以下、一実施形態について、図1〜図8に基づいて説明する。
図1には、一実施形態に係る露光装置10の構成が概略的に示されている。露光装置10は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置、いわゆるスキャナである。後述するように、本実施形態では、投影光学系PLが設けられており、以下においては、この投影光学系PLの光軸AXと平行な方向をZ軸方向、これに直交する面内でレチクルとウエハとが相対走査される方向をY軸方向、Z軸及びY軸に直交する方向をX軸方向とし、X軸、Y軸、及びZ軸回りの回転(傾斜)方向をそれぞれθx、θy、及びθz方向として説明を行う。
露光装置10は、図1に示されるように、照明系IOP、レチクルステージRST、投影ユニットPU、及びベース盤12上で移動するウエハステージWSTを含むステージ装置85、並びにこれらの制御系等を備えている。
照明系IOPは、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、光源と、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、及びレチクルブラインド等(いずれも不図示)を有する照明光学系と、を含む。照明系IOPは、レチクルブラインド(マスキングシステムとも呼ばれる)で設定(制限)されたレチクルR上のスリット状の照明領域IARを、照明光(露光光)ILによりほぼ均一な照度で照明する。ここで、照明光ILとして、一例として、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)が用いられている。
レチクルステージRST上には、そのパターン面(図1における下面)に回路パターンなどが形成されたレチクルRが、例えば真空吸着により固定されている。レチクルステージRSTは、例えばリニアモータ等を含むレチクルステージ駆動系11(図1では不図示、図7参照)によって、XY平面内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(図1における紙面内左右方向であるY軸方向)に所定の走査速度で駆動可能となっている。
レチクルステージRSTのXY平面内の位置情報(θz方向の回転情報を含む)は、レチクルレーザ干渉計(以下、「レチクル干渉計」という)13によって、レチクルステージRSTに固定された移動鏡15(実際には、Y軸方向に直交する反射面を有するY移動鏡(あるいは、レトロリフレクタ)とX軸方向に直交する反射面を有するX移動鏡とが設けられている)を介して、例えば0.25nm程度の分解能で常時検出される。レチクル干渉計13の計測値は、主制御装置20(図1では不図示、図7参照)に送られる。干渉計に代えてエンコーダステムを用いて位置情報を求めても良い。
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、ベース盤12の上方に水平に配置された不図示のメインフレームによってその外周部に設けられたフランジ部FLGを介して支持されている。メインフレームは、板部材から成り、不図示の複数の支持部材によって除振装置をそれぞれ介して床面F上に支持されている。
投影ユニットPUは、鏡筒40と、鏡筒40内に保持された投影光学系PLと、を含む。投影光学系PLとしては、例えば、Z軸と平行な光軸AXに沿って配列される複数の光学素子(レンズエレメント)から成る屈折光学系が用いられている。投影光学系PLは、例えば両側テレセントリックで、所定の投影倍率(例えば1/4倍、1/5倍又は1/8倍など)を有する。このため、照明系IOPからの照明光ILによってレチクルR上の照明領域IARが照明されると、投影光学系PLの第1面(物体面)とパターン面とがほぼ一致して配置されるレチクルRを通過した照明光ILにより、投影光学系PL(投影ユニットPU)を介してその照明領域IAR内のレチクルRの回路パターンの縮小像(回路パターンの一部の縮小像)が、投影光学系PLの第2面(像面)側に配置される、表面にレジスト(感応剤)が塗布されたウエハW上の前記照明領域IARに共役な領域(以下、露光領域とも呼ぶ)IAに形成される。そして、レチクルステージRSTとウエハステージWSTとの同期駆動によって、照明領域IAR(照明光IL)に対してレチクルRを走査方向(Y軸方向)に相対移動させるとともに、露光領域IA(照明光IL)に対してウエハWを走査方向(Y軸方向)に相対移動させることで、ウエハW上の1つのショット領域(区画領域)の走査露光が行われ、そのショット領域にレチクルRのパターンが転写される。すなわち、本実施形態では照明系IOP、及び投影光学系PLによってウエハW上にレチクルRのパターンが生成され、照明光ILによるウエハW上の感応層(レジスト層)の露光によってウエハW上にそのパターンが形成される。
ウエハステージWSTは、図1に示されるように、ベース盤12の上方に配置され、後述するウエハステージ駆動系により浮上支持されている。ウエハステージWSTは、図1に示されるように、ステージ本体81と、ステージ本体81の上面に固定されたウエハテーブルWTBとを備えている。ステージ本体81の+X側(図1における紙面手前側)の面には、後述する第2ステージ装置60が設けられている。なお、図1において、ウエハテーブルWTB上にウエハWが保持されている。
ベース盤12は、床面F上に複数の防振装置(図示省略)によってほぼ水平に(XY平面に平行に)支持されている。ベース盤12は、平板状の外形を有する部材から成る。ベース盤12内部には、平面モータ(後述する)の電機子ユニットとして、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置された複数のコイル17を含むコイルユニットが収納されている。
ステージ本体81は、平面視矩形の直方体部材から成り、内部の下方に上述した平面モータの磁石ユニットとして、複数の永久磁石18を備えている。複数の永久磁石18は、ベース盤12のコイルユニットに対応して、XY二次元方向を行方向、列方向としてマトリックス状に配置されている。磁石ユニットと、ベース盤12のコイルユニットと、により、例えば米国特許第6,452,292号明細書などに開示されている磁気浮上型のムービングマグネットタイプの電磁力(ローレンツ力)駆動方式の平面モータから成るウエハステージ駆動系51A(図7参照)が構成される。ウエハステージ駆動系51Aによって、ウエハステージWSTは、ベース盤12に対して6自由度方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、θx方向、θy方向、及びθz方向)に駆動される。
コイルユニットを構成する各コイル17に供給される電流の大きさ及び方向は、主制御装置20によって制御される。以下では、ウエハステージ駆動系51Aを、平面モータ51Aとも称する。
ステージ本体81には、3本の上下動ピンを備える不図示のウエハセンター支持部材(以下、センター支持部材と略記する)が設けられている。センター支持部材は、図7に示される駆動装置142を介して駆動され、後述するウエハホルダWH(図2参照)上にウエハWを載置する際、又はウエハホルダWH上からウエハWを搬出する際に使用される。
ステージ本体81の上面には、図1に示されるように、ウエハテーブルWTBが配置されている。ウエハテーブルWTBは、ステージ本体81の一部を構成するテーブル支持部材(不図示)にボルトなどを介して固定されている。テーブル支持部材は、例えば前述の複数の永久磁石18が設けられたステージ本体81の底部の上にキネマティックに支持されている。
ウエハテーブルWTBは、上面の中央に、バキュームチャック(又は静電チャック)などを有するウエハホルダWH(図1では不図示、図2参照)を介して、ウエハWが真空吸着等によって固定されている。ウエハホルダWHはウエハテーブルWTBと一体成形されていても良いが、本実施形態ではウエハホルダWHとウエハテーブルWTBとが別々に構成され、例えば真空吸着などによってウエハホルダWHがウエハテーブルWTB上に固定されている。なお、不図示であるが、ウエハテーブルWTB及びウエハホルダWHには、前述のウエハセンター支持部材が備える3本の上下動ピンに対応する位置に不図示の孔が形成され、その孔を介して上下動ピンがウエハテーブルWTB及びウエハホルダWHに対して上下動される。また、ウエハテーブルWTBの上面には、図2に示されるように、+Y側の端部近傍に、計測プレート(基準マーク板とも呼ばれる)30が設けられている。この計測プレート30には、ウエハテーブルWTBのセンターラインCLと一致する中心位置に第1基準マークFMが設けられ、該第1基準マークFMを挟むように一対のレチクルアライメント用の第2基準マークRMが設けられている。
ウエハテーブルWTBの−Y端面,−X端面には、それぞれ鏡面加工が施され、図2に示される反射面17a,反射面17bが形成されている。
