図1(A)は、第1実施形態に係る容器100を説明するための図である。図1(B)は、第1実施形態に係る抗菌ボール1を説明するための図である。図1(A)においては、説明の便宜上容器100の一部を断面図として示す。図1(B)においては、成形部材4を破線で示す。
図1(A)に示すように、容器100は、本体12、ホース部13、ポンプ部14、及びノズル部15を備える。本体12は、流体2を貯留可能な内部空間16を有する。ユーザがポンプ部14を押し下げる操作することにより、容器100内部へ圧力が与えられる。内部空間16に貯留された流体2は、ホース部13に吸い上げられノズル部15から外部へ吐出される。容器100は、内部空間16に抗菌ボール1を収納している。内部空間16において、抗菌ボール1は流体2の動きに伴って移動可能である。なお、ポンプ部14は押し下げ操作によって、容器100から外部へ吐出するものを例示したが、押し下げ操作には限定されず、ユーザからの何らかの操作によって容器100内部に貯留された流体2に動きを生ずるものであればよい。例えば、ポンプ部14は、把持することにより容器100内部へ圧力を与えるものであってもよい。
図1(B)に示すように、抗菌ボール1は、圧電繊維ネット3と、成形部材4とを備える。成形部材4は、袋状に形成された圧電繊維ネット3に包まれている。圧電繊維ネット3は複数の圧電繊維5を備える。圧電繊維ネット3は、圧電繊維5が網目状に形成された塊であり、いわゆる編物である。なお、網目状の塊は編物に限られず、圧電繊維5が所定の塊の形状を構成するものであればよく、織物、又は不織布を構成するものも含まれる。なお、抗菌ボール1の形状としては、流体2内で動きやすい形状であればよく、球状又は円盤状等使用状況に応じて変更可能である。
図2(A)は、容器100から流体2が吐出される際の抗菌ボール1の動きを説明するための図である。図2(B)は、容器100から流体2が吐出された直後の抗菌ボール1の動きを説明するための図である。図2(A)に示すように、流体2がホース部13に吸い上げられノズル部15から外部へ吐出される際、抗菌ボール1は流体2と共にホース部13に吸い寄せられる。容器100から流体2が吐出された直後、すなわちユーザがポンプ部14に加える力を弱めると、ホース部13が抗菌ボール1を吸い寄せる力は弱くなる。これにより、抗菌ボール1は流体2に放たれる。圧電繊維ネット3は流体2に接し、流体2の動きに伴って成形部材4上で変形する。圧電繊維ネット3が変形することにより、圧電繊維5に外力がかかる。なお、容器100自体が揺さぶられることにより、抗菌ボール1を流体2中で動かすことも可能である。この場合も圧電繊維5に外力を付与することができる。
成形部材4は、セラミックなどのいわゆる無機材料又はプラスチックなどの樹脂で形成されている。成形部材4の形状は表面を覆う圧電繊維ネット3が流体2の動きを受けるものであれば良い。成形部材4の形状は、例えば、球状、直方体状、円盤状等に形成されている。抗菌ボール1は、圧電繊維ネット3及び成形部材4の全体で流体2より比重が同一又はそれより小さいものであることが好ましい。これにより抗菌ボール1が流体2中に沈み移動し難くなることを防止できる。また、何も力が加えられていない状態において容器100内で抗菌ボール1が流体2の表層付近に存在するため、抗菌ボール1の移動距離が長くなり圧電繊維ネット3の変形時間が長くなる。以下、圧電繊維5について詳細に説明する。
図3(A)は、圧電繊維5の構成を示す一部分解図であり、図3(B)は、圧電フィルム10の平面図である。圧電繊維5は外力がかかる、すなわち外部からエネルギーが付加され変形することにより電荷を発生する。
圧電繊維5は、芯糸11に圧電フィルム10が巻かれてなる。圧電フィルム10は、圧電体の一例である。芯糸11は、天然繊維又は化学繊維から適宜選択される。天然繊維は、植物繊維、動物繊維、あるいは、ポリ乳酸等の半合成繊維を含む。植物繊維は、例えば、綿又は麻等である。芯糸11にポリ乳酸を用いる場合には、芯糸11は特に圧電性のポリ乳酸である必要は無い。後述のように、圧電フィルム10にポリ乳酸を用いる場合に、芯糸11と同じ素材となるため、親和性が高くなる。化学繊維は、例えば、合成繊維、ガラス繊維、又は炭素繊維等がある。化学繊維は、天然繊維に比べて頑丈である。
また、芯糸11は、導電性を備えた導電糸であってもよい。芯糸11を導電糸とした場合、圧電繊維5の圧電性を検査する際に、圧電繊維5の外周の一部に形成した電極と、芯糸11とを用いて圧電繊維5に生じる電荷を計測することができる。これにより圧電繊維5に用いられた圧電フィルム10の圧電性能を検査することができる。また、導電糸同士を短絡させることにより、各糸同士に明確に回路が形成され、各糸の表面間に生じる電場は飛躍的に大きくなる。また、芯糸11に導電体を用いる場合、該芯糸11に電流を流せば、圧電フィルム10以外の他の絶縁体を芯糸11に巻いた構成であっても、外部からのエネルギーにより電荷を発生する糸を実現することができる。
なお、芯糸11は、必須の構成ではない。芯糸11が無くても、圧電フィルム10を螺旋状に旋回して圧電糸(旋回糸)とすることは可能である。芯糸11が無い場合には、旋回糸は、中空糸となり、保温能力が向上する。また、旋回糸そのものに接着剤を含侵させると強度を増すことができる。また、圧電フィルム10を双糸又は撚糸状に撚ったものを使用することも可能である。
圧電フィルム10は、例えば圧電性ポリマーからなる。圧電フィルムは、焦電性を有するものと、焦電性を有していないものがある。例えば、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は、焦電性を有しており、温度変化によっても電荷が発生する。PVDF等の焦電性を有する圧電体は、人体の熱エネルギーによっても、表面に電荷が生じる。
また、ポリ乳酸(PLA)は、焦電性を有していない圧電フィルムである。ポリ乳酸は、一軸延伸されることで圧電性が生じる。ポリ乳酸には、L体モノマーが重合したPLLAと、D体モノマーが重合したPDLAと、がある。
ポリ乳酸のようなキラル高分子は、主鎖が螺旋構造を有する。キラル高分子は、一軸延伸されて分子が配向すると、圧電性を有する。一軸延伸されたポリ乳酸からなる圧電フィルム10は、厚み方向を第1軸、延伸方向900を第3軸、第1軸及び第3軸の両方に直交する方向を第2軸と定義したとき、圧電歪み定数としてd14及びd25のテンソル成分を有する。したがって、ポリ乳酸は、一軸延伸された方向に対して45度の方向に歪みが生じた場合に、電荷を発生する。
