JP6376407B2 - 電磁パルス照射方法及び電磁パルス照射システム - Google Patents
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Description
本発明は、電磁パルス照射方法及び電磁パルス照射システムに関する。
電子機器は、強力な電磁パルスを受けると、正常に動作せず、場合によっては破壊してしまうことがある。EMP(electromagnetic pulse)兵器は、このような現象を利用するものであり、何らかの方法によって強力な電磁パルスを発生し、目標物に照射することで電子機器の動作を妨害し、又は破壊する。
EMP兵器は、電磁パルスを遠隔から目標物に照射するものと、目標物に接近して目標物の近傍から電磁パルスを目標物に照射するものの2種類に大別される。電磁パルスを遠隔から目標物に照射するEMP兵器は、地上に設置され、又は、車両、艦船等の大型の移動体に搭載されて運用される。一方、目標物の近傍から電磁パルスを目標物に照射するEMP兵器は、航空機等から投下され、又は自力で飛行して目標物に接近する。
しかしながら、発明者の検討によれば、これらのいずれのEMP兵器にも、克服すべき課題がある。電磁パルスを遠隔から目標物に照射するEMP兵器は、大きさや重量の制約を受けにくく、大出力の電磁パルスの発生を実現しやすい。その一方で、このようなEMP兵器は、遠距離に位置する目標物に電磁パルスを照射するため、電磁パルスが伝搬するうちに拡散してしまう。その結果、電磁パルスの強度が低下し、所望の成果が得られないことが生じ得る。また、電磁パルスが拡散すると、目標物の周辺の広い範囲に影響を及ぼすことがあり、これは、好ましくない場合がある。一方、目標物の近傍から電磁パルスを目標物に照射するEMP兵器は、航空機等で携行され、又は自力で飛行する必要があるので、大きさや重量の制約がある。これは、大出力の電磁パルスの発生が困難であることを意味している。
レーザを兵器として利用する研究は米国で実用化段階になったことが報じられており、無人のドローンをレーザ照射による撃墜する動画が公開されている。撃墜対象が有人の航空機の場合には、パイロットの人命を奪うことになるが、防衛上は航空機の電子機器に異常を来たして作戦を継続できない状態にすれば十分であり、撃墜までは要求されない場合もある。このような背景から、電磁パルスの拡散を抑制しながら、大出力の電磁パルスを照射できる電磁パルス照射方法及びシステムの実現が求められている。
なお、本発明に関連し得る技術として、特開第2007−206588号公報は、レーザビームを集光してプラズマを発生させ、そのプラズマから発行する可視光により文字、画像等の可視像を空中に描く空中可視像形成装置を開示している。
したがって、本発明の目的の一つは、電磁パルスの拡散を抑制しながら、大出力の電磁パルスを照射できる電磁パルス照射方法及びシステムを実現することにある。
本発明の他の目的及び新規な特徴は、本明細書及び図面の開示から理解されるであろう。
以下では、[発明を実施するための形態]において使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。
本発明の一の観点では、電磁パルス照射方法が、電子機器を備えた目標物(2)の位置を特定するステップと、目標物(2)の位置に応じて集光点(4)を設定するステップと、集光点(4)にレーザ光(5)を集光して集光点(4)においてプラズマ(6)を発生し、プラズマ(6)から生じた電磁パルスを電子機器に照射するステップとを具備する。
一実施形態では、集光点(4)に、複数のレーザ装置(22)のそれぞれによって発生されたレーザ光(5)のビームが集光される。
一実施形態では、集光点(4)を設定するステップにおいて、ある一時点における目標物(2)の位置に応じて複数の集光点(4)が設定され、複数の集光点(4)のそれぞれにレーザ光(5)が集光されてもよい。
一実施形態では、集光点(4)を設定するステップが、ある一時点における目標物(2)の位置に応じて軌道を設定するステップと、軌道上に複数の集光点(4)を設定するステップとを含み、複数の集光点(4)のそれぞれにレーザ光(5)が逐次に集光されてもよい。
