(本開示の一形態を得るに至った経緯)
内視鏡を用いた手術では、蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG:Indocyamine Green)を体内に投与し、過剰に集積した腫瘍等の部位(患部)に近赤外光を当てて患部を光らせ、患部を含む部位を撮像することがある。ICGは、近赤外光(例えばピーク波長805nm、750〜810nm)で励起すると、より長波長の近赤外光(例えばピーク波長835nm)で蛍光発光する物質である。
イメージセンサが1個である単板式カメラが、IR成分を含む光を受光して患部の画像を取得する場合、イメージセンサの入射面に4分割されたR(赤色)成分,G(緑色)成分,B(青色)成分、及びIR成分用のフィルタを設ける。そのため、所望の色再現性及び解像度を得ようとすると、イメージセンサのサイズが大きくなる。このため、内視鏡に単板式カメラを適用することは困難である。
また、特許文献1に記載の内視鏡システムに示されるように、3色分解プリズムを用いた3板式カメラが、IR成分を含む光を受光して患部の画像を取得する場合、図13に示すように、IR成分(例えば800nm以上の波長を有する光)の信号強度が小さい。
図13は比較例における3板式カメラの分光感度を示すグラフである。図13では、縦軸は分光感度を表し、横軸は波長を表す。この分光感度は、R成分,G成分,B成分用の各プリズムへの入射光の光量と、各プリズムに対応する撮像素子により検出された光量と、の比率に相当する。h11は、R成分の光の分光感度を示す。h12は、G成分の光の分光感度を示す。h13は、B成分の光の分光感度を示す。尚、h11は、IR成分の光の分光感度も含んでいる。
図13に示すように、R成分(波形h11参照)の光を受光するイメージセンサによりIR成分の光が取得され得る。図13では、IR成分(例えば波長800nm以上の成分)の分光感度は、R成分,G成分,B成分の光の分光感度と比較すると、低い。IR成分の信号強度が小さいと、IR成分により得られる画像(IR画像)は不鮮明となるため、IR成分の信号強度を大きくし、IR成分により得られる画像(IR画像)をより鮮明とすることが好ましい。
一方、特許文献1の内視鏡システムがIR成分の信号強度を大きくするためにIR成分を増幅すると、画像がぼけたりノイズが強調されたりする。そのため、IR画像の画質が低下する。従って、増幅されたIR成分により得られた画像では、IR成分を含む所望の部位(患部)を目視することが困難である。
尚、3板式カメラを用いる場合、3色分解プリズムでは、通常、光が入射する対物側のプリズムとして、青色分解プリズムが配置される(参考特許文献1〜3参照)。これは、青色成分が赤色成分及び緑色成分よりも短波長であり、短波長である程、偏光の影響を受け難いことに起因する。
参考特許文献1:国際公開第2009/117483号
参考特許文献2:特開平09−011445号公報
参考特許文献3:特開平07−281012号公報
また、内視鏡において4色分解プリズムを配置する場合、内視鏡では4色分解プリズムの配置スペースが限られているので、各色用のプリズムの配置方法(プリズムの配置向き、プリズムに係る角度、等)を工夫することが好ましい。
以下、赤外光成分を加味した画質を向上できる内視鏡及び内視鏡システムについて説明する。
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。尚、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであり、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、内視鏡のカメラヘッドに、4色分解プリズム及び4つのイメージセンサを用いた4板式カメラを示す。4色分解プリズムは、リレーレンズで収束された光を、R光(R成分)、G光(G成分)、B光(B成分)、の3原色光及びIR光(IR成分)に分解する。IR成分は、例えば、750nm〜900nmの波長帯域の少なくとも一部を含む。
[内視鏡の構成]
図1は、第1の実施形態における内視鏡10の外観を示す模式図である。図2は内視鏡10の概略構成を示す模式図である。内視鏡10は、使用者が片手で取扱い可能な医療器具である。内視鏡10は、例えば、スコープ11、マウントアダプタ12、リレーレンズ13、カメラヘッド14、操作スイッチ19及び光源コネクタ18を含んで構成される。
スコープ11は、体内に挿入される、例えば硬性内視鏡の主要部であり、末端から先端まで光を導くことが可能な細長い導光部材である。スコープ11は、先端に撮像窓11zを有し、撮像窓11zから入射した光学像が伝送される光ファイバと、光源コネクタ18から導入された光Lを先端まで導く光ファイバと、を有する。撮像窓11zには、光学ガラスや光学プラスチック等の光学材料が用いられる。
マウントアダプタ12は、スコープ11をカメラヘッド14に取り付けるための部材である。マウントアダプタ12には、種々のスコープ11が着脱自在に装着可能である。
光源コネクタ18は、光源装置(不図示)から、体内の部位(患部等)を照明するための照明光を導入する。この照明光は、可視光及びIR光を含む。光源コネクタ18に導入された光は、スコープ11を通ってスコープ11の先端まで導かれ、撮像窓11zから体内の部位(患部等)に照射される。光源は、例えば、LED光源である。尚、光源は、LED光源の代わりに、キセノンランプやハロゲンランプ等の光源でもよい。
光源コネクタ18は、スコープ11と光源コネクタ18との接続部を介して、スコープ11に取り付けられる。この接続部には、内部に図示しないミラーが設けられる。光源コネクタ18からの光は、ミラーで反射してスコープ11の先端側へ進行し、患部を照射する。
リレーレンズ13は、スコープ11を通して伝達される光学像を撮像面に収束させる。リレーレンズ13は、1つ以上のレンズを有する。リレーレンズ13は、操作スイッチ19の操作量に応じて、レンズを移動させて焦点調整及び倍率調整を行ってもよい。
カメラヘッド14は、使用時(例えば手術時)に使用者(例えば医者又は助手)が手で把持可能な筐体を有し、4色分解プリズム20(図5,図6参照)、4個のイメージセンサ230,231,232,233(図5,図6参照)、及び電子基板250を内部に有する(図10参照)。
4色分解プリズム20は、リレーレンズ13で収束された光を、R光(R成分)、G光(G成分)、B光(B成分)、の3原色光及びIR光(IR成分)に分解する4板式のプリズムである。4色分解プリズム20は、ガラス等の透光性部材で構成される。
