JP2019511495A - GSK3β阻害薬チデグルシブによるCDKL5障害の治療 - Google Patents
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Abstract
本明細書には、チデグルシブ又はその誘導体によってCDKL5欠損を治療する方法が提供される。【選択図】図1
Description
サイクリン依存性キナーゼ様5(CDKL5)変異/欠損症、別名非典型的レット症候群は、世界中で17,000〜38,000例の女児出生につき1例起こる消耗性の出生後神経障害である。発生率は低いが、男児にも発症する。この障害は出身民族又は人種に限定されない。CDKL5変異/欠損症の症状は軽度から重度まで様々であり、早発性発作、認知障害、筋緊張低下並びに自律神経障害、睡眠障害及び胃腸障害として現れる。疾患の症状は、機能性CDKL5タンパク質の欠損によって生じる。
個体におけるX連鎖性CDKL5遺伝子の突然変異又はCDKL5タンパク質の欠損は、非典型的又は先天性レット症候群の発症に関係があるとされる。Bertani et al.,J.biol.Chem.2006,281:32048−320 56、Scala et al.,J.Med.Gen.,2005.42:103−107、及びKalscheuer et al.,Am.J.Hum.Genet.2003.72:1401−1411を参照のこと。CDKL5遺伝子はX染色体上にあり、正常な脳の発達及び機能に不可欠なタンパク質をコードする。CDKL5タンパク質は、神経細胞に複数の効果を及ぼす多機能タンパク質である。例えば、CDKL5はキナーゼとして働き、MeCP2をリン酸化し得る。CDKL5変異又は欠損症に罹患した女児は、典型的には通常の出生前既往歴;周産期における被刺激性及び嗜眠状態;生後5ヵ月よりも前に発症する早発性てんかん、レット症候群様の特徴、例えば、頭部成長の減速、常同症、自発的な手の使用が少ない乃至全くない、及び睡眠障害、並びにアイコンタクトの困難を伴う重度精神遅滞及び事実上の言語の欠如を有する。Bahi−Buisson and Bienvenu.2012.Mol.Syndromol.2:137−152を参照のこと。
CDKL5変異/欠損症に対する現行の治療は、主として症状の管理に重点が置かれている。しかしながら、現在、CDKL5変異又は欠損症患者の神経学的転帰を改善する治療はない。従って、CDKL5変異及び欠損症を治療するための療法の開発が必要とされている。
本開示の更なる態様は、添付の図面と併せて考慮するとき、以下に記載するその様々な実施形態の詳細な説明を読めば容易に理解されるであろう。
本開示を更に詳細に記載する前に、この開示が記載される特定の実施形態に限定されず、従って当然ながら異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を記載することを目的としているに過ぎず、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
値の範囲が提供される場合、文脈上特に明確に指示されない限り下限の単位の10分の1に至るまでの、当該の範囲の上限と下限との間にある各中間値及び当該の記載される範囲にある任意の他の記載される値又は中間値が本開示の範囲内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立に、そのより小さい範囲に含まれてもよく、記載される範囲における任意の具体的に除外される限界値を条件として同様に本開示の範囲内に包含される。記載される範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除外する範囲もまた本開示に含まれる。
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本開示の実施又は試験においては、本明細書に記載されるものと同様の又は等価な任意の方法及び材料もまた用いることができるが、ここで好ましい方法及び材料を記載する。
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許は、各個別の刊行物又は特許が参照によって援用されることが具体的且つ個別的に指示されたのと同様に本明細書において参照により援用され、且つそれとの関連で刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示及び説明するために参照により本明細書に援用される。任意の刊行物の引用は、出願日より前のその開示についてであり、先行開示であるという理由で本開示がかかる刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されてはならない。更に、提供される刊行物の日付が実際の刊行日と異なることもあり、個別に確認する必要があり得る。
本開示を読めば当業者には明らかであろうとおり、本明細書に記載及び例示される個々の実施形態の各々は個別的な構成要素及び特徴を有し、それらは本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく他の幾つかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離し、又はそれと組み合わせることができる。いずれの記載される方法も、記載されるイベント順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
本開示の実施形態は、特に指示されない限り、当該分野の技能の範囲内にある分子生物学、微生物学、ナノテクノロジー、有機化学、生化学、植物学などの技法を利用することになる。かかる技法については文献に詳しく説明されている。
定義
本明細書で使用されるとき、「約」、「およそ」などは、数値変数に関係して使用されるとき、概してその変数の値及び実験誤差(例えば、平均値の95%信頼区間)又は指示値の±10%のいずれか大きい方の範囲内にあるその変数の全ての値を指す。
本明細書で使用されるとき、「約」、「およそ」などは、数値変数に関係して使用されるとき、概してその変数の値及び実験誤差(例えば、平均値の95%信頼区間)又は指示値の±10%のいずれか大きい方の範囲内にあるその変数の全ての値を指す。
本明細書で使用されるとき、「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」には、子孫が含まれる。また、意図的又は偶発的な突然変異に起因してDNA内容の点で全ての子孫が正確に同一であるとは限らないことも理解される。元の形質転換細胞においてスクリーニングしたときと同じ機能又は生物学的特性を有する変異体子孫が包含される。
本明細書で使用されるとき、「組成物」は、活性薬剤と、不活性な(例えば、検出可能な薬剤又は標識)又はアジュバントなど活性な少なくとも1つの他の化合物又は分子との組み合わせを指す。
本明細書で使用されるとき、「対照」は、実験で比較のため使用され、且つ独立変数以外の変数の効果を最小限に抑え又は区別するために含められる代替的な対象又は試料である。
本明細書で使用されるとき、「陽性対照」は、全ての試薬が正しく機能していて、且つ実験が正しく行われる限りにおいて所望の結果を生じるように設計された「対照」を指す。
本明細書で使用されるとき、「陰性対照」は、全ての試薬が正しく機能していて、且つ実験が正しく行われる限りにおいて何ら効果又は結果を生じないように設計された「対照」を指す。「陰性対照」と同義の他の用語には、「シャム」、「プラセボ」、及び「モック」がある。
本明細書で使用されるとき、「有効量」は、細胞、組織、系、動物、又はヒトの有益な又は所望の生物学的、感情的、医学的、又は臨床的反応を生じさせるのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与、適用、又は投薬で投与することができる。この用語はまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増進するのに有効な量も含む。用語「有効量」は、対照(例えば野生型及び/又は未処置対照)及び/又はCDKL5が欠損している、及び/又は突然変異した若しくは他の形で機能不全のCDKL5遺伝子及び/又はタンパク質を有する細胞、組織、及び/又は器官と比較したときGSK3βの活性を低下させ、ニューロン成熟を増加させ、シナプス結合を増加させ、及び/又はニューロン死を減少させることのできるチデグルシブ又はその誘導体の量を指し得る。
本明細書では同義的に使用されるとおりの用語「十分」及び「有効」は、1つ以上の所望の結果を達成するのに必要な量(例えば、質量、容積、投薬量、濃度、及び/又は時間)を指す。例えば、治療有効量は、1つ以上の治療効果を達成するのに必要な量を指す。
用語「最小有効量」は、細胞、組織、系、動物、又はヒトの所望の及び/又は有益な生物学的、情動的、医学的、治療的又は臨床的反応を生じさせるのに必要な組成物の最小量である。従って、「最小有効量」は、対照(例えば野生型及び/又は未処置対照)及び/又はCDKL5が欠損している、及び/又は突然変異した若しくは他の形で機能不全のCDKL5遺伝子及び/又はタンパク質を有する細胞、組織、及び/又は器官と比較したときGSK3βの活性を低下させ、ニューロン成熟を増加させ、シナプス結合を増加させ、及び/又はニューロン死を減少させることのできるチデグルシブ又はその誘導体の最小量であり得る。
本明細書では同義的に使用されるとおり、「対象」、「個体」、又は「患者」は、脊椎動物生物を指す。
本明細書で使用されるとき、「治療的」は、疾患、障害、病態、又は副作用を治療、治癒、及び/又は改善すること、又は疾患、障害、病態、又は副作用の進行を減速させることを指す。この用語にはまた、その範囲内に、正常な生理学的機能を増進すること、疾患、障害、病態、副作用、又はその症状の緩和処置、及び部分的改善も含まれる。疾患又は障害はCDKL5欠損症及び/又はレット症候群であり得る。
用語「治療する」及び「治療」は、本明細書で使用されるとき、概して所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を達成することを指す。この効果は、疾患、その症状又は病態、例えばCDKL5変異及び/又は欠損症、レット症候群のCDKL5バリアント、又は他のCDKL5媒介性神経障害によって生じる疾患又は障害を防ぐ又は部分的に防ぐ点で予防的であってもよく、及び/又は疾患、病態、症状又は疾患、障害、若しくは病態に起因する有害作用を部分的に又は完全に治癒する点で治療的であってもよい。用語「治療」には、本明細書で使用されるとき、哺乳動物、特にヒトにおけるCDKL5媒介性神経障害の任意の治療が包含され、以下が含まれる:(a)疾患に罹り易い可能性があるものの、まだそれに罹っているとの診断は受けていない対象において疾患の発生を防ぐこと;(b)疾患を阻止すること、即ちその発症を止めること;又は(c)疾患を軽減すること、即ち疾患及び/又はその症状又は病態を緩和し又は改善すること。用語「治療」は、本明細書で使用されるとき、治療的処置及び予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)措置の両方を指す。治療を必要としている者には、既に障害を有する者並びに障害を防ぐべきである者が含まれる。
本明細書で使用されるとき、「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床家が求める組織、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的反応を誘発し得るチデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤、本明細書に記載される補助薬剤、又は二次的薬剤の量を指す。「治療有効量」には、単独で投与するか又は二次的薬剤と共投与したとき、CDKL5欠損及び/又はレット症候群の症状の1つ以上の発症を予防し、それをある程度軽減又は緩和するのに十分なチデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤の量が含まれる。「治療効果量」には、単独で投与するか又は二次的薬剤と共投与したとき、対照と比較して対象の脳のある領域におけるニューロン生存率、ニューロン数、神経突起成長、伸長、及び/又は分枝密度を増加させるのに十分なチデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤の量が含まれる。「治療効果量」には、単独で投与するか又は二次的薬剤と共投与したとき、対照と比較して対象の学習能力を増加させるのに十分なチデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤の量が含まれる。「治療効果量」には、単独で投与するか又は二次的薬剤と共投与したとき、対照と比較して対象の記憶能力を増加させるのに十分なチデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤の量が含まれる。「治療効果量」には、単独で投与するか又は二次的薬剤と共投与したとき、対照と比較して対象の運動機能を改善するのに十分なチデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤の量が含まれる。「治療効果量」には、単独で投与するか又は二次的薬剤と共投与したとき、学習能力、記憶能力、及び/又は運動機能を野生型又は正常レベルと実質的に同様のレベルまで回復させるのに十分なチデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤の量が含まれる。「治療効果量」には、単独で投与するか又は二次的薬剤と共投与したとき、脳のある領域におけるニューロン数、ニューロン生存率、神経突起成長、神経突起伸長、神経突起分枝数、及び/又は神経突起分枝密度を野生型又は正常レベルと実質的に同様のレベルまで回復させるのに十分なチデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤の量が含まれる。治療有効量は、チデグルシブ又はその誘導体、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物、チデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤の正確な化学構造、治療下のCDKL5欠損、レット症候群又はその症状、投与経路、投与時間、排泄速度、薬物併用、治療を行う医師の判断、投薬形態、並びに治療対象の年齢、体重、全般的な健康、性別及び/又は食事に応じて異なり得る。
本明細書で使用されるとき、「医薬製剤」は、活性薬剤、化合物、又は成分と、組成物をインビトロ、インビボ、又はエキソビボでの診断、治療、又は予防用途に好適なものにする薬学的に許容可能な担体又は賦形剤との組み合わせを指す。
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容可能な担体又は賦形剤」は、概して安全で非毒性の、且つ生物学的にも又は他の形でも望ましくないものでない医薬製剤の調製において有用な担体又は賦形剤を指し、動物への使用並びにヒトへの医薬品としての使用が許容される担体又は賦形剤が含まれる。「薬学的に許容可能な担体又は賦形剤」は、本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、1つ及び2つ以上のかかる担体又は賦形剤の両方を含む。
本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容可能な塩」は、その塩が薬学的用量で投与される対象にとって対イオンが非毒性の任意の酸付加塩又は塩基付加塩を指す。
本明細書で使用されるとき、「予防的」及び「予防する」は、診断が未確定であっても、又は疾患若しくは病態がまだ無症状段階であっても、疾患又は病態をその発生前に妨げる又は止めることを指す。
本明細書で使用されるとき、「活性薬剤」又は「活性成分」は、生物学的に活性な又は他の形でその投与対象に生物学的又は生理学的効果を生じさせる物質、化合物、又は分子を指す。換言すれば、「活性薬剤」又は「活性成分」は、組成物の効果の全体又は一部をもたらす組成物の1つ又は複数の構成成分を指す。
本明細書で使用されるとき、「有形的表現媒体」は、物理的に有形の、単なる抽象的思考又は記録されていない話し言葉でない媒体を指す。有形的表現媒体には、限定はされないが、セルロース系材料若しくはプラスチック材料上の言葉又はフラッシュメモリ若しくはCD−ROMなどの好適な装置に記憶されたデータが含まれる。
本明細書で使用されるとき、「化学療法剤」又は「化学療法薬」は、癌の予防又は治療に利用される治療剤を指す。
本明細書で使用されるとき、「マトリックス」は、1つ以上の特殊な構造、分子、又は組成物が埋め込まれる材料を指す。
本明細書で使用されるとき、「アプタマー」は、タンパク質を含め、予め選択された標的に高い親和性及び特異性で結合することのできる一本鎖DNA又はRNA分子を指す。その特異性及び特徴は、その一次配列によって直接決まるのでなく、その三次構造によって決まる。
本明細書で使用されるとき、「免疫調節薬」は、1つ以上の免疫機能又は反応を調整又は調節する能力を有する薬剤、例えば治療剤を指す。
本明細書で使用されるとき、「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結した少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖とを含む糖タンパク質、又はその抗原結合部分を指す。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書ではVHと略す)と重鎖定常領域とを含む。各軽鎖は軽鎖可変領域と軽鎖定常領域とを含む。VH及びVL領域は抗原に対する結合特異性を保持しており、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに細分することができる。CDR間には、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が散在している。各VH及びVLは3つのCDR及び4つのフレームワーク領域を含み、これらがアミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で並んでいる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。
本明細書で使用されるとき、「患者」は、治療を必要としている生物、宿主、又は対象を指す。
本明細書で使用されるとき、「タンパク質」は、本明細書で使用されるとき、特定の順序のアミノ酸の鎖を1つ以上含む巨大分子を指す。用語のタンパク質は、「ポリペプチド」と同義的に使用される。順序は、そのタンパク質をコードする遺伝子中のヌクレオチドの塩基配列によって決まる。タンパク質は、体の細胞、組織、及び臓器の構造、機能、及び調節に必要である。各タンパク質はユニークな機能を有する。
本明細書で使用されるとき、「レット症候群バリアント」、「レット症候群のバリアント」などは、レット症候群と類似した臨床徴候を有するが病因が不明の非典型型のレット症候群を指す。
本明細書で使用されるとき、「CDKL5変異」は、CDKL5タンパク質のコード領域のヌクレオチド配列の任意の変化を指す。
本明細書で使用されるとき、「野生型」は、選抜育種又はトランス遺伝子又は他の遺伝子突然変異(例えば遺伝子欠失)による形質転換によって生じ得る突然変異形態と区別するときの、それが天然で存在するとおりの典型的な形態の生物、変種、株、遺伝子、タンパク質、又は特徴である。
本明細書で使用されるとき、「用量」、「単位用量」、又は「投薬量」は、対象における使用に好適な物理的に個別の単位であって、各々がその投与に伴い所望の1つ又は複数の反応を生じるように計算された所定の分量のチデグルシブ若しくはその誘導体及び/又はその医薬製剤を含む単位を指す。
