JP6373694B2 - カーボン粒子埋没無機繊維、カーボン粒子埋没無機繊維の製造方法、カーボン粒子埋没無機繊維集合体及び排ガス浄化装置 - Google Patents

カーボン粒子埋没無機繊維、カーボン粒子埋没無機繊維の製造方法、カーボン粒子埋没無機繊維集合体及び排ガス浄化装置 Download PDF

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Description

本発明は、カーボン粒子埋没無機繊維、カーボン粒子埋没無機繊維の製造方法、カーボン粒子埋没無機繊維集合体及び排ガス浄化装置に関する。
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中には、スス等のパティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。また、排ガス中には、COやHC、NOx等の有害なガス成分も含まれていることから、この有害なガス成分が環境や人体に及ぼす影響についても懸念されている。
そこで、排ガス中のPMを捕集したり、有害なガス成分を浄化したりする排ガス浄化装置として、炭化ケイ素やコージェライトなどの多孔質セラミックからなる排ガス処理体と、排ガス処理体を収容するケーシングと、排ガス処理体とケーシングとの間に配設される無機繊維集合体からなる保持シール材とから構成される排ガス浄化装置が種々提案されている。この保持シール材は、自動車の走行等により生じる振動や衝撃により、排ガス処理体がその外周を覆うケーシングと接触して破損するのを防止することや、排ガス処理体とケーシングとの間から排ガスが漏れることを防止すること等を主な目的として配設されている。そのため、保持シール材には、圧縮されることによる反発力で発生する面圧を高め、排ガス処理体を確実に保持する機能が求められている。
ここで、内燃機関については、燃費の向上を目的として理論空燃比に近い条件で運転するため、排ガスの温度が高温化する傾向にある。特に、内燃機関を高回転域で作動させた場合には、内燃機関から排出された直後の排ガスの温度が1000℃程度の高温になることがある。これにより、排ガス浄化装置に高温の排ガスが到達することになり、保持シール材としては、そのような高温条件下であっても溶損等によって破損しないことが求められる。
保持シール材の面圧を向上させる方法としては、無機繊維の飛散を抑制するために無機質ゾルを含浸させる方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
特開2011−208344号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたような保持シール材では、無機繊維の表面に形成された無機質ゾル由来の無機粒子が無機繊維の表面から脱落して環境中に飛散することや、無機粒子の脱落に伴って保持シール材の面圧が低下してしまうことがあった。
また、このような保持シール材を構成する無機繊維は、材料が有する耐熱温度付近から強度が不安定となり、強度が急激に低下してしまうことがあった。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、高温強度(耐熱性)が良好であって、面圧低下の発生しにくい保持シール材を製造するためのカーボン粒子埋没無機繊維を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維は、無機繊維の表面にカーボン粒子が埋没固着しており、上記無機繊維の表面には、上記カーボン粒子による凸部が形成されていることを特徴とする。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維は、無機繊維の表面にカーボン粒子による凸部が形成されている。カーボン粒子が無機繊維の表面から容易に脱落することがないため、無機繊維同士の接触抵抗が大きくなる。そのため、このようなカーボン粒子埋没無機繊維を集合させることで面圧が大きいカーボン粒子埋没無機繊維集合体とすることができる。
また、カーボンは温度上昇に伴って強度が増加するため、温度上昇に伴って無機繊維の強度が低下した場合であっても、これを補うことができるため、耐熱性が向上する。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維において、上記カーボン粒子は、グラファイト、カーボンブラック、ガラス状炭素、グラフェン及びフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
カーボン粒子が、グラファイト、カーボンブラック、ガラス状炭素、グラフェン及びフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種であると、無機繊維の耐熱性をより向上させることができる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維において、上記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
無機繊維が、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択された少なくとも1種から構成されていると、耐熱性、耐風食性等に優れる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維において、上記カーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径は2〜15μmであり、上記カーボン粒子の平均直径は1〜500nmであることが好ましい。
カーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径が2〜15μmであると、無機繊維が曲げられることに対する反発力が有効に発揮され、充分な面圧を発揮することができる。カーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径が2μm未満であると、無機繊維の変形に対する反発力が小さくなり、充分な面圧を発揮できないことがある。また、カーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径が15μmを超えると、無機繊維が変形時にしならずに折れやすくなることがある。
一方、カーボン粒子の平均直径が1nm未満であると、無機繊維に埋没固着させた際に、カーボン粒子により形成される凹部の大きさが小さいため、無機繊維の表面に充分な接触抵抗を付与することができないことがある。そのため、無機繊維を集合させた際に無機繊維同士が滑ってしまい、面圧が充分に発揮されないことがある。カーボン粒子の平均直径が500nmを超えると、無機繊維が変形した際にカーボン粒子の埋没箇所を起点として折れやすくなることがある。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維は、上記カーボン粒子が焼失した場合、上記無機繊維の表面に上記カーボン粒子が埋没固着したことに由来する凹部が形成されることが好ましい。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を排ガス浄化装置に使用する際、排ガスとカーボン粒子埋没無機繊維が接触してカーボン粒子が焼失してしまうことがある。カーボン粒子が焼失した場合に、無機繊維の表面にカーボン粒子が埋没固着したことによる凹部が形成されると、無機繊維の表面に形成された凹部によって無機繊維同士の接触抵抗を維持することができる。そのため、カーボン粒子の焼失後も、面圧の低下を抑制することができる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法は、無機塩法により原料溶液を作製し、これを紡糸して無機繊維前駆体を準備する紡糸工程と、上記無機繊維前駆体にカーボン粒子を埋没させるカーボン粒子埋没工程と、カーボン粒子を埋没させた上記無機繊維前駆体を非酸化性雰囲気で焼成することによって、上記無機繊維前駆体を無機繊維とするとともに、上記カーボン粒子を上記無機繊維の表面に埋没固着させて、上記無機繊維表面に上記カーボン粒子による凸部を形成させる焼成工程とからなることを特徴とする。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法は、無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を埋没させる埋没工程を含む。無機繊維前駆体の表面にカーボン粒子が埋没し、続く焼成工程によって無機繊維前駆体が無機繊維に変化すると同時に、無機繊維の表面にカーボン粒子が埋没固着するため、無機繊維の表面にカーボン粒子による凸部が形成されたカーボン粒子埋没無機繊維を得ることができる。