ステージ本体81の+X側面には、図3に示されるように、後述する第2ステージ部材42(図4(A)参照)に支持された配管類及び配線類が一体化された用力供給用のチューブ(ケーブル)31の一端が接続されている。チューブ31の他端は、チューブキャリアTCに接続されている。チューブキャリアTCは、用力供給装置72(図7参照)から供給された電力(電流)、圧縮空気及び真空、冷媒などの用力を、チューブ31を介してウエハステージWST(ステージ本体81及び第2ステージ部材42等)に供給するものである。チューブキャリアTCは、リニアモータから成るキャリア駆動系32(図7参照)によりY軸方向に駆動される。キャリア駆動系32のリニアモータの固定子は、ベース盤12の+X端部の一部に、図3に示されるように、一体的に設けられていても良いし、ベース盤12とは分離してベース盤12の+X側に、Y軸方向を長手方向として設置しても良い。ベース盤12と分離して配置すると、チューブキャリアTCの駆動によって発生する反力がウエハステージWSTに及ぼす影響を少なくすることができる。
チューブキャリアTCは、主制御装置20によって、キャリア駆動系32を介してウエハステージWSTに追従してY軸方向へ駆動されるが、チューブキャリアTCのY軸方向への駆動は、ウエハステージWSTのY軸方向の駆動に厳密に追従する必要はなく、ある許容範囲内で追従していれば良い。
第2ステージ装置60は、チューブ31からの外乱によりウエハステージWST(ウエハW)の位置決め精度が悪化するのを防止するために設けられている。第2ステージ装置60は、図1及び図2等に示されるように、ステージ本体81の+X側面の中央部に設けられている。
第2ステージ装置60は、図4(A)及び図4(B)に示されるように、ステージ本体81の+X側の面から+X側に張り出した第2ステージベース(以下、第2ベースと略記する)61、第2ベース61上に搭載されたチューブクランプ用の第2ステージ部材42、第2ステージ部材42を第2ベース61に対して駆動する駆動系、第2ステージ部材42と第2ベース61との相対位置、すなわち第2ベース61上の所定点を基準とした、第2ステージ部材42のXY平面内の位置(ΔX、ΔY、Δθz)を計測する後述する第2ステージ位置計測系、及び第2ステージ部材42を第2ベース61(本体部81)に対して相対移動可能に支持する後述するばね部材、及び該ばね部材を第2ベース61に取り付ける取り付けユニット90等を備えている。
第2ベース61は、XY平面に平行な上面を有するYZ断面が逆U字状の部材から成り、ステージ本体81の+X側面の中央部に設けられている。また、第2ベース61の上壁(天板部)には、図4(B)に示されるように、中央部より幾分+X側の位置に円形の貫通孔61aが形成されている。第2ベース61は、ステージ本体81と一体成形されていても良いが、ここでは、ステージ本体81に固定されているものとする。第2ベース61の天板部の内部には、+X側半部の上端面の近傍に、不図示の磁石(永久磁石)が複数、XY平面内で2次元配置されている。第2ベース61の上端面は、第2ステージ部材42のガイド面(移動面)となっている。
第2ステージ部材42は、第2ベース61上に非接触で搭載されたスライダ部材(第2ステージ本体)62と、スライダ部材62上面に固定されたチューブ固定部材63と、を有する。
スライダ部材62は、X軸方向の長さが第2ベース61のほぼ1/2でかつY軸方向の長さが第2ベース61より幾分短い矩形板状の部材(厚さの薄い直方体部材)から成り、第2ベース61の上面上の+X側半部のY軸方向中央部に配置されている。スライダ部材62には、その中央部に、図8(A)に示されるように、2段の段部が形成された上下方向(Z軸方向)に貫通する円形の段付き開口73が形成されている。段付き開口73の内部には、ばね部材93の上端部を、スライダ部材62に固定するための、断面ほぼ正方形の円環状部材から成る固定部材98が配置されている。ばね部材93、及びそのスライダ部材62に対する固定構造については、後述する。
図4(A)に戻り、スライダ部材62には、チューブ31の一部を構成する1つの配管が接続されており、該配管を介して気体供給装置94(図7参照)から供給された加圧気体(例えば圧縮空気)が、スライダ部材62の下面(底面)に形成された不図示の噴き出し口から第2ベース61に向かって噴出されるようになっている。
また、スライダ部材62は、少なくとも下面側の一部(又は全体)が、磁性体部材によって形成されている。このため、スライダ部材62は、第2ベース61内部の不図示の磁石によって磁気的に吸引されている。すなわち、スライダ部材62と第2ベース61との間には、第2ベース61上面をガイド面(移動面)とする磁気予圧型の空気静圧軸受(エアベアリング)が構成されている。この空気静圧軸受により、スライダ部材62は、所定の隙間(ギャップ、クリアランス)を介して第2ベース61の上面(ガイド面)上に浮上支持されている。
気体供給装置94からスライダ部材62に供給される圧縮空気の流量等は、磁気的吸引力と、スライダ部材62と第2ベース61との間(軸受隙間)の圧縮空気の静圧、すなわち隙間内圧力とのバランスにより、軸受隙間が所望の寸法となりかつ十分な剛性が確保されるように、主制御装置20(図7参照)によって制御されている。
なお、本実施形態では、スライダ部材62と第2ベース61との間に、磁気予圧型の空気静圧軸受が構成されるものとしたが、これに限らず、例えば、真空予圧型の空気静圧軸受を構成しても良い。真空予圧型の空気静圧軸受を構成する場合は、例えば、スライダ部材62の下面で、且つ圧縮空気噴出用の不図示の噴き出し口に干渉しない位置に、更に開口(空間)を形成し、その空間内をバキューム装置等を介して負圧とすれば良い。
チューブ固定部材63は、スライダ部材62の上面の+X側半部に固定された直方体部材から成り、所定の高さ(後述する固定子部66よりも幾分高い高さ)を有している。チューブ固定部材63の上端部近傍には、X軸方向に貫通する貫通孔68がY軸方向のほぼ全域にかけて形成されている。貫通孔68内には、ステージ本体81の+X側面に一端が固定された前述のチューブ31が挿入されている。チューブ31の他端は、チューブキャリアTCに接続されている。
本実施形態では、チューブ31と貫通孔68とは、例えば、実質的に締まり嵌めとなっており、貫通孔68内に挿入されたチューブ31の一端は、チューブ固定部材63より−X側の部分がある程度撓んだ状態でステージ本体81の側面に固定されている。このため、例えばチューブキャリアTCによってチューブ31が駆動され、その駆動力の一部が外乱となってチューブ31からウエハステージWSTに加わる場合であっても、その外乱は、チューブ固定部材63を介してスライダ部材62(第2ステージ部材42)に加わる。そのため、第2ステージ部材42の第2ベース61上での自由な運動(移動)が許容されている間は、ステージ本体81は、殆ど影響を受けない。
図4(A)及び図4(B)に示されるように、第2ベース61の上面の−X側端部には、固定子部66が固定されている。固定子部66は、+X方向から見てY軸方向に細長い矩形の枠部材から成る固定子取付け部材44と、固定子取付け部材44の上壁部及び底壁部それぞれの内面に、それぞれ固定された一対の磁石ユニットMUbとを有する。固定子部66に形成された中空部69内には、直方体状の可動子部65の一端部が挿入されている。
可動子部65は、筐体52と、該筐体52の内部のX軸方向一端部に収納されたコイルユニットCUb(図5参照)と、を有する。コイルユニットCUbは、一対の磁石ユニットMUbに対応する(上下で対向する)位置に配置されている。また、可動子部65のX軸方向他端部下面は、スライダ部材62上面の−X側半部に固定されている。コイルユニットCUbと、コイルユニットCUbを上下で挟む一対の磁石ユニットMUbとによって、ボイスコイルモータMb(図5参照)が構成されている。以下、ボイスコイルモータMbについて説明する。
図5には、第2ベース61上面に配置された固定子部66と、可動子部65とが示されている。ここで、固定子部66は、仮想線(二点鎖線)で示されている。コイルユニットCUbは、図5に示されるように、可動子部65の筐体52内部の−X側端部のY軸方向中央部に設けられたX軸方向を長手方向とする平面視矩形状の1つのYコイル(以下、適宜「コイル」と呼ぶ)56aと、コイル56aのY軸方向の一側と他側にそれぞれ配置されたY軸方向を長手方向とする平面視矩形状の2つのXコイル(以下、適宜「コイル」と呼ぶ)55a,57aとを含む。
一対の磁石ユニットMUbは、固定子部66の固定子取付け部材44の上壁部及び底壁部それぞれの内面におけるY軸方向の中央部にY軸方向に並べて配置されたX軸方向を長手方向とする平面視長方形の各一対(上壁部及び底壁部合わせて2対)の永久磁石56bと、これらの永久磁石56bのY軸方向の一側と他側にそれぞれX軸方向に並べて配置された各一対(上壁部及び底壁部合わせて各2対)のY軸方向を長手方向とする平面視長方形の永久磁石55b,57bと、を含む。
