図1は、本発明の第1実施形態の潤滑剤定量吐出装置1の全体構成図である。図2は、潤滑剤定量吐出装置1の正面図、図3は、潤滑剤定量吐出装置1を左斜め後から見た斜視図、図4は、潤滑剤定量吐出装置1を斜め下から見た斜視図、図5は、潤滑剤定量吐出装置1の吐出口廻りの構成を説明するための図、図6は、潤滑剤定量吐出装置1のアダプター31の構成を説明するための図、図7は、潤滑剤定量吐出装置1の制御装置51の構成を示すブロック図、図8は、潤滑剤定量吐出装置1の使用状態を示す斜視図である。なお図4では、チューブポンプ11のポンプヘッド15の前面のカバーが省略されている。
本発明の第1実施形態の潤滑剤定量吐出装置1は、容器に充填された潤滑剤を、定量吐出させる装置である。以下、潤滑剤が内視鏡検査用の潤滑剤であり、潤滑剤定量吐出装置1を用いて潤滑剤Jを手201に吐出させる場合を例として、潤滑剤定量吐出装置1の構成及び使用方法を説明するが、本発明に係る潤滑剤定量吐出装置1で使用可能な潤滑剤Jは、内視鏡検査用の潤滑剤Jに限定されるものではなく、また、特に断りがない限り、以下の説明で使用される数値に限定されるものではない。
潤滑剤定量吐出装置1は、潤滑剤Jを吐出させるチューブポンプ11と、潤滑剤Jの流通路となるチューブポンプ11のポンプチューブ21と、潤滑剤Jが充填された容器101とポンプチューブ21とを結ぶアダプター31と、手の有無を検知するセンサー41と、チューブポンプ11の動作を制御する制御装置51と、チューブポンプ11及び制御装置51を収納する筐体61と、筐体61を固定するスタンド75とを備える。
チューブポンプ11は、容器101に充填された潤滑剤Jを一定量吐出させるポンプであり、弾力性を有するポンプチューブ21をローラー、タイヤ、リング等のローターにより送液方向に順次押圧することで送液する公知のポンプである。本実施形態では、チューブポンプ11として、ローラー13を介してポンプチューブ21を押圧するチューブポンプ(いわゆるローラーポンプ)11を示すが、他のチューブポンプであってもよい。またローラー13の個数も特に限定されるものではなく、また特定のメーカーの製品に限定されるものでもない。
チューブポンプ11の吐出性能等、ポンプの仕様は、潤滑剤Jの吐出流量、使用する潤滑剤Jの粘度等に適したものを選択すればよい。内視鏡検査用の潤滑剤Jは、特定のメーカーの特定の製品に限定されるものではないが、内視鏡検査用の潤滑剤Jとしては、例えばスループロゼリー(カイゲンファーマ株式会社)、エンドルブリH(登録商標)及びエンドルブリL(登録商標;オリンパスメディカルシステムズ株式会社)、ヌルゼリー(登録商標;日医工株式会社)、K−Yルブリケーティングゼリー(株式会社メディセオ)、カインゼロゼリー(富士フィルムメディカル株式会社)、ツケルゼリー(堀井薬品工業株式会社)がある。市販されている上記内視鏡検査用の潤滑剤Jの粘度は、20〜40Pa・s程度である。
内視鏡検査用の潤滑剤Jの塗布の仕方や供給される量に対する感覚には個人差があり、手201に取出す1回当たりの潤滑剤Jの量も特定の量に限定されるものではない。但し、手201に取出す1回当たりの潤滑剤Jの量が多過ぎると内視鏡に塗布する際に手201からこぼれる(垂れ落ちる)可能性があり、医師の内視鏡の操作性が低下したり、介助者が塗布する際にもストレスとなるため、吐出量は多過ぎず、また少な過ぎないことが大切である。内視鏡に従事する複数の医療関係者に意見を求めたところ、手201に取出す1回当たりの潤滑剤Jが2〜3ccでは多く、1〜1.5cc程度が好ましいとの意見が多かった。