イメージセンサ230〜233は、4色分解プリズム20で分解され、各々の撮像面に結像した光学像を画像信号(電気信号)に変換する。
イメージセンサ230〜233には、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサが用いられる。
4個のイメージセンサ230〜233は、IR成分、B成分、R成分、及びG成分の光をそれぞれ受光する専用のセンサである。そのため、1個のイメージセンサでIR成分、R成分、G成分、及びB成分の光を受光する単板式カメラと異なり、個々のイメージセンサとしてサイズの小さいイメージセンサを採用できる。例えば、(1/2.86)インチのサイズのイメージセンサが用いられる。
電子基板250(単に基板ともいう)(図10参照)には、例えば、LVDS(Low
Volt Digital Signal)方式で信号を出力する信号出力回路と、タイミングジェネレータ(TG:Timing Generator)の回路(TG回路)と、を含む回路が搭載される。
信号出力回路は、各イメージセンサ230〜233で撮像された画像のRGB信号及びIR信号を、LVDS(Low Volt Digital Signal)方式でパルス信号として出力する。TG回路は、カメラヘッド14内の各部にタイミング信号(同期信号)等を供給する。尚、RGB信号は、R成分、G成分、及びB成分の少なくとも1つを含む信号である。また、RGB信号に限らず、他のカラー画像信号(例えばHSV、YUV、YcCbCr、YPbPr)が出力されてもよい。
カメラヘッド14には、後述するCCU(Camera Control Unit)30に対して画像信号を伝送するための信号ケーブル14zが装着される。
図3は、結合されたカメラヘッド14とリレーレンズ13を示す図である。カメラヘッド14に内蔵された4色分解プリズム20の端面は、リレーレンズ13のフランジ面13vと対向するように配置される。
リレーレンズ13は、マウントアダプタ12に取り付けられたスコープ11を通って入射する被写体からの光をカメラヘッド14内部のイメージセンサ230〜233に結像させる。
リレーレンズ13は、フォーカスリング13y及び鏡筒13zを有する。リレーレンズ13の一端部(図中、下方の端部)は、マウントアダプタ12の被装着部に取り付けられる。リレーレンズ13の他端部(図中、上方の端部)には、所定の高さ(例えば4mm)を有するねじ切り13wが形成されている。
ねじ切り13wに、4色分解プリズム20を内蔵するカメラヘッド14が螺合することで、カメラヘッド14がリレーレンズ13に装着される。ねじ切り13wによってカメラヘッド14にリレーレンズ13が装着されると、カメラヘッド14内部の4色分解プリズム20とリレーレンズ13内部のレンズとは、空隙を介して対向する。空隙により、4色分解プリズム20とリレーレンズ13との接触を防止している。
なお、この空隙の距離が短いと、後述するCマウントの光路長による制限があっても、4つのイメージセンサ230〜233を外側に配置し易くなる。一方、この空隙の距離が長いと、Cマウントの光路長による制限から、4つのイメージセンサ230〜233を内側(リレーレンズ13のフランジ面13v側)に配置する必要がある。
カメラヘッド14とリレーレンズ13とは、例えばCマウントで結合される。Cマウントでは、カメラヘッド14にリレーレンズ13が装着された状態で、リレーレンズ13のフランジ面13vから4つのイメージセンサ230〜233の撮像面までの光学的な距離(光路長)が、L1=17.526mmとなるように規格で定められている。Cマウントの光路長に適合する4板式カメラ(4色分解プリズム20及びイメージセンサ230〜233)をカメラヘッド14に内蔵させる場合、この光路長になるように、4板式カメラが配置される。
スコープ11を通ってリレーレンズ13に導かれ、リレーレンズ13によって集光された被写体からの光は、カメラヘッド14内の4色分解プリズム20を通って4つのイメージセンサ230〜233に結像する。
図4(A),(B)は、イメージセンサ230の構成部品及び外観を示す図である。4つのイメージセンサ230〜233は略同一の仕様を有するので、ここでは、IR用のイメージセンサ230を用いて説明する。
図4(A)、(B)に示すように、センサ素子230yは、センサパッケージ230wの内側に収容され、接着剤230vで固定される。センサパッケージ230wの前面には、センサパッケージガラス230xが配されている。センサ素子230yは、センサパッケージガラス230xを透過した光を受光する。センサパッケージ230wは、センサ基板230zに取り付けられ、イメージセンサ230として成形される。
本実施形態では、イメージセンサ230は、後述するように、IR分解プリズム(IR用の色分解プリズム)220の出射面220cから出射するIR光を受光し、IR画像を撮像する。可視光画像を撮像するイメージセンサ231,232,233も、IR用のイメージセンサ230と同様の構造を有する。なお、IR用のイメージセンサ230の前面には、700nm以下の波長の光を遮断する可視光カットフィルタが設けられている。可視光カットフィルタにより、IR画像の画質を向上できる。
[4色分解プリズムの第1構造例]
図5は、4色分解プリズム20の第1構造例(4色分解プリズム20A)を示す図である。4色分解プリズム20Aは、リレーレンズ13により導かれる入射光を、R成分、G成分、B成分の3原色の光及びIR成分の光に分解する。4色分解プリズム20Aでは、IR分解プリズム220、青色分解プリズム221、赤色分解プリズム222、及び緑色分解プリズム223が、光軸方向に順に組み付けられる。尚、この配置順序は一例であり、他の配置順序であってもよい。図5では、後述するように、プリズムに関する角度として、θ1>θ2を満たす。
図5に示すように、4色分解プリズム20Aでは、IR分解プリズム220の対物側入射面220aとIR分解プリズム220の反射面220bとの成す角度θ1は、IR分解プリズム220の対物側入射面220aの延長線と青色分解プリズム221の反射面221bの延長線との成す角度θ2よりも大きく形成される。つまり、θ1>θ2を満たす。
角度θ1は、言い換えると、IR分解プリズム220の対物側入射面220aに平行な直線と反射面220bに平行な直線との成す角度である。角度θ2は、言い換えると、IR分解プリズム220の対物側入射面220aに平行な直線と青色分解プリズム221の反射面221bに平行な直線との成す角度である。