なお、図5には、一対の磁石ユニットMUbのうち、固定子取付け部材44の上壁部に固定された磁石ユニットMUbのみが示されているが、固定子取付け部材44の底壁部に固定された磁石ユニットMUbも同様に構成されている。各二対の永久磁石55b,56b,57bは、対を成す一方と他方との磁極の向きが互いに逆に設定されている。そして、一対の磁石ユニットMUb(各一対の永久磁石55b,57b,56b)のそれぞれは、コイルユニットCUb(コイル55a,57a,56a)の+Z側又は−Z側の面に対向している。
上述の構成の可動子部65と固定子部66とにより、固定子部66(第2ベース61)に対して可動子部65(第2ステージ部材42)をX軸方向、Y軸方向、及びθz方向に駆動する3軸のボイスコイルモータMbが構成される。この場合、厳密に言うと、上下一対の永久磁石55b,56b,57bのそれぞれと、コイル55a,56a,57aのそれぞれとによって、3つのボイスコイルモータが構成されるが、説明の便宜上、その3つのボイスコイルモータの全体を1つのボイスコイルモータMbとみなしている。θz方向の駆動は、+Y側及び−Y側に配置された、X軸方向に駆動力を発生する2つのボイスコイルモータの駆動力を異ならせることによって行われる。なお、ボイスコイルモータMbは、主制御装置20によって、コイルユニットCUbを構成する各コイルに供給される電流の大きさ及び方向が制御されることによりX軸方向及びY軸方向の駆動力が制御される(図7参照)。
ボイスコイルモータMbによる第2ステージ部材42の駆動中心(駆動力の作用点)は、Z軸方向に関してウエハステージWST全体の重心(高さ位置)と一致している。また、その駆動中心は、X軸方向に関しても、ウエハステージWST全体の重心と一致する位置(又はその近傍の位置)に設定されている。ここで、平面モータ51AによるウエハステージWSTの駆動中心が、X軸方向(及びY軸方向)に関してウエハステージWSTの重心と一致している。このため、X軸方向に関しては、ボイスコイルモータMbによる第2ステージ部材42の駆動中心は、平面モータ51AによるウエハステージWSTの駆動中心と一致している。すなわち、ボイスコイルモータMbによる第2ステージ部材42に対するX軸方向の駆動力の作用点は、平面モータ51AによるウエハステージWSTに対するX軸方向の駆動力の作用点と一致している。
なお、ボイスコイルモータMbに代えて、例えば米国特許出願公開第2010/0073653号明細書に開示される微動ステージ駆動系と同様の2段(あるいは多段)構成のボイスコイルモータ(又はリニアモータ)を採用しても良い。かかる場合には、第2ステージ部材42を、θy方向を除く、5自由度方向(X軸、Y軸、Z軸、θz、θxの各方向)に微小駆動することが可能になる。特に、上下一対のXZコイル及びこれらに上下で対向する複数の永久磁石、及び/又は上下一対のYZコイル及びこれらに上下で対向する複数の永久磁石を、X軸方向に一対並べて配置することで、第2ステージ部材42を、6自由度方向に駆動することが可能になる。
また、第2ステージ装置60は、第2ステージ位置計測系19(図7参照)を備えている。第2ステージ位置計測系19は、第2ベース61上の所定点を基準とする第2ステージ部材42のX軸方向及びY軸方向の位置、並びにθz方向の回転量(位置情報)を計測する。
第2ステージ位置計測系19は、図4(A)及び図4(B)に示されるように、第2ベース61上面のY軸方向の両端部及び+X側端部にそれぞれ設けられた一対のXスケール74X1、74X2及びYスケール74Yと、Xスケール74X1、74X2及びYスケール74Yにそれぞれ対向して、スライダ部材62のY軸方向両端面及び+X側面にそれぞれ固定されたXヘッド73X1、73X2(Xヘッド73X2は、紙面内奥側に隠れているため不図示)及びYヘッド73Yと、を備えている。
Xスケール74X1、74X2には、X軸方向を周期方向とする反射型回折格子(X回折格子)が上面に形成され、Yスケール74Yには、Y軸方向を周期方向とする反射型回折格子(Y回折格子)が上面に形成されている。X回折格子及びY回折格子の格子線のピッチは、不図示であるが、例えば1μmと設定されている。
Xヘッド73X1、73X2と、Xスケール74X1、74X2とにより、X軸方向を計測方向とするXエンコーダ(以下では、Xヘッド73X1、73X2と同じ符号を用いて、Xエンコーダ73X1、73X2と称する)が構成されている。同様に、Yヘッド73YとYスケール74Yとにより、Y軸方向を計測方向とするYエンコーダ(以下では、Yヘッド73Yと同じ符号を用いて、Yエンコーダ73Yと称する)が構成されている。Xエンコーダ73X1、73X2及びYエンコーダ73Yそれぞれの計測結果は、主制御装置20(図7参照)に送られる。なお、主制御装置20は、一対のXエンコーダ73X1、73X2の計測結果に基づき、第2ベース61上の所定点、具体的には、Xスケール74X1、74X2の長手方向の中心を結ぶ直線(Y軸に平行な直線)と、Yスケール74Yの長手方向の中心を通るX軸に平行な直線との交点、を基準とする第2ステージ部材42のX軸方向の位置、及びθz方向の回転量を算出する。なお、本実施形態では、Xスケール74X1、74X2は、Yスケール74Yの長手方向の中心を通るX軸に平行な直線に関して対称に配置されている。
また、主制御装置20は、Yエンコーダ73Yの計測結果に基づき、第2ベース61上の上記所定点を基準とする第2ステージ部材42のY軸方向の位置を算出する。なお、各エンコーダに代えて、例えば干渉計又は、静電容量センサ等を用いて、第2ベース61と第2ステージ部材42との位置関係を計測しても良い。
取り付けユニット90は、図4(A)に示されるように、第2ベース61下面の中央部に吊り下げ状態で設けられている。取り付けユニット90は、図8(A)に示されるように、第2ベース61の上壁(天板部)の中央部の下方に配置された土台部材92と、該土台部材92を第2ベース61の上壁(天板部)に吊り下げ状態で支持する一対の支持部材91(図8(A)では−Y側の支持部材は不図示)とを、有している。
一対の支持部材91は、XZ平面に平行に配置された薄板部材から成り、上端面が第2ベース61の上壁の下面にボルト等で締結され、固定されている。
土台部材92は、図8に示されるように、上端部にY軸方向の両外側に突出した一対の突出部を有する直方体部材から成り、その上面の中央部に所定深さの平面視円形の凹部92aが形成されている。また、土台部材92は、前記一対の突出部上面の先端部が、一対の支持部材91と例えばボルト締結などで連結されている。
土台部材92の凹部92aの内部に、Z軸方向に伸びるばね部材93の下端部が収納されている。ばね部材93は、上端部と下端部とを除く部分(以下、中央部と呼ぶ)が断面円形の棒状のばね部材である。ばね部材93は、下端部の固定部95、中央部の棒状部96、及び上端部の板ばね部97を有している。ばね部材93は、固定部95を含む下端部の一部が土台部材92の凹部92a内に収納されている。
固定部95は、棒状部96の下端に設けられた棒状部96とほぼ同心の、棒状部96より大径の円盤状の部分である。固定部95の外径は、土台部材92の凹部92aの内径よりも僅かに小さく設定され、その下面が土台部材92の凹部92aの内部底面に固定されている。
棒状部96は、前述の如く断面円形の棒状部分から成るのでばね部材93はXY平面内での曲げ、及びねじり(θz方向)がある程度(ばね定数に応じて)許容されている。
板ばね部97は、平面視において、放射状に複数方向、例えば6方向にそれぞれ延設された複数、ここでは6つの薄い板状部を有している。板ばね部97は、放射状に延設された6つの板状部それぞれの先端が、スライダ部材62の段付き開口73の下段の段部上面に載置され、その上方から固定部材98によって締めつけられることで、スライダ部材62に対して固定されている。この板ばね部97がスライダ部材62に対して固定された状態では、固定部材98の下面は、段付き開口73の上段の段部上面に圧接している。すなわち、板ばね部97は、スライダ部材62に対して位置ずれしないよう、図8(A)に示されるように、段付き開口73下段の段部と固定部材98とで上下から挟まれている。固定部材98は、不図示のボルトによって、板ばね部97に干渉しない位置で、スライダ部材62に対して連結されている。板ばね部97は、それぞれの板状部の長手方向に力が加わると、図8(B)に示されるように、板状部が波打つように変形(Z軸方向に変形)し、板ばね部97からスライダ部材62に対してXY平面に対するチルト方向のトルクが加えられない(吸収される)ようになっている。
ステージ本体81が平面モータ51AによりXY平面内で加速度を伴って駆動されると、慣性力により第2ステージ部材42が、ステージ本体81とは反対向きに移動する。従って、第2ステージ部材42をステージ本体81に追従させる(第2ステージ部材42とステージ本体81との位置関係を保って両者を移動させる)ためには、ステージ本体81に対する第2ステージ部材42の位置に応じて第2ステージ部材42を駆動する必要がある。しかるに、本実施形態では、ばね部材93が設けられているので、ばね部材93は、その変形量(第2ステージ部材42の第2ベース61上の基準位置からの変位に比例)に応じて力(弾性力、原位置復帰力)を発生する。このばね部材93の発生する力の向きは、第2ステージ部材42をステージ本体81に追従させる向きとなる。このため、上記の第2ステージ部材42を駆動するために必要な力の一部をばね部材93によって発生させることができ、ボイスコイルモータMbが発生するべき力を減少させることができ、ボイスコイルモータMbの負担が、ばね部材93が設けられていない場合に比べて、軽減される。
