実施の形態1
図1は、実施の形態1に係る周波数同期装置を航空機に搭載した場合の運用例を示す図である。
運用例では2機の航空機が無線を介して周波数同期を行っている。周波数基準を保持する航空機を航空機(主)1、周波数追従を行う航空機を航空機(従)2とする。以下の説明では、航空機(主)1を航空機1、航空機(従)2を航空機2と表記する。また、航空機1と航空機2は簡単のため、X−Y平面上に存在するものとする。2機を結ぶ直線を基線6とし、X軸は基線6と並行方向、Y軸は基線方向と垂直方向と規定する。それぞれ、航空機1は速度V1にて図1に示した矢印の方向へ移動しており、航空機2は速度V2にて移動している。
図1に示した運用例を説明する。航空機1は航空機2に対して基準信号(参照信号)3を送信する。基準信号3は、航空機1に搭載する発振器にて励振された連続波であるCW(Continuous Wave)信号である。無線通信に用いる電磁波は、X軸方向に沿った相対速度vに応じて、ドップラー効果の影響により周波数がシフトする。
相対速度vは、以下の式と定義する。
v=V1X−V2X
ここで、V1XはV1のX軸方向成分であり、V2XはV2のX軸方向成分である。
航空機1と航空機2とは、相対速度vで移動しているので、航空機2は、航空機1が出力する基準信号3へ直接同期をとった場合、ドップラー効果による周波数シフトにより誤差が生じる。このため、航空機2が基準信号3に対して周波数同期を行う場合、ドップラー効果による周波数シフトを補正して、周波数同期を行う必要がある。
図2は、実施の形態1に係る周波数同期装置の一構成例を示す図である。
図2において、10は、航空機1に搭載されるマスタモジュール、20は、航空機2に搭載されるスレーブモジュール、200は、周波数同期回路である。
まず、マスタモジュール10の構成について説明する。
マスタモジュール10は、システムの基準信号3をスレーブモジュール20へ送信するとともに、スレーブモジュール20から送信された発振信号4を受信し、受信した発振信号4を分周して帰還信号5を生成し、スレーブモジュール20へ帰還信号5を送信するモジュールである。マスタモジュール10は、受信アンテナ11、送信アンテナ12、送信アンテナ13、増幅器101、固定分周器102、増幅器103、発振器104、PLL回路105、増幅器106を備える。
発振器104は、本システムの周波数の基準となる参照信号を励振する発振器である。発振器104は、PLL回路105に接続され、固有の周波数f0にて発振し、参照信号をPLL回路105へ出力する。発振器104には、例えば、ルビジウム発振器等、周波数安定度の高い発振器が用いられる。
PLL回路105は、発振器104が出力した参照信号が入力され、その参照信号のM1倍の周波数の信号を、基準信号3として出力するPLL回路である。ここで、M1は1以上の自然数である。PLL回路105は、電圧制御発振器、位相周波数比較器、ループフィルタ、固定分周器から構成される。PLL回路105は、発振器104と増幅器106とに接続され、発振器104から出力された参照信号に周波数同期した信号を基準信号3として増幅器106へ出力する。
増幅器106は、PLL回路105が出力した基準信号3を増幅する増幅器である。増幅器106は、PLL回路105と送信アンテナ13とに接続され、PLL回路105から出力された基準信号3を電力増幅し、送信アンテナ13へ出力する。
送信アンテナ13は、増幅器106が出力する基準信号3を放射するアンテナである。例えば、フェーズドアレーアンテナが用いられ。その場合、スレーブモジュール20に設置された受信アンテナ23を指向するよう電気的に制御されている。送信アンテナ13は、入力された基準信号3を指向する方向へ放射する。送信アンテナ13は、増幅器106に接続され、増幅器106から出力された基準信号3を受信アンテナ23へ向けて放射する。
受信アンテナ11は、スレーブモジュール20の送信アンテナ21が出力した発振信号4を受信するアンテナである。例えば、受信アンテナ11には、フェーズドアレーアンテナが用いられる。その場合、スレーブモジュール20に設置された送信アンテナ21を指向するよう電気的に制御されている。受信アンテナ11は、指向する方向から到来した発振信号4を受信する。受信アンテナ11は、増幅器101に接続され、スレーブモジュール20に設置された送信アンテナ21から放射された発振信号4を受信し、増幅器101へ出力する。
増幅器101は、受信アンテナ11が受信した発振信号4を増幅する増幅器である。例えば、増幅器101は、ディスクリートのトランジスタを用いて構成される。増幅器101は、受信アンテナ11と固定分周器102とに接続され、受信アンテナ11から出力された発振信号4を増幅し、増幅した発振信号4を固定分周器102へ出力する。
固定分周器102は、増幅器101が出力した信号を分周する分周器である。固定分周器102は、例えば、プリスケーラICで構成される。固定分周器102は、増幅器101と増幅器103とに接続され、増幅器101より出力された信号を分周比Nで分周し、分周した信号を増幅器103へ出力する。ここで、Nは整数である。
増幅器103は、固定分周器102が出力した信号を増幅する増幅器である。増幅器103は、固定分周器102と送信アンテナ12とに接続され、固定分周器102から出力された信号を増幅し、送信アンテナ12へ出力する。
送信アンテナ12は、増幅器103が出力した信号を、帰還信号5として放射するアンテナである。例えば、送信アンテナ12には、フェーズドアレーアンテナが用いられる。その場合、スレーブモジュール20に設置された受信アンテナ22を指向するよう電気的に制御されている。送信アンテナ12は、帰還信号5を指向する方向へ放射する。送信アンテナ12は、増幅器103に接続され、増幅器103から出力された帰還信号5を受信アンテナ22へ向けて放射する。
次に、スレーブモジュール20の構成について説明する。
スレーブモジュール20は、マスタモジュール10から基準信号3を受信するとともに、自身で発振させた発振信号4をマスタモジュール10に送信し、返送される帰還信号5を受信し、基準信号3と帰還信号5に基づいて発振周波数を調整し、周波数同期を行うモジュールである。
スレーブモジュール20は、送信アンテナ21(第1のアンテナの一例)、受信アンテナ22(第2のアンテナの一例)、受信アンテナ23、増幅器203、増幅器204、増幅器209、周波数同期回路200を備え、周波数同期回路200は、電圧制御発振器201(電圧制御発振器の一例)、電力分配器202、固定分周器205、ミクサ206(混合器の一例)、BPF207、固定分周器208(分周器の一例)、固定分周器210、位相周波数比較器211(位相周波数比較器の一例)、ループフィルタ212(ループフィルタの一例)を備える。
受信アンテナ23は、マスタモジュール10の送信アンテナ13が出力した基準信号3を受信するアンテナである。例えば、受信アンテナ23には、フェーズドアレーアンテナが用いられる。その場合、マスタモジュール10に設置された送信アンテナ13を指向するよう電気的に制御されている。受信アンテナ23は、指向する方向から到来した基準信号3を受信する。受信アンテナ23は、増幅器209に接続され、基準信号3を受信し、増幅器209へ出力する。
増幅器209は、受信アンテナ23が受信した基準信号3を増幅する増幅器である。例えば、増幅器209は、ディスクリートのトランジスタを用いて構成される。増幅器209は受信アンテナ23と固定分周器210へ接続され、基準信号3を増幅し、固定分周器210へ出力する。
固定分周器210は、増幅器209が出力した信号を分周する固定分周器である。固定分周器210は、例えば、プリスケーラICで構成される。固定分周器210は、増幅器209と位相周波数比較器211とに接続され、増幅器209が出力した信号を固定分周比M1で分周し、分周した信号を位相周波数比較器211へ出力する。
位相周波数比較器211は、固定分周器210が出力した信号と固定分周器208が出力した信号とのの位相差を検出し、その位相差に対応する電流信号を出力する位相周波数比較器である。位相周波数比較器211は、例えば、高速動作する排他論理和回路とその出力に応じて電流を出力するチャージポンプ回路とで構成される。位相周波数比較器211は、固定分周器208、固定分周器210及びループフィルタ212に接続され、固定分周器208が出力した信号と固定分周器210が出力した信号との位相を比較し、その位相差に対応する電流信号をループフィルタ212へ出力する。
ループフィルタ212は、位相周波数比較器211が出力した電流信号を平滑化するとともに、電流信号を電圧信号に変換するループフィルタである。ループフィルタ212は、位相周波数比較器211と電圧制御発振器201とに接続され、位相周波数比較器211が出力した電流信号の高周波成分を遮断することで、平滑化を行い、平滑化した電流信号を電圧信号に変換し、電圧信号を電圧制御発振器201へ出力する。
電圧制御発振器201は、ループフィルタ212が出力した電圧信号に応じて、発振周波数を可変させる電圧制御発振器である。電圧制御発振器201は、例えば、バラクタ等の容量可変デバイスとトランジスタとを組み合わせて構成される。電圧制御発振器201は、ループフィルタ212と電力分配器202とに接続され、電力分配器202へループフィルタ212から出力された電圧信号に基づいて発振信号の周波数を変化させ、発振信号4を電力分配器202に出力する。
電力分配器202は、電圧制御発振器201が出力した発振信号4を2経路に分配する電力分配器である。電力分配器202は、例えば、ウィルキンソン型分配器等が用いられる。電力分配器202は、電圧制御発振器201、増幅器203及び固定分周器205に接続され、電圧制御発振器201が出力した発振信号4を、増幅器203と固定分周器205とに電力分配する。