IR用のイメージセンサ230は、IR分解プリズム220の出射面220cと対向して配置される。青色用のイメージセンサ231は、青色分解プリズム221の出射面221cと対向して配置される。赤色用のイメージセンサ232は、赤色分解プリズム222の出射面222cと対向して配置される。緑色用のイメージセンサ233は、緑色分解プリズム223の出射面223cと対向して配置される。
イメージセンサ230〜233は、例えば、水平(H)方向及び垂直(V)方向に配列した各画素を含むCCD又はCMOSイメージセンサである。イメージセンサ230〜233は、IR及びR,G,Bの各色に分解された光が各撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。
IR分解プリズム220では、入射光は、IR分解プリズム220の対物側入射面220aに入射される。対物側入射面220aと対向する反射面220bで反射された光は、IR分解プリズム220の対物側入射面220aの境界で全反射され、対物側入射面220aと対向する出射面220cから出射され、IR用のイメージセンサ230に入射される。反射面220bには、IR反射膜240が例えば蒸着によって形成される。IR分解プリズム220は、入射光のうち、IR成分の光を反射させ、その他の光(B成分、R成分及びG成分の光)を透過させる。IR用のイメージセンサ230は、反射面220b及び対物側入射面220aで反射された光を入射し、受光する。このようにIR分解プリズム220において光が進行するよう、IR分解プリズム220が成形される。
青色分解プリズム221では、IR分解プリズム220を透過した光(入射光)は、青色分解プリズム221の対物側入射面221aに入射される。対物側入射面221aと対向する反射面221bで反射された光は、青色分解プリズム221の対物側入射面221aの境界で全反射され、対物側入射面221aと対向する出射面221cから出射され、青色用のイメージセンサ231に入射される。反射面221bには、青色反射膜241が例えば蒸着によって形成される。青色分解プリズム221は、入射光のうち、B成分の光を反射させ、その他の光(R成分及びG成分の光)を透過させる。青色用のイメージセンサ231は、反射面221b及び対物側入射面221aで反射された光を入射し、受光する。このように青色分解プリズム221において光が進行するよう、青色分解プリズム221が成形される。
赤色分解プリズム222では、青色分解プリズム221を透過した光(入射光)は、赤色分解プリズム222の対物側入射面222aに入射される。対物側入射面222aと対向する反射面222bで反射された光は、赤色分解プリズム222の対物側入射面222aの境界で全反射され、対物側入射面222aと対向する出射面222cから出射され、赤色用のイメージセンサ232に入射される。反射面222bには、赤色反射膜242が例えば蒸着によって形成される。赤色分解プリズム222は、入射光のうち、R成分の光を反射させ、その他の光(G成分の光)を透過させる。赤色用のイメージセンサ232は、反射面222b及び対物側入射面222aで反射された光を入射し、受光する。このように赤色分解プリズム222において光が進行するよう、赤色分解プリズム222が成形される。
緑色分解プリズム223では、赤色分解プリズム222を透過した光(入射光)は、緑色分解プリズム223の対物側入射面223aに入射し、対物側入射面223aと対向する出射面223cから出射され、緑色用のイメージセンサ233に入射される。このように緑色分解プリズム223において光が進行するよう、緑色分解プリズム223が成形される。
尚、各色の色分解プリズムでの光の反射回数は、通常、偶数回(例えば2回、0回)となる。反射回数が奇数回の場合には、鏡像の情報が色分解プリズムから出力されるためである。
[色分解プリズムの形状、配置関係に係る考察]
次に、4色分解プリズム20Aにおける各色の色分解プリズムの形状や配置関係について考察する。
4色分解プリズム20Aでは、IR分解プリズム220及びIR用のイメージセンサ230と青色分解プリズム221及び青色用のイメージセンサ231は、入射光中心線ILCを挟んで反対側に配置される。入射光中心線ILCは、IR分解プリズム220の対物側入射面220aに垂直に入射する複数の入射光線のうち、IR分解プリズム220を透過し、青色分解プリズム221を透過し、赤色分解プリズム222を透過し、緑色分解プリズム223の出射面233cに対向する緑色用のイメージセンサ233の受光面の中心C1(図4(B)参照)に入射する光の光路を示す。ここでは、IR用のイメージセンサ230は、入射光中心線ILCより上側(図5参照)に配置され、青色用のイメージセンサ231は、入射光中心線(図5参照)より下側に配置される。
また、赤色分解プリズム222及び赤色用のイメージセンサ232は、青色分解プリズム221及び青色用のイメージセンサ231と緑色分解プリズム223及び緑色用のイメージセンサ233との間に配置される。ここで、赤色分解プリズム222及び赤色用のイメージセンサ232は、カメラヘッド14内の配置スペースの関係上、入射光中心線ILCより下側に配置される(図5参照)。仮に赤色用のイメージセンサ232の配置位置が入射光中心線ILCより上側に配置しようとすると、カメラヘッド14内の限られたスペースにおいて、赤色用のイメージセンサ232の配置位置がIR用のイメージセンサ230の配置位置や緑色分解プリズム223の配置位置と重複するため、物理的な配置が困難となる。
赤色用のイメージセンサ232が入射光中心線ILCより下側に配置されることで、内視鏡10は、4色分解プリズム20Aを限られた配置空間内に配置でき、4色分解プリズムを収容するカメラヘッド14を小型化できる。
図5では、IR分解プリズム220は、各色の色分解プリズムの中で、最も対物側に配置されている。つまり、IR分解プリズム220が、他の色分解プリズム(青色分解プリズム221、赤色分解プリズム222、及び緑色分解プリズム223)よりも患部からの光の入射に対して対物側に配置されている。
これにより、IR分解プリズム220の出射面220cに対向して配置されたIR用のイメージセンサ230は、B成分、R成分、及びG成分と比較すると光強度が小さい蛍光発光のIR光を可能な限り多く受光できる。つまり、4色分解プリズム20Aは、4色分解プリズム20Aに入射された光に対し、IR用のイメージセンサ230へのIR成分の光の受光量がプリズム透過により低下することを抑制できる。そして、4色分解プリズム20Aは、IR成分の光が患部内の蛍光物質(例えばICG)に照射されることで生じる蛍光発光に基づき、患部の鮮明な撮像画像を取得できる。