一実施形態では、集光点(4)は、目標物(2)の位置の近傍であって目標物(2)の位置と異なる位置に設定されてもよい。
レーザ光(5)は、パルス発振を行うパルスレーザによって発生されることが好ましい。
本発明の他の観点では、電磁パルス照射システムが、電子機器を備えた目標物(2)の位置を特定する目標物探知装置(10)と、目標物(2)の位置に応じて集光点(4)を設定し、集光点(4)にレーザ光(5)を集光して集光点(4)においてプラズマ(6)を発生し、プラズマ(6)から生じた電磁パルスを電子機器に照射するレーザシステム(20、30)とを具備する。
一実施形態では、レーザシステム(20、30)が、それぞれがレーザ光(5)を生成する複数のレーザ装置(22)を具備し、集光点(4)に複数のレーザ装置(22)のそれぞれによって発生されたレーザ光(5)のビームが集光されてもよい。
一実施形態では、レーザシステム(20、30)は、ある一時点における目標物(2)の位置に応じて複数の集光点(4)を設定し、複数の集光点(4)のそれぞれにレーザ光(5)を集光するように構成されてもよい。
一実施形態では、レーザシステム(20)は、ある一時点における目標物(2)の位置に応じて軌道(8)を設定し、軌道(8)上に複数の集光点(4)を設定し、設定された集光点(4)のそれぞれに逐次にレーザ光(5)を集光するように構成されてもよい。
一実施形態では、レーザシステム(20、30)は、集光点(4)を、目標物(2)の位置の近傍であって目標物(2)の位置と異なる位置に設定してもよい。
レーザシステム(20、30)は、レーザ光(5)をパルス発振を行うパルスレーザによって発生することが好ましい。
本発明によれば、電磁パルスの拡散を抑制しながら、大出力の電磁パルスを照射できる電磁パルス照射方法及びシステムを実現することができる。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の電磁パルス照射システム1の例を示す概念図である。本実施形態の電磁パルス照射システム1は、電子機器を搭載した目標物2が防護対象3に接近し、防護対象3の脅威となると判断される場合に、目標物2に電磁パルスを照射して目標物2を無力化するためのものである。目標物2としては、例えば、航空機やミサイル等の飛翔体が挙げられる。以下で詳細に述べられるように、本実施形態の電磁パルス照射システム1は、目標物2及びその近傍に設定した集光点4にレーザ光5を集光することで集光点4においてプラズマ6を生成し、プラズマ6の生成に伴って発生する電磁パルスを目標物2に照射する構成を採用している。図1において符号7は、目標物2を無力化するために十分な強度の電磁パルスが発生している領域を示している。
図1は、本発明の第1の実施形態の電磁パルス照射システム1の例を示す概念図である。本実施形態の電磁パルス照射システム1は、電子機器を搭載した目標物2が防護対象3に接近し、防護対象3の脅威となると判断される場合に、目標物2に電磁パルスを照射して目標物2を無力化するためのものである。目標物2としては、例えば、航空機やミサイル等の飛翔体が挙げられる。以下で詳細に述べられるように、本実施形態の電磁パルス照射システム1は、目標物2及びその近傍に設定した集光点4にレーザ光5を集光することで集光点4においてプラズマ6を生成し、プラズマ6の生成に伴って発生する電磁パルスを目標物2に照射する構成を採用している。図1において符号7は、目標物2を無力化するために十分な強度の電磁パルスが発生している領域を示している。
図2は、本実施形態における電磁パルス照射システム1の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の電磁パルス照射システム1は、目標物探知装置10と、レーザシステム20とを備えている。目標物探知装置10は、目標物2を捜索し、その位置を特定する装置である。目標物探知装置10は、目標物2を探知した場合、目標物2に関する情報例えば、位置や速度等を示す目標物探知情報をレーザシステム20に送信する。例えば、レーザレーダが目標物探知装置10として用いられ得る。
