JP6390290B2 - 導電性フッ素樹脂組成物、その製造方法および成形体 - Google Patents
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Description
(1)フッ素樹脂とカーボンナノチューブとを含む導電性フッ素樹脂組成物(特許文献1)。
(1)の導電性フッ素樹脂組成物は、カーボンナノチューブによる優れた導電性と、フッ素樹脂の優れた特性とを有する。しかし、カーボンナノチューブは、フッ素樹脂に分散しにくく、(1)の導電性フッ素樹脂組成物からなる成形体の導電性を充分に高くできないという欠点がある。
(2)スクリューを備えた溶融混練装置を用い、2種の熱可塑性樹脂の組み合わせ(たとえば、ポリビニリデンフルオライドとポリアミド6との組み合わせ)と導電性フィラー(カーボンナノチューブ)とを、スクリューの基端に投入し、スクリューの回転数:100〜3000rpm、せん断速度:150〜4500秒−1で溶融混練しながらスクリューの先端に送り、スクリューの先端の間隙に閉じ込めた後、スクリューの基端に移行させ、スクリューの基端と先端とで循環させる方法(特許文献2)。
前記導電性フッ素樹脂組成物の製造方法において、ASTM D3159に準拠し、297℃、49Nの荷重下で測定された前記導電性フッ素樹脂組成物のメルトフローレートが、0.5g/10分以上であることが好ましい。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物の製造方法においては、前記溶融混練を、せん断速度が0.5〜2000秒−1の条件下で行うことが好ましい。
前記導電性フィラーは、カーボンナノチューブであることが好ましい。
前記カーボンノナノチューブは、多層カーボンナノチューブであることが好ましい。
前記導電性フィラーの量は、前記導電性フッ素樹脂組成物100質量%のうち、1.2〜5質量%であることが好ましい。
なお、本発明において、体積固有抵抗は、下記試験片を作製した場合は下記式(1)から求める。また、下記棒状のストランドを作製した場合は下記式(2)から求める。
(体積固有抵抗)
導電性フッ素樹脂組成物からなる幅10mm、長さ70mm、厚さ1mmの試験片を作製し、絶縁抵抗計にて抵抗値を測定し、下式(1)から体積固有抵抗を求める。
ρv=R×W×t/L ・・・(1)
ただし、ρvは体積固有抵抗であり、Rは抵抗値であり、Wは試験片の幅であり、tは試験片の厚さであり、Lは電極間距離である。
また、導電性フッ素樹脂組成物からなる棒状のストランドの体積固有抵抗は、絶縁抵抗計にて抵抗を測定し下式(2)から体積固有抵抗を求める。
ρv=R×π×r2/L ・・・(2)
ただしρvは体積固有抵抗であり、Rは抵抗値であり、rはストランドの半径であり、Lは電極間距離である。
(MIT屈曲試験)
ASTM D2176に準拠し、導電性フッ素樹脂組成物からなる幅12.5mm、長さ130mm、厚さ0.23mmの試験片を作製し、荷重が12.25N、折り曲げ角度が左右それぞれ135度、1分間の折り曲げ回数が175回の条件下で、試験片を屈曲させ、試験片が切断するまでの回数を求める。
前記成形体の厚さは、1mm以下であることが好ましい。
前記成形体は、ヒーターケーブルであることが好ましい。
押出成形において、ダイスから押し出された基準となるせん断速度により得られた成形体の体積固有抵抗値(ρvo)を基準とし、変更されたせん断速度により得られた成形体の体積固有抵抗(ρz)とし、その比率をρz/ρvoにより算出する。
本発明の成形体は、溶融した前記導電性フッ素樹脂組成物が前記ダイスから押し出される際のせん断速度が、0.5〜400秒−1で得られ、かつ前記変動比が5.0以下であることが好ましい。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物の製造方法によれば、前記効果を奏することができる導電性フッ素樹脂組成物を製造できる。
本発明の成形体は、フッ素樹脂の特性を有し、かつ耐屈曲性および導電性に優れる。
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
「溶融流動性を示す」とは、フッ素樹脂のメルトフローレートが、0.5g/10分以上であることを意味する。
「導電性フィラー」とは、樹脂用の充填材のうち、導電性を有するものを意味する。