図4(A)及び図4(B)は、ポリ乳酸の一軸延伸方向と、電場方向と、圧電フィルム10の変形と、の関係を示す図である。図5は、外力がかかった時の圧電繊維5を示す図である。図4(A)に示すように、圧電フィルム10は、第1対角線910Aの方向に縮み、第1対角線910Aに直交する第2対角線910Bの方向に伸びると、紙面の裏側から表側に向く方向に電場を生じる。すなわち、圧電フィルム10は、紙面表側では、負の電荷が発生する。圧電フィルム10は、図4(B)に示すように、第1対角線910Aの方向に伸び、第2対角線910Bの方向に縮む場合も、電荷を発生するが、極性が逆になり、紙面の表面から裏側に向く方向に電場を生じる。すなわち、圧電フィルム10は、紙面表側では、正の電荷が発生する。
ポリ乳酸は、延伸による分子の配向処理で圧電性が生じるため、PVDF等の他の圧電性ポリマー又は圧電セラミックスのように、ポーリング処理を行う必要がない。一軸延伸されたポリ乳酸の圧電定数は、5〜30pC/N程度であり、高分子の中では非常に高い圧電定数を有する。さらに、ポリ乳酸の圧電定数は経時的に変動することがなく、極めて安定している。
圧電フィルム10は、上述の様な一軸延伸されたポリ乳酸のシートが、例えば幅0.5〜2mm程度に切り取られることにより生成される。圧電フィルム10は、図4(B)に示すように、長軸方向と延伸方向900が一致している。圧電フィルム10は、図5に示したように、芯糸11に対して左旋回して撚られた左旋回糸(以下、S糸と称する。)の圧電繊維5となる。延伸方向900は、圧電繊維5の軸方向に対して、左45度に傾いた状態となる。なお、S糸は、本発明における「第1の糸」の一例である。
したがって、図5に示すように、圧電繊維5に外力がかかると、圧電フィルム10は、図4(A)に示した状態のようになり、表面に負の電荷を生じる。なお、図示はしていないが、芯糸11に対して右旋回して撚られた右旋回糸(以下、Z糸と称する。)の圧電繊維5の場合は、圧電繊維5に外力がかかると、表面に正の電荷を生じる。なお、Z糸は、本発明における「第2の糸」の一例である。
これにより、圧電繊維5は、外力がかかった場合に、表面に負の電荷を生じ、内側に正の電荷を生じる。そのため、圧電繊維5は、この電荷により生じる電位差によって電場を生じる。この電場は近傍の空間にも漏れて他の部分と結合電場を形成する。また、圧電繊維5に生じる電位は、近接する所定の電位、例えば人体等の所定の電位(グランド電位を含む。)を有する物に近接した場合に、圧電繊維5と該物との間に電場を生じさせる。なお、圧電繊維5は、電位差により電場が生じる構成であればよく、S糸又はZ糸のうちいずれか一方を含む場合であってもよい。
圧電繊維ネット3にS糸とZ糸の圧電繊維5を交互に編み込むことにより、S糸とZ糸から正と負の電荷が発生する。これによりS糸とZ糸との間で大きな電場が発生する。これにより、S糸とZ糸との間に存在する水等の媒体で形成された電流経路、又は局部的なミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。
従来から、電場の存在により菌の増殖を抑制することができる旨が知られている(例えば、高木浩一,高電圧・プラズマ技術の農業・食品分野への応用,J.HTSJ,Vol.51,No.216を参照)。また、この電場を生じさせている電位差により、湿気等で形成された電流経路、又は局部的なミクロな放電現象等で形成された回路を電流が流れることがある。この電流により菌の細胞膜が部分的に破壊されて菌の増殖を抑制することが考えられる。なお、本実施形態で言う菌とは、細菌、真菌又はダニ又はノミ等の微生物を含む。
圧電繊維5は、圧電繊維5近傍に形成される電場によって、あるいは人体等の所定の電位を有する物に近接した場合に発生する電場によって、直接的に抗菌効果又は殺菌効果を発揮する。あるいは、圧電繊維5は、汗等の水分を介して、近接する他の繊維や人体等の所定の電位を有する物に近接した場合に電流を流す。この電流によっても、直接的に抗菌効果又は殺菌効果を発揮する場合がある。あるいは、電流や電圧の作用により水分に含まれる酸素が変化した活性酸素種、さらに繊維中に含まれる添加材との相互作用や触媒作用によって生じたラジカル種やその他の抗菌性化学種(アミン誘導体等)によって間接的に抗菌効果又は殺菌効果を発揮する場合がある。又は電場や電流の存在によるストレス環境により菌の細胞内に酸素ラジカルが生成される場合がある、これにより間接的に抗菌効果又は殺菌効果を発揮する場合がある。ラジカルとして、スーパーオキシドアニオンラジカル(活性酸素)やヒドロキシラジカルの発生が考えられる。
したがって、圧電繊維ネット3に編み込まれている圧電繊維5は、流体2の動きに伴って変形した場合に発生する電場によって、直接的に抗菌効果又は殺菌効果を発揮する。これにより、このような電荷を発生する抗菌ボール1は、外力がかかった場合に、抗菌効果又は殺菌効果を発揮することができる。したがって、容器100内部に貯留された流体2で微生物が繁殖することを防止することができる。
なお、本実施形態では、圧電繊維5を構成する圧電体の例として、圧電フィルムを示したが、代わりにモノフィラメントの圧電糸を用いてもよい。モノフィラメントの圧電糸は、あらゆる公知の方法により製造される。例えば、圧電性高分子を押し出し成形して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、又は圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法等を採用することができる。圧電繊維5として、芯糸11に対してモノフィラメントの圧電糸を撚ってなる糸(カバリング糸)を用いる場合にも、S糸を用いると表面に負の電荷が発生し、Z糸を用いると表面に正の電荷が発生する。なお、圧電繊維5として、芯糸11を用いず、モノフィラメントの圧電糸のみを撚ってなる撚糸を用いても良い。このような撚糸は低コストで作ることができる。また、圧電繊維5として、モノフィラメントの圧電糸と普通糸(綿又は麻等の天然繊維、ポリエステル等の化学繊維等)とを撚ってなる撚糸を用いても良い。圧電繊維5に普通糸が含まれることにより、表面のなめらかさを向上することができ、接触による容器100に対する損傷の発生を防止することができる。
