JP6382682B2 - 工具ホルダ - Google Patents
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また、航空機部品においても削り出しによる加工が多く、ワーク自身やクランプ治具との干渉により、工具や工具ホルダのリーチは長くなる一方である。工具や工具ホルダのリーチが長くなると必然的に剛性の低下を招く。
その「リーチが長い」とは、例えば、工具のホルダの首径をD1(図1参照)とし、機械主軸端面からの工具先端まで突き出し長さをL(図1参照)としたり、機械主軸端面からの工具ホルダ先端まで突き出し長さL’としたり(図1参照)とした場合、L又はL’/D1比が3を超えるような工具ホルダを指す。いずれにしても、「リーチが長い」とはそのようなL,L’が長い場合をいう。
特に、刃先交換式フライスカッタ系の工具は、比較的刃径が大きく、切削除去量の多い荒取り加工に用いられるため、その加工時間が長くなったり、生産性が低下したりせずに、高能率加工に寄与することが要求される。
この技術によれば、超硬合金とアーバを一体化するには、アーバ側の深いテーパ孔を精度良く内面研削する技術が必要であり、片持ちのクイルを用いてそのテーパ孔内面を研削する加工では、その深いテーパ孔の製作は非常に難しい。仮に、製作できても製作にかかる日数は長くなり、製造コストも高くなる。
また、同文献記載技術の超硬合金は先端に行くほど先細りするテーパ形状となっている。これは、アーバ中心孔内面と超硬合金の外周面を密着させるためであるが、根元部と同径のストレート形状のものよりも曲げ剛性が低下する問題がある。
さらに、同文献記載の先行技術の防振アーバ(同文献図5参照)の外周形状は、ストレート形状であり、シャンク部(主軸側挿入テーパ部)と冷やし嵌めなどにより一体化の考えも示しているが、その基底となる技術、製造方法は、ストレート形状の防振アーバを便宜的にシャンク部に接合しているのであって、リーチの長い切削加工においては、接合部と加工点との距離が長くなるために、接合強度を充分に維持することは難しい。また、高速回転時のバランスも安定しない。
さらに、ホルダ本体とシャンク部との結合は、インロー部とねじによる結合であり、結合剛性が充分ではない。この技術の主題はボーリング加工であり、半径方向に大きな負荷がかかるフライス加工には適合していない。
このように、超硬合金製棒材を焼嵌めする部材を分割すれば、その各分割部材にその超硬合金製棒材を焼嵌めする孔をそれぞれ形成すれば良いため、上記特許文献1の技術のように、その孔も深く(長く)する必要がない。このため、その孔も高い精度でもって容易に形成することができる。また、工具ホルダの重心をシャンク部側に近づけることも容易にできてバランスが良くなる。また、ホルダ部を分割しているため、その分割部(接合部)と加工点との距離も短くし得るため、接合強度を充分に維持することができ、高速回転時のバランスが安定する。
このとき、超硬合金製棒材の長さによっては、ホルダ部の両分割部材の間に、その両分割部材の外周面に連続する外周面を有する中間部材を設け、この中間部材はその軸心に超硬合金製棒材が貫通する構成とすることもできる(図6参照)。
超硬合金製棒材は、ストレートの全長に亘って同一径の円柱形、若しくは、段付のある円柱形とし、その外周は研削等で高精度に加工を施す。その加工によって、超硬合金製棒材を、ホルダ部、シャンク部と高精度に一体化させると共に、回転バランスを高めることができる。前記段付の超硬合金製棒材を採用し、ホルダ部の外形をテーパ状にすることで、さらに剛性を高めることができる(図8参照)。
このようなホルダ部及びシャンク部に超硬合金製棒材を焼嵌めにより結合することは、位置決め精度(把持精度)が他の方法、例えば圧入等と比較し、各段に精度の高い結合が行われる。
また、そのホルダ部の最小外径(首径)D1と超硬合金製棒材の外径D2の直径比は、D2/D1=0.5〜0.9とすることができる。この直径比とすれば、鋼材のみのホルダ(図9A参照)に比べて、工具ホルダの曲げ剛性を1.1倍以上得ることができる。
また、シャンク部と超硬合金製棒材の焼嵌め位置は、シャンク部のフランジ部より奥まった位置で焼嵌めすることが好ましい。若しくは、ホルダ首径より太く設計された位置に充分かかるように焼嵌めする。より好ましくは、フランジ部より奥側に位置すると共に、ホルダ首径からフランジ部に至る外周は、円弧状や直線状のテーパ面のように徐々に太くなる形状を採用することができる(図1〜図8等参照)。このようにすることで工具ホルダ全体の曲げ剛性を高めることができる。
さらに、ホルダ部の中心孔奥の超硬合金製棒材外周部の一部に制振合金などの防振材を挟み込むことにより、防振効果も期待できる(図7参照)。