「アスペクト比」とは、導電性フィラーの長さを導電性フィラーの厚さで割った値を意味する。
「平均吐出量」とは、溶融混練を行った時間Tの間に吐出された混練物の量を該時間Tで割った値を意味する。
「L/D」とは、スクリュー長Lをスクリュー径Dで割った値を意味する。
「構成単位」とは、単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位を意味する。構成単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、重合体を処理することによって該単位の一部が別の構造に変換された単位であってもよい。
「単量体」とは、重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物を意味する。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物は、後述する製造方法で得られるものであり、溶融成形可能なフッ素樹脂と導電性フィラーとを含む。
溶融成形可能なフッ素樹脂としては、公知のものが挙げられ、たとえば、テトラフルオロエチレン/フルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAと記す。)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPと記す。)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと記す。)、ポリビニリデンフルオライド(以下、PVDFと記す。)、ポリクロロトリフルオロエチレン(以下、PCTFEと記す。)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(以下、ECTFEと記す。)、後述する接着性フッ素樹脂等が挙げられる。
溶融成形可能なフッ素樹脂としては、成形体の耐屈曲性がさらに優れる点から、テトラフルオロエチレンに基づく構成単位を有する共重合体が好ましく、成形体の耐熱性、摺動性、導電性フッ素樹脂組成物の成形性等の点から、PFA、FEP、ETFEがより好ましい。
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、たとえば、下式で表される化合物が挙げられる。
CF2=CF−O−Rf
ただし、Rfは、炭素数1〜10のフルオロアルキル基である。
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、耐熱性の点から、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)が好ましい。
PFAにおけるテトラフルオロエチレンに基づく構成単位の割合は、99〜92質量%が好ましく、フルオロアルキルビニルエーテルに基づく構成単位の割合は、1〜8質量%が好ましい。各構成単位の割合が前記範囲内にあれば、耐熱性、流動性を有する点で好ましい。
FEPにおけるテトラフルオロエチレンに基づく構成単位の割合は、99〜80質量%が好ましく、ヘキサフルオロプロピレンに基づく構成単位の割合は、1〜20質量%が好ましい。各構成単位の割合が前記範囲内にあれば、耐熱性、流動性を有する点で好ましい。
ETFEにおけるテトラフルオロエチレンに基づく構成単位の割合は、90〜55質量%が好ましく、エチレンに基づく構成単位の割合は、10〜45質量%が好ましい。各構成単位の割合が前記範囲内にあれば、高い屈曲性、耐熱性、流動性を有する点で好ましい。
他の単量体としては、テトラフルオロエチレン(ただし、PFA、FEPおよびETFEを除く。)、ヘキサフルオロプロピレン(ただし、FEPを除く。)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(ただし、PFAを除く。)、ペルフルオロアルキルエチレン(アルキル基の炭素数1〜10)、ペルフルオロアルキルアリルエーテル(アルキル基の炭素数1〜10)、下式で表される化合物等が挙げられる。
CF2=CF[OCF2CF(CF3)]nOCF2(CF2)pX
ただし、Xは、ハロゲン原子であり、nは、0〜5の整数であり、pは、0〜2の整数である。
他の単量体に基づく構成単位の割合は、溶融成形可能なフッ素樹脂100質量%のうち、50質量%以下が好ましく、0.01〜45質量%が好ましい。
