第1の発明は、噴出口と、噴出口に連通する流路を備えたノズル部と、ノズル部を進退可能に支持する支持部と、ノズル部を進退移動させるモータと、を含み、ノズル部は、噴出口に連通する流路を備えたノズル本体と、ノズル本体の少なくとも一部を覆うノズルカバーと、ノズル本体とノズルカバーを連結する連結部と、を備え、ノズルカバーは噴出開口を有し、ノズル本体の噴出口に噴出開口を対向させるようにノズル本体とノズルカバーは相互に摺動可能に構成し、ノズル本体の噴出口とノズルカバーの内壁との隙間を保持する隙間リブを備え、隙間リブは、上端部が噴出口の上端部より高く形成された上隙間リブを備えたノズル装置である。
これにより、ノズル本体は噴出口が形成されている先端近傍すなわち噴出口近傍が、ノズルカバー内で隙間規制されながら支持されるため、噴出口でから洗浄水を吐出して人体洗浄を行う際に、洗浄水の吐出噴流によってノズル本体がノズルカバー内で振動することを抑制できる。すなわち、ノズル部の洗浄位置姿勢を安定させて、洗浄される位置安定性を向上させることができる。
また、隙間リブは、上端部が噴出口の上端部より高く形成された上隙間リブを備えたことにより、ノズルカバーの噴出開口と噴出口との間の隙間が確保されるため、モータによって、ノズル本体をノズルカバー内で摺動して移動しても、ノズルカバーの噴出開口の縁部と、噴出口との接触を避けることができ、噴出口か擦れて変形や摺り傷などの損傷をすることがなく、長い年月に亘り安定した噴流を保つことができる。
第2の発明は、特に第1の発明において、ノズル本体は、複数の噴出口を有するノズル先端部材と、噴出口に個別に連通する複数の流路が形成されたノズル根元部材と、を備え、複数の隙間リブはノズル先端部材に備えて構成されることにより、ノズル本体は噴出口が形成されている先端近傍すなわち噴出口近傍が、ノズルカバー内で隙間規制されながら支持されるため、噴出口でから洗浄水を吐出して人体洗浄を行う際に、洗浄水の吐出噴流によってノズル本体がノズルカバー内で振動することを抑制できる。すなわち、ノズル部の洗浄位置姿勢を安定させて、洗浄される位置安定性を向上させることができる。
第3の発明は、特に第1の発明において、噴出口を有するノズル本体の先端側に形成された隙間リブと、ノズル本体の根元側に形成された根元隙間リブと、を備え、隙間リブとノズルカバーの内壁との隙間が、根元隙間リブとノズルカバーの内壁との隙間より小さい構成としたことにより、ノズルカバー内におけるノズル本体の噴出口付近の上下左右方向の揺れ幅を、より規制することができ、ノズル部の洗浄位置姿勢がより安定し、洗浄される位置安定性をより向上させることができる。
また、ノズル本体をノズルカバー内で摺動して移動する際の摺動抵抗を、より小さくできるので、駆動するモータは駆動力がより小さい小型コンパクトで安価なモータで良く、ノズル装置をより小型コンパクトにすることができる。
第4の発明は、特に第1の発明のノズル装置と、前記ノズル装置に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記ノズル装置と前記洗浄水供給部を制御する制御部と、便器の上面に載置する便座と、を備えた衛生洗浄装置であり、噴出口が安定した位置姿勢に保持されながら適切な洗浄位置での洗浄が可能となる。さらに、ノズル装置の小型化により、衛生洗浄装置全体の小型化も可能となる。その結果、快適で使い勝手のよい衛生洗浄装置を実現できる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
<1>衛生洗浄装置の構成
以下、本発明の実施の形態における衛生洗浄装置の構成について、図1から図3を用いて説明する。
図1は、本実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の外観を示す斜視図である。図2は、同衛生洗浄装置の本体の内部を示す斜視図である。図3は、同衛生洗浄装置の水回路の構成を示す模式図である。
図1に示すように、本実施の形態の衛生洗浄装置100は、少なくとも本体200と、袖部210と、便座300と、便蓋400などにより構成され、便器110の上面110aに設置される。
なお、以降では、衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座300の設置側を前方とし、後方より前方に向かって右側を右方、左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
図1に示すように、便座300および便蓋400は、回動機構を介して、開閉可能に本体200に取り付けられている。また、便蓋400を開放した状態においては、便蓋400は、衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。一方、便蓋400を閉蓋した状態においては、便蓋400は、便座300の着座面である上面300aと本体200の一部を隠す。さらに、便座300は、図1に示す便器110の上面110aに載置された状態から、便蓋400と同様に、本体200の前面部に起立する状態まで回動する。
また、袖部210は、本体200の右側部の後方から前方に突出するように設けられ、袖部210の上面に操作部211、複数の操作スイッチ212および表示灯213などが設置されている。操作スイッチ212は、衛生洗浄装置100の各機能を操作する。
便座ヒータ(図示せず)は、便座300の内部に設置され、便座300の着座面を、適温に加熱し、保温する。また、着座センサ(図示せず)は、便座300の回動軸を支持する本体200内の軸受け部分に設けられ、使用者が便座300に着座したことを検知する。なお、着座センサは、例えば重量式の着座センサなどで構成され、便座300に使用者が着座することによる重量変化でスイッチを開閉させる。これにより、使用者が、便座300上に着座していることを検知する。
また、図2に示すように、本体200の内部には、少なくともノズル装置500と、脱臭装置220と、制御部230などが設置されている。ノズル装置500は、本体200の中央部に設置されている。脱臭装置220は、ノズル装置500の左側に配置され、便器110内の臭気を吸引して脱臭する。制御部230は、操作スイッチ212の操作信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各機能を制御する。
さらに、ノズル装置500右側には、洗浄水供給部240の主な構成部材である温水タンク245が設置されている。温水タンク245は、例えばPP(ポリプロピレン)などの樹脂材料で成型されたタンク本体などから構成される。そして、タンク本体の内部の下部には洗浄水を加熱するシーズヒータ(図示せず)を備え、シーズヒータの近くには湯温を検知する温度検知部としてサーミスタ(図示せず)が設置されている。タンク本体の上面には、温水タンク245内の圧力が負圧になった場合に、外部から空気を導入して圧力を調整するバキュームブレーカが設置されている。
また、図3に示す給水栓241は、本体200の右側下方に設けられ、外部の水道配管などに接続される。そして、給水栓241の内部には、水道水などの洗浄水に含まれるごみや不純物などを除去する、ストレーナが組み込まれている。
また、図3に示すように、給水栓241と温水タンク245間の流水路270には、洗浄水供給部240の構成部材である、定流量弁242、止水電磁弁243、リリーフ弁2