潤滑剤Jの吐出流量(速度)に関しては、遅いと検査の妨げになるので早いほうが良いが、極端に吐出速度を速めると潤滑剤Jが飛び散る恐れがある。以上のことから手201に取出す1回当たりの潤滑剤Jの量を1〜1.5ccとし、これを0.5〜1秒程度で吐出させることが好ましい。よって、60〜180cc/min程度の吐出流量を備えるチューブポンプ11であればよい。但し、潤滑剤Jの塗布の仕方や供給される量に対する感覚には個人差があるので、吐出量(吐出流量)を調整可能なチューブポンプ11が好ましい。
チューブポンプ11には、ローラー13等の回転数を可変させ、吐出流量を調節可能なタイプのものもあるが、チューブポンプ11の稼働時間(運転時間)を制御することで吐出流量を制御することもできる。このためチューブポンプ11は、ローラー13等の回転数を可変させ吐出流量を調節可能なタイプのものでなくてもよい。本実施形態では、回転数が一定のローラーポンプ11を使用し、稼働時間を制御することで吐出流量を制御している。
チューブポンプ11は、ポンプ本体が筐体61内に収納され、ポンプヘッド15のみが筐体61の外に位置するように筐体61に固定されている。このように配置することでチューブポンプ11のポンプチューブ21の交換等が容易になる。さらにポンプチューブ21、潤滑剤Jを視認可能とすることで、安心して使用することができる。
ポンプチューブ21は、潤滑剤Jの流通路となる部材であり、チューブポンプ11に取付け使用される。ポンプチューブ21は、基端部22がアダプター31に取付けられ、アダプター31を介して潤滑剤Jが充填された容器101と接続する。ポンプチューブ21の先端部23には小径のノズル81が取付けられ、ノズル81の先端部83が潤滑剤Jの吐出口Eとなっている。ノズル81を取付けることなくポンプチューブ21の先端部23を潤滑剤Jの吐出口としてもよい。ノズル81の効果等については、後述する。
ポンプチューブ21の材質は、チューブポンプ11の使用に適した柔軟性、弾力性を備えることの他、潤滑剤Jに接し変質しないこと、さらには潤滑剤Jに悪影響を与えないこと、が必要なことは言うまでもなく、使用する潤滑剤Jに適した材質のポンプチューブ21を使用すればよい。潤滑剤Jが内視鏡検査用の潤滑剤など医療用の潤滑剤であれば、例えば、医療用の透明軟質塩化ビニルチューブ、シリコンチューブ等を使用することができる。なお、ポンプチューブ21は、透明なものが好ましい。
ポンプチューブ21の径は、使用するチューブポンプ11の仕様、吐出流量に応じて適宜選択すればよい。ポンプチューブ21の全長は、特定の長さに限定されるものでないが、必要以上に長くしても不経済であり、さらに長さに比例して圧力損失が上昇するので不必要に長くすべきではない。
ポンプヘッド15と吐出口Eであるノズル81の先端部83との距離は、所定の長さに規定されている。ノズル81を取付けない場合には、ポンプヘッド15とポンプチューブ21の先端部23との距離が、所定の長さに規定される。より具体的には、ポンプヘッド15の中心を通る水平線H1と吐出口Eとの距離L1(図5参照)は、以下の理由により可能な限り短く設定されている。
チューブポンプ11では、ポンプを停止した後もポンプチューブ21の一部は、ローラー13に押圧されたままである。このためチューブポンプ11を停止した後、ローラー13で押圧された箇所よりも上流(反吐出口)側の潤滑剤Jは、吐出口E側へ移動することができない。
一方、最も下流に位置するローラー13に押圧された箇所よりも下流側(吐出口側)に位置するポンプチューブ21内の潤滑剤Jは、移動を阻止するものがないため吐出口Eより垂れ落ちる場合がある。このためポンプヘッド15の中心を通る水平線H1と吐出口Eとの距離L1を可能な限り短くし、万が一、潤滑剤Jが垂れ落ちた場合であっても垂れ落ち量を少なくする。
