態は、シャッタ部材23の形状が第1の実施形態と異なる。本第4の実施形態では、シャッタ部材23の突き当て面23aの回転方向上流側に、シートの表面との接触部である凸形状23j、同様に突き当て面23bの回転方向上流側に、シートの表面との接触部である凸形状23kを形成している。また、シャッタ部材23の突き当て面23cの回転方向上流側に、シートの表面との接触部である凸形状23l、突き当て面23dの回転方向上流側に、シートの表面との接触部である凸形状23mが形成されている。
凸形状23j、23k、23l、23mの径方向への突出量は、径方向におけるシャッタ部材23の最外部となるシャッタ部材の突き当て面23a、23b、23c、23dが形成されている突出部分よりも小さい。また、凸形状23j、23k、23l、23mの径方向への突出量としては、搬送コロ18の外形よりも大きく形成されているので、凸形状23j、23k、23l、23mの先端側は、搬送コロ18の外形よりも外側となる。
続いて、図16を用いて、第4の実施形態の動作について説明する。図16(a)、図16(b)、図16(c)の順でシート搬送方向にシートが搬送される過程を示している。
図16(a)は、シャッタ部材23の突き当て面23aにシート先端が接触する直前を示した図であり、シャッタ部材23は待機位置に保持されている。続いて、シートS先端が突き当て面23aに接触した後、シートに押されることでシャッタ部材23が回転し、シートが搬送ローラ対91に狭持される。このように、搬送ローラ対91によってシートSが搬送され始めた状態を図16(b)に示す。図16(b)に示した状態のとき、シートSの先端とシャッタ部材23の接触部分は突き当て面23aであり、凸形状23kとシートSは接触していない。
次に、搬送ローラ対91によるシートの搬送が行われると図16(b)の状態から、シャッタカム24からの回転力によりシャッタ部材23が反時計周りの方向に回転する。そして、シャッタ部材23の凸形状23kがシートSの表面に接触した、図16(c)に示した状態となる。そして、シートS後端が凸形状23kを抜けるまでその状態が維持され、シートS後端が凸形状23kを抜けた後は、第1の実施形態と同様の動作を繰り返し、凸形状23l、23m、23jも通紙に伴い、順次シートSへ接触していく。
ここで第4の実施形態にて追加した凸形状23j、23k、23l、23mの効果について説明する。シャッタ部材23の突き当て面23aにシート先端が接触した後、シャッタ部材23がシャッタカム24の回転力により回転し、シャッタ部材23がシートSに接触する際の接触音が、第1の実施形態に比べ、小さくすることができる。この要因について、以下に詳細に説明する。
まず、第1の実施形態では、シャッタカム24の回転力によりシャッタ部材23が回転する際、図5(b)に示すようにシャッタ部材23とシートSの接触部は、次行シートのための突き当て面の反対側に位置するシャッタ部材の先端23iとなる。この時、シートSとシャッタ部材23の接触部からシャッタ部材23の回転中心までの接触半径をR1、その位置でのシャッタ部材23の角速度をω1とすると、シートSにシャッタ部材23が接触する際のシャッタ部材23の速度V1は、V1=R1・ω1となる。第1の実施形態では、シートSとの接触部がシャッタ部材23の最も半径の大きい先端23iとなるため、シャッタ部材23の最も速い部分でシートSに接触することとなる。
一方、本第4の実施形態では、シートSへのシャッタ部材23の接触部は、凸形状23kである。シートSとシャッタ部材23の接触部(凸形状)からシャッタ部材23の回転中心までの接触半径をR2、接触部でのシャッタ部材23の角速度をω2とする。シートSにシャッタ部材23が接触する際の接触速度V2は、V2=R2・ω2となる。ここで、第1と第4の実施形態での接触半径の関係は、図16(c)に示すように接触半径R2はR1より小さく、本実施形態ではR2=0.8×R1の関係となる。
角速度の関係について、図17を用いて説明する。図17は、シャッタカム24の回転位相と、その時のシャッタ部材23の角速度及びシャッタカム24の半径の関係を示した図である。図17では、比較のために第1の実施形態形態(第1実施例)の場合の回転カムの動きも示している。