図5では、青色分解プリズム221は、IR分解プリズム220の次に(2番目に)対物側に配置されている。これは、B成分は、R成分及びB成分よりも短波長であり、短波長である程、各色の色分解プリズムにおける光の反射時に起こり得る偏光の影響が小さくなるためである。従って、4色分解プリズム20Aは、青色分解プリズム221が赤色分解プリズム222及び緑色分解プリズム223よりも対物側に配置されることで、上記偏光の影響を抑制できる。
また、青色分解プリズム221をIR分解プリズム220よりも対物側に配置するとする。この場合、青色分解プリズム221に用いる青色反射膜241の分光特性上、図8において高波長側(つまり緑色成分及び赤色成分側)の分光透過率が高くなる。そのため、青色反射膜241でのIR光の反射量が多くなり、後段に配置されるIR分解プリズム220に入射するIR光の光量が低下する。
従って、内視鏡10は、図5のようにIR分解プリズム220が青色分解プリズム221よりも対物側に配置されることで、IR分解プリズム220よりも青色分解プリズム221が対物側に配置される場合と比較して、IR光により得られる画像を高画質化できる。つまり、内視鏡10において、ICGの蛍光発光を基に、患部の状態を鮮明な画像として取得できる。
また、緑色分解プリズム223及び緑色用のイメージセンサ233は、入射光中心線ILCを略中央で受光するように、配置される。これにより、緑色反射膜を設ける必要がなく、緑色分解プリズム223の形状を単純化できるので、G成分に係る構成部の設計を容易化できる。
また、緑色分解プリズム223は、光の入射順序が一番最後、つまり複数の色分解プリズムの中で対物側から最遠であることが好ましい。G成分は、B成分とR成分との中間の波長帯域に含まれるので、緑色分解プリズム223よりも前段においてIR反射膜240、青色反射膜241、及び赤色反射膜242によりG成分以外の光の成分を遮断し易くできる。これらの反射膜をLPF(Low Pass Filter)又はHPF(High Pass Filter)として設計でき、フィルタ設計を容易化できるためである。
[4色分解プリズムの第2構造例]
図6は、4色分解プリズム20の第2構造例(4色分解プリズム20B)を示す図である。4色分解プリズム20Bにおいて、図5に示した4色分解プリズム20Aと同様の構造については、その説明を省略又は簡略化する。
4色分解プリズム20Bは、前述の4色分解プリズム20Aと比較すると、θ2>θ1を満たし、このように角度が異なることに起因して、各色の色分解プリズムの形状、向き、大きさ、等が異なっている。尚、θ2=θ1の場合も、図6に示す4色分解プリズムBと同様の構成となることが本発明の発明者の詳細な考察により導き出された。
IR用のイメージセンサ230は、反射面220b及び対物側入射面220aで反射された光を入射し、受光する。図6に示す角度θ1は、図5に示した角度θ1よりも小さいため、IR分解プリズム220の反射面220bでの反射角(反射面220bに垂直な線と反射面220bにより反射された光線との成す角)が、図5の場合より小さくなる。同様に、対物側入射面220aでの反射角(対物側入射面220aに垂直な線と対物側入射面220aにより反射された光線との成す角)についても、図5の場合より小さくなる。
従って、対物側入射面220aで反射された光線の向きは、緑色分解プリズム223を進む光線の向きに近づき、IR用のイメージセンサ230の位置は、緑色用のイメージセンサ233の位置に近づく。
また、IR分解プリズム220は、必要な光路長を確保するために、対物側入射面220aと出射面220cとの間の距離が、図5の場合より長く設計される。そのため、IR分解プリズム220の反射面220bは、対物側入射面220aで反射された光線に沿うように折れ曲がり、IR分解プリズム220の形状が複雑化する。反射面220bは、IR成分以外の光の成分を透過するために研磨を必要とするが、反射面220bが折れ曲がると、反射面220bを研磨し難くなる。
このように、IR分解プリズム220の先端部(出射面220c及びIR用のイメージセンサ230を含む端部)は緑色分解プリズム223側へ寄って形成される。よって、IR分解プリズム220の先端部と緑色分解プリズム223との間に赤色分解プリズム222が配置されることは、図5の場合よりも更に困難となる。従って、赤色分解プリズム222は、青色分解プリズム221とともに、入射光中心線ILCよりも下側に配置される。
青色用のイメージセンサ231は、反射面221b及び対物側入射面221aで反射された光を入射し、受光する。図6に示す角度θ2は、図5に示したθ2よりも大きいため、青色分解プリズム221の反射面221bでの反射角(反射面221bに垂直な線と反射面221bにより反射された光線との成す角)が、図5の場合より大きくなる。同様に、対物側入射面221aでの反射角(対物側入射面221aに垂直な線と対物側入射面221aにより反射された光線との成す角)についても、図5の場合より大きくなる。
従って、そのため、対物側入射面221aで反射されて出射面221cから出射される光は、4色分解プリズム20Bの入射面(つまりIR分解プリズム220の対物側入射面220a)に近づき、青色用のイメージセンサ231における対物側入射面220a側の端部で受光される。
尚、青色分解プリズム221の反射面221bで反射された光が対物側入射面221aの範囲外に出ずに対物側入射面221aで反射され、対物側入射面221aでの反射が全反射の条件を満たすよう設計される。
次に、画素加算について説明する。
IR用のイメージセンサ230は、そのまま各画素値(信号レベル)の電気信号を出力してもよいが、水平(H)及び垂直(V)方向に隣接する画素の画素値を加算するH/V画素加算処理を行い、H/V画素加算処理後の画素値の電気信号を出力してもよい。
H/V画素加算されると、例えば、IR用のイメージセンサ230の画素値が「30」程度である場合、画素加算を行うことで、IR成分の画素値が「120」(=30×4)となる。
従来のIR成分の画素値が「10」程度であるとすると、本実施形態の内視鏡10によれば、IR用のイメージセンサ230を独立に設けたことで、従来と比較すると、およそ3倍〜12倍のIR成分の画素値が得られる。
また、本実施形態のRGB用の各イメージセンサ231,232,233の画素値が「100」程度であるとする。この場合、H/V画素加算を加味すると、R成分、G成分、B成分の各信号レベルとIR成分の信号レベルとが同程度となり、RGB画像及びIR画像を見易くなる。RGB画像は、R成分、G成分、B成分の少なくとも1つの信号により得られる画像である。IR画像は、IR成分の信号により得られる画像である。
[イメージセンサのセンサ感度]