官能基(I)は、接着性フッ素樹脂の主鎖末端および側鎖のいずれか一方または両方に存在する。官能基(I)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
炭化水素基としては、炭素数2〜8のアルキレン基等が挙げられる。
ハロホルミル基は、−C(=O)−X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、他基材との反応性の点から、フッ素原子が好ましい。すなわちハロホルミル基としては、フルオロホルミル基(カルボニルフルオリド基ともいう。)が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基としては、他基材との反応性の点から、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
導電性フィラーとしては、公知のものが挙げられ、たとえば、導電性を有するカーボンナノ繊維(気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン等)等が挙げられる。
導電性フィラーとしては、成形体の耐屈曲性の向上の点から、カーボンナノチューブが好ましい。
カーボンナノチューブとしては、工業的に入手しやすい点、および導電性フッ素樹脂組成物中に分散しやすく、導電性のバラツキが少ない点から、多層カーボンナノチューブが好ましい。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、溶融成形可能なフッ素樹脂以外の熱可塑性樹脂、公知の樹脂用添加剤等が挙げられる。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物のメルトフローレート(以下、MFRと記す。)は、0.5g/10分以上であり、1.0g/10分以上が好ましく、1.5g/10分以上がより好ましい。導電性フッ素樹脂組成物のMFRが0.5g/10分未満では、導電性フッ素樹脂組成物の溶融粘度が高くなるため、後述する製造方法において、平均吐出量:1.0kg/時間以上、スクリュー回転数:50rpm以上を達成できない、または達成できたとしても導電性フィラーが切断され、短くなる(アスペクト比が小さくなる)。その結果、成形体の耐屈曲性および導電性を充分に確保できない。本発明の導電性フッ素樹脂組成物のMFRは、耐屈曲性の点からは、10g/10分以下が好ましい。
なお、前記MFRの測定は、該導電性フッ素樹脂組成物の融点よりも20℃以上高い温度で測定したものである。また、49Nの荷重下で測定したものである。例えば、ETFEについては、ASTM D3159に準拠し、297℃、49Nの荷重下で測定した値である。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物の体積固有抵抗は、108Ω・cm以下であり、107Ω・cm以下が好ましい。導電性フッ素樹脂組成物の体積固有抵抗が108Ω・cm以下であれば、成形体の導電性が良好となる。
導電性フッ素樹脂組成物の体積固有抵抗は、下記の方法で求める。
導電性フッ素樹脂組成物からなる幅10mm、長さ70mm、厚さ1mmの試験片を作製し、絶縁抵抗計にて抵抗値を測定し、下式(1)から体積固有抵抗を求める。
ρv=R×W×t/L ・・・(1)
ただし、ρvは体積固有抵抗であり、Rは抵抗値であり、Wは試験片の幅であり、tは試験片の厚さであり、Lは電極間距離である。
また、導電性フッ素樹脂組成物からなる棒状のストランドの体積固有抵抗は、絶縁抵抗計にて抵抗を測定し下式(2)から体積固有抵抗を求める。
ρv=R×π×r2/L ・・・(2)
ただしρvは体積固有抵抗であり、Rは抵抗値であり、rはストランドの半径であり、Lは電極間距離である。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物は、MIT屈曲試験で求めた試験片が切断するまでの回数が、5000回以上であることが好ましく、6000回以上であることがより好ましい。MIT屈曲試験で求めた試験片が切断するまでの回数は、成形体の耐屈曲性の目安となる。
試験片が切断するまでの回数は、下記の方法で求める。