本明細書で使用されるとき、「抗感染薬」は、感染病原体を死滅させるか、或いはそれが広がるのを阻止することができる化合物又は分子を指す。抗感染薬としては、限定はされないが、抗生物質、抗細菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬、及び抗原虫薬が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、「誘導体」は、その化合物と同じ又は類似したコア構造を有するが、1つ以上の原子又は官能基の置換、欠失、及び/又は付加を含めた、少なくとも1つの構造的違いを有する任意の化合物を指す。用語「誘導体」は、その誘導体が出発物質或いは中間体としての親化合物から合成されることを意味するものではなく、しかしこれも該当し得る。用語「誘導体」には、プロドラッグ、又は親化合物の代謝産物が含まれ得る。誘導体は、親化合物中の遊離アミノ基が誘導体化されてアミン塩酸塩類、p−トルエンスルホンアミド類(p−toluene sulfoamides)、ベンゾキシカルボアミド類、t−ブチルオキシカルボアミド類、チオウレタン系誘導体、トリフルオロアセチルアミド類、クロロアセチルアミド類、又はホルムアミド類を形成している化合物を含む。誘導体は、親化合物のカルボキシル基が誘導体化されてメチル及びエチルエステル類、又は他の種類のエステル類又はヒドラジド類を形成している化合物を含む。誘導体は、親化合物のヒドロキシル基が誘導体化されてO−アシル又はO−アルキル誘導体を形成している化合物を含む。誘導体は、親化合物の水素結合供与基が別の水素結合供与基、例えば、OH、NH、又はSHに置換されている化合物を含む。誘導体は、親化合物の水素結合アクセプター基を別の水素結合アクセプター基、例えばエステル類、エーテル類、ケトン類、炭酸塩類、第三級アミン類、イミン、チオン類、スルホン類、第三級アミド類、及び硫化物に置換することを含む。「誘導体」はまた、飽和又は不飽和シクロヘキサン又は他のより複雑な、例えば窒素含有環によるシクロペンタン環の置換の拡張、及び様々な側鎖を有するこれらの環の拡張も含む。
表現「それを必要としている対象」は、本明細書で使用されるとき、CDKL5介在性神経障害を含め、CDKL5介在性障害を有する又はそれを有すると疑われる対象を指し得る。表現「それを必要としている対象」はまた、本明細書で使用されるとき、CDKL5介在性障害の1つ以上の症状を有する対象も指し得る。
本明細書で使用されるとき、「相乗効果」、「相乗作用(synergism)」、又は「相乗作用(synergy)」は、2つ以上の分子、化合物、物質、因子、又は組成物の間に生じる効果であって、それらの個々の効果の合計と比べて大きい又は異なる効果を指す。
本明細書で使用されるとき、「相加効果」は、2つ以上の分子、化合物、物質、因子、又は組成物の間に生じる効果であって、それらの個々の効果の合計と等しい又は同じである効果を指す。
本明細書において特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。
考察
X連鎖サイクリン依存性キナーゼ様5(CDKL5)遺伝子の突然変異及び結果として生じるタンパク質が、早期発症てんかん性脳症によって特徴付けられるまれな神経発達障害を有する個体に見られている。CDKL5突然変異に関連する主な臨床的特徴は、重度知的障害及び粗大運動機能障害である。更に、患者には、小頭、過換気、手の失行、及び常同を含め、レット症候群と重複する特徴が現れる。CDKL5障害は、CDKL5遺伝子がX染色体に位置するため主に女性に発症する。女性はCDKL5欠損に関してヘテロ接合であり、ランダムなX染色体不活性化に起因して突然変異型CDKL5遺伝子に関してモザイクである。男性もまた発症し得るが、発生率は低く、典型的にはより重篤な表現型となる。
X連鎖サイクリン依存性キナーゼ様5(CDKL5)遺伝子の突然変異及び結果として生じるタンパク質が、早期発症てんかん性脳症によって特徴付けられるまれな神経発達障害を有する個体に見られている。CDKL5突然変異に関連する主な臨床的特徴は、重度知的障害及び粗大運動機能障害である。更に、患者には、小頭、過換気、手の失行、及び常同を含め、レット症候群と重複する特徴が現れる。CDKL5障害は、CDKL5遺伝子がX染色体に位置するため主に女性に発症する。女性はCDKL5欠損に関してヘテロ接合であり、ランダムなX染色体不活性化に起因して突然変異型CDKL5遺伝子に関してモザイクである。男性もまた発症し得るが、発生率は低く、典型的にはより重篤な表現型となる。
CDKL5は、脳、主としてニューロンに高発現するセリン/スレオニンプロテインキナーゼであり、核及び樹状突起の両方に局在する。出生後早期にCDKL5脳発現はピークを呈することから、脳の成熟及び機能におけるその潜在的重要性が示唆される。CDKL5ノックアウト(KO)マウスは自閉症様の行動、樹状突起発育不全、及び神経回路伝達の機能障害を呈し、これはCDKL5機能喪失が脳の発達を著しく障害することを示している。この同じマウスモデルを使用して、CDKL5が出生後の海馬神経発生において基本的な役割を果たし、神経前駆細胞増殖並びに新生顆粒細胞の生存及び成熟に影響を及ぼすことが観察された。神経発生及び樹状突起発達の阻害は海馬依存性認知機能の変化と関連付けられた。
グリコーゲンシンターゼキナーゼ3(GSK−3β)は遍在的に活性なセリン/スレオニンキナーゼであり、活性化プロテインキナーゼB(PKB/AKT)によってSer9がリン酸化すると阻害される。GSK−3β(Ser9脱リン酸化型)は、神経突起伸長、シナプス形成、神経発生及び新生ニューロンの生存を含め、多くの神経機能の調節因子である。AKT/GSK−3β経路は、広範な基質の活性を調整することによりその機能を発揮する(図1)。CDKL5 KOマウスは神経前駆細胞におけるAKT/GSK3βシグナル伝達の破壊を示し、その結果、野生型マウスと比較してGSK3β活性が増加した(Fuchs et al.,2014.Neurobiol Dis.70(100):53−68)。実際、CDKL5 KOマウスでは、GSK3βに加えて、PDK−1、AKT、CRMP2、CREB、及びβ−カテニンを含めた、AKT/GSK−3β経路に関与する多くのタンパク質が調節不全となる(Fuchs 2014)。CDKL5 KO神経前駆細胞における外因性CDKL5発現によってCDKL5の回復を誘導すると、インビトロでAKT及びGSK3βのリン酸化レベルが回復し(Fuchs,2014)、CDKL5 KOマウスの神経前駆細胞をリチウムで処置すると、CDKL5 KO細胞におけるニューロン生存及び成熟が回復した(Fuchs,2014)。リチウムはGSK3βキナーゼ活性をアンタゴナイズすることによりGSK3βに直接作用し、及びGSK3βの阻害性リン酸化を増加させることにより間接的に作用する。
リチウムが他の細胞シグナル伝達経路に非選択的且つ間接的に作用することを考えると(Kang H.J.,et al.Mol.Pharmacol.2003;64:228−234;Pardo R.,et al.J.Neurochem.2003;87:417−426;Sasaki T.,et al.Brain Res.2006;1108:98−106)、更なる経路の寄与を無視することはできない。CDKL5 KOマウスではAKT/mTOR/S6シグナル伝達経路もまた変化し(Amendola E.,et al.2014.PLoS One.2014.May 16;9(5):e91613及びWang I.T.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2012;109:21516−21521)(図1)、CDKL5が、AKTの下流にある複数のシグナル伝達カスケードを協調させ得ることが示唆される。これらのシグナル伝達カスケードにCDKL5が直接又は間接的に関与するのか、及びAKT/GSK3βシグナル伝達に対するそれらの効果については未だ明らかになっていない。
リチウムは、最初に発見されたGSK3阻害薬であった。リチウムは、それがGSK3βに直接及び間接的に及ぼす作用がGSK3β(又はGSK3α)選択的でないことに起因してGSK3βの比較的弱い阻害薬であり(IC50が約2mMと報告されている)、幾つかの他の生物学的標的を有するため多くの有害な相互作用を生じ、及び治療域が狭い。更に、リチウムの効果はマグネシウム濃度に依存する(リチウムはマグネシウムと競合するため)。これらの制限に起因して、リチウムはCDKL5障害の実行可能な治療として有望でない。
他の多くのGSK3阻害薬が公知であり、化学組成及び作用様式の点で様々に異なっている。概して3つのタイプのGSK3阻害薬:(1)金属カチオン;(2)ATP競合阻害薬、及び(3)非ATP競合阻害薬がある。ATP競合阻害薬は、GSK3βのATP結合ポケットに関してATPと競合することによりGSK3β活性に影響を及ぼす。非ATP競合阻害薬は、GSK3β基質と競合する又はGSK3β上の他の部位で競合するなど、他の方法でGSK3β活性に影響を及ぼす。
最近観察されたところによれば、CDKL5 KOマウスにおいてマレイミド化合物SB216763(SB)が、樹状突起発達、スパイン形態及び分布、新生顆粒細胞の生存、及び結合性の回復によって海馬の発達を回復させることが観察された。SBはGSK3βのATP競合阻害薬である点に留意することが重要である。ATPが他の多くの重要な細胞過程に関与している限りにおいて、ATP競合阻害薬の使用はそれが他の生物学的機能に有害作用を及ぼす可能性があるため治療選択肢として望ましくない。
そのような訳で、本明細書には、非ATP競合阻害薬チデグルシブ又はその誘導体をそれを必要としている対象に投与することによりCDKL5障害を治療する方法が記載される。本開示の他の組成物、化合物、方法、特徴、及び利点は、以下の図面、詳細な説明、及び例を考察すれば当業者には明らかである、又は明らかになるであろう。かかる更なる組成物、化合物、方法、特徴、及び利点は全て、この説明の中に含まれ、及び本開示の範囲内にあることが意図される。
チデグルシブ又はその誘導体を含有する製剤
チデグルシブ(式1)又はその誘導体を含有する製剤もまた、本開示の範囲内にある。
チデグルシブ(式1)又はその誘導体を含有する製剤もまた、本開示の範囲内にある。
チデグルシブ又はその誘導体は、それを必要としている対象に単独で又はそれ自体活性成分として医薬製剤に提供することができる。従って、本明細書にはまた、ある量(有効量、最小有効量、及び/又は治療有効量など)のチデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤も記載される。一部の実施形態において、医薬製剤は治療有効量のチデグルシブ又はその誘導体を含有する。本明細書に記載される医薬製剤は、それを必要としている対象に投与することができる。それを必要としている対象は、CDKL5欠損、レット症候群、及び/又はその症状を有し得る。他の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体は、CDKL5欠損、レット症候群、及び/又はその症状の治療用及び/又は予防用医薬の製造において使用することができる。
薬学的に許容可能な担体並びに補助成分及び薬剤
ある量(有効量、最小有効量、及び/又は治療有効量など)のチデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤は、薬学的に許容可能な担体をさらに含み得る。実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体は、その薬学的に許容可能な塩である。好適な薬学的に許容可能な担体としては、限定はされないが、活性組成物と有害な反応を起こすことのない水、塩溶液、アルコール類、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロース又はデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル類、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。
ある量(有効量、最小有効量、及び/又は治療有効量など)のチデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤は、薬学的に許容可能な担体をさらに含み得る。実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体は、その薬学的に許容可能な塩である。好適な薬学的に許容可能な担体としては、限定はされないが、活性組成物と有害な反応を起こすことのない水、塩溶液、アルコール類、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール類、ポリエチレングリコール類、ゼラチン、炭水化物、例えばラクトース、アミロース又はデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル類、ヒドロキシメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンが挙げられる。
医薬製剤は滅菌し、及び必要であれば、活性組成物と有害な反応を起こすことのない補助薬剤、例えば、潤滑剤、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与える塩、緩衝剤、着色料、香味料及び/又は芳香物質などと混合することができる。チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量に加えて、医薬製剤はまた、限定はされないが、DNA、RNA、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、抗体、アプタマー、リボザイム、必須腫瘍タンパク質及び遺伝子の翻訳又は転写を阻害するリボザイムのガイド配列、ホルモン類、免疫調節薬、解熱薬、抗不安薬、抗精神病薬、鎮痛薬、鎮痙剤、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、抗感染薬、及び化学療法薬を含めた補助活性薬剤の有効量も含むことができる。好適なホルモン類としては、限定はされないが、アミノ酸誘導体ホルモン類(例えば、メラトニン及びサイロキシン)、小ペプチドホルモン類及びタンパク質ホルモン類(例えば、サイロトロピン放出ホルモン、バソプレシン、インスリン、成長ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、及び甲状腺刺激ホルモン)、エイコサノイド類(eiconsanoid)(例えば、アラキドン酸、リポキシン類、及びプロスタグランジン類)、及びステロイドホルモン類(例えば、エストラジオール、テストステロン、テトラヒドロテストステロンコルチゾール)が挙げられる。好適な免疫調節薬としては、限定はされないが、プレドニゾン、アザチオプリン、6−MP、シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキサート、インターロイキン類(例えば、IL−2、IL−7、及びIL−12)、サイトカイン類(例えば、インターフェロン類(例えば、IFN−α、IFN−β、IFN−ε、IFN−κ、IFN−ω、及びIFN−γ)、顆粒球コロニー刺激因子、及びイミキモド)、ケモカイン類(例えば、CCL3、CCL26及びCXCL7)、シトシンリン酸グアノシン、オリゴデオキシヌクレオチド類、グルカン類、抗体、及びアプタマー)が挙げられる。
好適な解熱薬としては、限定はされないが、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、及びニメスリド)、アスピリン及び関連サリチル酸塩類(例えば、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム(magnesium salicylae)、及びサリチル酸ナトリウム(sodium salicaylate))、パラセタモール/アセトアミノフェン、メタミゾール、ナブメトン、フェナゾン、及びキニーネが挙げられる。
好適な抗不安薬としては、限定はされないが、ベンゾジアゼピン系(例えば、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼパート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、及びトフィソパム)、セロトニン系抗うつ薬(serotenergic antidepressant)(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、三環系抗うつ薬(tricyclic antidepresent)、及びモノアミンオキシダーゼ阻害薬)、メビカール、アホバゾール、セランク(selank)、ブロマンタン、エモキシピン、アザピロン、バルビツール酸系薬、ヒドロキシジン、プレガバリン、バリドール、及びβ遮断薬が挙げられる。
好適な抗精神病薬としては、限定はされないが、ベンペリドール、ブロムペリドール(bromoperidol)、ドロペリドール、ハロペリドール、モペロン、ピパンペロン(pipaperone)、チミペロン、フルスピリレン、ペンフルリドール、ピモジド、アセプロマジン、クロルプロマジン、シアメマジン、ジキシラジン(dizyrazine)、フルフェナジン、レボメプロマジン、メソリダジン、ペラジン、ペリシアジン、ペルフェナジン、ピポチアジン、プロクロルペラジン、プロマジン、プロメタジン、プロチペンジル、チオプロペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、クロルプロチキセン、クロペンチキソール、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロチアピン、ロキサピン、プロチペンジル、カルピプラミン、クロカプラミン、モリンドン、モサプラミン、スルピリド、ベラリプリド、アミスルプリド、アモキサピン、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、ブロナンセリン、イロペリドン、ルラシドン、メルペロン、ネモナプリド、オランザピン(olanzaprine)、パリペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、レモキシプリド、リスペリドン、セルチンドール、トリミプラミン、ジプラシドン、ゾテピン、アルストニン(alstonie)、ビフェプルノックス(befeprunox)、ビトペルチン、ブレクスピプラゾール、カンナビジオール、カリプラジン、ピマバンセリン、ポマグルメタッドメチオニル、バビカセリン、キサノメリン、及びジクロナピンが挙げられる。
好適な鎮痛薬としては、限定はされないが、パラセタモール/アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、及びニメスリド)、COX−2阻害薬(例えば、ロフェコキシブ、セレコキシブ、及びエトリコキシブ)、オピオイド系(例えば、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロモルフィン、ペチジン、ブプレノルフィン)、トラマドール、ノルエピネフリン、フルピルチン(flupiretine)、ネホパム、オルフェナドリン、プレガバリン、ガバペンチン、シクロベンザプリン、スコポラミン、メサドン、ケトベミドン、ピリトラミド、及びアスピリン及び関連サリチル酸塩類(例えば、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、及びサリチル酸ナトリウム)が挙げられる。
好適な鎮痙剤としては、限定はされないが、メベベリン、パパベリン(papverine)、シクロベンザプリン、カリソプロドール、オルフェナドリン、チザニジン、メタキサロン、メトカルバモール(methodcarbamol)、クロルゾキサゾン、バクロフェン、ダントロレン、バクロフェン、チザニジン、及びダントロレンが挙げられる。
好適な抗炎症薬としては、限定はされないが、プレドニゾン、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、及びニメスリド)、COX−2阻害薬(例えば、ロフェコキシブ、セレコキシブ、及びエトリコキシブ)、及び免疫選択的抗炎症誘導体(例えば、顎下腺ペプチドT及びその誘導体)が挙げられる。
