以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るプリント回路板を説明するための図である。図1(a)はプリント回路板の側面図、図1(b)はプリント回路板の底面図、図1(c)はプリント回路板の断面模式図である。図2は、本発明の第1実施形態に係るプリント回路板を説明するための図であり、図2(a)はプリント回路板の底面拡大図、図2(b)はプリント回路板の等価回路図、図2(c)はプリント回路板の別の例を示す底面拡大図である。
図1(a)に示すように、プリント回路板100は、プリント配線板200と、半導体装置である半導体集積回路300と、半導体集積回路300の電源電位変動を抑制するための直列回路群400と、を備えている。また、図1(c)に示すようにプリント回路板100は、半導体装置である半導体集積回路500を備えている。半導体集積回路300は、例えばASIC等の制御装置であり、デジタル信号(電気信号)を出力する出力回路(バッファ回路)350(図2(b))を複数有している。半導体集積回路500は、メモリ等の記憶装置であり、デジタル信号(電気信号)を入力する入力回路550(図2(b))を複数有する。
プリント配線板200は、複数の導体層が絶縁体層を介して積層された多層のプリント配線板である。プリント配線板200には、半導体集積回路300,500及び直列回路群400が実装されている。具体的に説明すると、プリント配線板200は、第1表層(導体層)である第1面(表面)201と、表面201とは反対側の第2表層(導体層)である第2面(表面)202とを有している。表面201に半導体集積回路300及び半導体集積回路500が配置され、表面202に直列回路群400が配置されている。
半導体集積回路300は、電源端子311、グランド端子312又は信号出力端子313である半田ボール301を複数有している。つまり、複数の半田ボール301には、複数の電源端子311、複数のグランド端子312、及び複数の信号出力端子313が含まれている。そして、各半田ボール301は、半導体集積回路300の各出力回路350の電源端子、グランド端子又は信号出力端子として機能している。半導体集積回路300は、プリント配線板200の表面201に複数の半田ボール(端子)301で接合されている。
半導体集積回路300は、半導体パッケージであり、例えば1.0[mm]ピッチで32[mm]角のフルマトリックスタイプのBGA(Ball Grid Array)半導体パッケージである。即ち、半田ボール301はアレイ状に配列されている。
半導体集積回路300の各出力回路350は、半導体スイッチング素子を有しており、電源端子311及びグランド端子312間に直流電圧が印加され、スイッチング動作により、信号出力端子313からデジタル信号を出力するよう構成されている。
半導体集積回路500は、電源端子、グランド端子又は信号入力端子である半田ボール501を複数有している。半導体集積回路500は、プリント配線板200の表面201に複数の半田ボール(端子)501を介して接続されている。
なお、半導体集積回路300,500に直流電圧を印加して電力を供給する直流電源である電池等の電源装置E(図2(b))が、プリント回路板100(プリント配線板200)に接続されている。
プリント配線板200は、電源装置Eに接続される電源線251及びグランド線252を有しており、電源線251に半導体集積回路300の電源端子311が、グランド線252に半導体集積回路300のグランド端子312がそれぞれ接続されている。
直列回路群400は、半導体集積回路500に対して設けられたものであり、図2(a)に示すように、容量素子401と抵抗素子402とを直列接続してなる複数(図2(a)では35個)の直列回路410で構成されている。容量素子401と抵抗素子402とは、導体パターン403で接続されている。導体パターン403は、直線状に延びる導体パターンである。
直列回路群400は、図1(a)及び図1(b)に示すように、プリント配線板200の表面202であって、半導体集積回路300を、表面201に垂直な方向(矢印Z方向)に、表面202に投影したときの投影領域R0内に配置されている。
各直列回路410は、図1(c)に示すように、一端が電源線251を構成する電源ヴィア導体211に接続され、他端がグランド線252を構成するグランドヴィア導体212に接続されている。これらヴィア導体211,212は、プリント配線板200に形成されたスルーホールの内部に形成された導体である。電源ヴィア導体211の一端が半導体集積回路300の電源端子311に接続され、他端が直列回路410の一端(電源端子)に接続されている。グランドヴィア導体212の一端が半導体集積回路300のグランド端子312に接続され、他端が直列回路410の他端(グランド端子)に接続されている。
第1実施形態では、プリント配線板200には、電源ヴィア導体211及びグランドヴィア導体212が複数形成されている。図2(a)では、電源ヴィア導体211及びグランドヴィア導体212がそれぞれ21個図示されている。