ASTM D2176に準拠し、導電性フッ素樹脂組成物からなる幅12.5mm、長さ130mm、厚さ0.23mmの試験片を作製し、荷重が12.25N、折り曲げ角度が左右それぞれ135度、1分間の折り曲げ回数が175回の条件下で、試験片を屈曲させ、試験片が切断するまでの回数を求める。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物の製造方法は、スクリューを備えた装置を用い、溶融成形可能なフッ素樹脂と導電性フィラーとを溶融混練して、混練物からなる導電性フッ素樹脂組成物を製造する方法であって、下記の条件を満足する。
・導電性フィラーのアスペクト比が、100以上である。
・導電性フィラーの量が、導電性フッ素樹脂組成物100質量%のうち、1.1〜10質量%である。
・スクリューの先端側から混練物を連続的または断続的に吐出しながら溶融混練する。
・混練物の平均吐出量が、1.0kg/時間以上である。
・スクリューの回転数が、50〜700rpmである。
・導電性フッ素樹脂組成物のMFRが、0.5g/10分以上である。
スクリューを備えた装置としては、生産性の点から、二軸押出機が好ましく、溶融成形可能なフッ素樹脂と導電性フィラーとを効率的に溶融混練できる点から、L/Dが20以上の二軸押出機がより好ましく、L/Dが30〜100の二軸押出機がさらに好ましい。
スクリューの先端側から混練物を連続的または断続的に吐出しながら溶融混練することによって、混練物が装置内に滞留せず、混練物に必要以上のせん断力がかかることがない。そのため、導電性フィラーが切断されにくく(導電性フィラーのアスペクト比が小さくならず)、その結果、成形体の耐屈曲性および導電性を充分に確保できる。
以上説明した本発明の導電性フッ素樹脂組成物の製造方法にあっては、スクリューを備えた装置を用い、溶融成形可能なフッ素樹脂と導電性フィラーとを溶融混練して、混練物からなる導電性フッ素樹脂組成物を製造する方法であって、導電性フィラーのアスペクト比が、100以上であり、導電性フィラーの量が、導電性フッ素樹脂組成物100質量%のうち、1.1〜10質量%であり、スクリューの先端側から混練物を連続的または断続的に吐出しながら溶融混練し、混練物の平均吐出量が、1.0kg/時間以上であり、スクリューの回転数が、50〜700rpmであり、導電性フッ素樹脂組成物のMFRが、0.5g/10分以上であるため、フッ素樹脂の特性を有し、かつ耐屈曲性および導電性に優れる成形体を得ることができる導電性フッ素樹脂組成物を製造できる。
本発明の成形体は、本発明の導電性フッ素樹脂組成物を成形してなるものである。
成形方法としては、押出成形法、射出成形法、中空成形法、圧縮成形法(プレス成形法)等が挙げられる。押出成形には、パイプ、電線、フィルム、シート等の成形が含まれる。
押出成形において、ダイスから押し出された基準となるせん断速度により得られた成形体の体積固有抵抗値(ρvo)を基準とし、変更されたせん断速度により得られた成形体の体積固有抵抗(ρz)とし、その比率をρz/ρvoにより算出する。
本発明の成形体は、溶融した前記導電性フッ素樹脂組成物が前記ダイスから押し出される際のせん断速度が、0.5〜400秒−1で得られ、かつ前記変動比が5.0以下であることが好ましい。
変動比が5.0以下であると、ダイスでのせん断速度が変化しても、体積固有抵抗の変動が抑制されているため、安定した成形体を得られるため好ましい。
なお、「基準となるせん断速度」は、押出成形におけるせん断速度の最小値であることが好ましい。また「キャピログラフ(東洋精機社製)」などの装置を用いて、本発明の導電性フッ素樹脂組成物からなる棒状ストランドなどを作製し、体積固有抵抗値を求めてもよい。この場合、当該装置のせん断速度の最小値を、基準となるせん断速度とすることが好ましい。例えば、「キャピログラフ1C(東洋精機社製)」であれば、せん断速度の最小値は12.2秒−1であり、これを基準となるせん断速度とすることができる。
また、「変更されたせん断速度」は、押出成形におけるせん断速度の最大値であることが好ましい。「キャピログラフ(東洋精機社製)」などの装置を用いて、本発明の導電性フッ素樹脂組成物からなる棒状ストランドなどを作製し、体積固有抵抗値を求めた場合、当該装置のせん断速度の最大値を、基準となるせん断速度とすることが好ましい。例えば、「キャピログラフ1C(東洋精機社製)」であれば、せん断速度の最大値は243.2秒−1であり、これを変更されたせん断速度とすることができる。