図7は、イメージセンサ230のセンサ感度を示すグラフである。縦軸はセンサ感度を表す。センサ感度は、イメージセンサ230に入射する光の光量に対する、イメージセンサ230が検知する光量の比率に相当する。図7のセンサ感度は、光の波長510nmにおけるセンサ感度を値1とした場合の相対値である。横軸は光の波長をnm単位で表す。波形gh1は、光の波長に対する本実施形態のイメージセンサ230のセンサ感度の特性を示す。波形gh2は、光の波長に対する比較例(従来)のイメージセンサのセンサ感度の特性を示す。
本実施形態のイメージセンサ230の場合、波形gh1に示すように、光の波長830nmにおけるセンサ感度は値0.551であり、光の波長510nmの場合と比較すると約55%である。一方、比較例のイメージセンサの場合、波形gh2に示すように、光の波長830nmにおけるセンサ感度は値0.298であり、光の波長510nmの場合と比較すると約30%である。尚、830nmの波長帯域は、ICGを用いた蛍光発光の波長帯域である。
本実施形態のイメージセンサ230のセンサ感度は、比較例のイメージセンサのセンサ感度と比べ、400nm〜500nmの青色光領域(B成分)では、ほぼ同じ感度を有するが、500nm〜600nmの緑色光領域(G成分)、600nm〜700nmの赤色光領域(R成分)では、高くなっている。さらに、イメージセンサ230のセンサ感度は、比較例のイメージセンサのセンサ感度と比べ、750nm〜900nmの近赤外光(IR光)領域(IR成分)においても、高いセンサ感度を有する。
以下、波形gh1に示すセンサ感度の特性を有するイメージセンサを高感度センサともいう。また、波形gh2に示すセンサ感度の特性を有するイメージセンサを通常感度センサともいう。図7から理解できるように、高感度センサは、通常感度センサに比べて、長波長側の感度が高くなっている。
第1の実施形態では、イメージセンサ230〜233には、高感度センサが用いられる。尚、赤色、緑色、青色用のイメージセンサ231〜233には、高感度センサが用いられても、通常感度センサが用いられてもよい。
[4色分解プリズムの分光特性]
図8は、4色分解プリズム20の分光特性(分光透過率)の一例を示すグラフである。図8の縦軸は、各分光透過率(%)を示し、各プリズムへの入射光の光量に対する、各プリズムに対するイメージセンサ230〜233への入射光の光量の比率に相当する。図8の横軸は、各イメージセンサ230〜233に入射する光の波長(nm)を表す。尚、各プリズムに対するイメージセンサ230〜233への入射光の光量は、各プリズムからの出射光の光量に相当する。
図8では、波形h1(実線)は、IR用のイメージセンサ230に入射するIR成分の光の分光特性を示す。4色分解プリズム20に入射した光のうち、IR用のイメージセンサ230に入射するIR成分の光の透過率は、波長800〜1000nmにかけて、波長900nm付近で透過率が70%程度となるピーク波形を有する。
波形h2(一点鎖線)は、赤色用のイメージセンサ232に入射するR成分の光の分光特性を示す。赤色用のイメージセンサ232に入射するR成分の光の透過率は、波長600nm付近で透過率が80%程度となるピーク波形を有する。
波形h3(点線)は、青色用のイメージセンサ231に入射するB成分の光の分光特性を示す。青色用のイメージセンサ231に入射するB成分の光の透過率は、波長450nm近辺で透過率が60%を超えるピーク波形を有する。
波形h4(二点鎖線)は、緑色用のイメージセンサ233に入射するG成分の光の分光特性を示す。緑色用のイメージセンサ233に入射するG成分の光の透過率は、波長530nm近辺で透過率が90%程度となるピーク波形を有する。
このように、4色分解プリズム20で分解されたIR成分、R成分、B成分、及びG成分の光の透過率は、いずれも60%を超える。従って、IR成分、R成分、B成分、及びG成分の各画素値を好適に得られ、IR成分の信号を大きく増幅しなくても済む。これにより、患部を撮像した場合に、IR成分を含めて撮像画像の色再現性が向上する。
[4板式カメラの分光感度]
図9は、4つのイメージセンサ230〜233を用いた場合の分光感度を示すグラフである。図9の縦軸は、分光感度をパーセント単位で表す。図9の横軸は、各イメージセンサ230〜233に入射する光の波長(nm)を表す。分光感度は、4色分解プリズム20への入射光の光量に対する、イメージセンサ230〜233が検出した各波長での光の光量に相当する。分光感度は、図7に示したセンサ感度と、図8に示した分光透過率と、を乗算することで得られる。この分光感度は、カメラヘッド14内の4板式カメラの性能指標の1つである。図9では、図7の波形gh6に示した通常感度センサのセンサ感度の最大値(通常感度センサ及び高感度センサの双方において波長510nmの場合のセンサ感度)を値1として、4色分解プリズム20の分光透過率を乗算したものである。従って、分光感度100%は、4色分解プリズム20の分光透過率が100%であり、且つ、通常感度センサのセンサ感度が最大である状態を示す。
図9に示す分光感度は、光を4色分解プリズム20に通すことで、青色光領域、緑色光領域、赤色光領域、近赤外光領域において、それぞれ高い値を有する。
ここで、緑色光領域(530nmを含む波長帯)における分光感度のピーク値は、略90%である(波形br2参照)。一方、近赤外光領域(830nmを含む波長帯)における分光感度のピーク値は、略48%であり、緑色光領域(530nm)における分光感度のピーク値(90%)の40%以上の値を有する(波形br1参照)。従って、IR領域における分光感度が所望される高い値で得られる。ここでの緑色光領域における分光感度のピーク値は、RGBの可視光帯域を含む全波長帯の中での分光感度の最大値に相当する。尚、図示はしていないが、従来では、近赤外光領域における分光感度のピーク値は、本実施形態の4板式カメラの分光感度の半分程度(24%程度)である。
このように、カメラヘッド14に含まれる4板式カメラは、可視光領域のピーク値(ここでは、緑色光領域のピーク値)に対し、40%以上のピーク値を有する。つまり、この4板式カメラは、IR光に対して高い感度を有する。
尚、図7〜図9に示したイメージセンサのセンサ感度、4色分解プリズム20の分光特性、及び4板式カメラの分光感度は、一例であり、他の特性を有してもよい。
[内視鏡システムの構成]