44が順次接続され、図2に示す温水タンク245の前方に設置されている。
温水タンク245は、流水路270の一部を構成する接続チューブ612を介して、ノズル装置500の流調弁900に接続されている。そして、水道配管から給水栓241を介して供給される洗浄水を温水タンク245で加熱し、温水をノズル装置500に供給する。さらに、ノズル装置500に供給された温水を、ノズル装置500のノズル部700から使用者の局部に向けて噴出し、使用者の局部を洗浄する。
以上により、本実施の形態の衛生洗浄装置が構成される。
なお、ノズル装置500の詳細な構成および作用については、後述する。
<2>衛生洗浄装置の水回路の構成
以下に、本実施の形態の衛生洗浄装置における水回路の構成について、図1および図2を参照しながら、図3を用いて、詳細に説明する。
図3は、同衛生洗浄装置の洗浄水が送給される流路を構成する水回路を示す模式図である。
図3に示すように、本体200の内部には、ノズル装置500に洗浄水を供給する流水路270が形成されている。そして、流水路270に沿って、給水栓241、定流量弁242、止水電磁弁243、リリーフ弁244、温水タンク245、流調弁900、ノズル装置500などが順次、設置されている。
給水栓241は、水道配管から分岐水栓により分岐された給水管に接続されている。そして、給水栓241と温水タンク245との間の流水路270には、定流量弁242、止水電磁弁243と、リリーフ弁244が順に接続されている。さらに、温水タンク245とノズル装置500のノズル部700との間の流水路270には、流水路270の切り替えと流量を調節する流調弁900が接続されている。そして、流調弁900のそれぞれのポートには、ノズル部700を構成するお尻洗浄流路714、ビデ洗浄流路715、ノズルクリーニング流路716が接続されている。これにより、給水栓241から供給された洗浄水が、ノズル部700の各流路に供給される。
以下に、本体200における洗浄水の流れおよび制御部230による本体200の各構成要素の制御について、具体的に説明する。
まず、水道配管を流れる水道水が、洗浄水として給水栓241に供給される。このとき、供給された洗浄水は、定流量弁242により、流水路270内を流れる洗浄水の流量が一定に維持される。
そして、止水電磁弁243は、温水タンク245への洗浄水の供給状態を切り替える。止水電磁弁243の動作は、操作部211の操作に基づいて、制御部230により制御される。
つぎに、温水タンク245は、流水路270を通して供給される洗浄水を所定の温度に加熱する。温水タンク245の動作は、操作部211の操作とサーミスタの検知データに基づいて、制御部230により制御される。
つぎに、温水タンク245で加熱された洗浄水は、流水路270の一部である接続チューブ612を介して流調弁900に供給される。流調弁900は、例えばステッピングモ
ータ920を動作させることにより、洗浄水を、お尻洗浄流路714、ビデ洗浄流路715、ノズルクリーニング流路716のいずれかの流路に供給する。これにより、後述する、お尻洗浄噴出口711、ビデ洗浄噴出口712、ノズルクリーニング噴出口713のいずれかの噴出口から洗浄水が噴出する。流調弁900の洗浄および停止の動作は、使用者による操作部211の操作に基づいて、制御部230により制御される。また、噴出させる洗浄水の流量の調節動作は、使用者が操作部211で設定した流量に基づいて、制御部230により制御される。
以上により、本実施の形態の衛生洗浄装置の水回路が構成される。
<3>ノズル装置の構成
以下に、本実施の形態の衛生洗浄装置におけるノズル装置の構成について、図4から図20を用いて説明する。
図4は、本実施の形態におけるノズル装置の収納状態を示す斜視図である。図5は、図4に示す5−5線断面図である。図6は、同ノズル装置の駆動部の内部を示す斜視図である。図7は、同ノズル装置の収納状態を示す縦断面図である。図8は、図7に示すB部の詳細断面図である。図9は、同ノズル装置の収納状態を示すノズル部の軸方向の断面図である。図10は、図9に示すC部の詳細断面図である。図11は、同ノズル装置のお尻洗浄状態を示す斜視図である。図12は、同ノズル装置のお尻洗浄状態を示す縦断面図である。図13は、図12に示すD部の詳細断面図である。図14は、同ノズル装置のお尻洗浄状態を示すノズル部の軸方向の断面図である。図15は、図14に示すE部の詳細断面図である。図16は、同ノズル装置のビデ洗浄状態を示す斜視図である。図17は、同ノズル装置のビデ洗浄状態を示す縦断面図である。図18は、図17に示すF部の詳細断面図である。図19は、同ノズル装置のビデ洗浄状態を示すノズル部の軸方向の断面図である。図20は、図19に示すG部の詳細断面図である。
まず、図4に示すように、ノズル装置500は、少なくとも支持部600と、ノズル部700と、駆動部800と、流調弁900などから構成されている。支持部600は、例えばPOM(ポリオキシメチレン:一般的にはポリアセタール、アセタール樹脂)などの樹脂材料で成型した、略三角形(三角形を含む)の枠状(図6参照)で形成されている。ノズル部700は、支持部600に沿って進退移動する。駆動部800は、ノズル部700を進退方向に移動するように駆動する。流調弁900は、ノズル部700の各流路への洗浄水の供給を切り替える。
なお、以降ではノズル部700の収納方向を後方とし、ノズル部700の進出方向を前方とし、後方より前方に向かって右側を右方、左側を左方として、ノズル装置500の各構成要素の配置を説明する。
以下に、ノズル装置500の各構成要素について、具体的に説明する。
支持部600は、図6に示すように、側面視で、略三角形(三角形を含む)の枠状に形成され、底辺部610と、傾斜部620と、縦辺部640などから構成される。底辺部610は、略水平(水平を含む)に設けられ、傾斜部620は底辺部610に対して後部より前部に向かって降下(前下がり)して、底辺部610の上方に設けられている。縦辺部640は、底辺部610と傾斜部620の後端を接合するように設けられている。そして、支持部600の傾斜部620には、ノズル部700の進退移動を案内するガイドレール621と、駆動部800の可撓ラック810を案内するラックガイド622が、傾斜部620の略全長(全長を含む)に亘って形成されている。さらに、傾斜部620の前端下方には、ノズル部700を抱囲するように支持する略円筒形状(円筒形状を含む)の抱持部
630が一体に形成されている。
このとき、図5に示すように、支持部600の傾斜部620に配置されるノズル部700を案内するガイドレール621は、断面が略T字形状(T字形状を含む)に形成されている。さらに、支持部600の傾斜部620に配置される可撓ラック810を案内するラックガイド622は、断面が一方の側面が開放された略コの字形状(コの字形状を含む)に形成されている。これにより、ラックガイド622は、可撓ラック810の上下面と他方の側面を規制して、可撓ラック810を案内する。
また、ラックガイド622は、図6に示すように、支持部600の傾斜部620から支持部600の後部の縦辺部640および底辺部610に亘って連続して形成されている。このとき、支持部600の傾斜部620と縦辺部640を接続するコーナおよび縦辺部640と底辺部610を接続するコーナは、略円弧形状(円弧形状を含む)に形成されている。なお、支持部600の縦辺部640と底辺部610に形成されるラックガイド622の断面形状も、傾斜部620のラックガイド622と同様に、略コの字形状(コの字形状を含む)に形成されている。しかし、ラックガイド622の開放された側面は、傾斜部620では左側側面であるが、縦辺部640と底辺部610とは反対の右側側面を開放している。そして、支持部600の縦辺部640と底辺部610のラックガイド622の開放面は、図5に示す別部材からなる支持部蓋660により閉塞される。