複数の直列回路410は、格子状に配列されており、図2(a)中上下方向で互いに隣接する2つの直列回路410,410の導体パターン403,403の全体が相対している。このように、複数の直列回路410を格子状に整列させたことにより、これらに接続される電源ヴィア導体211及びグランドヴィア導体212も格子状に整列させることができ、製造が容易となる。
そして、複数(21個)の電源ヴィア導体211のうち少なくとも1つ(図2(a)では14個)の電源ヴィア導体211には、複数の直列回路のうち2以上の直列回路、図2(a)では2つの直列回路410が接続されている。同様に、複数(21個)のグランドヴィア導体212のうち少なくとも1つ(図2(a)では14個)のグランドヴィア導体212には、複数の直列回路のうち2以上の直列回路、図2(a)では2つの直列回路410が接続されている。
このように、1つの電源ヴィア導体211及び1つのグランドヴィア導体212を2つ以上の直列回路410で共用することにより、ヴィアの数を減らすことができる。
なお、第1実施形態では、抵抗素子402を電源ヴィア導体側(電源側)、容量素子401をグランドヴィア導体側(グランド側)に配置したが、図2(c)に示すように、逆の配置であってもよい。
ここで、第1実施形態では、ヴィア導体211,212が格子状、具体的には長方形(正方形を含む)の格子状に配列されている。そして、複数(図2(a)では7個)の電源ヴィア導体211が、一方向(列方向:矢印Y方向)に整列して配置されており、同様に、複数(図2(a)では7個)のグランドヴィア導体212が、一方向(列方向:矢印Y方向)に整列して配置されている。これら矢印Y方向に配列された複数の電源ヴィア導体211からなる電源ヴィア導体群と複数のグランドヴィア導体212からなるグランドヴィア導体群とが、矢印Y方向と直交する方向(行方向:矢印X方向)に交互に配列されている。つまり、電源ヴィア導体211とグランドヴィア導体212とが矢印X方向に交互に配列されている。
そして、直列回路410は、構成する素子401,402が矢印X方向に配列されており、素子401,402同士が矢印X方向に延びる導体パターン403で接続されている。これら直列回路410は、電源ヴィア導体211と、矢印X方向に隣接するグランドヴィア導体212との間に配置されている。換言すると、電源ヴィア導体211の矢印X方向の両側に直列回路410が配置され、又はグランドヴィア導体212の矢印X方向の両側に直列回路410が配置されている。直列回路410の両端は、各ヴィア導体211,212に接続されている。ヴィア導体211,212及び直列回路410をこのような配列とすることで、半導体集積回路300との接続構造も簡単となり、製造も容易となる。なお、ヴィア導体211,212の矢印Y方向の配列は、構造が複雑になるが、電源ヴィア導体211とグランドヴィア導体212とを交互に配列してもよい。
直列回路群400の直列回路410を構成する容量素子401はチップキャパシタ、抵抗素子402はチップ抵抗であり、各素子401,402は例えば1005サイズである。
図1(b)に示すように、半導体集積回路300を表面202に投影した投影領域内には、直列回路群400を構成する直列回路410が搭載される搭載領域R1と、搭載されない非搭載領域R2とがある。
搭載領域R1は、高速伝送回路用の直列回路410が搭載される搭載領域R11、コア回路用の直列回路410が搭載される搭載領域R12、低速伝送回路用の直列回路410が搭載される搭載領域R13からなる。
非搭載領域R2を表面201に投影した領域にある半田ボール301は、信号用途のもの、即ちデジタル信号を出力する信号出力端子313である。なお、この領域にある半田ボール301に、デジタル信号を入力する信号入力端子が含まれていてもよい。一方、搭載領域R1を表面201に投影した領域にある半田ボール301は、電源端子311又はグランド端子312である。
非搭載領域R2には、半田ボール301(信号出力端子313)からのデジタル信号を引き出すためのヴィア導体(不図示)が形成されている。そのため、非搭載領域R2には、直列回路410は搭載されていない。なお、半導体集積回路300の最外周に配置された半田ボール301(信号出力端子313)は、図1(c)に示すように、半導体集積回路500の半田ボール501に信号導体パターン213で直接電気的に接続されている。
容量素子401は、いわゆるバイパスキャパシタである。容量素子401は、直流電源である電源装置Eにより充電されることで、半導体集積回路300に給電する電源として機能する。
容量素子401(直列回路410)は、電源装置Eから半導体集積回路300までの配線経路のインダクタンスよりも、半導体集積回路300までの配線経路のインダクタンスが小さくなるように配置されている。具体的には、直列回路410は、半導体集積回路300の電源端子311又はグランド端子312の直下の領域R1に配置されている。即ち、容量素子401をバイパスキャパシタとして有効に作用するためには、領域R1に配置されることが望ましい。