もし、焼成工程後に埋没工程を行った場合、無機繊維の表面は焼成工程によって硬く変化しているため、カーボン粒子を無機繊維の表面に埋没させることが困難となる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法において、上記カーボン粒子埋没工程では、上記無機繊維前駆体に対して上記カーボン粒子を直接吹き付けることが好ましい。
無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を直接吹き付けることで、無機繊維前駆体の表面にカーボン粒子を埋没させることができるため、耐熱性に優れ、面圧の低下を抑制することのできるカーボン粒子埋没無機繊維となる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法において、上記カーボン粒子埋没工程では、上記無機繊維前駆体に対して、上記カーボン粒子を含む溶液を吹き付けることが好ましい。
焼成される前の無機繊維前駆体は比較的柔らかく、粒子状物質と接触すると、その一部を取り込むことができる。従って、無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を含む溶液を吹き付けることによって、無機繊維前駆体の表面にカーボン粒子を埋没させる密度や埋没深度等を調節することができるため、耐熱性に優れ、面圧の低下を抑制することのできるカーボン粒子埋没無機繊維が得られる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法において、上記カーボン粒子埋没工程では、上記無機繊維前駆体と上記カーボン粒子とを溶媒中で撹拌させることが好ましい。
無機繊維前駆体とカーボン粒子とを溶媒中で撹拌させることによって、無機繊維前駆体の表面にカーボン粒子を埋没させることができるため、耐熱性に優れ、面圧の低下を抑制することのできるカーボン粒子埋没無機繊維となる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維をニードリング法により集合させてなることが好ましい。
カーボン粒子埋没無機繊維をニードリング法により集合させてなることで、ニードルにより交絡した箇所に無機繊維が局在化するため、せん断強度の高いカーボン粒子埋没無機繊維集合体を得ることができる。また、ニードリング法により集合されたカーボン粒子埋没無機繊維集合体は柔軟性が高く、排ガス処理体への巻き付け性が良好となる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を抄造法により集合させてなることが好ましい。
カーボン粒子埋没無機繊維を抄造法により集合させてなることで、カーボン粒子埋没集合体が膨張性を帯び、高い面圧を発揮することのできるカーボン粒子埋没無機繊維集合体を得ることができる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、平均繊維径が4〜10μmであり、繊維径が3μm未満のカーボン粒子埋没無機繊維を含まないことが好ましい。
平均繊維径が4〜10μmであると、無機繊維が柔軟性を維持しながら、強い反発性能を有する。また、繊維径が3μm未満のカーボン粒子埋没無機繊維は大気中に滞留する時間が長いため、環境負荷の観点からこれを含まないことが好ましい。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、有機バインダを含有することが好ましい。
有機バインダによってカーボン粒子埋没無機繊維の表面に有機バインダ皮膜を形成することができる。この有機バインダ皮膜によって、無機繊維が破断した際に、カーボン粒子埋没無機繊維集合体から脱落して飛散することを抑制することができる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、無機バインダを含有することが好ましい。
無機バインダによって無機繊維の表面に、無機バインダに由来する無機粒子を付着させることができる。この無機粒子によって無機繊維同士の接触抵抗が増加し、面圧をさらに増加させることができる。
本発明の排ガス浄化装置は、金属ケーシングと、上記金属ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻きつけられ、上記排ガス処理体及び上記金属ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体であることを特徴とする。
本発明の排ガス浄化装置は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を集合させてなるカーボン粒子埋没無機繊維集合体を備えている。本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は耐熱性に優れ、面圧の低下が起きにくいため、高温時においても排ガス処理体を安定的に保持することができる。
図1(a)は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の一例を模式的に示した斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A線断面図である。 図2(a)は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を酸化性雰囲気下で加熱することによってカーボン粒子を焼失させた無機繊維の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は、図2(a)におけるC−C線断面図である。 図3は、図1(b)をさらに拡大した断面図である。 図4は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体の一例を模式的に示した斜視図である。 図5は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示した線断面図である。 図6は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。 図7は、本発明の排ガス浄化装置を製造する方法の一例を模式的に示した図である。
(発明の詳細な説明)
以下、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
以下、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維について説明する。
図1(a)は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の一例を模式的に示した斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるA−A線断面図である。
図1(a)及び図1(b)に示すように、カーボン粒子埋没無機繊維1は、無機繊維20にカーボン粒子10が埋没固着することによって、無機繊維20の表面に凸部が形成されている。カーボン粒子10は無機繊維20の表面に埋没固着しているため、容易に脱離することがなく、無機繊維20同士の接触抵抗を高めることができる。そのため、カーボン粒子埋没無機繊維を集合させてカーボン粒子埋没無機繊維集合体とした際には、カーボン粒子埋没無機繊維の表面の形状が容易に変わらないため、無機繊維同士の接触抵抗が低下することがなく、面圧の低下を抑制することができる。
なお、図1(a)におけるA−A線は、繊維方向(図1(a)中、両矢印Bで示す方向)における無機繊維の中心を通過している。
また、カーボンは温度上昇に伴って強度が増加するため、温度上昇に伴って無機繊維の強度が低下した場合であっても、これを補うことができるため、耐熱性が向上する。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、2〜15μmであることが好ましく、4〜10μmであることがより好ましく、4〜8μmであることがさらに好ましい。
カーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径が2〜15μmであると、無機繊維が曲げられることに対する反発力が有効に発揮され、充分な面圧を発揮することができる。
一方、カーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径が2μm未満であると、無機繊維の変形に対する反発力が小さくなり、充分な面圧を発揮できないことがある。また、カーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径が15μmを超えると、無機繊維が変形時にしならずに折れやすくなることがある。