例えば、ばね部材93のばね定数(剛性)を大きくすると、ボイスコイルモータMbの負担が軽くなり、第2ステージ部材42が確保すべき可動ストロークが小さくなるというメリットがある反面、ばね部材93の変形量(第2ステージ部材42の第2ベース61上の基準位置からの変位)が小さくなって、その変位を検出する第2ステージ位置計測系19(エンコーダ73X1、73X2、73Y)がその変位を検出することが困難になる。特に、変位が第2ステージ位置計測系19の分解能より小さくなると、検出はできない。すなわち、ばね部材93のばね定数を大きくすると、第2ステージ部材42の変位の検出感度が悪くなる。上記と反対に、ばね部材93のばね定数(剛性)を小さくすると、第2ステージ部材42の変位の検出感度は良くなるが、ボイスコイルモータMbの負担が重くなり、第2ステージ部材42が確保すべき可動ストロークが大きくなるというデメリットがある。
そこで、本実施形態では、ばね部材93のばね定数(剛性)は、第2ステージ位置計測系19の分解能と、ボイスコイルモータMbが発生する推力と、想定される外乱(チューブ31等からの外乱)の大きさと、第2ステージ部材42の質量と、チューブ31の質量と、第2ステージ部材42(スライダ部材62)の可動ストロークとの兼ね合いを考慮して設定されている。
次に、ウエハステージWSTの位置計測を行う干渉計システム78(図7参照)について説明する。
干渉計システム78は、ウエハステージWSTの位置情報を計測する複数の干渉計、具体的には、図3に示されているY干渉計16及び3つのX干渉計136、137、138等を含む。本実施形態では、上記各干渉計としては、一部を除いて、測長軸を複数有する多軸干渉計が用いられている。
Y干渉計16は、図1及び図3に示されるように、投影光学系PLの投影中心(光軸AX、本実施形態では前述の露光領域IAの中心とも一致)を通るY軸に平行な直線(以下、基準軸と呼ぶ)LVから同一距離−X側,+X側に離れた光路をそれぞれ通る測長ビームB41,B42、及び測長ビームB41,B42から−Z方向に離間し、かつ基準軸LV上を通る測長ビームB3を含む少なくとも3本のY軸方向の測長ビームを、ウエハテーブルWTBの反射面17aに照射し、それぞれの反射光を受光する。
X干渉計136は、投影光学系PLの光軸を通るX軸方向の直線(基準軸)LHから同一距離+Y側,−Y側に離れた光路をそれぞれ通る測長ビームB51,B52を含む少なくとも3本のX軸方向の測長ビームをウエハテーブルWTBの反射面17bに照射し、それぞれの反射光を受光する。
X干渉計137は、後述するアライメント検出系ALGの検出中心を通るX軸に平行な直線LAを通る測長ビームB6を含む少なくとも2本のX軸方向の測長ビームをウエハテーブルWTBの反射面17bに照射し、それぞれの反射光を受光する。
X干渉計138は、ウエハのロードが行われるローディングポジションLPを通るX軸に平行な直線LULに沿って測長ビームB7をウエハテーブルWTBの反射面17bに照射し、その反射光を受光する。
干渉計システム78の上記各干渉計の計測値(位置情報の計測結果)は、主制御装置20に供給されている(図7参照)。主制御装置20は、Y干渉計16の計測値に基づいて、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)のY軸方向、θx方向及びθz方向に関する位置情報を求める。また、主制御装置20は、X干渉計136、137及び138のいずれかの計測値に基づいてウエハステージWSTのX軸方向に関する位置情報を求める。また、主制御装置20は、X干渉計136の計測値に基づいて、ウエハステージWSTのθy方向に関する位置情報を求める。なお、主制御装置20は、X干渉計136の計測値に基づいてウエハステージWSTのθz方向に関する位置情報を求めることとしても良い。
この他、干渉計システム78は、Z軸方向に離間した一対のY軸に平行な測長ビームを、ステージ本体81の−Y側の面に固定された移動鏡(不図示)の上下一対の反射面をそれぞれ介して一対の固定鏡(不図示)に照射し、その一対の固定鏡からの上記反射面を介した戻り光を受光する、基準軸LVから同一距離−X側,+X側に離れて配置された一対のZ干渉計を備えていても良い。この一対のZ干渉計の計測値に基づいて、主制御装置20は、Z軸、θy、θzの各方向を含む少なくとも3自由度方向に関するウエハステージWSTの位置情報求めることができる。
なお、干渉計システム78の詳細な構成、及び計測方法の詳細の一例については、例えば米国特許出願公開第2008/0106722号明細書などに詳細に開示されている。
なお、ウエハステージWSTの位置情報を計測するために、本実施形態では干渉計システムを用いたが、別の手段を用いても良い。例えば、米国特許出願公開第2010/0297562号明細書に記載されているようなエンコーダシステムを使用することも可能である。この場合、例えば、ウエハテーブルWTBに2次元スケールを配置し、不図示のメインフレームの下面にエンコーダヘッドを取り付けても良い。
露光装置10では、さらに、図1に示されるように、投影光学系PLの鏡筒40の下端部側面に、前述の第1基準マークFM及びウエハW上のアライメントマークを検出するアライメント検出系ALGが設けられている。アライメント検出系ALGとしては、例えば、ウエハ上のレジストを感光させないブロードバンドな検出光束を対象マークに照射し、その対象マークからの反射光により受光面に結像された対象マークの像と不図示の指標(アライメント検出系内に設けられた指標板上の指標パターン)の像とを撮像素子(CCD等)を用いて撮像し、それらの撮像信号を出力する画像処理方式のFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。アライメント検出系ALGからの撮像信号は、主制御装置20に供給されるようになっている(図7参照)。
なお、アライメント検出系ALGに代えて、例えば米国特許出願公開第2009/0233234号明細書に開示されている5つのアライメント検出系を備えたアライメント装置を設けても良い。
この他、露光装置10では、投影光学系PLの近傍には、ウエハWの表面に複数の計測ビームを照射する照射系54aと、それぞれの反射ビームを受光する受光系54bとを有する多点焦点位置検出系(以下、多点AF系と称する)54(図7参照)が設けられている。多点AF系54の詳細構成については、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示されている。
図1では不図示であるが、レチクルRの上方に、レチクルR上の一対のレチクルアライメントマークと、これに対応するウエハテーブルWTB上の計測プレート30上の一対の第2基準マークRMの投影光学系PLを介した像とを同時に観察するための露光波長を用いたTTR(Through The Reticle)方式の一対のレチクルアライメント検出系14(図7参照)が配置されている。この一対のレチクルアライメント検出系14の検出信号は、主制御装置20に供給されるようになっている。
ここで、説明は前後するが、ステージ制御系の一部を成し、ウエハステージWST及び第2ステージ部材42の駆動を制御する第1制御系59について説明する。ここでは、一例として、第1制御系59は、XY平面内の3自由度方向(X、Y、θz)に関して、ウエハステージWST及び第2ステージ部材42の駆動を制御するものとする。
図6には、第1制御系59の構成が、その制御対象とともにブロック図にて示されている。第1制御系59は、生成された目標軌道を用いて、ウエハステージWSTと第2ステージ部材42とを駆動する。第1制御系59は、主制御装置20内に構築されている。
第1制御系59は、第1の2自由度制御系100と、第2の2自由度制御系200と、後述する第2の平面モータフィードフォワード制御部500と、を有する。
第1の2自由度制御系100は、ウエハステージWSTを駆動制御するための制御系である。第1の2自由度制御系100は、2つの異なる制御特性を独立に設定することができるように第1の平面モータフィードフォワード制御部102と、平面モータフィードバック制御部103とを有している。なお、以下では、フィードフォワード制御部をFF制御部と略記し、フィードバック制御部をFB制御部と略記する。
第1の2自由度制御系100は、さらに、軌道生成部101、加算器105、108、及び減算器106、107、並びに変換ゲイン109等を有している。