このとき、超硬合金製棒材の端面とシャンク部中心孔側の端面とは、シャンク部が熱収縮する際に圧接され、強固に固定される。
ホルダ部の両分割部材の間に中間部材を設ける場合は、シャンク部に内装した超硬合金製棒材の他端に、その中間部材を貫通させて他方の分割部材を焼嵌めする。このとき、中間部材も超硬合金製棒材に焼嵌めすることができる。
さらに、シャンク部の内部で超硬合金を直接固定することで曲げ剛性を高めることができる。また、この構成は静剛性を積極的に高めたので、特定な加工条件、工具形状に特定されることなく、幅広い切削領域で高能率加工が実現できる。
そのシャンク部10は自動工具交換機(ATC)用マニピュレータ把持部(Vフランジ部)11を有する。シャンク部10からホルダ部20への連結部は、徐々に縮径するテーパ面21となっており、そのテーパ面21から先端までのホルダ部20は同一径(首径D1と同じ)となっている。テーパ面21は、図1、図3鎖線で示すように円弧状とし得る。ホルダ部20はその同一径となった長さ方向の途中で分割されている(分割面a)。その一方の分割部材201はシャンク部10と一体物である。
そのホルダ部20の最小外径(首径)D1と超硬合金製棒材30の外径D2の直径比は、D2/D1=0.5〜0.9とする。この直径比としたのは、鋼材のみのホルダ(図9(a)参照)に比べて、工具ホルダA1の曲げ剛性を1.1倍以上得るためであり、通常、超硬合金製棒材30がホルダ部20に対して太くなると、工具ホルダA1の曲げ剛性が向上する。
シャンク部10及びホルダ部20の円柱状取付孔(中心孔)12、22の円孔径と超硬合金製棒材30の円径の焼嵌め締り代を、その超硬合金製棒材30の基準径D2の5/10000〜3/1000程度までとする。この実施形態では、シャンク部10の取付孔12とホルダ部20の取付孔22の円孔径とは同一径としている。
ホルダ部20及びシャンク部10の超硬合金製棒材30が内装される中心孔(取付孔)12、22内面は高精度(回転軸に対して)に加工し、その一部は、焼嵌めにより超硬合金製棒材30が強固に把持できる設定として高精度に加工する。
このとき、その中心孔12の奥端面の手前部周面は抉って空隙12aを形成すれば、その空隙12aに前記手前部周面の収縮(縮径)が吸収されるため、超硬合金製棒材30の一端への中心孔12の奥端面の圧接が確実となる。また、シャンク部10に対し超硬合金製棒材30を押圧したり、超硬合金製棒材30に対しシャンク部10を押圧したりすれば、その圧接力が大きくなる。その押圧は、冷却時であったり、冷却終了後(焼嵌め完了後)であったりすることができる。
そのホルダ部中心孔22の分割面aの両側所要長さの周面を抉って空隙22aを形成することができる。
また、シャンク部10の形式は、図1〜図5に示すテーパ型(BT型)のみならず、図6〜図8に示すHSK型等の種々の態様を採用した工具ホルダA6〜A7とし得る。
また、そのシャンク部10の種々の態様において、図7に示すように、超硬合金製棒材30の一端部に円環状の制振合金(例えば、大同特殊鋼株式会社製、商品名;スターサイレント)などの防振材40を挟み込む工具ホルダA6とすることができ、この工具ホルダA6は防振効果も期待できる。
また、図8に示すように、ホルダ部10の外形はその長さ方向において支障が無い限りにおいて長いテーパ状にすることで、さらに剛性を高めることができる。
図9(a)〜(c)に示す下記3本のホルダ(実施品A、B、C)で比較した。各部分の寸法(mm)は図示の通りであり、この発明に係る実施品はB、Cである。
実施品A:鋼製ホルダ(図9(a))
実施品B:超硬合金内蔵ホルダ(図9(b))、超硬合金の根元焼嵌め部(連結部21)の肉厚が大きい)
実施品C:超硬合金内蔵ホルダ(図9(c)),ストレート型)
a.被削材は機械構造用炭素鋼S50Cで未熱処理(通常生材)である。
b.工具はカッタ径φ50mmの刃先交換式フライスカッタB1で、切削チップは4ヶ取付き、チップ形状は丸駒タイプとした。
c.半径方向の切込量は25mm、1刃の切込量は0.25mmとし、軸方向の切込量Apと切削速度(送り)は可変とした。
d.機械は横型マシニングセンタで、機械主軸テーパ形状はHSK−A100規格である。
e.機械主軸から切削面までの距離は305mm(C:289mm)である。
f.ホルダ首下(ストレート部)の切削面までの距離はいずれも250mmである。
g.ワークは、イケール治具に油圧バイスを固定し、そのバイスに取り付けした。
h.X軸方向に、ダウンカットで、冷却液(クーラント液)は使用せずドライ加工で行った。