図17に示すように、シャッタカム24の最頂点位置からシートSへシャッタ部材23が接触するまでの回転角度が第1の実施形態に比べ第4の実施形態の方が小さくなっている。この時のシャッタ部材23の角速度の関係は、ω2<ω1であり、本第4の実施形態ではω2=0.8×ω1となる。これらのことから、シートSにシャッタ部材23が接触する際の接触速度はV2<V1となり、本実施形態では、V2はV1の64%(V2=0.8・R1×0.8・ω1=0.64V1)の速度となる。
シャッタ部材23がシャッタカム24の回転力によりシートSに接触する際の接触エネルギEは、接触時の速度の2乗に比例する。よって第1の実施形態での接触エネルギE1と第4の実施形態での接触エネルギE2の関係は、E2=0.41・E1となる。凸形状を追加することで第1の実施形態に比べ、約60%接触エネルギを減少させることができる。接触エネルギが減少すれば、接触音も減少する。上記条件で実験したところ、第1の実施形態では接触音は58dB、第4の実施形態では接触音が53dBとなり、5dB接触音を減少させることができた。
上述したように、シャッタ部材23に一体的に、シート表面との接触部である凸形状23j、23k、23l、23mを形成することで、搬送ローラ対91によって搬送されるシートの表面に、シャッタ部材23が接触する際の接触音を、小さくすることができる。これにより、低騒音でかつ生産性の向上したシート搬送装置をユーザに提供することができる。
尚、上述の形態では、凸形状23j、23k、23l、23mはシャッタ部材23に一体で形成されている構成としている。しかし、凸形状23j、23k、23l、23mを別部材とし、バネ等の弾性体でシャッタ部材23と連結する構成としても良い。また、図18に示す様に凸形状をシャッタ部材23の先端からなだらかに形成しても同様の効果は得られる。
また、本第4の実施形態として説明したシャッタ部材23に凸形状を設けることは、第2または第3の実施形態にも適用できる。
(第1参考実施形態)
次に、本発明に係るシート搬送装置及びこれを備えた画像形成装置のv実施形態について図19、図20を用いて説明する。図19は、第1参考実施形態のシート搬送装置を示す斜視図である。図20は、第1参考実施形態のシート搬送装置を示す平面図であり、(a)〜(c)で本実施形態の動作を示している。なお、上記実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。
上記第1乃至4実施形態においては、シャッタ軸に固定されたカムを圧縮バネで押圧することで、シャッタ部材をシート搬送方向と同方向に回転させていた。本第5実施形態では、シャッタ軸22に固定された欠け歯ギアを介して駆動部であるモータからの駆動力を伝達させて、モータからの駆動を用いてシャッタ部材を待機位置へ位置させるようにシート搬送方向と同方向に回転させる。
まず、第1参考実施形態の構成について説明する。シャッタ軸22には複数のシャッタ部材23が固定されている。本第1参考実施形態においても、第1の実施形態と同様に、搬送コロ18は給紙フレームに対して軸支されており、シャッタ軸22は、搬送コロ18の内部を通った状態で、給紙フレームに回転可能に支持されている。
シャッタ軸22の端部に、欠け歯ギア36がスプリングピン等で固定されている。シャッタ軸22及びシャッタ部材23と一体的に回転する欠け歯ギア36は、外周の一部にギアのない欠け歯部36aを備えている。欠け歯ギア36は、駆動回転体である駆動ローラ19の駆動軸19aに取り付けられた伝達ギアとしての駆動ギア37と噛み合うことが可能である。欠け歯ギア36や駆動ギア37によってシャッタ部材23を回転させる駆動力を伝達する駆動伝達機構が構成されている。つまり、欠け歯ギア36や駆動ギア37は、駆動ローラ19を回転させる駆動部であるモータからの駆動力を、シャッタ部材23を回転させるために伝達する、欠け歯ギア36には、付勢手段としての引っ張りバネ35が掛けられている。欠け歯ギア36の回転方向の位置に応じた付勢力が、引っ張りバネ35によって、欠け歯ギア36を介して、シャッタ軸22及び複数のシャッタ部材23に作用する。尚、本実施形態では、引っ張りバネ35を欠け歯ギア36に掛ける構成としたが、他の構成としてシャッタ軸22に固定された別部品やシャッタ部材23に引っ張りバネを掛ける構成でもよい。