また、図6に示すように、可撓ラック810の上下方向の移動を規制するラックガイド622の高さ方向の寸法は、支持部600の傾斜部620と縦辺部640において、可撓ラック810の厚さより僅かに大きい寸法に形成されている。一方、支持部600の底辺部610のラックガイド622の高さ方向の寸法は、可撓ラック810の厚さより十分に大きい寸法で形成している。これにより、支持部600の底辺部610において、ラックガイド622と可撓ラック810との摺動に伴う抵抗を減少させている。
また、駆動部800は、ノズル部700に結合された可撓ラック810と、可撓ラック810と噛合するピニオンギア820と、ピニオンギア820を回転駆動する駆動モータ830で構成されている。これにより、駆動部800は、ノズル部700をガイドレール621に沿って進退移動させる。
また、可撓ラック810は、例えばTPU(熱可塑性ポリウレタン)またはTPEE(ポリエステル系エラストマ)からなるTPE(熱可塑性エラストマ)などにより、一体に成型されて形成されている。そして、可撓ラック810は、全体として僅かに湾曲した帯状に形成され、湾曲形状の内周面には駆動部800のピニオンギア820と噛合する歯形が形成され、湾曲形状の外周面は平坦面に形成されている。なお、可撓ラック810の湾曲形状の外周面は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)などのフッ素樹脂でコーティングされている。これにより、可撓ラック810とラックガイド622との摩擦抵抗を低減させている。
また、図6に示すように、支持部600の縦辺部640と底辺部610のコーナには、可撓ラック810と噛合して可撓ラック810を駆動するピニオンギア820と、ピニオンギア820を駆動する駆動モータ830が設置されている。このとき、駆動モータ830は、例えばステッピングモータで構成され、パルス信号により回転角度が制御される。ピニオンギア820は、ラックガイド622のコーナと同心となる位置に設置され、ピニオンギア820の中心に形成された軸受け部820aに駆動モータ830の回転軸が結合されている。これにより、駆動モータ830の回転が、ピニオンギア820を介して、噛合する可撓ラック810の歯形に伝達され、可撓ラック810を駆動する。
また、図9などに示すように、支持部600の傾斜部620の前端(抱持部630側)および後端(縦辺部側)の近傍には、前ストッパ受部623と後ストッパ受部624が形成されている。これにより、ノズルカバー720の摺動範囲を所定の範囲に規制する。
また、図7や図8に示すように、支持部600の抱持部630の内周面と、ノズル部700のノズルカバー720の外周面との間には、隙間740が設けられている。そして、ノズル部700から噴出した洗浄水が抱持部630の内周面とノズル部700のノズルカバー720の外周面との間に形成される隙間740に流入する、これにより、洗浄水は、ノズル部700のノズルカバー720の外周面を洗浄し、排水口725から排出される。
また、抱持部630の前方には、ノズル部700の進退により開閉するノズル蓋650を開閉自在に設けている。そして、ノズル部700が収納されている状態で、ノズル蓋650が閉塞することにより、ノズル部700が便などで汚染されることを防止する。
また、図4に示すように、支持部600の底辺部610には、給水継手611を設けている。給水継手611は、洗浄水供給部に接続する給水チューブ(図示せず)と、支持部600から流調弁900に洗浄水を供給する接続チューブ612と、を相互に接続する。さらに、給水継手611は、後述の摺動部を構成するスライダ750の摺動範囲の略中央(中央を含む)に対応するガイドレール621の中間位置より垂直下方の位置で、かつガイドレール621より十分に離れた位置に配置されている。この配置により、接続チューブ612の長さを短くすることができる。また、ノズル部700がガイドレール621に沿って進退する場合における接続チューブ612の変形を、少なくできる。さらに、接続チューブ612による抵抗を抑制できる。その結果、ノズル部700をガイドレール621に沿って、スムーズに摺動させることができる。
また、図8や図9に示すように、ノズル部700は、例えばABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)などの樹脂材料で成型され、ノズル本体710と、ノズルカバー720と、連結部730から構成されている。ノズル本体710は、例えば棒状で形成され、前方の先端部側に、お尻洗浄噴出口711と、ビデ洗浄噴出口712と、ノズルクリーニング噴出口713を備えている。さらに、ノズル本体710は、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712およびノズルクリーニング噴出口713に連通する、お尻洗浄流路714とビデ洗浄流路715とノズルクリーニング流路716を備えている。ノズルカバー720は、例えば筒状に形成され、ノズル本体710の略全体(全体を含む)を覆う。連結部730は、後述するように、ノズル本体710とノズルカバー720を係合して、ノズル本体710でノズルカバー720を牽引する。
そして、ノズル部700は、ノズル部700の前方側が支持部600の抱持部630に挿入した状態で支持され、後部側がガイドレール621に懸架された状態で摺動自在に設置されている。このとき、ノズル部700は、図4、図7、図9に示すノズル部700を抱持部630より後方に収容された収納位置と、図11、図12、図14に示すノズル部700が抱持部630より突出したお尻洗浄位置と、図16、図17、図19に示すビデ洗浄位置との間を進退可能に移動する。
また、図9に示すように、ノズルカバー720は、ノズルカバー本体721と連結部材722とで構成されている。ノズルカバー本体721は、例えばステンレスの薄板を円筒形状に成型して形成され、先端面が閉塞面で、後端面は開放面で構成されている。連結部材722は、例えばPOMなどの樹脂材料で略円筒形状(円筒形状を含む)に成型され、その端面部の相対する位置に一対のノズル本体710と係合する連結片723(図10参照)が形成されている。さらに、連結部材722の後端右側には、ノズルカバー720の摺動範囲を規制するノズルカバーストッパ726が一体に形成されている。そして、ノズ
ルカバーストッパ726が支持部600に形成された前ストッパ受部623と後ストッパ受部624に当接することにより、ノズルカバー720の摺動範囲が規制される。
また、ノズルカバー720の連結部材722の一部は、ノズルカバー本体721の後端に設けた開放面の開口からノズルカバー本体721内に挿入された状態で固定されて一体化されている。
また、図7や図8に示すように、ノズルカバー本体721の前方上面には、ノズル本体710のお尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712と対向可能な位置に噴出開口724が1個設けられている。ノズルカバー本体721の前方下面には、ノズルカバー本体721内に流出した洗浄水を外部に排出する排水口725が設けられている。