この半導体集積回路300の出力回路(高速伝送回路)350は、例えば、64ビットデータバス、クロック信号500[MHz]の信号伝送を行い、その際の同時スイッチングノイズジッタを70[psec]以下に低減することが必要である。
そのために、高速伝送回路用のバイパスキャパシタとして、容量素子401を有する直列回路410を、多数、半導体集積回路300の電源端子311とグランド端子312との間に並列接続している。即ち、容量素子401は、半導体集積回路300の複数の電源系等のバイパスキャパシタとして配置されているものであり、電源端子311とグランド端子312との間を回路的に接続するものである。
なお、高速伝送回路用に容量素子401が搭載される搭載領域R11の面積は、例えば306[mm2]である。これは、容量素子401がバイパスキャパシタとして有効に作用するための半導体集積回路300の直下の投影領域R0の面積1024[mm2]のおよそ1/3に相当する大きな領域を占めている。
ここで、デジタル信号にジッタが発生する原理について詳細に説明する。図3は、デジタル信号にジッタが発生する原理を説明するための図である。
図3(a)は、半導体集積回路300の近傍に1つのバイパスキャパシタを配置したときの等価回路図である。図3(a)に示す出力回路350は、CMOS出力バッファであり、抵抗とキャパシタにより形成される等価回路で表される。キャパシタは、CMOS出力バッファのPチャネル、Nチャネルのいずれか一方の閉じたチャネルを表す。抵抗は、開いた側のチャネルを表す。抵抗とキャパシタの接続ノードからの信号の負荷である入力回路550は、キャパシタで形成される等価回路で表される。
バイパスキャパシタC1から出力回路350までの電源線及びグランド線L1は、配線抵抗と配線インダクタンスが直列接続された等価回路で表される。またバイパスキャパシタC1は、キャパシタンス、寄生インダクタンス及び寄生抵抗が直列接続された等価回路で表される。
図3(b)は、半導体集積回路300の出力回路350が論理状態としてロー→ハイ→ローとデジタル信号をスイッチングした際の、電源端子311と信号出力端子313との間の電圧波形図である。電源電圧波形V1は、電源端子311における電圧波形で、電源電圧波形V0は理想的な波形である。また信号波形S1は、信号出力端子313における現実の波形で、信号波形S0は電源電圧変動がなく、理想的な台形波形である。信号波形S1では信号の論理レベルの閾値電圧THを通る遅延時間のばらつき、いわゆるジッタJが発生する。
論理状態をローからハイに遷移させるためには、入力回路550の電圧を上げるために、半導体集積回路300の出力回路350から信号出力端子313、プリント配線板200の信号導体パターン213を介して入力回路550に電荷を供給する必要がある。入力回路550に流れる電荷は、出力回路350に接続されている電源装置Eから供給されるものであって、その多くは半導体集積回路300の近傍に配置され、電源端子311、グランド端子312間に接続されたバイパスキャパシタC1から供給される。
よって図3(a)において、負荷容量である入力回路550に電荷を供給する際は、一連の現象として、バイパスキャパシタC1から出力回路350に繋がる電源線及びグランド線L1にも電流が流れる。バイパスキャパシタC1に蓄えられた電荷が、電源線及びグランド線L1を経由して、出力回路350に流れ込む。更に出力回路350の抵抗とキャパシタの接続ノードから分岐して入力回路550に電荷が流れ込む。
この時、バイパスキャパシタC1、電源線及びグランド線L1に電流が流れると、このインダクタンス成分によって、起電力が発生し、理想的には安定した電位であるべき電源電圧が変動する。
図3(b)には、論理レベルがロー→ハイ→ローと変位している信号波形S1とその際の電源波形V1を表している。理想的な電源波形V0は常に安定した電圧であるところ、実際には電源電圧が変動した電源波形V1のようになる。電源端子311と信号出力端子313は、出力回路350内のオン抵抗でつながっているので、電源電位の変動が重畳し、信号波形S1のように電位変動が重畳する。この信号に重畳した電位変動によって、信号の論理レベルが切り替わる瞬間の信号電位のばらつきΔVが発生する。この信号電位のばらつきΔVは、等しい傾きで信号の電位が低下していくことで、信号波形の論理レベルを判定する閾値電圧THを跨ぐ遅延時間のばらつき、いわゆるジッタJを発生させる。このジッタJが信号伝送の妨げとなる。
図3(c)は、信号波形に発生する電位変動をより簡便に説明するために、図3(a)に示した等価回路をより簡略化したRLC直列回路よりなる等価回路モデルである。