増幅器203は、電力分配器202が出力した一方の発振信号4を増幅する増幅器である。増幅器203は、電力分配器202と送信アンテナ21とに接続され、電力分配器202が出力した発振信号4を増幅し、増幅した発振信号4を送信アンテナ21へ出力する。
送信アンテナ21は、増幅器203が出力した発振信号4を放射するアンテナである。例えば、送信アンテナ21には、フェーズドアレーアンテナが用いられる。その場合、マスタモジュール10に設置された受信アンテナ11を指向するよう電気的に制御されている。送信アンテナ21は、入力された発振信号4を指向する方向へ放射する。送信アンテナ21は増幅器203へ接続され、増幅器203が出力した発振信号4を受信アンテナ11へ向けて放射する。
受信アンテナ22は、マスタモジュール10の送信アンテナ12が出力した帰還信号5を受信するアンテナである。受信アンテナ22は、例えば、フェーズドアレーアンテナが用いられる。受信アンテナ22は、マスタモジュール10に設置された送信アンテナ12を指向するよう電気的に制御されている。受信アンテナ22は、指向する方向から到来した帰還信号5を受信する。受信アンテナ22は、増幅器204に接続され、マスタモジュール10に設置された送信アンテナ12が放射した帰還信号5を受信し、増幅器204へ出力する。
増幅器204は、受信アンテナ22が受信した帰還信号5を増幅する増幅器である。増幅器204は、例えば、ディスクリートのトランジスタを用いて構成される。増幅器204は、受信アンテナ22とミクサ206とに接続され、受信アンテナ22が受信した帰還信号5を増幅し、増幅した帰還信号5をミクサ206へ出力する。
固定分周器205は、電力分配器202が出力した他方の信号を分周する固定分周器である。固定分周器205は、例えば、プリスケーラICで構成される。固定分周器205は、電力分配器202とミクサ206とに接続され、電力分配器202が出力した他方の信号を分周比Nで分周し、分周した信号をミクサ206へ出力する。
ミクサ206は、固定分周器205が出力した信号と増幅器204が出力した信号とを混合するミクサである。ミクサ206は、例えば、ダイオードの非線形性を利用して混合するダイオードミクサ等が用いられる。ミクサ206のIF端子は増幅器204と、LO端子は固定分周器205と、RF端子はBPF(Band Pass Filter)207とに接続され、増幅器204が出力した信号と固定分周器205が出力した信号とを混合し、混合した信号(以下、混合信号と言う)をBPF207へ出力する。
BPF207は、ミクサ206が出力した混合信号のうち、特定の周波数帯域の信号を通過させ、その他の周波数帯域の信号を反射させるBPFである。BPF207は、例えば、チップインダクタ、チップキャパシタ等を用いて実装される。BPF207は、通過させる周波数帯や必要な抑圧量に応じて、マイクロストリップ線路や同軸共振器等の共振器を用いて構成してもよい。BPF207は、ミクサ206と固定分周器208とに接続され、ミクサ206が出力した混合信号のうち、固定分周器205が出力した信号と増幅器204が出力した信号との和周波信号を通過させ、固定分周器208へ出力する。
固定分周器208は、BPF207が出力する信号を分周する固定分周器である。固定分周器208は、例えば、プリスケーラICで構成される。固定分周器208は、BPF207と位相周波数比較器211とに接続され、BPF207が出力した和周波信号を分周比2/Nで分周し、位相周波数比較器211へ出力する。なお、分周比は、2以外の偶数であっても良い。
次に、実施の形態1に係る周波数同期回路200の動作について説明する。
周波数同期回路200が周波数を同期させる動作は、第1から第4の動作により実行される。各動作は時間的には、ほぼ同時に行われるが、それぞれの動作に分けて説明する。
第1の動作は、マスタモジュール10が、基準信号3をスレーブモジュール20へ送信する動作である。第2の動作は、スレーブモジュール20が、発振信号4をマスタモジュール10へ送信し、マスタモジュール10から帰還される帰還信号5をスレーブモジュール20にて受信する動作である。第3の動作は、スレーブモジュール20が、受信した帰還信号5と発振信号4とを用いてドップラー周波数シフトを算出する動作である。第4の動作は、スレーブモジュール20が、受信した基準信号3、発振信号4及びマスタモジュール10からの帰還信号5に基づいてドップラー周波数シフトの影響を除去し、マスタモジュール10に対して周波数同期を行う動作である。
まず、第1の動作について説明する。
マスタモジュール10において、発振器104は、周波数f0の参照信号をPLL回路105に出力する。PLL回路105は、発振器104の参照信号を逓倍数M1で逓倍し、逓倍した信号を基準信号3として、増幅器106に出力する。
増幅器106は、基準信号3を増幅し、送信アンテナ13に出力する。基準信号3をS1とすると、その周波数は、以下の式(1)で表される。
ここで、f
1は基準信号3の周波数である。f
0は発振器104の発振周波数、M
1はPLL回路105における逓倍数である。
送信アンテナ13は、増幅器106が出力した基準信号3を受信アンテナ23に向けて放射する。
スレーブモジュール20の受信アンテナ23は、マスタモジュール10の送信アンテナ13が放射した基準信号3を受信する。受信アンテナ23が受信した信号は、ドップラー効果の影響を受けるため、S1と周波数が異なる。受信アンテナ23が受信した信号をS2とすると、S2信号の周波数は、以下の式(2)で表される。
(1+v/c)が、ドップラー効果による周波数シフトを示す項である。vは、マスタモジュール10とスレーブモジュール20の基線6方向の相対速度である。cは光速である。受信アンテナ23は、S1b−1を増幅器209に出力する。
増幅器209は、S2を増幅し、増幅したS2を固定分周器210へ出力する。
固定分周器210は、S2信号を分周比M1で分周し、分周した信号を位相周波数比較器211へ出力する。位相周波数比較器211へ出力される信号をS3信号とすると、その周波数は、以下の式(3)の通りである。
次に、第2の動作について説明する。
スレーブモジュール20において、電圧制御発振器201は、周波数f2で発振し、発振信号4を電力分配器202に出力する。発振信号4をS4とする。このS4信号は、以下の式(4)で算出される周波数である。
ここで、f
2は、マスタモジュール10に対して、周波数同期を行う前の電圧制御発振器201の発振周波数である。
電力分配器202は、S4信号を2分配する。電力分配器202は、一方のS4信号を増幅器203に出力し、他方のS4信号を固定分周器205に出力する。
増幅器203は、電力分配器202が出力したS4信号を増幅し、増幅したS4信号を送信アンテナ21に出力する。
送信アンテナ21は、増幅器203が出力したS4信号を、発振信号4としてマスタモジュール10の受信アンテナ11に向けて放射する。
受信アンテナ11は、送信アンテナ21が出力した発振信号4を受信し、受信した発振信号4を増幅器101に出力する。受信アンテナ11が受信した発振信号4は、ドップラー効果による周波数シフトを受けるため、その周波数は、S4と異なる。受信アンテナ11が受信した発振信号4をS5とすると、S5は、以下の式(5)で算出される周波数である。
増幅器101は、受信アンテナ11が出力したS5信号を増幅し、増幅したS5を固定分周器102に出力する。
固定分周器102は、増幅器101が出力したS5信号を分周比Nで分周し、増幅器103に出力する。ここで、Nは1以上の自然数である。分周されたS5信号をS6信号とすると、S2c−1信号の周波数は、以下の式(6)で表される。この固定分周器102によって、マスタモジュールの受信信号である発振信号4と送信信号である帰還信号5はそれぞれ異なる周波数となり、マスタモジュール内における受信回路、送信回路間の信号の干渉を回避することが容易となる。
増幅器103は、固定分周器102が出力したS6信号を増幅し、増幅したS6信号を送信アンテナ12に出力する。
送信アンテナ12は、増幅器103が出力したS6信号を、帰還信号5としてスレーブモジュール20の受信アンテナ22に向けて放射する。
受信アンテナ22は、送信アンテナ12が出力した帰還信号5を受信し、受信した帰還信号5を増幅器204に出力する。受信アンテナ22が受信した帰還信号5は、ドップラー効果による周波数シフトを受けるため、S6信号と周波数が異なる。受信アンテナ22が受信した帰還信号5をS7信号とすると、その周波数は以下の式(7)で表される。なお、マスタモジュール10が発振信号4を受信して帰還信号5を出力する間に、相対速度vが変化する可能性はあるが、発振信号4を受信して帰還信号5を出力する時間は短く、vの変化は微小であるため、マスタモジュール10が発振信号4を受信して帰還信号5を出力する間における相対速度vの変化は無視する。
増幅器204は、受信アンテナ22が出力したS7信号を増幅し、増幅したS7信号をミクサ206に出力する。
次に、第3の動作を説明する。
電力分配器202で分岐されたもう一方の発振信号4は、固定分周器205に入力される。固定分周器205は、電力分配器202が分岐した発振信号4を分周比Nで分周し、ミクサ6に出力する。固定分周器205が分周した発振信号4をS8信号とすると、S8信号の周波数は、以下の式(8)で表される。固定分周器205によって発振信号4と固定分周器102の出力である帰還信号5の分周比が同一となり、分周による影響を取り除くことが可能となる。