また、ノズル本体710は、例えばABSなどの樹脂材料で成型により形成されている。このとき、ノズル本体710は、ノズルカバー720の内径より僅かに小さい外径で形成される。これにより、ノズルカバー720にノズル本体710を挿入した状態で、ノズル本体710とノズルカバー720との互いにスムーズな摺動を可能としている。
また、図8に示すように、ノズル本体710の先端部側の上面には、お尻洗浄噴出口711と、その後方に間隔を開けてビデ洗浄噴出口712が配置されている。さらに、図9に示すように、ビデ洗浄噴出口712の後方の左側面には、ノズルクリーニング噴出口713が設置されている。
また、ノズル本体710の内部には、図7や図9に示すように後端部から先端部まで略直線状(直線状を含む)に配置された、お尻洗浄流路714と、ビデ洗浄流路715と、ノズルクリーニング流路716の3本の流路が、図5に示すような配置で形成されている。具体的には、お尻洗浄流路714は、ノズル本体710の右側下方に配置される。そして、図13に示すように、お尻洗浄流路714は、先端部近傍で、ノズル本体710の上面方向へ流路を屈曲させ、お尻洗浄噴出口711に連通されている。これにより、お尻洗浄噴出口711から噴出した洗浄水は、対向して配置されたノズルカバー720の噴出開口724を通過して上方に向かって噴出される。
一方、図5に示すビデ洗浄流路715は、ノズル本体710の右側上方に配置される。そして、図18に示すように、ビデ洗浄流路715は、先端部近傍で、ノズル本体710の上面方向へ流路を屈曲させ、ビデ洗浄噴出口712に連通されている。これにより、ビデ洗浄噴出口712から噴出した洗浄水は、対向して配置されたノズルカバー720の噴出開口724を通過して上方に向かって噴出される。
さらに、図5に示すノズルクリーニング流路716は、ノズル本体710の左側に配置される。そして、図9や図19に示すように、ノズルクリーニング流路716は、先端部近傍で、ノズル本体710の左側へ流路を屈曲させ、ノズルクリーニング噴出口713に連通されている。これにより、ノズルクリーニング噴出口713から噴出した洗浄水は、ノズルカバー720の内部に噴出され、ノズルカバー720の排水口725からノズルカバー720の外部に放出される。つまり、ノズルクリーニング噴出口713から噴出した洗浄水は、ノズル部700とその周辺の清掃に使用される。
また、図4や図7に示すように、ノズル本体710の後端面には、流調弁900が設置されている。流調弁900は、例えばディスクタイプの弁本体910と、切り替え動作を駆動する、例えばステッピングモータ920とで構成されている。そして、流調弁900は、お尻洗浄流路714と、ビデ洗浄流路715と、ノズルクリーニング流路716を選択的に切り替えて、洗浄水を供給する。
さらに、流調弁900の弁本体910の外郭は、例えばPOMなどの樹脂材料で、成型されている。そして、流調弁900の弁本体910の上部には、一体に成型されたノズル部700をガイドレール621に懸架し摺動部を構成するスライダ750と、ノズル部700と可撓ラック810とを係合させる係合片751が配置されている。
スライダ750は、図5に示すように、略T字形状(T字形状を含む)のガイドレール621を抱持するように、断面が略C字形状(C字形状を含む)に形成されている。そして、スライダ750の内周面の両側端部750a近傍のみが、ガイドレール621の上下面と接触するような寸法で形成されている。さらに、スライダ750の中央部は、ガイドレール621と間隙が生じるように凹陥した断面の凹部750bが形成されている。これにより、スライダ750とガイドレール621との接触面積を減少させ、摺動抵抗を低減している。
また、上述したように、スライダ750の前端部に係合片751が、一体に形成されている。そして、図6に示すように、可撓ラック810は、係合片751の後方に配置されている。これにより、可撓ラック810からスライダ750に付加される駆動力は、係合片751を介して、常にスライダ750の前端部に加えられる。つまり、ガイドレール621に挿入されスライダ750は、ガイドレール621に沿って摺動可能となる。
さらに、可撓ラック810と係合されたスライダ750の係合片751は、ラックガイド622の内部に配置される。そして、可撓ラック810は、ピニオンギア820を介して駆動モータ830で駆動される。これにより、係合片751がラックガイド622の内部で前後に摺動し、ノズル部700がガイドレール621に沿って前後に摺動する。
このとき、ノズル部700の摺動時において、ノズル部700の前方は抱持部630により支持され、後方はスライダ750を介してガイドレール621に支持されている。これにより、可撓ラック810からノズル部700に付与される駆動力は、支持部600の前端と後端(具体的には、ノズル部700が移動する範囲におけるノズル本体710のホース接続部である給水口911の位置の最も前方に出た位置と最も後方に収納された位置)との中間に加えられるように構成される。そのため、ノズル部700に付与される駆動力により発生する、ガイドレール621とスライダ750との摩擦抵抗(摺動抵抗)を抑制することができる。この理由は、片側にホース接続部である給水口911と給水継手611とを集めて近接して配置した場合、ノズル部700の移動に伴ってホース接続部が近接すると、接続チューブ612のねじれ力が大きくなるため、ねじり力が摺動抵抗となる。つまり、ノズル部700が前後移動する場合、ホース接続部間の距離を均一に保つことが、摺動抵抗を小さくできる。理想的には、接続チューブ612が移動する軌跡である半円の中心に設けることが、好ましい。しかし、通常、ホース接続部の配置には制約がある。そこで、本実施の形態では、ノズル部700の摺動する移動区間の中央に、いずれか一方のホース接続部を設けることにより、ホース接続部間の距離を最も均一に保つことができる。その結果、ノズル部700をスムーズに摺動することができる。
また、図4に示すように、流調弁900の弁本体910外面には、流調弁900に洗浄水を供給する給水口911が設置されている。そして、給水口911は、支持部600の給水継手611と連通する接続チューブ612と接続されている。これにより、洗浄水が、流調弁900により選択的に、ノズル部700の各流路に供給される。
つぎに、本実施の形態におけるノズル部の連結部の構成および動作について、図10、図15および図20を用いて説明する。なお、連結部730は、上述したように、ノズルカバー720の連結部材722と、ノズル本体710の連結受部717で構成される。
まず、図10、図15および図20に示すように、連結受部717は、ノズル本体710の後端部の外周右側に形成されている。連結受部717は、例えば2本の略V字型(V字型を含む)の溝からなる、前凹陥部717aと後凹陥部717bが、前後に所定の間隔を開けて構成されている。なお、前凹陥部717aと後凹陥部717bの間隔は、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712の間隔と等しい寸法で設けられる。