好適な抗ヒスタミン薬としては、限定はされないが、H1受容体拮抗薬(例えば、アクリバスチン、アゼラスチン、ビラスチン、ブロムフェニラミン、ブクリジン、ブロモジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、セチリジン、クロルプロマジン、シクリジン、クロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、デスロラタジン、デクスブロムフェニラミン(dexbromapheniramine)、デクスクロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、ジメチンデン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン(ebasine)、エンブラミン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、レボセチリジン(levocetirzine)、ロラタジン、メクロジン、ミルタザピン、オロパタジン、オルフェナドリン、フェニンダミン、フェニラミン、フェニルトロキサミン、プロメタジン、ピリラミン、クエチアピン、ルパタジン、トリペレナミン、及びトリプロリジン)、H2受容体拮抗薬(例えば、シメチジン、ファモチジン、ラフチジン、ニザチジン、ラニチジン(rafitidine)、及びロキサチジン)、トリトクアリン、カテキン、クロモグリク酸、ネドクロミル、及びβ2−アドレナリン作動薬が挙げられる。
好適な抗感染薬としては、限定はされないが、抗アメーバ薬(例えば、ニタゾキサニド、パロモマイシン、メトロニダゾール、チニダゾール、クロロキン、ミルテホシン、アムホテリシンB、及びヨードキノール)、アミノグリコシド系(例えば、パロモマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、及びネオマイシン)、駆虫薬(例えば、ピランテル、メベンダゾール、イベルメクチン、プラジカンテル、アベンダゾール(abendazole)、チアベンダゾール、オキサムニキン)、抗真菌薬(例えば、アゾール系抗真菌薬(例えば、イトラコナゾール、フルコナゾール、ポサコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、及びボリコナゾール)、エキノキャンディン系(例えば、カスポファンギン、アニデュラファンギン、及びミカファンギン)、グリセオフルビン、テルビナフィン、フルシトシン、及びポリエン系(例えば、ナイスタチン、及びアムホテリシンB)、抗マラリア剤(例えば、ピリメタミン/スルファドキシン、アルテメーテル/ルメファントリン、アトバコン/プログアニル(proquanil)、キニーネ、ヒドロキシクロロキン、メフロキン、クロロキン、ドキシサイクリン、ピリメタミン、及びハロファントリン)、抗結核剤(例えば、アミノサリチル酸塩類(例えば、アミノサリチル酸)、イソニアジド/リファンピン、イソニアジド/ピラジナミド/リファンピン、ベダキリン、イソニアジド、エタンブトール、リファンピン、リファブチン、リファペンチン、カプレオマイシン、及びサイクロセリン)、抗ウイルス薬(例えば、アマンタジン、リマンタジン、アバカビル/ラミブジン、エムトリシタビン/テノホビル、コビシスタット/エルビテグラビル/エムトリシタビン/テノホビル、エファビレンツ/エムトリシタビン/テノホビル、アバカビル/ラミブジン/ジドブジン、ラミブジン/ジドブジン、エムトリシタビン/テノホビル、エムトリシタビン/ロピナビル(opinavir)/リトナビル/テノホビル、インターフェロンα−2v/リバビリン、ペグインターフェロンα−2b、マラビロク、ラルテグラビル、ドルテグラビル、エンフビルチド、ホスカルネット、ホミビルセン、オセルタミビル、ザナミビル、ネビラピン、エファビレンツ、エトラビリン、リルピビリン、デラビルジン(delaviridine)、ネビラピン、エンテカビル、ラミブジン、アデホビル、ソホスブビル、ジダノシン、テノホビル、アバシブル(avacivr)、ジドブジン、スタブジン、エムトリシタビン、ザルシタビン(xalcitabine)、テルビブジン、シメプレビル、ボセプレビル、テラプレビル、ロピナビル/リトナビル、ホスアンプレナビル(fosamprenvir)、ドラヌアビル(dranuavir)、リトナビル、チプラナビル、アタザナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、インジナビル、サキナビル(sawuinavir)、リバビリン、バラシクロビル(valcyclovir)、アシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、及びバルガンシクロビル)、カルバペネム系(例えば、ドリペネム、メロペネム、エルタペネム、及びシラスタチン/イミペネム)、セファロスポリン系(例えば、セファドロキシル、セフラジン、セファゾリン、セファレキシン、セフェピム、セフタロリン(ceflaroline)、ロラカルベフ、セフォテタン、セフロキシム、セフプロジル、ロラカルベフ、セフォキシチン、セファクロル、セフチブテン、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフジニル、セフィキシム、セフジトレン、セフチゾキシム(cefizoxime)、及びセフタジジム)、グリコペプチド系抗生物質(例えば、バンコマイシン、ダルババンシン、オリタバンシン、及びテラバンシン(telvancin))、グリシルサイクリン系(例えば、チゲサイクリン)、抗らい菌薬(例えば、クロファジミン及びサリドマイド)、リンコマイシン及びその誘導体(例えば、クリンダマイシン及びリンコマイシン)、マクロライド系及びその誘導体(例えば、テリスロマイシン、フィダキソマイシン、エリスロマイシン(erthromycin)、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、及びトロレアンドマイシン)、リネゾリド、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、リファキシミン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、メトロニダゾール、アズトレオナム、バシトラシン、ペニシリン系(アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、アモキシシリン/クラブラン酸塩、アンピシリン/スルバクタム、ピペラシリン/タゾバクタム、クラブラン酸塩/チカルシリン、ペニシリン、プロカインペニシリン、オキサシリン(oxaxillin)、ジクロキサシリン、及びナフシリン)、キノロン系(例えば、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン(qatifloxacin)、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ゲミフロキサシン、モキシフロキサシン、シノキサシン、ナリジクス酸、エノキサシン、グレパフロキサシン、ガチフロキサシン、トロバフロキサシン、及びスパルフロキサシン)、スルホンアミド系(例えば、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、スルファサラジン、及びスルフイソキサゾール(sulfasoxazole))、テトラサイクリン系(例えば、ドキシサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン/サリチル酸(salicyclic acid)、ドキシサイクリン/ω−3多価不飽和脂肪酸、及びテトラサイクリン)、及び尿路感染症薬(例えば、ニトロフラントイン、メテナミン、ホスホマイシン、シノキサシン、ナリジクス酸、トリメトプリム、及びメチレンブルー)が挙げられる。
好適な化学療法薬としては、限定はされないが、パクリタキセル、ブレンツキシマブベドチン、ドキソルビシン、5−FU(フルオロウラシル)、エベロリムス、ペメトレキセド、メルファラン、パミドロネート、アナストロゾール、エキセメスタン、ネララビン、オファツムマブ、ベバシズマブ、ベリノスタット、トシツモマブ、カルムスチン、ブレオマイシン、ボスチニブ、ブスルファン、アレムツズマブ、イリノテカン、バンデタニブ、ビカルタミド、ロムスチン、ダウノルビシン、クロファラビン、カボザンチニブ、ダクチノマイシン、ラムシルマブ、シタラビン、シトキサン、シクロホスファミド、デシタビン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ヒドロキシウレア、デカルバジン、ロイプロリド、エピルビシン、オキサリプラチン、アスパラギナーゼ、エストラムスチン、セツキシマブ、ビスモデギブ、黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi)由来アスパラギナーゼ(asparginase)、アミホスチン、エトポシド、フルタミド、トレミフェン、フルベストラント、レトロゾール、デガレリクス、プララトレキサート、メトトレキサート、フロクスウリジン、オビヌツズマブ、ゲムシタビン、アファチニブ、メシル酸イマチニブ(imatinib mesylatem)、カルムスチン、エリブリン、トラスツズマブ、アルトレタミン、トポテカン、ポナチニブ、イダルビシン、イホスファミド、イブルチニブ、アキシチニブ、インターフェロンα−2a、ゲフィチニブ、ロミデプシン、イクサベピロン、ルキソリチニブ、カバジタキセル、ado−トラスツズマブエムタンシン、カルフィルゾミブ、クロラムブシル、サルグラモスチム、クラドリビン、ミトタン、ビンクリスチン、プロカルバジン、メゲストロール、トラメチニブ、メスナ、塩化ストロンチウム−89、メクロレタミン、マイトマイシン、ブスルファン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ビノレルビン、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、ソラフェニブ、ニルタミド、ペントスタチン、タモキシフェン、ミトキサントロン、ペグアスパラガーゼ、デニロイキンジフチトクス、アリトレチノイン、カルボプラチン、ペルツズマブ、シスプラチン、ポマリドミド、プレドニゾン、アルデスロイキン、メルカプトプリン、ゾレドロン酸、レナリドマイド、リツキシマブ、オクトレオチド(octretide)、ダサチニブ、レゴラフェニブ、ヒストレリン、スニチニブ、シルツキシマブ、オマセタキシン、チオグアニン(thioguanine)(チオグアニン(tioguanine))、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ベキサロテン、テモゾロミド、チオテパ、サリドマイド、BCG、テムシロリムス、塩酸ベンダムスチン、トリプトレリン、三酸化ヒ素(aresnic trioxide)、ラパチニブ、バルルビシン、パニツムマブ、ビンブラスチン、ボルテゾミブ、トレチノイン、アザシチジン、パゾパニブ、テニポシド、ロイコボリン、クリゾチニブ、カペシタビン、エンザルタミド、イピリムマブ、ゴセレリン、ボリノスタット、イデラリシブ、セリチニブ、アビラテロン、エポチロン、タフルポシド、アザチオプリン、ドキシフルリジン、ビンデシン、及びオールトランス型レチノイン酸が挙げられる。
チデグルシブ又はその誘導体及び補助薬剤の有効量
本医薬製剤は、有効量又は治療有効量など、ある量のチデグルシブ又はその誘導体と、任意選択で治療有効量の補助薬剤とを含有することができる。一部の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は約1μg/kg〜約10mg/kgの範囲であり得る。更なる実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は1ng/g体重〜約0.1mg/g体重の範囲であり得る。チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は約1pg〜約10gの範囲であり得る。一部の実施形態において、チデグルシブ若しくはその誘導体又はチデグルシブ若しくはその誘導体を含有する医薬製剤の治療有効量は約10nL〜約10mLの範囲であり得る。
本医薬製剤は、有効量又は治療有効量など、ある量のチデグルシブ又はその誘導体と、任意選択で治療有効量の補助薬剤とを含有することができる。一部の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は約1μg/kg〜約10mg/kgの範囲であり得る。更なる実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は1ng/g体重〜約0.1mg/g体重の範囲であり得る。チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は約1pg〜約10gの範囲であり得る。一部の実施形態において、チデグルシブ若しくはその誘導体又はチデグルシブ若しくはその誘導体を含有する医薬製剤の治療有効量は約10nL〜約10mLの範囲であり得る。
一部の実施形態には、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は、脳室内注射などについて、注射1回当たり約20〜約50ngであり得る。他の実施形態では、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は、脳室内注射などについて、注射1回当たり約10マイクロリットルであり得る。更なる実施形態では、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は、脳室内注射などについて、約5ng/μLであり得る。更に別の実施形態では、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は、脳室内注射について約1.9μg/kg体重であり得る。
他の実施形態では、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は、全身投与注射などについて、注射1回当たり約1〜約2マイクログラムであり得る。更なる実施形態では、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は、全身投与注射などについて、注射1回当たり約200〜約300μLであり得る。一部の実施形態では、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は、全身注射などについて、約5ng/μLであり得る。一部の実施形態には、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は体重5g当たり約1〜約1.5μgであり得る。一部の実施形態では、チデグルシブ又はその誘導体の治療有効量は体重1kg当たり約200μg〜約300μgであり得る。
医薬製剤中にチデグルシブ又はその誘導体に加えて補助活性薬剤が含まれる実施形態において、補助活性薬剤の治療有効量は、その補助活性薬剤に応じて異なり得る。一部の実施形態において、補助活性薬剤の有効量は0.001マイクログラム〜約1ミリグラムの範囲である。他の実施形態において、補助活性薬剤の有効量は約0.01IU〜約1000IUの範囲である。さらなる実施形態において、補助活性薬剤の有効量は0.001mL〜約1mLの範囲である。さらに他の実施形態において、補助活性薬剤の有効量は医薬製剤全体の約1%w/w〜約50%w/wの範囲である。さらなる実施形態において、補助活性薬剤の有効量は医薬製剤全体の約1%v/v〜約50%v/vの範囲である。さらに他の実施形態において、補助活性薬剤の有効量は医薬製剤全体の約1%w/v〜約50%w/vの範囲である。
投薬形態
一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬製剤は投薬形態であり得る。投薬形態は、任意の適切な経路による投与に適合され得る。適切な経路としては、限定はされないが、経口(頬側又は舌下を含む)、直腸、硬膜外、頭蓋内、眼内、吸入、鼻腔内、局所(頬側、舌下、又は経皮を含む)、腟内、尿道内、非経口、頭蓋内、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、骨内、心臓内、関節内、空洞内、くも膜下腔内、硝子体内(intravireal)、脳内、及び脳室内及び皮内が挙げられる。かかる製剤は、当該技術分野において公知の任意の方法によって調製し得る。
一部の実施形態において、本明細書に記載される医薬製剤は投薬形態であり得る。投薬形態は、任意の適切な経路による投与に適合され得る。適切な経路としては、限定はされないが、経口(頬側又は舌下を含む)、直腸、硬膜外、頭蓋内、眼内、吸入、鼻腔内、局所(頬側、舌下、又は経皮を含む)、腟内、尿道内、非経口、頭蓋内、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、骨内、心臓内、関節内、空洞内、くも膜下腔内、硝子体内(intravireal)、脳内、及び脳室内及び皮内が挙げられる。かかる製剤は、当該技術分野において公知の任意の方法によって調製し得る。
経口投与に適合された投薬形態は、個別の投薬量単位、例えば、カプセル、ペレット又は錠剤、粉末又は顆粒、溶液、又は懸濁物であって、水性若しくは非水性液体中;食用の泡又はホイップ、又は水中油液体エマルション若しくは油中水液体エマルション中のものであり得る。一部の実施形態において、経口投与に適合された医薬製剤はまた、医薬製剤を香味付けし、保存し、着色し、又はその分散を助ける1つ以上の薬剤も含む。経口投与用に調製された投薬形態はまた、泡、スプレー、又は液体溶液として送達することのできる液体溶液の形態であってもよい。一部の実施形態において、経口投薬形態は、治療有効量又はその適切な分割量のチデグルシブ又はその誘導体を含有する医薬製剤を約1ng〜1000g含有し得る。経口投薬形態は、それを必要としている対象に投与することができる。経口投薬形態は、各用量が摂取時に対象に約0.0001以下〜約500mg/kg体重以上を投与するように製剤化することができる。
適切な場合には、本明細書に記載される投薬形態はマイクロカプセル化することができる。投薬形態はまた、任意の成分の放出が延長され又は持続するように調製することもできる。一部の実施形態では、チデグルシブ又はその誘導体が、放出を遅延させる成分である。他の実施形態では、任意選択で含められる補助成分の放出が遅延される。成分の放出を遅延させる好適な方法としては、限定はされないが、ポリマー、ワックス、ゲルなどの材料に成分をコーティングするか又は埋め込むことが挙げられる。遅延放出投薬製剤は、“Pharmaceutical dosage form tablets,” eds.Liberman et.al.(New York,Marcel Dekker,Inc.,1989)、“Remington − The science and practice of pharmacy”,20th ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2000、及び“Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems”,6th Edition,Ansel et al.,(Media,PA:Williams and Wilkins,1995)に記載されるとおり調製することができる。これらの文献は、錠剤及びカプセル並びに遅延放出投薬形態の錠剤及びペレット、カプセル、及び顆粒を調製するための賦形剤、材料、設備、及び方法に関する情報を提供する。遅延放出は約1時間から約3ヵ月又はそれ以上の範囲であり得る。
好適なコーティング材料の例としては、限定はされないが、セルロースポリマー、例えば、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸フタル酸ポリビニル、アクリル酸ポリマー及びコポリマー、及び商標名EUDRAGIT(登録商標)(Roth Pharma、Westerstadt、独国)で市販されているメタクリル樹脂、ゼイン、シェラック、及び多糖類が挙げられる。