第2の2自由度制御系200は、第2ステージ部材42の駆動(ウエハステージWSTに対する位置を維持するサーボ駆動を含む)を制御するための制御系である。第2の2自由度制御系200は、第1の2自由度制御系100と同様、2つの異なる制御特性を独立に設定することができるようにVCMFF制御部202と、VCMFB制御部203とを有している。第2の2自由度制御系200は、さらに、目標値出力部201、加算器205、207、及び減算器206、208、209、並びに変換ゲイン210を有している。
まず、第1の2自由度制御系100について説明する。
軌道生成部101には、ウエハステージWSTの移動開始点のXY平面内の3自由度方向(X、Y、θz)の位置情報と、移動終了点のXY平面内の3自由度方向の位置情報とが入力される。移動開始点は、ウエハステージWSTの現在の位置を表し、移動終了点は、ウエハステージWSTを移動させる先である目標位置を表す。ここで、θz方向は、常に零が目標軌道となる。本実施形態では、平面モータ51AによるX、Y、θz方向に関するウエハステージWSTの駆動中心は、その重心に一致しているものとする。この場合、X、Y、θzのいずれの方向に対しても、同様の説明が成り立つので、以下では、代表的にウエハステージWSTをY軸方向に駆動する制御系について説明する。
軌道生成部101は、入力された移動開始点及び移動終了点に基づいて、ウエハステージWSTを移動開始点から移動終了点まで移動させるための目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば各時刻「t」に対応付けられたウエハステージWSTの位置Y(t)を所定周期(Trとする)でサンプリングしたデータとすることができる。また、軌道生成部101は、位置のデータだけではなく、速度、加速度、加加速度(ジャーク、jerk)等、可制御正準形の全状態についてのデータそれぞれに関する目標軌道Ysdesiredを生成する。以下では、目標軌道Ysdesiredは、Y位置に関する情報として、与えられるものとする。
第1の平面モータFF制御部102は、軌道生成部101における1サンプリング周期Trに対応した時間だけ先の全状態に関する上記の目標軌道を入力として、ウエハステージWSTのY座標位置をフィードフォワード制御(例えば、特開2001−325005号公報や論文「マルチレートフィードフォワード制御を用いた完全追従法」(藤本博志他、計測自動制御学会論文集36巻、9号、pp766−772、2000年)を参照)する。
具体的には、第1の平面モータFF制御部102は、制御対象301(ウエハステージWST)の制御特性を再現した制御モデルと逆の応答を示す(入出力が逆の関係となる)逆システムを保持(記憶)しており、この逆システムを用いることにより、平面モータ51Aを駆動するための駆動信号(力命令信号)Fcomを生成する。この駆動信号Fcomは、制御対象301に対する第1の平面モータFF制御部102からの操作量となる。なお、第1の平面モータFF制御部102は、入力を上記のサンプリング周期Trで取り込み、生成した駆動信号Fcomを所定のサンプリング周期(Tuとする)で出力するものとする。
平面モータFB制御部103には、減算器106の計算結果が入力される。減算器106の計算結果は、軌道生成部101で生成される前述の目標軌道YsdesiredとウエハステージWSTのY位置(干渉計システム78により得られるY位置Ys)との差分(位置偏差)Yserrである。
平面モータFB制御部103は、減算器106の出力、即ち目標軌道Ysdesiredを基準としたウエハステージWSTのY位置の誤差(位置偏差)Yserrに基づいて、ウエハステージWSTのY座標位置をフィードバック制御する。具体的には、平面モータFB制御部103は、上記位置偏差Yserrがゼロとなるように、平面モータ51Aを駆動するための駆動信号(力命令信号)F’comを生成する。この駆動信号は、制御対象301に対する平面モータFB制御部103からの操作量となる。なお、ウエハステージWSTのY位置の読み取りは所定のサンプリング周期(Tyとする)で行われ、また、平面モータFB制御部103は、入力を所定のサンプリング周期Tyで取り込み、生成した駆動信号を所定のサンプリング周期Tuで出力するものとする。
第1の平面モータFF制御部102からの操作量、すなわち駆動信号Fcomと、平面モータFB制御部103からの操作量、すなわち駆動信号F’comは、加算器105により加算され、加算後の操作量である駆動信号(力命令信号)Fscomが加算器108に与えられる。
ここで、説明は前後するが、第2の2自由度制御系200について説明する。
第2の2自由度制御系200は、前述の軌道生成部101に相当するものとして、目標値出力部201を有している。目標値出力部201は、ウエハステージWST上の基準位置からの第2ステージ部材42のオフセット量(位置ずれ量)の目標値ΔYcsdesiredを出力する。本実施形態では、目標値出力部201は、目標値ΔYcsdesiredとして常時0を出力する。しかしながら、これに限られるわけではない。
VCMFF制御部202には、加算器207の計算結果が入力される。加算器207の計算結果は、上記の目標値出力部201から出力される目標値ΔYcsdesired(=0)と、前述の軌道生成部101が生成した目標軌道Ysdesiredとを加算した結果である。この場合、目標値出力部201から出力される目標値ΔYcsdesiredは常時0であるため、加算器207の計算結果は、軌道生成部101が生成した目標軌道Ysdesiredそのものである。VCMFF制御部202は、加算器207が出力した目標軌道Ysdesiredに対して、上述した第1の2自由度制御系100の第1の平面モータFF制御部102と同様、第2ステージ部材42のY座標位置をフィードフォワード制御する。
具体的には、VCMFF制御部202は、制御対象302(第2ステージ部材42)の制御特性を再現した制御モデルと逆の応答を示す(入出力が逆の関係となる)逆システムを保持(記憶)している。ただし、制御対象302(第2ステージ部材42)の制御特性は、本実施形態の場合、前述の説明からもわかるように、ばね部材93の弾性力(原位置復帰力)の影響を受ける。従って、本実施形態の場合、真の制御対象は、ばね部材93の弾性力によりアシストされる第2ステージ部材42であり、この制御対象を再現した制御モデルは、ばね部材93の特性をその一部に含むモデルである。従って、逆システムもその制御モデルに対応する。
すなわち、ばね部材93が設けられていない場合に制御対象302(第2ステージ部材42)を制御する場合と比べて、VCMFF制御部202の計算内容が異なる。すなわち、本実施形態では、VCMFF制御部202は、ばね部材93からの力を考慮した上でボイスコイルモータMbが発生すべき力を制御する。
ばね部材93の特性をその一部に含むモデルに対応する制御モデル及び逆システムは、設計値から求められる。しかし、ばね部材93の取り付けが設計値通りに行われる保証はない。また、第2ステージ部材42には、チューブ31が接続されているので、外乱となり得る。そこで、実際に、予定されている目標軌道(軌道生成部101が生成すべき目標軌道)に従ってウエハステージWSTを露光時と全く同様に駆動し、その際の第2ステージ部材42の軌道を求め、求めた軌道から逆算して、VCMFF制御部202が保持すべき逆システムを求めるためのいわゆる学習制御を採用しても良い。そして、この学習制御により求められた逆システムを、VCMFF制御部202に保持させる。
VCMFF制御部202は、上記の学習制御により得られた逆システム(又は設計値から得られる逆システム)を用いることにより、軌道生成部101が生成する目標軌道に応じた目標とすべき軌道(以下、便宜上、予定軌道と呼ぶ)に従って制御対象302(第2ステージ部材42)を移動させるためのボイスコイルモータMbに対する駆動信号(力命令信号)fcomを生成する。この駆動信号fcomは、制御対象302(第2ステージ部材42)に対するVCMFF制御部202からの操作量となる。なお、VCMFF制御部202は、入力を上述のサンプリング周期Trで取り込み、生成した駆動信号を所定のサンプリング周期Tuで出力するものとする。
VCMFB制御部203には、減算器206の計算結果が入力される。減算器206の計算結果は、目標値出力部201から出力される目標値ΔYcsdesired(=0)と減算器208の計算結果との差分であり、ここでは、減算器208の計算結果の符号を反転したものとなる。減算器208の計算結果は、第2ステージ部材42の現在位置とウエハステージWSTの現在位置との差であり、ウエハステージWST上の基準点(前述した所定点)を基準とする第2ステージ部材42の位置と等価である。この減算器208の計算結果は、実際には、第2ステージ位置計測系19(Yエンコーダ73Y)の計測結果から得られる第2ステージ部材42のY位置情報である。すなわち、VCMFB制御部203には、実際には、第2ステージ位置計測系19の計測結果から得られる第2ステージ部材42のY位置(Y座標値)の符号を反転したY座標値が入力される。