ミクサ206には、S7信号及びS8信号の2つの信号が入力される。ミクサ206は、この2つの信号をミキシングする。ミキシングの結果、ミクサ206は、S7信号のm倍の高調波及びS8信号のn倍の高調波の混合信号を出力する。その混合信号をS9とすると、その周波数は、以下の式(9)で表される。ここで、m、nは、整数である。
BPF207は、ミクサ206が出力したS9信号のうち、m=1、n=1の組合せの周波数をもつ信号、つまり、S7信号の基本波とS8信号の基本波とを足した和信号を通過させる。BPF207を通過する信号をS10とすると、その周波数は、以下の式(10)となる。
ここで、S10信号に含まれる(v/c)2の項は、他の項に比べて値が小さいため、無視できる。例えば、vを10[m/sec]とし、cを3.0×108[m/sec]とすると、(v/c)2=11.1×10−16となり、2×v/c=6.66×10−8に比べて、非常に小さい値となる。
固定分周器208は、BPF207が出力したS10信号を分周比2/Nで分周し、位相周波数比較器211に出力する。固定分周器208が出力する信号をS11とすると、その周波数は、以下の式(11)で表される。
このことから、スレーブモジュール20側において、ドップラー効果の影響を片道分受けた場合、つまり基準信号3と同じ周波数シフトをもつ発振信号4を得ることができる。
次に、第4の動作を説明する。
位相周波数比較器211には、固定分周器210が出力するS3信号及び固定分周器208が出力するS11信号が入力される。両者の信号の差分は、以下の式(12)で表される。
位相周波数比較器211は、この周波数の差分に対応する電流信号をループフィルタ212に出力する。なお、位相周波数比較器211は、厳密には両者の信号の位相を比較するが、位相は周波数の積分結果であることから、位相が異なるということは周波数が異なることと考えることができるので、位相差と周波数差とは同義と捉えて良い。
この周波数の差分に応じた電流信号は、ループフィルタ212において電圧信号に変換され、電圧制御発振器201へ出力される。電圧制御発振器201は、その電圧に応じて発振周波数を可変する。電圧制御発振器201は、位相周波数比較器211によりフィードバック制御され、位相周波数比較器211は、S11の周波数−S3の周波数が0になるように、電圧制御発振器201を制御するので、最終的には、電圧制御発振器201の発振周波数は、f2⇒f0に変化する。つまり、スレーブモジュール20の電圧制御発振器201は、マスタモジュール10の参照信号の周波数に対して、発振周波数を同期させる。
以上の通り、実施の形態1によれば、独立して運動する2モジュール間において、ドップラー効果による周波数シフトの影響を取り除いて周波数同期を行うことができる。また、PLL回路105、固定分周器102にそれぞれ別の逓倍比または分周比を設定することより、基準信号3、発振信号4、帰還信号5は、すべて異なる周波数とすることができ、容易に信号の分離が可能となる。これにより、信号間の混信を防ぎ、高精度な周波数同期を行うことができる。
なお、固定分周器208は、2/Nが1未満の場合、逓倍比N/2の逓倍器に置き換えても良い。また、2/N=1の場合、つまりN=2の場合、固定分周器208は削除して良い。
実施の形態2
実施の形態1では、マスタモジュール10、スレーブモジュール20間の基準信号3、発振信号4、帰還信号5の送受信は全て異なるアンテナにて実施していた。実施の形態2では、発振信号4及び帰還信号5のアンテナを共通化し、小形化できる構成について説明する。
図3は、実施の形態2に係る周波数同期装置の一構成例を示す図である。本実施の形態では、発振信号4、帰還信号5の送信または受信のアンテナを、送受信アンテナ14及び送受信アンテナ24を用いて共通化している。また、実施の形態1と比べて固定分周器102、固定分周器205を削除している。
まず、マスタモジュール10において、実施の形態1と異なる構成について説明する。
マスタモジュール10では、固定分周器102が削除され、増幅器101と増幅器103が接続されている。また、送受信アンテナ14は、サーキュレータ120に接続され、サーキュレータ120により発振信号4と帰還信号5とを分離している。
送受信アンテナ14は、発振信号4、帰還信号5を送受信するアンテナである。例えば、送受信アンテナ14には、パッチアンテナが用いられる。その場合、スレーブモジュール20に設置された送受信アンテナ24を指向するよう機械的に制御されている。送受信アンテナ14は、サーキュレータ120に接続される。送受信アンテナ14は指向する方向から到来した発振信号4を受信し、受信した発振信号4をサーキュレータ120に出力する。また、送受信アンテナ14は、サーキュレータ120が出力する帰還信号5を指向する方向へ放射する。
サーキュレータ120は、3つのポートを持ち、入力された信号の方向性から出力するポートを選んで信号を出力する機能を持つサーキュレータである。サーキュレータ120は、通常、誘電体等で構成される。サーキュレータ120は、送受信アンテナ14と、増幅器101と、増幅器103とに接続され、送受信アンテナ14が受信した発振信号4を増幅器101へ出力する。また、増幅器103が出力した帰還信号5を送受信アンテナ14へ出力する。
次にスレーブモジュール20において、実施の形態1と異なる構成について説明する。
送信アンテナ21及び受信アンテナ22の代わりに、送受信アンテナ24(第3のアンテナの一例)が接続され、サーキュレータ220(サーキュレータの一例)にて受信する発振信号4と帰還信号5を分離している。また、スレーブモジュール20では固定分周器205が削除され、固定分周器208の分周比は2/Nから2へ変更されている。
送受信アンテナ24は、発振信号4、帰還信号5を送受信するアンテナである。例えば、送受信アンテナ24には、パッチアンテナが用いられる。その場合、マスタモジュール10に設置された送受信アンテナ14を指向するよう機械的に制御されている。また、送受信アンテナ24は、サーキュレータ220に接続される。送受信アンテナ24は、サーキュレータ220が出力する発振信号4を指向する方向へ放射する。また、指向する方向から到来した帰還信号5を受信する。送受信アンテナ24は、受信した帰還信号5をサーキュレータ220へ出力する。
サーキュレータ220は、3つのポートを持ち、入力された信号の方向性から出力するポートを選んで信号を出力する機能を持つ。サーキュレータ220は、誘電体等で構成される。サーキュレータ220は、送受信アンテナ24と、増幅器203と、増幅器204とに接続され、増幅器203が出力した発振信号4を送受信アンテナ24へ出力する。また、送受信アンテナ24が受信した帰還信号5を増幅器203へ出力する。
次に、実施の形態2の周波数同期装置の動作を説明する。
本説明では実施の形態1と異なる動作を中心に説明する。
基準信号3をマスタモジュール10からスレーブモジュール20へ供給する第1の動作は、実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
次に、発振信号4をスレーブモジュール20からマスタモジュール10へ送信し、さらにマスタモジュール10から送信した帰還信号5をスレーブモジュール20にて受信する第2の動作を説明する。
スレーブモジュール20側に設置された増幅器203は、電圧制御発振器201にて発振した発振信号4を増幅し、後段のサーキュレータ220へ出力する。サーキュレータ220は、増幅器203から入力された発振信号4を送受信アンテナ24へ出力し、このとき、増幅器204へは発振信号4を出力しない。送受信アンテナ24は、サーキュレータ220が出力した発振信号4をマスタモジュール10に設置された送受信アンテナ14へ向けて放射する。
マスタモジュール10側に設置された送受信アンテナ14は、発振信号4を受信し、サーキュレータ120へ出力する。サーキュレータ120は、送受信アンテナ14が出力した発振信号4を増幅器101へ出力し、このとき、増幅器103へは発振信号4を出力しない。この発振信号4は、増幅器103を介して、帰還信号5としてサーキュレータ120へ入力される。この信号をS6信号とすると、S6信号の周波数は以下の式(13)の通りとなる。
ここで、f
2は、電圧制御発振器201の発振周波数である。(1+v/c)はドップラーシフト効果による項である。
サーキュレータ120は、S6信号を送受信アンテナ14へ出力し、このとき増幅器101へは出力しない。送受信アンテナ14は、S6信号を帰還信号5としてスレーブモジュール20側に設置された送受信アンテナ24へ向けて放射する。
スレーブモジュール20側に設置された送受信アンテナ24は、帰還信号5を受信し、サーキュレータ220へ出力する。サーキュレータ220は、帰還信号5を、増幅器204を介して、ミクサ206へ出力する。この信号をS7信号とすると、S7信号の周波数は以下の式(14)の通りとなる。
次に、スレーブモジュール20にて受信した帰還信号5と発振信号4を用いてドップラー周波数シフトを算出する第3の動作を説明する。
電力分配器202で分岐されたもう一方の発振信号4は、そのままミクサ206へ入力される。この信号をS8信号とすると、S8信号の周波数は以下の式(15)の通りとなる。
ミクサ206には、帰還信号5(S7)と発振信号4(S8)の2つの信号が入力される。ミクサ206は、この2つの信号をミキシングし、S7とS8との混合信号をBPF207に出力する。混合信号(S9)の周波数は、以下の式(16)で表される。ここで、m、nは、整数である。
BPF207は、混合信号のうち、m=1、n=1の組合せの周波数を通過させ、固定分周器208に出力する。BPF207を通過する信号をS10とすると、その周波数は以下の式(17)で表される。