吐出口Eは、筐体61の底面63よりも高い位置に設定することが好ましい。ポンプチューブ21の先端部23にノズル81を取付けず、ポンプチューブ21の先端部23を吐出口Eとする場合も、ポンプチューブ21の先端部23が、筐体61の底面63より突出しないようにする。吐出口Eが筐体61の底面63よりも突出していると、潤滑剤Jを受けるために手201を差し出したとき、吐出口Eに手201が接触し易い。そこでこれを防止するために吐出口Eは、筐体61の底面63よりも高い位置にする。
吐出口Eは、ポンプチューブ21の先端部23であってもよいが、本実施形態に示すようにポンプチューブ21の先端部23に小径のノズル81を取付け、このノズル81の先端部83を吐出口Eとすることが好ましい。大きさの一例を示せば、内径が約3.18mmのポンプチューブ21に対して、ノズル81の内径は約1.5mmである。ポンプチューブ21の先端部23にノズル81を取付け、吐出口Eを縮径する理由は以下の通りである。
内視鏡検査で使用する医療用の潤滑剤等は、水などの液体に比べて粘度が高いので、潤滑剤Jが吐出後、吐出口Eに潤滑剤Jが垂れ下がる現象が発生する。その垂れを手201で取り去ると、手201が吐出口Eに触れ、交差感染の原因となる。
ノズル81を取付け、吐出口Eの口径を小さくすると、吐出口Eに垂れ下がる潤滑剤Jが小さく目立たない。このため垂れ下がっている潤滑剤Jを手201で取り去ろうとの感覚が生じず、吐出口Eに手201が触れることを防止できる。後述の垂れ下がり防止手段を介して、潤滑剤Jの垂れ下がりを防止する場合であっても、吐出口Eの口径を小さくすると垂れ下がり量が少ないので垂れ下がりを容易に防止することができる。
以上のようにノズル81は、吐出口Eに垂れ下がる潤滑剤Jの量を少なくするものであるから、内径は小さい方が好ましいが、潤滑剤Jが吐出する際の抵抗が大きくなり、チューブポンプ11の吐出圧が上昇する。さらに吐出口Eからの流出速度が上昇するので、ノズル81の内径を不必要に小さくすべきではない。使用する潤滑剤Jの粘度、吐出流量を考慮し、適宜決定すればよい。
アダプター31は、潤滑剤Jが充填された容器101とポンプチューブ21とを連結するための部材であり、図4、図6に示すように容器101に装着されるキャップ32と、キャップ32の中心部に設けられポンプチューブ21が装着されるジョイント37とを有する。なお本実施形態に示す容器101は、チューブ容器である。
キャップ32は、容器101に設けられた口部102の雄ねじ103に螺合する雌ねじ35を有し、容器101に対して着脱自在である。またキャップ32には、容器101の口部102を下向きに使用しても、容器101とキャップ32との連結部から潤滑剤Jが漏洩することを防止するOリング(オーリング)36が設けられている。
ここでは、液密を確保する手段としてOリング36を使用するが、容器101とキャップ32との連結部からの潤滑剤Jの漏洩を防止可能であれば他の手段であってもよい。例えばPETボトル等で採用されている、キャップ32に楔状のリング部を設け、当該リング部を容器101の口部102に密接させる方法であってもよい。
キャップ32の天井面33の中心部には、貫通孔(図示省略)が設けられ、貫通孔の壁面にジョイント37が螺合する雌ねじ部(図示省略)が設けられている。
ジョイント37は、計装用空気の供給等に使用されるチューブ配管の継手等として使用される公知のワンタッチ継手37である。ワンタッチ継手37は、雄ねじ部(図示省略)を有し、雄ねじ部を介してキャップ32の天井面33に取付けられている。ワンタッチ継手37は、公知のようにチューブを差し込むだけで固定され、上部のリリースブッシュ38を押込みながらチューブを引き抜くことで容易に取り外すことができる。
ポンプチューブ21が連結されるジョイント37は、ワンタッチ継手に限定されるものではなく、ポンプチューブ21とキャップ32とを確実に、望ましくは簡単に接続できればよい。例えばホースニップルである竹の子ニップル等を使用することができる。