コーティングは、所望の放出プロファイルを生じさせるため、水不溶性/水溶性非ポリマー賦形剤を伴い又は伴わず、異なる比率の水溶性ポリマー、水不溶性ポリマー、及び/又はpH依存性ポリマーで形成され得る。コーティングは、限定はされないが、錠剤(コーティングされたビーズを伴う又は伴わない圧縮されたもの)、カプセル(コーティングされたビーズを伴う又は伴わない)、ビーズ、粒子組成物、限定はされないが懸濁液形態又はふりかける投薬形態として製剤化された「成分そのまま」を含む投薬形態(マトリックス又は単純)の上に施すことができる。
局所投与に適合された投薬形態は、軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、又は油として製剤化することができる。眼又は他の外部組織、例えば口又は皮膚の治療に関する一部の実施形態では、医薬製剤は局所軟膏又はクリームとして適用される。軟膏として製剤化される場合、チデグルシブ若しくはその誘導体、補助活性成分、及び/又はその薬学的に許容可能な塩は、パラフィン系又は水混和性軟膏基剤と共に製剤化することができる。他の実施形態では、活性成分は、水中油クリーム基剤又は油中水基剤を含むクリームとして製剤化することができる。口内の局所投与に適合された投薬形態としては、ロゼンジ、トローチ、及び洗口液が挙げられる。
鼻内又は吸入投与に適合された投薬形態としては、エアロゾル、溶液、懸濁液滴、ゲル、又は乾燥粉末が挙げられる。一部の実施形態において、吸入に適合された投薬形態のチデグルシブ若しくはその誘導体、補助活性成分、及び/又はその薬学的に許容可能な塩は、マイクロナイゼーションによって得られる又は得ることのできる低粒径化された形態である。一部の実施形態において、低粒径化された(例えば、マイクロナイズされた)化合物又はその塩若しくは溶媒和物の粒径は、当該技術分野において公知の適切な方法で計測したとき約0.5〜約10ミクロンであるD50値によって定義される。吸入による投与に適合された投薬形態としてはまた、粒子ダスト又はミストも挙げられる。担体又は賦形剤が鼻腔内スプレー又は点鼻薬として投与するための液体である好適な投薬形態としては、活性成分の水性又は油性溶液/懸濁液が挙げられ、これは各種の定量式加圧エアロゾル、ネブライザー、又はインサフレーターによって生成され得る。
一部の実施形態において、投薬形態は、吸入による投与に好適なエアロゾル製剤である。これらの実施形態の一部では、エアロゾル製剤は、チデグルシブ若しくはその誘導体、及び/又はその薬学的に許容可能な塩の溶液又は微細懸濁液と、薬学的に許容可能な水性又は非水性溶媒とを含有する。エアロゾル製剤は密封容器に無菌形態で単一用量又は複数用量の分量で提供され得る。これらの実施形態の一部について、密封容器は、定量弁を備えた単一用量又は複数用量鼻内又はエアロゾルディスペンサー(例えば、定量噴霧式吸入器)であり、これは容器の内容物が吐き出された後に廃棄することが意図される。
エアロゾル投薬形態をエアロゾルディスペンサーに入れる場合、ディスペンサーは圧縮空気、二酸化炭素、又は限定はされないがヒドロフルオロカーボンを含めた有機噴射剤など、圧力下にある好適な噴射剤を含む。他の実施形態におけるエアロゾル製剤投薬形態はポンプ式アトマイザーに入れられる。加圧エアロゾル製剤はまた、チデグルシブ若しくはその誘導体、又はその医薬製剤の溶液又は懸濁液も含有し得る。さらなる実施形態において、エアロゾル製剤はまた、例えば製剤の安定性及び/又は味及び/又は微粒子集団特性(量及び/又はプロファイル)を改善するために配合される共溶媒及び/又は調整剤も含有する。エアロゾル製剤の投与は1日1回又は1日数回、例えば1日2、3、4、又は8回であってもよく、ここで1回につき1、2、又は3用量が送達される。
吸入投与に好適な及び/又は適合された一部の投薬形態について、医薬製剤は乾燥粉末吸入可能製剤である。チデグルシブ若しくはその誘導体、補助活性成分、及び/又はその薬学的に許容可能な塩に加えて、かかる投薬形態は、粉末基剤、例えば、ラクトース、グルコース、トレハロース、マンニトール(manitol)、及び/又はデンプンを含有することができる。これらの実施形態の一部では、チデグルシブ若しくはその誘導体、補助活性成分、及び/又はその薬学的に許容可能な塩は低粒径化された形態である。さらなる実施形態において、パフォーマンス調整剤、例えば、L−ロイシン又は別のアミノ酸、セロビオースオクタアセテート、及び/又はステアリン酸の金属塩、例えばステアリン酸マグネシウム又はカルシウム。
一部の実施形態において、エアロゾル製剤は、定量されるエアロゾルのそれぞれに所定量の活性成分、例えば、チデグルシブ又はその誘導体が含まれるように構成される。
腟内投与に適合された投薬形態は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡、又はスプレー製剤として提供され得る。直腸投与に適合された投薬形態としては、坐薬又は浣腸が挙げられる。
非経口投与に適合された、及び/又は任意の種類の注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、皮内、骨内、硬膜外、心臓内、関節内、空洞内、くも膜下腔内、硝子体内(intravireal)、脳内、及び脳室内)に適合された投薬形態としては、水性及び/又は非水性滅菌注射溶液を挙げることができ、これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、組成物を対象の血液と等張にする溶質、並びに水性及び非水性滅菌懸濁液(これには懸濁剤及び増粘剤が含まれ得る)を含有し得る。非経口投与に適合された投薬形態は、限定はされないが密封アンプル又はバイアルを含めた、単一単位用量又は複数単位用量容器に提供されてもよい。用量は凍結乾燥し、投与前に滅菌担体に再懸濁して用量を再構成することができる。一部の実施形態では、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から即時調合注射溶液及び懸濁液を調製することができる。
眼球投与に適合された投薬形態としては、任意選択で注射に適合されてもよい、且つ任意選択で抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、組成物を眼又はそこに含まれる若しくは対象の眼の周りにある体液と等張性にする溶質を含有し得る水性及び/又は非水性滅菌溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液を挙げることができる。
一部の実施形態について、投薬形態は、単位用量当たり所定量のチデグルシブ又はその誘導体を含有する。ある実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体の所定量は、CDKL5欠損、レット症候群、及び/又はその症状を治療及び/又は予防するためのチデグルシブ又はその誘導体の治療有効量であり得る。他の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体の所定量は、活性成分の治療有効量の適切な分割量であり得る。従ってかかる単位用量は1日1回又は2回以上投与され得る。かかる医薬製剤は、当該技術分野において周知の方法のいずれによって調製されてもよい。
チデグルシブ又はその誘導体及びその製剤によるCDKL5介在性障害の治療
本明細書に記載されるチデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、対象の疾患、障害、症候群、又はその症状の治療及び/又は予防に使用することができる。一部の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、CDKL5欠損、レット症候群、レット症候群のバリアント、及び/又はその症状の治療及び/又は予防に使用することができる。一部の実施形態において、対象は、CDKL5欠損、レット症候群、レット症候群のバリアント、及び/又はその症状を有する。
本明細書に記載されるチデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、対象の疾患、障害、症候群、又はその症状の治療及び/又は予防に使用することができる。一部の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、CDKL5欠損、レット症候群、レット症候群のバリアント、及び/又はその症状の治療及び/又は予防に使用することができる。一部の実施形態において、対象は、CDKL5欠損、レット症候群、レット症候群のバリアント、及び/又はその症状を有する。
本明細書に記載されるチデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤のある量が、それを必要としている対象に1日、1週間、1ヵ月、又は1年に1回以上投与され得る。一部の実施形態において、投与される量は、チデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤の治療有効量であり得る。例えば、チデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、ある1日用量で投与することができる。この量は1日に単回の用量で与えられてもよい。他の実施形態において、1日用量は1日に複数回の用量で投与されてもよく、ここでは各々が総1日投与用量の分割量(サブ用量)を含有する。一部の実施形態において、1日に送達される用量数は、2、3、4、5、又は6である。さらなる実施形態において、化合物、製剤、又はその塩は週1回以上、例えば週1、2、3、4、5、又は6回投与される。他の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は月1回以上、例えば月1〜5回投与され得る。さらに別の実施形態においてチデグルシブ又はその誘導体、及びその医薬製剤は年1回以上、例えば年1〜11回投与され得る。
チデグルシブ又はその誘導体、及びその医薬製剤は、任意の従来の経路によって二次的薬剤と共投与することができる。二次的薬剤は、チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤と別個の化合物及び/又は製剤である。二次的薬剤は、チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤と同時に投与することができる。二次的薬剤は、チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤と逐次的に投与することができる。二次的薬剤はチデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤との相加効果又は相乗効果を有し得る。好適な二次的薬剤としては、限定はされないが、DNA、RNA、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、抗体、アプタマー、リボザイム、必須腫瘍タンパク質及び遺伝子の翻訳又は転写を阻害するリボザイムのガイド配列、ホルモン類、免疫調節薬、解熱薬、抗不安薬、抗精神病薬、鎮痛薬、鎮痙剤、抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、抗感染薬、及び化学療法薬が挙げられる。
好適なホルモン類としては、限定はされないが、アミノ酸誘導体ホルモン類(例えば、メラトニン及びサイロキシン)、小ペプチドホルモン類及びタンパク質ホルモン類(例えば、サイロトロピン放出ホルモン、バソプレシン、インスリン、成長ホルモン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモン、及び甲状腺刺激ホルモン)、エイコサノイド類(eiconsanoid)(例えば、アラキドン酸、リポキシン類、及びプロスタグランジン類)、及びステロイドホルモン類(例えば、エストラジオール、テストステロン、テトラヒドロテストステロンコルチゾール)が挙げられる。
好適な免疫調節薬としては、限定はされないが、プレドニゾン、アザチオプリン、6−MP、シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキサート、インターロイキン類(例えば、IL−2、IL−7、及びIL−12)、サイトカイン類(例えば、インターフェロン類(例えば、IFN−α、IFN−β、IFN−ε、IFN−κ、IFN−ω、及びIFN−γ)、顆粒球コロニー刺激因子、及びイミキモド)、ケモカイン類(例えば、CCL3、CCL26及びCXCL7)、シトシンリン酸グアノシン、オリゴデオキシヌクレオチド類、グルカン類、抗体、及びアプタマー)が挙げられる。
好適な解熱薬としては、限定はされないが、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、及びニメスリド)、アスピリン及び関連サリチル酸塩類(例えば、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム(magnesium salicylae)、及びサリチル酸ナトリウム(sodium salicaylate))、パラセタモール/アセトアミノフェン、メタミゾール、ナブメトン、フェナゾン、及びキニーネが挙げられる。
好適な抗不安薬としては、限定はされないが、ベンゾジアゼピン系(例えば、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼパート、ジアゼパム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、トリアゾラム、及びトフィソパム)、セロトニン系抗うつ薬(serotenergic antidepressant)(例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、三環系抗うつ薬(tricyclic antidepresent)、及びモノアミンオキシダーゼ阻害薬)、メビカール、アホバゾール、セランク(selank)、ブロマンタン、エモキシピン、アザピロン、バルビツール酸系薬、ヒドロキシジン、プレガバリン、バリドール、及びβ遮断薬が挙げられる。
好適な抗精神病薬としては、限定はされないが、ベンペリドール、ブロムペリドール(bromoperidol)、ドロペリドール、ハロペリドール、モペロン、ピパンペロン(pipaperone)、チミペロン、フルスピリレン、ペンフルリドール、ピモジド、アセプロマジン、クロルプロマジン、シアメマジン、ジキシラジン(dizyrazine)、フルフェナジン、レボメプロマジン、メソリダジン、ペラジン、ペリシアジン、ペルフェナジン、ピポチアジン、プロクロルペラジン、プロマジン、プロメタジン、プロチペンジル、チオプロペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、トリフルプロマジン、クロルプロチキセン、クロペンチキソール、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロチアピン、ロキサピン、プロチペンジル、カルピプラミン、クロカプラミン、モリンドン、モサプラミン、スルピリド、ベラリプリド、アミスルプリド、アモキサピン、アリピプラゾール、アセナピン、クロザピン、ブロナンセリン、イロペリドン、ルラシドン、メルペロン、ネモナプリド、オランザピン(olanzaprine)、パリペリドン、ペロスピロン、クエチアピン、レモキシプリド、リスペリドン、セルチンドール、トリミプラミン、ジプラシドン、ゾテピン、アルストニン(alstonie)、ビフェプルノックス(befeprunox)、ビトペルチン、ブレクスピプラゾール、カンナビジオール、カリプラジン、ピマバンセリン、ポマグルメタッドメチオニル、バビカセリン、キサノメリン、及びジクロナピンが挙げられる。
好適な鎮痛薬としては、限定はされないが、パラセタモール/アセトアミノフェン、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、及びニメスリド)、COX−2阻害薬(例えば、ロフェコキシブ、セレコキシブ、及びエトリコキシブ)、オピオイド系(例えば、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロモルフィン、ペチジン、ブプレノルフィン)、トラマドール、ノルエピネフリン、フルピルチン(flupiretine)、ネホパム、オルフェナドリン、プレガバリン、ガバペンチン、シクロベンザプリン、スコポラミン、メサドン、ケトベミドン、ピリトラミド、及びアスピリン及び関連サリチル酸塩類(例えば、サリチル酸コリン、サリチル酸マグネシウム、及びサリチル酸ナトリウム)が挙げられる。
好適な鎮痙剤としては、限定はされないが、メベベリン、パパベリン(papverine)、シクロベンザプリン、カリソプロドール、オルフェナドリン、チザニジン、メタキサロン、メトカルバモール(methodcarbamol)、クロルゾキサゾン、バクロフェン、ダントロレン、バクロフェン、チザニジン、及びダントロレンが挙げられる。
好適な抗炎症薬としては、限定はされないが、プレドニゾン、非ステロイド性抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、ナプロキセン、ケトプロフェン、及びニメスリド)、COX−2阻害薬(例えば、ロフェコキシブ、セレコキシブ、及びエトリコキシブ)、及び免疫選択的抗炎症誘導体(例えば、顎下腺ペプチドT及びその誘導体)が挙げられる。
好適な抗ヒスタミン薬としては、限定はされないが、H1受容体拮抗薬(例えば、アクリバスチン、アゼラスチン、ビラスチン、ブロムフェニラミン、ブクリジン、ブロモジフェンヒドラミン、カルビノキサミン、セチリジン、クロルプロマジン、シクリジン、クロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、デスロラタジン、デクスブロムフェニラミン(dexbromapheniramine)、デクスクロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、ジメチンデン、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン、エバスチン(ebasine)、エンブラミン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、レボセチリジン(levocetirzine)、ロラタジン、メクロジン、ミルタザピン、オロパタジン、オルフェナドリン、フェニンダミン、フェニラミン、フェニルトロキサミン、プロメタジン、ピリラミン、クエチアピン、ルパタジン、トリペレナミン、及びトリプロリジン)、H2受容体拮抗薬(例えば、シメチジン、ファモチジン、ラフチジン、ニザチジン、ラニチジン(rafitidine)、及びロキサチジン)、トリトクアリン、カテキン、クロモグリク酸、ネドクロミル、及びβ2−アドレナリン作動薬が挙げられる。
