JP6388791B2 - Vpac1受容体活性化剤及びドライマウスの予防薬又は治療薬 - Google Patents
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また、唾液分泌を促進させる分子メカニズムに着目したドライマウス治療薬も報告されているが(特許文献6、7)、数は少なく、該分子メカニズムを活性化させることにより唾液分泌を促進するドライマウス治療薬の開発が望まれている。
非特許文献3には、PACAPが唾液分泌の促進に関与していることが報告されているが、どのような分子メカニズムによって唾液分泌促進が誘導されているかはわかっていない。
本発明のVPAC1受容体活性化剤は、VPAC1受容体を活性化することにより唾液分泌を促進させるものであることを特徴とする。
PACAPの受容体には、VIP(Vasoactive intestinal polypeptide:血管作動性腸管ポリペプチド)に対しても同等の親和性で結合し、cAMPの産生を促進させるVPAC受容体(VPAC1受容体、VPAC2受容体)と、PACAPに選択的に結合し、cAMP産生の他にもホスファチジルイノシトール代謝回転やMAPキナーゼを活性化させるPAC1受容体が存在する。
本発明により、初めて、PACAPは、VPAC1受容体を活性化することにより唾液分泌を促進することが見出された。つまり、PACAPによる涙液分泌促進機構と唾液分泌促進機構は異なることが見出された。
更に、非特許文献3には、PACAPが唾液分泌に関与していることの示唆はあるが、VPAC1受容体が唾液分泌促進に関与しているか否かについては記載も示唆もされていない。よって、本発明のVPAC1受容体活性化剤は、新規性及び進歩性の何れをも有する。
PACAP誘導体とは、例えば、PACAPのポリペプチド構造中における一部のアミノ酸が削除若しくは置換されたもの、又は、PACAPのポリペプチド構造中に他のアミノ酸が挿入された唾液分泌促進作用を有するものを言う。
PACAP若しくはPACAP誘導体又はそれらの塩は、単離されたものや精製されたものが好ましく、抽出したものや合成したものが好ましい。
かかる担体としては、特に制限はなく、例えば、後述する剤型等に応じて適宜選択することができる。また、前記VPAC1受容体活性化剤中の前記「その他の成分」の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明のドライマウス予防薬又は治療薬は、前記VPAC1受容体活性化剤を含有する。
具体的には、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶剤、懸濁剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散布剤等が挙げられる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。
前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
前記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。
前記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
また、前記ドライマウス予防薬又は治療薬の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与量は、有効成分の量として、1mg〜30gが好ましく、10mg〜10gがより好ましく、100mg〜3gが特に好ましい。
また、前記ドライマウス予防薬又は治療薬の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。
本発明において、VCAP1受容体活性化により、唾液分泌が促進される作用・原理は明らかではなく、また、本発明は、かかる作用・原理の範囲に限定されるわけではないが、以下のことが考えられる。
涙液分泌促進作用メカニズムにおいては、上述のとおり、PACAPがPAC1受容体を介して、cAMP/PKA経路を活性化させ、更に、アクアポリン5のリン酸化を誘導することにより涙液分泌を促進している。しかし、本発明では、意外にも、PAC1受容体ではなく、VPAC1受容体を活性化することにより唾液分泌が促進されることを見出した。
すなわち、PACAPによりVPAC1受容体が活性化されたことにより、唾液分泌促進に関与する分子メカニズムが活性化された結果、唾液分泌が促進された。
<唾液腺における発現量の比較>
唾液腺は、漿液腺である耳下腺、粘液腺である舌下腺、混合腺である下顎腺の3種の大唾液腺と小唾液腺がある。唾液腺は、腺房部、腺房部を覆う筋上皮細胞及び導管部からなり、腺房部では唾液が生成され、その唾液は導管部に集められ口腔に運び唾液が分泌される。また、唾液分泌は交感神経及び副交感神経により調節されている。
更にリアルタイムPCR法により舌下腺、下顎腺のPACAP mRNA発現量は耳下腺よりも多く(図2A)、また舌下腺、下顎腺、耳下腺において3種の受容体のうちVPAC1R mRNAの発現量が最も多いことが認められた(図2B)。
<PACAPによる唾液分泌促進>
次に生理食塩水(生食)、PACAP38(ペプチド研究所,大阪,10−6〜10−14M)(以下、単に「PACAP」と略記する場合がある)を非麻酔下のマウス(C57BL/6J、雄、8〜10週齢)に、体重1gあたり5μLの量を、マウスの尾の静脈に注射した(図3A)。ピンセットを用いて綿球をマウスの口の中に1分間入れ、口に入れる前後の綿球重量の差を唾液量とし、投与前、投与後15分、30分、45分、60分の唾液量を測定した(図3B、C)。
生理食塩水又はPACAP(10−6〜10−14M)を投与後15分ごとに唾液量を計測した結果を図4に示す。
<唾液分泌促進に関与する受容体の探索>
唾液分泌促進に関与している受容体を明らかにするために、試験例2と同様の操作により、PACAP及びPACAP受容体アンタゴニストを同時投与により唾液分泌の影響を調べた。本実験ではPAC1R、VPAC2RアンタゴニストであるPACAP6−38(ペプチド研究所)、又はVPAC1R、VPAC2RアンタゴニストであるVIP6−28(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)の2種類のアンタゴニスト(10−8M)とPACAP38(10−10M)の混合溶液を投与して、PACAP単独投与による唾液分泌量の比較を行った。
<涙液分泌促進に関与する受容体の探索>
PACAPが涙液分泌促進作用を有することは既に報告されている(特許文献10、非特許文献2)。そこで、涙液分泌促進に関与している受容体を明らかにするために、PACAP単独でマウスに点眼したときと、PACAP及びPACAP受容体アンタゴニストであるPACAP6−38又はVIP6−28を同時に投与したときの、涙液分泌の比較を行った。
8〜10週齢のC57BL/6Jマウスの両眼に点眼し、綿糸法により涙液量を測定した。
図6の結果より、PACAPの涙液分泌促進作用はPACAP6−38を同時に投与することにより抑制されたが、VIP6−28を同時に投与したときは抑制されなかった。以上のことから、PAC1受容体が涙液分泌促進に関与していることが示唆された。
また、PACAPの製薬学的に許容される塩、PACAP誘導体又はその製薬学的に許容される塩についても、VPAC1受容体を活性化することにより唾液分泌促進が誘導される可能性が示唆された。
また、リアルタイムPCR法において、マウス唾液腺にVPAC1受容体が最も多く発現することが確認できた。これまでにヒトの唾液腺においてVPAC1R mRNAの発現が最も多いことが確認されている。本発明により、マウスにおいてPACAPがVPAC1受容体を活性化することにより唾液分泌を促進する可能性が示唆されたことから、ヒトにおいてもPACAPはVPAC1Rを活性化することにより唾液分泌を促進すると考えられる。
また、本発明の利用可能性は、唾液分泌量が減少する高齢者の増加に伴い、ますます高まるものである。
Claims (1)
- 唾液腺に存在するVPAC1受容体活性化用である唾液腺VPAC1受容体活性化剤を含有する唾液腺VPAC1受容体活性化ドライマウスの予防薬又は治療薬であって、
該唾液腺VPAC1受容体活性化剤は、PACAP又はその製薬学的に許容される塩であり、10−11mol/L〜10−9mol/Lの範囲で、該PACAP又はその製薬学的に許容される塩を含有することを特徴とする唾液腺VPAC1受容体活性化ドライマウスの予防薬又は治療薬。
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