図6は、第1実施形態の変形例に係る抗菌ボール6を説明するための図である。抗菌ボール6は、圧電部7及びネット8を備える。圧電部7はネット8に覆われている。圧電部7は、圧電繊維5を球状の塊に形成したものである。例えば、圧電繊維5から成る編物を球状に丸めたものが挙げられる。なお、圧電部7の形状は球状に限定されず、必要に応じた形状に形成することができる。ネット8はポリアミド等の樹脂で網状に形成されている。ネット8は網状に形成されているため、内部に配置された圧電部7は外部の流体2に直接接触することができる。これにより、圧電部7は流体2の動きによって変形する。また、ネット8を可撓性のある素材で形成することにより、圧電部7と共に抗菌ボール6全体を変形させることができる。この場合も、抗菌ボール6は、流体2の動きにより圧電部7が変形される。したがって、抗菌ボール6は、圧電部7が流体2の動きによって変形することにより圧電繊維5が変形するため、抗菌効果又は殺菌効果を発揮することができる。
図7は、第2実施形態に係る抗菌フィルタ18を説明するための図である。図7においては、説明の便宜上容器100の一部を断面図として示す。
図7に示すように、第2実施形態に係る抗菌フィルタ18は、ホース部13の中に配置することによって容器100と一体として使用するためのものである。なお、抗菌フィルタ18の説明において、抗菌ボール1と同様の構成については説明を省略する。
ホース部13は、内部空間16と容器100との間を繋ぐ流路19を有する。すなわち、ホース部13は、本発明における流路19を形成する部材であり、ホース部13の内部空間が流路19に相当する。抗菌フィルタ18は、圧電繊維5をフィルタ状の塊に形成したものである。例えば、編物、織物又は圧電繊維5を圧縮して形成した不織布が挙げられる。抗菌フィルタ18は、圧電繊維5の間に隙間を有する。このため、ホース部13において、抗菌フィルタ18は流体2を流通可能である。
ユーザがポンプ部14を押すことにより、流体2は、ホース部13に吸い上げられノズル部15から外部へ吐出される。流体2は、抗菌フィルタ18中の圧電繊維5の隙間を通り抜ける際に圧電繊維5に圧力をかけるため、圧電繊維5は変形する。このため、流体2が抗菌フィルタ18の隙間を通り抜けると同時に、圧電繊維5が電荷を発生する。したがって、内部空間16に貯留された流体2を、外部へ吐出される際に抗菌又は殺菌することができる。また、防腐剤などを使用しないため、流体2を安全に抗菌又は殺菌することができる。
なお、第2実施形態において抗菌フィルタ18は、容器100のホース部13内部に配置されているが、これには限定されない。抗菌フィルタ18は、流路に配置するその他の使用態様にも適応できる。例えば、水道管などの送液ライン、ポンプなどで液体を循環させる送液ライン、又は液体を流出入可能な流路を有する容器などにも適応できる。
図8(A)は、第3実施形態に係るヌメリ取りネット300を説明するための図である。図8(B)は、第3実施形態に係るヌメリ取りネット300の使用状況を説明するための断面図である。図8(C)は、ヌメリ取りネット300の側面部32を展開した平面図である。図1(A)においては、ストレーナ30を破線で示す。なお、第3実施形態において前述の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
図8(A)に示すように、ヌメリ取りネット300は、端部31、側面部32及び底面部33を備える。ヌメリ取りネット300は、排水溝に設置されるストレーナ30に装着されて使用される。例えば、端部31がストレーナ30の縁に固定され、側面部32がストレーナ30の内側にぶら下がるように装着される。ヌメリ取りネット300は、上部が開口し下部が閉塞した、筒状の形状である。ヌメリ取りネット300の形状は、排水溝又はストレーナ30の構成に応じて適宜設計変更可能である。なお、ヌメリ取りネット300は、排水溝以外の、例えば三角コーナ等に適用される。
図8(A)〜図8(C)に示すように、ヌメリ取りネット300の端部31及び側面部32は、圧電繊維ネット3で形成されている。圧電繊維ネット3は第1実施形態と同様に複数の圧電繊維5を備える。図示されていないが、底面部33も側面部32と同様に圧電繊維ネット3で形成され、ヌメリ取りネット300の下部を閉塞している。端部31、側面部32及び底面部33は個別に形成されてもよく、また連続して形成されていてもよい。圧電繊維ネット3は、圧電繊維5が網目状に形成された、いわゆる編物である。圧電繊維5は、外力がかかると表面に負の電荷を生じるZ糸、及び外力がかかると表面に正の電荷を生じるS糸を備える。なお、圧電繊維ネット3は、編物に限られず、圧電繊維5が所定の形状を構成するものであればよく、織物、又は不織布を構成するものも含まれる。また、図8(A)〜図8(C)において、編み目の大きさはこれに限定されず、さらに細かいものであってもよい。
排水溝に水又は排水等を流すと、例えばヌメリ取りネット300に水が矢印802の方向に流れ込む。本実施形態において、排水溝に流れ込む水又は排水等が、「流体」の一例である。流れ込む水の動きに伴って、ヌメリ取りネット300は上下方向(矢印803)に振動し、圧電繊維5は変形する。振動より、圧電繊維5のZ糸及びS糸に外力がかかり、負又は正の電荷が発生する。これにより、ヌメリ取りネット300は負又は正の電荷を発生するため、周囲に位置するストレーナ30を抗菌又は殺菌することができる。また、抗菌剤又は殺菌剤などを使用しないため、アレルギーを有する人又は皮膚が弱い人であっても安全に扱うことができる。また、防腐剤などの化学物質が排水に流出し土壌汚染などを引き起こすことを未然に防止することができる。
図9(A)は、第3実施形態の変形例に係るヌメリ取りネット301を説明するための図である。ヌメリ取りネット301は、ワイヤ34を備える。ワイヤ34は、側面部32を外側、すなわちストレーナ30に押し当てる。これにより、ヌメリ取りネット301は、よりストレーナ30の近くで負又は正の電荷を発生することができるため、抗菌性又は殺菌性の効果をより高めることができる。また、ワイヤ34の存在により、圧電繊維ネット3が縮みやすい素材であっても、ヌメリ取りネット301の筒状の形状を維持することができる。これにより、側面部32が上下方向に縮み正常に振動できないことを防止し、またストレーナ30との距離が近くなるため、抗菌性又は殺菌性の効果をより高めることができる。
図9(B)は、第3実施形態の変形例に係るヌメリ取りネット302を説明するための図である。ヌメリ取りネット302の側面部32は、スリット35を備える。スリット35は一つ又は複数設けられている。スリット35は、例えば側面部32の周方向に複数、側面部32の上下方向に複数、それぞれ等間隔に設けられている。スリット35は、ヌメリ取りネット302の周方向に平行に形成されていることが好ましい。これにより、ヌメリ取りネット302の軸線方向と平行な重力方向に流れる水の力が、スリット35に効率よくかかる。したがって、スリット35を設けることで、水によるヌメリ取りネット302の変形を大きくすることができる。
