JP6396612B2 - アスベスト判定用キット、アスベスト判定用プレパラート及びアスベスト判定用組立体 - Google Patents
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Description
事前調査の方法は、設計図書による方法、診断士等による目視確認、専門機関による試料のアスベスト分析方法等があり、アスベスト分析方法には、ISO法やJIS法を代表とする公定法がある。
また、公定法で使用するX線回折装置や、偏光顕微鏡・位相差顕微鏡・電子顕微鏡は精緻な測定が可能であるものの、高価かつ重量物である上に、取り扱いに高度な知識・技術が必要となり、解体等工事の現場で使用するには不向きである。
このため、従来から現場で使用するのに適するアスベスト判別方法がある。
例えば、特許文献1には、スライドグラスの視野に標準試料又は標準試料の映像を固定し、残余視野に測定しようとするサンプルを置いて、同一視野でそれらを比較し、アスベストか否かを判定する方法が記載されている(特許文献1参照)。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、解体等工事の現場で簡便に使用できるアスベスト判定用キット、アスベスト判定用プレパラート及びアスベスト判定用組立体を提供することを目的とする。
(1)本発明のアスベスト判定用キットは、前記アスベスト判定用キットは、第1領域及び第2領域を有するシート状体を備え、前記第1領域は、第1開口と、前記第1開口を覆い光を通過させて直接偏光に変える第1偏光板と、を有し、前記第2領域は、第2開口と、前記第2開口を覆い光を通過させて直接偏光に変える第2偏光板と、を有し、前記シート状体は、前記第1領域と前記第2領域との間に、採取した繊維状体を固定したプレパラートを配置した状態で、前記第1偏光板と前記第2偏光板とが直交ニコルの状態となるように変形可能である。
(2)本発明のアスベスト判定用プレパラートは、スライドグラスと、カバーグラスと、を備え、前記スライドグラスと前記カバーグラスとは、両者の間に配置された採取した繊維状体を包埋する透明な非晶性接着剤によって接着されており、前記繊維状体は、前記スライドグラスと前記カバーグラスとが近づく方向に上下から押圧されて薄く広げられた状態となっている。
(3)本発明のアスベスト判定用組立体は、上記(1)のアスベスト判定用キットと上記(2)のアスベスト判定用プレパラートとを備える。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
図1は、本発明のアスベスト判定方法を示す説明図であり、プレパラートP(アスベスト判定用プレパラート)及びアスベスト判定用キットKの断面を示す。図2は、アスベスト判定用キットKの作成状況を示す図であり、(a)は平らな状態のアスベスト判定用キットKを示し、(b)はプレパラートPを載置した状態のアスベスト判定用キットKを示し、(c)はプレパラートPを挟むようにして折り畳まれた状態のアスベスト判定用キットKを示す。なお、図1で示された断面は、図2(c)のA矢視断面図に対応する。
次に、採取した繊維状体Fがアスベストか否かを判定するにあたり、図1に示すようなスライドグラス1とカバーグラス3との間に採取した繊維状体Fを固定したプレパラートPを作成する(プレパラート作成ステップ)。
非晶性接着剤2としては、スライドグラス1及びカバーグラス3に対して接着可能な、市場で入手しやすい一般的な接着剤を使用できる。
また、プレパラートPの作成は、押圧する過程を含むので、極細繊維状鉱物の集合体(束)である繊維状体Fが、厚くて光を透過しづらいものであっても、ほぐれて薄く広げられ、繊維のアスベティスフォームと呼ばれる形状特性をより出現させることができ、判別の精度が向上する。さらに、プレパラートPの作成は、押圧する過程を含むので、光を透過しづらいクロシドライト(青石綿)やアモサイト(茶石綿)のような有色鉱物であっても、繊維の形状特性をより出現させることができ、判別の精度が向上する。なお、非晶性接着剤2の上に繊維状体Fを載せた後、その上にカバーグラス3を載せることにより、非晶性接着剤2に繊維状体Fを包埋してもよい。
第2領域32は、第2開口32hと、第2開口32hを覆い光Lを通過させて直接偏光に変える第2偏光板20と、を有する。第2領域32に対して第2偏光板20が取り付けられる位置は、第2領域32の表側であっても裏側であってもよい。
なお、プレパラートP(アスベスト判定用プレパラート)とアスベスト判定用キットKとを、接着剤やクリップ等の適宜の手段で互いに固定し、アスベスト判定用組立体としてもよい。これにより、標本である繊維状体Fが固定されたプレパラートPをそのまま保存でき、さらに、アスベスト判定用キットKを使用して標本である繊維状体Fを適時に観察できる。よって、標本である繊維状体Fを繰り返して何度も観察できるので、再現性が高く、建材等のアスベスト含有調査結果とともに確実な証拠として添付できる。
具体的には、第1偏光板10の上部における繊維状体Fにピントが合う位置に、実体顕微鏡や拡大鏡(ルーペ)等に設けられた拡大レンズ40を配置する。言い換えると、実体顕微鏡や拡大鏡(ルーペ)等に設けられた拡大レンズ40の下部に、第1偏光板10が上で第2偏光板20が下となり、拡大レンズ40のピントが繊維状体Fに合うようにして、アスベスト判定用キットKを配置する。なお、実体顕微鏡や拡大鏡は、手持ちタイプ、卓上タイプ、据え付けタイプ、フレネルレンズ等であってよい。