なお、カーボン粒子埋没無機繊維1の繊維径は、無機繊維20と無機繊維20の表面に埋没固着しているカーボン粒子10を含む長さであって、図1(b)における両矢印aで示される長さである。また、カーボン粒子10の粒子径は図1(b)における両矢印bで示される長さであり、カーボン粒子10が埋没固着することにより形成される凸部の高さは図1(b)における両矢印cで示される長さである。
上述したように、カーボン粒子埋没無機繊維の繊維径は、カーボン粒子埋没無機繊維における特定箇所の繊維径にすぎない。そこで、本明細書においては、個々のカーボン粒子埋没無機繊維の繊維径を以下の方法で平均化する。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径は、無作為に抽出した10本のカーボン粒子埋没無機繊維について、それぞれ無作為に1箇所の繊維径を測定し、10点における繊維径の平均値(10箇所の繊維径の平均)によって求められる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維において、カーボン粒子が埋没固着することにより形成される凸部の高さ(図1(b)中、両矢印cで示される長さ)の平均は、0.5〜420nmであることが好ましい。
カーボン粒子が埋没固着することにより形成される凸部の高さの平均が0.5nm未満の場合、無機繊維同士の接触抵抗を増加する効果がみられないことがある。また、カーボン粒子が埋没固着することにより形成される凸部の高さの平均が420nmを超えた場合、無機繊維同士の接触抵抗が大きくなりすぎて、カーボン粒子が無機繊維表面から脱落することや、このような無機繊維を集合させた集合体の可撓性を損なうことがある。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維は、カーボン粒子が焼失した場合、無機繊維の表面に、カーボン粒子が埋没固着したことに由来する凹部が形成される。
図2(a)は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を酸化性雰囲気下で加熱することによってカーボン粒子を焼失させた無機繊維の一例を模式的に示した斜視図であり、図2(b)は、図2(a)におけるC−C線断面図である。
図2(b)に示すように、カーボン粒子を焼失させた無機繊維2の表面には、カーボン粒子が埋没固着していたことに由来する凹部21が形成されている。
そのため、カーボン粒子の焼失後には、無機繊維表面に形成された凹部により無機繊維同士の接触抵抗が高まり、面圧を充分に発揮することができる。さらに、無機繊維表面に形成された凹部は無機繊維と一体化しているため、無機繊維同士の接触によって破壊されることがなく、面圧が低下することを抑制することができる。
続いて、無機繊維表面にカーボン粒子が埋没固着している状態を、図3を用いて説明する。
図3は、図1(b)をさらに拡大した断面図である。
図3には、カーボン粒子10と無機繊維20表面との位置関係を示している。カーボン粒子10は無機繊維20の表面に埋没固着しており、カーボン粒子10と無機繊維20との界面はe及びeで露出している。e及びeを接続する直線(図3中、破線で示す)が無機繊維の水平面に相当し、この無機繊維の水平面に対して垂直な直線j(図3中、一点破線で示す)を仮定する。直線jはカーボン粒子の重心dを始点として、無機繊維20の内部側に延びている。カーボン粒子の重心dと、無機繊維表面におけるカーボン粒子との接触箇所e又はeとを接続する直線f又はfを仮定した場合に、f又はfと直線jとのなす角度θが45〜135°となっている。
すなわち、本明細書においては角度θが45〜135°となる状態が、カーボン粒子が無機繊維表面に埋没固着している状態である。
角度θが45°未満の場合には、カーボン粒子は無機繊維の表面にほとんど埋没していないといえる。このような状態では、カーボン粒子と無機繊維との接触面積が小さいため、カーボン粒子を無機繊維表面に固定する力が弱いことがある。そのため、カーボン粒子が無機繊維表面から脱落してしまうおそれがある。
一方、角度θが135°を超える場合、カーボン粒子の大部分が無機繊維の内部に埋没してしまっており、カーボン粒子によって形成される凸部の大きさが小さくなりすぎることがある。そのため、カーボン粒子による無機繊維同士の接触抵抗が低下し、面圧向上という効果が充分に発揮されないことがある。
なお、上述したカーボン粒子埋没無機繊維の繊維径、カーボン粒子の粒子径、カーボン粒子の位置及びカーボン粒子が埋没固着することにより形成される凸部の高さは、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)等でカーボン粒子埋没無機繊維を観察することにより測定することができる。
SEMを用いてカーボン粒子埋没無機繊維を観察する際には、収束イオンビーム等を用いてカーボン粒子埋没無機繊維をスパッタリングしてもよいし、ミクロトーム等を用いてカーボン粒子埋没無機繊維を薄片状に加工してもよい。
この時、必要に応じて、樹脂等を用いてカーボン粒子埋没無機繊維を固定してから薄片状に加工し、SEMによる観察を行ってもよい。
なお、カーボン粒子の直径は、SEM画像等により観察したカーボン粒子の投影面積に対応する近似円の直径(ヘイウッド径)とする。
続いて、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を構成する無機繊維について説明する。
無機繊維の種類は、特に限定されないが、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
無機繊維が、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択された少なくとも1種から構成されていると、耐熱性、耐風食性等に優れる。また、無機繊維が生体溶解性繊維である場合には、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を作製する際に、飛散した無機繊維を吸入等しても、生体内で溶解するため、作業員の健康に害を及ぼすことがない。
この中でも、低結晶性アルミナ質の無機繊維が好ましく、ムライト組成の低結晶性アルミナ質の無機繊維がより好ましい。加えて、スピネル型化合物を含む無機繊維がさらに好ましい。高結晶性アルミナ質であると、硬くもろいため、クッション材として用いられるマットには不向きである。
さらに低結晶性アルミナ質かつスピネル型化合物を含む無機繊維の場合、結晶化比率は0.1〜30%の範囲が好ましく、0.4〜20%の範囲がより好ましい。この範囲の無機繊維で製作されたマットの反発力及び耐久試験後の復元面圧は高く、性能が良い。しかし、結晶化比率が0.1%未満または30%を超えると、急激に反発力や復元面圧は急激に低下してしまう。結晶化比率の測定方法は、ムライト回折線(2θ=26.4°)とγアルミナ回折線(2θ=45.4°)の積分強度比より算出することができる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を構成する無機繊維として生体溶解性繊維を用いてもよい。生体溶解性繊維は、例えば、シリカ等のほかに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物からなる無機繊維である。
これらの化合物からなる生体溶解性繊維は、人体に取り込まれても溶解しやすいので、これらの無機繊維を含んでなるマットは人体に対する安全性に優れている。
生体溶解性繊維の具体的な組成としては、シリカ60〜85重量%、並びに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を15〜40重量%含む組成が挙げられる。上記シリカとは、SiO又はSiOのことをいう。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば、ナトリウム、カリウムの酸化物等が挙げられ、上記アルカリ土類金属化合物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムの酸化物等が挙げられる。上記ホウ素化合物としては、ホウ素の酸化物等が挙げられる。
生体溶解性繊維の組成において、シリカの含有量が、60重量%未満では、シリカの含有量が少ないため構造的にもろく、繊維が折れやすくなる。さらに、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、及び、ホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の割合が相対的に高くなるため、耐熱性が低下してしまう傾向がある。