レーザシステム20は、目標物探知装置10から受け取った目標物探知情報に応答して目標物2又はその近傍に集光点4を設定し、更に、設定した集光点4にレーザ光5を集光するように構成されている。詳細には、レーザシステム20は、インターフェース21、レーザ装置22、駆動機構23と、制御部24とを備えている。
インターフェース21は、目標物探知装置10から目標物探知情報を受けとって制御部24に転送する。
レーザ装置22は、レーザ光5を発生する。本実施形態では、レーザ装置22は、パルス発振を行うパルスレーザとして構成されており、発生されるレーザ光5は、パルスレーザ光である。レーザ装置22としてパルスレーザが用いられるのは、集光点4におけるプラズマの発生、即ち、電磁パルスの発生を容易化するためである。上述のように、本実施形態の電磁パルス照射システム1は、集光点4においてプラズマ6を生成し、プラズマ6の生成に伴って発生する電磁パルスを目標物2に照射する構成を採用している。集光点4においてプラズマ6を生成するためには、集光点4における電界強度を大気の絶縁破壊電界強度よりも増大すればよい。パルスレーザは、レーザ光のピーク出力、即ち、瞬間的な電界強度の増大に適しており、よって、プラズマの発生のためには、レーザ装置22としてパルスレーザを用いることが好ましい。レーザ装置22としては、例えば、レーザ波長が1.06μm、パルス幅が10ns、パルスエネルギーが0.1Jのパルスレーザ光を発生するロッドレーザが用いられ得る。なお、プラズマが発生可能であれば、レーザ装置22として連続波発振を行うレーザを用いてもよい。この場合、連続波レーザ光がレーザ光5として発生される。
駆動機構23は、レーザ装置22を駆動してレーザ装置22の光軸の方向(即ち、レーザ光5が出射される方向)を所望の向きに向けるための機構である。駆動機構23は、レーザ装置22の仰俯角(水平面と光軸の間の角度)及び旋回角(水平面にある所定方向と、光軸の水平面への投影の間の角度)が制御部24から与えられた指令値になるようにレーザ装置22の向きを制御する。
制御部24は、所望の位置の集光点4にレーザ光5が集光されるようにレーザ装置22と駆動機構23とを制御する。詳細には、制御部24は、目標物探知装置10から受け取った目標物探知情報に応じて集光点4の位置を設定する。制御部24は、更に、レーザ光5が集光点4に向けて出射されるように(即ち、レーザ装置22の光軸が集光点4を通過するように)駆動機構23を制御すると共に、レーザ光5が集光点4において集光されるようにレーザ装置22の焦点距離(レーザ装置22の光学系の焦点距離)を調節する。
図3は、本実施形態の電磁パルス照射システム1の動作の一例を示すフローチャートである。目標物探知装置10により、所定の警戒領域(例えば、防護対象3を含む領域)における目標物2の捜索が行われる。(ステップS01)。目標物探知装置10は、捜索により目標物2を探知すると、目標物2に関する情報、例えば、位置や速度等を示す目標物探知情報をレーザシステム20に送信する。
更に、レーザシステム20の制御部24により、集光点4の位置が設定される。(ステップS02)。集光点4の位置の設定は、目標物探知情報に基づいて行われる。本実施形態では、目標物探知情報に記述された目標物2の位置に基づいて集光点4の位置が設定される。一実施形態では、目標物探知情報に記述された目標物2の位置又はその近傍に集光点4の位置が設定されてもよい。他の実施形態では、目標物探知情報に記述された目標物2の位置及び速度に基づいてレーザ光5が出射される時点における目標物2の予測位置が算出され、算出された予測位置又はその近傍に集光点4の位置が設定されてもよい。集光点4の位置の設定の様々な実施形態については、後に詳細に説明する。
更に、レーザ光5が集光点4で集光されるように出射される(ステップS03)。詳細には、駆動機構23により、レーザ光5が集光点4を通過するようにレーザ装置22の光軸の向きが調節され、更に、レーザ装置22の焦点距離が調節される。レーザ装置22の光軸の向きと焦点距離の調節が完了すると、レーザ装置22は、制御部24による制御の下、レーザ光5を出射する。
