JP6382436B1 - 電子機器用圧延接合体及び電子機器用筐体 - Google Patents

電子機器用圧延接合体及び電子機器用筐体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、高い剛性及び弾性率を有し、筐体用途に適する電子機器用圧延接合体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体であって、前記アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)及び表面硬度HAl(HV)、並びに前記ステンレス層の厚みTSUS(mm)及び表面硬度HSUS(HV)が下記式(1)を満たす電子機器用圧延接合体及び電子機器用筐体に関する。
SUSSUS ≧(34.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (1)
【選択図】図3

Description

本発明は、電子機器用圧延接合体及び電子機器用筐体に関する。
携帯電話等に代表されるモバイル電子機器(モバイル端末)の筐体は、ABS等の樹脂や、あるいはアルミニウム等の金属材料によって作られている。近年は、電子機器の高機能化に伴い、機器内部の電池容量や実装点数が増加し、より多くの実装スペースの確保が要求されている。より多くの実装スペースを確保するため、筐体のさらなる薄肉化が必須となっている。
特許文献1及び2には、樹脂からなる電子機器の筐体が開示されている。筐体として樹脂を使用する場合、軽量ではあるが金属外観を出せないため高級感を出せないという問題がある。また、樹脂の筐体は、金属筐体と比べて引張強度や弾性率、衝撃強度が劣るため、これらの特性を向上させるためには筐体の厚みを厚くする必要がある。しかし、前述のとおり、筐体が厚くなると実装スペースが減少してしまう問題があった。
また、筐体に加わる荷重の大きさによってはクラックが発生する可能性もある。さらに、電磁波シールド性の確保や電気的なグラウンドを取ることに問題があり、樹脂筐体の内側に金属を蒸着したり、金属箔を貼り付ける必要があり、リサイクル性にも劣る。加えて、放熱性も金属筐体と比べて劣っている。
特許文献3には、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる電子機器用筐体が開示されている。アルミニウムを使用することにより、軽量で放熱性に優れ、金属外観を有した電子機器用筐体を得ることができる。アルミニウム合金から作られる筐体の加工方法として、筐体の内面側についてはアルミニウム合金の削り出しが知られている。近年、筐体に用いられる金属材料には、さらなる軽量化、薄化、小型化が求められている。この要求を満たすために、アルミニウム合金として、変形しにくい6000系や7000系のアルミニウム合金が用いられる。しかしながら、このような変形しにくいアルミニウム合金は、プレス加工性が極めて悪く、筐体への加工方法が削り出しに限定されてしまい、削り出しと比較してコストや生産性等の面で優れるプレス加工により加工することが難しくなっている。また、筐体の外面側は、アルミニウムそのままでは耐食性に劣るため、着色を兼ねたアルマイト処理が必須となり、アルミニウムでは艶のある光沢外観を得ることは困難であった。一方で、ステンレスは光沢外観を得られる素材であるが、重量が大き過ぎるため、また放熱性にも劣るため、筐体としての適用は困難であった。
さらに、筐体に用いられる金属材料として、2種類以上の金属板又は金属箔を積層した圧延接合体(金属積層材、クラッド材)も知られている。圧延接合体は、単独の材料では得られない複合特性を有する高機能性金属材料であり、例えば、ステンレスとアルミニウムとを積層させた圧延接合体が検討されている。
特許文献4には、引張強度を向上させた、ステンレスとアルミニウムとを積層させた圧延接合体について開示されており、具体的には、ステンレス層/アルミニウム層の2層構造又は第1ステンレス層/アルミニウム層/第2ステンレス層の3層構造を有する金属積層材であって、引張強度TS(MPa)が、200≦TS≦550であり、伸びELが15%以上であり、ステンレス層の表面硬度HVが300以下である金属積層材が記載されている。
特許文献4では、ステンレスとアルミニウムの圧延接合体における引張強度等の向上について開示されているが、筐体用途については具体的に検討されていない。実際に、特許文献4に具体的に記載される圧延接合体は、引張強度は高いものの、剛性及び弾性率が十分でないため、外部から荷重がかかった際に曲がり易く、筐体用途には適さない。このように、ステンレスとアルミニウムの圧延接合体について、高い剛性及び弾性率を有し、筐体用途に適する圧延接合体を得るための方法はこれまで知られていなかった。
特開2005−149462号公報 特許第5581453号公報 特開2002−64283号公報 国際公開第2017/057665号
前記のとおり、従来のステンレスとアルミニウムとの圧延接合体において、剛性及び弾性率の改善についてはこれまで検討されていなかった。そこで本発明は、高い剛性及び弾性率を有し、筐体用途に適する電子機器用圧延接合体及び電子機器用筐体を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体において、アルミニウム合金層の厚み及び表面硬度と、ステンレス層の厚み及び表面硬度を特定の関係式を満たすように制御することが剛性及び弾性率の向上に重要であることを見出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)ステンレス層とアルミニウム合金層からなる電子機器用圧延接合体であって、前記アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)及び表面硬度HAl(HV)、並びに前記ステンレス層の厚みTSUS(mm)及び表面硬度HSUS(HV)が下記式(1)を満たす電子機器用圧延接合体。
SUSSUS ≧(34.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (1)
(2)下記式(2)
SUSSUS ≧(44.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (2)
を満たす前記(1)に記載の電子機器用圧延接合体。
(3)前記圧延接合体の総厚みに対する前記ステンレス層の厚みTSUSの比率が、10%〜85%である前記(1)又は(2)に記載の電子機器用圧延接合体。
(4)金属を主体とする電子機器用筐体であって、
少なくとも背面がステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体を含み、
前記アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)及び表面硬度HAl(HV)、並びに前記ステンレス層の厚みTSUS(mm)及び表面硬度HSUS(HV)が下記式(1)を満たす電子機器用筐体。
SUSSUS ≧(34.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (1)
(5)下記式(2)
SUSSUS ≧(44.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (2)
を満たす前記(4)に記載の電子機器用筐体。
(6)前記電子機器用筐体の総厚みに対する前記ステンレス層の厚みTSUSの比率が、10%〜85%である前記(4)又は(5)に記載の電子機器用筐体。
本発明によれば、高い剛性及び弾性率を有し、筐体用途に適する電子機器用圧延接合体を得ることができる。この圧延接合体は、高い剛性及び弾性率を利用して、電子機器用の、特にスマートフォンやタブレット等のモバイル電子機器(モバイル端末)用の筐体や、内部補強部材等の電子機器に用いる部品として好適に用いることができる。
図1は、実施例6の圧延接合体について、ステンレス層側から測定して得た曲げ応力と曲げひずみのグラフである。 図2は、ステンレス層の表面硬度HSUS及び厚みTSUSが一定の2つの場合について、アルミニウム合金層の表面硬度HAl×厚みTAl と、0.2%耐力時の荷重の関係を示すグラフである。 図3は、実施例1〜14及び比較例1〜5の圧延接合体、並びに実施例15の電子機器用筐体についての、ステンレス層の表面硬度HSUS×厚みTSUS と、アルミニウム合金層の表面硬度HAl×厚みTAl の関係を示すグラフである。 図4は、本発明に係る電子機器用筐体の一実施形態を示す斜視図である。 図5は、本発明に係る電子機器用筐体の第1の実施形態のX−X’方向における断面斜視図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
