JP6372794B2 - 水素応答素子 - Google Patents
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Description
また、水素ガスは拡散が非常に速いことから、一旦漏洩した場合に急速に広範囲に拡散する。
そのため、水素を利用する環境においては広範囲の場所において迅速に水素濃度を検出する必要がある。
また、現在多量の水素ガスを利用したり、発生する場所としては、例えば鉄鋼製造に利用する高炉内,原子炉内,メタン化反応装置等の密閉状態の場合が多く、このような密閉容器に水素ガス検出子の導入穴をあけることなく、外部から非接触で検出,計測できるものが好ましい。
また、今後水素貯蔵タンク,水素供給スタンド,燃料電池関連工場及び施設等の水素を利用した各種工場や施設が増加すると思われる。
このような水素を利用する装置,施設において自発的、且つ無電源で動作するリードスイッチ等の水素濃度検出装置があれば、電源遮断時のトラブルの恐れもなく、水素を利用するインフラでの安全装置の利用が期待できる。
接触燃焼式は、簡便で堅牢であるが、測定濃度可能範囲が高い。
逆に半導体式は、測定濃度可能範囲が低すぎる。
Pd膜抵抗センサは、水素の選択性が高いが、測定濃度可能範囲が高く、酸素に弱い問題がある。
光学式センサは、非接触での計測が可能であるが、複雑な装置が必要になる。
また、水素ガスに対する応答性のあるリードスイッチについては、これまでに報告が見当たらなかった。
しかし、上記論文発表の段階では、水素ガスセンサとしての応用までは明らかでなく、酸素共存下(大気中)での水素ガスによる磁化率の影響についても明確になっていなかった。
さらに上記論文では、Pd−Co合金バルク中の水素濃度と磁気特性について報告したものであって、Pd−Co合金の薄膜化,微粒子化による効果までは言及されていない。
また、この水素応答素子を用いた水素ガスセンサ及びリードスイッチの提供を目的とする。
ここで鉄属元素は、Fe,Co,Niをいい、PdとこのFe,Co,Niのうち、1つ以上が含まれる合金をいう。
本発明で、厚さ1μm以下の薄膜又は平均粒径100μm以下の微粒子にしたのは、質量に対する表面積比率を高くすることで、水素に対する応答性を向上させたものである。
薄膜は、Pdと鉄属元素をスパッタリング等の蒸着法を用いて製作できる。
上記合金を粉末化して微粒子にすることもできる。
また、この磁化率変化は温度の影響を受ける。
そこで、常温付近で0.05%〜10%までの水素ガス濃度を計測対象にするには、Pd系合金中のFe,Co,Niのうちの1つ以上含有し、その合計濃度が4〜20at%の範囲が好ましい。
なお、PdにNiを単独で配合する場合には、4〜50at%の範囲でもよい。
また、本発明に係る合金はある濃度範囲において室温で強磁性を示し、また水素を吸収することにより磁化率の大きさが減少する。
つまり、外部から磁石を近づけた場合、水素がない環境では本発明に係るPd合金は磁石に引き付けられるが、水素が一定濃度以上の環境下では磁石に引きつけられない。
この磁石に対する応答の違いから、本発明に係るPd合金を端子として用いたリードスイッチを作成することで、通常は一般のリードスイッチと同様の働きをするが、水素雰囲気化ではスイッチとして機能しなくなるような素子を構築できる。
一方でPd合金は水素酸化触媒として機能する。
そのため、酸素雰囲気下では水素と酸素がPd合金上で反応し、その結果発熱し合金の温度が上昇する。
この温度上昇によりPd合金の磁気特性が変化することから、やはり磁気特性変化を読むことで水素濃度を定量することが可能となる。
また、測定可能な水素濃度は合金の組成を変化させることで対応ができる。
また、本発明に係るPd合金を薄膜化又は微粒子化したので、水素濃度に対する応答性に優れる。
本発明に係る水素応答素子をリードスイッチに展開すると、一般的な水素センサからのフィードバックを利用する安全回路と比較して、本発明の素子は構造が非常に簡単であり、また無電源状態でも素子自身は自発的に動作する。