一方、シリカの含有量が85重量%を超えると、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の割合が相対的に低くなるので生体溶解性繊維が生理食塩水に溶けにくくなりすぎる傾向にある。
なお、シリカの含有量は、SiO及びSiOの量をSiOに換算して算出したものである。
また、生体溶解性繊維の組成においてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物及びホウ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物の含有量が40重量%を超えると、構造的にもろく、繊維が折れやすくなることがある。
本発明における生体溶解性繊維の生理食塩水に対する溶解度は、30ppm以上であることが好ましい。生体溶解性繊維の溶解度が30ppm未満では、無機繊維が体内に取り込まれた場合に、体外へ排出されにくく、健康上好ましくないからである。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を構成する無機繊維のうち、ガラス繊維は、シリカとアルミナとを主成分とし、アルカリ金属のほかに、カルシア、チタニア、酸化亜鉛等からなるガラス状の繊維である。
また、ガラス繊維の生理学的な分解速度を向上させるため、成分にボリアやリン等を含ませることが好ましい。
続いて、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を構成するカーボン粒子について説明する。
カーボン粒子の種類は、特に限定されないが、グラファイト、カーボンブラック、ガラス状炭素、グラフェン及びフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
カーボン粒子が、グラファイト、カーボンブラック、ガラス状炭素、グラフェン及びフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種であると、無機繊維の耐熱性をより向上させることができる。
カーボン粒子の粒子形状は、特に限定されないが、鱗片状又は球形が好ましい。
グラファイトとしては、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、人造黒鉛等が挙げられる。なお、人造黒鉛は、異方性黒鉛であっても、等方性黒鉛であってもよく、これらの混合物であってもよいが、カーボン粒子の機械的強度の観点から、等方性黒鉛であることが好ましい。また、グラファイトは結晶性であっても非晶性であってもよく、これらの混合物であってもよい。
また、グラファイトは、黒鉛を炭素繊維で強化した炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)であってもよい。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。
また、フラーレンとしては、C60、C70、C80、C84、C96、カーボンナノチューブ等が挙げられる。
カーボン粒子の粒子径の平均(平均直径)は特に限定されないが、1〜500nmであることが好ましく、10〜450nmであることがより好ましく、30〜400nmであることがさらに好ましい。
カーボン粒子の平均直径が1nm未満であると、無機繊維に埋没固着させた際に、無機繊維の表面に充分な大きさの凸部を形成できず、無機繊維の表面に充分な摩擦力を付与することができず、面圧が充分に発揮されないことがある。カーボン粒子の平均直径が500nmを超えると、無機繊維が変形した際にカーボン粒子の埋没箇所を起点として折れやすくなることがある。
続いて、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法について説明する。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法は、無機塩法により原料溶液を作製し、これを紡糸して無機繊維前駆体を準備する紡糸工程と、上記無機繊維前駆体にカーボン粒子を埋没させるカーボン粒子埋没工程と、カーボン粒子を埋没させた上記無機繊維前駆体を非酸化性雰囲気で焼成することによって、上記無機繊維前駆体を無機繊維とするとともに、上記カーボン粒子を上記無機繊維の表面に埋没固着させて、上記無機繊維表面に上記カーボン粒子による凸部を形成させる焼成工程とからなることを特徴とする。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法は、無機繊維前駆体を準備する紡糸工程と、無機繊維前駆体にカーボン粒子を埋没させるカーボン粒子埋没工程と、カーボン粒子を埋没させた無機繊維前駆体を非酸化性雰囲気で焼成することによって、無機繊維前駆体を無機繊維とするとともに、カーボン粒子を無機繊維の表面に埋没固着させる焼成工程を含む。
無機塩法により原料溶液を作製し、これを紡糸して無機繊維前駆体を準備する紡糸工程は、公知の工程であり、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液とシリカゾル等とを原料とする紡糸用混合物をブローイング法により紡糸することにより得られる。
無機塩法により製造された無機繊維前駆体は柔らかいため、カーボン粒子が無機繊維前駆体に衝突することによって、カーボン粒子が無機繊維前駆体内部に侵入する。そのため、無機繊維前駆体をカーボン粒子と衝突させることによって、カーボン粒子を無機繊維前駆体の表面に埋没させることができる。
続く焼成工程においては、カーボン粒子が埋没した無機繊維前駆体を、非酸化性雰囲気で焼成する。
非酸化性雰囲気で焼成を行うことで、カーボン粒子を酸化させずに無機繊維前駆体を焼成することができる。非酸化性雰囲気下で焼成工程を行うことで、カーボン粒子が埋没した構造を保ったまま、無機繊維前駆体を無機繊維とすることができる。
焼成工程では、無機繊維前駆体に埋没していたカーボン粒子が、その埋没構造を維持しながら無機繊維前駆体との焼結反応が進行するため、カーボン粒子は無機繊維表面に固着する。
以上説明したように、カーボン粒子埋没工程及び焼成工程を経ることによって、無機繊維表面にカーボン粒子が埋没固着したカーボン粒子埋没無機繊維が得られる。
無機繊維前駆体にカーボン粒子を埋没させるカーボン粒子埋没工程としては、特に限定されないが、例えば、無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を直接吹き付ける方法、無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を含む溶液を吹き付ける方法、及び、無機繊維前駆体とカーボン粒子とを溶媒中で撹拌させる方法が挙げられる。
まず、無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を直接吹き付ける方法について説明する。
無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を吹き付ける場合、カーボン粒子を吹き付ける速度(投射速度)は特に限定されないが投射速度を調整することによって、カーボン粒子の埋没深度を調整することができる。
カーボン粒子を吹き付ける際には、エアーブラスト装置等を用いることができる。
さらに、吸引ポンプ、空気噴射ポンプ等を用いることで、吹き付けられたカーボン粒子の埋没深度や埋没量を調整することができる。
投射速度が小さすぎる場合、カーボン粒子が無機繊維前駆体に対して衝突する際の速度が小さく、カーボン粒子が無機繊維前駆体に対して充分に埋没しないことがある。
ただし、埋没していない粒子の大部分は、静電気力で無機繊維前駆体の表面に貼り付いているため、そこへ空気噴射ポンプ等から吐出される圧縮空気を無機繊維前駆体の表面に吹き付けることで、カーボン粒子を無機繊維前駆体表面に埋没させることが可能となる。
なお、埋没深度が浅い場合も、空気噴射ポンプ等を利用することで埋没深度を深く調整することができる。
続いて、無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を含む溶液を吹き付ける方法について説明する。
カーボン粒子を含む溶液のカーボン粒子濃度は、特に限定されないがカーボン粒子の無機繊維前駆体に対する埋没量や埋没深度等を、カーボン粒子を直接吹き付けた場合と同じように、吸引ポンプ、又は空気噴射ポンプ等を組み合わせることで調整することができる。
カーボン粒子を含む溶液には、必要に応じて、分散剤等を添加してもよい。