1.圧延接合体
本発明の圧延接合体は、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる。従って、本発明の圧延接合体は、2層以上からなり、好ましくは2〜4層からなり、より好ましくは2層又は3層からなり、特に好ましくは2層からなる。好ましい実施形態において、圧延接合体は、ステンレス層/アルミニウム合金層の2層からなる圧延接合体、又はステンレス層/アルミニウム合金層/ステンレス層の3層、もしくはアルミニウム合金層/ステンレス層/アルミニウム合金層の3層からなる圧延接合体である。圧延接合体を用いた筐体においては、ステンレス層またはアルミニウム合金層を筐体の外側として用いても金属光沢を有する外観を得られるが、より艶のある光沢を得たい場合は、筐体の外側をステンレス層とすることが好ましい。本発明において、圧延接合体の構成は、圧延接合体の用途や目的とする特性に応じて選択できる。
アルミニウム合金としては、アルミニウム以外の金属元素として、少なくとも1種の添加金属元素を含有する板材を用いることができる。添加金属元素は、好ましくはMg、Mn、Si及びCuである。アルミニウム合金中の添加金属元素の合計含有量は、好ましくは0.5質量%超であり、より好ましくは1質量%超である。アルミニウム合金は、好ましくはMg、Mn、Si及びCuから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を1質量%超の合計含有量で含有する。
アルミニウム合金としては、例えば、JISに規定のAl−Cu系合金(2000系)、Al−Mn系合金(3000系)、Al−Si系合金(4000系)、Al−Mg系合金(5000系)、Al−Mg−Si系合金(6000系)及びAl−Zn−Mg系合金(7000系)を用いることができ、プレス加工性、強度、耐食性及び曲げ剛性の観点から3000系、5000系、6000系及び7000系のアルミニウム合金が好ましく、特にこれらのバランスとコストの観点から5000系のアルミニウム合金がより好ましい。アルミニウム合金は、好ましくはMgを0.3質量%以上含有する。
ステンレス層を構成するステンレスとしては、特に限定されずに、SUS304、SUS201、SUS316、SUS316L及びSUS430等の板材を用いることができる。ステンレスとして、圧延接合前はクラッド接合時の密着強度確保の観点から焼鈍材(O材)又は1/2H材が好ましい。
本発明では、圧延接合体の剛性の指標として0.2%耐力時(弾性域の最大応力時)の荷重を用いた。0.2%耐力時の荷重及び弾性率は、JIS K 7171(プラスチック−曲げ特性の求め方)及びJIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に準じて求めることができる。具体的には、圧延接合体から幅20mmの試験片を作製し、テンシロン万能材料試験機 RTC−1350A(株式会社オリエンテック製)を用い、JIS K 7171(プラスチック−曲げ特性の求め方)及びJIS Z 2248(金属材料曲げ試験方法)に準じて3点曲げ試験を行い、曲げ荷重及び曲げ変位を測定する。3点曲げ試験では、JIS Z 2248の図5を参照し、押し金具の半径を5mm、支えの半径を5mm、支点間距離を40mmとする。次に、JIS K 7171の用語及び定義を用いて、得られた曲げ荷重から、式:曲げ応力σ=3FL/2bh(式中、Fは曲げ荷重であり、Lは支点間距離であり、bは試験片幅であり、hは試験片厚み(総厚み)である)により曲げ応力σを計算し、また、得られた曲げ変位から、式:曲げひずみε=600sh/L(式中、sは曲げ変位であり、hは試験片厚み(総厚み)であり、Lは支点間距離である)により曲げひずみεを計算して、曲げ応力と曲げひずみのグラフを得る。得られた曲げ応力σと曲げひずみεのグラフにおいて、曲げひずみεが0.0005〜0.0025(0.05%〜0.25%)の区間の曲げ応力の変位(傾き:Δσ/Δε)を求め、これを弾性率とする。弾性率は弾性域(弾性変形領域)において一定荷重をかけた時の変形し難さの指標になる。弾性率が高いとすなわち外部からの荷重により弾性変形した時の変形が小さい材料構成となる。逆に弾性率が低すぎると、変形が大きくなり、除荷後は変形がなくとも、荷重がかかっている間の弾性域における変形による内部電子部品への影響が懸念される。弾性率は60GPa以上が好ましく、より好ましくは高強度材料として一般的なA6061−T6並みとなる70GPa以上である。そして、この弾性率の直線を曲げひずみ量で+0.002(+0.2%)平行移動した直線と、曲げ応力曲線との交点における曲げ応力を0.2%耐力とする。得られた0.2%耐力の値と、式:曲げ応力σ=3FL/2bh(式中、Fは曲げ荷重であり、Lは支点間距離であり、bは試験片幅であり、hは試験片厚み(総厚み)である)を用いて、0.2%耐力時の荷重Fを求める(図1参照)。0.2%耐力時の荷重Fは、その材料構成による弾性域の最大荷重とみなせるので、この数値が大きい程、広い弾性域を持つことになる。すなわち外部からの荷重による塑性変形が発生し難い材料構成となる。好ましくは35N/20mm以上あればよいが、より好ましくは45N/20mm以上である。
本発明者らは、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体において、剛性及び弾性率への寄与が特に大きい要素について検討し、アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)と、アルミニウム合金層の表面硬度HAl(HV)と、ステンレス層の厚みTSUS(mm)と、ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)とが特定の関係式を満たすことで、剛性及び弾性率が向上することを見出した。
具体的には、剛性の指標として用いた0.2%耐力時の荷重F(N)は、アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)と、アルミニウム合金層の表面硬度HAl(HV)と、ステンレス層の厚みTSUS(mm)と、ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)との関係において、下記式(3)で表される。
F=(−0.008×HSUSSUS −0.03)×(HAlAl +(0.061×HSUSSUS +3.57)×HAlAl +1.354×HSUSSUS +0.04 (3)
本発明者らは、式(3)から、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体において、アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)と、アルミニウム合金層の表面硬度HAl(HV)と、ステンレス層の厚みTSUS(mm)と、ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)が下記式(1)
SUSSUS ≧(34.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (1)
を満たす圧延接合体は、0.2%耐力時の荷重が35N/20mm以上と高くなり剛性が高く、弾性率も高いため、筐体の用途に特に適することを見出した。さらに、下記式(2)
SUSSUS ≧(44.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (2)
を満たす圧延接合体は、0.2%耐力時の荷重が45N/20mm以上とより高くなり、剛性がより高く、筐体の用途に特に適する。なお、この関係式はアルミニウム合金についてのものであり、アルミニウム材が純アルミニウムである場合にこの式を適用できるとは限らない。
本発明では、式(1)を満たすようにアルミニウム合金層の厚みTAl(mm)と、アルミニウム合金層の表面硬度HAl(HV)と、ステンレス層の厚みTSUS(mm)と、ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)を制御することにより、十分な接合強度を維持しつつ、高い剛性及び弾性率を有する圧延接合体を得ることが可能となる。
圧延接合体の厚みTSUS+TAlは、特に限定されずに、通常、上限が1.6mm以下、好ましくは1.2mm以下であり、より好ましくは1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.8mm以下である。下限は0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上である。圧延接合体の厚みは、好ましくは0.2mm〜1.6mmであり、より好ましくは0.3mm〜1.2mmであり、より好ましくは0.4mm〜1.0mmでありさらに好ましくは0.4mm〜0.8mmである。圧延接合体の厚みとは、ステンレス層とアルミニウム合金層の総厚みをいう。厚みは、圧延接合体上の任意の30点における厚みをマイクロメータなどで測定し、得られた測定値の平均値をいう。