そのため、耐久性、メンテナンス性に優れ、また水素ガスに対しより高度な安全回路を構築できる。
水素応答素子として、Pd−Co合金薄膜を用いた。
原子数比でPd:Coが9:1になるようにそれぞれの金属を同時スパッタリングすることで約1μmの厚さの膜をPETフィルム上に堆積した。
作成した薄膜は、5ミリ角の大きさに切断した。
この組成のPd−Co合金は室温で強磁性体であり、水素を吸うことでその磁気特性が弱くなる。
センサ特性試験装置を、図1に示した。
ガス導入部は2台のマスフローコントローラで、窒素と水素、あるいは空気と水素を所定の比率で混合して導入する仕組みになっている。
図1中央の試料管の内部に、約0.1gの薄膜化したPd−Co合金を設置し、両端をガラスウールでふさいだ。
試料管内は所定の比率で混合されたガスを毎分100cc程度の速度で流し、流したガス内の水素濃度に応じて測定コイルより発生する交流電圧が変化する。
水素濃度10%から0.2%までの交流電圧の変化を図2に示す。
水素を混合したガスを流すと、急激に交流電圧が大きくなり、ある一定値で止まる。
この値は、水素濃度が低くなるにつれ小さくなる傾向を示している。
これは、Pd−Co合金が水素を吸収することで、磁化率が変化したことを示している。
水素吸収量は流れるガス内の水素の分圧に依存することから、水素濃度が減少することで磁化率の変化が小さくなる。
この磁化率の変化を水素濃度の1/2乗に対してプロットした結果を図3のグラフに示す。
磁化率変化は水素濃度の1/2乗に比例していることがわかる。
一般に水素吸蔵合金の溶解領域での水素溶解量は水素分圧の1/2乗に比例することが知られており、今回の結果は、水素吸収により磁化率が変化することが原因であることを示している。
測定誤差とバックグラウンドの変動を考慮すると、この直線関係より本測定装置により0.05%の水素濃度まで測定が可能であることが分かる。
一方、酸素存在下での水素濃度の測定も可能であることが図4により示されている。
これは、水素と酸素がPd合金上で反応し水を生成する際の発熱により、合金自身の温度が上昇し、それによって磁化率が変化している。
そのため、図4に示した出力は酸素が存在していない場合の出力とは異なる。
測定条件(雰囲気)に適した校正曲線を利用することで、酸素の存在の有無にかかわらず水素濃度の計測が可能となる。
次に粉末(平均粒径約100μm)及び薄膜(厚さ1μm)試料での、水素濃度1%での反応時間を比較したグラフを図5に示す。
粉末での結果は、t90(最大出力の90%に到達する時間)が300secであるのに対して、薄膜での結果は140secと短くなった。
これは、水素が薄膜内に入ったのち全体に拡散する時間が必要なためであり、結果として粒径の大きい粉末では薄膜より反応時間が長くなるためである。
よって、反応時間を短くしてセンサとしての機能を高めるためには、より薄い薄膜あるいはナノ粒子の形態のPd−Co合金を利用する必要があり、微粒子では少なくとも平均粒子で100μm以下、薄膜で1μm以下が好ましい。
全体は大気圧のガスを一定流量で流すことができる装置となっており、上流側に設置したマスフローコントローラにより水素、アルゴンなどのガスを所定の濃度で混合したうえで、リードスイッチの接触端子部が入っている石英セル内に流すことができる。
接触端子部分には、Cu棒で対向する1対の電極を作成し、その電極の片側にCu箔上にPd−Co薄膜を載せた長方形のフィルムを載せ、その一端を電気的に接触するようCu線などで電極に巻き付けた。
この状態でガラスの外側のある方向から磁石を近づけると、室温で強磁性体であるPd−Co薄膜が磁石に引かれることで、Pd−Co/Cuフィルムがもう片方の電極に接触し、電極同士が接触する。
また、磁石を離せばPd−Coフィルムは重力あるいはCu箔の弾性力により両方の電極が離れるようになっている。