一方、ノズルカバー720の連結部材722は、略円筒状(円筒形状を含む)の、例えばPOMなどの樹脂材料で成型され、連結片723と、連結突起723aを備えている。連結片723は、ノズルカバー720の後部両側部で、後方に突出して形成されている。連結突起723aは、連結片723の後端部に、内方に突出した略V字形状(V字形状を含む)で形成されている。
そして、ノズル本体710をノズルカバー720に挿入した状態において、ノズルカバー720の連結部材722の弾性により、連結突起723aがノズル本体710の連結受部717に常時押し当てられた状態となる。つまり、連結突起723aが、前凹陥部717a、または後凹陥部717bに係合した状態で、ノズル本体710とノズルカバー720が連結される。これにより、ノズルカバー720は、ノズル本体710に牽引されて移動することが可能となる。
このとき、図10や図15に示すように、連結突起723aが前凹陥部717aに入り込んでいる場合、図18に示すように、ノズル本体710のビデ洗浄噴出口712とノズルカバー720の噴出開口724が対向した状態となる。一方、図20に示すように、連結突起723aが後凹陥部717bに入り込んでいる場合、図8や図13に示すように、お尻洗浄噴出口711と噴出開口724が対向した状態となる。
以上のように、本実施の形態のノズル装置500は、ノズルカバー720の内側にノズル本体710が収納された構成であり、その部分の構成を図21〜図25により詳細に説明する。
図21は、図4に示されている接続チューブ612、抱持部630、ノズル蓋650、駆動モータ830などを取り外した状態のノズル部700の外観を示す正面図であり、図22は、図21のノズル部700の軸方向の断面図である。
また、図23は、図21に示すA−A線の矢視断面図であり、図24は、図21に示すB−B線の矢視断面図である。さらに、図25は、図21のノズルカバー720を取り外した状態の外観を示す斜視図である。
図22に示すように、ノズル本体710は、お尻洗浄流路714とビデ洗浄流路715が形成されたノズル根元部材761と、お尻洗浄噴出口711と、ビデ洗浄噴出口712が形成された噴出口部材763と、ノズル根元部材761と噴出口部材763を連接するノズル先端部材762とが溶着により一体化されている。
ノズル根元部材761とノズル先端部材762と噴出口部材763は、前述した樹脂材料で成型され、ノズル根元部材761とノズル先端部材762とは第一溶着部764で溶着され、ノズル先端部材762と噴出口部材763とは、第二溶着部765で溶着されている。
また、ノズル本体710の噴出口の近傍に相当するノズル先端部材762の上側、下側には、それぞれ上隙間リブ766および下隙間リブ767が形成されている(図22,図
23参照)。ここで、上隙間リブ766は、上隙間リブ766の上端部が噴出口部材763の上端部より高く形成されている。さらに、ノズル先端部材762の右側、左側には、それぞれ右隙間リブ768および左隙間リブ769が形成されている(図23参照)。
また、ノズル本体710の根元側の断面図である図24に示すように、ノズル根元部材761にも、根元隙間リブ771、根元隙間リブ772、根元隙間リブ773が形成されている。
ちなみに、図23に示したノズル本体710の先端側(前側)の上隙間リブ766,下隙間リブ767,右隙間リブ768,左隙間リブ769によるノズルカバー720の内側隙間は0.2ミリ程度に規制され、図24に示したノズル本体710の根元側(後側)の根元隙間リブ771、根元隙間リブ772、根元隙間リブ773によるノズルカバー720の内側隙間は0.8ミリ程度に規制される。すなわち、ノズル本体710の先端側(前側)の隙間は根元側(後側)の隙間より小さい隙間に規制される構成である。
以上により、本実施の形態のノズル装置500が構成される。
<4>ノズル装置の動作および作用
以下に、本実施の形態の衛生洗浄装置におけるノズル装置の動作および作用について、図4から図20を用いて説明する。
まず、図7に示すように、ノズル装置500を使用しない収納状態においては、ノズル本体710はガイドレール621の最も後部に位置し、ノズルカバー720も摺動範囲の最も後部に位置している。このとき、図10に示すように、ノズルカバー720のノズルカバーストッパ726は、支持部600の後部に設けた後ストッパ受部624に当接する。つまり、ノズル本体710とノズルカバー720が、最も後退した位置に配置されることになる。そこで、この位置を、以降では「収納位置」と称し、この状態を「収納状態」と称して説明する。このとき、連結片723の連結突起723aは、図10に示すように、連結受部717の前凹陥部717aに嵌入した状態で、ノズル本体710とノズルカバー720が連結されている。
つぎに、ノズル装置500の収納状態から洗浄を開始する場合について、図7、図8を用いて説明する。
まず、使用者が洗浄を指示する操作スイッチ212を操作する。これにより、制御部230が、各部の制御を開始する。
具体的には、まず、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を駆動して、お尻洗浄流路714に洗浄水を供給する。そして、お尻洗浄噴出口711より抱持部630の内周面に向かって洗浄水を噴出させる。
このとき、噴出した洗浄水は抱持部630の内周面で反射して、ノズルカバー本体721の外周面と抱持部630内周面との隙間740を流れる。これにより、主にノズルカバー本体721の外周面の汚れを除去する。
そして、制御部230は、所定時間が経過した後、流調弁900を制御して洗浄水の供給を停止する。この動作を、「ノズル前洗浄」と称する。この「ノズル前洗浄」は、ノズルカバー本体721の外周面の洗浄とともに、温水タンク245以降の流路に滞溜している冷水などの排出を目的としている。これにより、「ノズル前洗浄」が終了する。
つぎに、制御部230は、駆動モータ830を正回転させてノズル本体710を前方に移動させる。このとき、ノズルカバー720の連結片723の連結突起723aは、連結受部717の前凹陥部717aに嵌入した状態が保たれている。これにより、ノズルカバー720は、ノズル本体710に牽引され一体化した状態で前方に移動する。
以下に、使用者が設定した操作がお尻洗浄、ビデ洗浄およびノズルクリーニング洗浄に分けて、動作を説明する。
まず、使用者が設定した操作がお尻洗浄の操作であった場合について、説明する。
図11、図12、図14に示すように、ノズル本体710およびノズルカバー720は、予め設定された制御シーケンスにしたがい、原点状態から駆動モータ830の回転数が設定値に達するまで、前方に移動して停止する。このとき、ノズルカバー720に設けたノズルカバーストッパ726は、支持部600の前ストッパ受部623に接触して停止した状態にある。つまり、図13に示すように、お尻洗浄噴出口711が、ノズルカバー本体721の噴出開口724と対向した状態となる。この位置が、「お尻洗浄位置」となる。
つぎに、「お尻洗浄位置」に配置された状態で、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を制御して、お尻洗浄流路714に洗浄水を通水して、お尻洗浄を開始する。そして、お尻洗浄噴出口711から噴出した洗浄水は、ノズルカバー本体721の噴出開口724に接触せずに通過して、上方に噴射される。
このとき、図13に示すように、ビデ洗浄噴出口712は、ノズルカバー本体721によって覆われている状態である。そのため、お尻洗浄によって生じた汚水が、ビデ洗浄噴出口712に直接かかることを防止できる。これにより、ビデ洗浄噴出口712を清潔に保つことができる。