ヌメリ取りネット302に水を流したときに、水はヌメリ取りネット302の内側に沿って流れ込む。このとき、ヌメリ取りネット302の内側に水は貯留されつつ、一部はヌメリ取りネット302のスリット35又は圧電繊維ネット3の圧電繊維5の隙間を通って外部へ排出される。ヌメリ取りネット302の内側に貯留された水の量が増加すると、ヌメリ取りネット302は下方へ引き延ばされる。これにより、圧電繊維ネット3の圧電繊維5が変形し電荷を発生させる。またスリット35の形状も上下に引き延ばされるため、スリット35の開口が大きくなる。したがって、より多くの量の水がスリット35を介してヌメリ取りネット302の外部へ流出される。ヌメリ取りネット302の内側に貯留された水の量が減少すると、ヌメリ取りネット302にかかる下方へ引き延ばされる力が弱まるため、上方へ縮み、元の形状へと戻る。このように、スリット35を設けたことにより、ヌメリ取りネット302の振動をより大きくすることができる。特に、ヌメリ取りネット302が圧電繊維5の織物である場合などは、効果的にヌメリ取りネット302の振動をより大きくすることができる。すなわち、ヌメリ取りネット302が圧電繊維5の織物である場合、圧電繊維5の隙間が小さい。このため、圧電繊維5自体の動きは小さいが、スリット35があると水の流出によりヌメリ取りネット302が大きく変形するため、圧電繊維5の動きを大きくすることができる。また、スリット35から水が流出するため、圧電繊維ネット3に必要以上の力が加わることを回避することができる。
図10(A)〜図10(D)は、第3実施形態の変形例に係るヌメリ取りネット302のその他の例を説明するための図である。図10(A)〜図10(C)に示すように、スリット35は必ずしも周方向に水平に形成されていなくてもよい。例えば、図10(A)に示すように、スリット35は、周方向に水平な方向に対して所定の角度傾いていてもよい。また、図10(B)に示すように、スリット35の一部が周方向に水平であって、その他が周方向に水平な方向に対して所定の角度傾いていてもよい。また、図10(C)に示すように、スリット35は周方向に水平な方向に対して数種類の角度をもって傾いていてもよい。
さらに、図10(D)に示すように、スリット35は、側面部32の周方向に複数、上下方向の位置をずらしながら設けられていてもよい。このため、側面部32は、スリット35が多く形成されている箇所と、少なく形成される箇所とを備える。スリット35が多く形成されている箇所においては、圧電繊維5の動きがそうではない箇所に比べて大きくなる。これにより、使用状態に応じて、圧電繊維5の動きの大きな箇所とそうではない箇所を設けることができる。
図11(A)は、第3実施形態の変形例に係るヌメリ取りネット303を説明するための図である。図11(B)は、第3実施形態の変形例に係るヌメリ取りネット304を説明するための図である。
図11(A)に示すように、ヌメリ取りネット303は、底面部33に錘36を備える。ヌメリ取りネット303は、水がない場合でも錘36により下方へ引き延ばされている。このため、ヌメリ取りネット303の側面部32を形成する圧電繊維ネット3が縮みやすい素材であっても、ヌメリ取りネット303の筒状の形状を維持することができる。これにより、側面部32が上下方向(矢印803)に縮み正常に振動できないことを防止し、またストレーナ30との距離が近くなるため、振動した場合の抗菌性又は殺菌性の効果をより高めることができる。
図11(B)に示すように、ヌメリ取りネット304は、底面部33にバネ37を備える。ヌメリ取りネット304は、水がない場合でもバネ37により下方へ引き延ばされている。このため、ヌメリ取りネット304の側面部32を形成する圧電繊維ネット3が縮みやすい素材であっても、ヌメリ取りネット304の筒状の形状を維持することができる。これにより、側面部32が上下方向(矢印803)に縮み正常に振動できないことを防止し、またストレーナ30との距離が近くなるため、振動した場合の抗菌性又は殺菌性の効果をより高めることができる。また、水がない場合、バネ37によりヌメリ取りネット304が上方へ押し戻されている場合、ヌメリ取りネット304が伸びきったままの状態になることを防止し、またバネ37の振動に伴ってヌメリ取りネット304を大きく振動させることができる。
図12(A)は、第4実施形態に係る容器400を説明するための図である。図12(B)は、第4実施形態に係る抗菌シート41を説明するため容器400を底面側から見た図である。図12(A)においては、説明の便宜上容器400の一部を断面図として示す。図12(B)においては、本体12を破線で示す。なお、第4実施形態において前述の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
図12(A)に示すように、容器400は床F1の上に配置されている。容器400としては、例えば、風呂場又は洗面所などの水気のある場所で使用される洗剤などのボトルが挙げられる。第4実施形態に係る容器400は本体12の底面17に抗菌シート41を備える。このため、抗菌シート41は、床F1と底面17との間に位置する。抗菌シート41の形状は、容器400の構成、又は容器400の配置場所に応じて適宜設計変更可能である。
図12(B)に示すように、抗菌シート41は、底面17の一部に貼り付けてもよい。抗菌性が不要な箇所まで抗菌シート41を貼り付けることにより、容器400の柔軟性が低下することを防止できる。また、抗菌シート41が底面17に貼り付けられていない部分においては、床F1と底面17との間に空間が生じる。床F1と底面17との間の空間に空気が流通することにより風通しをよくすることができる。これにより、底面17にカビ又はヌメリ等が発生することを抑制できる。なお、抗菌シート41は、底面17の全体を覆うように貼り付けられていてもよい。これにより、底面17全体を抗菌することができる。また、抗菌シート41は、容器400の外側全体を覆うように貼り付けられていてもよい。これにより、容器400の外側全体を抗菌することができる。
抗菌シート41は、圧電繊維ネット3を備える。圧電繊維ネット3は、ヌメリ取りネット300と同様に複数の圧電繊維5を備える。複数の圧電繊維5を備えることにより、抗菌シート41の表面は、繊維による凹凸が生じる。これにより、水で濡れた床F1等に対して抵抗を生じるため、滑りを防止することができる。また、滑りが防止されるため、抗菌シート41は着実に底面17からの力を受ける。また、抗菌シート41は、容器400より剛性が小さい素材から成る。これにより、容器400に力が加えられた場合、容器400を介して抗菌シート41に確実に力を伝えることができる。