固定分周器208は、S10信号を分周比2で分周し、位相周波数比較器211へ出力する。分周した信号をS10とすると、その周波数は以下の式(18)で表される。
次に、スレーブモジュール20が、ドップラー周波数シフトの影響を除去し、マスタモジュール10に対して周波数同期を行う第4の動作を説明する。
位相周波数比較器211への入力は、S3及びS11なり、両信号とも(1+v/c)が乗算されている。位相周波数比較器211にて、2つの信号の位相比較を行うと、その位相差は、S3の周波数とS11の周波数との差に依存する。周波数の積分結果が、位相であるからである。S3とS11との周波数差は、以下の式(19)で表される。
位相周波数比較器211は、この周波数差に応じた電流信号を、ループフィルタ212に出力する。ループフィルタ212は、電流信号を平滑化するとともに電圧信号に変換して、電圧制御発振器201へ出力する。電圧制御発振器201は、位相周波数比較器211によりフィードバック制御され、位相周波数比較器211は、S11の周波数−S3の周波数が0になるように、電圧制御発振器201を制御するので、最終的には、電圧制御発振器201の発振周波数は、f2⇒f0に変化する。つまり、スレーブモジュール20の電圧制御発振器201は、マスタモジュール10の参照信号の周波数に対して、発振周波数を同期させる。
このように、実施の形態2によれば、発振信号4及び帰還信号5のために送信アンテナ及び受信アンテナを一つのアンテナで共通化し、サーキュレータを用いて送受信信号を分離することによって、高精度に移動体間の周波数を同期するとともに、モジュールを小形化することが可能である。
実施の形態3
実施の形態3では、小数分周器を用いて基準信号3、発振信号4、帰還信号5の周波数を変更することによって、周波数の分離間隔を狭く設定でき、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5を一つのアンテナで送受信する構成を示す。実施の形態3は、固定分周器を用いる構成において、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5が、広帯域な周波数範囲に設定されるため、非常に広帯域なアンテナを使用しなければならないという課題を解決できる。
図4は、実施の形態3に係る周波数同期装置の一構成例を示す図である。
まず、マスタモジュール10において、実施の形態1と異なる構成について説明する。
マスタモジュール10では、固定分周器102の代わりに小数分周器131を設置している。また、受信アンテナ11、送信アンテナ12、送信アンテナ13を削除し、送受信アンテナ14、BPF132、BPF133、BPF134を備えている。
図5は、小数分周器131の一構成例を示す図である。
小数分周器131は、電力分配器301、ミクサ302、BPF303、固定分周器304を備える。
電力分配器301は、入力された信号を電力分配して2つ以上の経路に出力する電力分配器である。電力分配器301は、一般的に、抵抗器によって分配される構成が用いられる。電力分配器301は、小数分周器131の入力端子と、ミクサ302と、固定分周器304とに接続され、電力分配器301に入力された信号を電力分配し、分配した信号の一方をミクサ302へ、分配した信号の他方を固定分周器304へ出力する。
固定分周器304は、入力された信号を、カウンタを用いて整数分周し出力する固定分周器である。固定分周器304は、例えば、プリスケーラICで構成される。電力分配器301とミクサ302へ接続され、電力分配器301から出力された信号を固定分周比N0にて分周する。N0分周した信号をミクサ302へ出力する。
ミクサ302は、入力された2つの信号をミキシングし、2つの信号の混合信号を出力するミクサである。ミクサ302は、例えば、ダイオードの非線形性を利用してミキシングを行うダイオードミクサ等を用いられる。ミクサ302は、電力分配器301と固定分周器304とBPF303とに接続され、電力分配器301より出力された信号と、固定分周器304から出力された信号とをミキシングし、ミキシングの結果得られる混合信号をBPF303へ出力する。
BPF303は、特定の周波数帯域を通過させ、その他の周波数成分を反射させるフィルタである。BPF303は、例えば、チップインダクタ、チップキャパシタ等を用いて実装される。BPF303は、通過させる周波数帯や必要な抑圧量に応じて、他のマイクロストリップ線路または同軸共振器等の共振器を用いて構成されてもよい。BPF303は、ミクサ302と小数分周器131の出力端子に接続され、ミクサ302が出力した混合信号のうち、電力分配器301が出力した信号と固定分周器304が出力した信号との差周波もしくは、和周波を通過させ、小数分周器131の出力端子へ出力する。
小数分周器131の動作について説明する。
小数分周器131に信号が入力されると、電力分配器301は、入力された信号を電力分配し、一方をミクサ302へ、他方を固定分周器304へ入力する。固定分周器304は、分配された信号を分周比Nで分周し、N分周した信号をミクサ302に出力する。ミクサ302は、電力分配器301が出力した信号とN分周した信号とをミキシングした混合信号を、BPF303に出力する。BPF303は、ミクサ302が出力した信号のうち、電力分配器301が出力した信号と固定分周器304が出力した信号との差周波を通過させ、その差周波を小数分周器131の出力端子に出力する。したがって、小数分周器131が出力する信号の周波数は、(1−1/N0)×fとなる。ここで、fは小数分周器131に入力される信号の周波数である。N0は、固定分周器304の分周比である。
例えば、N0=10とし、差周波成分を通過させるBPF303を用いた場合、小数分周器131の出力信号は0.9fとなり、小数分周器131としての分周比は10/9となる。つまり、分周比が1以上の小数で分周された信号が得られる。和周波成分を通過させるBPF303を用いた場合は、小数分周器131としての分周比が9/10となり、分周比が1以下の小数で分周された信号が得られる。小数分周器131の代わりに分周比2の固定分周器を用いた場合、固定分周器の入力信号と出力信号との周波数差は0.5fである。これに対し、小数分周器を用いた場合、上記で説明したように、その周波数差は0.1fである。このように、小数分周器131を用いることにより、入力される信号fとの周波数差が小さい信号を得ることができる。このように、小数分周器を用いた方が、固定分周器を用いるよりも、分周器の出力信号の周波数を細かく設定できる。
図4における、マスタモジュール10の構成要素の説明に戻る。
BPF132は、発振信号4の周波数帯域を通過させ、その他の周波数成分を反射させるフィルタである。BPF132は、例えば、チップインダクタ、チップキャパシタ等を用いて実装される。BPF132は、通過させる周波数帯や必要な抑圧量に応じて、他のマイクロストリップ線路または同軸共振器等の共振器を用いて構成されてもよい。BPF132は、送受信アンテナ14と増幅器101とに接続され、送受信アンテナ14から入力される信号のうち、発振信号4を通過させ、増幅器101へ出力する。
BPF133は、送受信アンテナ14と増幅器103とに接続され、増幅器103から入力される信号のうち、帰還信号5を通過させ、送受信アンテナ14へ出力するフィルタである。BPF133は、BPF132と同様の構成である。
BPF134は、送受信アンテナ14と増幅器106とに接続され、増幅器106から入力される信号のうち、基準信号3を通過させ、送受信アンテナ14へ出力するフィルタである。BPF133は、BPF132と同様の構成である。
次に、スレーブモジュール20において、実施の形態1と異なる構成について説明する。
スレーブモジュール20では、送信アンテナ21、受信アンテナ22、受信アンテナ23を削除し、送受信アンテナ24(第3のアンテナの一例)、BPF235(第1の帯域通過フィルタの一例)、BPF236(第2の帯域通過フィルタの一例)、BPF237(第3の帯域通過フィルタの一例)を備えている。
また、スレーブモジュール20では、電圧制御発振器201と電力分配器202の間に小数分周器231(第1の分周器の一例)が設けられ、電力分配器202とミクサ206との間に小数分周器232が備えられ、さらに増幅器209と位相周波数比較器211との間に、小数分周器233(第2の分周器の一例)及び234が備えられる。
なお、小数分周器231、232、233及び234は、図5に示す小数分周器131と同様の構成である。また、BPF235はBPF132と同様の構成であり、BPF236はBPF133と同様の構成であり、BPF237はBPF134と同様の構成である。
次に、実施の形態3に係る周波数同期装置の動作を説明する。
本説明では実施の形態1と異なる動作を中心に説明を行う。
まず、第1の動作を説明する。
マスタモジュール10の増幅器106から出力された基準信号3は、BPF134を介して送受信アンテナ14へ出力され、送受信アンテナ14から放射される。送受信アンテナ14から放射された基準信号3は、スレーブモジュール20に設置された送受信アンテナ24にて受信される。
送受信アンテナ24にて受信された基準信号3は、BPF237を通過し、増幅器209で増幅され、小数分周器233、234を通過する。この小数分周器は、それぞれ同じ分周比Fで分周され、さらに固定分周器210にて分周比M1にて分周されることから、固定分周器210から出力される信号S3の周波数は、以下の式(20)の通りとなる。ここで、Fは1を除く小数である。
小数分周器234が出力した信号S3は、後段の位相周波数比較器211へ出力される。