以上説明した本発明の成形体にあっては、本発明の導電性フッ素樹脂組成物を成形してなるものであるため、フッ素樹脂の特性を有し、かつ耐屈曲性および導電性に優れる。
例1〜7、例12〜17、例20〜22は実施例であり、例8〜11、18、19は比較例である。
溶融混練の際のせん断速度は、下式(3)から求めた。
γ=π(D−2Ct)N/Ct ・・・(3)
ただし、γはせん断速度であり、Dは押出機のバレルの径であり、Ctはバレルとスクリューの隙間であり、Nは1秒あたりのスクリュー回転数である。
導電性フッ素樹脂組成物のMFRは、メルトインデクサー(タカラサーミスタ社製)を用い、ASTM D3159に準拠して測定した。具体的には、導電性フッ素樹脂組成物を内径9.5mmのシリンダーに装填し、融点プラス20℃以上の設定値で5分間保持した後、該温度で49Nのピストン荷重下に内径2.1mm、長さ8mmのオリフィスを通して押出し、押出速度(g/10分)をMFRとした。
なお、「融点プラス20℃以上の設定値」とは、例1〜11および例14〜19については297℃、例12、13および例20〜例22は372℃である。
ASTM D2176に準拠し、導電性フッ素樹脂組成物をプレス成形して厚さ0.23mmのシートを作製し、該シートから幅12.5mm、長さ130mm、厚さ0.23mmの試験片を切り出し、MIT折り曲げ試験装置(東洋精機製作所社製)を用いて、荷重が12.25N、折り曲げ角度が左右それぞれ135度、1分間の折り曲げ回数が175回の条件下で、試験片を屈曲させ、試験片が切断するまでの回数を求めた。
メルト熱プレス機(テスター産業社製)を用いて導電性フッ素樹脂組成物をプレス成形して厚さ1mm、各辺80mmのシートを作製し、該シートから幅10mm、長さ70mm、厚さ1mmの試験片を切り出し、絶縁抵抗計にて抵抗値を測定し、下式(1)から体積固有抵抗を求めた。
ρv=R×W×t/L ・・・(1)
ただし、ρvは体積固有抵抗であり、Rは抵抗値であり、Wは試験片の幅であり、tは試験片の厚さであり、Lは電極間距離である。
また東洋精機社製のキャピログラフ1Cにて棒状のストランドを作製し体積固有抵抗を求めた。
ρv=R×π×r2/L ・・・(2)
ただしρvは体積固有抵抗であり、Rは抵抗値であり、rはストランドの半径であり、Lは電極間距離である。
ETFE(A):テトラフルオロエチレンに基づく構成単位/エチレンに基づく構成単位/(ペルフルオロブチル)エチレンに基づく構成単位=54/46/1.4(モル比)、MFR:10g/10分。
PFA(A):テトラフルオロエチレンに基づく構成単位/フルオロアルキルビニルエーテルに基づく構成単位=98/2(モル比)、MFR:12g/10分。
FEP(A):テトラフルオロエチレンに基づく構成単位/ヘキサフルオロプロピレンに基づく構成単位=92/8、MFR:6.7g/10分。
CNT(B):ナノシル社製、NC7000、多層カーボンナノチューブ、直径:9.5nm、アスペクト比:160。
CB(B):電気化学工業社製デンカブラック、アセチレンブラック、平均粒子径:38nm、アスペクト比:1.0〜1.7。
二軸押出機(テクノベル社製)のスクリューの基端に、ETFE(A)とCNT(B)とを質量比(A)/(B)=98/2、かつ(A)と(B)の合計の平均投入量が2.0kg/時間となるように連続的に投入し、スクリューの先端側から混練物を2.0kg/時間で連続的に吐出しながら、スクリュー回転数200rpm、温度300℃、せん断速度445秒−1の条件下で溶融混練し、混練物である導電性フッ素樹脂組成物を得た。結果を表1に示す。
(A)/(B)、平均吐出量、スクリュー回転数、せん断速度を表1、表2に示す値に変更した以外は、例1と同様にして導電性フッ素樹脂組成物を得た。結果を表1、表2に示す。
ラボプラストミル混錬機(東洋精機社製)に、ETFE(A)とCNT(B)とを質量比(A)/(B)=98/2となるように、かつ合計で40g一括投入し、スクリュー回転数50rpm、温度300℃の条件下で5分間溶融混錬し、混練物である導電性フッ素樹脂組成物を得た。結果を表2に示す。
ラボプラストミル混錬機(東洋精機社製)に、ETFE(A)とCNT(B)とを質量比(A)/(B)=98/2となるように、かつ合計で3kg一括投入し、スクリュー回転数100rpm、温度300℃の条件下で10分間溶融混錬し、混練物である導電性フッ素樹脂組成物を得た。結果を表2に示す。