VCMFB制御部203は、上述の減算器206から出力されるY座標値(前述の所定点に対する第2ステージ部材42のY位置の誤差)に基づいて、第2ステージ部材42のY座標位置をフィードバック制御する。具体的には、VCMFB制御部203は、上述の第2ステージ部材42のY座標値(前述の所定点に対する第2ステージ部材42のY位置の誤差)がゼロとなるように、ボイスコイルモータMbを駆動するための駆動信号(力命令信号)f’comを生成する。この駆動信号(力命令信号)f’comは、制御対象302(第2ステージ部材42)に対するVCMFB制御部203からの操作量となる。なお、第2ステージ部材42のY位置の読み取りは所定のサンプリング周期Tyで行われ、また、VCMFB制御部203は、生成した駆動信号を所定のサンプリング周期Tuで出力するものとする。
VCMFF制御部202からの操作量、すなわち駆動信号fcomとVCMFB制御部203からの操作量、すなわち駆動信号f’comは加算器205により加算され、加算後の操作量である駆動信号(力命令信号)Fcscomが変換ゲイン210に与えられる。変換ゲイン210は、駆動信号(力命令信号)Fcscomを、対応する力Fcs(制御対象302(第2ステージ部材42)に加える力)に変換するゲインで、実際には、アクチュエータであるボイスコイルモータMbとこの駆動アンプが、これに相当する。
本実施形態では、前述の如く、チューブ31の一端部近傍の部分が第2ステージ部材42に接続されている。このため、ウエハステージWSTが駆動される際に、第2ステージ部材42がチューブ31を引き摺ることにより、そのチューブ31の張力等が第2ステージ部材42に対して外乱(外乱力)として作用することになる。図6では、変換ゲイン210の出力、すなわちボイスコイルモータMbから制御対象302(第2ステージ部材42)に加えられる力(推力)Fcsが入力される減算器209に、チューブ31による外乱力(チューブ31から第2ステージ部材42に加えられる力)Fcが入力されることを示す矢印により、上記の外乱力の作用を示している。この図6からわかるように、第2ステージ部材42に作用する力は、推力Fcs及び、外乱力(チューブ負荷抵抗)Fcを含む。ここで、加算器でなく減算器209を用いているのは、推力の向きと外乱力Fcの向きとが逆向きだからである。
しかるに、上記の外乱力(チューブ負荷抵抗)Fcを含む力により制御対象302(第2ステージ部材42)が駆動された結果として得られる制御量(第2ステージ部材42のY座標値)が減算器206にフィードバックされており、VCMFB制御部203により演算される駆動信号(力命令信号)f’comは、上記の外乱力を軽減又は相殺する操作量となっている。
上述のように、本実施形態では、VCMFF制御部202では、軌道生成部101で生成される目標軌道Ysdesiredに応じて制御対象302(第2ステージ部材42)を予定軌道に従って駆動するためのボイスコイルモータMbに対する駆動信号(力命令信号)fcomを発生する。そして、VCMFB制御部203では、チューブ31等からの外乱など、再現性のない力が加わることに起因する制御対象302(第2ステージ部材42)の予定軌道からのずれを、補償(補正)するためのフィードバック制御を行っている。なお、上記の外乱の性質等が既知である場合には、第2ステージ部材42の駆動制御を行うVCMFF制御部202により演算される操作量を、上記の外乱力を軽減又は相殺する操作量とすることもできる。
本実施形態では、ウエハステージWSTに固定子部66(一対の磁石ユニットMUb)が設けられ、第2ステージ部材42に可動子部65(コイルユニットCUb)が設けられたボイスコイルモータMbによって第2ステージ部材42が駆動されるようになっているので、ボイスコイルモータMbが第2ステージ部材42を駆動する駆動力を発生すると、その駆動力の反力がウエハステージWSTに対して作用する。この反力は、ウエハステージWSTをX軸方向、Y軸方向、及びθz方向等に駆動する力となり、ウエハステージWSTの位置制御の妨げとなる。図6中には、後述する変換ゲイン109の出力である力Frが入力される減算器107に、力Fcs’が入力されることを示す矢印により、ウエハステージWSTにこの反力が加わる様子が示されている。すなわち、減算器107に対する入力Fcs’は、ウエハステージWSTの動作の間、すなわちスキャンあるいはステップなどを行う間に第2ステージ部材42の駆動によってウエハステージWSTに作用する力を表す。
なお、ボイスコイルモータMbによる第2ステージ部材42のY軸方向に関する駆動中心、すなわちそのY軸方向の駆動力の反力のウエハステージWST上における作用点とウエハステージWSTの重心とは異なるので、ボイスコイルモータMbによる第2ステージ部材42の駆動中心に加えられた力Fcsの反力は、Fcsと同一とはならず、一種の座標変換後の力Fcs’として、ウエハステージWSTの重心に作用する。すなわち、図6中で減算器107に力Fcsではなく力Fcs’が入力されているのは、このことを概念的に示している。
本実施形態では、上記の反力に起因するウエハステージWSTの位置制御の妨げとなる力を、相殺する目的で、第2の平面モータFF制御部500が設けられている。第2の平面モータFF制御部500には、図6に示されるように、加算器205の出力、すなわち制御対象302(第2ステージ部材42)に対する操作量である前述の駆動信号(力命令信号)Fcscomが入力される。第2の平面モータFF制御部500は、入力された駆動信号(力命令信号)Fcscomに基づき、該駆動信号(力命令信号)Fcscomが与えられた場合に、ボイスコイルモータMbが発生する駆動力と、ボイスコイルモータMbによる第2ステージ部材42の駆動中心、すなわち、その駆動力の反力のウエハステージWST上における作用点と平面モータ51AによるウエハステージWSTの駆動中心(この場合、ウエハステージWSTの重心)との位置の違いとに基づいて、一種の座標変換演算を行なう。そして、第2ステージ部材42が発生する駆動力の反力を相殺するための操作量、すなわち駆動信号(力命令信号)Fcs’comを演算し、加算器108に与えている。
加算器108は、加算器105から出力される制御対象301(ウエハステージWST)に対する操作量、すなわち駆動信号(力命令信号)Fscomと、上記の駆動信号(力命令信号)Fcs’comとを加算した駆動信号Frcomを、変換ゲイン109に与える。
変換ゲイン109は、駆動信号(力命令信号)Frcomを、対応する力(推力)Fr(制御対象301(ウエハステージWST)に加える力)に変換するゲインで、実際には、アクチュエータである平面モータ51Aとこの駆動アンプが、これに相当する。
変換ゲイン109の出力である力Frは、減算器107に与えられ、減算器107で、力Frから前述した力Fcs’を減じた力Fsが計算され、制御対象301(ウエハステージWST)に対して与えられる。
ここで、Frcom=Fscom+Fcs’comであるのに対応して、Fr=Fs+Fcs’の関係が成り立っている。
従って、ウエハステージWSTに加わる前述の反力(座標変換後の力)−Fcs’は、第2の平面モータFF制御部500で算出される駆動信号(力命令信号)Fcs’comの変換ゲイン109による変換後の力Fcs’によって相殺されている。図6中の楕円で囲んだ「Balance Out」は、ここで説明した、反力が相殺される様子を、概念的に示している。
簡単にまとめると、本実施形態では、チューブ31から第2ステージ部材42に作用する外乱力Fcは、減算器209で力(推力)Fcsから差し引かれ、力(推力)Fcsに起因してウエハステージWSTの重心に作用する力Fcs’は、減算器107で力(推力)Frから差し引かれる。このようにして、第2ステージ部材42の駆動力の反力Fcs(に起因する力)のウエハステージWSTに対する影響はキャンセルされる。キャンセルされた結果、第2ステージ部材42は、位置ΔYcs=Ycs−Ysを所望の範囲に維持し、ウエハステージWSTは、所定の位置Ysへチューブ31による負荷抵抗(外乱力Fc)の影響を感じさせずに動く。すなわち、本実施形態では、チューブ31による未知の負荷抵抗は第2ステージ部材42へ等しく反対の力をかけることにより抽出し、次に、この既知の力に基づいて座標変換演算を含む演算により算出された力を、所望のウエハステージWSTに対する推力に加える。これにより、ウエハステージWSTに加わるボイスコイルモータMbの駆動力の反力に起因する力が、第2の平面モータFF制御部500で演算された操作量に対応する力によって相殺される。
以上のようにして、第1の2自由度制御系100では、上記反力の影響が全くない場合と同様に制御対象301(ウエハステージWST)が駆動制御される。すなわち、加算器105の出力である、第1の平面モータFF制御部102からの操作量と平面モータFB制御部103からの操作量とが加算された操作量Fscomに基づいて、制御対象301(ウエハステージWST)の駆動制御、すなわち、平面モータ51Aを介したウエハステージWSTの駆動が行われる。