抗菌シート41は、容器400に着脱可能であることが好ましい。これにより、必要に応じて必要な場所に着脱することができる。抗菌シート41は、例えば、粘着部を備えたシート又はシールが挙げられる。抗菌シート41は、長尺状に形成されたものが巻き取られた、いわゆるロール状のものから、必要に応じて切り取られて使用するものであってもよい。また、抗菌シート41は、適当な大きさ又は形状に成形されたものが剥離可能に他のシートに貼り付けられているものであってもよい。これにより、ユーザは、必要に応じて抗菌シート41のサイズ又は形状などを選択し使用することができる。
ユーザがポンプ部14を押すことにより、ユーザによって与えられた力が底面17に伝わる。また、ユーザが容器400を移動することによっても、底面17に力が加えられる。底面17に与えられた力は、抗菌シート41に伝わる。抗菌シート41の圧電繊維5は変形し、電荷を発生させる。振動より、圧電繊維5のZ糸及びS糸に外力がかかり、負又は正の電荷が発生する。抗菌シート41は負又は正の電荷を発生するため、周囲に位置する容器400の底面17及び抗菌シート41の周辺の床F1を抗菌又は殺菌することができる。これにより、水気のある場所で使用される容器400にカビ又はヌメリ等が発生することを抑制し、衛生的に取り扱うことができる。また、防腐剤などを使用しないため、アレルギーを有する人又は皮膚が弱い人であっても安全に扱うことができる。また、防腐剤などの化学物質が排水に流出し土壌汚染などを引き起こすことを未然に防止することができる。
図13は、第4実施形態の変形例に係る容器401を説明するための図である。図13においては、説明の便宜上容器401の一部を断面図として示す。なお、変形例において前述の第4実施形態と同様の構成については、説明を省略する。
図13に示すように、容器401は結露しやすい棚F2の上に配置されている。容器401としては、例えば、冷蔵庫などの結露しやすく水気のある場所で貯蔵されるマヨネーズ又はソースなどのボトルが挙げられる。容器401は本体42の底面47に抗菌シート41を備える。このため、抗菌シート41は、棚F2と底面47との間に位置する。抗菌シート41の形状は、容器401の構成又は容器401の配置場所に応じて適宜設計変更可能である。
抗菌シート41は、容器401より剛性が小さい素材から成る。また、容器401は可撓性がある素材で形成されている。容器401の側面部43に力が加えられた場合、容器401の側面部43は変形する。側面部43の変形に伴って、底面47が変形する。底面47の変形に伴って、抗菌シート41が変形する。
例えば、ユーザが容器401を把持することにより、容器401が変形する。容器401の変形は、底面47に伝わる。底面47に与えられた変形による力は、抗菌シート41に伝わる。また、ユーザが容器400を置くことによっても、抗菌シート41に直接力が加えられる。抗菌シート41の圧電繊維5は変形し、電荷を発生させる。これにより、容器401の底面47及び抗菌シート41の周辺の棚F2を抗菌又は殺菌することができる。これにより、結露しやすい水気のある場所で使用される容器401にカビ又はヌメリ等が発生することを抑制し、衛生的に保存することができる。また、防腐剤などを使用しないため、アレルギーを有する人又は皮膚が弱い人であっても安全に扱うことができ、また飲食物の容器にも安全に適応させることができる。
図14(A)は、第4実施形態の変形例に係る抗菌シート44を説明するための図である。図14(B)は、抗菌シート44の使用状況を説明するための図である。なお、抗菌シート44において抗菌シート41と同様の構成については、説明を省略する。
図14(A)に示すように、第4実施形態の変形例に係る抗菌シート44は、平板形状である。抗菌シート44は、抗菌シート41と同様に圧電繊維ネット3で形成されている。圧電繊維ネット3は第1実施形態と同様に複数の圧電繊維5を備える。
図14(B)に示すように、抗菌シート44は、ラックRの内部に配置される。ラックRとしては、洗面所、炊事場、又は風呂場などで使用される洗剤のボトルなどを入れるためのかご状の容器が挙げられる。なお、抗菌シート44は、全面が均一なものでもよく、一部に切欠きを形成したものでもよい。例えば、切欠きによって囲まれた部分を折り曲げることにより、ラックRにひっかけて固定することができる。また、抗菌シート44は、その他の留め具又は接着剤等によってラックRに固定することもできる。さらに、抗菌シート44は、ラックRに着脱可能に形成されていてもよい。例えば、抗菌シート44のラックRに接する面が、粘着面又は接着面として形成される場合がある。
抗菌シート44は、ユーザがラックRに不図示のボトルなどを入れた時に、ボトルが触れる衝撃により変形する。抗菌シート44が変形することにより、圧電繊維5は変形し、電荷を発生させる。これにより、抗菌シート44の周辺のラックR及び不図示のボトルを抗菌又は殺菌することができる。これにより、水気のある場所で使用されるラックR及び不図示のボトルにカビ又はヌメリ等が発生することを抑制し、衛生的に使用することができる。また、防腐剤などを使用しないため、アレルギーを有する人又は皮膚が弱い人であっても安全に扱うことができる。
なお、抗菌シート44は、ラックRに限られず湿気のある場所で使用できる。例えば、窓又は扉のサッシ、又は冷蔵庫の中等の結露し易い場所にも使用可能である。
図15(A)は、第5実施形態に係る絆創膏500を説明するための平面図である。図15(B)は、絆創膏500の使用状態を説明するための断面概略図である。なお、図15(A)は、抗菌パッド51が形成された側からみた平面図である。
図15(A)及び図15(B)に示すように、絆創膏500は皮膚Sの創傷面Wを保護するために用いられるものである。絆創膏500は、抗菌パッド51及び保護シート52を備える。保護シート52は、可撓性のある素材によりシート状に形成されている。保護シート52の一方の主面53は、粘着剤が塗布されている。抗菌パッド51は、保護シート52の一方の主面53における概ね中央に配置されている。絆創膏500は、抗菌パッド51が創傷面Wと接するように皮膚Sに付着し使用される。これにより、保護シート52の一方の主面53の一部は粘着剤により皮膚Sに接着可能となる。なお、抗菌パッド51及び保護シート52の形状又は大きさは使用状況に応じて設計変更可能である。