キャパシタンスCは図3(a)において、並列に接続された入力回路(信号負荷)550を表すキャパシタンス成分と出力回路350のキャパシタンス成分との合成容量を表すものである。抵抗Rは、図3(a)における出力回路350の抵抗成分、配線の抵抗成分、バイパスキャパシタの寄生抵抗成分の合成抵抗を表すものである。インダクタンスLは、図3(a)における電源線及びグランド線L1のインダクタンス成分、バイパスキャパシタC1の寄生インダクタンス成分の合成インダクタンスを表すものである。ステップパルス波源EXは、図3(a)におけるバイパスキャパシタC1の容量成分を表すものである。
論理レベルを切り替えるため出力回路350においてスイッチングが起こり、バイパスキャパシタC1からの放電を表すステップパルス波源EXから電荷が流れ込む。このときのキャパシタンスCにおける電圧は図3(d)に示すような波形となる。
スイッチングによって電圧レベルがローレベルからハイレベルに上昇した後、徐々に振幅を小さくしながら振動する、いわゆる減衰振動が発生する。
この減衰振動は、抵抗R、インダクタンスL、キャパシタンスCを使って式(1)のように式であらわせる。
ここで、Voは信号振幅、tは時間を示す。右辺第2項は減衰振動の包落線を表し、αは以下の式(2)に示されるもので、減衰パラメータと呼ぶ。
また式(1)の右辺第3項は、減衰振動の振動項であって、ωは以下の式(3)に示されるものである。
同時スイッチングノイズジッタを低減するためには、次段の論理状態の切り替えが起こる際の電源電位変動を小さくする必要があり、電圧波形の減衰振動の収束を速めることが有効である。それを実現するためには、式(2)に示される減衰パラメータαの値を大きくすることが必要である。
図3(d)に減衰パラメータαが小さいときの波形Vaと減衰パラメータαが大きいときの波形Vbを示す。
減衰パラメータαを大きくする方法として、2つ考えられる。第1の方法は、バイパスキャパシタC1を複数、半導体集積回路300に並列に接続することで、バイパスキャパシタに接続される電源線のインダクタンス成分とバイパスキャパシタ自身の寄生インダクタンス成分の合成インダクタンスを小さくする方法である。要するにこの第1の方法は、αの分母であるバイパスキャパシタのインダクタンス成分や電源線のインダクタンス成分の合成インダクタンスを並列接続により小さくすることで、αの値を大きくするものである。
減衰パラメータαを大きくする第2の方法は、抵抗成分Rを大きくするものである。
以下、まず、第1の方法について具体的に説明する。バイパスキャパシタ及び電源線の数をn倍に増やしたとする。バイパスキャパシタが1個の場合のαの値を式(4)、バイパスキャパシタがn個のαの値を式(5)に示す。ここでRは配線部の抵抗値、Ronは出力回路内部の抵抗値である。
バイパスキャパシタと電源線の数をn倍にすることで、式の分母であるインダクタンスが1/nに低減され、αを大きくするように作用する。その一方で、インダクタンスを低減するのと同時にバイパスキャパシタ、電源線の抵抗成分も1/nになるため、αを表す式においてはRの項が1/nになり、分子も小さくなってしまい、逆にαの値を小さくするように作用する。全体としては、分子にはRよりも値が大きいRonの項があるので、分母が小さくなる傾向が勝り、αは大きくなり、電源波形の減衰振動を速く収束させることができる。しかしながら、この方法では、αを大きくするためのインダクタンスの低減と、αを小さくすることになる抵抗の低減も同時に行うため、第1の方法だけでは、部品効率、実装面積効率の良い対策になっていない。
そこで、第1実施形態では、減衰パラメータαを大きくする方法として、第1の方法に加えて、第2の方法を行うものである。即ち、第1実施形態では、容量素子401に抵抗素子402を導体パターン403で直列接続して構成された直列回路410を複数、半導体集積回路300の電源端子311とグランド端子312との間に並列接続したものである。抵抗素子402は、電気抵抗値により、電源端子311における電源電位変動を減衰させる、即ち減衰パラメータαを大きくするものである。
導体パターン403は、インダクタンスを小さくするため、できるだけ短いことが望ましい。プリント配線板200にチップコンデンサである容量素子401やチップ抵抗である抵抗素子402をはんだ実装する際の制約上、チップ間隔を離す必要があり、導体パターン403は少なくとも0.1[mm]程度の長さになる。
半導体集積回路300は、半田ボール301の間隔が1.0[mm]ピッチの31[mm角]のBGAパッケージである。
図4は、第1実施形態の直列回路410を28個実装した場合と、比較例としてバイパスキャパシタを120個実装した場合のシミュレーション結果を示す信号波形のアイパターン波形図である。図4(a)が第1実施形態、図4(b)が比較例を示す。
図4(a)に示すアイパターン波形から、第1実施形態において、64ビットデータバス、クロック信号500[MHz]程度の信号伝送を行う際に同時スイッチングノイズジッタの目標値70[psec]以下である65[psec]を実現できている。