なお、X軸方向に関しては、上述したY軸方向に関する制御と同様の、ウエハステージWSTの駆動制御及び第2ステージ部材42の駆動制御が行われる。ただし、ボイスコイルモータMbによる第2ステージ部材42のX軸方向に関する駆動中心は、ウエハステージWSTの重心と一致している場合には、力Fcsの反力が、ウエハステージWSTの重心にそのまま作用する。このため、第2の平面モータFF制御部500を設けることなく、加算器205の出力である駆動信号Fcscomを、そのまま加算器108に入力させれば良い。一方、ボイスコイルモータMbによる第2ステージ部材42のX軸方向に関する駆動中心が、ウエハステージWSTの重心と一致していない場合には、前述と同様の第2の平面モータFF制御部500を設けると良い。
また、残りのθz方向に関しては、軌道生成部101からは常時0が出力される点を除き、上述したY軸方向に関する制御と同様の、ウエハステージWSTの駆動制御及び第2ステージ部材42の駆動制御が行われる。
図7には、露光装置10の制御系を中心的に構成し、構成各部を統括制御する主制御装置20の入出力関係を示すブロック図が示されている。主制御装置20は、ワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等を含み、露光装置10の構成各部を統括制御する。
本実施形態では、ウエハステージWST、第2ステージ装置60(第2ステージ位置計測系19を含む)、平面モータ51A、ボイスコイルモータMb、干渉計システム78、センター支持部材(不図示)及び駆動装置142を含んで、ステージ装置85(図1参照)が構成されている。また、ウエハステージWSTの位置情報を計測する干渉計システム78と、ウエハステージWSTに対する第2ステージ部材42の位置情報(すなわち相対位置情報)を計測する第2ステージ位置計測系19とによって、計測系80(図7参照)が構成されている。
上述のようにして構成された本実施形態に係る露光装置10では、主制御装置20により、以下のような一連の処理が行われる。
すなわち、主制御装置20は、まず、レチクル搬送系(不図示)を用いてレチクルRをレチクルステージRST上にロードする。また、主制御装置20は、ウエハ搬送系(不図示)を用いてウエハWをウエハステージWST(ウエハホルダWH)上にロードする。このウエハのロードは、以下の手順で行われる。
ウエハステージWSTがローディングポジションまで駆動される。そのウエハステージWSTの上方に、搬送アームによりウエハWが搬送される。駆動装置142によりセンター支持部材(3本の上下動ピン)が上方に駆動され、ウエハWが搬送アームから3本の上下動ピン140に渡された後、搬送アームが退避される。そして、駆動装置142によりセンター支持部材(3本の上下動ピン)が下方に駆動され、ウエハWがウエハホルダWH上に搭載される。そして、ウエハWは、ウエハホルダWHにより吸着される。
ウエハWのロード後、主制御装置20は、一対のレチクルアライメント検出系14及び計測プレート30、並びにアライメント検出系ALGを用いて、レチクルアライメント、アライメント検出系ALGのベースライン計測、及びウエハアライメント(例えばEGA)等の準備作業を行う。なお、レチクルアライメント、ベースライン計測等については、米国特許第5,646,413号明細書などに詳細に開示されている。また、EGAについては、米国特許第4,780,617号明細書などに詳細に開示されている。ここで、EGAとは、ウエハ上の複数のショット領域のうちの選択された複数のショット領域に設けられたウエハアライメントマークの位置検出データを用いて例えば上記米国特許明細書に開示される最小2乗法を利用した統計演算によりウエハW上の全てのショット領域の配列座標を求めるアライメント手法を意味する。
そして、主制御装置20は、レチクルアライメント、ベースライン計測、及びウエハアライメントの結果に基づいて、ウエハW上の各ショット領域の露光のための走査開始位置(加速開始位置)へウエハステージWSTを移動させるショット間移動動作と、各ショット領域に対しレチクルRのパターンを走査露光方式で転写する走査露光動作とを繰り返すことで、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハW上の複数のショット領域に対する露光を行う。露光中のウエハWのフォーカス・レベリング制御は、前述の多点AF系54を用いてリアルタイムで行われる。
上述した一連の処理中に、主制御装置20により、ウエハステージ駆動系(平面モータ)51Aを介してウエハステージWSTが駆動される。このウエハステージWSTの駆動時に、ウエハステージWSTに加わるチューブ31からの外力によって、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)の位置決め精度が悪化しないよう、主制御装置20(第1制御系59)により、前述のようにして、第2ステージ部材42(ボイスコイルモータMb)及びステージ駆動系(平面モータ)51Aが制御される。ここで、ウエハステージWSTに加わるチューブ31からの外力が、ウエハステージWST(ウエハテーブルWTB)の位置決め精度に影響を与えるのは、ウエハステージWSTとチューブキャリアTCとがX軸方向に関して相対的に移動する場合、及びY軸方向移動に際してのチューブキャリアTCのウエハステージWSTに対する追従遅れが生じる場合などが、代表的に考えられる。
以上説明したように、本実施形態に係るステージ装置85は、ウエハWを保持し、6自由度方向に移動可能なウエハステージWST(ステージ本体81)を駆動するウエハステージ駆動系(平面モータ)51Aと、ウエハステージWSTに対する外部からの用力供給用のチューブ31の中間部の一部が接続され、ウエハステージWSTに対してXY平面内3自由度方向(X、Y、θz方向)に相対移動可能な第2ステージ部材42と、ウエハステージWSTと第2ステージ部材42との間に設けられ、第2ステージ部材42をウエハステージWSTに対して相対移動可能に支持するばね部材93と、ばね部材93の弾性力に抗して第2ステージ部材42をウエハステージWSTに対して前記XY平面内3自由度方向(X、Y、θz方向)に駆動するボイスコイルモータMbと、ウエハステージWSTの位置情報、及びウエハステージWSTに対する第2ステージ部材42のXY平面内3自由度方向の位置情報を計測する計測系80(78、19)と、ウエハステージWSTの移動に第2ステージ部材42が追従するように、計測系80による計測情報に基づいてウエハステージ駆動系(平面モータ)51AとボイスコイルモータMbとを制御する主制御装置20(第1制御系59)と、を備えている。このため、ステージ装置85によると、ウエハステージWSTの駆動時にウエハステージWSTに加速度が作用すると、その加速度に応じた力が第2ステージ部材42に作用し、その第2ステージ部材42が移動するとともに、前記力と同じ逆向きの力がばね部材93から第2ステージ部材42に作用する。このため、主制御装置20(第1制御系59)により、ウエハステージWSTの移動に第2ステージ部材42が追従するように、計測系80による計測情報に基づいてウエハステージ駆動系(平面モータ)51AとボイスコイルモータMbとが制御される際に、ばね部材93から第2ステージ部材42に作用する力(ばね部材93の弾性変形に伴う原位置復帰力)の分だけ、ボイスコイルモータMbが発生する力を小さくすることが可能になる。すなわち、ばね部材93の弾性変形に伴う原位置復帰力が、第2ステージ部材42のウエハステージWSTに対する追従駆動のアシスト力となる。これにより、第2ステージ部材42を駆動するボイスコイルモータMbを小型化することができ、該ボイスコイルモータMbが搭載されたウエハステージWSTの軽量化、ひいてはその位置制御性の向上が可能になる。
また、ステージ装置85によると、チューブ31からの外乱が、第2ステージ部材42(チューブ固定部材63)に加わるので、その外乱が直接ウエハステージWSTに作用することがない。
また、本実施形態に係るステージ装置85によると、第2ステージ部材42を駆動するボイスコイルモータMbの駆動力の反力が、ボイスコイルモータMbの固定子部66が設けられたウエハステージWSTに作用するが、主制御装置20(第2の平面モータFF制御部500)が、この反力の影響を相殺するための力を、目標軌道に応じた駆動力とは別に、平面モータ51Aを介して発生させるので、その反力の影響を、ウエハステージWSTが受けることがない。
また、ステージ装置85によると、前述したように、第1の2自由度制御系100と、第2の2自由度制御系200と、第2の平面モータFF制御部500とを備える第1制御系59により、第1の2自由度制御系100の制御対象301、すなわちウエハステージWSTを、チューブ31からの外乱の影響を受けることなく、目標軌道に沿って精度良く駆動することができる。
上述のステージ装置85を備える本実施形態に係る露光装置10によると、上述した種々の効果を奏する結果、ウエハステージWSTの位置決め精度が向上し、高精度なウエハWに対する露光が可能になり、ウエハW上にレチクルRのパターンを精度良く転写することが可能になる。