次に、第2の動作を説明する。
スレーブモジュール20に設置された小数分周器231は、電圧制御発振器201にて発振した発振信号4を、分周比Fにて分周し、分周した発振信号4を後段の電力分配器202へ出力する。小数分周器231でF分周された発振信号4は、電力分配器202、増幅器203、BPF235を介して送受信アンテナ24へ出力される。この送受信アンテナ24へ出力されるF分周した発振信号4をS4信号とすると、その周波数は、以下の式(21)の通りとなる。
S4信号は送受信アンテナ24から放射され、マスタモジュール10に設置された送受信アンテナ14にて受信される。
送受信アンテナ14にて受信された発振信号4は、BPF132を通過し、増幅器101を介して小数分周器131へ出力される。小数分周器131は、分周比Fで分周し、分周した信号を増幅器103へ出力する。小数分周器131が分周した信号をS6とすると、その周波数は、以下の式(22)の通りである。
S6信号は、帰還信号5として、増幅器103、BPF133を通過して送受信アンテナ14へ出力される。S6信号は、帰還信号5として、送受信アンテナ14から放射され、スレーブモジュール20に設置された送受信アンテナ24にて受信される。
送受信アンテナ24にて受信された帰還信号5をS7信号とするとその周波数は、以下の式(23)の通りである。
S7信号は、増幅器204を介してミクサ206へ出力される。
次に、第3の動作を説明する。
電力分配器202で分岐されたもう一方の発振信号4は、小数分周器232へ入力される。小数分周器232は、発振信号4を分周比Fで分周し、分周した信号をミクサ206へ出力する。分周した信号をS8とすると、その周波数は、以下の式(24)の通りである。
ミクサ206には、帰還信号5(S7)と発振信号4(S8)の2つの信号が入力される。ミクサ206は、S7信号とS8信号とをミキシングし、その混合信号(S9)をBPF207に出力する。混合信号(S9)の周波数は、以下の式(25)のように表される。ここで、m、nは、整数である。
BPF207は、S9信号のうち、m=1、n=1の組合せの周波数を通過させ、固定分周器208に出力する。BPF207の出力信号をS10とすると、その周波数は、以下の式(26)となる。
固定分周器208は、BPF207が出力したS10信号を分周比2で分周し、分周した信号を位相周波数比較器211に出力する。固定分周器208が位相周波数比較器211へ出力する信号をS11とすると、その周波数は、以下の式(27)の通りとなる。
次に、第4の動作を説明する。
位相周波数比較器211への入力は、S3及びS11なり、両信号とも(1+v/c)及び1/F2が乗算されている。位相周波数比較器211にて、2つの信号の位相比較を行うと、その位相差は、S3の周波数とS11の周波数との差に依存する。周波数の積分結果が、位相であるからである。S3とS11との周波数差は、以下の式(28)で表される。
位相周波数比較器211は、この周波数差に応じた電流信号を、ループフィルタ212に出力する。ループフィルタ212は、電流信号を平滑化するとともに電圧信号に変換して、電圧制御発振器201へ出力する。電圧制御発振器201は、位相周波数比較器211によりフィードバック制御され、位相周波数比較器211は、S11の周波数−S3の周波数が0になるように、電圧制御発振器201を制御するので、最終的には、電圧制御発振器201の発振周波数は、f2⇒f0に変化する。つまり、スレーブモジュール20の電圧制御発振器201は、マスタモジュール10の参照信号の周波数に対して、発振周波数を同期させる
次に、基準信号3、発振信号4、帰還信号5の周波数関係についてまとめる。
第1〜第3の動作において、マスタモジュール10とスレーブモジュール20との間で周波数が同期している場合、周波数の関係はf2=f0となる。この場合、移動体間の空間における基準信号3はM1f0、発振信号4はf0/F、帰還信号5はf0/F2となる。したがって、基準信号3と発振信号4と帰還信号5との周波数比は、M1:1/F:1/F2となる。ここで、例えば、M1を2、Fを0.8とおくと、基準信号3と発振信号4と帰還信号5との周波数比は、2:1.25:1.5625となり、全ての信号の周波数がf0の1.25倍から2倍の狭帯域な周波数範囲に設定される。これに対し、M1を2、Fを2とおくと、基準信号3と発振信号4と帰還信号5との周波数比は、2:0.55:0.25となり、全ての信号の周波数がf0の0.25倍から2倍の広帯域な周波数範囲に設定される.このように、本構成の周波数同期装置は、小数分周器131、小数分周器231、小数分周器232を用いることによって、各信号が空間に放射される際において、基準信号3と発振信号4と帰還信号5とに狭帯域な周波数範囲内で異なる周波数を割り当てることができる。
以上のように、実施の形態3によれば、小数分周器を用いることによって、基準信号3、発振信号4、帰還信号5を整数比の関係でしか構成できなかった周波数関係について、小数比の関係でも構成することが可能となる。したがって、実施の形態3の構成では、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5の周波数を狭帯域な周波数範囲内に設定できる。これにより、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5に対してそれぞれ別のアンテナを設ける必要がなくなり、アンテナを共通化することができる。
さらに、固定分周器208の分周比を2から2×M1に変更することによって、f2=M1f0となり、移動体間の空間における基準信号3はM1f0、発振信号4はM1f0/F、帰還信号5はM1f0/F2となる。このことから、基準信号3と発振信号4と帰還信号5との周波数の比は1:1/F:1/F2となり、M1の値に依存しなくなる。したがって、M1によらず、適切なFの値を選択することによって、狭帯域な周波数範囲に基準信号3、発振信号4及び帰還信号5を設定することができる。
実施の形態4
実施の形態3ではマスタモジュール10、スレーブモジュール20間の基準信号3、発振信号4、帰還信号5に異なる周波数を用いるため、小数分周器を用いている。実施の形態4では、Fractional PLL回路(以下、fPLL回路という)を用いて、基準信号3、発振信号4、帰還信号5の周波数を変更することによって、実施の形態3と同様に、周波数の分離間隔を狭く設定でき、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5を一つのアンテナで送受信する構成を示す。
図6は、実施の形態4に係る周波数同期装置の一構成例を示す図である。
まず、マスタモジュール10において、実施の形態3と異なる構成について説明する。
マスタモジュール10では、小数分周器131の代わりにfPLL回路141を設置している。
図7は、fPLL回路141の一構成例を示す図である。
fPLL回路141は、固定分周器401、位相周波数比較器402、可変分周器403、ΔΣ変調器404、ループフィルタ405、電圧制御発振器406、方向性結合器407を備える。
固定分周器401は、fPLL回路141に入力される信号を整数分周し、位相周波数比較器402に出力する固定分周器である。固定分周器401は、高速動作する論理回路で構成され、入力された信号を、カウンタを用いて整数分周し出力する。fPLL回路141の入力端子と位相周波数比較器402とに接続され、fPLL回路141の入力端子から入力された信号を固定分周比Rにて分周し、R分周した信号を位相周波数比較器402へ出力する。ここで、Rは整数である。
位相周波数比較器402は、入力された2つの信号の位相差を検出し、その位相差に基づいた電流信号または電圧信号を出力する位相周波数比較器である。位相周波数比較器402は、例えば、高速動作する排他論理和回路とその出力に応じて電流を出力するチャージポンプ回路とで構成される。位相周波数比較器402は、固定分周器401と、可変分周器403とループフィルタ405とに接続され、固定分周器401が出力する信号の位相と可変分周器403が出力する信号の位相との比較を行い、得られた位相差に基づく電流信号をループフィルタ405へ出力する。
可変分周器403は、制御信号によって整数分周比が制御され、入力された信号を整数分周し出力する可変分周器である。可変分周器403は、高速動作する論理回路で構成され、入力された信号を、カウンタを用いて制御信号にて予め定められた分周比で整数分周し出力する。可変分周器403の分周比は、制御信号によって制御される。可変分周器403は、ΔΣ変調器404と方向性結合器407と位相周波数比較器402とに接続され、ΔΣ変調器404が出力する制御信号に基づいて、方向性結合器407が出力した信号を分周する。可変分周器403は、ΔΣ変調器404が出力する制御信号に基づき分周比を切り替えるので、分周比毎の時間の比率を制御することによって、小数分周した信号を生成できる。例えば、分周比を2⇒3⇒2⇒3と切り替えることで、分周比を2.5とすることができる。可変分周器403は、小数分周した信号を位相周波数比較器402へ出力する。
ΔΣ変調器404は、ΔΣ変調した制御信号を出力する変調器である。ΔΣ変調とは、アナログ信号をデジタル符号に変換する際に生じる量子化雑音を、オーバサンプリングにより高周波側へ拡散させることができる変調方式である。ΔΣ変調器404は、高速動作する論理回路にて構成される。ΔΣ変調器404は、可変分周器403と接続され、量子化雑音を高周波側へ拡散した制御信号を可変分周器403へ出力する。ΔΣ変調を用いることによって、量子化雑音をfPLL回路のループ帯域外である高周波側へ拡散できることから、小数分周による位相雑音の劣化を緩和することが可能である。