二軸押出機(テクノベル社製)のスクリューの基端に、PFA(A)とCNT(B)とを質量比(A)/(B)=98.5/1.5、かつ(A)と(B)の合計の平均投入量が2.0kg/時間となるように連続的に投入し、スクリューの先端側から混練物を2.0kg/時間で連続的に吐出しながら、スクリュー回転数300rpm、温度340℃、せん断速度667.5秒−1の条件下で溶融混練し、混練物である導電性フッ素樹脂組成物を得た。結果を表3に示す。
(A)/(B)、平均吐出量、スクリュー回転数、せん断速度を表3に示す値に変更した以外は、例12と同様にして導電性フッ素樹脂組成物を得た。結果を表3に示す。
例8の導電性フッ素樹脂組成物は、溶融混練の際のスクリュー回転数が速すぎたため、成形体の耐屈曲性に劣っていた。
例9の導電性フッ素樹脂組成物は、導電性フィラーの量が少ないため、成形体の体積固有抵抗が高かった。
例10、11の導電性フッ素樹脂組成物は、混練物を連続的または断続的に吐出しながら溶融混練していないため、成形体の体積固有抵抗が高く、耐屈曲性にも劣っていた。
テクノベル社製二軸押出機にETFE(A)とCNT(B)とを質量比(A)/(B)=98/2として1時間当たり2.0kg/時間になるように投入し、スクリュー回転数300rpm、混練温度300℃、せん断速度667.5秒−1の条件下で溶融混練した。得られた導電性フッ素樹脂組成物について、東洋精機社製キャピログラフ1Cにて温度300℃、せん断速度12.2〜243.2秒−1の領域でストランドを作製し、得られたストランドの体積固有抵抗を測定した。せん断速度12.2秒−1により得られたストランドの体積固有抵抗をρvoとしその他のせん断速度により得られたストランドの体積固有抵抗をρzとし、ρz/ρvoを各せん断速度の変動比とした。結果を表4に示す。
フッ素樹脂の種類、(A)/(B)、平均吐出量、スクリュー回転数、せん断速度を表4、表5に示す値に変更した以外は、例16と同様にして導電性フッ素樹脂組成物のストランドを得た。結果を表4、表5に示す。
例18の導電性フッ素樹脂組成物は、導電性フィラーの量が少ないため、体積固有抵抗を算出することが出来なかった。結果として導電性が無いことになる。
例19の導電性フッ素樹脂組成物は、導電性フィラーのアスペクト比が小さいため体積固有抵抗の変動が大きく安定した成形体を得ることに劣った。
Claims (5)
- スクリューを備えた装置を用い、溶融成形可能なフッ素樹脂と導電性フィラーとを溶融混練して、混練物からなる導電性フッ素樹脂組成物を製造する方法であって、
前記導電性フィラーのアスペクト比が、100以上であり、
前記導電性フィラーの量が、前記導電性フッ素樹脂組成物100質量%のうち、1.1〜10質量%であり、
前記スクリューの先端側から前記混練物を連続的または断続的に吐出しながら溶融混練し、
前記混練物の平均吐出量が、1.0kg/時間以上であり、
前記スクリューの回転数が、50〜700rpmであり、
前記導電性フッ素樹脂組成物のメルトフローレートが、0.5g/10分以上であり、
前記スクリューを備えた装置が、スクリューのL/D(ここでLはスクリュー長であり、Dはスクリュー径である。)が30以上100以下の二軸押出機であり、
前記溶融混練を、せん断速度が0.5〜2000秒 −1 の条件下で行う、
導電性フッ素樹脂組成物の製造方法。 - 前記導電性フッ素樹脂組成物の製造方法において、
ASTM D3159に準拠し、297℃、49Nの荷重下で測定された前記導電性フッ素樹脂組成物のメルトフローレートが、0.5g/10分以上である、請求項1に記載の導電性フッ素樹脂組成物の製造方法。 - 前記導電性フィラーが、カーボンナノチューブである、請求項1または2に記載の導電性フッ素樹脂組成物の製造方法。
- 前記カーボンノナノチューブが、多層カーボンナノチューブである、請求項3に記載の導電性フッ素樹脂組成物の製造方法。
- 前記導電性フィラーの量が、前記導電性フッ素樹脂組成物100質量%のうち、1.2〜5質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性フッ素樹脂組成物の製造方法。
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