図16は、抗菌パッド51を説明するための模式図である。図16に示すように、抗菌パッド51は、平板形状である。抗菌パッド51は、抗菌シート41と同様に圧電繊維ネット3で形成されている。圧電繊維ネット3は第1実施形態と同様に複数の圧電繊維5及び普通糸23を備える。圧電繊維5を縦糸として普通糸23を横糸として織物が形成されている。なお、普通糸23を縦糸として圧電繊維5を横糸として織物を形成してもよい。普通糸23としては、例えば木綿又は麻などが採用される。また、抗菌パッド51は、圧電繊維ネット3を複数枚積層させたものであってもよい。
圧電繊維5は、S糸21及びZ糸22を備える。S糸21及びZ糸22は抗菌パッド51の長手方向と平行に並んで配置される。これにより圧電繊維5が抗菌パッド51の動きの大きい長手方向に沿って伸縮されるため、効率よく電荷を生じることができる。なお、S糸21及びZ糸22は抗菌パッド51の長手方向と垂直な方向に並んで配置される場合も可能である。この場合、S糸21及びZ糸22は抗菌パッド51の長手方向と平行に並んで配置される場合と比べ生じる電荷が小さいため、創傷が軽度な場合に利用可能である。また、S糸21及びZ糸22は、抗菌パッド51の長手方向と平行な方向に並んで、及び抗菌パッド51の長手方向と垂直な方向に並んで共に配置されていてもよい。これにより、いずれの方向に伸縮された場合にも影響されることなく、効率よく電荷を生じることができる。また、S糸21及びZ糸22は交互に配置されていることが好ましい。圧電繊維5に外力がかかると、S糸21はマイナスの、Z糸22はプラスの電荷をそれぞれ生じる。これにより隣り合うS糸21とZ糸22との間で、大きな電位差を発生させることができる。さらに、本実施形態において、圧電繊維ネット3として平織りの例を示したが、織の形状はこれに限定されない。また、圧電繊維ネット3として、例えば、編物又は不織布も採用可能である。
抗菌パッド51が創傷面Wに接するように絆創膏500を創傷面Wに貼り付ける。創傷面Wが治癒されていない時、創傷面Wから血液又はリンパ液などの体液が染み出てくる。これにより、創傷面W、及び抗菌パッド51の圧電繊維5の間には体液が存在する。創傷面Wに存在する体液の動きにより抗菌パッド51が変形する。また、圧電繊維5の間に存在する体液によって、圧電繊維5がよりスムーズに変形する。圧電繊維5は変形することにより、抗菌効果又は殺菌効果を発揮する。したがって、創傷面Wが治癒されていない時には、抗菌パッド51は創傷面Wから染み出てくる体液により、より効果的に創傷面Wを抗菌又は殺菌することができる。
絆創膏500を創傷面Wに貼り付けたのち、時間の経過とともに創傷面Wが治癒される。創傷面Wが治癒されるに従い、創傷面Wから染み出てくる体液は減少する。また、既に染み出した体液は乾燥し流動しなくなる。これにより、創傷面W、及び抗菌パッド51の圧電繊維5の間に存在する体液が減少する。創傷面Wに存在する体液が減少すると、抗菌パッド51の変形は小さくなる。また、圧電繊維5の間に存在する体液が減少すると、圧電繊維5の変形は小さくなる。さらに圧電繊維5の間に存在する体液が乾燥すると、圧電繊維5は乾燥した体液に固定されるため変形しなくなる。圧電繊維5の変形は抑制されるため、抗菌効果又は殺菌効果が抑制される。このため、創傷面Wが治癒されると、必要以上の抗菌効果又は殺菌効果が発揮されないため、ヒトの身体にとって必要な常在菌に影響が及ぼされることを防止することができる。したがって、絆創膏500は必要に応じて抗菌効果又は殺菌効果を発揮することができる。このため、抗菌剤を用いた場合の様に、抗菌剤がすべて放出され抗菌性能が低下することによる創傷面Wの化膿を防止することができる。また、絆創膏500は抗菌剤を用いないために、ヒトの身体に安全に使用することができる。
また、圧電繊維5は、人体等の所定の電位を有する物に近接した場合に発生する電場によって、直接的に抗菌効果又は殺菌効果を発揮する。あるいは、圧電繊維5は、汗等の水分を介して、人体等の所定の電位を有する物に近接した場合に電流を流す。この電流によっても、直接的に抗菌効果又は殺菌効果を発揮する場合がある。あるいは、電流又は電圧の作用により水分に含まれる酸素が変化したラジカル種、さらに繊維中に含まれる添加材との相互作用又は触媒作用によって生じたラジカル種、又はその他の抗菌性化学種(アミン誘導体等)によって間接的に抗菌効果又は殺菌効果を発揮する場合がある。ラジカル種として、スーパーオキシドアニオンラジカル(活性酸素)又はヒドロキシラジカルの発生が考えられる。これにより、抗菌パッド51が抗菌効果又は殺菌効果を発揮する場合、傷口及び傷口周辺の菌の増殖を抑制し、傷の治癒を早めることができる。
絆創膏500においては、抗菌パッド51が圧電繊維ネット3で形成されているが、保護シート52が圧電繊維ネット3で形成されていてもよい。この場合、保護シート52がヒトの皮膚Sの動きによって変形する。保護シート52に含まれる圧電繊維5が変形することにより、保護シート52において電荷が発生する。これにより、保護シート52の表面で抗菌効果又は殺菌効果を発揮することができるため、絆創膏500の外部から侵入する菌を抗菌又は殺菌することができる。なお、抗菌パッド51及び保護シート52はともに圧電繊維ネット3で形成されていてもよい。これにより、創傷面Wを抗菌又は殺菌することができるだけでなく、同時に外部からの菌の進入を阻止することができるため、創傷面Wをより効果的に抗菌又は殺菌することができる。
図17(A)及び図17(B)は、それぞれ第5実施形態の変形例に係る圧電繊維ネット60を説明するための図である。圧電繊維ネット60はいわゆる織物から成る。圧電繊維ネット60は、一重構造であって、電荷発生部61を構成する糸及び非電荷発生部62を構成する糸の2本の編糸を用いて添え糸編した編物であってもよい。圧電繊維ネット60において、表目側に出る糸と裏目側に出る糸とが別の種類に編み分ける事ができる。この場合、図17(A)に示すように、内側(紙面表側)の面を形成する編糸63が電荷発生部61を構成する糸である。外側(紙面裏側)の面を形成する編糸64が非電荷発生部62を構成する糸(綿糸等)である。
抗菌パッド51は、電荷発生部61が皮膚Sに接する面になるように圧電繊維ネット60を用いることができる。これにより、圧電繊維ネット60が変形したときに、表側の電荷発生部61をユーザの皮膚Sに近接させることができる。したがって、皮膚S付近で電荷を発生させることにより、効率よく抗菌又は殺菌することができる。また、抗菌パッド51は、非電荷発生部62が皮膚Sに接する面になるように圧電繊維ネット60を用いることができる。これにより、圧電繊維ネット60が変形したときに、裏側の電荷発生部61をユーザの圧電繊維ネット60の外部側に位置させることができる。したがって、絆創膏500の外側に近い場所で電荷を発生させることにより、外部から侵入する菌を抗菌又は殺菌することができる。