無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を含む溶液を吹き付ける場合、カーボン粒子を含む溶液をスプレーして吹き付ける方法や、ウェットブラスト装置を用いる方法が挙げられる。
続いて、無機繊維前駆体とカーボン粒子とを溶媒中で撹拌する方法について説明する。
無機繊維前駆体とカーボン粒子を溶媒中に添加する順番は特に限定されず、溶媒中に無機繊維前駆体を添加して分散させて、その後にカーボン粒子を添加してもよく、溶媒中にカーボン粒子を添加して分散させて、その後に無機繊維前駆体を添加してもよく、無機繊維前駆体とカーボン粒子を一度に溶媒中に添加してもよい。
無機繊維前駆体とカーボン粒子とを含む溶媒(無機繊維前駆体−カーボン粒子混合溶液ともいう)には、必要に応じて、分散剤、消泡剤、粘度調整剤、pH調整剤等を添加してもよい。
無機繊維前駆体とカーボン粒子とを溶媒中で撹拌する際には、無機繊維前駆体−カーボン粒子混合溶液を攪拌翼(インペラ)等によって撹拌する方法や、ポンプ等で加圧して循環させる方法が挙げられる。
撹拌翼の形状は、特に限定されないが、プロペラ、ピッチドパドル、ピッチドタービン、ディスクタービン、鋸歯形タービン、アンカー翼(錨形翼)、フラットタービン、リボン翼(螺旋帯翼)、門形翼等が挙げられる。
また、必要に応じて、上記攪拌翼を用いて、無機繊維前駆体−カーボン粒子混合溶液を邪魔板を有する容器で撹拌してもよい。
なお、無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を含む溶液を吹き付ける場合、カーボン粒子を含む溶液を構成する溶媒としては、無機繊維前駆体を構成する高分子成分が溶解しない非水系溶媒であることが好ましい。
また、無機繊維前駆体とカーボン粒子とを溶媒中で撹拌させる場合、溶媒としては、無機繊維前駆体の高分子成分が溶解しない、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム及びジクロロメタン等の非水系溶媒であることが好ましい。
焼成工程における焼成雰囲気は、非酸化性雰囲気であれば特に限定されないが、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気、二酸化炭素雰囲気及び真空等が挙げられ、製造コストの観点から窒素雰囲気が好ましい。
また、焼成の際に無機繊維前駆体からガスが発生し、非酸化性雰囲気を乱す場合があるため、窒素ガスやアルゴンガス等を炉内へ常に打ち込むなどして、無機繊維前駆体周辺の雰囲気を非酸化系雰囲気に保つことが好ましい。
焼成工程における焼成温度は、特に限定されないが、300〜1200℃であることが好ましく、400〜1100℃であることがより好ましく、500〜1000℃であることがさらに好ましい。
焼成温度が300℃未満の場合には、焼成温度が低すぎるために、カーボン粒子と無機繊維との焼結反応が充分に進行しないことがあり、カーボン粒子を無機繊維の表面に埋没固着させにくくなる。また焼成温度が1200℃を超える場合、カーボン粒子と無機繊維との熱膨張率の差によって、カーボン粒子と無機繊維との界面に隙間が生じ、カーボン粒子が脱落しやすくなることがある。
続いて、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体について説明する。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、上述した本発明のカーボン粒子埋没無機繊維をニードリング法又は抄造法により集合させることにより得られる。
まず、ニードリング法(ニードルパンチング法ともいう)により製造される本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体について説明する。
ニードリング法により製造される本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体(以下、単にニードルマットともいう)は、上述した本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法における焼成工程の直前にカーボン粒子埋没無機繊維を集合させてシート状とし、このシート状の集合体に対してニードリング処理(ニードルパンチング処理ともいう)を行い、続いて焼成工程を行うことにより得られる。
ニードルパンチング処理は、ニードルパンチング装置を用いて行うことができる。ニードルパンチング装置は、無機繊維前駆体のシート状物を支持する支持板と、この支持板の上方に設けられ、突き刺し方向(素地マットの厚さ方向)に往復移動可能なニードルボードとで構成されている。ニードルボードには、多数のニードルが取り付けられている。このニードルボードを、上述した支持板に載せたカーボン粒子埋没無機繊維前駆体のシート状物に対して移動させ、多数のニードルを無機繊維前駆体のシート状物に対して抜き差しすることで、無機繊維前駆体を構成する繊維を複雑に交絡させることができる。ニードルパンチング処理の回数やニードル数は、目的とする無機繊維集合体の嵩密度や目付量に応じて変更すればよい。
ニードルマットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維は、その平均繊維長が1〜150mmであることが好ましく、10〜80mmであることがより好ましい。
ニードルマットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維長が1mm未満であると、繊維長が短すぎるため、繊維同士の交絡が不充分となり、ニードルマットが変形した際に割れやすくなる。また、ニードルマットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維長が150mmを超えると、繊維長が長すぎるため、ニードルマットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維の繊維本数が減少する。そのため、ニードルマットの緻密性が低下し、ニードルマットのせん断強度が低くなることがある。
ニードルマットの厚さは特に限定されないが、2.0〜20mmであることが好ましい。ニードルマットの厚さが20mmを超えると、ニードルマットの柔軟性が失われるので、ニードルマットを排ガス処理体等の保護対象に巻きつける際に扱いづらくなる。また、ニードルマットに巻きじわや割れが生じやすくなる。
ニードルマットの厚さが2.0mm未満であると、ニードルマットの面圧が排ガス処理体を保持するのに充分でなくなることがある。そのため、排ガス処理体が抜け落ちやすくなる。また、排ガス処理体に体積変化が生じた場合、ニードルマットは排ガス処理体の体積変化を吸収しにくくなる。そのため、排ガス処理体にクラック等が発生しやすくなることがある。
続いて、抄造法により製造される本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体について説明する。
抄造法により製造される本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体(以下、単に抄造マットともいう)は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を抄造法により集合させることによって得られる。
抄造法では、カーボン粒子埋没無機繊維と溶媒とを、原料液中のカーボン粒子埋没無機繊維の含有量が所定の値となるように混合し、撹拌機で撹拌することで混合液を調製する。このとき、必要に応じて、有機バインダ、無機バインダ、有機バインダと無機バインダとの凝集体、pH調整剤及び消泡剤等を添加してもよい。続いて、底面にろ過用のメッシュが形成された成型器に混合液を流し込んだ後に、混合液中の溶媒を脱溶媒処理し、その後乾燥することにより、抄造マットが得られる。
混合液を調製する際には、抄造マットの成形性の観点から、有機バインダを添加することが好ましい。有機バインダを混合液に添加することで、抄造マットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維同士を一時的に接着することができ、抄造マットの嵩密度の調整が容易となる。また、抄造マットの取り扱い性を向上させることができる。
有機バインダの添加量は、抄造マットの全重量に対して有機バインダが2〜15重量%含有されるように添加することが好ましい。
有機バインダの添加量が、抄造マットの全重量に対して2重量%未満であった場合、有機バインダの添加による効果がみられず、嵩密度の調整が困難となることがある。
また、有機バインダの添加量が、抄造マットの全重量に対して15重量%を超えた場合、熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、排ガス処理体を保護するために用いる際に、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