ステンレス層の厚みTSUSは、通常0.05mm以上であれば適用可能であり、下限は成形性と強度の観点から、好ましくは0.1mm以上である。上限は特に制限はないが、アルミニウム合金層に対して厚すぎると伸び及び成形性が低下する恐れがあるため、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに軽量化の観点を加えると0.4mm以下が特に好ましい。ステンレス層の厚みTSUSは、好ましくは0.05mm〜0.6mmであり、より好ましくは0.1mm〜0.5mmであり、さらに好ましくは0.1mm〜0.4mmである。ステンレス層の厚みとは、圧延接合体が2層以上のステンレス層を有する場合、各ステンレス層の厚みをいう。ステンレス層の厚みは、後記のアルミニウム合金層と同様にして決定することができる。
圧延接合体の厚み(総厚み)に対するステンレス層の厚みの比率TSUS/(TSUS+TAl)は、好ましくは10%〜85%以下であり、より好ましくは10%〜70%以下である。ステンレス層の厚み比率がこの範囲であると弾性率が高くなり、筐体の用途により適する。なお、ステンレス層の厚み比率とは、ステンレス層が2層以上存在する場合、圧延接合体の厚みに対するステンレス層の厚みの合計の比率をいう。
ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)は、好ましくは180以上であり、より好ましくは200以上である。一方、成形性の観点からはステンレス層の表面硬度は低い方が好ましい。よって、ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)は、好ましくは350以下であり、より好ましくは330以下である。ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)は、好ましくは180〜350であり、より好ましくは200〜330である。ステンレス層の表面硬度がこの範囲であると、圧延接合体において高い剛性及び弾性率と、成形性とを両立することができる。本発明において、ステンレス層の表面硬度は、例えばマイクロビッカース硬度計(荷重200gf)を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験−試験方法)に準じて測定することができる。本発明の圧延接合体が2層以上のステンレス層を有する場合、そのいずれもが前記の表面硬度を有することが好ましい。
アルミニウム合金層の厚みTAlは、通常0.1mm以上であれば適用可能であり、機械的強度及び加工性の観点から、好ましくは0.12mm以上、より好ましくは0.15mm以上である。上限は、軽量化やコストの観点から好ましくは1.1mm以下、より好ましくは0.9mm以下、さらに好ましくは0.72mm以下である。アルミニウム合金層の厚みTAlは、好ましくは0.1mm〜1.1mmであり、より好ましくは0.12mm〜0.9mmであり、さらに好ましくは0.15mm〜0.72mmである。圧延接合体のアルミニウム合金層の厚みとは、2層以上のアルミニウム合金層を有する場合、各アルミニウム合金層の厚みをいう。アルミニウム合金層の厚みは、圧延接合体の断面の光学顕微鏡写真を取得し、その光学顕微鏡写真において任意の10点におけるアルミニウム合金層の厚みを計測し、得られた値の平均値をいう。
アルミニウム合金層の表面硬度HAl(HV)は、特に制限されないが、好ましくは40〜90であり、より好ましくは45〜90である。本発明において、アルミニウム合金層の表面硬度は、マイクロビッカース硬度計(荷重50gf)を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験−試験方法)に準じて測定することができる。本発明の圧延接合体が2層以上のアルミニウム合金層を有する場合、そのいずれもが前記の表面硬度を有する。
圧延接合体は、好ましくは35N/20mm以上、より好ましくは45N/20mm以上の0.2%耐力時の荷重を有する。0.2%耐力時の荷重は、圧延接合体の片面からの荷重について測定して得た値をいう。この時、三点曲げの押し金具接触面は筐体加工後に外面側となる面である。
圧延接合体は、弾性率が、好ましくは60GPa以上であり、より好ましくは70GPa以上である。弾性率は、圧延接合体の片面からの荷重ついて測定して得た値をいう。この時、三点曲げの押し金具接触面は筐体加工後に外面側となる面である。弾性率は特に上限はないが、ステンレス、例えば0.5mm厚みのSUS304(BA材)の弾性率が175GPa程度であることから、175GPa以下が好ましい。
2.電子機器用筐体
本発明は、前記圧延接合体を用いた電子機器用筐体にも関する。電子機器用筐体は、金属を主体とし、背面及び/又は側面に前記圧延接合体を含み、すなわち、電子機器用筐体は、背面と側面又はその一部が前記圧延接合体を含む。本発明の電子機器用筐体は、基本的には前記の圧延接合体と同様の特性を有し、圧延接合体について記載した前記の特性や実施形態は、電子機器用筐体にも適用される。すなわち、本発明の電子機器用筐体は、アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)と、アルミニウム合金層の表面硬度HAl(HV)と、ステンレス層の厚みTSUS(mm)と、ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)が上記式(1)を満たす。
本発明の圧延接合体を用いた電子機器用筐体の第1の実施形態を図4及び図5に示す。図4は、本発明の圧延接合体を用いた電子機器用筐体の第1の実施形態を示す斜視図であり、図5は、本発明の圧延接合体を用いた電子機器用筐体の第1の実施形態のX−X’方向における断面斜視図である。電子機器用筐体4は、背面40と側面41からなり、背面40と側面41又はその一部が、前記のステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体を含む。図4に示すように、ここで背面40とは、スマートフォン等の電子機器(モバイル端末)を構成する筐体における、表示部(ティスプレイ、図示せず)が設けられる側とは反対側の面を指す。なお、筐体4の内側は、圧延接合体とは別の金属材料やプラスチック材料等が積層していても良い。なお、電子機器用筐体4は、圧延接合体を背面40に含む場合、圧延接合体を含む背面40の全体又は一部(例えば、図4の平面部分Aで示すような、2cm×2cm以上、例えば25mm×25mmの平面部分)が、圧延接合体について前記の厚み、表面硬度、0.2%耐力時の荷重や弾性率を満たしていればよい。一方、筐体を製造する際に、圧延接合体の特にアルミニウム合金層に対して研削等の加工を施した場合や、研磨、塗装等の表面処理を施した場合、厚み、硬度、機械強度等が圧延接合体とは異なる場合がある。以下に電子機器用筐体について好ましい実施形態を記載する。なお、電子機器用筐体4はその背面40に圧延接合体を含む構造であるが、電子機器の構造によっては本構造に限定されるものではなく、背面40と側面41が圧延接合体からなる構造であっても良く、また、側面41に圧延接合体を含む構造であっても良い。
次に、本発明の圧延接合体を用いた電子機器用筐体の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、センターフレームである電子機器用筐体が、ガラスや樹脂等の表示部及び背面によって挟まれた電子機器構造を示しており、電子機器用筐体は、側面と、その側面に接続された内部補強フレーム(電子機器用筐体における背面を構成する)から構成される。電子機器用筐体は、側面と内部補強フレーム又はその一部が、ステンレス層とステンレスとは異なる金属層とからなる本発明の圧延接合体を含むことができる。ここで内部補強フレームとは、スマートフォン等の電子機器の内部に位置し、電子機器全体の剛性向上や電池やプリント基板などの部品を実装する支持体としての役割を果たす支持板のことを意味する。内部補強フレームは、通常、接続やアセンブリのための穴を有する。穴は、例えばプレス等によって開けることが可能である。本実施形態においては、側面と内部補強フレームとを一体に構成することができるが、それに限定されるものではなく、側面と内部補強フレームとを一体化しなくても良い。また、側面だけに圧延接合体を適用しても良い。なお、本実施形態の電子機器用筐体についても、前記の電子機器用筐体5と同様に、電子機器の構造に応じて適宜変形することができ、上記で説明したような構造に限定されるものではない。