図4は、レーザ光5を用いた電磁パルスの発生を概念的に示す図である。図4に図示されているように、レーザ光5が集光点4に集光され(図4(1))、集光点4において電界強度が大気の絶縁破壊電界強度を超えると、集光点4においてプラズマ6が生成される(図4(2))。上述のように、レーザ光5としてパルス発振によって発生されたパルスレーザ光を用いることで、プラズマ6の発生が容易化されることに留意されたい。プラズマ6が生成されると、プラズマ6における荷電粒子の振動により電磁パルス(EMP)が発生する(図4(3))。十分な強度の電磁パルスが目標物2に搭載されている電子機器に照射されると、当該電子機器を誤動作させ、又は、ダメージを与えることができる(4)。図4において、符号7は、有効な強度の電磁パルスが発生している領域を示している。
目標物2の捜索は、電磁パルス照射システム1が動作している限り継続して行われ、目標物2が探知される毎に、集光点4の位置の設定とレーザ光5の出射が行われる。
本実施形態の電磁パルス照射システム1の利点の一つは、電磁パルスの拡散を抑制できる点である。レーザ光5は直進性が高いので、レーザ光5には拡散の問題は起こらない。このような性質のレーザ光5により目標物2の近傍で電磁パルスを発生するので、本実施形態の電磁パルス照射システム1は、電磁パルスの拡散を抑制できる。
その一方で、本実施形態の電磁パルス照射システム1は、大出力の電磁パルスの発生に適している。電磁パルス照射システム1では、レーザ光5を生成するレーザ装置22は目標物2から離れていてもよいので、大出力のレーザ装置22が使用できる。大出力のレーザ装置22を使用することで、本実施形態の電磁パルス照射システム1は、大出力の電磁パルスを発生することができる。
(第2の実施形態)
図5は、本発明の第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aの例を示す概念図である。第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aは、複数のレーザ装置のそれぞれによって発生したレーザ光5を集光点4に集光するように構成されている。
図5は、本発明の第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aの例を示す概念図である。第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aは、複数のレーザ装置のそれぞれによって発生したレーザ光5を集光点4に集光するように構成されている。
図6は、第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aの構成の例を示すブロック図である。本実施形態の電磁パルス照射システム1Aは、目標物探知装置10と、レーザシステム30とを備えている。目標物探知装置10は、目標物2を捜索し、捜索によって目標物2を探知した場合、目標物2に関する情報、例えば、位置や速度等を示す目標物探知情報をレーザシステム20に送信する。例えば、レーザレーダが目標物探知装置10として用いられ得る。
レーザシステム30は、目標物探知装置10から受け取った目標物探知情報に応じて集光点4を設定し、更に、設定した集光点4にレーザ光5を集光するように構成されている。詳細には、レーザシステム30は、レーザ照射管制装置31と、サブシステム20A〜20Cを備えている。
レーザ照射管制装置31は、目標物探知装置10から受け取った目標物探知情報に応じて集光点4の位置を設定し、更に、サブシステム20A〜20Cのそれぞれに、設定した集光点4の位置でレーザ光5が集光されるようにレーザ光5を出射するように指示するレーザ照射指令を送信する。
サブシステム20A〜20Cのそれぞれは、第1の実施形態のレーザシステム20と同様の構成を有している。より具体的には、サブシステム20A〜20Cは、それぞれ、インターフェース21、レーザ装置22、駆動機構23と、制御部24とを備えている。