続いて、第1参考実施形態の動作について説明する。
図20(a)は、シートS先端がシャッタ部材23の突き当て面23aに接触する直前の状態を示している。シャッタ部材23は引っ張りバネ35の付勢力により待機位置で待機している。即ち、引っ張りバネ35は、シャッタ部材23を待機位置に位置決めするための位置決め手段として機能する。このとき図20(a)に示されているように欠け歯ギア36の欠け歯部36aが駆動ギア37と対向しているので、駆動ギア37の駆動力は欠け歯ギア36には伝達されない。
シートS先端が突き当て面23aに接触すると、シートSにループが形成され、シートSの剛度により、シャッタ軸22及びシャッタ部材23が回転する。即ち、引っ張りバネ35の付勢力に反してシートがシャッタ軸22及びシャッタ部材23をシートの搬送パスから退避する方向に回動させる。この過程で、上述の各実施形態と同様にシートの先端がシャッタ部材23の突き当て面に倣っている。
シートの先端がシャッタ部材23を押している途中でシートの先端が駆動ローラ19と搬送コロ18とで挟持される。シャッタ部材23の回転によってシャッタ軸22に固定された欠け歯ギア36もシャッタ軸22と共に回動する。そして、シートS先端が駆動ローラ19と搬送コロ18のニップ部より下流まで搬送されたところで、図20(b)に示すように、欠け歯ギア36と駆動ギア37が噛み合う。欠け歯ギア36と駆動ギア37が噛み合うことによって、駆動ギア37の駆動力が欠け歯ギア36に伝わって、シャッタ軸22及びシャッタ部材23が欠け歯ギア36と共に矢印z5方向に、つまりシート搬送方向に、回動する回転力をシャッタ軸22が得る。
そのまま、欠け歯ギア36が駆動ギア37によって回転されてから、図20(c)に示すように、欠け歯ギア36の欠け歯部36aが駆動ギア37と対向する位置まで欠け歯ギア36が回転した時点で、駆動ギア37からの欠け歯ギア36への駆動伝達がなくなる。
図20(c)に示した、シートを通過させるシート通過姿勢となったシャッタ部材23は、引っ張りバネ35の付勢力によって時計回りの方向に付勢されているが、シャッタ部材23がシートの表面と接することでシャッタ部材23の回動は規制される。そして、シートSの搬送が進み、シートS後端がシャッタ部材23から離れたら、引っ張りバネ35の付勢力により複数のシャッタ部材23は待機位置へとシート搬送方向に回動して、次シート先端の突入に備えるための図22(a)の状態へと戻る。
このように、シートが1枚搬送される毎に、シャッタ軸22とそれに固定された複数のシャッタ部材23及び欠け歯ギア36は、図22(a)、(b)、(c)の順に、駆動が伝達・解除されながらシート搬送方向と同方向に回転を繰り返す。
(第2参考実施形態)
次に、本発明に係るシート搬送装置及びこれを備えた画像形成装置の第2参考実施形態について図21を用いて説明する。図21は本実施形態のシート搬送装置を示す斜視図である。なお、上記第1参考実施形態と同様に構成したものは同一の符号を付して説明を省略する。
前述の第1参考実施形態では、搬送コロ18は給紙フレームに対して軸支されており、搬送コロ18の内部を通るシャッタ軸22に複数のシャッタ部材が固定され、シャッタ軸及び複数のシャッタ部材は搬送コロ中心に一体的に回動する構成であった。この構成に対して、第2参考実施形態では、搬送コロ18は給紙フレームに支持された搬送コロ軸39に固着されている。そして、搬送コロ軸39に複数のシャッタ部材がそれぞれ回転自在に軸支されている。
第2参考実施形態の構成について図21の斜視図を用いて詳しく説明する。
本第2参考実施形態において、搬送コロ軸39が複数のシャッタ部材38を支持している。そして、複数のシャッタ部材38は搬送コロ軸39に対して回転自在に軸支されている。搬送コロ軸39は、軸方向に複数の搬送コロ18が取り付けられた軸である。また、複数のシャッタ部材38のそれぞれにはギア部38aが一体的に形成されている。