電子機器用筐体の厚みTSUS+TAlは、特に限定はされないが、内部の実装容量を増加させる観点から、通常、上限が1.2mm以下、好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.7mm以下である。下限は0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上である。電子機器用筐体の厚みは、筐体の背面部分の、圧延接合体を含むすべての層の厚み(ただし、図4の平面部分Aで示すような、2cm×2cm以上、例えば25mm×25mmの平面部分における厚み)をいう。電子機器用筐体の厚みは、背面の任意の30点における厚みをマイクロメータで測定し、得られた測定値の平均値をいう。
ステンレス層の厚みTSUSは、通常0.05mm以上であれば適用可能であり、下限は成形性と強度の観点から、好ましくは0.1mm以上である。上限は特に制限はないが、アルミニウム合金層に対して厚すぎると伸び及び成形性が低下する恐れがあるため、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに軽量化の観点を加えると0.4mm以下が特に好ましい。ステンレス層の厚みTSUSは、好ましくは0.05mm〜0.6mmであり、より好ましくは0.1mm〜0.5mmであり、さらに好ましくは0.1mm〜0.4mmである。
電子機器用筐体の厚み(総厚み)に対するステンレス層の厚みの比率TSUS/(TSUS+TAl)は、好ましくは10%〜85%であり、より好ましくは10%〜70%である。
ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)は、好ましくは180以上であり、より好ましくは200以上である。一方、成形性の観点からはステンレス層の表面硬度は低い方が好ましい。よって、ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)は、好ましくは350以下であり、より好ましくは330以下である。ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)は、好ましくは180〜350であり、より好ましくは200〜330である。ステンレス層の表面硬度がこの範囲であると、電子機器用筐体において高い剛性及び弾性率と、成形性とを両立することができる。
アルミニウム合金層の厚みTAlは、通常0.1mm以上であれば適用可能であり、機械的強度及び加工性の観点から、好ましくは0.12mm以上、より好ましくは0.15mm以上である。上限は、軽量化やコストの観点から好ましくは1.1mm以下、より好ましくは0.9mm以下、さらに好ましくは0.72mm以下である。アルミニウム合金層の厚みTAlは、好ましくは0.1mm〜1.1mmであり、より好ましくは0.12mm〜0.9mmであり、さらに好ましくは0.15mm〜0.72mmである。
アルミニウム合金層の表面硬度HAl(HV)は、特に制限されないが、好ましくは40〜90であり、より好ましくは45〜90である。
電子機器用筐体は、好ましくは35N/20mm以上、より好ましくは45N/20mm以上の0.2%耐力時の荷重を有する。
電子機器用筐体は、弾性率が、好ましくは60GPa以上であり、より好ましくは70GPa以上である。
3.圧延接合体及び電子機器用筐体の製造方法
圧延接合体は、ステンレス板とアルミニウム合金板を用意し、以下のような圧延接合方法により得ることができる。
冷間接合法の場合、ステンレス板とアルミニウム合金板の接合面にブラシ研磨などを施した後、両者を重ねあわせて冷間圧延しながら接合し、さらに焼鈍処理を施すことで製造することが出来る。冷間圧延の工程は多段階で行ってもよく、また焼鈍処理後に調質圧延を加えてもよい。この方法では、最終的な圧下率(接合前原板と圧延接合体の厚みより算出される圧下率)として20〜90%の範囲で圧延接合される。冷間接合法で製造する場合、上記圧下率を考慮すると、原板の厚みは、ステンレス板は0.0125〜6mm、好ましくは0.056〜5mm、より好ましくは0.063〜4mm、アルミニウム合金板は0.063〜25mm、好ましくは0.13〜17mm、より好ましくは0.25〜11mmである。
温間接合法の場合、冷間接合法と同様に接合面にブラシ研磨などを施した後、両者あるいは片方を200〜500℃に加熱して重ねあわせて温間圧延し接合することで製造することができる。この方法では、最終的な圧下率は15〜40%程度となる。温間接合法で製造する場合、上記圧下率を考慮すると、原板の厚みは、ステンレス板は0.012〜1mm、好ましくは0.053〜0.83mm、より好ましくは0.059〜0.067mm、アルミニウム合金板は0.059〜4.2mm、好ましくは0.19〜2.8mm、より好ましくは0.24〜1.8mmである。
真空表面活性化接合法(以下、表面活性化接合法も同義)の場合、ステンレス板及びアルミニウム合金板の接合面をスパッタエッチングする工程と、スパッタエッチングした表面同士を、ステンレス層の圧下率が0%〜25%の軽圧延となるように圧接して接合する工程と、200℃〜400℃でのバッチ熱処理又は300℃〜890℃での連続熱処理を行う工程とを含む方法によって製造できる。この製造方法では、スパッタエッチング処理工程及び接合工程を行う回数に応じて、得られる圧延接合体が有する層の数を変えることができ、例えば、2層からなる圧延接合体は、スパッタエッチング処理工程及び接合工程の組み合わせを1回行った後、熱処理を行うことで製造することができ、3層からなる圧延接合体は、スパッタエッチング処理工程及び接合工程の組み合わせを2回繰り返した後、熱処理を行うことで製造することができる。
以上のように、接合体を得る接合方法は限られないが、ステンレスの硬度が高くなりすぎると靱性の低下に伴い、ステンレスの破損が生じやすくなる上に、アルミニウム合金とステンレスとの接合体においては、接合後の焼鈍においてステンレスの軟化焼鈍が困難なため、いずれの接合方法においても最終的な圧下率40%以下が好ましい。より好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下である。特にステンレス層は圧下率が高くなりすぎると著しい加工硬化が生じ、靱性が低下する為、圧延接合時やそのハンドリング、又は筐体として使用する際にステンレス層に割れが生じる恐れがあり、ステンレス層の圧下率は35%以下が好ましい。以下、圧下率が低くとも接合しやすい表面活性化接合の製造方法について説明する。
用いることができるステンレス板は、圧延接合体について前記のステンレスの板材である。
接合前のステンレス板の厚みは、通常0.045mm以上であれば適用可能であり、下限は圧延接合体としたときのハンドリング性やある程度ステンレスの厚みがあったほうが最大曲げ応力に対して好ましいという観点、また筐体にした後、加飾や鏡面加工時の研磨代を確保するという観点から、好ましくは0.06mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。上限はステンレス比率が高い方が最大曲げ応力がより高くなるので特に制限はないが、ステンレス厚みが厚くなり過ぎると重くなるため筐体としたときの軽量性の観点から、好ましくは0.6mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下である。接合前のステンレス板の厚みは、マイクロメータなどによって測定可能であり、ステンレス板の表面上からランダムに選択した10点において測定した厚みの平均値をいう。
接合前のステンレス板の表面硬度(HV)は、好ましくは160以上であり、より好ましくは180以上である。本発明では、圧延接合体におけるステンレス層の硬度が剛性及び弾性率に影響するが、接合直前の状態及び接合時に入るひずみによるステンレスの硬化の影響が大きいと考えられるため、接合前のステンレス板においてもその硬度をある程度制御することが好ましい。よって、ステンレス板の表面硬度(HV)は、好ましくは350以下であり、より好ましくは330以下である。ステンレス板の表面硬度(HV)は、剛性及び弾性率と成形性を両立することができるという観点から、好ましくは160〜350であり、より好ましくは180〜330である。
用いることができるアルミニウム合金板は、圧延接合体について前記のアルミニウム合金の板材である。
接合前のアルミニウム合金板の厚みは、通常0.05mm以上であれば適用可能であり、下限は好ましくは、0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。上限は、軽量化やコストの観点から通常3.3mm以下であり、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.0mm以下である。接合前のアルミニウム合金板の厚みは、前記のステンレス板と同様にして決定することができる。