インターフェース21は、レーザ照射管制装置31からレーザ照射指令を受けとって制御部24に転送する。レーザ装置22は、集光点4に集光するレーザ光5を発生する。第1の実施形態と同様に、レーザ装置22は、パルス発振を行うパルスレーザとして構成されている。駆動機構23は、レーザ装置22を駆動してレーザ装置22の光軸の方向(即ち、レーザ光5が出射される方向)を所望の向きに向ける。制御部24は、レーザ照射指令に指示された位置の集光点4にレーザ光5が集光されるようにレーザ装置22と駆動機構23とを制御する。制御部24は、レーザ装置22の光軸をレーザ光5が集光点4を通過する方向に向けるように駆動機構23を制御し、更に、レーザ装置22の焦点距離を調節する。
第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aの動作は、複数のレーザ装置22からそれぞれに出射されたレーザ光5が集光点4に集光される点を除けば、第1の実施形態の電磁パルス照射システム1の動作と同様である。
より具体的には、目標物探知装置10により、所定の警戒領域(例えば、防護対象3を含む領域)における目標物2の捜索が行われ、捜索により目標物2が探知されると、目標物探知情報が目標物探知装置10からレーザシステム30に送信される。
更に、レーザ照射管制装置31により、集光点4の位置が設定される。集光点4の位置の設定は、目標物探知情報に基づいて行われる。一実施形態では、目標物探知情報に記述された目標物2の位置又はその近傍に集光点4の位置が設定されてもよく、他の実施形態では、目標物探知情報に記述された目標物2の位置及び速度に基づいてレーザ光5が出射される時点における目標物2の予測位置が算出され、算出された予測位置又はその近傍に集光点4の位置が設定されてもよい。レーザ照射管制装置31は、各サブシステム20A〜20Cに、設定した集光点4の位置でレーザ光5が集光されるようにレーザ光5を出射するように指示するレーザ照射指令を送信する。
更に、サブシステム20A〜20Cのそれぞれにより、レーザ光5が集光点4で集光されるように出射される。サブシステム20A〜20Cのそれぞれは、レーザ照射指令に指定された集光点4の位置でレーザ光5が集光されるようにレーザ光5を出射する。サブシステム20A〜20Cのそれぞれでは、駆動機構23により、レーザ光5が集光点4を通過するようにレーザ装置22の光軸の向きが調節され、更に、レーザ装置22の焦点距離が調節される。レーザ装置22の光軸の向きと焦点距離の調節が完了すると、レーザ装置22は、レーザ光5を出射する。
図7に図示されているように、レーザ光5が集光点4に集光され(図7(1))、集光点4において電界強度が大気の絶縁破壊電界強度を超えると、集光点4においてプラズマ6が生成される(図7(2))。プラズマ6が生成されると、プラズマ6における荷電粒子の振動により電磁パルス(EMP)が発生する(図7(3))。十分な強度の電磁パルスが目標物2に搭載されている電子機器に照射されると、当該電子機器を誤動作させ、又は、ダメージを与えることができる(図7(4))。
第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aも、第1の実施形態の電磁パルス照射システムと同様に、電磁パルスの拡散を抑制しながら大出力の電磁パルスを目標物2に照射することができる。
加えて、複数のレーザ装置22で生成されたレーザ光5を集光点4で集光させる第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aは、個々のレーザ装置22の小型化に適している。本実施形態の電磁パルス照射システム1Aは、複数のレーザ装置22を使用するため、個々のレーザ光5の出力を小さくできる。これは、個々のレーザ装置22の小型化が可能であることを意味している。個々のレーザ装置22を小型化することにより、サブシステム20A〜20Cのそれぞれを移動体(例えば、車両や艦船)に搭載することができ、これは、運用性の向上に寄与する。