上記実施形態では、ねじ式キャップの容器101を示したが、容器101は、ねじ式キャップの容器に限定されるものではなく、爪を引掛ける係止タイプの容器であってもよい。この場合にはアダプター31を構成するキャップ32にそれに対応するものを使用すればよい。
ポンプチューブ21の基端部22は、ワンタッチ継手37に差し込まれ連結されている。アダプター31は、容器101の口部102に螺合するキャップ32を有するので、容器101とアダプター31とは簡単に接続可能であり、ポンプチューブ21もアダプター31を介して簡単に容器101と連結させることができる。
容器101は、筐体の側面64に取付けられた容器支持具91に、アダプター31を装着した状態で口部102を下向きとして取付け使用される。
容器支持具91は、キャップ32の外周面34を挟持すると共に、容器101の肩部104が載る一対の支持片92を有する。支持片92は、円弧状に湾曲しており、左右の支持片92が形成する空間の横断面が、キャップ32の外周面34の直径よりも僅かに大きく、かつ肩部104よりも小さくなっている。左右の支持片92は基台部93と一体的に形成され、基台部93が、筐体61に固定されている。
ポンプチューブ21が取付けられたアダプター31を容器101に装着し、アダプター31を下向きに容器支持具91の上方から容器101を容器支持具91に差し込むと、容器101の肩部104が容器支持具91に当接し、支持される。容器101は、容器支持具91に取付けられた状態で転倒することなく安定して保持される。
なお、容器支持具91は、アダプター31が取付けられた容器101を安定して支持できればよく、他の形態、構造であってもよい。容器支持具91は、必ずしも筐体61に取付けられていなくてもよく、筐体61に取付けるスペースがないような場合には、スタンド75に取付けてもよい。
容器101を、口部102を下向きにして装着すると、充填された潤滑剤Jが自然と口部102に流下するので、潤滑剤Jを最後まで使用することができ好ましい。但し、容器101は必ずしも口部102を下向きで使用する必要はなく、口部102を上向きで使用してもよい。
容器101の口部102を上向きで使用するときには、容器101の底部近くまで達するパイプ(チューブ)をアダプター31に取付け、このパイプとポンプチューブ21とを連結させればよい。
筐体61は、直方体形を有し、チューブポンプ11を支持すると共に制御装置51を収容する。筐体61は、前部体66と後部体67とからなり、これらがヒンジ68を介して回動自在に連結されている。筐体61の大きさ、形状は、チューブポンプ本体及び制御装置51を収容可能な大きさ、形状であることは当然として、吐出口Eから吐出される潤滑剤Jを手201に取り易く、このとき手201が、筐体61に接触し難い大きさ及び形状が好ましい。筐体61への手201の接触を抑止することで交差感染のリスクを低減させることができる。
吐出口Eから吐出される潤滑剤Jを手201に取り易く、このとき手201が、筐体61に接触し難い大きさ及び形状とするには、筐体61の奥行方向の長さDを長くすることが好ましい。筐体61の背面65には、後述の受台71が設けられているので、奥行方向の長さDが極端に短いと手201の先が受台71に接触してしまう。また筐体61の幅Wも狭い方が好ましい。筐体61の幅Wを狭くすることで、斜め後ろから吐出口Eに向って手201を差し出すとき、吐出口Eの位置が分かり易くなり、使い勝手が増す。
本実施形態に示す図面は、潤滑剤定量吐出装置の構成、機能を確認すべく製作した試作機をベースとしているため、筐体61の幅Wが比較的広く、かつポンプヘッド15も正面視において筐体15の左右の中心に位置していない。本潤滑剤定量吐出装置1の大きさ及び形状は、本実施形態に示す図面に示す大きさ及び形状に限定されるものではない。