抄造マットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維は、その平均繊維長が0.7〜70mmであることが好ましく、0.8〜50mmであることがより好ましい。
抄造マットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維長が0.7mm未満であると、繊維長が短すぎるため、無機繊維同士の交点よりも無機繊維の端部(先端)に付着する有機バインダの割合が多くなり、繊維同士を充分に結合することができずに、繊維がたわまなくなったり、面圧が充分に発揮しない原因ともなる。
また、抄造マットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維長が70mmを超えると、繊維長が長すぎるため、抄造した際に無機繊維の配向が一方向に偏ってしまい、面圧を充分に発揮できなくなることがある。
なお、ニードルマット及び抄造マット(以下、単にマットともいう)を構成するカーボン粒子埋没無機繊維の繊維長の測定は、マットから無機繊維が破断しないように抜き取り、光学顕微鏡を使用して行う。本明細書では、無機繊維300本を抜き取り、繊維長を計測した平均を平均繊維長とする。マットから無機繊維を破断せずに抜き取れない場合、マットを水の中へ投入し、無機繊維同士の絡みをほぐしながら無機繊維が破断しないように採取するとよい。なお、マットに有機バインダ等が含まれている場合、マットを脱脂処理してから水の中に投入してもよい。
マットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径は4〜10μmであることが好ましく、さらに、繊維径が3μm未満のカーボン粒子埋没無機繊維を含まないことが好ましい。
マットを構成するカーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径が4〜10μmであると、無機繊維が曲げられることに対する反発力が有効に発揮され、マットが充分な面圧を発揮することができる。また、繊維径が3μm未満のカーボン粒子埋没無機繊維は大気中に滞留する時間が長いため、環境負荷の観点からこれを含まないことが好ましい。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体(以下、単にマットともいう)の形状は特に限定されないが、例えば、図4に示す形状が挙げられる。
図4は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体の一例を模式的に示した斜視図である。
図4に示すように、カーボン粒子埋没無機繊維集合体110は、所定の長手方向の長さ(以下、図4中、両矢印Lで示す)、幅(図4中、両矢印Wで示す)及び厚さ(図4中、両矢印Tで示す)を有する平面視略矩形かつ平板形状であってよい。
カーボン粒子埋没無機繊維集合体110では、マットの長さ方向側の端部のうち、一方の端部である第1の端部には凸状部111が形成されており、他方の端部である第2の端部には凹状部112が形成されている。マットの凸状部111及び凹状部112は、後述する排ガス浄化装置を組み立てるために排ガス処理体にマットを巻き付けた際に、ちょうど互いに嵌合するような形状となっている。
なお、「平面視略矩形」とは、マットの凸状部及び凹状部を含む概念である。また、平面視略矩形には、角部が90°以外の角度を有する形状も含まれる。
マットの厚さは特に限定されないが、2.0〜20mmであることが好ましい。マットの厚さが20mmを超えると、マットの柔軟性が失われるので、マットを排ガス処理体に巻き付ける際に扱いづらくなる。また、マットに巻きじわや割れが生じやすくなる。
マットの厚さが2.0mm未満であると、マットの面圧が排ガス処理体を保持するのに充分でなくなる。そのため、排ガス処理体が抜け落ちやすくなる。また、排ガス処理体に体積変化が生じた場合、マットは排ガス処理体の体積変化を吸収しにくくなる。そのため、排ガス処理体にクラック等が発生しやすくなる。
マットの目付量(単位面積当たりの重量)は、特に限定されないが、200〜4000g/mであることが好ましく、1000〜3500g/mであることがより好ましい。マットの目付量が200g/m未満であると、保持力が充分ではなく、マットの目付量が4000g/mを超えると、マットの嵩が低くなりにくい。そのため、このようなマットを用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体が脱落しやすくなる。
また、マットの嵩密度(巻き付ける前のマットの嵩密度)についても、特に限定されないが、0.10〜0.40g/cmであることが好ましい。マットの嵩密度が0.10g/cm未満であると、カーボン粒子埋没無機繊維のからみ合いが弱く、カーボン粒子埋没無機繊維が剥離しやすいため、マットの形状を所定の形状に保ちにくくなる。
また、マットの嵩密度が0.40g/cmを超えると、マットが硬くなるため、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、マットが割れやすくなる。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、さらに、有機バインダを含有していてもよい。
有機バインダとしては、特に限定されず、アクリル系樹脂、アクリレート系ラテックス、ゴム系ラテックス、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これらの中では、アクリル系樹脂が好ましい。
有機バインダがアクリル系樹脂であると、カーボン粒子埋没無機繊維の表面に有機バインダ皮膜を形成し、カーボン粒子埋没無機繊維の破断及びこれに伴う飛散を抑制することができる。
有機バインダの含有量は、マット全体の重量に対して固形分換算で1〜15重量%であることが好ましく、3〜9重量%であることがより好ましく、4〜8重量%であることがさらに好ましい。
有機バインダの含有量が1重量%未満の場合、マットに充分な可撓性を付与することができないことがあり、マットを排ガス処理体に巻きつける際に、クラックが発生することがある。一方、有機バインダの含有量が15重量%を超える場合、排ガスの熱によって発生する分解ガスの量が多くなり、周囲の環境に悪影響を与える可能性がある。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、さらに、無機バインダを含有していてもよい。
無機バインダとしては、特に限定されず、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
無機バインダをマット全体の重量に対して固形分換算で0.1〜10重量%含有していることが好ましく、0.1〜8重量%含有していることがより好ましく、0.1〜6重量%含有していることがさらに好ましい。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、さらに、有機バインダと無機バインダとが凝集した凝集体が添着されていてもよい。
凝集体を構成する有機バインダは、既に説明した上記有機バインダと同一であってもよく、異なっていてもよい。凝集体を構成する無機バインダは、既に説明した上記無機バインダと同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、凝集体を形成するために、凝集剤をさらに含んでいてもよい。
本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体を排ガス浄化装置の保持シール材として用いる場合、排ガス浄化装置を構成するマットの枚数は特に限定されず、一枚のマットであってもよいし、互いに結合された複数枚のマットであってもよい。複数枚のマットを結合する方法としては、特に限定されず、例えば、ミシン縫いでマット同士を結合する方法、粘着テープ又は接着剤でマット同士を接着する方法等が挙げられる。
次に、本発明の排ガス浄化装置について説明する。
本発明の排ガス浄化装置は、金属ケーシングと、上記金属ケーシングに収容された排ガス処理体と、上記排ガス処理体の周囲に巻きつけられ、上記排ガス処理体及び上記金属ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、上記保持シール材は本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体であることを特徴とする。