電荷発生部61を構成する糸は、マイナスの電荷を発生させるS糸及びプラスの電荷を発生させるZ糸の2種類の圧電糸を備えていてもよい。この場合、内側(紙面表側)の面においてマイナスとプラスの二種類の電荷を発生させることができる。Z糸及びS糸の使用量を調節することにより、用途に応じて発生させる電荷の極性の割合等を調節することができる。また、電荷発生部61を構成する糸は、Z糸及びS糸以外に電荷を発生しない糸(綿糸等)を備えていてもよい。通常、圧電糸は綿糸等に比べて肌触りが悪いため、皮膚Sに触れると皮膚Sが刺激される場合がある。このため、電荷発生部61に電荷を発生しない糸(綿糸等)を一部使用することによって、電荷発生部61の肌触りがよくなり、皮膚への刺激を緩和することができる。なお、図17(B)に示すように、内側(紙面表側)の面を形成する編糸63が非電荷発生部62(綿糸等)を構成する糸であり、外側(紙面裏側)の面を形成する編糸64が電荷発生部61を構成する糸とすることもできる。
図18(A)〜図18(C)は、第5実施形態の変形例に係る絆創膏501、502、及び抗菌パッド51を説明するための図である。なお、図18(A)は、抗菌パッド51が形成された側からみた平面図である。図18(B)は、絆創膏502の断面概略図である。図18(C)は、絆創膏503の使用状態を説明した図であり、抗菌パッド51は破線で示す。なお、絆創膏501〜503の説明において、絆創膏500と同様の構成については説明を省略する。
図18(A)に示すように、絆創膏501においては、抗菌パッド51の全面を保護シート52が覆わない構成となっている。このため、抗菌パッド51は、保護シート52に付着していない部分は、抗菌パッド51のみで構成されている。絆創膏501を創傷面Wに貼り付けると、創傷面Wに対向する位置には抗菌パッド51のみが存在する。これにより、保護シート52が創傷面Wを覆わないため、抗菌パッド51の風通りをよくすることができる。したがって、創傷面Wが蒸れて化膿し易くなることが防止できる。
図18(B)に示すように、絆創膏502においては、抗菌パッド51は、内部シート54、及び接着部55を備える。内部シート54を取り巻くように接着部55が形成されている。内部シート54は、絆創膏500の抗菌パッド51と同様の構成である。接着部55は抗菌パッド51に接着性又は粘着性を持たせたものである。例えば、接着部55としては、抗菌パッド51に接着剤又は粘着剤などが塗布されたものが挙げられる。これにより、絆創膏502は、接着部55を介して皮膚Sに貼り付けられる。内部シート54、及び接着部55と重なるように保護シート52が積層されている。これにより、絆創膏502が皮膚Sに貼り付けられた全面(内部シート54及び接着部55)は抗菌又は殺菌性を有するため、絆創膏502の形状を小さく成形することができる。
図18(C)に示すように、該変形例においては、絆創膏503は抗菌パッド51であり、抗菌パッド51は、包帯56によって皮膚Sに巻きつけられ、固定されている。これによると、絆創膏500のように接着剤又は粘着剤等が使用されない。したがって、接着剤又は接着部55を使用することによる皮膚Sのかぶれを防止することができる。なお、使用形態に応じて包帯56の代わりに、メンディングテープなどによって皮膚Sに固定することも可能である。抗菌パッド51が他の部材と別に扱われることにより、抗菌パッド51自体を創傷面Wに合わせて形状を変形させることが可能となる。
図19(A)は、第6実施形態に係る抗菌シート601を説明するための概略平面図である。図19(B)は、第6実施形態に係る抗菌シート601の圧電繊維5を説明するための圧電繊維5の概略断面図である。なお、第6実施形態において前述の実施形態と同様の構成については、説明を省略する。抗菌シート601は、本発明における「布帛」の一例である。
図19(A)及び図19(B)に示すように、抗菌シート601は、第5実施形態と同様に複数の圧電繊維5及び普通糸23を備える。圧電繊維5を縦糸として普通糸23を横糸として織物が形成されている。なお、普通糸23を縦糸として圧電繊維5を横糸として織物を形成してもよい。普通糸23としては、肌触り又は伸縮性を向上させるため、例えば木綿、絹などの天然繊維、又はアクリル、レーヨンなどの化学繊維などが挙げられる。また、抗菌シート601は、複数枚積層させた状態で使用してもよい。
抗菌シート601は、複数の圧電繊維5を備える。圧電繊維5は、S糸21及びZ糸22を備える。抗菌シート601が長手方向を有する場合、S糸21及びZ糸22は抗菌シート601の長手方向と平行に並んで交互に配置されることが好ましい。これにより圧電繊維5が抗菌シート601の動きの大きい長手方向に沿って伸縮されるため、効率よく電荷を生じることができる。また、S糸21及びZ糸22は交互に配置されていることが好ましい。圧電繊維5に外力がかかると、S糸21はマイナスの、Z糸22はプラスの電荷をそれぞれ生じる。これにより隣り合うS糸21とZ糸22との間で、大きな電位差を発生させることができる。
抗菌シート601は、圧電繊維5の密度が高い高密部91と、圧電繊維5の密度が低い低密部92と、を備える。言い換えると、低密部92は、空隙率が高く、高密部91は低密部92と比べて空隙率が低い。高密部91においては、圧電繊維5同士の隣り合う距離が狭いため、発生する電荷が大きくなる。高密部91と低密部92とは、交互に並んで配置されている。これにより、抗菌シート601は、図19(A)に示すように、断面視したときに高密部91の厚みのある部分と低密部92の薄い部分とが交互に形成されている。
抗菌シート601は、例えばオムツ又は生理用品などのヒト又は動物の皮膚に接するものの素材として用いることができる。例えば、抗菌シート601をオムツに使用した場合について説明する。なお、抗菌シート601の形状は、オムツの構成又はオムツにおける配置場所に応じて適宜設計変更可能である。また、オムツは皮膚Sに接するため衛生的に保たれることが要求される。オムツは、可撓性のある素材により形成されている。これにより、装着したヒト又は動物の動きにより、オムツが変形する。