ループフィルタ405は、入力された電流信号を定められた帯域で積分し、電圧信号に変換し、変換した電圧信号を出力するループフィルタである。ループフィルタ405は、低域通過型フィルタにより構成され、遮断周波数より低い周波数の信号を通過させる。ループフィルタ405は、位相周波数比較器402と電圧制御発振器406とに接続され、位相周波数比較器402の出力信号の平滑化を行い、平滑化した電圧信号を電圧制御発振器406へ出力する。
電圧制御発振器406は、入力された制御電圧に応じて発振周波数を可変できる発振器である。電圧制御発振器406は、例えば、バラクタ等の容量可変デバイスとトランジスタを組み合わせて構成される。電圧制御発振器406は、ループフィルタ405と方向性結合器407とに接続され、ループフィルタ405が出力した電圧信号に応じた周波数で発振し、発振信号を方向性結合器407へ出力する。
方向性結合器407は、入力された電力を2経路に所定の電力比で分配する方向性結合器である。方向性結合器407は、例えば、電磁界結合させたマイクロストリップ線路を用いて構成される。電圧制御発振器406と、増幅器203と、固定分周器205とに接続され、電圧制御発振器201が出力した発振信号4を2分配し、一方を増幅器203に、他方を固定分周器205に出力する。
fPLL回路141の動作を説明する。
fPLL回路141に入力された信号は、固定分周器401にて分周され、位相周波数比較器402へ出力される。また、電圧制御発振器406が出力した信号は、方向性結合器407を介して可変分周器403へ出力される。
可変分周器403は、電圧制御発振器406が出力した信号を、ΔΣ変調器404が出力した制御信号に基づく分周比で分周し、位相周波数比較器402へ出力する。
位相周波数比較器402は、固定分周器401が出力した信号の位相と、可変分周器403が出力した信号の位相とを比較し、その位相差に基づく電流信号を、ループフィルタ405を介して電圧制御発振器406へフィードバックする。
fPLL回路141の動作における周波数関係を説明する。 固定分周器401が出力する信号SAの信号周波数は、以下の式(29)の通りである。
ここで、f
inは、fPLL回路141へ入力された信号の周波数である。Rは、固定分周器401の整数分周比である。また、可変分周器403が出力する信号SBの信号周波数は、以下の式(30)の通りである。
ここで、f
vcoは、電圧制御発振器406が出力する発振信号の周波数である。Fは、可変分周器403の小数分周比である。
位相周波数比較器402は、SAの周波数とSBの周波数とが一致するように、電圧制御発振器406にフィードバックをかける。したがって、SA=SBであるので、fPLL回路141の出力信号の周波数であるfvcoは、以下の式(31)で表される。
以上のように、fPLL回路141は、入力信号の小数倍の信号を得ることができる。なお、fPLL回路141と、小数分周器131とは以下の点で異なる。小数分周器131では、より細かい小数分周を実施しようとした場合、ミクサ302に入力される2つの信号の周波数差は小さくなるので、ミクサ302が出力する複数の混合信号の周波数間隔は小さくなる。したがって、所望の周波数の混合信号を得るためには、狭帯域な特性を持つBPF303が必要となる。しかし、実際には、狭帯域な特性を持つBPF303を実現するのが難しいため、小数分周器131では、BPF303の特性以上の細かい小数分周を行うことはできない。これに対して、fPLL回路141では、BPF303が不要であるため、より細かい小数分周が可能である。
次に、スレーブモジュール20において、実施の形態3と異なる構成について説明する。
スレーブモジュール20では、電圧制御発振器201と電力分配器202の間にfPLL回路241が設けられ、電力分配器202とミクサ206との間にfPLL回路242が備えられ、さらに増幅器209と固定分周器210との間に、fPLL回路243が備えられる。
なお、fPLL回路241、242、243は、図7に示すfPLL回路141と同様の構成である。
次に、実施の形態4に係る周波数同期装置の動作を説明する。実施の形態4に係る周波数同期装置の動作は、実施の形態3と同様であるため、説明を省略する。
以上のように、実施の形態4によれば、fPLL回路を用いることによって、基準信号3、発振信号4、帰還信号5を整数比の関係でしか構成できなかった周波数関係について、小数比の関係でも構成することが可能となる。したがって、実施の形態4の構成では、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5の周波数を狭帯域な周波数範囲内に設定できる。これにより、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5に対してそれぞれ別のアンテナを設ける必要がなくなり、アンテナを共通化することができる。実施の形態4は、固定分周器を用いる構成では、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5が、広帯域な周波数範囲に設定されるため、非常に広帯域なアンテナを使用しなければならないという課題を解決できる。
なお、実施の形態4では、fPLL回路を用いることにより、小数分周器を用いた際には急峻な特性のBPFが必要であり、その実現が困難であるという課題を解決でき、BPFの特性に依存せず、より細かい分解能での周波数の変更が可能となる。このため、小数分周器を用いる場合に比べて、基準信号3、発振信号4及び帰還信号5の周波数設定範囲の自由度を大きくできる。
実施の形態5
実施の形態5では、マスタモジュール10とスレーブモジュール20との間の送受信信号に用いられる基準信号3、発振信号4、及び帰還信号5に対して電波傍受を回避するため、モジュール間の信号の伝送に光通信を適用する構成を示す。実施の形態5は、光振幅変調器(以下、MOD(Modulator)という)を用いて、基準信号3、発振信号4、及び帰還信号5を変調元信号として光信号を変調し、変調した基準信号光(参照信号光)7、発振信号光8、及び帰還信号光9を使用することによって、電波傍受されることを防ぐ。
図8は、実施の形態5に係る周波数同期装置の一構成例を示す図である。本実施の形態では、基準信号光7、発振信号光8、及び帰還信号光9を送信または受信するアンテナとして、光送受信アンテナ15及び光送受信アンテナ25を用いている。 また、周波数同期回路200の構成や信号の関係は、実施の形態2と同等である。
まず、マスタモジュール10において実施の形態2と異なる構成について説明する。
マスタモジュール10は、増幅器106が削除され、光源150及びMOD151が追加されている。また、送信アンテナ13、サーキュレータ120、及び送受信アンテナ14が削除され、光合波器152、光アイソレータ153、FPM(Fine Pointing Mechanism)154、及び光送受信アンテナ15が追加されている。また、増幅器101及び増幅器103が削除され、光BPF155、光分波器156、及び光増幅器157が追加されている。さらに、センサ部510及び捕捉追尾制御部511が追加されている。
光送受信アンテナ15は、入力端子より入力された基準信号光7及び帰還信号光9を送信し、発振信号光8を受光するアンテナである。光送受信アンテナ15は、FPM154に接続され、スレーブモジュール20に設置された光送受信アンテナ25に向けて設置されている。例えば、光送受信アンテナ15は、複数のレンズ、反射鏡を組み合わせた光学系で構成される。
光源150は、無変調の連続信号光を励振する発振器である。光源150は、光ファイバを用いてMOD151に接続され、固有の波長λMにて発信し、無変調の連続信号光をMOD151へ出力する。光源150には、例えば、半導体レーザを用いられる。
MOD151は、入力された電気信号を用いて無変調の連続信号光に対して振幅変調を行う変調器である。MOD151は、PLL105、光源150及び光合波器152に接続される。MOD151は、PLL105から出力された信号S1を用いて、光源150から入力された波長λMの無変調の連続信号光へ振幅変調を行い、基準信号光7(SM1)を光合波器152へ出力する。MOD151には、例えば、マッハツェンダ型強度変調器が用いられる。
光合波器152は、入力された2つの信号光を合波して1つの出力端子より出力する合波器である。光合波器152は、MOD151、光増幅器157、及び光アイソレータ153に接続される。光合波器152は、MOD151から入力された基準信号光7(SM1)と光増幅器157から入力された帰還信号光9(SS3)とを合波して光アイソレータ153へ出力する。光合波器152には、例えば、ファイバカップラが用いられる。
光アイソレータ153は、3つの入出力端子を有し、入力された方向に応じて信号光を異なる2つの出力端子よりそれぞれ出力するアイソレータである。光アイソレータ153は、光合波器152、光BPF155、及びFPM154に接続される。光アイソレータ153は、FPM154から入力された発振信号光8を光BPF155へ出力し、光合波器152から入力された基準信号光7及び帰還信号光9をFPM154へ出力する。光アイソレータ153は、例えば、入射する方向によって反射方向が異なるように設計された誘電体多層膜ミラーと入出力のレンズで構成される。