好適な抗感染薬としては、限定はされないが、抗アメーバ薬(例えば、ニタゾキサニド、パロモマイシン、メトロニダゾール、チニダゾール、クロロキン、ミルテホシン、アムホテリシンB、及びヨードキノール)、アミノグリコシド系(例えば、パロモマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、アミカシン、カナマイシン、及びネオマイシン)、駆虫薬(例えば、ピランテル、メベンダゾール、イベルメクチン、プラジカンテル、アベンダゾール(abendazole)、チアベンダゾール、オキサムニキン)、抗真菌薬(例えば、アゾール系抗真菌薬(例えば、イトラコナゾール、フルコナゾール、ポサコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、及びボリコナゾール)、エキノキャンディン系(例えば、カスポファンギン、アニデュラファンギン、及びミカファンギン)、グリセオフルビン、テルビナフィン、フルシトシン、及びポリエン系(例えば、ナイスタチン、及びアムホテリシンB)、抗マラリア剤(例えば、ピリメタミン/スルファドキシン、アルテメーテル/ルメファントリン、アトバコン/プログアニル(proquanil)、キニーネ、ヒドロキシクロロキン、メフロキン、クロロキン、ドキシサイクリン、ピリメタミン、及びハロファントリン)、抗結核剤(例えば、アミノサリチル酸塩類(例えば、アミノサリチル酸)、イソニアジド/リファンピン、イソニアジド/ピラジナミド/リファンピン、ベダキリン、イソニアジド、エタンブトール、リファンピン、リファブチン、リファペンチン、カプレオマイシン、及びサイクロセリン)、抗ウイルス薬(例えば、アマンタジン、リマンタジン、アバカビル/ラミブジン、エムトリシタビン/テノホビル、コビシスタット/エルビテグラビル/エムトリシタビン/テノホビル、エファビレンツ/エムトリシタビン/テノホビル、アバカビル/ラミブジン/ジドブジン、ラミブジン/ジドブジン、エムトリシタビン/テノホビル、エムトリシタビン/ロピナビル(opinavir)/リトナビル/テノホビル、インターフェロンα−2v/リバビリン、ペグインターフェロンα−2b、マラビロク、ラルテグラビル、ドルテグラビル、エンフビルチド、ホスカルネット、ホミビルセン、オセルタミビル、ザナミビル、ネビラピン、エファビレンツ、エトラビリン、リルピビリン、デラビルジン(delaviridine)、ネビラピン、エンテカビル、ラミブジン、アデホビル、ソホスブビル、ジダノシン、テノホビル、アバシブル(avacivr)、ジドブジン、スタブジン、エムトリシタビン、ザルシタビン(xalcitabine)、テルビブジン、シメプレビル、ボセプレビル、テラプレビル、ロピナビル/リトナビル、ホスアンプレナビル(fosamprenvir)、ドラヌアビル(dranuavir)、リトナビル、チプラナビル、アタザナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、インジナビル、サキナビル(sawuinavir)、リバビリン、バラシクロビル(valcyclovir)、アシクロビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、及びバルガンシクロビル)、カルバペネム系(例えば、ドリペネム、メロペネム、エルタペネム、及びシラスタチン/イミペネム)、セファロスポリン系(例えば、セファドロキシル、セフラジン、セファゾリン、セファレキシン、セフェピム、セフタロリン(ceflaroline)、ロラカルベフ、セフォテタン、セフロキシム、セフプロジル、ロラカルベフ、セフォキシチン、セファクロル、セフチブテン、セフトリアキソン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフジニル、セフィキシム、セフジトレン、セフチゾキシム(cefizoxime)、及びセフタジジム)、グリコペプチド系抗生物質(例えば、バンコマイシン、ダルババンシン、オリタバンシン、及びテラバンシン(telvancin))、グリシルサイクリン系(例えば、チゲサイクリン)、抗らい菌薬(例えば、クロファジミン及びサリドマイド)、リンコマイシン及びその誘導体(例えば、クリンダマイシン及びリンコマイシン)、マクロライド系及びその誘導体(例えば、テリスロマイシン、フィダキソマイシン、エリスロマイシン(erthromycin)、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、及びトロレアンドマイシン)、リネゾリド、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、リファキシミン、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、メトロニダゾール、アズトレオナム、バシトラシン、ペニシリン系(アモキシシリン、アンピシリン、バカンピシリン、カルベニシリン、ピペラシリン、チカルシリン、アモキシシリン/クラブラン酸塩、アンピシリン/スルバクタム、ピペラシリン/タゾバクタム、クラブラン酸塩/チカルシリン、ペニシリン、プロカインペニシリン、オキサシリン(oxaxillin)、ジクロキサシリン、及びナフシリン)、キノロン系(例えば、ロメフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ガチフロキサシン(qatifloxacin)、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ゲミフロキサシン、モキシフロキサシン、シノキサシン、ナリジクス酸、エノキサシン、グレパフロキサシン、ガチフロキサシン、トロバフロキサシン、及びスパルフロキサシン)、スルホンアミド系(例えば、スルファメトキサゾール/トリメトプリム、スルファサラジン、及びスルフイソキサゾール(sulfasoxazole))、テトラサイクリン系(例えば、ドキシサイクリン、デメクロサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン/サリチル酸(salicyclic acid)、ドキシサイクリン/ω−3多価不飽和脂肪酸、及びテトラサイクリン)、及び尿路感染症薬(例えば、ニトロフラントイン、メテナミン、ホスホマイシン、シノキサシン、ナリジクス酸、トリメトプリム、及びメチレンブルー)が挙げられる。
好適な化学療法薬としては、限定はされないが、パクリタキセル、ブレンツキシマブベドチン、ドキソルビシン、5−FU(フルオロウラシル)、エベロリムス、ペメトレキセド、メルファラン、パミドロネート、アナストロゾール、エキセメスタン、ネララビン、オファツムマブ、ベバシズマブ、ベリノスタット、トシツモマブ、カルムスチン、ブレオマイシン、ボスチニブ、ブスルファン、アレムツズマブ、イリノテカン、バンデタニブ、ビカルタミド、ロムスチン、ダウノルビシン、クロファラビン、カボザンチニブ、ダクチノマイシン、ラムシルマブ、シタラビン、シトキサン、シクロホスファミド、デシタビン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ヒドロキシウレア、デカルバジン、ロイプロリド、エピルビシン、オキサリプラチン、アスパラギナーゼ、エストラムスチン、セツキシマブ、ビスモデギブ、黒脚病菌(Erwinia chrysanthemi)由来アスパラギナーゼ(asparginase)、アミホスチン、エトポシド、フルタミド、トレミフェン、フルベストラント、レトロゾール、デガレリクス、プララトレキサート、メトトレキサート、フロクスウリジン、オビヌツズマブ、ゲムシタビン、アファチニブ、メシル酸イマチニブ(imatinib mesylatem)、カルムスチン、エリブリン、トラスツズマブ、アルトレタミン、トポテカン、ポナチニブ、イダルビシン、イホスファミド、イブルチニブ、アキシチニブ、インターフェロンα−2a、ゲフィチニブ、ロミデプシン、イクサベピロン、ルキソリチニブ、カバジタキセル、ado−トラスツズマブエムタンシン、カルフィルゾミブ、クロラムブシル、サルグラモスチム、クラドリビン、ミトタン、ビンクリスチン、プロカルバジン、メゲストロール、トラメチニブ、メスナ、塩化ストロンチウム−89、メクロレタミン、マイトマイシン、ブスルファン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ビノレルビン、フィルグラスチム、ペグフィルグラスチム、ソラフェニブ、ニルタミド、ペントスタチン、タモキシフェン、ミトキサントロン、ペグアスパラガーゼ、デニロイキンジフチトクス、アリトレチノイン、カルボプラチン、ペルツズマブ、シスプラチン、ポマリドミド、プレドニゾン、アルデスロイキン、メルカプトプリン、ゾレドロン酸、レナリドマイド、リツキシマブ、オクトレオチド(octretide)、ダサチニブ、レゴラフェニブ、ヒストレリン、スニチニブ、シルツキシマブ、オマセタキシン、チオグアニン(thioguanine)(チオグアニン(tioguanine))、ダブラフェニブ、エルロチニブ、ベキサロテン、テモゾロミド、チオテパ、サリドマイド、BCG、テムシロリムス、塩酸ベンダムスチン、トリプトレリン、三酸化ヒ素(aresnic trioxide)、ラパチニブ、バルルビシン、パニツムマブ、ビンブラスチン、ボルテゾミブ、トレチノイン、アザシチジン、パゾパニブ、テニポシド、ロイコボリン、クリゾチニブ、カペシタビン、エンザルタミド、イピリムマブ、ゴセレリン、ボリノスタット、イデラリシブ、セリチニブ、アビラテロン、エポチロン、タフルポシド、アザチオプリン、ドキシフルリジン、ビンデシン、及びオールトランス型レチノイン酸が挙げられる。
チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤が二次的薬剤と同時に共投与される実施形態では、チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤は二次的薬剤と実質的に同じ時点で対象に投与することができる。これに関連して使用されるとき、「実質的に同じ時点」は、チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤と二次的薬剤との投与間の時間が0〜10分であるようなチデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤と二次的薬剤との投与を指す。
チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤が二次的薬剤と逐次的に共投与される実施形態では、初めにチデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤が投与され、続いてある時間が経った後に二次的薬剤が投与され得る。チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤が二次的薬剤と逐次的に共投与される他の実施形態では、初めに二次的薬剤が投与され、続いてある時間が経った後にチデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤が投与され得る。任意の実施形態において、チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤と二次的薬剤との投与間の時間は10分〜約96時間の範囲であり得る。一部の実施形態において、この時間は約10分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、又は約12時間であり得る。逐次投与は治療期間の間に必要に応じて繰り返され得る。
投与することのできるチデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤の量は、本明細書の他の部分に記載される。二次的薬剤(本明細書では補助薬剤又は追加薬剤とも称される)の量は、その二次的薬剤に応じて異なり得る。二次的薬剤の量は治療有効量であり得る。一部の実施形態において、二次的薬剤の有効量は0.001マイクログラム〜約1ミリグラムの範囲である。他の実施形態において、二次的薬剤の量は約0.01IU〜約1000IUの範囲である。さらなる実施形態において、二次的薬剤の量は0.001mL〜約1mLの範囲である。さらに他の実施形態において、二次的薬剤の量は医薬製剤全体の約1%w/w〜約50%w/wの範囲である。さらなる実施形態において、二次的薬剤の量は医薬製剤全体の約1%v/v〜約50%v/vの範囲である。さらに他の実施形態において、二次的薬剤の量は二次的薬剤組成物又は医薬製剤全体の約1%w/v〜約50%w/vの範囲である。
一部の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体を含有する組成物又は製剤は注射によって患者に投与される。好適な注射方法としては、限定はされないが、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、皮内、骨内、硬膜外、心臓内、関節内、陰茎海綿体内、くも膜下腔内、硝子体内(intravireal)、脳内、及び脳室内注射が挙げられる。チデグルシブ若しくはその誘導体又はその医薬製剤を含有する組成物又は製剤の他の好適な投与方法としては、限定はされないが、局所、経皮、鼻内、又は経口送達が挙げられる。一部の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体の投薬量は約0.01μg/g体重以下〜約10mg/g体重以上の範囲である。
チデグルシブ又はその誘導体及びその製剤を含むキット
本明細書に記載されるチデグルシブ及びその誘導体並びにその医薬製剤は、組み合わせキットとして提供され得る。本明細書で使用されるとき、用語「組み合わせキット」又は「キット・オブ・パーツ」は、本明細書に記載されるチデグルシブ及びその誘導体並びにその医薬製剤、並びにそこに含まれる要素の組み合わせ又は単一の要素、例えば活性成分の包装、販売、流通、送達、及び/又は投与に使用される追加的な構成要素を指す。かかるさらなる構成要素には、限定はされないが、パッケージング、シリンジ、ブリスターパッケージ、ボトルなどが含まれる。キットに含まれる構成要素(例えば、活性薬剤)の1つ以上が同時に投与される場合、組み合わせキットは活性薬剤を単一の医薬製剤(例えば、錠剤)又は別個の医薬製剤中に含み得る。
本明細書に記載されるチデグルシブ及びその誘導体並びにその医薬製剤は、組み合わせキットとして提供され得る。本明細書で使用されるとき、用語「組み合わせキット」又は「キット・オブ・パーツ」は、本明細書に記載されるチデグルシブ及びその誘導体並びにその医薬製剤、並びにそこに含まれる要素の組み合わせ又は単一の要素、例えば活性成分の包装、販売、流通、送達、及び/又は投与に使用される追加的な構成要素を指す。かかるさらなる構成要素には、限定はされないが、パッケージング、シリンジ、ブリスターパッケージ、ボトルなどが含まれる。キットに含まれる構成要素(例えば、活性薬剤)の1つ以上が同時に投与される場合、組み合わせキットは活性薬剤を単一の医薬製剤(例えば、錠剤)又は別個の医薬製剤中に含み得る。
組み合わせキットは、各薬剤、化合物、医薬製剤又はその構成要素を別個の組成物又は医薬製剤中に含み得る。別個の組成物又は医薬製剤はキット内の単一のパッケージ又は別個のパッケージに含まれ得る。また、一部の実施形態では、緩衝剤、希釈剤、可溶化試薬、細胞培養培地及び他の試薬も提供される。これらのさらなる構成要素はキット内の単一のパッケージ又は別個のパッケージに含まれ得る。
一部の実施形態において、組み合わせキットはまた、有形的表現媒体に印刷されるか又は他の形でそこに含まれる取扱説明書も含む。取扱説明書は、そこに含まれるチデグルシブ及びその誘導体並びにその医薬製剤及び/又は他の補助薬剤及び/又は二次的薬剤の内容に関する情報、そこに含まれるチデグルシブ及びその誘導体並びにその医薬製剤及び/又は他の補助薬剤及び/又は二次的薬剤の内容に関する安全情報、そこに含まれるチデグルシブ及びその誘導体並びにその医薬製剤及び/又は他の補助薬剤及び/又は二次的薬剤の投薬量、用法指示、及び/又は推奨される1つ又は複数の治療レジメンに関する情報を提供することができる。一部の実施形態において、取扱説明書は、CDKL5欠損、レット症候群、及び/又はその症状を有する対象に対するチデグルシブ及びその誘導体並びにその医薬製剤及び/又は他の補助薬剤及び/又は二次的薬剤の投与についての指図を提供し得る。
治療介入年齢
本明細書に記載されるチデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、対象、特に特定の年齢層の対象の疾患、障害、症候群、又はその症状の治療及び/又は予防に使用することができる。一部の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、乳児、小児、少年、青年又は若年成人である対象のCDKL5欠損、レット症候群、レット症候群のバリアント、及び/又はその症状の治療及び/又は予防に使用することができる。
本明細書に記載されるチデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、対象、特に特定の年齢層の対象の疾患、障害、症候群、又はその症状の治療及び/又は予防に使用することができる。一部の実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤は、乳児、小児、少年、青年又は若年成人である対象のCDKL5欠損、レット症候群、レット症候群のバリアント、及び/又はその症状の治療及び/又は予防に使用することができる。
様々な実施形態において、チデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤を投与する対象は、21、18、16、13、12、11、10、9、8、7、5、4、3、2、1歳以下又は生後24、18、12、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1ヵ月以下など、特定の年齢である。以下の例に更に提供されるとおり、より早い年齢で本明細書に記載されるとおりのチデグルシブ又はその誘導体及びその医薬製剤による療法を開始することが、年齢が高くなって開始するよりも有益であろうと考えられる。例えば、GSK3β及び/又はCDKL5活性が高い年齢で療法を開始することが、GSK3β及びCDKL5活性が低い年齢で療法を開始するよりも有益であると予想される。
これ以上の詳細はなしに、当業者は本明細書の記載に基づき本開示を最大限に利用し得ると考えられる。本開示の実施形態、特に任意の「好ましい」実施形態は、単に本開示の原理の理解を明確にするために示される単なる可能な実現例であることが強調される。本開示の開示される1つ又は複数の実施形態に対し、本開示の趣旨及び原理から実質的に逸脱することなく多くの変形及び改良が行われ得る。かかる改良及び変形は全て、本開示の範囲内にある。
ここで本開示の実施形態を全般的に説明したが、以下の実施例は、本開示の幾つかの更なる実施形態を説明する。本開示の実施形態は以下の例、並びに対応する文章及び図との関連で説明されるが、本開示の実施形態をその説明に限定する意図はない。むしろ逆に、本開示の実施形態の趣旨及び範囲内に含まれる全ての代替例、変形例、及び均等物を包含することが意図される。
実施例1
材料及び方法
コロニー
Cdkl5+/− KO雌をCdkl5−/Y KO雄と交雑し、及びCdkl5+/− KO雌をCdkl5+/Y KO雄と交雑することにより試験用マウスを作製した。全ての実験に同腹仔対照を使用した。以下のプライマーを使用したゲノムDNAに対するPCRによって動物の核型を決定した:
108F:5’−ACGATAGAAATAGAGGATCAACCC−3’;
109R:5’ CCCAAGTATACCCCTTTCCA−3’;
125R:5’−CTGTGACTAGGGGCTAGA−3’。
材料及び方法
コロニー
Cdkl5+/− KO雌をCdkl5−/Y KO雄と交雑し、及びCdkl5+/− KO雌をCdkl5+/Y KO雄と交雑することにより試験用マウスを作製した。全ての実験に同腹仔対照を使用した。以下のプライマーを使用したゲノムDNAに対するPCRによって動物の核型を決定した:
108F:5’−ACGATAGAAATAGAGGATCAACCC−3’;
109R:5’ CCCAAGTATACCCCTTTCCA−3’;
125R:5’−CTGTGACTAGGGGCTAGA−3’。
PCRに使用したキットは、GO TAQ Flexi DNAポリメラーゼ(Promega)であった。予想産物サイズはWTマウスについて240bp、及びCdkl5 KOマウスについて344bpであった。
出生日を出生後日数(P)ゼロ(P0)として設計し、生後24時間の動物を1日齢の動物(P1)と見なした。離乳後、マウスはケージ当たり3〜5匹で飼育し、温度制御された環境において12時間(h)明暗サイクル下におき、餌及び水は自由に摂取させた。生後25日目(P25)から開始して、Cdkl5+/Y WT及びCdkl5−/Y KO雄マウスを媒体(トウモロコシ油;Sigma−Aldrich)又はNP−12(20mg/kg;Sigma−Aldrich)によって20日間にわたり1日おきに皮下注射投与して処置した。P45に動物を最終注射後4時間で犠牲にした。各実験群からの一部の動物については、図2に示されるとおり最終注射後に行動試験を行った。