異なる観点で見れば、第2の実施形態の電磁パルス照射システム1Aは、電磁パルスの大出力化に適しているということもできる。複数のレーザ装置22を使用する本実施形態の電磁パルス照射システム1Aは、レーザ装置22の数を増大させ、又は、個々のレーザ装置22の出力を増大させることで、電磁パルスを容易に大出力化することができる。
続いて、上述の実施形態における集光点4の設定について説明する。集光点4は、目標物探知装置10によって生成された目標物探知情報に応じて設定される。上述のように、目標物探知情報は、捜索によって探知された目標物2に関する情報、例えば、目標物2の位置や速度等を示す情報を含んでいる。一実施形態では、目標物探知情報に記述された目標物2の位置又はその近傍に集光点4の位置が設定されてもよく、他の実施形態では、目標物探知情報に記述された目標物2の位置及び速度に基づいてレーザ光5が出射される時点における目標物2の予測位置が算出され、算出された予測位置又はその近傍に集光点4の位置が設定されてもよい。
ここで、設定される集光点4の位置は、目標物2の位置(又はレーザ光5が出射される時刻における予測位置)に一致している必要は無いことに留意されたい。本実施形態の電磁パルス照射システム(1、1A)は、レーザ光5を用いてプラズマを生成し、プラズマの生成に伴って発生する電磁パルスを目標物2の電子機器に照射するので、レーザ光5は目標物2に直撃する必要は無い。むしろ、大気の絶縁破壊によりプラズマを発生するためには、集光点4を目標物2の位置(又は予測位置)の近傍であって前記目標物の位置(又は予測位置)と異なる位置に設定してもよい。その一方で、レーザ光5が目標物2に直撃しても、プラズマの発生は期待できるので、集光点4を目標物2の位置(又は予測位置)と同一の位置に設定してもよい。
また、上記の実施形態において、複数の集光点4が目標物2の位置に応じて設定されてもよい。多くの場合、目標物2の電磁パルスへの耐性は、電磁パルスが入射される方向によって異なっている。例えば、ある種の目標物2は、前方にレーダを有しているために前方からの電磁パルスの入射に対して脆弱であり、他の種の目標物2は、後方にノズルを有しているために後方からの電磁パルスの入射に対して脆弱である場合がある。その一方で、通常は、目標物2がどの方向の電磁パルスに対して脆弱かを事前に知ることはできない。
このような状況に対応するためには、図8に図示されているように、ある位置(又は予測位置)の目標物2に対して複数の集光点4を異なる位置に設定し、集光点4のそれぞれにレーザ光5を集光してプラズマを発生する(即ち、電磁パルスを発生する)ことが好ましい。より厳密には、ある一時点における目標物2の位置(又は予測位置)が特定されたときに、該目標物2の位置(又は予測位置)に対して複数の集光点4を異なる位置に設定することが好ましい。
第2の実施形態のように、電磁パルス照射システムが複数のレーザ装置22を有している(即ち、複数のサブシステムを有している)構成は、複数の集光点4に同時にレーザ光5を集光してプラズマを発生するために好適である。レーザ装置22の数が、設定される集光点4の数と同数である場合には、複数のレーザ装置22が、対応する集光点4にそれぞれにレーザ光5を集光してもよい。また、レーザ装置22の数が、設定される集光点4の数よりも多い場合には、該複数の集光点4のうちの少なくとも一の集光点4に(最も好適には、該複数の集光点4のそれぞれに)複数のレーザ装置22のそれぞれにより発生されたレーザ光5が集光されてもよい。
第1の実施形態のようにレーザ装置22の数が単一である場合、又は、レーザ装置22の数が集光点4の数よりも少ない場合には、設定された複数の集光点4に逐次にレーザ光5が集光され、逐次にプラズマが生成(即ち、電磁パルスが生成)されてもよい。この場合、図9に図示されているように、ある一時点における目標物2の位置が特定されたときに、該目標物2の位置に応じて軌道8を設定し、該軌道上に複数の集光点4を逐次に設定し、逐次に設定された集光点4のそれぞれにレーザ光5を集光してもよい。
以上には、本発明の実施形態が様々に記載されているが、本発明は、上記の実施形態に限定されると解釈してはならない。本発明が、様々な変更と共に実施され得ることは、当業者には自明的であろう。
1、1A:電磁パルス照射システム