つぎに、お尻洗浄の停止を操作すると、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を制御して洗浄水の供給を停止する。そして、制御部230は、駆動モータ830を逆回転させて、ノズル本体710およびノズルカバー720を後方へ移動させ、図7や図8に示す元の「収納位置」に戻す。
つぎに、「収納位置」に戻った状態において、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を制御してお尻洗浄流路714に洗浄水を供給する。そして、お尻洗浄噴出口711から、噴出開口724を介して洗浄水を噴出する。噴出した洗浄水は、抱持部630の内周面で反射して、ノズルカバー本体721の外周面と抱持部630内周面との隙間740を流入する、これにより、主に、ノズルカバー本体721の外周面の汚れを効果的に除去する。
つぎに、制御部230は、お尻洗浄噴出口711から洗浄水を噴出して所定時間経過後に、止水電磁弁243と流調弁900を制御して洗浄水の供給を停止する。なお、上記の洗浄動作を、「ノズル後洗浄」と称する。
以上により、お尻洗浄の動作が完了する。
以下に、使用者がビデ洗浄を選択した場合について、説明する。
ビデ洗浄を選択した場合、まず、お尻洗浄と同様に、制御部230は駆動モータ830を正回転させてノズル本体710を前方に移動させる。なお、ビデ洗浄の場合は、お尻洗
浄位置を越えてさらにノズル本体710を前方に移動させる。
このとき、お尻洗浄の場合、図15、図20に示すように、ノズルカバー720に設けたノズルカバーストッパ726は、支持部600の前ストッパ受部623に当接し、ノズルカバー720がこれ以上前方に移動することを規制する。そこで、ビデ洗浄の場合は、さらに駆動モータ830を正回転させて、ノズル本体710を、さらに前方に移動させる。これにより、連結片723の連結突起723aが、前凹陥部717aから外れる。なお、上記動作を可能とするためには、連結突起723aを外すのに要する荷重値よりも、ノズルを前後方向に移動させる駆動モータ830の駆動トルクが大きいことが条件となる。
つぎに、連結突起723aが前凹陥部717aから外れると、ノズル本体710とノズルカバー720は分離された状態となる。このとき、ノズルカバー720は、支持部600の前ストッパ受部623によって移動が規制される。そのため、ノズル本体710だけが、さらに前方に移動し、連結突起723aは後凹陥部717bに、嵌り込む。そして、連結突起723aが後凹陥部717bに完全に嵌入すると、図18に示すように、ビデ洗浄噴出口712がノズルカバー本体721の噴出開口724と対向した状態となる。この時点で、制御部230は、駆動モータ830の駆動を停止する。これにより、ノズル本体710の前方への移動が終了する。この状態が、「ビデ洗浄位置」となる。
つぎに、「ビデ洗浄位置」にノズル本体710が到達した時点で、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を制御して、ビデ洗浄流路715に洗浄水を通水して、ビデ洗浄を開始する。そして、ビデ洗浄噴出口712から噴出した洗浄水は、ノズルカバー本体721の噴出開口724に直接接触することなく通過して、上方に噴射される。
このとき、図18に示すように、お尻洗浄噴出口711の上部は、ノズルカバー720のノズルカバー本体721で覆われている状態である。そのため、ビデ洗浄によって生じた汚水が、お尻洗浄噴出口711に直接かかることを防止できる。これにより、お尻洗浄噴出口を清潔に保つことができる。
つぎに、ビデ洗浄の停止を操作すると、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を制御して洗浄水の供給を停止する。そして、制御部230は、駆動モータ830は逆回転し、ノズル本体710およびノズルカバー720は後方へ移動を開始する。このとき、収納のために後方へ移動する途中過程において、ノズルカバー720のノズルカバーストッパ726は、支持部600の後部に設けた後ストッパ受部624に当接する。
そして、ノズルカバーストッパ726が後ストッパ受部624に当接した位置で、制御部230は、駆動モータ830の駆動を停止する。そして、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を制御してビデ洗浄流路715に洗浄水を供給し、ビデ洗浄噴出口712から噴出させる。ビデ洗浄噴出口712から噴出した洗浄水は、支持部600の抱持部630の内周面で反射して、ノズルカバー本体721の外周面と抱持部630内周面との隙間740を流入する。これにより、主に、ノズルカバー本体721の外周面の汚れを効果的に除去する。
つぎに、制御部230は、ビデ洗浄噴出口712から洗浄水を噴出して所定時間経過後に、止水電磁弁243と流調弁900を制御して洗浄水の供給を停止する。
そして、ノズル洗浄終了後、制御部230は、駆動モータ830を逆回転し、ノズル本体710を、さらに後方に移動させる。このとき、ノズルカバー720に設けたノズルカバーストッパ726は、支持部600の後ストッパ受部624に当接し、ノズルカバー720がこれ以上後方に移動することを規制する。そのため、さらに、ノズル本体710を
後方に移動せると、連結片723の連結突起723aが、後凹陥部717bから外れる。なお、上記の動作を可能とするためには、連結突起723aの解除に要する荷重値よりも、ノズルカバー720を前後方向に移動させる駆動モータ830の駆動トルクが大きいことが条件となる。
つぎに、連結突起723aが後凹陥部717bから外れると、ノズル本体710とノズルカバー720は分離された状態となる。このとき、ノズルカバー720は、支持部600の後ストッパ受部624によって移動を規制される。そのため、ノズル本体710だけが、さらに後方に移動し、連結突起723aは前凹陥部717aに嵌り込む。そして、連結突起723aが前凹陥部717aに完全に嵌入すると、図13に示すように、ノズルカバー本体721の噴出開口724がお尻洗浄噴出口711と対向する状態となる。この時点で、制御部230は、駆動モータ830の回転を停止する。これにより、ノズル本体710の収納動作が終了する。
以上により、ビデ洗浄の動作が完了する。
以下に、衛生洗浄装置の未使用時に、ノズル部700をクリーニングする場合の動作について、説明する。
まず、使用者が、操作スイッチ212でノズルクリーニングの操作を設定する。これにより、制御部230は、駆動モータ830を正回転させて、ノズル本体710とノズルカバー720を前方に移動させる。
そして、ノズル本体710が「お尻洗浄位置」に到達すると、制御部230は、駆動モータ830を停止する。さらに、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を制御して、ノズルクリーニング流路716に洗浄水の通水を開始する。
このとき、ノズルクリーニング噴出口713から噴出した洗浄水は、ノズルカバー720の内部に噴出され、ノズルカバー720の排水口725からノズルカバー720の外部に放出される。これにより、使用者は、排水口725から放出された洗浄水を使用して、ブラシなどでノズル部700とその周辺の清掃を行うことができる。