初代海馬培養
生後1日目(P1)のCdkl5−/Y及びCdkl5X/Y雄マウスから海馬ニューロンを調製した。簡潔に言えば、解剖顕微鏡下でマウス脳から海馬を解剖し、トリプシン(Sigma Aldrich)によって37℃で15分間及びDNアーゼ(Sigma Aldrich)によって室温で2分間処理した後、ファイアーポリッシュ加工のガラスピペットで機械的に粉砕して単一細胞懸濁液を得た。12ウェルプレート内のポリ−L−リジンでコートしたカバーグラス上に約1.2×105細胞をプレーティングし、B27(Invitrogen)及びグルタミン(Invitrogen)を補足したNeurobasal培地(Invitrogen)で培養した。細胞はインビトロで5%CO2加湿インキュベーターにおいて37℃で維持し、プレーティング後10日(DIV10)で免疫染色又はウエスタンブロット分析のため固定した。1μM NP−12(Sigma)を隔日投与した。
生後1日目(P1)のCdkl5−/Y及びCdkl5X/Y雄マウスから海馬ニューロンを調製した。簡潔に言えば、解剖顕微鏡下でマウス脳から海馬を解剖し、トリプシン(Sigma Aldrich)によって37℃で15分間及びDNアーゼ(Sigma Aldrich)によって室温で2分間処理した後、ファイアーポリッシュ加工のガラスピペットで機械的に粉砕して単一細胞懸濁液を得た。12ウェルプレート内のポリ−L−リジンでコートしたカバーグラス上に約1.2×105細胞をプレーティングし、B27(Invitrogen)及びグルタミン(Invitrogen)を補足したNeurobasal培地(Invitrogen)で培養した。細胞はインビトロで5%CO2加湿インキュベーターにおいて37℃で維持し、プレーティング後10日(DIV10)で免疫染色又はウエスタンブロット分析のため固定した。1μM NP−12(Sigma)を隔日投与した。
ウエスタンブロット分析
ウエスタンブロット分析のため、1mM PMSF及び1%プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害薬カクテル(Sigma)を補足した氷冷RIPA溶解緩衝液(50mMトリス−HCl pH7.4、150mM NaCl、1%Triton−X100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中にDIV10の海馬ニューロンを溶解させた。細胞抽出物は直ちにウエスタンブロットによって処理するか、又はアッセイまで凍結保存した(−80℃)。全タンパク質細胞抽出物を4〜12%Mini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)ゲル(Bio−Rad)での電気泳動にかけ、Hybond ECLニトロセルロース膜(Amersham Life Science)に転写した。以下の一次抗体:抗ホスホ−GSK3−β−Ser9(1:1000;Cell Signaling Technology)、抗GSK3−β(1:1000;Cell Signaling Technology)及び抗MAP2(1:1000、Millipore)を使用した。Scion Imageソフトウェア(Scion Corporation、Frederick、MD、USA)でデジタル画像のデンシトメトリー分析を実施し、各バンドの強度をそれぞれのGSK3βレベルの強度(神経タンパク質レベルMAP−2に対して正規化した)に対して正規化した。
ウエスタンブロット分析のため、1mM PMSF及び1%プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害薬カクテル(Sigma)を補足した氷冷RIPA溶解緩衝液(50mMトリス−HCl pH7.4、150mM NaCl、1%Triton−X100、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中にDIV10の海馬ニューロンを溶解させた。細胞抽出物は直ちにウエスタンブロットによって処理するか、又はアッセイまで凍結保存した(−80℃)。全タンパク質細胞抽出物を4〜12%Mini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)ゲル(Bio−Rad)での電気泳動にかけ、Hybond ECLニトロセルロース膜(Amersham Life Science)に転写した。以下の一次抗体:抗ホスホ−GSK3−β−Ser9(1:1000;Cell Signaling Technology)、抗GSK3−β(1:1000;Cell Signaling Technology)及び抗MAP2(1:1000、Millipore)を使用した。Scion Imageソフトウェア(Scion Corporation、Frederick、MD、USA)でデジタル画像のデンシトメトリー分析を実施し、各バンドの強度をそれぞれのGSK3βレベルの強度(神経タンパク質レベルMAP−2に対して正規化した)に対して正規化した。
免疫細胞化学
培養海馬ニューロンの免疫染色(immuonstaining)を以下の手順で実施した。細胞をPBS中4%PFA+4%スクロースに20分間固定し、PBSで5回洗浄した。PBSTで透過処理(permabilization)した後、細胞を一晩、以下の抗体:ウサギポリクローナル抗MAP2(1:100、Millipore)及びSYN(SY38)抗体(1:1000、MAB 5258、Merck Millipore)と共に4℃で一晩インキュベートした。次に切片をFITCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(1:100;Sigma−Aldrich)及びCy3コンジュゲート抗ウサギIgG(1:100、Jackson Immunoresearch)と共に室温で2時間インキュベートした。AxioCam MRm(Zeiss、Oberkochen、ドイツ)デジタルカメラを備えたEclipse TE 2000−S顕微鏡(ニコン、東京、日本)で蛍光像を撮影した。
培養海馬ニューロンの免疫染色(immuonstaining)を以下の手順で実施した。細胞をPBS中4%PFA+4%スクロースに20分間固定し、PBSで5回洗浄した。PBSTで透過処理(permabilization)した後、細胞を一晩、以下の抗体:ウサギポリクローナル抗MAP2(1:100、Millipore)及びSYN(SY38)抗体(1:1000、MAB 5258、Merck Millipore)と共に4℃で一晩インキュベートした。次に切片をFITCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(1:100;Sigma−Aldrich)及びCy3コンジュゲート抗ウサギIgG(1:100、Jackson Immunoresearch)と共に室温で2時間インキュベートした。AxioCam MRm(Zeiss、Oberkochen、ドイツ)デジタルカメラを備えたEclipse TE 2000−S顕微鏡(ニコン、東京、日本)で蛍光像を撮影した。
分極分析
ニューロン樹状突起の分極程度を定義付けるため、本発明者らは、Horton et al.(図3)(Horton et al.2006.Brain Cell.Biol.35:29−38)により記載される方法に従った。簡潔に言えば、各ニューロンにおける樹状突起の長さ測定値(Lm)(主樹状突起/軸索をその全ての分枝と共に含む)を降順に順位付けした。これらの長さの合計が当該のニューロンの総樹状突起長(Lsym)である。ニューロンが対称であれば(即ち、同様の長さの樹状突起を有するならば)、当該の値はLm=Lsym=1/樹状突起数(Lm/Lsym=1)となる。ニューロンが非対称であれば(即ち、異なる長さの樹状突起を有するならば)、比Lm/Lsymが、樹状突起が完全な対称からどの程度外れているかを反映する。閾値2を上回るLm/Lsym値を示した全てのニューロンを、分極したニューロンと見なした。
ニューロン樹状突起の分極程度を定義付けるため、本発明者らは、Horton et al.(図3)(Horton et al.2006.Brain Cell.Biol.35:29−38)により記載される方法に従った。簡潔に言えば、各ニューロンにおける樹状突起の長さ測定値(Lm)(主樹状突起/軸索をその全ての分枝と共に含む)を降順に順位付けした。これらの長さの合計が当該のニューロンの総樹状突起長(Lsym)である。ニューロンが対称であれば(即ち、同様の長さの樹状突起を有するならば)、当該の値はLm=Lsym=1/樹状突起数(Lm/Lsym=1)となる。ニューロンが非対称であれば(即ち、異なる長さの樹状突起を有するならば)、比Lm/Lsymが、樹状突起が完全な対称からどの程度外れているかを反映する。閾値2を上回るLm/Lsym値を示した全てのニューロンを、分極したニューロンと見なした。
形態学的分析
海馬ニューロンの形態学的分析は、2つのパラメータ:最も長い樹状突起の長さ(D1)及び総樹状突起長に重点を置いた。この目的を達成するため、画像解析システムImage Pro Plus(Media Cybernetics、Silver Spring、MD 20910、USA)を使用して各ニューロン突起部に沿ってトレースすることによりMAP2陽性ニューロンの樹状突起長を測定し、定量化した。樹状突起の始点は、樹状突起の正中線上において細胞体の湾曲と交わる点として定義した。本発明者らの測定では、樹状突起分枝全体をトレースして、細胞体から現れる突出をその全ての分枝と共に単一の樹状突起と見なした。
海馬ニューロンの形態学的分析は、2つのパラメータ:最も長い樹状突起の長さ(D1)及び総樹状突起長に重点を置いた。この目的を達成するため、画像解析システムImage Pro Plus(Media Cybernetics、Silver Spring、MD 20910、USA)を使用して各ニューロン突起部に沿ってトレースすることによりMAP2陽性ニューロンの樹状突起長を測定し、定量化した。樹状突起の始点は、樹状突起の正中線上において細胞体の湾曲と交わる点として定義した。本発明者らの測定では、樹状突起分枝全体をトレースして、細胞体から現れる突出をその全ての分枝と共に単一の樹状突起と見なした。
組織学的手順
P45に一部の動物をエーテルで深麻酔し、脳を摘出し、100mMリン酸緩衝液、pH7.4中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)に浸漬することにより固定した。脳は固定液中に24時間保存し、正中線に沿って切断し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中20%スクロースに更に24時間置いた。半球を凍結し、−80℃で保存した。右半球は凍結ミクロトームで30μm厚の冠状切片に切り出し、グリセロール、エチレングリコール(ethilene glycol)、PBS 10×、蒸留水(bidistillate water)及びナトリウムアジドを含有する不凍液に連続的に回収した。
P45に一部の動物をエーテルで深麻酔し、脳を摘出し、100mMリン酸緩衝液、pH7.4中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)に浸漬することにより固定した。脳は固定液中に24時間保存し、正中線に沿って切断し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中20%スクロースに更に24時間置いた。半球を凍結し、−80℃で保存した。右半球は凍結ミクロトームで30μm厚の冠状切片に切り出し、グリセロール、エチレングリコール(ethilene glycol)、PBS 10×、蒸留水(bidistillate water)及びナトリウムアジドを含有する不凍液に連続的に回収した。
免疫組織化学
海馬体からの6つの切片のうちの1つを、切断型カスパーゼ−3(1:200、抗切断型カスパーゼ−3ウサギポリクローナルAb、Cell Signaling Technology)、ダブルコルチン(1:100、抗DCXヤギポリクローナルAb、Santa Cruz Biotechnology)、シナプトフィジン(1:1000、抗SYN(SY38)マウスモノクローナルAb、MAB 5258、Merck Millipore)及びPSD−95(1:1000、抗PSD−95ウサギポリクローナルAb、Abcam)に関する免疫組織化学又はシナプトフィジン及びPSD−95に関する二重蛍光免疫組織化学に使用した。
海馬体からの6つの切片のうちの1つを、切断型カスパーゼ−3(1:200、抗切断型カスパーゼ−3ウサギポリクローナルAb、Cell Signaling Technology)、ダブルコルチン(1:100、抗DCXヤギポリクローナルAb、Santa Cruz Biotechnology)、シナプトフィジン(1:1000、抗SYN(SY38)マウスモノクローナルAb、MAB 5258、Merck Millipore)及びPSD−95(1:1000、抗PSD−95ウサギポリクローナルAb、Abcam)に関する免疫組織化学又はシナプトフィジン及びPSD−95に関する二重蛍光免疫組織化学に使用した。
切断型カスパーゼ−3については、切片をウサギ抗体(1:200、抗切断型カスパーゼ−3ウサギポリクローナルAb、Cell Signaling Technology)と共に4℃で一晩、及びHRPコンジュゲート抗ウサギ二次抗体(1:200、Jackson Immunoresearch)と共に室温で2時間インキュベートした。検出はTSAシアニン3 Plus評価キット(Perkin Elmer)を用いて実施した。
DCX免疫組織化学については、DGからの切片をヤギポリクローナル抗DCX抗体(1:100、Santa Cruz Biotechnology)と共に4℃で一晩インキュベートした。次に切片をビオチン化抗ヤギIgG二次抗体(1:200、Vector Laboratories)と共に室温で2時間インキュベートし、その後VECTASTAIN(登録商標)ABCキット(Vector Laboratories)と共に1時間インキュベートした。検出はDABキット(Vector Laboratories)を用いて実施した。この種の免疫組織化学(immunoistochemistry)では、電動ステージ及びCoolsnap−Proデジタルカメラ(Media Cybernetics、Silver Spring、MD、USA)を備えたLeitz Diaplan顕微鏡で明視野像を撮影した。
シナプトフィジン免疫組織化学については、切片をマウスモノクローナル抗SYN(SY38)抗体(1:1000、MAB 5258、Merck Millipore)と共に4℃で一晩、及びFITCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG二次抗体(1:200;Jackson Immunoresearch)と共に室温で2時間インキュベートした。
PSD−95免疫組織化学については、DGからの切片を抗PSD−95抗体(1:1000、ウサギポリクローナル抗体、Abcam)と共に4℃で一晩、及びCy3コンジュゲート抗ウサギIgG二次抗体(1:200、Jackson Immunoresearch)と共に室温で2時間インキュベートした。
二重蛍光免疫染色については、切片を一次抗体SYN(SY38)抗体(1:1000、MAB 5258、Merck Millipore)及びPSD−95(1:1000、ウサギポリクローナル抗体、Abcam)と共に4℃で一晩インキュベートした。次に切片を、SYN免疫組織化学についてはFITCコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(1:100;Sigma−Aldrich)と共に、及びPSD−95免疫組織化学についてはCy3コンジュゲート抗ウサギIgG(1:100、Jackson Immunoresearch)二次蛍光抗体と共に室温で2時間インキュベートした。
ゴルジ染色
FD Rapid Golgi Stain(商標)キット(FD NeuroTechnologies,Inc.、Columbia、MD、USA)を使用して脳をゴルジ染色した。等容積の溶液A及びBを混合することにより作製した含浸溶液に脳を浸漬し、暗所下に室温で2週間保存した。次に、組織を溶液Cに移し、暗所下に室温で少なくとも72時間保存した。最後に、クライオスタットを−40℃〜−43℃にして組織の切片を凍結ミクロトームで90μm厚の冠状切片に切り出した。
FD Rapid Golgi Stain(商標)キット(FD NeuroTechnologies,Inc.、Columbia、MD、USA)を使用して脳をゴルジ染色した。等容積の溶液A及びBを混合することにより作製した含浸溶液に脳を浸漬し、暗所下に室温で2週間保存した。次に、組織を溶液Cに移し、暗所下に室温で少なくとも72時間保存した。最後に、クライオスタットを−40℃〜−43℃にして組織の切片を凍結ミクロトームで90μm厚の冠状切片に切り出した。
細胞カウント
サンプリングした連続切片でカウントされた総数に切片サンプリング割合(ssf=1/6)の逆数を乗じることにより、DG中の陽性細胞の総数(切断型カスパーゼ−3、DCX)を推定した。連続切片でカウントされた数に切片サンプリング割合(ssf=1/6)の逆数を乗じることにより、各表現型の細胞の総数を推定した。
サンプリングした連続切片でカウントされた総数に切片サンプリング割合(ssf=1/6)の逆数を乗じることにより、DG中の陽性細胞の総数(切断型カスパーゼ−3、DCX)を推定した。連続切片でカウントされた数に切片サンプリング割合(ssf=1/6)の逆数を乗じることにより、各表現型の細胞の総数を推定した。
樹状突起樹の測定
顆粒細胞層の内部、顆粒細胞下帯近傍でサンプリングしたDCX陽性顆粒細胞、並びにゴルジ染色した顆粒細胞及びCA1錐体ニューロンの樹状突起樹を、Image Pro Plus(Media Cybernetics、Silver Spring、MD 20910、USA)とインターフェースした、樹状突起再構成用にカスタム設計された専用ソフトウェア(Immagini Computer、Milan、イタリア)でトレースした。切片の深さに焦点を合わせることにより、樹状突起樹を100倍の最終倍率でライブトレースした。操作者は、細胞体から現れる分枝から開始し、最初の親分枝を描いた後、次の次数の全ての娘分枝に進む。トレースが終了すると、プログラムがトレース(図4)、個々の分枝の数及び長さ、各次数の平均分枝長さ及び総樹状突起長を再構成した。
顆粒細胞層の内部、顆粒細胞下帯近傍でサンプリングしたDCX陽性顆粒細胞、並びにゴルジ染色した顆粒細胞及びCA1錐体ニューロンの樹状突起樹を、Image Pro Plus(Media Cybernetics、Silver Spring、MD 20910、USA)とインターフェースした、樹状突起再構成用にカスタム設計された専用ソフトウェア(Immagini Computer、Milan、イタリア)でトレースした。切片の深さに焦点を合わせることにより、樹状突起樹を100倍の最終倍率でライブトレースした。操作者は、細胞体から現れる分枝から開始し、最初の親分枝を描いた後、次の次数の全ての娘分枝に進む。トレースが終了すると、プログラムがトレース(図4)、個々の分枝の数及び長さ、各次数の平均分枝長さ及び総樹状突起長を再構成した。
DGの分子層におけるシナプス密度
先述のとおり二重SYN及びPSD−95免疫組織化学を用いて歯状回(DG)の分子層の結合を評価した。DGの分子層における結合を評価するため、SYN及びPSD−95免疫反応性(IR)の強度を免疫組織化学染色切片の光学的デンシトメトリーによって決定した。AxioCam MRm(Zeiss、Oberkochen、ドイツ)デジタルカメラを備えたEclipse TE 2000−S顕微鏡(ニコン、東京、日本)を使用して蛍光像を取得した。Nis−Elementsソフトウェア3.21.03(Nikon)を用いて分子層の内側(I)、中央(M)及び外側(O)3分の1におけるSYN及びPSD−95のデンシトメトリー分析を実施した。各画像について、IRを含まなかった画像範囲内のピクセル強度の分布を分析することにより強度閾値を推定した。次にこの値を差し引いて各サンプリング範囲のIRを計算した。光学濃度(OD)は、DGの上部ブレードの分子層中の5つの異なる部位にランダムに設定した1600μm2の四角形の領域内で評価した。サンプリング領域のODはバックグラウンドによって補正した。