スパッタエッチング処理では、ステンレス板の接合面とアルミニウム合金板の接合面をそれぞれスパッタエッチングする。
スパッタエッチング処理は、具体的には、ステンレス板とアルミニウム合金板を、幅100mm〜600mmの長尺コイルとして用意し、接合面を有するステンレス板とアルミニウム合金板をそれぞれアース接地した一方の電極とし、絶縁支持された他の電極との間に1MHz〜50MHzの交流を印加してグロー放電を発生させ、且つグロー放電によって生じたプラズマ中に露出される電極の面積を前記の他の電極の面積の1/3以下として行う。スパッタエッチング処理中は、アース接地した電極が冷却ロールの形をとっており、各搬送材料の温度上昇を防いでいる。
スパッタエッチング処理では、真空中でステンレス板とアルミニウム合金板の接合する面を不活性ガスによりスパッタすることにより、表面の吸着物を完全に除去し、且つ表面の酸化膜の一部又は全部を除去する。酸化膜は必ずしも完全に除去する必要はなく、一部残存した状態であっても十分な接合力を得ることができる。酸化膜を一部残存させることにより、完全に除去する場合に比べてスパッタエッチング処理時間を大幅に減少させ、金属積層材の生産性を向上させることができる。不活性ガスとしては、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトンなどや、これらを少なくとも1種類含む混合気体を適用することができるステンレス板とアルミニウム合金板のいずれについても、表面の吸着物は、エッチング量約1nm程度(SiO換算)で完全に除去することができる。
ステンレス板についてのスパッタエッチング処理は、例えば単板の場合、真空下で、例えば100W〜1KWのプラズマ出力で1〜50分間行うことができ、また、例えばライン材のような長尺の材料の場合、真空下で、例えば100W〜10KWのプラズマ出力、ライン速度1m/分〜30m/分で行うことができる。この時の真空度は、表面への再吸着物を防止するため高い方が好ましいが、例えば1×10−5Pa〜10Paであればよい。スパッタエッチング処理において、ステンレス板の温度は、アルミニウム合金板軟化防止の観点から、好ましくは常温〜150℃に保たれる。
表面に酸化膜が一部残存するステンレス板は、ステンレス板のエッチング量を、例えば1nm〜10nmにすることによって得られる。必要に応じて、10nmを超えるエッチング量としても良い。
アルミニウム合金板についてのスパッタエッチング処理は、例えば単板の場合、真空下で、例えば100W〜1KWのプラズマ出力で1〜50分間行うことができ、また、例えばライン材のような長尺の材料の場合、100W〜10KWのプラズマ出力、ライン速度1m/分〜30m/分で行うことができる。この時の真空度は、表面への再吸着物を防止するため高い方が好ましいが、1×10−5Pa〜10Paであればよい。
表面の酸化膜が一部残存するアルミニウム合金板は、アルミニウム合金板のエッチング量を、例えば1nm〜10nmにすることによって得られる。必要に応じて、10nmを超えるエッチング量としても良い。
以上のようにしてスパッタエッチングしたステンレス板及びアルミニウム合金板の接合面を、ステンレス層の圧下率が0%〜25%、好ましくは0%〜15%の軽圧延となるように、例えばロール圧接により圧接して、ステンレス板とアルミニウム合金板を接合する。
ステンレス層の圧下率は、接合前のステンレス板の厚みと最終的な圧延接合体のステンレス層の厚みから求める。すなわち、ステンレス層の圧下率は、以下の式:(接合前の材料のステンレス板の厚み−最終的な圧延接合体のステンレス層の厚み)/接合前の材料のステンレス板の厚み、により求められる。
ステンレス層とアルミニウム合金層の接合においては、アルミニウム合金層の方が変形しやすい場合が多く、ステンレス層の圧下率はアルミニウム合金層の圧下率よりも低くなる。ステンレス層は圧下率が高いと加工硬化が生じやすくなるため、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下であり、さらに好ましくは8%以下である。なお、圧接の前後で厚みが変わらなくても良いため、圧下率の下限値は0%であるが、ステンレス板の硬度が低い場合、あえて加工硬化をさせることにより剛性及び弾性率を向上させることも可能である。この場合、好ましくは0.5%以上であり、より好ましくは2%以上であり、さらに好ましくは3%以上である。ステンレス層の圧下率は、高い剛性及び弾性率と加工硬化の抑制との両立の観点から、好ましくは0%〜15%である。また、表面活性化接合法においては特に10%以下とすることが可能であり、よりステンレスの硬化の抑制が可能となる。
本発明の製造方法において、アルミニウム合金層の圧下率は、特に制限されないが、拡散熱処理前の接合力確保のために5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上であり、より好ましくは12%以上である。アルミニウム合金層の圧下率が5%以上であると、熱処理後のピール強度が向上する。アルミニウム合金層の圧下率は、接合前のアルミニウム合金板の厚みと最終的な圧延接合体のアルミニウム合金層の厚みから求める。すなわち、アルミニウム合金層の圧下率は、以下の式:(接合前の材料のアルミニウム合金板の厚み−最終的な圧延接合体のアルミニウム合金層の厚み)/接合前の材料のアルミニウム合金板の厚み、により求められる。
アルミニウム合金層の圧下率の上限は、特に限定されずに、例えば表面活性化接合法に限らず70%以下であり、好ましくは50%以下であり、より好ましくは40%以下である。アルミニウム合金層の圧下率の上限がこの範囲であると厚み精度を保ちつつ、接合力を確保しやすい。また、表面活性化接合法においては特に18%以下とすることが可能であり、よりアルミニウム合金層の平坦性を維持することが可能となる。
圧延接合体の圧下率は、表面活性化接合法の場合も40%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは14%以下である。なお、下限は、特に制限はないが、接合強度の観点から、好ましくは4%以上、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは6%以上、特に好ましくは7.5%以上である。表面活性化接合法においては特に上限を15%以下、下限を4%以上とすることが可能であり、より安定的に特性を得やすい。圧延接合体の圧下率は、接合前の材料のステンレス板及びアルミニウム合金板の総厚みと、最終的な圧延接合体の厚みから求める。すなわち、圧延接合体の圧下率は、以下の式:(接合前の材料のステンレス板及びアルミニウム合金板の総厚み−最終的な圧延接合体の厚み)/接合前の材料のステンレス板及びアルミニウム合金板の総厚み、により求められる。
ロール圧接の圧延線荷重は、特に限定されずに、アルミニウム合金層及び圧延接合体の所定の圧下率を達成するように設定し、例えば、表面活性化接合の場合、1.6tf/cm〜10.0tf/cmの範囲に設定することができる。例えば圧接ロールのロール直径が100mm〜250mmのとき、ロール圧接の圧延線荷重は、好ましくは1.9tf/cm〜4.0tf/cmであり、より好ましくは2.3tf/cm〜3.0tf/cmである。ただし、ロール直径が大きくなった場合や接合前のステンレス板やアルミニウム合金板の厚みが厚い場合などには、所定の圧下率を達成するために圧力確保のために圧延線荷重を高くすることが必要になる場合があり、この数値範囲に限定されるものではない。
接合時の温度は、特に限定されずに、例えば表面活性化接合の場合、常温〜150℃である。
表面活性化接合の場合、接合は、ステンレス板とアルミニウム合金板表面への酸素の再吸着によって両者間の接合強度が低下するのを防止するため、非酸化雰囲気中、例えばArなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
以上のようにしてステンレス板とアルミニウム合金板を接合して得た圧延接合体について、熱処理を行う。熱処理によって、各層の間の密着性を高めて十分な接合力とできる。この熱処理は、圧延接合体の、特にアルミニウム合金層の焼鈍を兼ねることができる。
熱処理温度は、例えばバッチ熱処理の場合、200℃〜400℃であり、好ましくは200℃〜370℃であり、さらに好ましくは250℃〜345℃である。また、例えば連続熱処理の場合、300〜890℃であり、好ましくは300℃〜800℃であり、さらに好ましくは350℃〜550℃である。この熱処理温度では、ステンレスは未再結晶温度域でありほぼ軟化せず、アルミニウム合金では加工ひずみが除かれて軟化する温度域である。なお、熱処理温度とは、熱処理を行う圧延接合体の温度をいう。