本発明の排ガス浄化装置は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を集合してなるカーボン粒子埋没無機繊維集合体を保持シール材として用いているため、耐熱性及び面圧に優れ、さらに、継続的な使用に伴ってカーボン粒子が焼失したとしても高い面圧を維持することができる。
図5は、本発明の排ガス浄化装置の一例を模式的に示した線断面図である。
図5に示すように、排ガス浄化装置100は、金属ケーシング130と、金属ケーシング130に収容された排ガス処理体120とを備え、排ガス処理体120及び金属ケーシング130の間にカーボン粒子埋没無機繊維集合体110が保持シール材として配設されている。
排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に並設された柱状のものである。なお、金属ケーシング130の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と、排ガス浄化装置を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続されることとなる。
排ガス浄化装置を構成する保持シール材としては、図4に示すカーボン粒子埋没無機繊維集合体110をはじめとする本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体を使用することができる。
続いて、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体(ハニカムフィルタ)及び金属ケーシングについて説明する。
なお、排ガス浄化装置を構成するカーボン粒子埋没無機繊維集合体の構成については、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体としてすでに説明しているので省略する。
排ガス浄化装置を構成する金属ケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
排ガス浄化装置を構成する金属ケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状等を好適に用いることができる。
続いて、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
図6は、本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図6に示す排ガス処理体120は、多数のセル125がセル壁126を隔てて長手方向に併設される柱状のセラミック質からなるハニカム構造体である。また、セル125のいずれかの端部は、封止材128で封止されている。さらに、排ガス処理体120の外周面には、外周コート層127が形成されている。
図6に示す排ガス処理体120のように、セル125のいずれかの端部が封止されている場合、排ガス処理体120の一方の端部からみたときに、端部が封止されたセルと封止されていないセルとが交互に配置されていることが好ましい。
排ガス処理体を長手方向に垂直な方向に切断した断面形状は、特に限定されず、略円形、略楕円形でもよく、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形であってもよい。
排ガス処理体を構成するセルの断面形状は、略三角形、略四角形、略五角形、略六角形等の略多角形でもよく、また、略円形、略楕円形であってもよい。また、排ガス処理体は、複数の断面形状のセルが組み合わされたものであってもよい。
排ガス処理体を構成する素材は特に限定されないが、炭化ケイ素質及び窒化ケイ素質等の非酸化物、並びに、コージェライト及びチタン酸アルミニウム等の酸化物を用いることができる。これらのうち、特に、炭化ケイ素質又は窒化ケイ素質等の非酸化物多孔質焼成体であることが好ましい。
これらの多孔質焼成体は、脆性材料であるので、機械的な衝撃等により破壊されやすい。しかし、図5に示す排ガス浄化装置100では、排ガス処理体120の側面の周囲にカーボン粒子埋没無機繊維集合体110が介在し、衝撃を吸収するので、機械的な衝撃や熱衝撃により排ガス処理体120にクラック等が発生するのを防止することができる。
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体には、排ガスを浄化するための触媒を担持させてもよく、担持させる触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属が好ましく、この中では、白金がより好ましい。また、その他の触媒として、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属を用いることもできる。これらの触媒は、単独で用いても良いし、2種以上併用しても良い。これら触媒が担持されていると、PMを燃焼除去しやすくなり、有毒な排ガスの浄化も可能になる。
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、一体的に形成された一体型ハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含むペーストを介して複数個結束してなる集合型ハニカム構造体であってもよい。
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、セルに封止材が設けられずに、セルの端部が封止されていなくてもよい。この場合、排ガス処理体は、白金等の触媒を担持させることによって、排ガス中に含まれるCO、HC又はNOx等の有害なガス成分を浄化する触媒担体として機能する。
排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、外周面に外周コート層が形成されていてもよく、形成されていなくてもよい。排ガス処理体の外周面に外周コート層が形成されていると、排ガス処理体の外周部を補強したり、形状を整えたり、断熱性を向上させることができる。なお、排ガス処理体の外周面とは、柱状である排ガス処理体の側面部分を指す。
上述した構成を有する排ガス浄化装置を排ガスが通過する場合について、図5を参照して以下に説明する。
図5に示すように、内燃機関から排出され、排ガス浄化装置100に流入した排ガス(図5中、排ガスをGで示し、排ガスの流れを矢印で示す)は、排ガス処理体(ハニカムフィルタ)120の排ガス流入側端面120aに開口した一のセル125に流入し、セル125を隔てるセル壁126を通過する。この際、排ガス中のPMがセル壁126で捕集され、排ガスが浄化されることとなる。浄化された排ガスは、排ガス処理側端面120bに開口した他のセル125から流出し、外部に排出される。
次に、排ガス浄化装置の製造方法について説明する。
図7は、本発明の排ガス浄化装置を製造する方法の一例を模式的に示した図である。
図7に示すように、まず、排ガス処理体120の周囲に沿ってカーボン粒子埋没無機繊維集合体110を巻き付け、巻付体140とする。次に、この巻付体140を金属ケーシング130に収容することで、排ガス浄化装置を製造することができる。
巻付体140を金属ケーシング130に収容する方法としては、例えば、金属ケーシング130内部の所定の位置まで周囲にカーボン粒子埋没無機繊維集合体110が配設された排ガス処理体120を圧入する圧入方式(スタッフィング方式)、金属ケーシング130の内径を縮めるように外周側から圧縮するサイジング方式(スウェージング形式)、並びに、金属ケーシングを第1のケーシング及び第2のケーシングの部品に分離可能な形状としておき、巻付体140を第1のケーシング上に載置した後に第2のケーシングをかぶせて密封するクラムシェル方式等が挙げられる。
圧入方式によって巻付体を金属ケーシングに収容する場合、金属ケーシングの内径(排ガス処理体を収容する部分の内径)は、上記巻付体の外径より若干小さくなっていることが好ましい。
排ガス浄化装置は、互いに結合された2層以上の複数枚の保持シール材から構成されていてもよい。複数枚の保持シール材を結合する方法としては、特に限定されず、例えば、ミシン縫いで保持シール材同士を結合する方法、粘着テープ又は接着剤で保持シール材同士を接着する方法等が挙げられる。
以下、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維、カーボン粒子埋没無機繊維の製造方法、カーボン粒子埋没無機繊維集合体及び排ガス浄化装置の作用効果について説明する。
(1)本発明のカーボン粒子埋没無機繊維は、無機繊維の表面にカーボン粒子が埋没固着している。そのため、カーボン粒子埋没無機繊維同士の接触抵抗が大きく、排ガス処理体等を安定的に保持するための面圧を充分に発揮することができる。さらに、カーボン粒子は温度上昇に伴って機械的強度が向上するため、耐熱性を向上させることができる。一方、カーボン粒子が焼失したとしても、無機繊維の表面にはカーボン粒子が埋没固着したことに由来する凹部が形成されているため、無機繊維同士の接触抵抗は維持され、面圧の低下を抑制することができる。