先述のとおり二重SYN及びPSD−95免疫組織化学を用いて歯状回(DG)の分子層の結合を評価した。DGの分子層における結合を評価するため、SYN及びPSD−95免疫反応性(IR)の強度を免疫組織化学染色切片の光学的デンシトメトリーによって決定した。AxioCam MRm(Zeiss、Oberkochen、ドイツ)デジタルカメラを備えたEclipse TE 2000−S顕微鏡(ニコン、東京、日本)を使用して蛍光像を取得した。Nis−Elementsソフトウェア3.21.03(Nikon)を用いて分子層の内側(I)、中央(M)及び外側(O)3分の1におけるSYN及びPSD−95のデンシトメトリー分析を実施した。各画像について、IRを含まなかった画像範囲内のピクセル強度の分布を分析することにより強度閾値を推定した。次にこの値を差し引いて各サンプリング範囲のIRを計算した。光学濃度(OD)は、DGの上部ブレードの分子層中の5つの異なる部位にランダムに設定した1600μm2の四角形の領域内で評価した。サンプリング領域のODはバックグラウンドによって補正した。
共焦点顕微鏡で取得したDGの分子層におけるシナプス密度(パンクタ)
歯状回の分子層の内部及び中央部に36μm2の四角形の領域を設定した。SYN又はPSD−95に関して免疫処理した画像を63倍対物レンズLeica TCS共焦点顕微鏡(Leica Microsystems、Wetzlar、ドイツ)で共焦点顕微鏡によって取得した。各切片において分子層の内部及び中央部から2つの画像をキャプチャし、四角形の領域内にある全てのパンクタをカウントすることにより、SYN又はPSD−95免疫反応性を呈する個々のパンクタの密度を評価した。
歯状回の分子層の内部及び中央部に36μm2の四角形の領域を設定した。SYN又はPSD−95に関して免疫処理した画像を63倍対物レンズLeica TCS共焦点顕微鏡(Leica Microsystems、Wetzlar、ドイツ)で共焦点顕微鏡によって取得した。各切片において分子層の内部及び中央部から2つの画像をキャプチャし、四角形の領域内にある全てのパンクタをカウントすることにより、SYN又はPSD−95免疫反応性を呈する個々のパンクタの密度を評価した。
スパイン密度/形態
ゴルジ染色切片において、顆粒細胞のスパインを100倍油浸対物レンズを用いてカウントした。分子層の内側半分及び外側半分にある樹状突起セグメント上の樹状突起スパインの数を手動でカウントすることにより樹状突起スパイン密度を測定し、樹状突起長20μm当たりの樹状突起スパインの数として表した。樹状突起スパイン長さは、突出の先端からそれが樹状突起の軸部に合流する点まで縦線を手動で描くことにより測定した。分子層の内側半分及び外側半分にある樹状突起セグメント上のスパイン群の数を手動でカウントし、樹状突起長20μm当たりのスパイン群の数として表した。樹状突起スパイン密度を異なるタイプの形状形態に分け、パーセンテージで表した。事実上、樹状突起スパインは、その成熟に基づき異なる形状形態を有し得る(図17)。異なるグループに属するスパインの数をカウントした。
ゴルジ染色切片において、顆粒細胞のスパインを100倍油浸対物レンズを用いてカウントした。分子層の内側半分及び外側半分にある樹状突起セグメント上の樹状突起スパインの数を手動でカウントすることにより樹状突起スパイン密度を測定し、樹状突起長20μm当たりの樹状突起スパインの数として表した。樹状突起スパイン長さは、突出の先端からそれが樹状突起の軸部に合流する点まで縦線を手動で描くことにより測定した。分子層の内側半分及び外側半分にある樹状突起セグメント上のスパイン群の数を手動でカウントし、樹状突起長20μm当たりのスパイン群の数として表した。樹状突起スパイン密度を異なるタイプの形状形態に分け、パーセンテージで表した。事実上、樹状突起スパインは、その成熟に基づき異なる形状形態を有し得る(図17)。異なるグループに属するスパインの数をカウントした。
ウエスタンブロッティング
実験群の一部の動物の脳を速やかに摘出し、海馬体を解剖して−80℃に保ち、全タンパク質を抽出してウエスタンブロッティング用に処理した。海馬抽出物の調製のため、RIPA緩衝液(トリス−HCl、50mM、NaCl 150mM、Triton X−100 1%、SDS、0.1%、デオキシコール酸ナトリウム0.5%、PMSF 1mM、1mM PMSFプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害薬カクテル1%(Sigma))中で組織をホモジナイズした。抽出物は直ちにウエスタンブロットによって処理するか、又はアッセイまで凍結保存した(−80℃)。試料タンパク質濃度をローリー法によって推定した。当量(50μg)のタンパク質を10%SDS−ポリアクリルアミドゲル(Mini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)ゲル(Bio−Rad))での電気泳動にかけ、Hybond ECLニトロセルロース膜(Amersham Life Science)に転写して、以下の抗体:抗GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)(1:5000、ウサギポリクローナル、Sigma−Aldrich);抗ホスホ−GSK3β−Ser9(P−GSK3β−Ser9)(1:1000、マウスmAb、Cell Signaling Technology)、抗GSK3β(1:1000、マウスmAb、Cell Signaling Technology)及び抗β−カテニン(1:1000;BD Transduction Laboratories)と共に4℃で一晩インキュベートした。Scion Imageソフトウェア(Scion Corporation、Frederick、MD、USA)でChemiDoc XRS+によるデジタル画像のデンシトメトリー分析を実施した。各バンドの強度は正規化した:P−GSK3β−Ser9レベルは全GSK3βレベルに対して正規化し、及びβ−カテニンレベルはGAPDHレベルに対して正規化した。
実験群の一部の動物の脳を速やかに摘出し、海馬体を解剖して−80℃に保ち、全タンパク質を抽出してウエスタンブロッティング用に処理した。海馬抽出物の調製のため、RIPA緩衝液(トリス−HCl、50mM、NaCl 150mM、Triton X−100 1%、SDS、0.1%、デオキシコール酸ナトリウム0.5%、PMSF 1mM、1mM PMSFプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害薬カクテル1%(Sigma))中で組織をホモジナイズした。抽出物は直ちにウエスタンブロットによって処理するか、又はアッセイまで凍結保存した(−80℃)。試料タンパク質濃度をローリー法によって推定した。当量(50μg)のタンパク質を10%SDS−ポリアクリルアミドゲル(Mini−PROTEAN(登録商標)TGX(商標)ゲル(Bio−Rad))での電気泳動にかけ、Hybond ECLニトロセルロース膜(Amersham Life Science)に転写して、以下の抗体:抗GAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ)(1:5000、ウサギポリクローナル、Sigma−Aldrich);抗ホスホ−GSK3β−Ser9(P−GSK3β−Ser9)(1:1000、マウスmAb、Cell Signaling Technology)、抗GSK3β(1:1000、マウスmAb、Cell Signaling Technology)及び抗β−カテニン(1:1000;BD Transduction Laboratories)と共に4℃で一晩インキュベートした。Scion Imageソフトウェア(Scion Corporation、Frederick、MD、USA)でChemiDoc XRS+によるデジタル画像のデンシトメトリー分析を実施した。各バンドの強度は正規化した:P−GSK3β−Ser9レベルは全GSK3βレベルに対して正規化し、及びβ−カテニンレベルはGAPDHレベルに対して正規化した。
行動試験
受動的回避(PA)。このPA試験のため、本発明者らは、スライディングドアによって2つの区画に仕切られた傾斜床の箱(47×18×26cm)及びショッカーを組み込んだ制御ユニット(Ugo Basile、イタリア)を使用した。パブロフ型条件付けのためのこの古典的装置は、マウスが光に照らされた所から暗い所に逃げようとする性質を利用する(ステップスルー法)。1日目、マウスを照明された区画に個々に置いた。60秒の馴化期間後、部屋間をつなぐドアを開けた。一般に、マウスは暗所を好むため、マウスは急いでゲートを通り抜け、暗室に入る。暗室に入ったところでマウスに短時間のフットショック(0.7mAで3秒間)を与え、15秒の待ち時間の後、部屋から取り出した。マウスが試行時間(358秒)にわたって明室に留まった場合、ドアを閉め、マウスを明室から取り出した。部屋は個々のマウスの試験間に70%エタノールで清浄にした。24時間の記憶保持期間の後、マウスを明室に戻し、マウスが再び暗室に入るまでにかかった時間(潜時)を最長358秒まで計測した。
受動的回避(PA)。このPA試験のため、本発明者らは、スライディングドアによって2つの区画に仕切られた傾斜床の箱(47×18×26cm)及びショッカーを組み込んだ制御ユニット(Ugo Basile、イタリア)を使用した。パブロフ型条件付けのためのこの古典的装置は、マウスが光に照らされた所から暗い所に逃げようとする性質を利用する(ステップスルー法)。1日目、マウスを照明された区画に個々に置いた。60秒の馴化期間後、部屋間をつなぐドアを開けた。一般に、マウスは暗所を好むため、マウスは急いでゲートを通り抜け、暗室に入る。暗室に入ったところでマウスに短時間のフットショック(0.7mAで3秒間)を与え、15秒の待ち時間の後、部屋から取り出した。マウスが試行時間(358秒)にわたって明室に留まった場合、ドアを閉め、マウスを明室から取り出した。部屋は個々のマウスの試験間に70%エタノールで清浄にした。24時間の記憶保持期間の後、マウスを明室に戻し、マウスが再び暗室に入るまでにかかった時間(潜時)を最長358秒まで計測した。
統計的分析
単一の動物のデータが分析の統一性を表した。結果は平均値±平均値の標準誤差(±SE)として提供する。統計的検定は、遺伝子型(Cdkl5+/Y;Cdkl5−/Y)及び処置(媒体又はNP−12)を固定因子とし、及びマウスを変量因子とした二元配置分散分析(ANOVA)を用いるか、又は一元配置ANOVAと、続くフィッシャーLSD事後検定又はダンカン検定を用いて実施した。P<0.05の確率水準を統計的に有意と見なした。
単一の動物のデータが分析の統一性を表した。結果は平均値±平均値の標準誤差(±SE)として提供する。統計的検定は、遺伝子型(Cdkl5+/Y;Cdkl5−/Y)及び処置(媒体又はNP−12)を固定因子とし、及びマウスを変量因子とした二元配置分散分析(ANOVA)を用いるか、又は一元配置ANOVAと、続くフィッシャーLSD事後検定又はダンカン検定を用いて実施した。P<0.05の確率水準を統計的に有意と見なした。
結果
チデグルシブ(NP−12)処置がCDKL5ノックアウトマウスの海馬ニューロンに及ぼす効果
GSK3βは、ニューロン成熟及び樹状突起発達を含めた幾つかの神経発達過程を調節する。最近になって、Cdkl5 KOマウスの神経前駆細胞におけるGSK3β活性の増加を伴うAKT/GSK3βシグナル伝達経路の破壊が観察された。GSK3β阻害がニューロン成熟に及ぼす効果を確かめるため、慢性NP−12処置がCdkl5 KOマウスの海馬ニューロン培養物に及ぼす効果を調べた。GSK3β活性はSer9のリン酸化によって阻害される。ウエスタンブロット分析によれば、Cdkl5 KOマウスの初代ニューロンがSer9におけるGSK3βのリン酸化レベルの有意な低下を示すことが観察され(図6A、図6B)、CDKL5の欠損がCdkl5 KO海馬培養物でもGSK3β活性に影響を及ぼすことが確認された。DIV2から開始してNP−12(1μm)で慢性処置すると、Cdkl5−/Yマウスの海馬培養物でGSK3β Ser9リン酸化が完全に回復する(図6A、図6B)。
チデグルシブ(NP−12)処置がCDKL5ノックアウトマウスの海馬ニューロンに及ぼす効果
GSK3βは、ニューロン成熟及び樹状突起発達を含めた幾つかの神経発達過程を調節する。最近になって、Cdkl5 KOマウスの神経前駆細胞におけるGSK3β活性の増加を伴うAKT/GSK3βシグナル伝達経路の破壊が観察された。GSK3β阻害がニューロン成熟に及ぼす効果を確かめるため、慢性NP−12処置がCdkl5 KOマウスの海馬ニューロン培養物に及ぼす効果を調べた。GSK3β活性はSer9のリン酸化によって阻害される。ウエスタンブロット分析によれば、Cdkl5 KOマウスの初代ニューロンがSer9におけるGSK3βのリン酸化レベルの有意な低下を示すことが観察され(図6A、図6B)、CDKL5の欠損がCdkl5 KO海馬培養物でもGSK3β活性に影響を及ぼすことが確認された。DIV2から開始してNP−12(1μm)で慢性処置すると、Cdkl5−/Yマウスの海馬培養物でGSK3β Ser9リン酸化が完全に回復する(図6A、図6B)。
次に、Cdkl5 KOマウスの海馬初代ニューロンが、インビトロ及びインビボの両方で神経前駆細胞において観察されるとおりの同様の発達不全を示すかどうかを確かめた。Cdkl5の欠損はDIV10における分極ニューロンの有意な減少を誘導することが観察された(図6C、図6E)。加えて軸索及び樹状突起伸張もまたCdkl5変異マウスの海馬培養物では障害され、CDKL5が適切な軸索の特異化及び伸張並びに樹状突起成熟に関与することが示唆される(図6D、図6E)。図6C及び図6Dに示されるとおり、GSK3βの阻害は効率的に分極ニューロンのパーセンテージを改善し(図6C)、正しい軸索及び樹状突起成熟に正の効果を及ぼした(図6D)。まとめると、これらの結果は、Cdkl5 KO海馬ニューロンにおける異常な分極表現型がGSK3βの活性過剰によって媒介されることを示唆している。更に、データは、NP−12によるGSK3β活性の復活が、これらの神経発達不全を完全に回復させ得ることを示唆している。
インビトロ実験を行うことにより、チデグルシブ(NP−12)がCdkl5 +/Y、Cdkl5 −/Yマウスから発達させた海馬ニューロン培養物に及ぼす効果を評価した。培養物を発達させるため、生後1日目で海馬ニューロン細胞を回収し(これを第0分裂(DIV0)と見なした)、実験の残りにわたってインビトロで培養した。第7分裂(DIV7)にNP−12処置を開始し、第12分裂(DIV12)まで継続した。実験プロトコルは図15に示す。NP−12処置はD7に開始した。NP−12は1日おきに1μMの終濃度で培養物に加えた。結果は平均値±SDとして提示する。データはANOVA後ダンカン検定で分析した。p<0.05の確率水準を統計的に有意と見なした。* P,0.05、** P<0.01、*** p<0.001、対未処置野生型(Cdkl5 +/Y)条件;# p<0.05、## p<0.01、### p<0.001、対未処置Cdkl5 KO(−/Y)試料。Cdkl5 KO海馬ニューロン(ippocampal neuron)における樹状突起の形態学的変化は、これらのニューロンにおけるシナプトフィジン(SYN)パンクタの数の減少と関連付けられた(図16A〜図16B)。Cdkl5 KO海馬ニューロン(ippocampal neuron)におけるSynパンクタの数はNP−12処置によって完全に回復した(図16A〜図16B)。
インビボでチデグルシブ(NP−12)処置がGSK3β活性に及ぼす効果
幼若野生型(Cdkl5+/Y)及びCdkl5−/Y雄マウスをGSK3β阻害薬NP−12又は媒体で25日間処置した(図2を参照)。NP−12処置がGSK3β Ser9のリン酸化状態に及ぼす効果を評価するため、NP−12処置Cdkl5 KO雄マウスの海馬抽出物に関してウエスタンブロット分析を実施した。Cdkl5−/Yマウスの海馬では、そのWT同腹仔(Cdkl5+/Y)と比較してSer9におけるGSK3βのリン酸化が減少した(図7A、図7B)。予想どおり、NP−12処置によってCdkl5−/YマウスのSer9リン酸化GSK3βレベルが増加し、これは未処置Cdkl5+/Y対応物よりも高くなるほどであった(図7A、図7B)。NP−12処置は全GSK3βレベルには影響を及ぼさなかった(図7B、データは図示せず)。GSK3βが幅広い基質を通じて広域の神経発達イベントを調節することは周知である。これらの標的の中でも特に、GSK3βは、β−カテニンタンパク質の安定性を負に調節することによりβ−カテニンの量を制御する。NP−12によって誘導されるGSK3βリン酸化の回復と一致して、Cdkl5−/Yマウスにおいてβ−カテニンレベルの完全な回復(図7C)が観察された。
幼若野生型(Cdkl5+/Y)及びCdkl5−/Y雄マウスをGSK3β阻害薬NP−12又は媒体で25日間処置した(図2を参照)。NP−12処置がGSK3β Ser9のリン酸化状態に及ぼす効果を評価するため、NP−12処置Cdkl5 KO雄マウスの海馬抽出物に関してウエスタンブロット分析を実施した。Cdkl5−/Yマウスの海馬では、そのWT同腹仔(Cdkl5+/Y)と比較してSer9におけるGSK3βのリン酸化が減少した(図7A、図7B)。予想どおり、NP−12処置によってCdkl5−/YマウスのSer9リン酸化GSK3βレベルが増加し、これは未処置Cdkl5+/Y対応物よりも高くなるほどであった(図7A、図7B)。NP−12処置は全GSK3βレベルには影響を及ぼさなかった(図7B、データは図示せず)。GSK3βが幅広い基質を通じて広域の神経発達イベントを調節することは周知である。これらの標的の中でも特に、GSK3βは、β−カテニンタンパク質の安定性を負に調節することによりβ−カテニンの量を制御する。NP−12によって誘導されるGSK3βリン酸化の回復と一致して、Cdkl5−/Yマウスにおいてβ−カテニンレベルの完全な回復(図7C)が観察された。
チデグルシブ(NP−12)処置がニューロンの生存に及ぼす効果
分裂終了ニューロンの生存はCdkl5−/Yマウスにおいて重度に障害される。Cdkl5変異マウスは、神経前駆細胞の高い増殖速度と、同時に起こるアポトーシス細胞死(cell dea)の増加を示す。ニューロンの生存に対するNP−12処置の有効性を評価するため、処置済みCdkl5−/Yマウスの歯状回において切断型カスパーゼ−3を発現するアポトーシス細胞の数をカウントした。Cdkl5 KO雄マウスにおける細胞死の増加がNP−12処置によって完全に回復したことが観察され(図20A)、Cdkl5 KOマウスにおいてGSK3βシグナル伝達の回復が細胞生存に正の影響を及ぼすことが示唆された。
分裂終了ニューロンの生存はCdkl5−/Yマウスにおいて重度に障害される。Cdkl5変異マウスは、神経前駆細胞の高い増殖速度と、同時に起こるアポトーシス細胞死(cell dea)の増加を示す。ニューロンの生存に対するNP−12処置の有効性を評価するため、処置済みCdkl5−/Yマウスの歯状回において切断型カスパーゼ−3を発現するアポトーシス細胞の数をカウントした。Cdkl5 KO雄マウスにおける細胞死の増加がNP−12処置によって完全に回復したことが観察され(図20A)、Cdkl5 KOマウスにおいてGSK3βシグナル伝達の回復が細胞生存に正の影響を及ぼすことが示唆された。