実施品Bと実施品Cは共に超硬合金製棒材30を内蔵しているが、実施品Bは、シャンクフランジ11からホルダ部20への連結外周部21が徐々に縮径するテーパ状となっているのに対し、実施品Cは、その連結部外周部が切欠き効果をふせぐために(亀裂が生じ難くするために)小さい円弧状であってホルダ部全体がほぼストレートである等の超硬合金製棒材30の内蔵方法及び形状が異なる。このため、この発明に係る実施品Bは、同実施品Cと比べ1.3倍程度の切削除去量が得られた。また、実施品Bは、Ap=1.0においては、切削速度の全領域において安定した加工を実現した。
B1 フライスカッタ
B2 コレットチャック
B3 焼嵌めチャック
B4 ボーリングヘッド
a 分割面
10 シャンク部
11 シャンク部のフランジ
12 シャンク部及びホルダ部に亘る超硬合金製棒材の嵌め込み孔(中心孔)
20 ホルダ部
201、202、203 ホルダ部の分割部材(中間部材)
22 ホルダ部の超硬合金製棒材の嵌め込み孔(中心孔)
30 超硬合金製棒材
33 超硬合金製棒材の貫通孔
40 防振材
Claims (8)
- 一体物のシャンク部(10)とホルダ部(20)からなり、そのシャンク部(10)とホルダ部(20)の軸心にその両者に亘る円柱状超硬合金製棒材(30)がそれぞれ焼嵌めによって内装され、前記ホルダ部(20)は前記超硬合金製棒材(30)が内装された途中で分割されて、そのホルダ部(20)の分割した一方の分割部材(201)と分割した他方の分割部材(202)をその分割面(a)で溶接して一体としたことを特徴とする工具ホルダ。
- 一体物のシャンク部(10)とホルダ部(20)からなり、そのシャンク部(10)とホルダ部(20)の軸心にその両者に亘る円柱状超硬合金製棒材(30)がそれぞれ焼嵌めによって内装され、前記ホルダ部(20)は前記超硬合金製棒材(30)が内装された途中で分割され、そのホルダ部(20)の途中で分割された両分割部材(201、202)の間に、その両分割部材(201、202)の外周面に連続する外周面を有する中間部材(203)を設けて、この中間部材(203)はその軸心に上記超硬合金製棒材(30)が貫通し、ホルダ部(20)の分割した一方の分割部材(20 1 )、中間部材(20 3 )及び分割した他方の分割部材(20 2 )をそれぞれの界面(a)で溶接して一体化していることを特徴とする工具ホルダ。
- 上記ホルダ部(20)の分割面(a)を上記超硬合金製棒材(30)の長さ方向の中程としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の工具ホルダ。
- 上記ホルダ部(20)の最小外径(D1)と超硬合金製棒材(30)の外径(D2)の直径比は、D2/D1=0.5〜0.9であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の工具ホルダ。
- 上記超硬合金製棒材(30)の軸心に両端に貫通する孔(33)を形成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の工具ホルダ。
- 請求項1に記載の工具ホルダの製造方法であって、上記シャンク部(10)及びそのシャンク部(10)に連続するホルダ部(20)の分割した一方の分割部材(201)に上記超硬合金製棒材(30)の一端を焼嵌めによって内装し、そのシャンク部(10)に内装した超硬合金製棒材(30)の他端にホルダ部(20)の分割した他方の分割部材(202)を焼嵌めし、そのホルダ部(20)の分割した一方の分割部材(20 1 )と分割した他方の分割部材(20 2 )をその分割面(a)で溶接して一体とすることを特徴とする工具ホルダの製造方法。
- 請求項2に記載の工具ホルダの製造方法であって、上記シャンク部(10)及びそのシャンク部(10)に連続するホルダ部(20)の分割した一方の分割部材(201)に上記超硬合金製棒材(30)の一端を焼嵌めによって内装し、そのシャンク部(10)に内装した超硬合金製棒材(30)の他端に、上記中間部材(203)を貫通させるとともにホルダ部(20)の分割した他方の分割部材(202)を焼嵌めし、ホルダ部(20)の分割した一方の分割部材(20 1 )、中間部材(20 3 )及び分割した他方の分割部材(20 2 )をそれぞれの界面(a)で溶接して一体化することを特徴とする工具ホルダの製造方法。
- 上記超硬合金製棒材(30)の他端に上記ホルダ部(20)の分割した他方の分割部材(202)を焼嵌め後、前記シャンク部(10)に対し前記他方の分割部材(202)を押圧して超硬合金製棒材(30)に圧入することを特徴とする請求項6又は7に記載の工具ホルダの製造方法。
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