複数のシャッタ部材38のそれぞれの位相は、駆動ローラ19の軸や搬送コロ軸39とは別に設けられたシャッタ駆動軸41によって同位相に揃えられる。具体的には、シャッタ駆動軸41には、シャッタ駆動ギア42が軸方向に複数個、複数のシャッタ部材38の間隔と等間隔で固定されている。シャッタ駆動ギア42がシャッタ部材のギア部38aと噛み合っている。また、シャッタ駆動軸41の端部には、欠け歯ギア40と噛み合うことが可能なアイドラギア43が固定されている。このアイドラギア43とシャッタ駆動ギア42は同じ歯数である。ギア部38aは伝達ギアとしての駆動ギア37と噛み合うことが可能である。駆動ギア37、欠け歯ギア40、アイドラギア43、シャッタ駆動軸41、シャッタ駆動ギア42、ギア部38aによって、シャッタ部材38を回転させる駆動力を伝達するための駆動伝達機構が構成されている。
本第6の実施形態においても、参考実施形態と同様に、複数のシャッタ部材38への駆動の伝達と解除は欠け歯ギア40と、欠け歯ギア40に掛けられた引っ張りバネ35により行われる。ここで、本第2参考実施形態においては、欠け歯ギア40の欠け歯部40aは、歯幅方向(軸方向)において一部のみとなっている。駆動ギア37は欠け歯ギア40とは、欠け歯部40aがある部分で噛み合いが解除される。一方、シャッタ駆動軸41に取り付けられたアイドラギア43は、欠け歯ギア40と常に噛み合うことで、欠け歯ギア40と常に一体的で回転する。
本第2参考実施形態においても、第1参考実施形態で説明した動作と同様の流れで、駆動力の伝達・解除が繰り返され、複数のシャッタ部材38は、シートが1枚搬送される毎に、シート搬送方向と同方向に回転を繰り返す。
即ち、シャッタ部材38が待機位置にあるときには、欠け歯ギア40の欠け歯部40aが駆動ギア37に対向している。搬送されてきたシートSの先端がシャッタ部材38の突き当て面に接触すると、引っ張りバネ35の付勢力でシートSは係止されるのでシートにループが形成される。シートSの剛度により、シャッタ部材38が搬送コロ軸39に対して回転する。シャッタ部材38が、搬送されるシートに押されることで回転すると、シャッタ部材38に形成されたギア部38aが回転し、ギア部38aと噛み合ったシャッタ駆動ギア42が回転する。シャッタ駆動ギア42が回転すると、アイドラギア43を介して欠け歯ギア40が回転する。
シートSの先端が駆動ローラ19と搬送コロ18とに挟持され、シートの先端が駆動ローラ19と搬送コロ18のニップ部より下流まで搬送されたところで、欠け歯ギア40と駆動ギア37が噛み合う。欠け歯ギア40と駆動ギア37が噛み合うことにより、駆動軸19aを回転させるためのモータの駆動力が、駆動ギア37から欠け歯ギア40に伝わって、アイドラギア43およびシャッタ駆動ギア42を介して、シャッタ部材38をシートの搬送方向に回転させる。
そして、このようにシャッタ部材38が回転している途中で、欠け歯ギア40の欠け歯部40aが駆動ギア37に対向すると、駆動ギア37からシャッタ部材38への駆動伝達がなくなる。そして、引っ張りバネ35の付勢力によってシャッタ部材38は待機位置の方へ、即ち反時計回りの方向へ回転されるような回転力が作用することになる。上述の第5実施形態と同様に、反時計回りの方向へ回転されるような回転力がシャッタ部材38に作用していても、シートS後端がシャッタ部材38を通過するまでは、シャッタ部材38がシートの表面と接することでシャッタ部材38の回動は規制される。そして、シートの搬送が進み、シートの後端がシャッタ部材38から離れたら、引っ張りバネ35の付勢力によりシャッタ部材38は待機位置へと反時計回りの方向に回動して、次シートの搬送に備える。
本第2参考実施形態は、搬送コロ18が搬送コロ軸39で支持され、図示しないバネにより搬送コロ軸39を駆動ローラ19へ向けて付勢するようにして搬送コロ18を駆動ローラ19に押付けている。したがって、複数のシャッタ部材を固定するシャッタ軸が搬送コロ18との関係で設けられないような場合にも、複数のシャッタ部材38の突き当て面の位相を揃え、かつ、シート搬送方向と同方向に回転させるための駆動を伝達することを可能としている。
尚、本実施形態では、複数のシャッタ部材38は搬送コロ軸39に軸支される構成としたが、他の構成として、複数のシャッタ部材38を駆動軸19aに軸支する構成でも良い。
第1、第2参考実施形態においても、第3実施形態で説明したように、シャッタ部材23、38と連動する検知部材で検知センサ33をON/OFFさせて、シートを検知するようにしてもよい。