図10は、第1の実施形態における内視鏡システム5の構成を示すブロック図である。内視鏡システム5は、内視鏡10、CCU30、及び表示部40を含んで構成される。CCU30は、プロセッサの一例である。表示部40は、ディスプレイの一例である。内視鏡10のカメラヘッド14は、前述した4色分解プリズム20及びイメージセンサ230,231,232,233を有する。図10では、カメラヘッド14は、更に、各素子駆動部141i,141r,141b,141g,駆動信号発生部142、同期信号発生部143、及び信号出力部145を有する。
素子駆動部141iは、イメージセンサ230を駆動信号に従って駆動する。素子駆動部141rは、イメージセンサ231を駆動信号に従って駆動する。素子駆動部141bは、イメージセンサ232を駆動信号に従って駆動する。素子駆動部141gは、イメージセンサ233を駆動信号に従って駆動する。
駆動信号発生部142は、各素子駆動部141i,141r,141b,141gに対し、駆動信号を発生する。同期信号発生部143は、タイミングジェネレータ(TG)回路の機能に相当し、駆動信号発生部142等に同期信号(タイミング信号)を供給する。
信号出力部145は、信号ケーブル14zを介してイメージセンサ230,231,232,233からの電気信号を、例えばLVDS方式でCCU30に伝送する。信号出力部145は、信号ケーブル14zを介して、同期信号発生部143からの同期信号をCCU30に伝送してもよい。信号出力部145は、信号ケーブル14zを介して、操作スイッチ19の操作信号をCCU30に伝送してもよい。信号出力部145は、信号出力回路の機能に相当する。
CCU30は、CCU30の内部又は外部のメモリ(不図示)が保持するプログラムを実行することで、各種機能を実現する。各種機能は、RGB信号処理部22、IR信号処理部23及び出力部28の機能を含む。
RGB信号処理部22は、イメージセンサ231,232,233からのB成分、R成分、G成分の電気信号を、表示部40に表示可能な映像信号に変換し、出力部28に出力する。
IR信号処理部23は、イメージセンサ230からのIR成分の電気信号を映像信号に変換し、出力部28に出力する。また、IR信号処理部23は、ゲイン調整部23zを有してもよい。ゲイン調整部23zは、IR用のイメージセンサ230からのIR成分の電気信号を映像信号に変換する際、増幅度(ゲイン)を調整する。ゲイン調整部23zは、例えば、RGB成分の映像信号の信号強度とIR成分の映像信号の信号強度とを略同一に調整してもよい。
ゲイン調整部23zにより、使用者がRGB画像に対するIR画像を任意の強度で再現可能である。尚、IR成分の電気信号の増幅度が調整される代わりに、又はこの調整とともに、RGB信号処理部22は、RGB成分の電気信号の増幅度を調整してもよい。
RGB信号処理部22及びIR信号処理部23は、信号処理を行う際、同期信号発生部143からの同期信号を受け取り、この同期信号に従って動作する。これにより、RGB各色成分の画像(映像)及びIR成分の画像は、時間的なずれが生じないように調整される。
出力部28は、同期信号発生部143からの同期信号に従い、RGB各色成分の映像信号及びIR成分の映像信号の少なくとも一方を表示部40に出力する。例えば、出力部28は、同時出力モード及び重畳出力モードのいずれかに基づいて、映像信号を出力する。
同時出力モードでは、出力部28は、RGB画像G1とIR画像G2(図11参照)とを別画面により同時に出力する。同時出力モードにより、RGB画像とIR画像とを別画面にて比較して、患部tgを観察できる。
重畳出力モードでは、出力部28は、RGB画像とIR画像とが重畳された合成画像GZを出力する(図12参照)。重畳出力モードにより、例えば、RGB画像内で、ICG及び照明光としてのIR光により蛍光発光した患部tgを明瞭に観察できる。
尚、RGB信号処理部22、IR信号処理部23及び出力部28は、CCU30内のプロセッサがメモリと協働してソフトウェアにより処理することを例示したが、それぞれ専用のハードウェアで構成されてもよい。
表示部40は、CCU30からの映像信号に基づいて、内視鏡10で撮像され、CCU30から出力される患部tg等の対象物の画像を画面に表示する。同時出力モードの場合、表示部40は、画面を複数に分割(例えば2分割)し、各画面にRGB画像G1及びIR画像G2を並べて表示する(図11参照)。重畳出力モードの場合、表示部40は、RGB画像G1とIR画像G2とが重ねられた合成画像GZを1画面で表示する(図12参照)。
このように、内視鏡システム5では、内視鏡10を使用して体内の部位を撮像する場合、蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG)を体内に投与し、過剰に集積した腫瘍等の部位(患部)に近赤外光を当てて患部を光らせて患部を撮像してもよい。
使用者が操作スイッチ19を操作して光源コネクタ18に導入された光Lは、スコープ11の先端側に導かれ、撮像窓11zから投射されることで、患部を含む患部周囲の部位を照明する。患部等で反射された光は、撮像窓11zを通してスコープ11の後端側に導かれ、リレーレンズ13で収束し、カメラヘッド14の4色分解プリズム20に入射する。
4色分解プリズム20では、入射した光のうち、IR分解プリズム220によって分解したIR成分の光は、IR用のイメージセンサ230で赤外光成分の光学像として撮像される。青色分解プリズム221によって分解したB成分の光は、青色用のイメージセンサ231で青色成分の光学像として撮像される。赤色分解プリズム222によって分解したR成分の光は、赤色用のイメージセンサ232で赤色成分の光学像として撮像される。緑色分解プリズム223によって分解したG成分の光は、緑色用のイメージセンサ233で緑色成分の光学像として撮像される。
IR用のイメージセンサ230で変換されたIR成分の電気信号は、CCU30内のIR信号処理部23で映像信号に変換され、出力部28に出力される。可視光用のイメージセンサ231,232,233でそれぞれ変換されたB成分、R成分、G成分の各電気信号は、CCU30内のRGB信号処理部22で各映像信号に変換され、出力部28に出力される。IR成分の映像信号及びB成分、R成分、G成分の各映像信号は、同期して、表示部40に出力される。
表示部40には、出力部28で同時出力モードが設定されている場合、RGB画像G1とIR画像G2とが同時に2画面で表示される。図11は表示部40に表示された同時出力モード時の画像を示す模式図である。RGB画像G1は、患部tgを含む部位を可視光を照射して撮像したカラー画像である。IR画像G2は、患部tgを含む部位をIR光を照射して撮像した白黒画像(任意な色設定可能)である。
表示部40には、出力部28で重畳出力モードが設定されている場合、RGB画像G1とIR画像G2とが重畳(合成)された合成画像GZ1が表示される。図12は表示部40に表示された重畳出力モード時の画像を示す模式図である。