筐体61の下方には、吐出口Eから垂れて落下する潤滑剤Jを受ける受け皿74を置くための受台71が設けられている。受台71は、平板がL字に折り曲げられ載置部72と起立部73とで形成されている。受台71は、載置部72に載置した受け皿74と筐体61の底面63との間の距離が、手201を楽に挿入可能な距離、例えば10cm程度となるように、起立部73が、筐体61の背面65に固定されている。
受け皿74は、落下した潤滑剤Jを容易に布等で拭い去る、あるいは簡単に洗浄できるように平板状である。受け皿74の両サイドには、受台71の載置部72から落下しないように受台71の載置部72に嵌り込む返りが設けられている。但し、受台71及び受け皿74は、他の形態であってもよい。
スタンド75は、筐体61を支持するものであり、ベースとなる脚部76と脚部76に立設された支柱77とを有する。筐体61は、背面65に取付けられた連結具95を介して支柱77に固定されている。支柱77に対する連結具95の固定位置を変更すること、筐体61の高さを可変することができる。
センサー41は、吐出口Eの下に差し出される手201を検知するためのものであって、筐体の底面63であって、正面視において吐出口Eのほぼ真下に取付けられている。センサー41は、センサーの位置から所定の範囲内に入ってきた物体を検知することができる赤外線センサー等、公知のセンサーを使用することができる。
吐出口Eの下に差し出す手201は、吐出口Eから吐出される潤滑剤Jを受け取るために差し出すものであり、通常、吐出口Eから1〜5cm程度離して差し出される。本実施形態では、筐体の底面63の位置と吐出口Eとの位置がほぼ同じ高さであるから、筐体の底面63から大凡10cm以内に入って来た手201を検知できればよい。
制御装置51は、チューブポンプ11の起動、停止のタイミング、稼働(運転)時間、さらには回転方向を制御するための装置であり、チューブポンプ11は、制御装置51の指令に基づき動作する。制御装置51は、チューブポンプ11の動作を制御する動作制御部52、チューブポンプ11の稼働時間を設定する稼働用(正回転用)タイマー53、チューブポンプ11を逆回転させる時間を設定する逆回転用タイマー54を備える。
動作制御部52は、センサー41と接続し、センサー41からの信号を受信すると、チューブポンプ11を起動させる。チューブポンプ11が起動すると同時に、稼働用タイマー53を動作させ、稼働用タイマー53で設定された時間経過後にチューブポンプ11を停止させる。
また動作制御部52は、チューブポンプ11が停止後、直ちにチューブポンプ11を逆回転させ、逆回転用タイマー54で設定された時間経過後にチューブポンプ11を停止させる。なお、稼働用タイマー53、逆回転用タイマー54は、共に任意の時間に設定可能である。
既に記載のように、潤滑剤Jは、水に比較して粘度が高いためチューブポンプ11を停止したとき、潤滑剤Jが液滴状となり吐出口Eに垂れ下がり易い。本実施形態では、この垂れ下がりを防止するためにチューブポンプ11が停止後、直ちにチューブポンプ11を短時間逆回転させる。これにより、吐出口Eでの潤滑剤Jの垂れ下がりを防止することができる。
潤滑剤Jの垂れ下がりを防止するに必要なチューブポンプ11の逆回転時間は、使用する潤滑剤、ポンプチューブ21径等に応じて適宜決定すればよい。一例を示せば、我々の実験によれば、潤滑剤Jに内視鏡用の潤滑剤(カイゲンファーマ株式会社製スループロゼリー、粘度30〜40Pa・s)を使用し、ポンプチューブ21に内径が約3.18mmの軟質塩ビチューブを使用した場合、0.2秒の逆回転で潤滑剤Jの垂れ下がりが防止できた。