なお、上記実施形態では、説明の簡略化のため、第1制御系59により、第2ステージ部材42及びウエハステージWSTを、X、Y、θzの3自由度方向に駆動する場合について説明したが、これに限らず、平面モータ51AによりウエハステージWSTを、X、Y、Z、θx、θy、θzの6自由度方向に駆動可能なので、第2ステージ部材42をウエハステージWSTに対して6自由度方向に駆動可能な第2駆動装置を採用し、併せて、第2ステージ部材42をウエハステージWSTに対して6自由度方向に移動可能に支持する支持構造を採用しても良い。この場合の支持構造としては、例えば図9に模式的に示される、第2ステージ部材42のスライダ部材62を、ウエハステージWSTの一部に対して、X軸方向に移動可能に支持する2つのXコイルばね93xと、Y軸方向に移動可能に支持する1つのYコイルばね93yと、Z軸方向に移動可能に支持する3つのZコイルばね93zとを有する構成が考えられる。勿論、Yコイルばね93yを2つ、Xコイルばね93xを1つ設けても良い。この他、前述のばね部材93に代えて、6軸方向全てに変位が可能な(所定量撓むことができる)ばね部材を採用することも考えられる。
また、上記実施形態と同様に第2ステージ部材42をウエハステージWSTに対して3自由度方向に移動可能に支持する場合であっても、スライダ部材62と第2ベース61との間に棒状のばね部材を2つ設けても良い。例えばばね部材をY軸方向に離間して2つ設けても良い。この場合のばね部材は、断面形状は、円形に限らず、矩形その他形状であっても良い。ただし、特にθz方向の力、すなわちねじり力を単一のばね部材で受ける場合には、応力集中の問題を考えれば、そのばね部材の断面形状は円形であることが望ましい。
また、ウエハステージWSTと第2ステージ部材42とが共に6自由度方向に移動可能な構成を採用する場合、ウエハステージWST及び第2ステージ部材42を、6自由度方向に駆動制御する、第1制御系59と同様の構成の制御系を採用しても良いことは勿論である。この制御系では、軌道生成部101がZ軸方向の目標軌道として常に一定値を生成し、θx、θy方向の目標軌道として常に0を生成し、目標値出力部が6自由度方向全ての目標値として0を出力することとすることができる。
なお、これまでは第2ステージ部材42の移動方向が、XY平面内の3自由度方向(X、Y、θz)、又は6自由度方向である場合について説明したが、これに限らず、第2ステージ部材42の移動方向は、4自由度方向(例えば、X、Y、θz、Z)、あるいは5自由度方向(例えば、X、Y、θz、θx、θy)であっても良い。
また、移動体(ウエハステージWST)の位置情報と、移動体に対する移動部材(第2ステージ部材42)の移動方向の位置情報とを計測する計測系は、上記実施形態の計測系80の構成に限らず、所定の座標系上におけるウエハステージWSTの位置情報を計測する第1位置計測系と、同じ座標系上における第2ステージ部材42の位置情報を計測する第2位置計測系とを含む構成であっても良い。
なお、上記実施形態では、制御系として、前述の第1制御系59を採用し、該第1制御系59によって、チューブ31からの外乱力Fcを、ボイスコイルモータMb及び平面モータ51Aを介して、全て相殺する場合について説明した。しかしながら、制御系の構成は、前述の第1制御系59と同様の構成に限られるものではない。また、例えば外乱力の一部をキャンセルすることとしても良い。
なお、上記実施形態では、第1の平面モータFF制御部102及びVCMFF制御部202が、ともに、フィードフォワード制御として完全追従制御を行う場合について例示した。しかし、これに限らず、第1の平面モータFF制御部102は、ウエハステージWSTの目標軌道に基づいてウエハステージWSTの位置をフィードフォワード制御すれば良く、必ずしも完全追従制御を行う必要はない。同様に、VCMFF制御部202は、前記目標軌道に基づいて、チューブ31からの外乱が作用する第2ステージ部材42のウエハステージWSTに対する位置をフィードフォワード制御すれば良く、必ずしも完全追従制御を行う必要はない。
また、上記実施形態では、第2ステージ部材42をウエハステージWSTの+X側面に設けることとしたが、これに限らず、ウエハステージWSTのどの側面に設けても良いし、例えばウエハステージWSTの中央部に空間を形成し、その空間内に設けても良い。また、第2ステージ部材42は、1つである必要はなく、複数(例えば2個)設けても良い。
また、上記実施形態では、露光装置が、液体(水)を介さずにウエハWの露光を行うドライタイプの露光装置である場合について説明したが、これに限らず、光学系と液体とを介してウエハの露光を行う液浸型の露光装置に上記実施形態を適用しても勿論良い。
なお、上記実施形態では、露光装置が、スキャニング・ステッパである場合について説明したが、これに限らず、ステッパなどの静止型露光装置に上記実施形態を適用しても良い。また、ショット領域とショット領域とを合成するステップ・アンド・スティッチ方式の縮小投影露光装置にも上記実施形態は適用することができる。
また、上記実施形態の投影露光装置の投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系は屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
また、照明光ILは、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)に限らず、KrFエキシマレーザ光(波長248nm)などの紫外光や、F2レーザ光(波長157nm)などの真空紫外光であっても良い。例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
また、上記実施形態では、露光装置の照明光ILとしては波長100nm以上の光に限らず、波長100nm未満の光を用いても良いことはいうまでもない。例えば、軟X線領域(例えば5〜15nmの波長域)のEUV(Extreme Ultraviolet)光を用いるEUV露光装置にも上記実施形態を適用することができる。その他、電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置にも、上記実施形態は適用できる。
また、上記実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(可変成形マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれ、例えば非発光型画像表示素子(空間光変調器)の一種であるDMD(Digital Micro-mirror Device)などを含む)を用いても良い。
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも上記実施形態を適用することができる。
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウエハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウエハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置にも上記実施形態を適用することができる。
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウエハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
露光装置の用途としては半導体製造用の露光装置に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに液晶表示素子パターンを転写する液晶用の露光装置や、有機EL、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD等)、マイクロマシン及びDNAチップなどを製造するための露光装置にも広く適用できる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも上記実施形態を適用できる。
半導体素子などの電子デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態に係る露光装置(パターン形成装置)及びその露光方法によりマスク(レチクル)のパターンをウエハに転写するリソグラフィステップ、露光されたウエハを現像する現像ステップ、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去るエッチングステップ、エッチングが済んで不要となったレジストを取り除くレジスト除去ステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。この場合、リソグラフィステップで、上記実施形態の露光装置を用いて前述の露光方法が実行され、ウエハ上にデバイスパターンが形成されるので、高集積度のデバイスを生産性良く製造することができる。