出生後の海馬神経発生過程で、歯状回(DG)の顆粒細胞下帯(SGZ)内の新生細胞は幹細胞ステージ(1型)から中間前駆細胞ステージ(2/3型)へと増殖活性に関連する一連のステージを経て有糸分裂後成熟に至る。DCXは、2b型及び3型中間前駆細胞(図8C)、並びに未成熟顆粒ニューロン(図8C:赤色のアスタリスク)が発現するタンパク質である。これらの細胞型は異なる向きであるため(未成熟ニューロンは長い尖端突起と垂直の向きを示す)、それらを別個にカウントすることが可能である。Cdkl5機能喪失は、特に未成熟DCX陽性ニューロンの生存に影響を及ぼす。NP−12処置によって新生ニューロンの生存率が回復するかどうかを確かめるため、処置済み及び未処置マウスの歯状回におけるDCX陽性未成熟ニューロンの数を評価した。本発明者らは、処置済みCdkl5−/YマウスがDCX陽性ニューロン数の増加を起こし、未処置Cdkl5+/Y同腹仔と同程度になったことを見出した(図20B、図20C)。
まとめると、これらの結果は、NP−12による処置によってCdkl5−/Yマウスの分裂終了顆粒細胞の生存率が回復することを示している。
チデグルシブ(NP−12)が歯状回の正味顆粒細胞数に及ぼす効果
処置後のCdkl5変異マウスのDGにおける新生顆粒細胞の生存率の増加(図8A、図8C)がまた総顆粒細胞数の回復にもつながったかどうかを確かめるため、本発明者らは処置終了時に顆粒細胞数を評価した。Cdkl5−/Yの顆粒細胞層はCdkl5+/Yマウスと同様の体積であったが、顆粒細胞密度が減少し、及び顆粒細胞数が減少していた(図9A、図9C)。Cdkl5−/Yマウスでは、NP−12による処置によって顆粒細胞密度(図9A)及び総顆粒細胞数(図9C)の両方が完全に回復し、顆粒細胞層の体積に影響が及ぶことはなかった(図9B)。
処置後のCdkl5変異マウスのDGにおける新生顆粒細胞の生存率の増加(図8A、図8C)がまた総顆粒細胞数の回復にもつながったかどうかを確かめるため、本発明者らは処置終了時に顆粒細胞数を評価した。Cdkl5−/Yの顆粒細胞層はCdkl5+/Yマウスと同様の体積であったが、顆粒細胞密度が減少し、及び顆粒細胞数が減少していた(図9A、図9C)。Cdkl5−/Yマウスでは、NP−12による処置によって顆粒細胞密度(図9A)及び総顆粒細胞数(図9C)の両方が完全に回復し、顆粒細胞層の体積に影響が及ぶことはなかった(図9B)。
チデグルシブ(NP−12)処置が樹状突起発達に及ぼす効果
Cdkl5の欠損はニューロン成熟及び樹状突起発達に負の影響を及ぼす。NP−12処置がニューロン成熟に及ぼす効果を評価するため、処置済み及び未処置Cdkl5 KOマウスからのダブルコルチンDCX免疫染色切片において顆粒ニューロンの樹状突起形態を調べた。未処置Cdkl5−/Yマウスでは、WT同腹仔と比較して樹状突起樹の長さが減少し、分枝が少なかった(図10A)。この樹状突起発育不全は、高次の分枝の長さ及び数の減少に起因する(図10B)。NP−12処置済みCdkl5−/Yマウスでは両方のパラメータの増加があり、未処置Cdkl5+/Yマウスと同程度か、又は更にはそれより高くさえなった(図10A、図10B)。このエビデンスは、Cdkl5−/YマウスにおいてNP−12による処置が新生ニューロンの樹状突起発達に正の影響を及ぼすことを示している。NP−12処置の効果が古い顆粒細胞の樹状突起発達にも及ぶことを確かめるため、本発明者らは、顆粒細胞層の中央部分に位置するゴルジ染色した顆粒ニューロンを評価した。Cdkl5−/Yマウスは、そのWT対応物と比較して樹状突起長が短く、セグメント数が減少していた(図11A、図11B)。NP−12処置によって両方のパラメータが完全にレスキューされた(図11A、図11B)。まとめると、これらの結果は、NP−12処置がCdkl5変異マウスのニューロン成熟に対し、新生顆粒細胞及び古い顆粒細胞の樹状構造を回復させることによって正の効果を及ぼすことを明確に示している。
Cdkl5の欠損はニューロン成熟及び樹状突起発達に負の影響を及ぼす。NP−12処置がニューロン成熟に及ぼす効果を評価するため、処置済み及び未処置Cdkl5 KOマウスからのダブルコルチンDCX免疫染色切片において顆粒ニューロンの樹状突起形態を調べた。未処置Cdkl5−/Yマウスでは、WT同腹仔と比較して樹状突起樹の長さが減少し、分枝が少なかった(図10A)。この樹状突起発育不全は、高次の分枝の長さ及び数の減少に起因する(図10B)。NP−12処置済みCdkl5−/Yマウスでは両方のパラメータの増加があり、未処置Cdkl5+/Yマウスと同程度か、又は更にはそれより高くさえなった(図10A、図10B)。このエビデンスは、Cdkl5−/YマウスにおいてNP−12による処置が新生ニューロンの樹状突起発達に正の影響を及ぼすことを示している。NP−12処置の効果が古い顆粒細胞の樹状突起発達にも及ぶことを確かめるため、本発明者らは、顆粒細胞層の中央部分に位置するゴルジ染色した顆粒ニューロンを評価した。Cdkl5−/Yマウスは、そのWT対応物と比較して樹状突起長が短く、セグメント数が減少していた(図11A、図11B)。NP−12処置によって両方のパラメータが完全にレスキューされた(図11A、図11B)。まとめると、これらの結果は、NP−12処置がCdkl5変異マウスのニューロン成熟に対し、新生顆粒細胞及び古い顆粒細胞の樹状構造を回復させることによって正の効果を及ぼすことを明確に示している。
チデグルシブ(tidegluisb)処置がスパイン成熟に及ぼす効果
ニューロンは樹状突起スパインを通じてその興奮性入力を受け取る。RTT対象、並びにMecp2 KOマウスにおけるエビデンスは、RTT病変でスパインの密度及び形態が障害されることを示している。しかしながら、CDKL5突然変異を保因する対象の脳に同様の欠陥が存在するかどうかは不明である。最近になって、Cdkl5がサイレンシングされたげっ歯類ニューロン、CDKL5突然変異を有する患者からのiPSC由来ニューロン、並びにCdkl5 KOマウスからの顆粒細胞が、樹状突起スパインに欠陥を呈することが示されている。Cdkl5変異マウスにおいてNP−12処置がスパインに及ぼす効果を評価するため、ゴルジ染色した顆粒ニューロンの樹状突起スパイン密度及び形態/成熟を調べた。Cdkl5−/YマウスはWT同腹仔と比較してスパイン密度に差異を示さなかった(図12A)。NP−12による処置はスパイン密度に何ら効果を及ぼさなかった(図12A)。
ニューロンは樹状突起スパインを通じてその興奮性入力を受け取る。RTT対象、並びにMecp2 KOマウスにおけるエビデンスは、RTT病変でスパインの密度及び形態が障害されることを示している。しかしながら、CDKL5突然変異を保因する対象の脳に同様の欠陥が存在するかどうかは不明である。最近になって、Cdkl5がサイレンシングされたげっ歯類ニューロン、CDKL5突然変異を有する患者からのiPSC由来ニューロン、並びにCdkl5 KOマウスからの顆粒細胞が、樹状突起スパインに欠陥を呈することが示されている。Cdkl5変異マウスにおいてNP−12処置がスパインに及ぼす効果を評価するため、ゴルジ染色した顆粒ニューロンの樹状突起スパイン密度及び形態/成熟を調べた。Cdkl5−/YマウスはWT同腹仔と比較してスパイン密度に差異を示さなかった(図12A)。NP−12による処置はスパイン密度に何ら効果を及ぼさなかった(図12A)。
Cdkl5−/Yマウス顆粒ニューロンは、対照と比較したとき著しく細い、且つ糸状仮足様の形態を呈する樹状突起スパインの突出を示し、CDKL5が正しい樹状突起スパイン形態形成に関与することが示唆される。Della Sala及び共同研究者によっても同様の結果が得られた。彼らはインビボ二光子イメージングを用いることにより、Cdkl5 KOマウスでは樹状突起スパインが構造的柔軟性の障害を呈することを見出した。NP−12処置がスパイン成熟に及ぼす効果を評価するため、処置終了時のゴルジ染色した顆粒細胞におけるスパイン形態を評価した。Cdkl5 KOマウスは、そのWT同腹仔と比較して高い割合の未成熟スパイン(細長+糸状仮足+切り株、図12B:赤色のアスタリスク)を示し(図12B)、対応して成熟スパイン(きのこ+カップ、図12B:青色のアスタリスク)の数が減少している。スパイン形状形態の違いはGSK3β阻害薬NP−12による処置によって完全に回復したことから、GS3β阻害が樹状突起スパイン成熟にも正の効果を及ぼしたことが示唆される。
チデグルシブ(NP−12)処置が海馬結合性に及ぼす効果
結合性の低下は、Cdkl5−/Yマウスを特徴付ける重度樹状突起発育不全と対を成すものである。樹状突起スパイン構造はシナプス連結維持の基礎であるため、本発明者らは、処置済み及び未処置マウスからの海馬切片において、シナプス前終末の特異的マーカーであるシナプス小胞の内在性膜糖タンパク質、シナプトフィジン(SYN、p38としても知られる)、及びシナプス後部のマーカー、シナプス後密度タンパク質95(PSD−95)に関する免疫反応性を評価した。未処置Cdkl5−/Yマウスでは、SYNの光学濃度(OD)(図13A)は対照同腹仔と比べて有意に低かった。SYN免疫反応性の低下と並行して、Cdkl5変異マウスでは、PSD−95に関する免疫反応性の低下があった(図13B)。NP−12で処置したCdkl5−/Yマウスでは、これらの欠陥が完全にレスキューされ(図13A、図13B)、NP−12処置による樹状突起発達への正の影響が顆粒への入力の回復と並行して起こることが示唆された。観察された免疫反応性の差の原因がシナプス当たりのシナプスタンパク質レベルの差又はシナプス数の差にあるかどうかを確かめるため、SYN又はPSD−95のいずれかの免疫反応性を呈する個々のパンクタの密度を更に評価した。未処置Cdkl5−/YマウスはSYN及びPSD−95パンクタが少なかったが(図13C、図13F)、NP−12処置動物では、両方の免疫パンクタの密度が完全に回復し(図13C、図13F)、NP−12による処置がCdkl5 KOマウスの海馬シナプス発達を回復させたことが示唆された。
結合性の低下は、Cdkl5−/Yマウスを特徴付ける重度樹状突起発育不全と対を成すものである。樹状突起スパイン構造はシナプス連結維持の基礎であるため、本発明者らは、処置済み及び未処置マウスからの海馬切片において、シナプス前終末の特異的マーカーであるシナプス小胞の内在性膜糖タンパク質、シナプトフィジン(SYN、p38としても知られる)、及びシナプス後部のマーカー、シナプス後密度タンパク質95(PSD−95)に関する免疫反応性を評価した。未処置Cdkl5−/Yマウスでは、SYNの光学濃度(OD)(図13A)は対照同腹仔と比べて有意に低かった。SYN免疫反応性の低下と並行して、Cdkl5変異マウスでは、PSD−95に関する免疫反応性の低下があった(図13B)。NP−12で処置したCdkl5−/Yマウスでは、これらの欠陥が完全にレスキューされ(図13A、図13B)、NP−12処置による樹状突起発達への正の影響が顆粒への入力の回復と並行して起こることが示唆された。観察された免疫反応性の差の原因がシナプス当たりのシナプスタンパク質レベルの差又はシナプス数の差にあるかどうかを確かめるため、SYN又はPSD−95のいずれかの免疫反応性を呈する個々のパンクタの密度を更に評価した。未処置Cdkl5−/YマウスはSYN及びPSD−95パンクタが少なかったが(図13C、図13F)、NP−12処置動物では、両方の免疫パンクタの密度が完全に回復し(図13C、図13F)、NP−12による処置がCdkl5 KOマウスの海馬シナプス発達を回復させたことが示唆された。
チデグルシブ(NP−12)処置が海馬依存性記憶に及ぼす効果
Cdkl5は海馬依存性記憶を障害する。マウスにおいてNP−12による処置が海馬依存性記憶障害を改善し得るかどうかを確かめるため、処置終了時にマウスを受動的回避(PA)試験に供した。受動的回避課題は広く用いられている恐怖増悪試験であり、これにより中枢神経系障害のげっ歯類モデルで記憶能力を評価することが可能になる。この試験では、動物が単回の嫌悪刺激(フットショックなど)で条件付けされ、後にその経験を思い出すか試験される。図14A及び図14Bは、1日目及び2日目(試験)に暗室に入るまでの潜時時間を報告する。1日目、全ての群が同程度のステップスルー潜時を示した(図14A)。24時間後(2日目)、動物を再び試験装置に置き、その記憶を試験した。未処置Cdkl5−/Yマウスは、Cdkl5+/Yマウスとの比較で暗室に入るまでの潜時の減少によって示されるとおり、この課題において重度に障害された(図14B)。NP−12処置済みCdkl5−/Yマウスでは潜時の増加が起こり、未処置Cdkl5+/Yマウスと比較して有意な差はなかった(図14B)。PA試験による記憶能力の評価は、処置済みCdkl5−/Yマウスがなおも未処置Cdkl5+/Yマウスと同様の記憶能力を呈することを示し(図14B)、NP−12処置がCdkl5変異マウスの記憶欠損にも正の効果を及ぼすことが示唆される。
Cdkl5は海馬依存性記憶を障害する。マウスにおいてNP−12による処置が海馬依存性記憶障害を改善し得るかどうかを確かめるため、処置終了時にマウスを受動的回避(PA)試験に供した。受動的回避課題は広く用いられている恐怖増悪試験であり、これにより中枢神経系障害のげっ歯類モデルで記憶能力を評価することが可能になる。この試験では、動物が単回の嫌悪刺激(フットショックなど)で条件付けされ、後にその経験を思い出すか試験される。図14A及び図14Bは、1日目及び2日目(試験)に暗室に入るまでの潜時時間を報告する。1日目、全ての群が同程度のステップスルー潜時を示した(図14A)。24時間後(2日目)、動物を再び試験装置に置き、その記憶を試験した。未処置Cdkl5−/Yマウスは、Cdkl5+/Yマウスとの比較で暗室に入るまでの潜時の減少によって示されるとおり、この課題において重度に障害された(図14B)。NP−12処置済みCdkl5−/Yマウスでは潜時の増加が起こり、未処置Cdkl5+/Yマウスと比較して有意な差はなかった(図14B)。PA試験による記憶能力の評価は、処置済みCdkl5−/Yマウスがなおも未処置Cdkl5+/Yマウスと同様の記憶能力を呈することを示し(図14B)、NP−12処置がCdkl5変異マウスの記憶欠損にも正の効果を及ぼすことが示唆される。
実施例2
GSK3β活性及びNP−12処置に対する年齢の効果を調べた。種々の年齢の野生型(+/Y)及びCDKL5 KO(−/Y)雄マウスにおいてリン酸化(不活性)及び非リン酸化(活性)GSK3βを調べた。結果は図17A〜図17Cに示す。次に種々の年齢の野生型(+/Y)及びCDKL5 KO(−/Y)雄マウスにおいてNP−12の効果を調べた。実験プロトコルは図18A〜図18Bに示す。種々の年齢の未処置及び処置済み野生型及びCDKL5雄マウスにおいて空間学習をモーリス水迷路で評価した。結果は図19A〜図19C及び図20に示す。
GSK3β活性及びNP−12処置に対する年齢の効果を調べた。種々の年齢の野生型(+/Y)及びCDKL5 KO(−/Y)雄マウスにおいてリン酸化(不活性)及び非リン酸化(活性)GSK3βを調べた。結果は図17A〜図17Cに示す。次に種々の年齢の野生型(+/Y)及びCDKL5 KO(−/Y)雄マウスにおいてNP−12の効果を調べた。実験プロトコルは図18A〜図18Bに示す。種々の年齢の未処置及び処置済み野生型及びCDKL5雄マウスにおいて空間学習をモーリス水迷路で評価した。結果は図19A〜図19C及び図20に示す。
実施例3
GSK3β活性及びNP−12試験に対する年齢の効果を調べた。種々の年齢の野生型(+/Y)及びCDKL5 KO(−/Y)雄マウスにおいてリン酸化(不活性)及び非リン酸化(活性)GSK3βを調べた。結果は図21A〜図21Bに示す。次に種々の年齢の野生型(+/Y)及びCDKL5 KO(−/Y)雄マウスにおいてNP−12の効果を調べた。実験プロトコルは図22A〜図22Bに示す。
GSK3β活性及びNP−12試験に対する年齢の効果を調べた。種々の年齢の野生型(+/Y)及びCDKL5 KO(−/Y)雄マウスにおいてリン酸化(不活性)及び非リン酸化(活性)GSK3βを調べた。結果は図21A〜図21Bに示す。次に種々の年齢の野生型(+/Y)及びCDKL5 KO(−/Y)雄マウスにおいてNP−12の効果を調べた。実験プロトコルは図22A〜図22Bに示す。
GSK3β及びその下流標的の図を図23Aに示す。NP−12による処置がGSK3β依存性標的に及ぼす効果を評価した。結果は図23B〜図23Cに示す。図23B〜図23Cから分かるとおり、NP−12による処置は、幼若だが成体ではないCDKL5 KOマウスのGSK3β依存性標的を回復させる。
NP−12による処置が海馬依存性学習及び記憶に及ぼす効果を評価した。結果は図24A〜図24Cに示す。図24B〜図24Cから分かるとおり、NP−12による処置は、幼若だが成体ではないCDKL5 KOマウスの海馬依存性行動障害を修正する。
NP−12による処置がニューロンの生存及び成熟に及ぼす効果を評価した。結果は図25A〜図24B及び図26A〜図26Cに示す。図25A〜図25B及び図26A〜図26Cから分かるとおり、NP−12による処置は、幼若だが成体ではないCDKL5 KOマウスのニューロンの生存及び成熟を回復させる。
NP−12による処置がシナプス発達に及ぼす効果を評価した。結果は図27A〜図27Cに示す。図27A〜図27Cから分かるとおり、NP−12による処置は、幼若CDKL5 KOマウスのシナプス発達を回復させる。
Claims (18)
- CDKL5欠損の治療を、それを必要としている対象において行う方法であって、
ある量のチデグルシブ又はその誘導体をそれを必要としている前記対象に投与すること
を含む方法。 - 前記量が、未治療の対照対象又は集団と比較したときGSK3β活性を低下させるのに有効な量である、請求項1に記載の方法。
- 前記量が、未治療の対照対象又は集団と比較したとき新生顆粒細胞の樹状突起長を増加させるのに有効な量である、請求項1又は2に記載の方法。
- 前記量が、未治療の対照対象又は集団と比較したとき神経細胞の樹状突起分枝数を増加させるのに有効な量である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記量が、未治療の対照対象又は集団と比較したとき顆粒細胞結合性を増加させるのに有効な量である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記量が、前記CDKL5欠損の少なくとも1つの症状を低減するのに有効な量である、請求項1に記載の方法。
- 前記対象が若年である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 前記量が約2mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 前記量が、未治療の対照対象又は集団と比較したときGSK3β活性を低下させるのに有効な最小量である、請求項1に記載の方法。
- 前記量が、未治療の対照対象又は集団と比較したとき新生顆粒細胞の樹状突起長を増加させるのに有効な最小量である、請求項1又は9に記載の方法。
- 前記量が、未治療の対照対象又は集団と比較したとき神経細胞の樹状突起分枝数を増加させるのに有効な最小量である、請求項1又は9〜10のいずれか一項に記載の方法。
- 前記量が、未治療の対照対象又は集団と比較したとき顆粒細胞結合性を増加させるのに有効な最小量である、請求項1又は9〜11のいずれか一項に記載の方法。
- 前記量が、CDKL5欠損の少なくとも1つの症状を低減するのに有効な最小量である、請求項1又は9〜12のいずれか一項に記載の方法。
- 前記最小有効量が約2mg/kg体重〜約50mg/kg体重の範囲である、請求項9〜13のいずれか一項に記載の方法。
- 前記量が経口的に、静脈内に、皮下に、脳室内に、又は筋肉内に送達される、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 前記チデグルシブ又はその誘導体が医薬製剤中に含まれる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記チデグルシブ又はその誘導体が、逐次投与される少なくとも2つの投薬量で投与される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
- 前記チデグルシブ又はその誘導体が1日おきに投与される、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
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