なお、第1偏光板10は、シート状体30の第1領域31に固定されてよく、シート状体30の第1領域31に固定せずに、拡大レンズ40に対応する、例えば、実体顕微鏡の対物レンズに直接装着されてもよい。
拡大レンズ40は、例えば、フレネルレンズとして、第1開口31hを覆い第1偏光板10と重なった状態でシート状体30の第1領域31に固定されてもよい。
なお、詳細は後述するが、像Zの干渉色を観察するため、プレパラートPを上下方向の軸を中心に回転させてもよい(回転ステップ)。この際、プレパラートPを第1偏光板10及び第2偏光板20に対して相対的に回転させる。プレパラートPの回転は、プレパラートPを固定したアスベスト判定用キットKを回転させることにより行ってもよい。
像Zを観察すると、繊維状体Fがアスベストのような結晶質物質であるか否かによって、特徴の異なる像Zが観察できる。
図3は、繊維状体Fが非結晶質物質(例えば、ガラス繊維)であった場合における視野S内の像Zを示す。図3(a)から図3(h)は、順に、プレパラートPを45°ずつ回転させたときのそれぞれの像Zを示す。
図4は、繊維状体Fが結晶質物質(例えば、クリソタイル等のアスベスト)であった場合における視野S内の像Zを示す。図4(a)から図4(h)は、順に、プレパラートPを45°ずつ回転させたときのそれぞれの像Zを示す。
このように、繊維状体Fが結晶質物質であった場合、図4(a)から図4(h)のようにプレパラートPの回転とともに像Zを1回転させると、干渉色を伴って、明暗が変化し、4回の消光が視認できる。
実際には、建材等から採取した繊維状体Fは、構成する繊維の方向や形状が不揃いな繊維束であり、先端が毛羽立っている状態の場合が多い。従って、プレパラートPの作成時における押圧等により繊維状体Fの不揃いな繊維束が更に崩れ、1片の繊維状体Fを1枚のプレパラートPに固定したとしても、様々な方向を示す複数の繊維が観察できる。よって、実際には、プレパラートPを一周回転させることなく、プレパラートPを45度から90度程度の範囲で回転させるだけで、消光と非消光(明るさ又は干渉色)とを1つの視野内で充分に確認できるので、次の判定ステップにおいて判定がしやすい。
詳細には、図3(a)から図3(h)に示すように、像Zが暗黒であれば、繊維状体Fが非結晶質物質(例えば、ガラス繊維)であると判定でき、アスベストではないと判定でき、反対に、像Zが干渉色を伴っているか、又は、明るく光っていれば、繊維状体Fが結晶質物質であり、アスベストである可能性が高いと判定できる。
なお、上記判定ステップにおいては、像Zに、明るさ又は干渉色が視認できたことをもって繊維状体Fがアスベストであると判定したが、像Zに、明るさが視認できたことをもって繊維状体Fがアスベストであると判定してよく、像Zに、明るさ、干渉色又は消光のいずれかが視認できたことをもって繊維状体Fがアスベストであると判定してもよい。
そして、アスベスト調査のために標本を偏光顕微鏡等の高価な設備を備える現場から離れた場所にある検査場に持ち込む必要がなく、安全、簡便、低コストで、アスベスト判定の結果を迅速に得られる。また、アスベスト含有建築物及び建材の調査技術向上に寄与し、社会全体のアスベストリスク低減に繋げることができる。そして、身近な環境中にアスベスト含有建築物及び建材の存在を知らしめることができ、リスクコミュニケーション促進の一助となる。
また、本発明のアスベスト判定方法によれば、プレパラート作成ステップによって、磨り潰す等の前処理作業を必要としないので、プレパラートPの作成が簡便であると同時に、作業者がアスベストを吸入曝露する機会を減らすことができて安全である。
2 非晶性接着剤
3 カバーグラス
10 第1偏光板
20 第2偏光板
30 シート状体
31 第1領域
31h 第1開口
32 第2領域
32h 第2開口
33 連結部
40 拡大レンズ
F 繊維状体
K アスベスト判定用キット
L 光
P プレパラート(アスベスト判定用プレパラート)
S 視野
Z 像
Claims (3)
- アスベスト判定用キットであって、
前記アスベスト判定用キットは、第1領域及び第2領域を有するシート状体を備え、
前記第1領域は、第1開口と、前記第1開口を覆い光を通過させて直接偏光に変える第1偏光板と、を有し、
前記第2領域は、第2開口と、前記第2開口を覆い光を通過させて直接偏光に変える第2偏光板と、を有し、
前記第1偏光板と前記第2偏光板とは、別体であり、
前記シート状体は、前記第1領域と前記第2領域との間に、採取した繊維状体を固定したプレパラートを配置した状態で、前記第1偏光板と前記第2偏光板とが直交ニコルの状態となるように変形可能である
ことを特徴とするアスベスト判定用キット。 - 前記プレパラートは、
スライドグラスと、カバーグラスと、を備え、
前記スライドグラスと前記カバーグラスとは、両者の間に配置された採取した繊維状体を包埋する透明な非晶性接着剤によって接着されており、
前記繊維状体は、前記スライドグラスと前記カバーグラスとが近づく方向に上下から押圧されて薄く広げられた状態となっている
ことを特徴とする請求項1に記載のアスベスト判定用キット。 - 前記シート状体は、前記第1領域と前記第2領域とを連結し、前記第1領域及び前記第2領域の一方を他方に対して揺動できるように変形可能な連結部を有し、
前記連結部は、前記第1領域と前記第2領域とを折り畳んだ際に前記第1開口と前記第2開口とが重なるような位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアスベスト判定用キット。
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