潤滑剤Jの垂れ下がりを防止することで、これを取り除こうとする動作が抑制され、結果、交差感染のリスクを低減することができる。潤滑剤Jの垂れ下がりを長く放置しておくと、いずれ落下するため潤滑剤Jが無駄になるが、潤滑剤Jの垂れ下がりを防止することでこのような問題も解決できる。また潤滑剤Jの垂れ下がりを防止すれば、見た目もきれいで好ましい。
潤滑剤Jの垂れ下がりを防止する手段としては、上記のチューブポンプ11の逆回転操作の他、吐出口Eに弁を設ける方法等がある。中でもチューブポンプ11の逆回転操作は、簡単でありながら効果も非常に高く、潤滑剤Jの垂れ下がり防止手段として好ましい手段と言える。
制御装置51は、公知の制御装置を使用すればよく、例えばプログラマブルロジックコントローラーとリレー等を用いて容易に実現することができる。
この他、潤滑剤定量吐出装置1は、チューブポンプ11への供給電源を入り切りするメインスイッチ55及びチューブポンプ11への電源の供給状態を示すランプ56を備える。
以下、内視鏡検査で使用する市販のチューブ容器入り潤滑剤Jを用いて、潤滑剤定量吐出装置1の使用方法を説明する。ここで使用するチューブ容器101は、ねじ式キャップを有する、使い切りのチューブ容器とする。
チューブ容器101のねじ式キャップ(図示省略)を取り去り、代わりにアダプター31を取付ける。このときアダプター31にポンプチューブ21が装着された状態であってもよく、後からアダプター31にポンプチューブ21を装着してもよい。
アダプター31を取付けたチューブ容器101を、口部102を下向きとし、容器支持具91にセットする。このときチューブ容器101に貼付された、あるいは印刷されたラベルが正面を向くようにセットすることが好ましい。これにより医療従事者は、使用する潤滑剤Jの種類等を確認することができ、安心して使用することができる。
メインスイッチ55をオンとした後、吐出口Eの下方に手袋を着用した手201を差し出す。これによりチューブポンプ11が起動し潤滑剤Jが吐出される。チューブポンプ11は、所定時間後に自動停止するので、停止後に、手201を引き抜けばよい。さらに潤滑剤Jを必要とする場合には、再度、吐出口Eの下方に手201を差し出せばよい。
チューブ容器101を交換する場合は、アダプター31を取外し、使用済のチューブ容器101を廃棄し、新たなチューブ容器101を取付け使用する。このときアダプター31にポンプチューブ21が取付いた状態でも交換可能である。
以上のように、本潤滑剤定量吐出装置1は、容器101から直接、潤滑剤Jを吐出させることができるので、本潤滑剤定量吐出装置1を内視鏡検査等に好適に使用することができる。本潤滑剤定量吐出装置1を使用する医療従事者は、センサー41の下方に手201を差し出すだけで潤滑剤Jを取り出すことができる。容器101を含め装置に非接触で潤滑剤Jを取り出すことができるので交差感染を防止することができる。また容器101の口部102が下向きセットされるので、潤滑剤Jを完全に使い切ることができる。
上記実施形態に示すように本発明の潤滑剤定量吐出装置1は、チューブポンプ11を介して容器101に充填された潤滑剤Jを吐出させるので吐出量が安定する。また潤滑剤Jは、補充式ではなく、いわゆる使い切りであるため補充間違い、補充時の潤滑剤の汚染、異物の混入を防止することができる。本装置において、潤滑剤Jが接触する部材は、アダプター31、ポンプチューブ21及びノズル81(ノズル81は、ノズルを装着した場合のみ)のみであり、吐出口Eもポンプチューブ21の先端部23あるいはノズル81の先端部83であるので、仮に吐出口Eが汚染したとしても、ポンプチューブ21又はノズル81を新たなものに交換するのみでよく使い勝手に優れる。