図4に示す波形は、Synopsys社のHSPICEにより解析を行って導出したものである。このとき、第1実施形態では、容量素子401と抵抗素子402合わせて56個使用しており、比較例では、容量素子を120個使用している。電源線も含めた実装面積としては、143[mm2]と部品数、実装面積ともに比較例に対して53[%]低減できている。
このときの電源線と直列回路410の抵抗値は、5.6[Ω]のチップ抵抗(例えば、KOA社 RK73B−1E−TD−560−J)を28個用いて、計200[mΩ]であった。またインダクタンス値は、計250[pH]であった。これは、Sigrity社のPowerSIを使って導出した。この抵抗値とインダクタンス値を用いて、配線の信号波形を導出した。
図2(a)に示すように、出力回路350のPチャネルはオン抵抗RonとNチャネルはキャパシタンスCNchでモデル化される。また電源配線部(電源ヴィア導体211及びグランドヴィア導体212)は、抵抗RlineとインダクタンスLlineでモデル化される。また直列回路410を構成する容量素子401は、容量Cpassconと寄生抵抗Rpassconと寄生インダクタンスLpassconでモデル化される。また直列回路410を構成する抵抗素子402は、抵抗Rchipと寄生インダクタンスLchipによってモデル化される。また導体パターン403は、Lpatternでモデル化される。
これを元に本形態の減衰を表すパラメータαを式(6)に示す。
抵抗素子402の抵抗値Rchipを大きくすることで、減衰パラメータαの値を大きくすることができる。即ち、抵抗素子402により、デジタル信号のスイッチング時の電源端子311の電位変動を減衰させることができる。一方で抵抗素子402と導体パターン403が追加されるので、その分のインダクタンスLchipとインダクタンスLpatternが増加し、減衰パラメータαの値を小さくする方向に作用する。しかしながら抵抗Rchipは、抵抗素子402の定数設定で値を大きくできるので、インダクタンスの増加分による減衰パラメータαを小さくする効果を上回って、全体として減衰パラメータαを大きく設定することができる。インダクタンス値も小さいことが望ましく、少なくとも2つの直列回路410を投影領域R0内に配置することが望ましい。
なお、抵抗素子402及び容量素子401の抵抗、インダクタンス、キャパシタンスは、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザを用いて求めることができる。また電源線(電源ヴィア導体211及びグランドヴィア導体212)、導体パターン403の抵抗及びインダクタンスもまた、インピーダンスアナライザ、ネットワークアナライザによる実測や電磁界シミュレーションにより解析的に求めることができる。また出力回路350のオン抵抗Ronやキャパシタンス(等価容量)CNchは、電源端子311と信号出力端子313間の2端子対のSパラメータ測定を行い、そこから算出できる。
抵抗素子402の抵抗値Rchipとオン抵抗Ronの合成抵抗値Rsumには限界があり、大きくし過ぎると信号の立ち上がり自体が遅くなり高速化の妨げになる。
インダクタンスLpattern、Lline、Lchip、Lpassconの合計値Lsumとチップの等価内部容量Cchipとすれば、合成抵抗値Rsumは式(7)で示す範囲にある必要がある。
Lsumの値が数nHのオーダであり、Cchipの値が数nF〜十数nFのオーダなので、現実的には、複数の抵抗素子402と複数のI/Oバッファのオン抵抗の合成抵抗Rsumは平均的には1[Ω]以下、最大でも5[Ω]以下にする必要がある。1つのI/Oバッファのオン抵抗は、平均的には30〜50[Ω]程度、最小10[Ω]、最大70[Ω]の範囲で設計されていることが多い。
このI/Oバッファのオン抵抗をシステムで決まっているI/Oの数で割った値が、オン抵抗の合成値Ronである。合成抵抗Rsumからオン抵抗Ronを引いた値を抵抗素子402で実現する必要があり、直列回路410をN個使用する場合は、1つの抵抗素子402の値は、(Rsum−Ron)×N[Ω]と決まる。
以上のことから、合成抵抗Rsumをすべて抵抗素子402で実現するとして、また直列回路410を2つ使用したとしても、抵抗素子402の値は、10[Ω]以下になる。
また、本実施形態の目的に鑑みると、容量素子だけで対策する場合に必要な素子数をnとすると、直列回路410はn/2個以下で実現する必要がある。容量素子だけで対策する場合の減衰パラメータは、容量素子等の1素子あたりの寄生インダクタンスをL、寄生抵抗値をR、I/Oバッファのオン抵抗の合成値をRonとすると式(5)で表わされる。ひとつの直列回路410のインダクタンス、抵抗は2つの素子で構成されているので、それぞれ2L、2Rであらわされるとし、抵抗素子402の値をrとすると、この時の減衰パラメータは式(8)であらわされる。
これが、式(5)の減衰パラメータよりも大きくなる時、本発明の効果が得られるので、式(5)、式(8)から、抵抗素子の範囲は式(9)のように表せる。