FPM154は、捕捉追尾制御部511より入力された制御信号に基づいて内蔵する反射鏡を制御し、出力する光の方向の制御を行う。FPM154は、光送受信アンテナ15、光アイソレータ153、及び捕捉追尾制御部511に接続される。FPM154は、光アイソレータ153から入力された基準信号光7及び帰還信号光9を光送受信アンテナ15へ出力する際の入射角、並びに光送受信アンテナ15から入力された発振信号光8を光アイソレータ153へ出力する際の入射角を制御する。FPM154は、例えば、入出力のレンズと鏡面とその角度を制御するモータを内蔵する駆動部で構成される。
光BPF155は、所定の波長の信号光を通過させ、その他の波長の光を反射するフィルタである。光BPF155は、光アイソレータ153及び光分波器156に接続される。光BPF155は、光アイソレータ153から入力された光のうち、発振信号光8、つまり波長λMを中心とする信号光を光分波器156へ出力する。光BPF155は、例えば、特定の波長の信号光が透過するように設計された誘電体多層膜ミラーと入出力のレンズで構成される。
光分波器156は、入力された信号光を分波し異なる2つの出力端子に出力する分波器である。光分波器156は、光BPF155、センサ部510及び光増幅器157に接続される。光分波器156は、光BPF155から入力された発振信号光8を2分配し、センサ部510と光増幅器157とへそれぞれ出力する。光分波器156には、例えば、ファイバカップラが用いられる。
光増幅器157は、入力された信号光を増幅し、出力する光増幅器である。光増幅器157は、光分波器156及び光合波器152に接続される。光増幅器157は、光分波器156から入力された発振信号光8を増幅し、帰還信号光9(SS3)として光合波器152へ出力する。光増幅器157には、例えば、ファイバ増幅器が用いられる。
センサ部510は、入力された光のマッピングを行い、所望の入射角からどの程度、どの方向にずれているかを検出するセンサである。センサ部510は、光分波器156及び捕捉追尾制御部511に接続される。センサ部510は、光分波器156から入力された発振信号光8をマッピングし、その入射角を検出して、目標入射角に対する角度誤差を求め、求めた角度誤差を電気信号に変換して捕捉追尾制御部へ出力する。センサ部510は、例えば、入力された光を集光するマイクロレンズアレイと集光された光を受光するフォトダイオードアレイで構成される。各フォトダイオードは、2次元に配列されており,それぞれ受光した信号光の強度に比例する電気信号を出力する.その電気信号の振幅を計測すること光の照射位置が検出され入射角を計測する。
捕捉追尾制御部511は、検出された入射角より、正対するために必要なFPM154に対する制御量の計算を行い、その演算の結果を出力する。捕捉追尾制御部511は、センサ部510、FPM154に接続される。捕捉追尾制御部511は、センサ部510から入力された角度誤差に基づいてFPM154に対する制御値を計算にて求め、その結果をFPM154へ出力する。捕捉追尾制御部511には、例えば、FPGA(Field−Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が用いられる。
次に、スレーブモジュール20の構成について説明する。
スレーブモジュール20は、受信アンテナ23、増幅器209、送受信アンテナ24、サーキュレータ220、増幅器203、及び増幅器204が削除され、代わりに光送受信アンテナ25、FPM254、光アイソレータ253、光増幅器252、MOD251、光源250、光分波器255、光BPF256、光増幅器257、PD(Photodiode)258、光BPF259、光分波器260、光増幅器261、PD262、センサ部520、及び捕捉追尾制御部521が追加されている。
光送受信アンテナ25は、入力された発振信号光8を送信し、基準信号光7及び帰還信号光9を受信するアンテナである。光送受信アンテナ25は、FPM254に接続され、マスタモジュール10に設置された光送受信アンテナ15に向けて設置されている。例えば、光送受信アンテナ25は、複数のレンズ、反射鏡を組み合わせた光学系で構成される。
光源250は、無変調の連続信号光を励振する発振器である。光源250は、光ファイバを用いてMOD251に接続される。光源250は、固有の波長λSにて発振し、無変調の連続信号光をMOD251へ出力する。光源250には、例えば、半導体レーザが用いられる。
MOD251は、入力された電気信号を用いて無変調の連続信号光に対して振幅変調を行う変調器である。MOD251は、電力分配器202、光源250及び光増幅器252に接続される。MOD251は、電力分配器202から出力された発振信号(S4)を用いて、光源250から入力された波長λSの無変調の連続信号光に対して振幅変調を行い、振幅変調した発振信号光8(SS1)を光増幅器252へ出力する。MOD251には、例えばマッハツェンダ型強度変調器が用いられる。
光増幅器252は、入力された信号光を増幅し、出力する光増幅器である。光増幅器252は、MOD251及び光アイソレータ253に接続される。光増幅器252は、MOD251から入力された発振信号光8(SS1)を増幅し、光アイソレータ253へ出力する。光増幅器252には、例えば、ファイバ増幅器が用いられる。
光アイソレータ253は、3つの入出力端子を有し、入力された方向に応じて信号光を異なる2つの出力端子よりそれぞれ出力するアイソレータである。光アイソレータ253は、光増幅器252、光分波器255、及びFPM254に接続される。光アイソレータ253は、光増幅器252から入力された発振信号光8をFPM254へ出力し、FPM254から入力された基準信号光7及び帰還信号光9を光分波器255へ出力する。光アイソレータ253は、例えば、入射する方向によって反射方向が異なるように設計された誘電体多層膜ミラーと入出力のレンズで構成される。
FPM254は、捕捉追尾制御部521より入力された制御信号に基づいて内蔵する反射鏡を制御し、出力する光の方向の制御を行う。FPM254は、光送受信アンテナ25、光アイソレータ253、及び捕捉追尾制御部521に接続される。FPM254は、光送受信アンテナ25から入力された基準信号光7及び帰還信号光9を光アイソレータ253へ出力する際の入射角並びに光アイソレータ253から入力された発振信号光8を光送受信アンテナ25へ出力する際の入射角を制御する。FPM254は、例えば、入出力のレンズと鏡面とその角度を制御するモータを内蔵する駆動部で構成される。
光分波器255は、入力された信号光を分波し異なる2つの出力端子に出力する分波器である。光分波器255は、光アイソレータ253、光BPF256及び光BPF259に接続され、光アイソレータ253から入力された基準信号光7及び帰還信号光9を2分配し、それぞれ光BPF259と光BPF256とへ出力する。光分波器255には、例えば、ファイバカップラが用いられる。
光BPF256は、所定の波長の信号光を通過させ、その他の波長の光を反射するフィルタである。光BPF256は、光分波器255及び光増幅器257に接続される。光BPF256は、光分波器255から入力された光のうち、帰還信号光9、つまり波長λSを中心とする信号光を光増幅器257へ出力する。光BPF256は、例えば、特定の波長の信号光が透過するように設計された誘電体多層膜ミラーと入出力のレンズで構成される。
光増幅器257は、入力された信号光を増幅し、出力する光増幅器である。光増幅器257は、光BPF256及びPD258に接続される。光増幅器257は、光増幅器257から入力された帰還信号光9を増幅し、PD258へ出力する。光増幅器257には、例えば、ファイバ増幅器が用いられる。
PD258は、入力された信号光の強度に応じた電気信号を出力する復調器である。PD258は、光増幅器257及びミクサ206に接続され、光増幅器257から入力された帰還信号光9を復調し、復調信号S7をミクサ206へ出力する。例えば、PD258は、フォトダイオードと電力増幅器とから構成される。
光BPF259は、所定の波長の信号光だけを通過させ、その他の波長の光を反射するフィルタである。光BPF259は、光分波器255及び光分波器260に接続される。光BPF259は、光分波器255から入力された光のうち、基準信号光7、つまり波長λMを中心とする信号光を光分波器260へ出力する。光BPF259は、例えば、特定の波長の信号光が透過するように設計された誘電体多層膜ミラーと入出力のレンズで構成される。
光分波器260は、入力された信号光を分波し異なる2つの出力端子に出力する分波器である。光分波器260は、光BPF259、センサ部520、光増幅器261に接続される。光分波器260は、光BPF259から入力された基準信号光7を2分配し、センサ部520と光増幅器261とへそれぞれ出力する。光分波器260には、例えば、ファイバカップラが用いられる。
光増幅器261は、入力された信号光の増幅し、出力する光増幅器である。光増幅器261は、光分波器260及びPD262に接続される。光増幅器261は、光分波器260から入力された基準信号光7を増幅し、PD262へ出力する。光増幅器261には、例えば、ファイバ増幅器が用いられる。
PD262は、入力された信号光の強度に応じた電気信号を出力する復調器である。PD262は、光増幅器261及び固定分周器210に接続される。PD262は、光増幅器261から入力された基準信号光7を復調し、復調信号(S2)を固定分周器210へ出力する。例えば、PD262はフォトダイオードと電力増幅器とから構成される。