また本発明の潤滑剤定量吐出装置1は、潤滑剤Jの垂れ下がり(液垂れ)防止手段、上記実施形態ではチューブポンプ11を逆回転させる制御手段51を備えるので、吐出口Eの潤滑剤Jの垂れ下がり確実に防止することができる。
本発明に係る潤滑剤定量吐出装置は、上記実施形態に示された潤滑剤定量吐出装置に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更して使用することができる。
上記実施形態では、本発明に係る潤滑剤定量吐出装置を、内視鏡用の潤滑剤Jの吐出装置として使用する例を示したが、超音波用ゼリー等の吐出装置としても好適に使用することができる。超音波用ゼリーも特定のメーカーの特定の製品に限定されるものではない。超音波用ゼリーとしては、ソノゼリー(登録商標,東芝医療用品株式会社)、ウルトラフォニック(キヤノンライフケアソリューションズ株式会社)、エコーゲル(登録商標,日興ファインズ工業株式会社)等がある。
上記実施形態では、ポンプチューブ21の先端部23にノズル81を取付け、吐出口Eの口径を小さくするが、吐出口Eの口径を小さくする手段は、ノズル81でなくてもよい。例えば、ポンプチューブ21の先端部23をテープ、紐等で縛り、口径を狭める方法であってもよい。またノズル81に代え、バルブを取付けてもよい。バルブはノズル81に比較して大きいため場所を取るが、夜間など本潤滑剤定量吐出装置1を使用しないときには、バルブを閉めておくことで、潤滑剤Jの垂れ落ちを確実に防止することができる。
また上記実施形態では、スタンド75を使用しているが、スタンド75に代え、筐体61を支持、固定する台等を用い、卓上で使用してもよい。
図1〜図8に示す第1実施形態の潤滑剤定量吐出装置1を製作し、チューブ容器101に充填された潤滑剤Jの吐出性の確認実験を行った。潤滑剤Jには、スループロゼリー(カイゲンファーマ株式会社)を使用した。スループロゼリーは、ねじ式キャップ付きのチューブ容器101であり、潤滑剤Jの充填量は150gであった。
チューブポンプ11には、株式会社ウエルコ製のチューブポンプWPX1−U3.2M2−Cを使用した。当該チューブポンプの流量は、1.5mL/s(一回転当たり0.6mL/回、24V−150rpm)である。ポンプチューブ21は、ポリ塩化ビニル系で内径3.18mm、外径6.35mm、長さ150mmのものを使用した。ポンプチューブ21の先端部23は、長さ10mm、内径1.5mmのポリプロピレン製のノズル81を取付けた。
筐体61の大きさは、巾W140mm×奥行D135mm×高さH130mm、ポンプヘッド15の大きさは、約50mmである。なお、筐体61の大きさは、制御装置51に基板を使用することで、巾W80mm×奥行D110mm×高さH80mmとすることができる。チューブ容器101の口部102を下向きとし、チューブポンプ11の正方向(正回転)への稼動時間を0.7秒、逆方向(逆回転)の稼動時間を0.2秒とし、センサー41の下方に手201を挿入し、潤滑剤Jを吐出させた。
1回当たりの潤滑剤Jの吐出量は、約0.8gであった。1回当たりに吐出される潤滑剤Jの量は、チューブ容器101内の潤滑剤Jの残量に関わらず安定していた。また、正方向(正回転)への稼動時間を長くすることで吐出量が増加することも確認できた。ノズル81を取外し、ポンプチューブ21の先端部23を吐出口Eとして同様の実験を行ったところ、吐出量に変化はなかった。
潤滑剤Jを吐出させるに伴い、チューブ容器101は凹み、チューブ容器101内の潤滑剤Jは、ほぼ完全に吐出させることができた。また実験の間、チューブ容器101とアダプター31との連結部から潤滑剤Jが漏洩することはなかった。吐出口Eからの潤滑剤Jの垂れ下がり、受け皿68への潤滑剤Jの垂れ落ちは全く見られなかった。