また、この熱処理では、少なくともステンレスに含まれる金属元素(例えば、Fe、Cr、Ni)がアルミニウム合金層に熱拡散する。また、ステンレスに含まれる金属元素と、アルミニウムとを相互に熱拡散させてもよい。
熱処理時間は、熱処理方法(バッチ熱処理又は連続熱処理)、熱処理温度や熱処理を行う圧延接合体のサイズに応じて適宜設定することができる。例えば、バッチ熱処理の場合、圧延接合体の温度が所定の温度になってから圧延接合体を0.5〜10時間均熱保持し、好ましくは2〜8時間均熱保持する。なお、金属間化合物が形成されなければ10時間以上のバッチ熱処理を行っても問題ない。また、連続熱処理の場合、圧延接合体の温度が所定の温度になってから圧延接合体を20秒〜5分間均熱保持する。なお、熱処理時間とは、熱処理を行う圧延接合体が所定の温度になってからの時間をいい、圧延接合体の昇温時間は含まない。熱処理時間は例えば、A4版(用紙サイズ)程度の小さい材料については、バッチ熱処理では1〜2時間程度で十分あるが、長尺もの、例えば幅100mm以上、長さ10m以上のコイル材などの大きい材料については、バッチ熱処理では2〜8時間程度必要である。
圧延接合体のアルミニウム合金層の表面硬度が所定の関係式を満たすように制御するための手段として、例えば、目標とする厚みに対して、アルミニウム合金層が厚い圧延接合体を一旦作製した後、圧延接合体のアルミニウム合金層を研削して厚みを薄くし、目標とする厚みに仕上げる方法が挙げられる。アルミニウム合金層を研削することにより、アルミニウム合金層が硬化し、硬度を向上させることができる。また、接合し熱処理を行って得られた圧延接合体について、1〜2%程度の伸び率になるようにテンションレベラーによる形状修正を実施しても良い。この形状修正により、厚みが1〜2%程度減少し、アルミニウム合金層を硬化させ、表面硬度を向上させることができる。これらの手段は、適宜組み合わせても良く、例えば、テンションレベラーによる形状修正を実施した後に、アルミニウム合金層の研削を行うことができる。
また、圧延接合体のステンレス層の表面硬度を高めて所定の関係式を満たすように制御するための手段として、例えば、表面硬度の高い原材料(硬さが高い順に、調質記号H>3/4H>1/2H>BA)を用意し、これを接合して圧延接合体を作製する方法が挙げられる。ただし、ステンレス層の表面硬度が高過ぎると加工が困難となるため留意するものとする。あるいは、接合時の荷重を高くすることで、接合後の圧延接合体のステンレス層の表面硬度を高めても良い。例えば、ステンレス層の圧下率が0.5〜10%になるように接合することで、ステンレス層の表面硬度は200(Hv)から270(Hv)程度まで増加する。
以上のようにして製造した圧延接合体は、プレスによる深絞り加工で外郭を形成し、背面を含む外側は研磨、化成処理、塗装等の表面処理を行う。また内面側は主に内部部品の組み込み用に必要に応じて切削、研削を行い凹凸を形成してもいい。また、必要に応じて樹脂によるインサート成形を行い、内外面に金属と樹脂との複合部を形成することも可能である。上記方法により筐体へと加工できるがこれに限定されるものではない。
製造した圧延接合体は、高い剛性と弾性率を有し、高い形状保持性を有するため、電子機器用の筐体として、特にモバイル電子機器(モバイル端末)用の筐体として利用することができる。圧延接合体を用いた筐体においては、金属光沢を有する外観を得るため、筐体の外側をステンレス層とすることが好ましい。なお、筐体とした際には、変色抑制や加飾を目的とした処理が施されていてもよい。筐体成形後の工程でアルミニウム合金材及びステンレス材を研磨や研削などの加工を施した後であっても本発明の特定の関係式を満たしていれば問題ない。また、圧延接合体は、内部補強部材等の電子機器に用いる部品としても好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
原板として以下の種類の材料を用意し、表面活性化接合法により圧延接合体を製造した。
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.05mm)を用い、アルミニウム合金材としてアルミニウム合金A5052 H34(厚み0.8mm)を用いた。
SUS304及びA5052の接合する各々の面に対してスパッタエッチング処理を実施した。SUS304についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.3Pa下で、プラズマ出力700W、12分間の条件にて実施し、A5052についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.3Pa下で、プラズマ出力700W、12分間の条件にて実施した。
スパッタエッチング処理後のSUS304とA5052を、常温で、圧延ロール径100mm〜250mm、圧延線荷重0.5tf/cm〜5.0tf/cmの加圧力で、ステンレス層の圧下率0〜5%にてロール圧接により接合し、SUS304とA5052の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、320℃、1時間の条件でバッチ熱処理を行い、総厚み0.786mmの圧延接合体を製造した。
(実施例2)
ステンレス材としてSUS316L 1/2H(厚み0.05mm)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして総厚み0.799mmの圧延接合体を製造した。
(実施例3)
ステンレス材としてSUS304 1/2H(厚み0.103mm)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして総厚み0.848mmの圧延接合体を製造した。
(実施例4)
ステンレス材としてSUS304 1/2H(厚み0.104mm)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして総厚み0.798mmの圧延接合体を製造した。
(実施例5)
ステンレス材としてSUS304 1/2H(厚み0.201mm)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして総厚み0.907mmの圧延接合体を製造した。
(実施例6)
原板として以下の種類の材料を用意し、表面活性化接合法により圧延接合体を製造した。
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.25mm)を用い、アルミニウム合金材としてアルミニウム合金A5052 H34(厚み0.8mm)を用いた。
SUS304及びA5052の接合する各々の面に対してスパッタエッチング処理を実施した。SUS304についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.1Pa下で、プラズマ出力4800W、ライン速度4m/分の条件にて実施し、A5052についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.1Pa下で、プラズマ出力6400W、ライン速度4m/分の条件にて実施した。
スパッタエッチング処理後のSUS304とA5052を、常温で、圧延線荷重3.0tf/cm〜6.0tf/cmにてロール圧接により接合し、SUS304とA5052の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、300℃、8時間の条件でバッチ熱処理を行った。
続いて、上記圧延接合体についてテンションレベラーによる伸び率1〜2%程度の形状修正を実施した。これによって、圧延接合体の総厚みを1〜2%程度減少させ、アルミニウム合金層を硬化させて、総厚み0.97mmの圧延接合体を製造した。
(実施例7)
ステンレス材としてSUS316L 1/2H(厚み0.3mm)を用い、アルミニウム合金材としてアルミニウム合金A5052 H34(厚み0.8mm)を用いた以外は上記実施例6と同様にして総厚み1.025mmの圧延接合体を製造した。
(実施例8)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.3mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.3mm)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして総厚み0.574mmの圧延接合体を製造した。