抵抗素子rの値は、オン抵抗の合成値をRonと素子数nが小さいとき下限値を取る。I/Oバッファの数を128個、バッファ1個当たりのオン抵抗を10[Ω]、直列回路410を2つ使用したとすれば、抵抗素子402の値は、500[mΩ]以上になる。
即ち、抵抗素子402の電気抵抗値を、500[mΩ]以上10[Ω]以下に設定すれば、より効果的にαを大きくすることができ、もって、デジタル信号のジッタを効果的に低減することができる。
以上、第1実施形態によれば、容量素子401及び抵抗素子402を有する直列回路410を、半導体集積回路300の電源端子311及びグランド端子312間に複数並列接続し、投影領域R0に配置している。これにより、容量素子のみを用いた場合に比して素子全体の数を減らすことができ、実装面積を小さくすることができる。換言すれば、限られた実装面積で同時スイッチングノイズによるジッタを効果的に低減させることができる。
つまり、容量素子401に抵抗素子402を直列接続することにより、抵抗素子402を、半導体集積回路300の電源端子311の電位変動を減衰させるように機能させることができる。したがって、従来よりも少ない素子数でも、効果的にジッタを低減させることができる。よって、素子の実装面積を削減できる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るプリント回路板について説明する。図5は、第2実施形態に係るプリント回路板を説明するための図である。なお、第2実施形態では、直列回路群400Aの構成が、上記第1実施形態の直列回路群400と異なるものであり、その他の構成は、上記第1実施形態と同様であるため同一符号を用い詳細な説明は省略する。
図5(a)はプリント回路板の底面拡大図、図5(b)は隣接する2つの直列回路を示す拡大図、図5(c)はプリント回路板の等価回路図である。プリント回路板は、図5(a)に示すように、複数の直列回路410からなる直列回路群400Aを備えている。直列回路410の配列及びヴィア導体211,212の配列は、上記第1実施形態と同様である。
直列回路群400Aは、上記第1実施形態と同様、容量素子401及び抵抗素子402からなる直列回路410を複数有して構成されているが、矢印Y方向に隣接する導体パターン403同士が繋がっている。第2実施形態では、図5(a)に示すように、矢印Y方向に同列の複数の直列回路410の導体パターン403同士が繋がっている。
複数の直列回路410のうち第1直列回路4101、及びこれに矢印Y方向に隣接する第2直列回路4102について図5(b)を用いて具体的に説明する。
第1直列回路4101は、第1容量素子4011と、第1抵抗素子4021と、これらを直列接続する第1導体パターン4031と、を有している。同様に、第2直列回路4102は、第2容量素子4012と、第2抵抗素子4022と、これらを直列接続する第2導体パターン4032と、を有している。導体パターン4031,4032は、矢印X方向に直線状に延びる導体パターンであり、互いに平行に配置されている。また、導体パターン4031,4032は、全体が相対するように配置されている。そして、導体パターン4031と導体パターン4032とが接続導体パターン(連結導体パターン)404で連結されている。
これにより、容量素子401と抵抗素子402とを接続する導体パターンのインダクタンスが更に低減される。よって、ジッタを効果的に低減させながらも、上記第1実施形態の場合よりも直列回路410の数、即ち素子の数を更に減らすことができる。
以下、シミュレーションした結果について説明する。まず、半導体集積回路300は、1.0[mm]ピッチの31[mm]角のBGAパッケージとした。直列回路410の数は25個、即ち素子の数は50個とした。上記第1実施形態と同様のシミュレーションの結果、64ビットデータバス、クロック信号500[MHz]程度の信号伝送を行う際に同時スイッチングノイズジッタの目標値70[psec]以下である65[psec]を実現できることが確認できた。
容量素子401と抵抗素子402合わせて50個使用しており、電源線も含めた実装面積としては、130[mm2]と部品数、実装面積ともに第1実施形態で説明した比較例に対して58[%]の低減できた。
このときの電源線と直列回路の抵抗値は、5.1[Ω]の抵抗素子402(例えば、KOA社 RK73B−1E−TD−510−J)を25個使い、計204[mΩ]であった。またインダクタンス値は、計250[pH]であった。これは、Sigrity社のPowerSIを使って導出した。この抵抗値とインダクタンス値を用いて、配線の信号波形を導出した。