センサ部520は、入力された光のマッピングを行い、所望の入射角からどの程度、どの方向にずれているかを検出するセンサである。センサ部520は、光分波器260及び捕捉追尾制御部521に接続される。センサ部520は、光分波器260から入力された基準信号光7をマッピングし、その入射角を検出し、目標入射角に対する角度誤差を求め、求めた角度誤差を電気信号に変換して捕捉追尾制御部521へ出力する。センサ部520は、例えば、入力された光を集光するマイクロレンズアレイと集光された光を受光するフォトダイオードアレイで構成される。各フォトダイオードは、2次元に配列されており、それぞれ受光した信号光の強度に比例する電気信号を出力する。各フォトダイオードに対応する電気信号を計測することで、光の照射位置が検出され入射角を計測する。
捕捉追尾制御部521は、センサ部520により検出された入射角から、正対するために必要なFPM254に対する制御量の計算を行い、その演算の結果を出力する。捕捉追尾制御部521は、センサ部520及びFPM254に接続される。捕捉追尾制御部521は、センサ部520から入力された角度誤差に基づいてFPM254に対する制御値を計算にて求め、その結果をFPM254へ出力する。捕捉追尾制御部521には、例えば、FPGA、ASIC等が用いられる。
次に、実施の形態5に係る周波数同期装置の動作を説明する。本説明では実施の形態2と異なる動作を中心に説明する。
基準信号光7をマスタモジュール10からスレーブモジュール20へ供給する第1の動作について、実施の形態2と異なる部分について説明する。
マスタモジュール10側に設置された光源150から入力される無変調の連続信号光をSM0とすると、SM0信号の周波数は、以下の式(32)で表される。
ここで、λ
Mは、光源150の出力する信号光の波長である。
MOD151は、式(1)で表される信号を用いてSM0信号に対して振幅変調を行い、基準信号光7を生成し光合波器152へ出力する。基準信号光7をSM1とすると、SM1信号には2つの周波数成分が含まれており、その周波数は、以下の式(33)、(34)で表される。
光合波器152は、SM1と後述するSS3とを合波し光アイソレータ153へ出力する。SM1は、光アイソレータ153及びFPM154を介して光送受信アンテナ15へ出力される。
光送受信アンテナ15は、FPM154が出力した基準信号光7を光送受信アンテナ25へ送信する。
スレーブモジュール20の光送受信アンテナ25は、基準信号光7を受信し、FPM254へ出力する。光送受信アンテナ25が受信した基準信号光7は、ドップラー効果の影響を受けるため、SM1と周波数が異なる。光送受信アンテナ25が受信した基準信号光7をSM2とすると、SM2信号に含まれる2つの周波数成分は、以下の式(35)、(36)で表される。
光送受信アンテナ25は、FPM254を介して、SM2を光アイソレータ253へ出力する。
光アイソレータ253は、SM2を光分波器255に出力する。光分波器255は、SM2を2分配し、光BPF256及び光BPF259へ出力する。但し、光BPF256は、波長λSを中心とする信号以外の信号を遮断するため、光BPF256以降に接続される回路にSM2は入力されない。
光BPF259は、不要信号を遮断するとともにSM2を透過させ、光分波器260へ出力する。
光分波器260は、SM2をセンサ部520及び光増幅器261へ出力する。光増幅器261は、SM2を増幅し、増幅したSM2をPD262へ出力する。
PD262は、SM2を検波し、検波した信号を内部で増幅して出力する。検波の結果得られる信号の周波数は、SM2に含まれる2つの周波数成分の差分であることから、以下の式(37)で表される。
ここで、式(37)よりPD262における検波で得られる信号は、式(2)と一致するため、この信号は、実施の形態2におけるS2信号と同等である。PD262は、S2を固定分周器210へ出力する。固定分周器210以降の動作は、実施の形態2と同等であるため省略する。
次に、スレーブモジュール20が発振信号光8をマスタモジュール10へ送信し、マスタモジュール10から帰還される帰還信号光9をスレーブモジュール20にて受信する第2の動作について説明を行う。この動作においても実施の形態2と共通する動作は、説明を省略する。
スレーブモジュール20側に設置された光源250が出力する無変調の連続信号光をSS0とすると、SS0信号の周波数は、以下の式(38)で表される。
ここで、λ
Sは、光源250が出力する信号光の波長である。
MOD251は、式(4)で表される信号を用いてSS0信号に対して振幅変調を行い、発振信号光8を生成し光増幅器252へ出力する。発振信号光8をSS1とすると、変調信号SS1には2つの周波数成分が含まれており、その周波数は、以下の式(39)、(40)で表される。
光増幅器252は、SS1を増幅し、増幅したSS1を光アイソレータ253へ出力する。
光アイソレータ253は、FPM254を介して、SS1を光送受信アンテナ25へ出力する。
光送受信アンテナ25は、FPM254が出力した発振信号光8(SS1)を光送受信アンテナ15へ送信する。
マスタモジュール10の光送受信アンテナ15は、発振信号光8を受信し、FPM154へ出力する。光送受信アンテナ15が受信した信号は、ドップラー効果の影響を受けるため、SS1と周波数が異なる。光送受信アンテナ15が受信した発振信号光8をSS2とすると、SS2信号に含まれる2つの周波数成分は、以下の式(41)、(42)で表される。
光送受信アンテナ15は、FPM154を介して、SS2を光アイソレータ153へ出力する。
光アイソレータ153は、SS2を光BPF155へ出力する。このとき、光アイソレータ153は、SS2を光合波器152へ出力しない。光BPF155は、その他の波長の信号は透過させずにSS2を透過させ、光分波器156へ出力する。光分波器156は、SS2をセンサ部510及び光増幅器157へ出力する。光増幅器157は、SS2を増幅し、増幅したSS2を帰還信号光9として光合波器152へ出力する。この信号をSS3とすると、SS3信号に含まれる2つの周波数成分は、以下の(43)、(44)で表される。
光合波器152は、SS3信号とSM1信号とを合波し、光アイソレータ153へ出力する。光アイソレータ153は、FPM154を介してSS3信号を光送受信アンテナ15へ出力する。
光送受信アンテナ15は、FPM154が出力した帰還信号光9(SS3)を光送受信アンテナ25へ送信する。
スレーブモジュール20の光送受信アンテナ25は、帰還信号光9を受信し、FPM254へ出力する。光送受信アンテナ25が受信した信号は、ドップラー効果の影響を受けるため、SS3と周波数が異なる。光送受信アンテナ25が受信した帰還信号光9をSS4とすると、SS4信号に含まれる2つの周波数成分は、以下の式(45)、(46)で表される。
光送受信アンテナ25は、FPM254を介してSS4を光アイソレータ253へ出力する。
光アイソレータ253は、光分波器255を介してSS4を光BPF256及び光BPF259へ出力する。但し、光BPF259は、波長λMを中心とする信号を透過し、その他の波長の信号を遮断するため、光BPF259以降に接続される回路にSS4は入力されない。
光BPF256は、不要信号を遮断するとともにSS4を透過させ、光増幅器257へ出力する。光増幅器257は、SS4を増幅し、増幅したSS4をPD258へ出力する。
PD258は、SS4を検波し、検波した信号を内部で増幅して出力する。検波の結果、得られる信号の周波数は、SS4に含まれる2つの周波数成分の差分であることから、以下の式(47)で表される。
ここで、式(47)よりPD258における検波で得られる信号は、式(14)と一致するため、この信号が、実施の形態2におけるS7信号と同等である。PD258は、S7をミクサ206へ出力する。ミクサ206以降の動作は実施の形態2と同等であるため、説明を省略する。
また、伝送に光通信を用いることで必要となる実施の形態5に特有の動作として、光送受信アンテナ15及び光送受信アンテナ25の補足追尾動作を説明する。光は、電波に比べて直進性が高いため、補足追尾を行わないと、信号が受信できずモジュール間で通信が途切れるおそれがある。
マスタモジュール10に設置されたセンサ部510は、SS2に基づいて光送受信アンテナ15における実際の入射角と目標入射角との角度誤差を検出する。検出した角度誤差は、捕捉追尾制御部511へ出力される。
捕捉追尾制御部511は、入力された角度誤差情報基づいて,その誤差が無くなる様にFPM154に与える制御信号変化させる。一連の動作は閉ループ制御となっており、制御信号は、角度誤差情報を一定時間、積分することによって得られる角度誤差の平均を補償するように生成される。捕捉追尾制御部511は生成した制御信号をFPM154へ出力する。
FPM154は、入力された制御信号に基づいて内部のモータを動作させ、自身の反射鏡の角度を制御する。
同様に、マスタモジュール10に設置されたセンサ部520は、SM2に基づいて光送受信アンテナ25における実際の入射角と目標入射角との角度誤差を検出する。検出した角度誤差は、捕捉追尾制御部521へ出力される。
捕捉追尾制御部521は、角度誤差情報に基づいてFPM254に対する制御信号を演算により求め、その結果をFPM254へ出力する。
FPM254は、入力された制御信号に基づいて内部のモータを動作させ、自身の反射鏡の角度を制御する。
以上の動作によって、光送受信アンテナ15及び光送受信アンテナ25の送信方向は、互いに正対する。
以上のように、実施の形態5によれば、モジュール間の信号の伝送に光通信を用いるので、信号が広範囲に放射されず、電波傍受の危険性を回避できる。また、マスタモジュール10に用いる光源とスレーブモジュール20に用いる光源を異なる波長とすることで、信号の分離が容易になる。変調周波数が同一周波数であっても、波長の違いにより信号を分離できるので、各信号の分離のために必要であった分周器が不要になる効果がある。