(実施例9)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.15mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.5mm)を用い、テンションレベラーによる形状修正の後、圧延接合体のA5052面を、所定の厚みとなるように、エメリー紙を用いて研削した以外は、上記実施例6と同様にして総厚み0.51mmの圧延接合体を製造した。
(実施例10)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.15mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.5mm)を用いた以外は、上記実施例6と同様にして総厚み0.59mmの圧延接合体を製造した。
(実施例11)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.25mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.8mm)を用いた以外は、上記実施例9と同様にして総厚み0.49mmの圧延接合体を製造した。
(実施例12)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.25mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.8mm)を用いた以外は、上記実施例9と同様にして総厚み0.58mmの圧延接合体を製造した。
(実施例13)
ステンレス材としてSUS316L BA(厚み0.1mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.5mm)を用いた以外は、上記実施例6と同様にして圧延接合体の総厚み0.60mmの圧延接合体を製造した。
(実施例14)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.2mm)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして圧延接合体の総厚み0.952mmの圧延接合体を製造した。
(比較例1)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.101mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.3mm)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして圧延接合体の総厚み0.4mmの圧延接合体を製造した。
(比較例2)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.15mm)を用いた以外は、上記実施例9と同様にして圧延接合体の総厚み0.28mmの圧延接合体を製造した。
(比較例3)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.15mm)を用いた以外は、上記実施例9と同様にして圧延接合体の総厚み0.39mmの圧延接合体を製造した。
(比較例4)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.25mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.8mm)を用いた以外は、上記実施例9と同様にして圧延接合体の総厚み0.29mmの圧延接合体を製造した。
(比較例5)
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.25mm)を用い、アルミニウム合金材としてA5052 H34(厚み0.8mm)を用いた以外は、上記実施例9と同様にして圧延接合体の総厚み0.39mmの圧延接合体を製造した。
実施例1〜14及び比較例1〜5の圧延接合体について、ステンレス層及びアルミニウム合金層の厚み、表面硬度、圧延接合体の厚みを測定し、また、0.2%耐力時の荷重及び弾性率を求めた。
[ステンレス層・アルミニウム合金層の厚み]
圧延接合体の断面の光学顕微鏡写真を取得し、その光学顕微鏡写真において任意の10点におけるステンレス層又はアルミニウム合金層の厚みを計測し、得られた値の平均値を算出した。
[圧延接合体の厚み(総厚み)]
圧延接合体上の任意の30点における厚みをマイクロメータなどで測定し、得られた測定値の平均値を算出した。
[ステンレス層の表面硬度]
マイクロビッカース硬度計(荷重200gf)を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験−試験方法)に準じて測定した。
[アルミニウム合金層の表面硬度]
マイクロビッカース硬度計(荷重50gf)を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験−試験方法)に準じて測定した。
[0.2%耐力時の荷重・弾性率]
JIS K 7171(プラスチック−曲げ特性の求め方)及びJIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に準じて求めた。本実施例では、圧延接合体のステンレス層側から測定を行った。
まず、圧延接合体から幅20mmの試験片を作製し、テンシロン万能材料試験機 RTC−1350A(株式会社オリエンテック製)を用い、JIS K 7171(プラスチック−曲げ特性の求め方)及びJIS Z 2248(金属材料曲げ試験方法)に準じて3点曲げ試験を行い、曲げ荷重と曲げ変位(たわみ)のグラフを得た。3点曲げ試験では、JIS Z 2248の図5を参照し、押し金具の半径を5mm、支えの半径を5mm、支点間距離を40mmとした。
JIS K 7171の用語及び定義を用いて、得られた曲げ荷重から、式:曲げ応力σ=3FL/2bh(式中、Fは曲げ荷重であり、Lは支点間距離であり、bは試験片幅であり、hは試験片厚み(総厚み)である)により曲げ応力σを計算し、また、得られた曲げ変位から、式:曲げひずみε=600sh/L(式中、sは曲げ変位であり、hは試験片厚み(総厚み)であり、Lは支点間距離である)により曲げひずみεを計算した。
得られた曲げ応力σと曲げひずみεのグラフ(図1参照)において、曲げひずみεが0.0005〜0.0025(0.05%〜0.25%)の区間の曲げ応力の変位(傾き:Δσ/Δε)を求め、これを弾性率とした。そして、この弾性率の直線をひずみ量で+0.002(+0.2%)平行移動した直線(図1中、「耐力」の直線)と、曲げ応力曲線との交点における曲げ応力を0.2%耐力とする。得られた0.2%耐力の値と、式:曲げ応力σ=3FL/2bh(式中、Fは曲げ荷重であり、Lは支点間距離であり、bは試験片幅であり、hは試験片厚み(総厚み)である)を用いて、0.2%耐力時の荷重Fを求めた。
実施例1〜14及び比較例1〜5の圧延接合体の構成及び評価結果を表1に示す。
Figure 0006382436
圧延接合体の剛性には、ステンレス層及びアルミニウム合金層の厚み及び表面硬度が影響すると考えられ、また、以下で説明する図2の関係式から、0.2%耐力時の荷重Fは、下記式(3):F=(a×z+b)×x+(c×z+d)×x+e×z+f(式中、xは、アルミニウム合金層の表面硬度HAl(HV)×(厚みTAl(mm))であり、zは、ステンレス層の表面硬度HSUS(HV)×(厚みTSUS(mm))である)で表される。そして、ステンレス層の表面硬度及び厚みが一定である2つの場合について、HAlAl と0.2%耐力時の荷重Fとの関係式を求めた。図2に、ステンレス層の表面硬度HSUS及び厚みTSUSが一定の2つの場合における、HAlAl と、0.2%耐力時の荷重の関係を示す。図2に示すように、HSUSが280HVであり、TSUSが0.15mmの場合(実施例9、10及び比較例2、3)について、HAlAl と荷重Fは、下記式(5):F=−0.0785×x+3.9503×x+8.5741で表され、HSUSが280HVであり、TSUSが0.24mmの場合(実施例11、12及び比較例4、5)について、HAlAl と荷重Fは、下記式(6):F=−0.1627×x+4.5512×x+21.88で表される。よって、式(5)及び(6)を用いて、式(3)におけるa、b、c、d、e、fを求めると、0.2%耐力時の荷重Fについて、式(3)
F=(−0.008×HSUSSUS −0.03)×(HAlAl +(0.061×HSUSSUS +3.57)×HAlAl +1.354×HSUSSUS +0.04 (3)
が得られた。
上記式(3)から、0.2%耐力時の荷重Fを、筐体に求められる35N/20mm以上とするためには、圧延接合体は、下記式(1)
SUSSUS ≧(34.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (1)