リードスイッチではこの接触の有無を、電気抵抗率の変化により読み取る。
電極の両端に電流を流した際に、電流が流れるか流れないかがそのままON/OFFとして利用できる。
この状態で水素を流していない場合、上に説明した通常のリードスイッチのように作動できる。
この装置内に流れるガスに水素を混ぜると、Pd−Co薄膜が水素を吸収し、その磁化率が水素吸収量に従い減少する。
その結果、ある一定濃度以上で磁石による吸引力より重力や弾性力が大きくなり、結果として電極が離れることが予想される。
磁石と電極が入ったセルの外側までの距離を0.7cmとし、Arガス中に水素9%を混合したガスを導入した結果を図7に示す。
スイッチの接触は、ソースメータを用いて電極間に100mAの定常電流を流し、出力される電圧を読み取ることで判定した。
水素混合ガスを流す前は、出力がほぼ0Vを示しており、これは電極同士が接触している、つまりONの状態であることを示している。
時間0secからアルゴンガス中に水素を9%混入し、その時の電圧値を連続的に観測すると、約200 sec後に突然電圧が10Vの値となった。
これは電極同士が離れ電流が遮断されたこと、つまりOFFの状態になったことを意味する。
この後、水素ガスの混合を止め、アルゴンガスのみを流通させると、約900sec後に電圧がほぼ0Vに戻った。
これはPd−Co膜内の水素がアルゴンガス中に放出されることでPd−Co膜の磁化率が回復し、その結果再び磁気的な引力が重力を上回り、電極同士が接触したと理解できる。
図7に電極と磁石の距離を0.7cmと固定し、水素濃度を変化させた場合のデータを示す。
水素濃度2%では9%の時と同様、水素混合ガス流通下では電極が離れOFFの状態となるが、水素濃度1%では電極に動きはなく、ONの状態を保持している。
これは、水素濃度が高いほどPd−Co膜の磁化が大きく減少するため、低水素濃度ではPd−Co膜の磁化を十分に減少させることができなかったことが原因である。
Pd−Co膜の磁化はCo濃度で制御可能なので、Co濃度を調整することで、任意の水素濃度以上で作動するスイッチを作成可能である。
また、動作可能な水素濃度は、磁石と電極の距離でも制御可能である。
水素濃度を固定し、磁石と電極の距離を変化させた場合の結果を図8に示す。
磁石と流通セル外側との距離を0.6cmとした場合、水素濃度9%では電極が離れることなくONの状態を保持した。
距離を0.7cm、0.9cmと大きくすると、水素混合ガス流通下で電極が離れ、OFFの状態となった。
これは、電極の場所での磁場の大きさによりPd−Co電極に作用する力が変化すること考えることで理解できる。
以上の結果より、Pd−Co膜を電極に用い、Pd−Co膜のCo濃度あるいは磁石との距離を調整することで、所定の濃度の水素に反応するリードスイッチが作成可能である。
Claims (4)
- Pdと鉄属元素のいずれか1つ以上との合金であって、厚さ1μm以下の薄膜又は平均粒径100μm以下の微粒子からなる水素応答素子と、
前記水素応答素子の水素濃度により変化する磁化率の変化の検出手段とを備えたことを特徴とする水素ガスセンサ。 - 前記合金はFe,Co,Niのうち、1つ以上の合計元素の割合が4〜20at%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の水素ガスセンサ。
- 対向配置した一対の接触端子からなるリードスイッチにおいて、
一方の接触端子は、Pdと鉄属元素のいずれか1つ以上との合金であって、厚さ1μm以下の薄膜又は平均粒径100μm以下の微粒子からなり、水素濃度により磁気特性が変化する水素応答素子であることを特徴とするリードスイッチ。 - 前記合金はFe,Co,Niのうち、1つ以上の合計元素の割合が4〜20at%の範囲であることを特徴とする請求項3記載のリードスイッチ。
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