[効果等]
このように、本実施形態の内視鏡10は、患部からの光を、青色成分、赤色成分、緑色成分、及びIR成分のうちいずれかである第1色成分、第2色成分、第3色成分、及び第4色成分にそれぞれ分解する第1色分解プリズム、第2色分解プリズム、第3色分解プリズム、及び第4色分解プリズムを備えた4色分解プリズム20と、第1色分解プリズムに設置され、分解された第1色成分を電気信号に変換する第1色イメージセンサと、第2色分解プリズムに設置され、分解された第2色成分を電気信号に変換する第2色イメージセンサと、第3色分解プリズムに設置され、分解された第3色成分を電気信号に変換する第3色イメージセンサと、第4色分解プリズムに設置され、分解された第4色成分を電気信号に変換する第4色イメージセンサと、変換された各電気信号からカラー画像信号とIR信号とを出力する信号出力部145と、を備える。患部からの光の入射に対して対物側から第1色分解プリズム、第2色分解プリズム、第3色分解プリズム、及び第4色分解プリズムの順に配置される。第1色イメージセンサと第2色イメージセンサ及び第3色イメージセンサとは、第1色分解プリズムの対物側入射面に垂直に入射する入射光線を挟んで反対に配置される。入射光線は、例えば入射光中心線ILCである。
これにより、内視鏡10は、各色の色分解プリズム(特に第3色分解プリズム)を無駄なく効率的に配置でき、4色分解プリズム20を容易に実現できる。例えば、入射光線の上側(入射光線に対して一方の領域)では、第1色分解プリズム及び第1色イメージセンサの配置位置との関係上、第3色分解プリズムの配置スペースが小さいが、入射光線の中心線の下側(入射光線に対して他方の領域)ではこの配置スペースを確保できる。よって、内視鏡10は、4色分解プリズム20を実装でき、各色の色分解プリズムにより分解された各色成分を独立の各イメージセンサにより受光できるので、各色成分の光強度を確保し易い。よって、蛍光発光に発光量は少ないが、内視鏡10は、赤外光成分を加味した画質が向上する。また、内視鏡10は、各色成分を独立に制御してカラーバランスを調整でき、各色成分の色再現性を高くできる。
また、第1色分解プリズムは、IR分解プリズムでもよい。第1色イメージセンサは、IRイメージセンサでもよい。
これにより、内視鏡10は、患部からの光のIR成分がIR以外の色分解プリズムにおける透過や反射によって減少することを抑制できる。そのため、内視鏡10は、4色分解プリズム20に入射する可視光と比較すると光量が小さい蛍光発光に係るIR成分の光の多くを、IRイメージセンサに受光させることができる。よって、内視鏡10は、IR画像の画質を向上できる。
また、第2色分解プリズムは、青色分解プリズムでもよい。第2色イメージセンサは、青色イメージセンサでもよい。
これにより、内視鏡10は、第2色分解プリズムでの光の反射時に起こり得る偏光の影響を低減できる。従って、内視鏡10は、IR成分の受光量を確保しながら、偏光の影響を低減できる。
また、第4色分解プリズムは、緑色分解プリズムでもよい。第4色イメージセンサは、緑色イメージセンサでもよい。
これにより、G成分を反射するための緑色反射膜を設ける必要がなく、緑色分解プリズム223の形状を単純化できるので、G成分に係る構成部の設計を容易化できる。
また、第1色分解プリズムの対物側入射面と第1色分解プリズムの反射面との成す第1の角度は、第1色分解プリズムの対物側入射面と第2色分解プリズムの反射面との成す第2の角度よりも大きくてもよい。第1の角度は、例えば角度θ1であり、第2の角度は、例えば角度θ2である。
これにより、内視鏡10は、第1色分解プリズムから第1色イメージセンサに至るまでの必要な光路を確保するために、第1色イメージセンサが第4色分解プリズムに近づける必要がなく、第1色分解プリズムの形状の複雑化を回避できる。よって、第1色分解プリズムの出射面が折れ曲がることを回避でき、第1色分解プリズムにおいて光を透過するための研磨を容易にできる。また、第1色イメージセンサの形状の複雑化に伴う4色分解プリズムの大型化を回避できる。つまり、内視鏡10は、4色分解プリズム20を小型化できる。
また、4色分解プリズム20、IR用のイメージセンサ230、青色用のイメージセンサ231、赤色用のイメージセンサ232、及び緑色用のイメージセンサ233は、使用時にユーザに把持されるカメラヘッド14に収容されてもよい。
これにより、内視鏡10の先端(つまりスコープ11の先端)にイメージセンサが配置される場合と比較してイメージセンサの収容スペースを広く確保できる。従って、内視鏡10の先端に配置するよりもイメージセンサのサイズを大きくでき、画素数を増大できるので、内視鏡10による撮像画像を高画質化できる。また、使用者(例えば医者又は助手)が使用時(例えば手術時)に、手持ち側に設けられたカメラヘッド14を把持することで、手術時の使用者の操作性が向上する。また、スコープ11の洗浄時に生じる下記支障を抑制できる。
一方、内視鏡10の先端にイメージセンサが配置される場合、収容スペースが小さいので、プリズムを配置することが困難であり、カラーフィルタを用いて4色の色成分に分解する。また、イメージセンサの設置スペースもカメラヘッド14より更に小さいので、イメージセンサが小さくなり、画素数が少なくなり、高画質化が困難である。また、スコープ11は医療機器であるために定期的に洗浄を行う必要があるが、スコープ11内にイメージセンサが存在すると、洗浄作業に支障がある。例えば、洗浄時にはスコープを高温の液体や蒸気に漬け込む。この際、スコープ11の先端をシールする必要があるが、スコープ11内にイメージセンサが存在すると、このシールが困難となる。
また、赤外光の波長帯域における色分解プリズム及びイメージセンサによる分光感度のピーク値(最大値)は、可視光帯域における分光感度の最大値の40%以上でもよい。
これにより、イメージセンサにより検出された、3原色光の波長帯域(可視光帯域)での信号強度に対して赤外光の波長帯域における信号強度を大きくでき、赤外光の波長帯域の光を視認し易くできる。これにより、例えば、ICGを使って患部を撮像する場合、患部を含む全体の部位を表すRGB画像に対し、蛍光発光した患部がIR画像で視認し易くなる。また、例えば、3原色光と赤外光との信号強度を同等にするための過大な信号増幅が不要となる。よって、内視鏡10は、赤外光成分を加味した画質を向上できる。また、内視鏡10は、色分解プリズムを用いることで、内視鏡10のイメージセンサを小型化でき、例えば1/2.86インチにできる。その結果、内視鏡10を小型化できる。