(2)本発明のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法は、無機繊維前駆体に対してカーボン粒子を埋没させる埋没工程と、カーボン粒子が埋没した無機繊維前駆体を非酸化性雰囲気で焼成する焼成工程とを含んでいる。そのため、カーボン粒子が無機繊維表面に埋没固着したカーボン粒子埋没無機繊維を容易に製造することができる。
(3)本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を集合させたものであるから、耐熱性に優れ、さらに、面圧が高く、排ガス処理体を安定的に保持することができる。
(4)本発明の排ガス浄化装置は、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体を保持シール材として用いているため、排ガス処理体を安定的に保持することができ、さらに継続的な使用によって保持力が低下しにくい。
(実施例)
以下、本発明をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(a)カーボン粒子埋没無機繊維の作製
(a−1)紡糸工程
Al含有量が70g/lであり、Al:Cl=1:1.8(原子比)となるように調製した塩基性塩化アルミニウム水溶液に対して、焼成後の無機繊維における組成比が、Al:SiO=72:28(重量比)となるようにシリカゾルを配合し、さらに、有機重合体(ポリビニルアルコール)を適量添加して混合液を調製する。
得られた混合液を濃縮して紡糸用混合物とし、この紡糸用混合物をブローイング法により紡糸して平均繊維径が5.6μmである無機繊維前駆体を作製する。
(a−2)カーボン粒子埋没工程
まず、トルエンに平均粒径が300nmであるカーボン粒子(昭和電工(株) UF−G5)を添加して撹拌し、カーボン粒子の含有量が30重量%であるカーボン粒子分散液を調製する。その後、上記(a−1)紡糸工程により得た無機繊維前駆体に対して、カーボン粒子分散液を20℃で、吐出速度を調整し、カーボン粒子が無機繊維前駆体の表面に埋没するよう吹き付け、カーボン粒子を無機繊維前駆体の表面に埋没させる。
なお、埋没工程は室温(20℃)付近で行うことが好ましい。埋没工程における温度が低すぎると、カーボン粒子分散液を構成する溶媒が結晶化することがあり、無機繊維前駆体が破壊されることがある。
また、カーボン粒子分散液を吹き付けた後、無機繊維前駆体をサクションポンプ等で脱水することで、無機繊維前駆体に対するカーボン粒子の埋没量を調整することができる。そのため、カーボン粒子分散液のカーボン粒子含有量は、適宜調整することができる。
カーボン粒子分散液が吹き付けられることで一旦無機繊維前駆体の表面にカーボン粒子が埋没したが、その後サクションポンプ等による脱水によって無機繊維前駆体表面から脱落してしまった場合、無機繊維前駆体の表面にはカーボン粒子が埋没したことによる凹部が形成されることとなるが、後述する焼成工程によって無機繊維表面に形成されていた凹部は消滅するため、焼成後の無機繊維には影響を及ぼさない。
(a−3)焼成工程
上記(a−2)埋没工程を経た、カーボン粒子が埋没した無機繊維前駆体を窒素雰囲気下740℃で10分間加熱することで、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維を得る。
(b)カーボン粒子埋没無機繊維集合体の作製
(b−1)開繊工程
次に、(a−3)により得られたカーボン粒子埋没無機繊維168.3gを水に投入し、ミキサーを用いて撹拌し、開繊されたカーボン粒子埋没無機繊維の溶液を得る。
(b−2)スラリー調製工程
上記(b−1)開繊工程により得られた、開繊されたカーボン粒子埋没無機繊維の溶液に対して、天然ゴムのラテックス溶液を投入し、ラテックス溶液がカーボン粒子埋没無機繊維の溶液に分散するように撹拌する。続いて、アルミナゾルを投入し、アルミナゾルが分散するように撹拌する。さらに、高分子凝集剤として、非イオン性ポリアクリルアミド水溶液を投入し、撹拌する。上記の方法により、スラリーを調製する。
(b−3)抄造工程
335mm×335mmのタッピ式抄造機を用いて、上記スラリーを抄造することにより、目付量(単位面積当たりの重量)が1500g/mの繊維集合体を得る。
(b−4)乾燥工程
プレス式乾燥機を用いて、得られた繊維集合体を圧縮した状態で、100℃で2時間熱処理して乾燥させ、本発明のカーボン粒子埋没無機繊維集合体を得る。
1 カーボン粒子埋没無機繊維
10 カーボン粒子
20 無機繊維
100 排ガス浄化装置
110 カーボン粒子埋没無機繊維集合体
120 排ガス処理体
130 金属ケーシング

Claims (15)

  1. 無機繊維の表面にカーボン粒子が埋没固着しており、
    前記無機繊維の表面には、前記カーボン粒子による凸部が形成されていることを特徴とするカーボン粒子埋没無機繊維。
  2. 前記カーボン粒子は、グラファイト、カーボンブラック、ガラス状炭素、グラフェン及びフラーレンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のカーボン粒子埋没無機繊維。
  3. 前記無機繊維は、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナ−シリカ繊維、ムライト繊維、ガラス繊維及び生体溶解性繊維からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のカーボン粒子埋没無機繊維。
  4. 前記カーボン粒子埋没無機繊維の平均繊維径は2〜15μmであり、
    前記カーボン粒子の平均直径は1〜500nmである請求項1〜3のいずれかに記載のカーボン粒子埋没無機繊維。
  5. 前記カーボン粒子が焼失した場合、前記無機繊維の表面に前記カーボン粒子が埋没固着したことに由来する凹部が形成される請求項1〜4のいずれかに記載のカーボン粒子埋没無機繊維。
  6. 無機塩法により原料溶液を作製し、これを紡糸して無機繊維前駆体を準備する紡糸工程と、
    前記無機繊維前駆体にカーボン粒子を埋没させるカーボン粒子埋没工程と、
    カーボン粒子を埋没させた前記無機繊維前駆体を非酸化性雰囲気で焼成することによって、前記無機繊維前駆体を無機繊維とするとともに、前記カーボン粒子を前記無機繊維の表面に埋没固着させて、前記無機繊維表面に前記カーボン粒子による凸部を形成させる焼成工程とからなることを特徴とするカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法。
  7. 前記カーボン粒子埋没工程では、前記無機繊維前駆体に対して前記カーボン粒子を直接吹き付ける請求項6に記載のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法。
  8. 前記カーボン粒子埋没工程では、前記無機繊維前駆体に対して、前記カーボン粒子を含む溶液を吹き付ける請求項6に記載のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法。
  9. 前記カーボン粒子埋没工程では、前記無機繊維前駆体と前記カーボン粒子とを溶媒中で撹拌させる請求項6に記載のカーボン粒子埋没無機繊維の製造方法。
  10. 請求項1〜5のいずれかに記載のカーボン粒子埋没無機繊維をニードリング法により集合させてなるカーボン粒子埋没無機繊維集合体。
  11. 請求項1〜5のいずれかに記載のカーボン粒子埋没無機繊維を抄造法により集合させてなるカーボン粒子埋没無機繊維集合体。
  12. 平均繊維径が4〜10μmであり、繊維径が3μm未満のカーボン粒子埋没無機繊維を含まない請求項10又は11に記載のカーボン粒子埋没無機繊維集合体。
  13. 有機バインダを含有する請求項10〜12のいずれかに記載のカーボン粒子埋没無機繊維集合体。
  14. 無機バインダを含有する請求項10〜13のいずれかに記載のカーボン粒子埋没無機繊維集合体。
  15. 金属ケーシングと、
    前記金属ケーシングに収容された排ガス処理体と、
    前記排ガス処理体の周囲に巻きつけられ、前記排ガス処理体及び前記金属ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、
    前記保持シール材は請求項10〜14のいずれかに記載のカーボン粒子埋没無機繊維集合体であることを特徴とする排ガス浄化装置。
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