つぎに、清掃終了後に、使用者が停止操作を行うことにより、制御部230は、止水電磁弁243と流調弁900を制御して洗浄水の噴出を停止する。そして、制御部230は、駆動モータ830を駆動してノズル本体710を収納位置へ移動させる。
以上により、ノズル部700のクリーニング動作が完了する。
これらにより、使用者が設定した操作がお尻洗浄、ビデ洗浄およびノズルクリーニング洗浄の動作が行われる。
以上のように、本実施の形態によれば、ノズル部700の前方は抱持部630により支持され、後方はスライダ750を介してガイドレール621に支持される。この状態で、可撓ラック810から付与される駆動力が、支持部600の前端と後端との中間に常に加えられる構成としている。そのため、可撓ラック810からスライダ750に付与される駆動力により発生する摩擦抵抗を前後に分散して、摩擦抵抗を小さくできる。これにより、大きな摩擦抵抗によるスライダ750の摺動が不安定になることを抑制して、ノズル部700をスムーズに摺動することができる。その結果、ノズル部700の洗浄位置の位置決め精度を向上できる。
また、本実施の形態によれば、ガイドレール621とラックガイド622は、ノズル装置500の上方に配置し、ノズル部700はスライダ750を介してガイドレール621に懸装された構成を有する。このとき、スライダ750は、ノズル部700の上方に配置される。そのため、スライダ750に一体に結合される可撓ラック810の一端も、ノズル装置500の略最上部(最上部を含む)に配置される。これにより、可撓ラック810のスムーズな駆動に要求される曲率で形成する軌跡を、ノズル装置500の略最上部と略最下部(最下部を含む)との間で形成することが可能となる、その結果、ノズル装置500全体の高さを機能上、必要最小限度の高さにできる。
また、本実施の形態によれば、ノズル部700は、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712とノズルクリーニング噴出口713の3個の噴出口と、それぞれの噴出口に個別に連通するお尻洗浄流路714とビデ洗浄流路715とノズルクリーニング流路716の3本の流路と、流路への洗浄水の供給を切り替える流調弁900とを一体に備えて構成される。そのため、ノズル部700には、1本の接続チューブ612で洗浄水を供給することが可能となる。これにより、ノズル装置500の進退駆動の抵抗となる接続チューブ612を必要最小限度の1本で、スムーズな進退移動が可能になる。その結果、駆動機構に関わる駆動モータ830、ピニオンギア820、可撓ラック810などを小型化して、ノズル装置500全体を小型化および軽量化することができる。
また、本実施の形態によれば、ノズル部700は、3個の噴出口と、噴出口に個別に連通する3本の流路を備えたノズル本体710と、ノズル本体710の多くの部分を覆う筒状のノズルカバー720と、ノズル本体710とノズルカバー720を連結する連結部730とを備える。さらに、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712から噴出した洗浄水は、ノズルカバー720の噴出開口724を介して外部に噴出する構成を有する。これにより、複数の噴出口を備えたノズル本体710でありながら、1個の共通の噴出開口724を介して洗浄水を噴出できる。その結果、汚れが付着しやすい箇所を少なくして、清潔性が向上する。さらに、ノズル装置500の見栄えも向上し、衛生的で清潔感を維持できる。
なお、本実施の形態では、可撓ラックをTPU(熱可塑性ポリウレタン)またはTPEE(ポリエステル系エラストマ)からなるTPE(熱可塑性エラストマ)で成型し、外周面にフッ素樹脂であるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)をコーティングした構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、可撓ラックを、フッ素樹脂を含有した熱可塑性エラストマで成型してもよい。これにより、可撓ラックの摩擦抵抗を低減する効果を得ることができる。
また、本実施の形態では、摺動抵抗を低減するために、スライダの内周面は両側端部のみがガイドレールの上下面と接触するように小さい寸法に形成し、中央部はガイドレールと間隙が生じるように凹陥した断面に形成した例で説明したが、これに限られない。例えば、スライダの内周面か、ガイドレールの上下面のどちらかに、摺動方向に沿って複数のリブを形成してもよい。これにより、スライダとガイドレールとの接触面積を減少させて、摺動抵抗を低減することができる。
また、図21〜図25により説明したように、本実施の形態のノズル装置500は、ノズルカバー720の内側にノズル本体710が収納された構成で、ノズル本体710の噴出口の近傍に相当するノズル先端部材762の上側、下側には、それぞれ上隙間リブ766および下隙間リブ767が形成されている(図22,図23参照)。さらに、ノズル先端部材762の右側、左側には、それぞれ右隙間リブ768および左隙間リブ769が形成されている(図23参照)。
このように、ノズル本体710の噴出口の近傍に相当するノズル先端部材762に、ノズル本体710の噴出口とノズルカバー720の内壁との適切な隙間を保持する隙間リブ766,767,768,769を設けたことにより、ノズル本体710は噴出口が形成されている先端近傍すなわち噴出口近傍が、ノズルカバー720内で隙間規制されながら支持されるため、噴出口であるお尻洗浄噴出口711またはビデ洗浄噴出口712から洗浄水を吐出して人体洗浄を行う際に、洗浄水の吐出噴流によってノズル本体710がノズルカバー720内で振動することを抑制できる。これにより、ノズル部の洗浄位置姿勢を安定させて、洗浄される位置安定性を向上させることができる。
特に、上隙間リブ766は、上隙間リブ766の上端部が噴出口部材763の上端部より高く形成されていることによって、ノズルカバー720の噴出開口724とお尻洗浄噴出口711またはビデ洗浄噴出口712との間の隙間が確保されるため、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712を切り替える際に、駆動モータ830によって、ノズル本体710をノズルカバー720内で摺動して移動しても、ノズルカバー720の噴出開口724の縁部と、お尻洗浄噴出口711またはビデ洗浄噴出口712との接触を避けることができ、お尻洗浄噴出口711またはビデ洗浄噴出口712か擦れて変形や摺り傷などの損傷をすることがなく、長い年月に亘り安定した噴流を保つことができる。
さらに、ノズル本体710の噴出口の近傍に設けた隙間リブ766,767,768,769により摺動接触面積が極めて小さくなるため、ノズル本体710をノズルカバー720との摺動抵抗を小さくなり、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712を切り替える駆動モータ830は、駆動力が小さい小型コンパクトで安価なモータでよい。これにより、ノズル装置500を小型コンパクトにすることができる。
また、本実施の形態では、ノズル装置500を小型コンパクトにするために、1本のノズル本体710の中に、お尻洗浄流路714とビデ洗浄流路715の二つの流路を形成し、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712から切り替え噴出する構成において、製造上、お尻洗浄流路714とビデ洗浄流路715が形成されたノズル根元部材761と、お尻洗浄噴出口711と、ビデ洗浄噴出口712が形成された噴出口部材763と、ノズル根元部材761と噴出口部材763を連接するノズル先端部材762とが溶着により一体化されている。