2 :目標物
3 :防護対象
4 :集光点
5 :レーザ光
6 :プラズマ
7 :領域
8 :軌道
10 :目標物探知装置
20 :レーザシステム
20A :サブシステム
20B :サブシステム
20C :サブシステム
21 :インターフェース
22 :レーザ装置
23 :駆動機構
24 :制御部
30 :レーザシステム
31 :レーザ照射管制装置
2 :目標物
3 :防護対象
4 :集光点
5 :レーザ光
6 :プラズマ
7 :領域
8 :軌道
10 :目標物探知装置
20 :レーザシステム
20A :サブシステム
20B :サブシステム
20C :サブシステム
21 :インターフェース
22 :レーザ装置
23 :駆動機構
24 :制御部
30 :レーザシステム
31 :レーザ照射管制装置
Claims (12)
- 電子機器を備えた目標物の位置を特定するステップと、
前記目標物の位置に応じて集光点を設定するステップと、
前記集光点にレーザ光を集光して前記集光点においてプラズマを発生し、プラズマから生じた電磁パルスを前記電子機器に照射するステップ
とを具備する
電磁パルス照射方法。 - 請求項1に記載の電磁パルス照射方法であって、
前記集光点に、複数のレーザ装置のそれぞれによって発生されたレーザ光のビームが集光される
電磁パルス照射方法。 - 請求項1又は2に記載の電磁パルス照射方法であって、
前記集光点を設定するステップでは、ある一時点における前記目標物の前記位置に応じて複数の前記集光点が設定され、
複数の前記集光点のそれぞれにレーザ光が集光される
電磁パルス照射方法。 - 請求項1又は2に記載の電磁パルス照射方法であって、
前記集光点を設定するステップは、
ある一時点における前記目標物の位置に応じて軌道を設定するステップと、
前記軌道上に複数の前記集光点を設定するステップ
とを含み、
複数の前記集光点のそれぞれにレーザ光が逐次に集光される
電磁パルス照射方法。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載の電磁パルス照射方法であって、
前記レーザ光が、パルス発振を行うパルスレーザによって発生される
電磁パルス照射方法。 - 請求項1乃至5のいずれかに記載の電磁パルス照射方法であって、
前記集光点が、前記目標物の位置の近傍であって前記目標物の位置と異なる位置に設定される
電磁パルス照射方法。 - 電子機器を備えた目標物の位置を特定する目標物探知装置と、
前記目標物の位置に応じて集光点を設定し、前記集光点にレーザ光を集光して前記集光点においてプラズマを発生し、プラズマから生じた電磁パルスを前記電子機器に照射するレーザシステム
とを具備する
電磁パルス照射システム。 - 請求項7に記載の電磁パルス照射システムであって、
前記レーザシステムは、それぞれがレーザ光を生成する複数のレーザ装置を具備し、
前記集光点に複数のレーザ装置のそれぞれによって発生されたレーザ光のビームが集光される
電磁パルス照射システム。 - 請求項7又は8に記載の電磁パルス照射システムであって、
前記レーザシステムは、ある一時点における前記目標物の前記位置に応じて複数の前記集光点を設定し、複数の前記集光点のそれぞれにレーザ光を集光する
電磁パルス照射システム。 - 請求項7又は8に記載の電磁パルス照射システムであって、
前記レーザシステムは、ある一時点における前記目標物の位置に応じて軌道を設定し、前記軌道上に複数の前記集光点を設定し、設定された前記集光点のそれぞれに逐次に前記レーザ光を集光する
電磁パルス照射システム。 - 請求項7乃至10のいずれかに記載の電磁パルス照射システムであって、
前記レーザシステムは、前記レーザ光をパルス発振を行うパルスレーザによって発生する
電磁パルス照射システム。 - 請求項7乃至11のいずれかに記載の電磁パルス照射システムであって、
前記レーザシステムは、前記集光点を、前記目標物の位置の近傍であって前記目標物の位置と異なる位置に設定する
電磁パルス照射システム。
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