また、色分解プリズムにより可視光と近赤外光を分光し、赤外光領域の画像を可視光と同時に取り込むことで、複雑なシステムを組むことなく、十分な光量を確保できるカメラヘッドとなる。赤外線領域の分光感度を40%以上とすることで、蛍光発光した明瞭な画像を取得できる。
また、イメージセンサは、830nmの波長帯域におけるセンサ感度が、510nmの波長帯域におけるセンサ感度の50%以上でもよい。
これにより、内視鏡10は、イメージセンサとして高感度センサを備えるので、従来と比較すると、赤外光の波長帯域における光量が同じでも、検出される信号強度が大きくなる。よって、ユーザは、赤外光の波長帯域の光を視認し易くなる。よって、例えば、ICGを使って患部を撮像する場合、蛍光発光した患部がIR画像で視認し易くなる。
また、色分解プリズムは、対象物からの光を3原色光の各々及び赤外光の4つの色成分に分解する4色分解プリズム20を含んでもよい。イメージセンサは、分解された4つの色成分の光学像をそれぞれ電気信号に変換する4個のイメージセンサ230〜233含んでもよい。
これにより、内視鏡10は、3原色光及び赤外光の各々の色成分をそれぞれ独立に取得し、制御してカラーバランスを調整できる。よって、内視鏡10は、各色成分の再現性を高くできる。
また、リレーレンズ13のフランジ面13vからイメージセンサ230〜233の撮像面までの光学的な距離は、17.526mmでもよい。
これにより、内視鏡10は、Cマウントの規格に適合させることができ、汎用性が向上する。
また、内視鏡10は、IR光の受光量を増大できるので、IR成分の信号を過大に増幅させる必要が無くなり、ノイズの増幅が抑制され、IR成分を加味した内視鏡10による撮像画像の画質の低下を抑制できる。
また、4色分解プリズム20を用いることで、単板式カメラのイメージセンサと比べ、イメージセンサのサイズを小さくでき、内視鏡10を小型化できる。例えば、単板式カメラのイメージセンサのサイズは、1インチ又は38mmであり、本実施形態のイメージセンサ230〜233のサイズは、1/3インチ以上あり、例えば1/2.86インチである。
また、4色分解プリズム20がIRカットフィルタを用いていないので、内視鏡システム5は、RGB画像とIR画像とを同時に出力可能である。そのため、ユーザは、例えば、患者の患部を含む全体の部位をRGB画像で確認できるとともに、蛍光発光した患部をIR画像で確認でき、患部周辺における患部の位置を視認し易くなる。ここでのRGB画像は、RGB成分の画像であり、IR画像は、IR成分の画像である。
また、IR成分の光を電気信号に変換するIR用のイメージセンサ230は、H/V画素加算処理を行い、加算された画素値の電気信号を出力してもよい。これにより、内視鏡10は、IR成分の信号強度を更に増大でき、表示部40により表示されるIR成分の画像をより強調でき、患部を視認し易くなる。
また、内視鏡システム5は、RGB各成分の信号強度とIR成分の信号強度とが略同等になるように、ゲイン調整してもよい。この場合、RGB各成分の画素値とIR成分の画素値とを均一化でき、画像を見え易くできる。
また、内視鏡システム5は、RGB各成分の信号強度とIR成分による信号強度との間で差を持たせるように、ゲイン調整してもよい。この場合、内視鏡システム5は、ユーザ所望の画質でRGB画像及びIR画像を表示できる。
また、RGB画像とIR画像とが同時に2画面で表示されることで、ユーザは両画像を見比べて確認でき、ユーザの利便性が向上する。
また、RGB画像とIR画像とが重畳して1画面で表示されること、ユーザは1つの画像でRGB成分及びIR成分の画像を確認でき、ユーザの利便性が向上する。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
上記実施形態では、各色用の色分解プリズムでは、光の進路に直接関与しない色分解プリズムの一部が切削されてもよい。これにより、色分解プリズムのサイズを小さくできる。
上記実施形態では、イメージセンサ230〜233として、図7に特性を示した高感度センサ又は通常感度センサが用いられることを例示したが、他の特性を有するイメージセンサが用いられてもよい。
上記各実施形態では、内視鏡10として硬性内視鏡を例示したが、他の構成を有する硬性内視鏡でもよく、軟性内視鏡でもよい。また、内視鏡10の構成や動作が光学顕微鏡に適用されてもよい。リレーレンズ13とカメラヘッド14とがCマウントの規格に適合することで汎用性が増すので、上記実施形態を光学顕微鏡に容易に適用できる。
上記実施形態では、生体内に光造影剤としてICGを投与することを例示したが、ICG以外の光造影剤が投与されてもよい。この場合、光造影剤を励起するための励起光の波長に応じて、非可視光の波長領域における分光特性や分光感度を定めてもよい。
また、上記実施形態では、赤外光の波長領域において蛍光発光する薬品を用いたが、紫外光の波長領域において蛍光発光する薬品を用いてもよい。この場合でも、近赤外域で蛍光発光する光造影剤を用いた場合と同様に、内視鏡は、蛍光発光された患部の画像を撮像できる。
また、上記実施形態では、4色分解プリズム20において、光の入射側から、IR分解プリズム220、青色分解プリズム221、赤色分解プリズム222、及び緑色分解プリズム223の順に配置されることを例示したが、この配置順序は一例であり、他の配置順序でもよい。
また、上記実施形態では、リレーレンズ13及びカメラヘッド14が、Cマウントの規格に適合することを例示したが、Cマウントの規格に適合していないものであってもよい。
また、上記実施形態では、プロセッサの一例としてCCU30を説明した。プロセッサは、内視鏡システム5を制御すれば、物理的にどのように構成してもよい。従って、プロセッサは、CCU30に限定されない。ただし、プログラム可能なCCU30を用いれば、プログラムの変更により処理内容を変更できるので、プロセッサの設計の自由度を高めることができる。また、プロセッサは、1つの半導体チップで構成してもよいし、物理的に複数の半導体チップで構成してもよい。複数の半導体チップで構成する場合、第1の実施形態の各制御をそれぞれ別の半導体チップで実現してもよい。この場合、それらの複数の半導体チップで1つのプロセッサを構成すると考えることができる。また、プロセッサは、半導体チップと別の機能を有する部材(コンデンサ等)で構成してもよい。また、プロセッサが有する機能とそれ以外の機能とを実現するように、1つの半導体チップを構成してもよい。また、電子基板250に搭載される回路についても、プログラム可能な回路を用いれば、プログラムの変更により処理内容を変更できる。また、回路の数は1つでも複数でもよい。