このように、ノズル根元部材761とノズル先端部材762とが第一溶着部764で溶着され、さらに、ノズル先端部材762と噴出口部材763とが、第二溶着部765で溶着されているような場合、溶着によって、ノズル根元部材761とノズル先端部材762の軸心に多少のズレが発生しても、ノズル本体710は噴出口が形成されている先端近傍すなわち噴出口近傍が、ノズルカバー720内で隙間規制されながら支持されるため、上記した効果が得られる。
上記した効果とは、一つ目は、噴出口であるお尻洗浄噴出口711またはビデ洗浄噴出口712から洗浄水を吐出して人体洗浄を行う際に、洗浄水の吐出噴流によってノズル本体710がノズルカバー720内で振動することを抑制できる。これにより、ノズル部の洗浄位置姿勢を安定させて、洗浄される位置安定性を向上させることができる。
二つ目は、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712を切り替える際に、駆動モータ830によって、ノズル本体710をノズルカバー720内で摺動して移動しても、ノズルカバー720の噴出開口724と、お尻洗浄噴出口711またはビデ洗浄噴出口712との接触を避けることができ、お尻洗浄噴出口711またはビデ洗浄噴出口712か擦れて変形や摺り傷などの損傷をすることがなく、長い年月に亘り安定した噴流を保つことができる。
三つ目は、お尻洗浄噴出口711とビデ洗浄噴出口712を切り換える際の駆動モータ830は、駆動力が小さい小型コンパクトで安価なモータでよい。これにより、ノズル装置500を小型コンパクトにすることができる。
また、図23および図24で説明したように、ノズル本体710の先端側(前側)の上隙間リブ766,下隙間リブ767,右隙間リブ768,左隙間リブ769によるノズルカバー720の内側隙間は0.2ミリ程度に規制され、図24に示したノズル本体710の根元側(後側)の根元隙間リブ771、根元隙間リブ772、根元隙間リブ773によるノズルカバー720の内側隙間は0.8ミリ程度に規制される。すなわち、ノズル本体710の先端側(前側)の隙間は根元側(後側)の隙間より小さい隙間に規制される構成である。
このように、ノズル本体710の先端側(前側)に形成された隙間リブ766,767,768,769とノズルカバー720の内壁との隙間が、ノズル本体710の根元側(後側)に形成された根元隙間リブ771,772,773とノズルカバー720の内壁との隙間より小さい隙間に規制されていることで、ノズルカバー720内におけるノズル本体710の噴出口付近の上下左右方向の揺れ幅を、より規制する効果がある。これにより、ノズル部の洗浄位置姿勢がより安定し、洗浄される位置安定性をより向上させることができる。また、ノズル本体710をノズルカバー720内で摺動して移動する際の摺動抵抗を、より小さくできるので、駆動するモータ830は駆動力がより小さい小型コンパクトで安価なモータで良く、ノズル装置500をより小型コンパクトにすることができる。
なお、図21〜図25における上隙間リブ766は、ノズル先端部材762の上側に1個設けた構成で説明したが、これに限られることなく、図26および図27に示されているように、お尻洗浄噴出口711およびビデ洗浄噴出口712が形成されている噴出口部材763の右側と左側に複数(766a,766b)設けてもよい。
また、上隙間リブ766は、必ずしもノズル先端部材762に形成する構成に限られることなく、例えば、噴出口部材763に形成された構成であってもよい。
以上で説明したように、本実施の形態のノズル装置は、噴出口(711,712)と、噴出口に連通する流路(714,715)を備えたノズル部700と、ノズル部を進退可能に支持する支持部600と、ノズル部を進退移動させるモータ830と、を含み、ノズル部は、噴出口に連通する流路を備えたノズル本体710と、ノズル本体の少なくとも一部を覆うノズルカバー720と、ノズル本体とノズルカバーを連結する連結部730と、を備え、ノズルカバーは噴出開口724を有し、ノズル本体の噴出口に噴出開口を対向させるようにノズル本体とノズルカバーは相互に摺動可能に構成し、ノズル本体の噴出口とノズルカバーの内壁との隙間を保持する隙間リブ(766,767,768,769)を備えた構成を有してもよい。
これにより、ノズル本体は噴出口が形成されている先端近傍すなわち噴出口近傍が、ノズルカバー内で隙間規制されながら支持されるため、噴出口でから洗浄水を吐出して人体洗浄を行う際に、洗浄水の吐出噴流によってノズル本体がノズルカバー内で振動することを抑制できる。すなわち、ノズル部の洗浄位置姿勢を安定させて、洗浄される位置安定性を向上させることができる。
また、本実施の形態のノズル装置は、ノズル本体710は、複数の噴出口(711,712)を有するノズル先端部材762と、噴出口に個別に連通する複数の流路(714,715)が形成されたノズル根元部材761と、を備え、複数の隙間リブはノズル先端部
材に備えた構成を有してもよい。
これにより、ノズル本体は噴出口が形成されている先端近傍すなわち噴出口近傍が、ノズルカバー内で隙間規制されながら支持されるため、噴出口でから洗浄水を吐出して人体洗浄を行う際に、洗浄水の吐出噴流によってノズル本体がノズルカバー内で振動することを抑制できる。すなわち、ノズル部の洗浄位置姿勢を安定させて、洗浄される位置安定性を向上させることができる。
また、本実施の形態のノズル装置は、隙間リブは、上端部が噴出口の上端部より高く形成された上隙間リブ766を備えて構成してもよい。
これにより、ノズルカバーの噴出開口と噴出口との間の隙間が確保されるため、モータによって、ノズル本体をノズルカバー内で摺動して移動しても、ノズルカバーの噴出開口の縁部と、噴出口との接触を避けることができ、噴出口か擦れて変形や摺り傷などの損傷をすることがなく、長い年月に亘り安定した噴流を保つことができる。
また、本実施の形態のノズル装置は、噴出口を有するノズル本体の先端側に形成された隙間リブと、ノズル本体の根元側に形成された根元隙間リブ771,772,773と、を備え、隙間リブとノズルカバーの内壁との隙間が、根元隙間リブとノズルカバーの内壁との隙間より小さい構成としてもよい。
これにより、ノズルカバー内におけるノズル本体の噴出口付近の上下左右方向の揺れ幅を、より規制することができ、ノズル部の洗浄位置姿勢がより安定し、洗浄される位置安定性をより向上させることができる。
また、ノズル本体をノズルカバー内で摺動して移動する際の摺動抵抗を、より小さくできるので、駆動するモータは駆動力がより小さい小型コンパクトで安価なモータで良く、ノズル装置をより小型コンパクトにすることができる。
また、本実施の形態の衛生洗浄装置は、上記のノズル装置500と、ノズル装置に洗浄水を供給する洗浄水供給部240と、ノズル装置と洗浄水供給部を制御する制御部230と、便器の上面に載置する便座300とを備えていてもよい。
これにより、噴出口が安定した位置姿勢に保持されながら適切な洗浄位置での洗浄が可能となる。さらに、ノズル装置の小型化により、衛生洗浄装置全体の小型化も可能となる。その結果、快適で使い勝手のよい衛生洗浄装置を実現できる。