抗菌シート601は汗又は排泄物等が付着すると、汗又は排泄物等を抗菌シート601の内部に吸収する。すなわち、汗又は排泄物等は、圧電繊維5又は普通糸23などで形成される隙間に流入し、保持される。このとき、低密部92は圧電繊維5又は普通糸23などで形成される隙間が大きいため、汗又は排泄物等を吸収し易い。これに対して、高密部91は圧電繊維5又は普通糸23などで形成される隙間が小さいため、低密部92に比べて汗又は排泄物等を吸収し難いが、上述のように発生する電荷は大きい。このため、低密部92で汗又は排泄物等を素早く吸収し、隣り合う高密部91で発生した電荷が、低密部92が吸収した汗又は排泄物等に抗菌効果又は殺菌効果を付与することができる。なお、抗菌シート601として平織りの例を示したが、織の形状はこれに限定されない。抗菌シート601として、例えば、編物又は不織布も採用可能である。なお、本発明において「布帛」とは、織物、編物又は不織布等を含む。
図20(A)は、第6実施形態の変形例に係る抗菌シート611を説明するための概略断面図である。図20(B)は、第6実施形態の変形例に係る抗菌シート612を説明するための概略断面図である。図21(A)は、第6実施形態の変形例に係る抗菌シート612を説明するための概略図である。図21(B)は、第6実施形態の変形例に係る抗菌シート613を説明するための概略図である。図20(A)及び図20(B)においては、それぞれS糸21及びZ糸22のみを表す。なお、抗菌シート612及び抗菌シート613は、本発明における「布帛」の一例である。
図20(A)に示すように、抗菌シート611は、S糸21及びZ糸22を概ね等間隔で備える。抗菌シート611においては、S糸21及びZ糸22がそれぞれ積層されている。抗菌シート611は、高層部93及び低層部94を備える。高層部93においてはS糸21及びZ糸22が厚く積層され、低層部94においてはS糸21及びZ糸22が薄く積層されている。抗菌シート611は、高層部93及び低層部94において高さが異なるため表面が凹凸になる。これにより、抗菌シート601と同様に、低層部94では汗又は排泄物等を素早く吸収される。また、S糸21及びZ糸22が多く存在する高層部93においては、発生する電荷が大きい。したがって、抗菌シート601と同様に吸収した汗又は排泄物等に抗菌効果又は殺菌効果を付与することができる。また、抗菌シート611の表面が凹凸であるため、毛細管作用により低層部94の窪んだ部分により速やかに汗又は排泄物等を素早く吸収することができる。これにより、さらに素早く抗菌効果又は殺菌効果を付与することができる。
図20(B)に示すように、抗菌シート612において、S糸21及びZ糸22の厚み方向における積層量は、S糸21及びZ糸22の直交する903方向において、いずれの位置においても概ね同一である。高密部96においてはS糸21及びZ糸22が密に積層され、低密部95においてはS糸21及びZ糸22が粗に積層されている。言い換えると、低密部95におけるS糸21とZ糸22との距離d1は、高密部96におけるS糸21とZ糸22との距離d2よりも大きい。
高密部96は、S糸21及びZ糸22の目が詰まっているため、丈夫で耐久性に優れ、かつS糸21及びZ糸22の間に流体を保持する。また、高密部96においては、S糸21とZ糸22との距離が近いため大きな電荷を発生することができる。したがって高密部96は、保持した流体を効率よく大きな電荷で抗菌又は殺菌をすることができる。
これに対して、低密部95は、S糸21及びZ糸22の目が粗いため、隙間に汗又は排泄物等の流体を効率よく高密部96側に流し込むことができる。低密部95は、高密部96よりは小さいが、電荷を発生するため、低密部95にわずかに付着する流体を抗菌又は殺菌をすることができる。また、低密部95は伸縮性に優れるためヒトの動きなどによって伸縮するため、装着時の違和感を緩和することができる。
抗菌シート612は、高密部96及び低密部95において高さが異なるため表面が凹凸になる。これにより、抗菌シート601と同様に、低密部95を介して高密部96に汗又は排泄物等を素早く流し込むことができるため、抗菌シート612は、効率よく流体に抗菌効果又は殺菌効果を付与することができる。
なお、抗菌シート612を断面視したとき、低密部95は高密部96よりも厚いことが好ましい。まず低密部95が高密部96より先に肌に触れることによって、抗菌シート612は、汗又は排泄物等の流体を効率よく高密部96に流し込むことができる。また高密部96は肌から離れた状態で維持できるため、高密部96が吸収した汗又は排泄物等の流体が肌に直接触れる可能性を低減できる。その結果、抗菌シート612は、肌触りを向上させることができる。
また、抗菌シート612はプレス機により高圧をかける部分と低圧をかける部分、又は凹凸形状を有する金型などに原料を入れて形成することにより、比較的簡単に製造することができる。図21(A)に示すように、交互に高密部96と低密部95とが畝状に形成されている。すなわち、抗菌シート612は、第1主面621と、第1主面621の反対側に位置する第2主面622とを備える。低密部95における第1主面621から第2主面622までの距離d3は、高密部96における第1主面621から第2主面622までの距離d4よりも大きい。これにより、高密部96が表面に溝状に形成されるため、さらに水等が抗菌シート612に吸収され易くなる。
抗菌シート612は、さらに液不透過性のシート652を有する。言い換えると、シート614は、抗菌シート612及びシート652を備える。抗菌シート612は、第2主面622側でシート652に取り付けられている。すなわち、シート652は、第1主面621又は第2主面622のうち表面の凹凸の少ない平らな第2主面622に取り付けられている。抗菌シート612は、凹凸のある第1主面621で水等を吸収し、シート652側では吸収した水等を外部に漏れることを防止できる。これにより、抗菌シート612は、第1主面621側から吸収した水等を外部への流出することなく、第1主面621側において抗菌性を発揮することができる。なお、液不透過性のシート652を有するシート614は、本発明の「液吸収性物品」の一例である。
図21(B)に示すように、抗菌シート613は、高密部97及び低密部98を有する。抗菌シート613は、抗菌シート612を形成する際に、高密部96及び低密部95の形状のみ異なるように形成されたものである。なお、必要に応じて高密部97及び低密部98の形状は設計変更可能である。
例えば、抗菌シートを高密部及び低密部の二層で形成する場合が挙げられる。この場合、平面状の高密部のシートに間隔をあけて低密部を配置させても良い。例えば、図21(B)に示す抗菌シート613のように形成する場合、突出する部分が低密部95である。これにより、高密部96から低密部95の部分のみが突出するため、部分的に形成された低密部95のみを肌に触れさせることができる。
最後に、本実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。