を満たせばよく、また、0.2%耐力時の荷重Fを45N/20mm以上とするためには、圧延接合体は、下記式(2)
SUSSUS ≧(44.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (2)
を満たせばよい。
図3に実施例1〜14及び比較例1〜5の圧延接合体についての、ステンレス層の表面硬度HSUS×厚みTSUS と、アルミニウム合金層の表面硬度HAl×厚みTAl の関係を示す。図3において、「荷重35N/20mm」の実線は式(1)において0.2%耐力時の荷重が35N/20mmとなる場合の関係式を表し、「荷重45N/20mm」の点線は式(2)において0.2%耐力時の荷重が45N/20mmとなる場合の関係式を表す。表1及び図3より、アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)及び表面硬度HAl(HV)、並びにステンレス層の厚みTSUS(mm)及び表面硬度HSUS(HV)が、式(1)を満たす実施例1〜14の圧延接合体はいずれも35N/20mm以上の高い0.2%耐力時の荷重を有し、高い剛性を示す。さらに、アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)及び表面硬度HAl(HV)、並びにステンレス層の厚みTSUS(mm)及び表面硬度HSUS(HV)が、式(2)を満たす実施例1〜7、10、12〜14の圧延接合体はいずれも45N/20mm以上の特に高い0.2%耐力時の荷重を有し、より高い剛性を示す。一方、式(1)を満たさない比較例1〜5の圧延接合体は、0.2%耐力時の荷重は35N/20mm未満に留まり、筐体用の圧延接合体としては不十分であった。また、上記式(1)を満たし、且つステンレス層の厚み比率を10%以上とすることで、高い剛性に加えて、70GPa以上の高い弾性率を有する圧延接合体が得られた(実施例1、2と、実施例3〜14の比較)。
(実施例15)
ステンレス層/アルミニウム合金層よりなる圧延接合体から成形加工された電子機器用筐体を作製した。まず、原板として以下の種類の材料を用意し、表面活性化接合法により、圧延接合体を製造した。
ステンレス材としてSUS304 BA(厚み0.25mm)を用い、アルミニウム合金材としてアルミニウム合金A5052 H34(厚み0.8mm)を用いた。
SUS304及びA5052の接合する各々の面に対してスパッタエッチング処理を実施した。SUS304についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.1Pa下で、プラズマ出力4800W、ライン速度4m/分の条件にて実施し、A5052についてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.1Pa下で、プラズマ出力6400W、ライン速度4m/分の条件にて実施した。
スパッタエッチング処理後のSUS304とA5052を、常温で、圧延線荷重3.0tf/cm〜6.0tf/cmにてロール圧接により接合し、SUS304とA5052の圧延接合体を得た。この圧延接合体に対し、320℃、8時間の条件でバッチ熱処理を行った。
続いて、上記圧延接合体についてテンションレベラーによる伸び率1〜2%程度の形状修正を実施した。これによって、圧延接合体の総厚みを1〜2%程度減少させ、アルミニウム合金層を硬化させ、総厚み0.970mmの圧延接合体を製造した。
続いて、得られた圧延接合体について、縦150mm×横75mm、深さ10mmで深絞り加工を行った。次に、ステンレス層を研磨し、アルミニウム合金層を研削して、電子機器の背面となる総厚み0.551mmの筐体を製造した。
[ステンレス層・アルミニウム合金層の厚み等の測定]
得られた筐体背面の中央部を20mm×50mmのサイズに切り出した後、上述のステンレス層/アルミニウム合金層からなる圧延接合体の測定方法と同様にして、ステンレス層及びアルミニウム合金層の厚み、ステンレス層及びアルミニウム合金層の表面硬度、並びに0.2%耐力時の荷重及び弾性率を測定した。その結果を表1及び図3に示す。
[評価結果]
表1及び図3に示すように、ステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体を成形加工して得られた実施例15の電子機器用筐体は、実施例の圧延接合体と同様に上記式(1)を満たしており、35N/20mm以上の高い0.2%耐力時の荷重を有し、高い剛性を示した。また、実施例15の電子機器用筐体は、70GPa以上の高い弾性率を有していた。この0.2%耐力時の荷重及び弾性率は、電子機器の筐体背面として使用した場合に、筐体内部に実装される部品に悪影響を与えることが全くない範囲であり、電子機器全体の薄型化、電池容量の増加、実装容量の増加等を図ることができる。
4 電子機器用筐体
40 背面
41 側面
A 平面部分

Claims (14)

  1. ステンレス層とアルミニウム合金層からなる電子機器用圧延接合体であって、前記アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)及び表面硬度HAl(HV)、並びに前記ステンレス層の厚みTSUS(mm)及び表面硬度HSUS(HV)が下記式(1)を満たし、前記ステンレス層の厚みT SUS (mm)が0.05mm〜0.297mmである、電子機器用圧延接合体。
    SUSSUS ≧(34.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (1)
  2. 下記式(2)
    SUSSUS ≧(44.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (2)
    を満たす請求項1に記載の電子機器用圧延接合体。
  3. 前記圧延接合体の総厚みに対する前記ステンレス層の厚みTSUSの比率が、10%〜85%である請求項1又は2に記載の電子機器用圧延接合体。
  4. 弾性率が60GPa以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子機器用圧延接合体。
  5. 0.2%耐力時の荷重が35N/20mm以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子機器用圧延接合体。
  6. 前記ステンレス層の表面硬度H SUS (HV)が、350未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子機器用圧延接合体。
  7. 前記H SUS SUS が、28.37以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子機器用圧延接合体。
  8. 金属を主体とする電子機器用筐体であって、
    背面及び/又は側面がステンレス層とアルミニウム合金層からなる圧延接合体を含み、
    前記アルミニウム合金層の厚みTAl(mm)及び表面硬度HAl(HV)、並びに前記ステンレス層の厚みTSUS(mm)及び表面硬度HSUS(HV)が下記式(1)を満たし、前記ステンレス層の厚みT SUS (mm)が0.05mm〜0.297mmである、電子機器用筐体。
    SUSSUS ≧(34.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (1)
  9. 下記式(2)
    SUSSUS ≧(44.96+0.03×(HAlAl −3.57×HAlAl )/(−0.008×(HAlAl +0.061×HAlAl +1.354) (2)
    を満たす請求項に記載の電子機器用筐体。
  10. 前記電子機器用筐体の総厚みに対する前記ステンレス層の厚みTSUSの比率が、10%〜85%である請求項又はに記載の電子機器用筐体。
  11. 前記圧延接合体の弾性率が60GPa以上である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の電子機器用筐体。
  12. 前記圧延接合体の0.2%耐力時の荷重が35N/20mm以上である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の電子機器用筐体。
  13. 前記ステンレス層の表面硬度H SUS (HV)が、350未満である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の電子機器用筐体。
  14. 前記H SUS SUS が、28.37以下である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の電子機器用筐体。
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