図5(c)に示す等価回路モデルにおいて、出力回路350のPチャネルはオン抵抗Ron、NチャネルはキャパシタンスCNchでモデル化される。また電源配線部の抵抗分RlineとインダクタンスLlineでモデル化される。また直列回路410を構成する容量素子401は容量Cpasscon、寄生抵抗Rpasscon、寄生インダクタンスLpassconでモデル化される。また直列回路410を構成する抵抗素子402は抵抗値Rchip、寄生インダクタンスLchipによってモデル化される。また導体パターン403及び接続導体パターン404は、Lpatternでモデル化される。
これらを基に第2実施形態の減衰を表すパラメータαを式(10)に示す。
2つ以上の直列回路410の導体パターン403同士を、接続導体パターン404で接続することで、Lpatternを更に低減することができる。そのため減衰パラメータαが更に大きくなり、より信号波形に現れる電位変動の収束が速くなる。同じ収束の速さならば、より少ない素子数で、小さい実装面積で同時スイッチングノイズジッタを低減することができる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係るプリント回路板について説明する。図6は、第3実施形態に係るプリント回路板を説明するための図である。なお、第3実施形態では、直列回路群400Bの構成が、上記第1、第2実施形態の直列回路群400,400Aと異なるものであり、その他の構成は、上記第1、第2実施形態と同様であるため同一符号を用い詳細な説明は省略する。
図6(a)はプリント回路板の底面拡大図、図6(b)は隣接する2つの直列回路を示す拡大図、図6(c)はプリント回路板の等価回路図である。プリント回路板は、図6(a)に示すように、複数の直列回路410からなる直列回路群400Bを備えている。直列回路410の配列及びヴィア導体211,212の配列は、上記第1,第2実施形態と異なる。即ち、複数の直列回路410は、格子状に配列されているが、格子形状は、平行四辺形(長方形を除く)である。
直列回路410は、構成する素子401,402が行方向(一方向:矢印X方向)に配列され、これら素子401,402を接続する導体パターン403も矢印X方向に延びて形成されている。
そして、複数の直列回路410が、矢印X方向に互いに間隔をあけて配列されている。これら矢印X方向に間隔をあけて配列された複数の直列回路410からなる直列回路群が、矢印X方向に直交する矢印Y方向に間隔をあけて複数配置されている。その際、矢印Y方向に隣接する直列回路410,410同士は、矢印X方向にずらして配置されている。
また、ヴィア導体211,212も格子状に配列されているが、格子形状は、平行四辺形(長方形を除く)である。電源ヴィア導体211とグランドヴィア導体212とは、矢印Y方向に交互に配列されており、これら電源ヴィア導体211とグランドヴィア導体212との間に、直列回路410が配置されている。直列回路410の両端が、それぞれのヴィア導体211,212に接続されている。そして、複数(図6(a)では5個)の電源ヴィア導体211及びグランドヴィア導体212が、矢印X,Y方向に対して交差する方向に配列されている。
第3実施形態では、複数の直列回路410のうち矢印Y方向に隣接する直列回路410の導体パターン403同士が、接続導体パターン405で連結されている。
複数の直列回路410のうち第1直列回路4101、及びこれに矢印Y方向に隣接する第2直列回路4102について図6(b)を用いて具体的に説明する。第1直列回路4101は、第1容量素子4011と、第1抵抗素子4021と、これらを直列接続する第1導体パターン4031と、を有している。同様に、第2直列回路4102は、第2容量素子4012と、第2抵抗素子4022と、これらを直列接続する第2導体パターン4032と、を有している。導体パターン4031,4032は、矢印X方向(配線方向)に直線状に延びる導体パターンであり、互いに平行に配置されている。そして、導体パターン4031と導体パターン4032とが接続導体パターン(連結導体パターン)405で連結されている。
第3実施形態では、第1導体パターン4031と第2導体パターン4032とが、矢印X方向(配線方向)と直交する矢印Y方向で互いに対向しない非対向部分を有するように、矢印X方向にずらして配置されている。なお、図6(b)では、導体パターン4031,4032の大部分が非対向部分である。このように第1導体パターン4031と第2導体パターン4032とが互いに矢印X方向でずらして形成されているので、矢印Y方向で対向する部分が減り、導体パターン4031,4032間の相互インダクタンスを小さくすることができる。よって、合成インダクタンスが減少し、より効果的にデジタル信号のジッタが低減する。
第1導体パターン4031の電源側の端部及びグランド側の端部のうち一方の端部(電源側の端部)と、第2導体パターン4032の電源側の端部及びグランド側の端部のうち他方の端部(グランド側の端部)とが、接続導体パターン405で連結されている。つまり、第1導体パターン4031の一端と、第2導体パターン4032の他端とが接続導体パターン405で接続されている。このように接続導体パターン405で導体パターン4031,4032が連結されているので、上記第2実施形態と同様、インダクタンスが低減され、より効果的にデジタル信号のジッタが低減する。
ここで、第3実施形態の構成のプリント回路板についてシミュレーションを行った。直列回路410は18個とした。さらに接続導体パターン405の両端に容量素子401及び抵抗素子402が接続されるように配置した。半導体集積回路300は1.0[mm]ピッチの31[mm]角のBGAパッケージとした。
シミュレーションの結果、64ビットデータバス、クロック信号500[MHz]程度の信号伝送を行う際に同時スイッチングノイズジッタの目標値70[psec]以下である65[psec]を実現できた。このとき、容量素子401及び抵抗素子402を合わせて36個使用しており、電源線も含めた実装面積としては、109[mm2]と部品数、実装面積ともに上記第1実施形態で説明した比較例に対して64%の低減ができた。電源線と直列回路410の抵抗値は、3.6[Ω]の抵抗素子402(例えば、KOA社 RK73B−1E−TD−360−J)を18個用いて計200[mΩ]であった。またインダクタンスタンス値は、計250[pH]であった。これは、Sigrity社のPowerSIを使って導出した。この抵抗値とインダクタンス値を用いて、配線の信号波形を導出した。
図6(c)に示す等価回路モデルにおいて、出力回路350のPチャネルはオン抵抗Ron、NチャネルはキャパシタンスCNchでモデル化される。また電源配線部の抵抗分RlineとインダクタンスLlineでモデル化される。また直列回路410を構成する容量素子401は容量Cpasscon、寄生抵抗Rpasscon、寄生インダクタンスLpassconでモデル化される。また直列回路410を構成する抵抗素子402は抵抗値Rchip、寄生インダクタンスLchipによってモデル化される。
また導体パターン403,405はLpatternで、導体パターン403,403同士に働く相互インダクタンスはMでモデル化される。これらを基に減衰を表す減衰パラメータαを式(11)に示す。
2つ以上の直列回路410の導体パターン403同士を接続導体パターン405で接続することにより、導体パターン403同士に電流が流れ難くなる相互インダクタンスMが発生するのを抑制できる。これにより、相互インダクタンスM分を全体のインダクタンスから低減できる。
図7は、導体パターン403と接続導体パターン405との成す角に対する全体のインダクタンスの関係を示すグラフである。なお、導体パターン4031,4032と、接続導体パターン405との成す角の角度をθとする。
互いに近接して配置された導体パターン4031,4032と接続導体パターン405を流れる電流には、相互インダクタンスが作用し、自己インダクタンスと合わせた全体のインダクタンスの値は変化する。相互インダクタンスMは、各々の導体パターンに流れる電流の向きによって値が決まる。導体パターンを流れる電流の方向が90°を成す時、相互インダクタンスの値は0になる。電流が同一方向を向かっている場合、全体のインダクタンスを増加させるように相互インダクタンスが作用する。電流が180°逆むきに流れるときは、全体のインダクタンスを低減させる方向に作用する。
図7においては、部品の影響を受けて、ややずれがあるものの、設計的には導体パターン403と接続導体パターン405とのなす角の角度θが90°となるとき、全体のインダクタンスが小さくなる。図7のグラフから、上記第2実施形態のプリント配線板のパターンを実施した際に得られるインダクタンスに対し10%インダクタンスを低減させるには、角度θが60°以上145°以下となるように、直列回路4101,4102を配置するのがよい。
これによりインダクタンスを効果的に低減させることができ、減衰パラメータαを大きくすることができ、より信号波形に現れる電位変動の収束を速くすることができる。同じ収束の速さならば、より少ない部品で、小さい実装面積で同時スイッチングノイズジッタを低減することができる。
なお、角度θを90°とすれば、更に効果的にインダクタンスを下げることができると共に、プリント配線板の製造も容易である。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
上記第1〜第3実施形態では、半導体装置である半導体集積回路300が制御装置であり、半導体集積回路500が記憶装置である場合について説明したが、これに限定するものではない。半導体装置である半導体集積回路300は、デジタル信号を出力する複数の信号出力端子を有するものであれば、いかなるものであってもよい。半導体集積回路500についても同様に、記憶装置に限定するものではない。また、半導体集積回路500は、プリント配線板200に実装されずに、ケーブル等を介してプリント配線板200に接続されるようにしてもよい。また、電源装置がプリント配線板200に実装されずにケーブル等を介してプリント配線板200に接続される場合について説明したが、プリント配線板200に実装されていてもよい。